(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
本発明にて対象としているマルチビームによる通信では、単一の通信衛星において地上から送信された複数のビームを受信し、当該通信衛星に搭載されたチャネライザ等を用いて各ビームに含まれるチャンネル信号を分波抽出し、これらの信号をフィーダリンク帯域内に周波数変換してフィーダリンクの周波数利用効率が高くなるように再配置し、当該フィーダリンクを介して地上の送信先の地上局へ送信している。
図5は、従来の周波数分割多重信号用チャネライザの構成を示す説明図である。この図は、例えば通信衛星に搭載される従来の周波数分割多重信号用チャネライザのブロック構成を示したもので、ビーム数がNのIF帯域アナログ信号を入力する装置の構成例である。
このチャネライザは、A/D変換器101、直交検波器102、間引きフィルタ103、及び、分波器104をそれぞれN個ずつ、即ち受信したビーム毎に備えており、各ビームに含まれるチャンネル毎に信号を処理するように構成されている。また、この装置は、N個の分波器104から出力される信号を入力するスイッチ105、合波器106、内挿フィルタ107、直交変調器108、D/A変換器109を備えている。
【0003】
各A/D変換器101は、入力したIF帯域の各チャンネルのアナログ信号をデジタル信号に変換する。このデジタル信号は、直交検波器102へ入力され、直交する2値を有し、実部と虚部に分解されると共にベースバンド信号に変換される。このベースバンド信号の実部をIチャンネル、また、虚部をQチャンネルとし、ここではそれぞれIch、Qchと記載する。
Ich、Qchからなるベースバンド信号は、間引きフィルタ103へ入力され、例えば1/Nのサンプリングレートまでダウンサンプリングされて分波器104に入力される。
【0004】
分波器104は、前述のようにダウンサンプリングされた周波数多重信号(IchとQchからなるベースバンド信号)を、時分割多重信号へ変換する処理を行う。この変換を行うとき、結果的にベースバンド信号の示すデータがIchとQchのチャンネル毎に分離される。スイッチ105は、N個の分波器104から出力される各データを一括してスイッチングを行い、当該チャネライザから出力されるときの周波数の順番に並べ替えて出力する。
【0005】
合波器106は、スイッチ105から入力した各データを、予め設定されている周波数となるように変換し、チャンネル毎に周波数多重を行う。内挿フィルタ107は、合波器106から出力された信号をM倍の周波数にアップサンプリングし、IF帯域の信号に変換する。直交変調器108は、内挿フィルタ107によってアップサンプリングされた信号のIchとQchとを多重化する。D/A変換器109は、直交変調器108から出力されたデジタル信号をIF帯域のアナログ信号に変換し、当該チャネライザから出力する。チャネライザから出力されたIF帯域の信号は、変調器や増幅器などの送信手段を介することにより、例えば地上への送信周波数に変換されて送信される。
【0006】
また、上述のチャネライザには、様々な帯域幅を有する各キャリア(チャンネル)信号に対応するために、帯域幅が可変のIFFTフィルタバンクならびにFFTフィルタバンクを備えたものがある(非特許文献1参照)。
この装置は、受信した各キャリアの信号をA/D変換器によってデジタル信号に変換し、各キャリアの伝送速度をダウンサンプラーにて低減させ、IFFTフィルタバンクへ入力している。このIFFTフィルタバンクは、入力した信号をキャリア毎に分波してスイッチへ出力する。このスイッチは、入力した各信号を所定の順番でFFTフィルタバンクへ出力する。FFTフィルタバンクは、スイッチから入力した各信号をキャリア毎に合波し、アップサンプラーに出力する。アップサンプラーは、各キャリアの信号の伝送速度をそれぞれ高めてD/A変換器へ出力する。これらの各キャリア信号は、D/A変換器によってアナログ信号に変換され、その後、通信周波数に変換されて地上の送信先へ送信される。
【0007】
