(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内壁板、外壁板、及び前記内壁板と前記外壁板の間の補強板をH形状に組み合わせた基本単位を紙段ボールシートで構成し、前記基本単位の繰り返しを内部構造とする底部と、
前記紙段ボールシートで構成された前記内部構造を有し、前記底部の上面に連続する内側面を有する側壁部と、
を備え、前記底部と前記側壁部とでバスタブ形状を構成し、前記底部及び前記側壁部のそれぞれの前記内壁板が前記バスタブ形状の内壁の5面をなすことを特徴とする浴槽。
内壁板、外壁板及び前記内壁板と前記外壁板の間の補強板をH形状に組み合わせた基本単位を紙段ボールシートで構成し前記基本単位の繰り返しを内部構造とする底部、及び、前記紙段ボールシートで構成された前記内部構造を有し前記底部の上面に連続する内側面を有する側壁部とでバスタブ形状を構成した浴槽と、
床、側壁及び天井のうち少なくとも1箇所が、前記紙段ボールシートで構成された前記内部構造を有する前記床、前記側壁及び前記天井と、
を備え、前記底部及び前記側壁部のそれぞれの前記内壁板が前記バスタブ形状の内壁の5面をなすことを特徴とすることを特徴とする浴室。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0009】
また以下に示す実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。更に、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」に、「右」が「左」になることは勿論である。
【0010】
−−第1の実施形態−−
第1の実施の形態に係る浴槽1の内側の5面のすべては、
図1の斜視図中に手前側の側壁部の一部を切り欠いて示すように、中央部の波型の中芯(フルート)と、この中芯を両側から挟む表ライナ及び裏ライナからなる紙製の段ボールシート(紙段ボールシート)からなる。尚、
図1に例示したような「両面段ボール」の他「複両面段ボール」や「複々両面段ボール」等であっても本発明の「紙段ボールシート」として使用可能である。
【0011】
また第1の実施の形態に係る浴室は、この浴槽1と、
図2の上面図に示すように、平面パターンで略正方形状をなす床部7と、床部7の正方形の4辺からそれぞれ床面に垂直に立ち上がるように設けられた4個の側壁部17a〜17dと、
図3の断面図に示すように、4個の側壁部17a〜17dに同時に接触して設けられた天井部17eと、を備えた躯体構造である。床部7、4個の側壁部17a〜17d及び天井部17eは、いずれも浴槽1と同様に段ボールからなる。浴室の内側には、床部7、4個の側壁部17a〜17d、出入扉19及び天井部17eで囲まれた略直方体状の内部空間が形成され、浴槽1は、
図2に示したように、浴室の床面の面積を洗い場面7aとの間で半分ずつ占めるように配置されている。
【0012】
<浴槽の構造>
浴槽1は、
図2に示すように、上から見た平面パターンで略矩形状をなす平板状の底部と、底部の矩形の4辺からそれぞれ底部の主面に垂直に立ち上がるように設けられた4個の側壁部とを備えて、バスタブの形状をなしている。浴槽1は、底部の上面と、4個の側壁部の内側面との5面によって構成される略直方体状の内部空間を有し、この内部空間にお湯を張って、人が入浴することになる。
図1に例示した浴槽1の内部空間に溜められるお湯の量は、約350l(リットル)である。
【0013】
図1中の浴槽1の右下の一部に符号1a〜1cを付して例示したように、浴槽1の底部及び側壁部は、一方の主面を構成する板状の内壁板1aと、この内壁板1aと間隔を空けて設けられ、他方の主面を構成する板状の外壁板1bと、内壁板1a及び外壁板1bの間に梁のように架け渡されて設けられた補強板1cとの組み合わせからなる、断面がH形状の構造を基本単位として、それぞれの内部に有している。
【0014】
