特許第5943253号(P5943253)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5943253
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】電気機器の筺体構造
(51)【国際特許分類】
   H05K 5/02 20060101AFI20160621BHJP
   G08B 21/16 20060101ALI20160621BHJP
   G08B 17/00 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   H05K5/02 L
   G08B21/16
   G08B17/00 G
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-235938(P2012-235938)
(22)【出願日】2012年10月25日
(65)【公開番号】特開2014-86636(P2014-86636A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2014年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190301
【氏名又は名称】新コスモス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100126930
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 隆司
(72)【発明者】
【氏名】上田 英一
【審査官】 中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−232768(JP,A)
【文献】 実開昭55−007330(JP,U)
【文献】 特開2005−158909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/02
G08B 17/00
G08B 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器本体および当該機器本体の少なくとも一部を覆う封止体を有する筺体と、
前記封止体の側面に、前記筺体の内部に浸入した水を前記筺体の外部に排出する排出孔と、を設け、
前記筺体を垂直に設置した設置姿勢としたとき、
前記封止体の側面における少なくとも前記排出孔の下方および前記封止体の下面に、前記側面に沿って、断面視で凹状に湾曲した湾曲部と、
前記排出孔から排出された水を、前記湾曲部を経由して前記筺体の下方に導くように前記排出孔に亘って形成した排出孔リブと、を備えた電気機器の筺体構造。
【請求項2】
前記設置姿勢における前記封止体の下面に形成した湾曲部に凹部を形成した請求項1に記載の電気機器の筺体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面に設置される防災用又は防犯用の電気機器において、当該電気機器の内部空間に浸入した水を電気機器の外部に排出する水抜き構造を備えた筺体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器の一種として、壁面に設置される防災用又は防犯用の警報器がある。このような電気機器には、通常、当該警報器が水に晒された場合であってもその機能を維持する必要があるため、例えば当該警報器の内部に浸入した水を抜く水抜き構造が設けられる。
【0003】
例えば当該水抜き構造として、特許文献1には、機器本体と、機器本体の少なくとも一部を覆う封止体との相互間に止水壁を設けたものが記載してある。当該止水壁は、具体的には機器本体に形成された立ち上げ部であり、当該立ち上げ部の周面に複数の止水リブが形成されている。複数の止水リブは、相互に所定間隔を隔てて配置されており、最初の止水リブによって浸入してきた水を堰き止めることができる。仮に最初の止水リブを越えて電気機器の内部空間側に水が浸入しようとする場合でも、次の止水リブで順次堰き止めることができる。
【0004】
これら複数の止水リブは、電気機器の内部に入り込む水を外部に排水するための水抜き路の壁を形成している。このような水抜き路は、止水リブの数に応じて、一本あるいは複数本形成される。当該水抜き路は、電気機器を設置した姿勢において、機器本体の上部から側部、さらに下部に至るように、途切れることなく連続的に形成されている。従って、浸入してきた水が最初の止水リブで堰き止められると、最初の水抜き路を伝って機器本体の下部に至る。仮に浸入してきた水が最初の止水リブを乗り越えた場合でも、次の止水リブで堰き止められて次の水抜き路を伝って機器本体の下部に至る。このように水抜き路によって排水効果を高め、水が機器本体の内部空間側に浸入するのを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−102555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば筺体の側面に水抜き孔が形成されているような場合、当該水抜き孔から排出された水が、当該筺体の側面を伝わって筺体の下部に移動する間に、筺体に形成された隙間から、再度、該電気機器の内部に浸入してしまう虞があった。
【0007】
特許文献1に記載の水抜き構造では、電気機器の内部に入り込んだ水を、水抜き路によって外部に排水していたが、一旦排出した水が、再度、当該電気機器の内部に浸入してしまうことを防止する構造ではない。
【0008】