また、通信衛星が受信するビームは、多重化されたアナログ信号によって形成されている。このアナログ信号は、例えばデジタルデータを表すために位相偏移変調を施したものである。この位相偏移変調を用いた多重通信では、予めアナログ信号の所定の各位相に対応させてデジタル値を各々定めておき、通信時のアナログ信号を所望の位相に制御することによって任意のデジタル値を伝送する(非特許文献2参照)。このように複数の位相によって各々のデータ値を示すように定めると、同一周波数において複数の値を多重化して伝送することが可能になり、例えば、前述のIchとQchとを多重化して伝送し、容量の大きなデータの伝送効率を高めている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて本発明の実施例を説明する。
(実施例)
図1は、本発明の実施例による周波数分割多重信号用チャネライザの概略構成を示す説明図である。この図は、例えば通信衛星等に搭載される周波数分割多重信号用のチャネライザ1の構成を示すブロック図であり、受信するビームと同数の、換言すると地上局から送信されたビーム毎に、A/D変換器11、直交検波器12、間引きフィルタ13、分波器14を備えている。ここで例示したチャネライザ1は、N本の受信ビームを処理可能に構成されたものである。
また、チャネライザ1は、各分波器14の出力信号を入力するスイッチ15、チャンネルゲイン調整器16、合波器17、内挿フィルタ18、直交変調器19、D/A変換器20を備えている。
【0017】
A/D変換器11は、例えば、通信衛星に搭載される図示されないビーム受信手段等によってIF帯域の周波数に変換されたアナログ信号を入力し、当該アナログ信号をデジタルデータの信号に変換する機能を備えている。
直交検波器12は、A/D変換器11から出力された信号を実部と虚部に分離する機能を備えている。
間引きフィルタ13は、直交検波器12から出力された信号の伝送速度を低減させ、IF帯域の信号をベースバンド信号に変換する機能を備えている。
分波器14は、間引きフィルタ13から出力されたベースバンド信号の周波数多重化を解除し、各チャンネルの信号(データ)を分離抽出する機能を備えている。
【0018】
スイッチ15は、例えばスイッチマトリクスの構成を有し、各分波器14から出力された信号を入力して、これらの信号を時分割多重信号として出力する機能を備えている。
図2は、
図1のチャンネルゲイン調整器の構成を示す説明図である。チャンネルゲイン調整器16は、スイッチ15から出力される信号を順次入力する乗算器30、および、乗算器30が演算処理に使用するゲインパラメータを格納するゲインパラメータ設定テーブル31を備えている。このチャンネルゲイン調整器16は、チャンネル信号のレベルの増減を行うレベル調整器として、例えば上記の乗算器30、ゲインパラメータ設定テーブル31を備えており、さらに、後述するチャンネルレベル判定器、ゲインパラメータ生成器を備えている。
合波器17は、チャンネルゲイン調整器16から出力された時分割多重信号を、チャンネル毎に周波数分割多重信号へ変換する機能を備えている。
【0019】
内挿フィルタ18は、合波器17によって周波数多重化された信号をアップサンプリングしてIF帯域の信号に変換する機能を備えている。
直交変調器19は、内挿フィルタ18から出力される信号の実部と虚部とを、チャンネル毎に変調する機能を備えている。
D/Aコンバータ20は、内挿フィルタ18の出力信号をIF帯域のアナログ信号へ変換する機能を備えている。
【0020】
次に動作について説明する。
例えば、送信元の地上局から送信されたマルチビームをユーザリンクを介して受信した通信衛星は、当該受信した各ビームの通信周波数を図示されない受信手段等を用いて所定のIF帯域の周波数に低下させる。本実施例のチャネライザ1は、上記のIF帯域の周波数に変換された各ビームの信号を入力し、当該ビームに含まれる各信号を分波抽出し、当該通信システムが指定する所定の規範により信号の再配列を行い、各信号のレベルを調整したうえで合波し生成した信号をフィーダリンクの周波数帯に変換して送信先の地上局に送出する。
図1に示したA/D変換器11は、前述のように受信したビーム毎に備えられており、例えばA/D変換器(1)11は、IF帯域に変換されたビーム1のアナログ信号を入力し、同様に、A/D変換器(N)11はビームNのアナログ信号を入力する。ここでは、ビーム1の信号を処理する各部を例示して説明する。