底部及び側壁部は、このH形状の構造を上下方向に所定の段数積み重ねて構成されることにより、構造体としての強度を高め、浴槽1としての形状を保持している。H形状を構成する内壁板1a,外壁板1b及び補強板1cのそれぞれは、例えば1mm〜10mm程度の厚みの紙段ボールシートで構成されている。
【0015】
紙段ボールシートの表面は、シリコン樹脂、フッ素樹脂、カチオン性ヌチレン系樹脂、アクリルアミド系樹脂、ビニルアルコール系重合体等を塗布することにより撥水加工を施すことが好ましいが、更に機械的強度を向上させるために、ポリウレア樹脂等でコーティングすることがより好ましい。このポリウレア樹脂のコーティングは、底部及び側壁部の表面だけでなく、例えばH形状の梁部分をなす補強板1cの表面のような内部にも施すことにより、湿度の高い浴室内に常時配置される浴槽1の防水性及び機械的強度を内部から高めることができる。
【0016】
図1〜
図3に例示したH形状の断面構造を構成する内壁板1a,外壁板1b及び補強板1cはいずれも、両面段ボール、複両面段ボール、複々両面段ボールの他、更なる多重構造からなる強化段ボールであってよい。またH形状の断面構造を構成する内壁板1a,外壁板1b及び補強板1cのそれぞれに用いる紙段ボールシートの種類は互いに同じでもよく、互いに異なってもよい。
【0017】
また浴槽1をなすバスタブ構造の内壁の5面を構成するためには、互いに独立した5枚の内壁板を接着剤等により互いに接着して構成してもよく、或いは例えばみかん箱タイプの段ボール箱のように5面の連続した1枚の紙段ボールシートを折り曲げて粘着テープや接着剤等により互いに接着しても、底部と4個の側壁部を構成できる。
【0018】
図2の上面図中の浴槽1の底部の右下に例示したように、底部の矩形の隅部のうちの1個の近傍には、排水口3が設けられている。排水口3は、
図4の断面図に示すように、浴槽1の底部を貫通し、浴室の外に延びる排水路に連続している。
【0019】
底部の上には、
図1〜
図4に示すように、箱状の座板11が設けられている。座板11の内部は中空であり、座板11には、図示を省略するコンプレッサー等の気泡発生装置からの配管の末端部が接続され、気泡発生装置から浴槽1に溜められたお湯の内部に気泡が送り込まれる。座板11の内部に送り込まれた気泡は、座板11の上面の板に形成された複数の孔部11a,11b,…を介して上方に送り出され、入浴者の主に下半身に対して衝突することで、入浴者の身体にマッサージ効果を与える。
【0020】
底部の上面の
図1中の右側に示す長手方向の一端には、下部が開口した箱状の椅子13が設けられている。椅子13は、
図1に例示した態様においては、脚部をなす壁の一部が、座板11の上面の端部の領域の一部に覆い被さるように配置されている。椅子13の脚部の下端は、例えば座板11に接触する部分において座板11の中央部方向に向かって突出している。また脚部の先端に座板11の孔部11a,11b,…の寸法に対応する径とされた突起部を複数個設け、これらの突起部を座板11の孔部11a,11b,…に緩やかに嵌合させることで、浴槽1の底部及び座板11から着脱自在に構成できる。以下、浴槽1の内側において、
図1中の右側に椅子13が設けられる位置を「頭側」と定義すると共に、
図1中の左側で椅子13と反対側の位置を「足側」と定義する。
【0021】
浴槽1の足側の側壁部の内側面には、一対のリング状の足バンド15a,15bが設けられている。足バンド15a,15bは、
図1及び
図2に示すように、平面パターンで矩形状に近似し、リングの孔が上下方向に貫通して位置するように、リングの側面が浴槽1の側壁部に接触して取り付けられている。足バンド15a,15bのリングの孔には、入浴者の左足及び右足のそれぞれの足指が下側から上側に向かって差し込まれることにより、入浴者の姿勢保持が補助される。例えば、入浴者が座板11による気泡マッサージを受ける際に、勢いよく噴射される気泡によって不必要に揺れ動く動作が抑制できる。
【0022】
また浴槽1の内側の頭側と足側の間の左右の側壁部の内側面には、入浴者の右手に対応する位置及び左手に対応する位置に、それぞれ手すり5a,5bが設けられている。尚、上記した座板11、椅子13、一対の足バンド15a,15b、一対の手すり5a,5b等の部材は、いずれも浴槽1と同様に紙段ボールシートで構成できる。