従って、本発明の目的は、浸入した水を筺体の外部に排出する排出孔からの水が、再度、筺体の内部に浸入するのを防止できる電気機器の筺体構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る電気機器の筺体構造の第一特徴構成は、機器本体および当該機器本体の少なくとも一部を覆う封止体を有する筺体と、前記封止体の側面に、前記筺体の内部に浸入した水を前記筺体の外部に排出する排出孔と、を設け、前記筺体を垂直に設置した設置姿勢としたとき、前記封止体の側面における少なくとも前記排出孔の下方および前記封止体の下面に、前記側面に沿って、断面視で凹状に湾曲した湾曲部と、前記排出孔から排出された水を、前記湾曲部を経由して前記筺体の下方に導くように前記排出孔に亘って形成した排出孔リブと、を備えた点にある。
【0010】
本構成によれば、断面視が凹状の湾曲部を、封止体の側面に沿って形成することで、通路状の凹みを当該側面に沿って形成することができる。このように、設置姿勢において、少なくとも排出孔の下方および前記封止体の下面に当該湾曲部を設けているため、当該設置姿勢では、排出孔から排出された水が通路状の湾曲部を伝わるようになり、当該水を筺体の下方に導き易くなる。このとき、湾曲部は封止体の側面に形成されるため、排出孔から排出された水は、筺体の隙間(例えば機器本体と封止体との隙間)の側に向って流れ難くなる。従って、排出孔から排出された水は、再度、前記隙間から電気機器の内部に浸入し難くなる。
【0011】
また、排出孔リブを排出孔に亘って備えることで、排出孔から排出しようとする水を、直ちに湾曲部に導き易くなり、それによって当該水を筺体の下方に確実に導くことができる。
【0012】
本発明に係る電気機器の筺体構造の第二特徴構成は、前記設置姿勢における前記封止体の下面に形成した湾曲部に凹部を形成した点にある。
【0013】
本構成によれば、例えば排出孔から排出された水が、封止体の側面に形成された湾曲部を経由して筺体の下方に導かれた場合、このような水が、封止体の下面に形成された湾曲部の凹部まで移動する。このとき、当該水は、凹部の端部に沿って移動し易くなり、当該端部において水滴が形成され易くなる。そして、ある程度の大きさの水滴に成長すると電気機器の下方に滴下する。このように、本構成では、排出孔から排出された水は、筺体の隙間の側に向って流れ難くなり、かつ、排出孔から排出された水を効率よく滴下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】電気機器の概要を示す斜視図である。
図2】電気機器の分解斜視図である。
図3】電気機器の断面概略図(図1のIII-III断面図)である。
図4】電気機器の断面概略図(図1のIV-IV断面図)である。
図5】電気機器の断面概略図(図1のV-V断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本発明は、機器本体および当該機器本体の少なくとも一部を覆う封止体によって形成された筺体を有する電気機器の防水構造である。
【0016】
図1〜5に示したように、当該電気機器Xは、機器本体10および当該機器本体10の少なくとも一部を覆う封止体20を有する筺体Yと、封止体20の側面(封止側面)21に、筺体Yの内部に浸入した水を筺体Yの外部に排出する排出孔25と、を設けている。
また、電気機器Xの筺体Yを垂直に設置した設置姿勢としたとき、電気機器Xは、封止体20の封止側面21における少なくとも排出孔25の下方に、封止側面21に沿って、断面視で凹状に湾曲した湾曲部50と、排出孔25から排出された水を、湾曲部50を経由して筺体Yの下方に導くように排出孔25に亘って形成した排出孔リブ25aと、を備える。
【0017】
電機機器Xは、屋内や屋外で壁面に設置する態様であればどのような機器であってもよい。当該壁面に設置する電機機器としては、例えば防災用又は防犯用の警報器が挙げられる。当該警報器は、その内部に外部環境の変化を検知する検知部31を備える。当該検知部31は外部環境の変化を検知するセンサであればよく、このようなセンサとして、酸素センサ、COセンサ、都市ガスセンサ、LPガスセンサなどのガスセンサ、火災センサなどを使用することができるが、これに限られるものではない。
【0018】
ガスセンサは、被検知ガスを検知するものであればどのような態様であってもよい。例えば酸素センサは酸素ガスを検出でき、COセンサは不完全燃焼で発生する一酸化炭素ガスを検出でき、都市ガスセンサやLPガスセンサは炭化水素ガス等の漏洩ガスを検出することができるものであれば、公知の半導体式センサ素子、接触燃焼式センサ素子および電気化学式センサ素子などが使用できる。
火災センサは、温度の上昇を感知する温度センサや、煙感知機能を有する公知の散乱光式煙センサなどが使用できる。
【0019】
本実施形態では、警報器として、不完全燃焼を検出するため、COガスの漏洩を検知するガス警報器Xを浴室の壁面に設置する態様について説明する。当該ガス警報器Xの形状は特に限定されるものではないが、本実施形態では上面視で矩形状であり、厚板状(例えば12×7×2.5cm)の形状を呈するものを例示する。この場合、当該ガス警報器Xは、例えばその長辺を地面に垂直に設置する縦置き姿勢(設置姿勢)によって設置することができる。
【0020】
機器本体10は基板部30を収容しており、底面11と側面12とを一体に形成して構成されている。即ち、底面11および側面12とで囲まれた空間に基板部30が収容される。側面12の端部(封止体20の側)には、封止体20と重ね配置される本体周縁端部12aが形成してある。本体周縁端部12aには、ガス警報器Xの周縁に沿うように溝部Bが形成してある。また、本体周縁端部12aには、その全周に亘って複数の止水リブ12bが形成されており、溝部Bは、隣接する止水リブ12bどうしの間の空間で構成される。溝部Bおよび止水リブ12bは、水の浸入方向に対して略直交する方向に設けられているため、止水リブ12bによって浸入してきた水を堰き止めることができる。堰き止められた水は溝部Bを伝ってガス警報器Xの下方に流れ落ちて外部に排出することができる。
【0021】
封止体20は、機器本体10の少なくとも一部を覆う部材である。本実施形態では、封止体20は、機器本体10の全体を覆う場合について説明する。
【0022】
封止体20には、スピーカ部32が発した警報音を外部に放音するスピーカ開口部24、被検知ガスを検知部31に導入する被検知ガス導入口26、および、スイッチ操作を行うスイッチ押圧部27が形成してあり、封止体20の裏面に形成した凹部には、導光部28や電池29が配設してある。
【0023】
封止体20の側面に、筺体Yの内部に浸入した水を筺体Yの外部に排出する排出孔25が形成してある。本実施形態では、当該排出孔25は、筺体Yの内部に浸入し、封止体20の内面を伝わり、排出孔25に達した水を筺体Yの外部の排出するための孔である。
【0024】
尚、封止体20の表面には封止板40を貼り付けてある。当該封止板40には、スピーカ開口部24や被検知ガス導入口26に対応するスピーカ開口部44および被検知ガス導入口46がそれぞれ形成してある。
【0025】
基板部30には、検知部31、スピーカ部32、LED33およびスイッチ部34などの部品が配設してある。本実施形態では、COガスを検知する検知部31として、電気化学式COセンサを使用した場合について説明する。電気化学式COセンサとは、COガスを、隔膜を通して触媒作用を有する作用電極上に導き、COガスを酸化することによりガス濃度に応じた電圧または電流を出力するセンサである。スピーカ部32は、検知部31からの信号を受けて警報音を発するものであればどのような態様であってもよく、例えば圧電スピーカなどを使用することができる。LED33が発した光は、導光部28を介して外部に放出される。
【0026】
検知部31は、封止体20から筺体Yの内部の側に向って立設した収容部22に収容してある。当該収容部22は、検知部31である電気化学式COセンサを収容できる形態であればその形状は特に限定されるものではなく、本実施形態では、矩形状を呈する場合を例示する。収容部22は、封止体20の裏面から立設し、基板部30によって収容部22の矩形状の開口が塞がれる。
【0027】
本発明の電気機器(ガス警報器)Xの筺体構造は、電気機器Xの筺体Yを垂直に設置した設置姿勢としたとき、ガス警報器Xは、封止体20の封止側面21における少なくとも排出孔25の下方に、封止側面21に沿って、断面視で凹状に湾曲した湾曲部50を備える(図3〜5)。
【0028】
本実施形態では、湾曲部50を封止体20の封止側面21の全周に亘って形成した場合について説明する。当該湾曲部50は、断面視で、筺体Yの内方に向って凹状に湾曲させる。当該湾曲部50は、明確な溝状ではなく、ゆるやかな曲部で形成すると、封止側面21にゴミなどが溜まり難くなる。このように、断面視が凹状の湾曲部50を封止側面21に沿って形成することで、通路状の凹みを封止側面21に沿って形成することができる。
【0029】
本構成では、設置姿勢において、少なくとも排出孔25の下方に当該湾曲部50を設けているため、当該設置姿勢では、排出孔25から排出された水が通路状の湾曲部50を伝わるようになり、当該水を筺体Yの下方に導き易くなる。このとき、湾曲部50は封止側面21に形成されるため、排出孔25から排出された水は、筺体Yの隙間(例えば機器本体10と封止体20との隙間)の側に向って流れ難くなる。従って、排出孔25から排出された水は、再度、前記隙間からガス警報器Xの内部に浸入し難くなる。
【0030】
また、本発明のガス警報器Xの筺体構造は、排出孔25から排出された水を、湾曲部50を経由して筺体Yの下方に導くように排出孔25に亘って形成した排出孔リブ25aを備える。当該排出孔リブ25aは、例えば設置姿勢において、排出孔25の鉛直方向の幅の全長に亘って鉛直方向に設けるとよいが、排出孔25から排出された水を、湾曲部50を経由して筺体Yの下方に導くように配設してあれば、このような態様に限られるものではない。
【0031】
このように排出孔リブ25aを排出孔25に亘って備えることで、排出孔25から排出しようとする水を、直ちに湾曲部50に導き易くなり、それによって当該水を筺体Yの下方に確実に導くことができる。
【0032】
本実施形態では、設置姿勢における封止体20の下面に形成した湾曲部50に凹部60を形成してある。
【0033】
このように封止体20の下面に形成した湾曲部50に凹部60を形成することで、例えば排出孔25から排出された水が筺体Yの下方に導かれた場合、このような水が凹部60の端部60aに沿って移動し易くなり、当該端部60aにおいて水滴が形成され易くなる。そして、ある程度の大きさの水滴に成長するとガス警報機Xの下方に滴下する(図1)。このように、本構成では、排出孔25から排出された水は筺体Yの隙間(例えば機器本体10と封止体20との隙間)の側に向って流れ難くなり、かつ、排出孔25から排出された水を効率よく滴下させて、当該水が筺体Yに再浸入するのを確実に防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、壁面に設置される防災用又は防犯用の電気機器において、当該電気機器の内部空間に浸入した水を電気機器の外部に排出する水抜き構造を備えた筺体構造に利用できる。
【符号の説明】
【0035】
X 電気機器
Y 筺体
10 機器本体
20 封止体
21 側面(封止側面)
25 排出孔
50 湾曲部
25a 排出孔リブ
60 凹部
図1
図2
図3
図4
図5