【0023】
浴槽1の頭側の側壁部の上部には、
図1、
図2及び
図4に示すように、凹部2が形成される。凹部2は略直方体状の空間であり、
図4中に点線で例示したように、凹部2の下側には、凹部2の内側に溜まった液体を凹部2の外側に排出する排水溝が形成されている。凹部2の内側には、
図5の斜視図に例示した肩当て装置30と、肩当て装置30の裏面側に取り付けられたヘッドレスト装置40とが収納される。
【0024】
浴室の床部7、側壁部17a〜17d及び天井部17eは、いずれも浴槽1と同様のH形状の断面構造を基本単位として採用し、構造体としての強度が高められている。床部7の上面となる洗い場面7aは、浴室の側壁部17a〜17dと同様に、紙段ボールシートで構成できる。洗い場面7aは、
図2及び
図3に示すように、平面パターンで略矩形状をなし、矩形の周縁部が中央部より低くなるように段差が形成されている。洗い場面7aの周縁部の浴槽1寄りの一部の領域には、
図2に示すように、排水口8が設けられ、排水口8は洗い場面7aの床面の下を貫通する、図示を省略する排水路に連続している。この排水路は、浴槽1からの排水路の途中に合流している、
【0025】
図2中の上側に位置する浴室の側壁部17aと、洗い場面7aの右側に位置する浴室の側壁部17dとの間には開口部が形成され、この開口部の位置に出入扉19が設けられている。出入扉19は、例えばヒンジ板等の連結具を用いて側壁部17aに取り付けられることにより、浴室を密閉又は開放するように自在に動作可能である。尚、洗い場面7a及び出入扉19はいずれも、浴室と同様に紙段ボールシートで構成できる。
図2中の下側に位置する浴室の側壁部17cの内壁面(表面)の、洗い場面7aに対応する位置には、
図3に示すように、例外的にガラス等からなる鏡21と、紙製のシャワー22が設けられている。
【0026】
また鏡の上方の側壁部17cの表面には、紙の例外となる材料を用いた照明装置24cが設けられている。また
図2に示すように、この照明装置24cと同じ高さであって、
図2中の上側に位置する浴室の側壁部17aの表面、及び、左側に位置する浴室の側壁部17bの表面にもそれぞれ、照明装置24a及び照明装置24bが設けられている。照明装置24a〜24cは、いずれも等価な構造であり、それぞれ全体が箱状の筐体と、筐体の内部に設けられた例えば蛍光灯又はLEDライト等の発光装置とを有する。蛍光灯又はLEDライトの反射板及び蛍光管に酸化チタンをコーティングすれば光触媒作用により、消臭、脱臭及び殺菌が出来る為、衛生的である。筐体の一部は浴室と同様に紙段ボールシートで構成できるが、光透過面はガラスやプラスチック等の透光性の材料が好ましい。照明装置24a〜24cの発光装置の光の強度は、強弱が2段階に変化可能に構成され、入浴者の明るさの好みに応じて、適宜切り替え可能である。
【0027】
また浴室の外には、
図2に示すように、ボイラ等の給湯装置70が設けられ、浴槽1との間に設けられた配管71を介して浴槽1の内側に、所定の温度に沸いたお湯を供給する。また
図2中の上側に位置する浴室の側壁部17aの表面の、浴槽1の側壁部の近傍には、給湯温度の設定や呼び出し音の発生等の操作を行うための操作盤9を設けてもよい。
【0028】
<肩当て装置の構造>
肩当て装置30は、
図5に示すように、支持板31と、支持板31の上端部に設けられた肩当て板32とを備える。支持板31は、略矩形状の1枚の紙段ボールシート板からなり、上端部が、主面に対して略直交するように折り曲げられている。肩当て板32は、主面が、支持板31の折り曲げられた上端部の面に沿う曲面として設けられている。
【0029】
肩当て板32の支持板31と反対側の辺の中央には、略台形状の切欠き部が、内側に向かって引っ込むように設けられ、この切欠き部を挟むように、U字型(コの字型)に右側領域32a及び左側領域32bが配置されている。また肩当て板32の下側の主面には、例えば摩擦力が比較的大きなゴム等の素材からなる保持力増加板33が、肩当て板32の長手方向に沿って両端間に亘り設けられている。
【0030】
支持板31の主面の中央には、同じ高さ位置に一対の孔部31a,31bが間隔を空けて並んで貫通形成されている。また
図6の斜視図に示すように、孔部31a,31bに対応する高さの凹部2の内壁面には、孔部31a,31bと略同寸法の一対の取り付け孔2a,2bが形成されている。そして孔部31a,31bの径と略同じ外径の胴体を有するボルト状の一対の固定具36a,36bを、支持板31の裏面側から、支持板31の孔部31a,31b及び凹部2の取り付け孔2a,2bに同時に差し込むことにより、肩当て板32が凹部2の上面の開口部の上方に離間するように、支持板31を凹部2の内壁面に固定できる。
【0031】
また支持板31の裏面上には、
図6に示すように、一対の柱状の取り付け部材34a,34bが、それぞれ長手方向を上下方向に揃えて、互いに間隔を空けて設けられている。取り付け部材34a,34bは、長手方向に直交する断面の形状がU字状となるように、1枚の板状の紙段ボールシートを折り曲げて形成されている。また一対の取り付け部材34a,34bの間を架け渡して、支持板31と間隔を空けて平行に、押さえ板35が設けられている。押さえ板35の主面の中央には、同じ高さ位置に一対の孔部35a,35bが間隔を空けて並んで貫通形成されている。また押さえ板35の孔部35a,35bに対応する高さの支持板31の主面には、孔部35a,35bと略同径の一対の取り付け孔31c,31dが形成されている。
【0032】
<ヘッドレスト装置の構造>
ヘッドレスト装置40は、
図5及び
図6に示すように、入浴中の人の頭が接触するヘッドレスト部41と、ヘッドレスト部41の人の頭との接触部の反対側に一端が取り付けられた柱状の首部43とを備える。
【0033】
ヘッドレスト部41は主面が入浴者の頭部後面に対向するように設けられ、平面パターンでU字状をなすように、左右方向の両端部の厚みが、U字の凹部2をなす中央部よりも厚くなるように、中央部との間に段差が形成されている。中央部と両端部の間の段差をなすそれぞれの領域には、
図5に示すように、防水加工が施されたスピーカ42a,42bがそれぞれ設けられ、図示を省略する音声再生装置に接続してもよい。すなわちヘッドレスト装置40は、入浴者の頭部を休ませると共に、ヘッドフォン機能を有するように構成可能である。
【0034】
首部43は、柱の上端部を除く大部分が略鉛直に直立するように設けられる。首部43の直立部分は、
図6に示すように、肩当て装置30の支持板31と一対の取り付け部材34a,34bと押さえ板35とによって囲まれる空間内に収納され、ヘッドレスト装置40の直立状態が保持される。また首部43の上端部は、直立部分に対して略直交するように折り曲げられ、上端面がヘッドレスト部41に接合している。
【0035】
首部43の直立部分には、同じ高さ位置に間隔を空けて並んで貫通形成された2個の孔部からなる対が、上下方向に間隔を空けて3対(43ar,43al),(43br,43bl),(43cr,43cl)形成されている。それぞれの孔部は、押さえ板35の孔部35a,35b及び支持板31の取り付け孔と略同径である。そして首部43の孔部の径と略同じ外径の胴体を有するボルト状の一対の固定具36c,36dを、押さえ板35の孔部35a,35b、首部43の任意の孔部対及び支持板31の取り付け孔31c,31dに同時に差し込むことにより、首部43の位置を上下に移動させ、ヘッドレスト部41が肩当て板32の上方に飛び出すように配置できる。尚、首部43の上下の移動は、
図6で示したような手動に限らず、自動で行ってもよい。例えば浴槽1の凹部2の中に電動モータ式のリフトシリンダー等の上下動装置を設け、この上下動装置に首部43の下端部を連結すればよい。
【0036】
肩当て装置30及びヘッドレスト装置40はいずれも大部分が、浴槽1と同様に、紙段ボールシートで構成できる。またスピーカ42a,42bや上下動装置の電気配線等、紙段ボールシート以外であって耐水性が必要な部材には、適宜防水加工が施される。スピーカ42a,42bのオン/オフ切り替えや音量調節、上下動装置の操作等は、操作盤9でまとめて行うように構成可能である。
【0037】
<肩当て装置及びヘッドレスト装置の使用方法>
次に、肩当て装置30及びヘッドレスト装置40の使用方法を説明する。肩当て装置30及びヘッドレスト装置40は、不使用の時には、
図7の断面図に示すように、浴槽1の凹部2の内側にそれぞれの高さが最も低い状態で収納されている。一方、
図8の断面図に示すように、使用時には、肩当て装置30及びヘッドレスト装置40を入浴者Pの寸法に適合する所定の高さ位置にそれぞれ上昇させ、固定する。
図8中には、固定具36cが、押さえ板35の右側の孔部35a、首部43の最下段の孔部対の右側の孔部43cr及び支持板31の右側の取り付け孔31cに同時に差し込まれた状態が例示されている。
【0038】
次に、入浴者Pは椅子13に腰かけた後、肩当て装置30の肩当て板32の台形状の切欠き部を、入浴者Pの首の後側に接触させる。また肩当て板32の右側領域32aを入浴者Pの右肩の上面に接触させると共に、左側領域32bを入浴者Pの左肩の上面に接触させる。このとき、保持力増加板33の主面も、入浴者Pの右肩及び左型の上面に接触し、入浴者Pの姿勢保持を補助する。またヘッドレスト装置40のヘッドレスト部41を、入浴者Pの後頭部に接触させる。肩当て装置30及びヘッドレスト装置40により、入浴者Pは頭部及び肩部の位置が一体的に保持され、安定した状態で入浴できる。更に入浴者Pは、スピーカ42a,42bから好みの音楽等を再生させて聞くことも可能とすることができるので、この場合は更にリラックスできる。
【0039】
<ポータブルシャワー装置>
また浴槽1の凹部2には、肩当て装置30及びヘッドレスト装置40の他にも、各種のアメニティ用の装置をオプションで別途取り付けて用いることができる。例えば
図9の斜視図に示すような、入浴者Pの肩の上方から水又はお湯の液体wをかけるポータブルシャワー装置50を増設できる。
【0040】
ポータブルシャワー装置50は、中空円筒状の上部支持部51と、この上部支持部51の下端部に一端部が連結された中空円筒状の中央支持部52と、この中央支持部52の他端部に上端部が連結された中空円筒状の下部支持部53と、を備える。上部支持部51の上端部には、中空円筒状の第1放水管54が設けられ、第1放水管54の長手方向の両端には、一対の中空円筒状の第2放水管55a,55bの一端がそれぞれ嵌合して設けられる。またポータブルシャワー装置50は、一対の第2放水管55a,55bのそれぞれの他端に、それぞれの一端が嵌合して設けられたいずれも中空円筒状の一対の第3放水管56a,56bを備える。
【0041】
またポータブルシャワー装置50は、上部支持部51の中央に上部支持部51の長手方向に直交するように延びる中空円筒状の固定部57を備える。固定部57の長手方向の両端には、一対の中空円筒状の第1調節部58a,58bの一端がそれぞれ嵌合して設けられる。またポータブルシャワー装置50は、一対の第1調節部58a,58bのそれぞれの他端に、それぞれの一端が嵌合して設けられたいずれも中空円筒状の一対の第2調節部59a,59bを備える。またポータブルシャワー装置50の下部支持部53の下端部には、液体wを送り出すポンプ60が設けられる。
【0042】
上部支持部51は、
図9に示すように、互いに同径で、同軸上に配置された2本の端部用筒状部材51c,51eと、外径が2本の端部用筒状部材51c,51eの内径と同じか僅かに短く構成され、端部用筒状部材51c,51eと同軸でそれぞれの内側に緩やかに嵌め合って、いわゆる入れ子状態で設けられた中央筒状部材51dが例示されている。2本の端部用筒状部材51c,51e及び中央筒状部材51dは、互いに長手方向に摺動自在に構成され、中央筒状部材51dを挟む端部用筒状部材51c,51e管の間隔を調節することにより、上部支持部51の上下方向の長さは調節可能に構成されている。
【0043】
また上側の端部用筒状部材51cの中央筒状部材51dと反対側の端部には、中空円筒状の首部51bの一端が設けられている。また首部51bの他端には、中空円筒状の連結部51aの一端が同軸で設けられ、連結部51aの他端は第1放水管54の側壁に開口して取り付けられている。首部51bは、中央が約90°折り曲げられて形成され、端部用筒状部材51cの軸と連結部51aの軸が略直交するように構成されている。
【0044】
中央支持部52は、中央の直線状の部分が略水平に配置されると共に、両端が中央の軸に対して直交するようにZ字状に折り曲げられている。また中央支持部52の一端と他端は、中央を挟んで互いに点対称に位置するように構成されている。中央支持部52の一端に上部支持部51の下端が連結されると共に、中央支持部52の他端に下部支持部53の上端が連結されることにより、上部支持部51の軸心と下部支持部53の軸心が同一直線上に位置せず、偏心した状態が形成される。
【0045】
ポンプ60は配線を介して図示を省略する電源に接続される。
図9中には、電源に接続されたコンセントに差し込むためのプラグと、プラグとポンプ60との間に操作盤9が配置され、ポンプの動作が制御される状態が例示されている。
【0046】
第1放水管54、第2放水管55a,55b及び第3放水管56a,56bは、
図10の断面図に例示したように、いずれも壁面の一部が揃って開口し、開口部から液体wを同一方向に放出する。開口部は、それぞれの放水管の最下部に設けられており、上部支持部51から第1放水管54内に送り込まれた液体wは、第1放水管54から一対の第2放水管55a,55bのそれぞれの内側に、更にそれぞれの第2放水管55a,55bからそれぞれ対応する第3放水管56a,56bの内側に、順次送り込まれる。そして、第1放水管54、第2放水管55a,55b及び第3放水管56a,56bのそれぞれの内側から、開口部を介して放水管の外側に、水圧及び重力により放出される。
【0047】
第2放水管55a,55bの外径は、第1放水管54の内径と同じか僅かに短く構成され、いわゆる入れ子状態が形成されるように、第1放水管54の内側に緩やかに嵌め合って設けられている。そのため第2放水管55a,55bは、いずれも第1放水管54の内側から突出する長さが調節できるように、長手方向に摺動自在に構成されている。
【0048】
また第3放水管56a,56bの外径は、第2放水管55a,55bの内径と同じか僅かに短く構成され、それぞれ対応する第2放水管55a,55bの内側に緩やかに嵌め合って設けられている。そのため第3放水管56a,56bも、対応する第2放水管55a,55bの内側から突出する長さが調節できるように、長手方向に摺動自在に構成されている。すなわち、第1放水管54、第2放水管55a,55b及び第3放水管56a,56bからなる放水部は、長手方向に伸縮自在であり、放水領域の長さを調節可能である。
【0049】
第1調節部58a,58bの外径は、固定部57の内径と同じか僅かに短く構成され、いわゆる入れ子状態が形成されるように、固定部57の内側に緩やかに嵌め合って設けられている。そのため第1調節部58a,58bは、いずれも固定部57の内側から突出する長さが調節できるように、長手方向に摺動自在に構成されている。
【0050】
第2調節部59a,59bは中央が約90°曲がったL字状であり、第1調節部58a,58bと反対側の端部にはそれぞれ、略円柱状の突起部65a,65bが設けられている。一対の突起部65a,65bの径は、
図6で示した凹部2の取り付け孔2a,2bの径と略同じである。また第2調節部59a,59bの外径は、第1調節部58a,58bの内径と同じか僅かに短く構成され、それぞれ対応する第1調節部58a,58bの内側に緩やかに嵌め合って設けられている。そのため第2調節部59a,59bも、対応する第1調節部58a,58bの内側から突出する長さが調節できるように、長手方向に摺動自在に構成されている。すなわち、固定部57、第1調節部58a,58b及び第2調節部59a,59bからなる取り付け部は、長手方向に伸縮自在であり、ポータブルシャワー装置50の凹部2への取り付け長さを調節可能である。ポータブルシャワー装置50は、ポンプ60及びポンプ60に接続される配線を除き、略全体を紙段ボールシートで構成できる。
【0051】
<ポータブルシャワー装置の設置方法及び使用方法>
次に、ポータブルシャワー装置50の設置方法及び使用方法を説明する。まず
図4中に点線で例示したように、ポンプ60を浴槽1の底部の上面で頭側の端部寄り位置に配置し、ポンプ60に下部支持部53を連結する。また浴槽1のポンプ60寄りの側壁部に、中央支持部52を差し込む孔を予め形成しておき、この孔に、下部支持部53に連結された中央支持部52を差し込む。また凹部2の底面に上部支持部51を差し込む孔を予め形成しておき、この孔に、上部支持部51の下端部を差し込み、差し込んだ下端部と中央支持部52とを連結する。次に、上部支持部51に放水部(54,55a,55b,56a,56b)を連結する。
【0052】
次に、放水部(54,55a,55b,56a,56b)が所望の高さに位置するように、上部支持部51の長さ及び首部51bの傾斜角度を調節する。次に、取り付け部(57,58a,58b,59a,59b)の第1調節部58a,58b及び第2調節部59a,59bの突出長さを適宜調節し、突起部65a,65bと凹部2の取り付け孔2a,2bとの左右方向の位置を合わせる。
【0053】
そして第2調節部59a,59bの突起部65a,65bを、浴槽1の凹部2の取り付け孔2a,2bにそれぞれ差し込み、放水部(54,55a,55b,56a,56b)の高さ位置を固定する。このとき突起部を差し込む孔として、肩当て装置30の固定具36a,36bに対応して形成された凹部2側の取り付け孔を使用できる。以上により、ポータブルシャワー装置50の浴槽1への設置が完了する。
【0054】
次に、ポンプ60の電源をオンし、ポンプ60の下面側から浴槽1内の液体wを汲み上げて下部支持部53の筒の内側に送り込む。そして、下部支持部53内に送り込んだ液体wを中央支持部52へ、更に中央支持部52から上部支持部51へと、ポンプ60の圧力により、順次送り出す。
【0055】
次に、第2放水管55a,55b及び第3放水管56a,56bをそれぞれ任意の長さ突出させ、所望の放水領域が実現できるように、放水部の長さを調節する。放水部の長さの調節は、ポンプ60の駆動前に行ってもよい。そして操作盤9を操作してポンプを所望の回転数で駆動させ、放水部より浴槽1中の液体w(お湯)を、放水量を調節しながら、入浴者Pの首筋から左右の肩の上部に放水させる。入浴者Pは、液体wの衝突力によるマッサージ効果により、更にリラックスした状態で半身浴をする事が出来、心臓に負担をかけることなく入浴を楽しむことができ、疲労回復及び心身の健康促進を図ることができる。
【0056】
本発明の実施の形態に係る浴槽1によれば、浴槽1の底部及び側壁部すべてが紙段ボールシート製であるので軽量であり、運搬が容易である。また廃棄時には浴槽1を容易にリサイクルできるため、環境に優しい。
また本発明の実施の形態に係る浴槽1には、肩当て装置30、ヘッドレスト装置40及びポータブルシャワー装置50を設置でき、入浴による疲労回復及び心身の健康促進効果を高めることができる。またこれらの装置はいずれも浴槽1と同様に紙段ボールシート製で構成できるので軽量であり、運搬が容易である。加えて、廃棄時には浴槽1と同時に、容易にリサイクルできる。
更に本発明の実施の形態に係る浴室は、床部7、側壁部17a〜17d、天井部17e、出入扉すべてが紙段ボールシート製であるので、浴槽1と同様に軽量であり、運搬が容易である。加えて廃棄時には容易にリサイクルできる。すなわち浴室全体が略すべて紙段ボールシート製であることにより、任意の場所に搬送可能であり、例えば介護が必要な高齢者等が気分転換を希望したときに、一時的な仮設住宅や避難施設のように浴室が十分に整備されていない場所であっても容易に対応でき、利便性が高い。更に、総合的に環境への負荷を抑えることができる。
【0057】
−−第2の実施形態−−
本発明に係る浴室は、
図11の上面図に示すように、洗い場面7aの床下に循環パイプ80を設け、この循環パイプ80に浴槽1中のお湯を通して、お湯の熱を洗い場面7aの床部7に伝達して暖めるように構成できる。すなわち第2の実施の形態に係る浴室は、第1の実施の形態で説明した浴室において、更に浴槽1中のお湯の循環構造を備える点で、第1の実施の形態と異なる。
【0058】
第2の実施の形態に係る浴室は、第1の実施の形態の場合と同様に、紙段ボールシートからなる浴槽1と、浴室の洗い場面7aの床下に設けられた循環パイプ80と、を備える。第2の実施の形態に係る浴室は、循環パイプ80以外の構造については、第1の実施の形態におけるそれぞれ同名の部材と等価であるため、以下、重複説明を省略し、主に循環パイプ80及びお湯の循環構造に関して説明する。
【0059】
循環パイプ80の、お湯の入側となる端部は、
図12の断面図に示すように、浴槽1の洗い場面7a寄りの側壁部の主面に直交し、この側壁部を貫通して延びている。循環パイプ80は、浴槽1側から洗い場面7a側に移行した後、
図11に示したように、平面パターンで、洗い場面7aの床下で存在領域が可能な限り多くなるように、蛇行を繰り返し、最終的にはお湯の出側となる端部が、入側の端部の横に位置するように設けられている。尚、循環パイプ80の蛇行パターンは、
図11に例示したものに限定されず、適宜変更して設定できる。
【0060】
浴槽1の底部又は洗い場面7aの床下には、図示を省略する循環ポンプが設けられ、循環パイプ80に接続されている。また循環ポンプは操作盤9に接続され、ポータブルシャワー装置50の場合と同様に、駆動が制御されている。
【0061】
図13の一部断面図に示すように、洗い場面7aの床部7は、中芯が5段積層された構造である。中芯を上下で挟み込んだ2層のライナ間の厚みh1は、例えば1cm程度であり、洗い場面7aの床全体の厚みh2は、5cm程度であるが、厚みh1,h2は適宜変更されてよい。循環パイプ80が、5段のうち最上段の紙段ボールシートの内側の中芯の空隙に差し込まれていることにより、循環パイプ80と洗い場面7aの床面との距離が、下側の紙段ボールシートに差し込まれる場合より短くなり、お湯の熱を効率的に活用できる。循環パイプ80は、浴槽1と同様に、紙段ボールシートで構成できる。
【0062】
第2の実施の形態に係る浴室によれば、循環パイプ80に浴槽1中のお湯を通して、お湯の熱を洗い場面7aの床部7に伝達して暖める。そのため寒い時期の入浴であっても、洗い場面7aの床面の温度低下を抑制し、寒さに震えることなく快適に洗い場面7aで行動できる。また入浴前に、予め洗い場面7aの床部7を暖めておけば、脱衣場から浴室への移動による急激な温度変化による身体へのストレスを低減でき、特に、高齢者等、温度変化による身体への負担が大きくなる入浴者にとって有効である。第2の実施の形態に係る浴室の他の効果については、第1の実施の形態の場合と同様である。
【0063】
本発明は上記のとおり開示した実施の形態によって説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかになると考えられるべきである。例えば
図1〜
図13中に例示した浴槽1は、バスタブ構造の内壁の枚数が5面であり、内部空間が略直方体状をなすように構成されているが、この枚数は5面に限定されず、側壁部の個数に応じて4面、9面等、適宜変更しても本発明を構成できる。
【0064】
以上のとおり本発明は、本明細書及び図面に記載していない様々な実施の形態等を含むとともに、本発明の技術的範囲は、上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【解決手段】浴槽1は、紙段ボールシートからなる底面と、紙段ボールシートからなり、底面に連続する内側面と、を備え、底面と内側面とでバスタブ形状を構成する。また浴室は、この浴槽1と、床部7、側壁部17a,17b,17c及び天井のうち少なくとも1箇所が紙段ボールシートからなる床部7、側壁部17a,17b,17c及び天井と、を備える。