【0021】
A/D変換器(1)11は、入力したビーム1の内容をデジタルデータによって表した信号に変換する。
直交検波器(1)12は、A/D変換器(1)11から出力された信号の直交検波を行い、当該信号の振幅変化と位相変化とを独立して判別できるように、直交変調された2値を実部のIchと虚部のQchに分離する。
間引きフィルタ(1)13は、直交検波器(1)12から出力されたIF帯域の信号のダウンサンプリングを行い、例えば1/Nのサンプリングレート(Nは、上記の受信ビーム数)となるように伝送速度を低減させてベースバンド信号に変換する。
【0022】
分波器(1)14は、間引きフィルタ(1)13から出力されたベースバンド信号を各チャンネルに分離する。換言すると、周波数分割多重が施されているビーム1をチャンネル毎に分離する。
各分波器14は、例えばフーリエ変換を使用して周波数分割多重信号を時分割多重信号に変換する。上記の周波数多重化された信号は、複数のチャンネルを多重化したものであり、上記の変換により任意の時間単位で各チャンネルを時分割多重化した信号が生成される。即ち、分波器(1)14〜分波器(N)14によって、ビームに含まれる各チャンネルが分離され、時分割多重化された各チャンネルを表す信号がスイッチ15へ出力される。
【0023】
スイッチ15は、分波器(1)14〜分波器(N)14から夫々出力される各チャンネルの信号を入力し、複数のチャンネルの信号を一時的に格納する機能を有している。
スイッチ15は、各分波器14から入力した信号を自ら蓄えておき、ユーザリンクの送信先へ滞りなく送信することができる順番に並べ替えて出力する。具体的には、例えば伝送速度やデータサイズなども勘案し、後段にて合波した段階でフィーダリンクの周波数利用効率が高くなるよう再配置する条件等に則して、上記の蓄えている各信号を順に出力する。このように各チャンネルの信号を出力することにより、時分割多重化された信号がチャンネルゲイン調整器16へ入力される。
このスイッチ15は、外部からの制御信号によって上記の優先条件等が設定される。即ち、チャネライザ1が通信衛星に搭載される場合には、当該通信衛星の通信手段を介して例えばフィーダリンクの地上局から取得した制御信号によって、送信先の地上局へ送信するチャンネルの順番が設定される。
【0024】
図3は、
図1のチャンネルゲイン調整器の動作を示す説明図である。チャンネルゲイン調整器16は、時分割多重信号としてスイッチ15から出力される各チャンネルの信号を乗算器30へ入力し、当該乗算器30を用いてゲインパラメータ設定テーブル31に格納されているゲインパラメータを上記のチャンネルの信号に乗算し、当該チャンネルの信号レベルを調整する。
【0025】
チャンネルゲイン調整器16は、次のように動作する。
各チャンネルの信号に対応させたゲインパラメータを予めゲインパラメータ設定テーブル31に格納しておく。乗算器30にいずれかのチャンネルの信号が入力されると、当該チャンネルに対応するゲインパラメータがゲインパラメータ設定テーブル31から読み出され、乗算処理が行われる。
具体的には、チャンネルゲイン調整器16に、例えばチャンネル1(以下、CH1と記載する)からチャンネルn(以下、CHnと記載する)の信号・データが順次入力される。このCH1からCHnの各データは、スイッチ15から時分割多重化され、連なって出力されるものである。乗算器30には、所定の間隔でCH1からCHnのデータが順次入力され、ゲインパラメータ設定テーブル31から、CH1からCHnにそれぞれ対応するゲインパラメータが適宜読み出される。
【0026】
乗算器30は、スイッチ15から入力した各CHのデータと同期させて、当該入力したCHに対応するゲインパラメータを入力し、このCHのデータとゲインパラメータとの乗算処理を行う。同様にCH2からCHnまでの各データを順次入力し、また、ゲインパラメータ設定テーブル31から読み出したCH2〜CHnに対応するゲインパラメータを順に入力して、各CHのデータとゲインパラメータとの乗算処理を行う。この乗算処理によって、各CHのデータが示す信号レベルが同様なものになる。即ち、乗算器30へ入力される各CHのデータが示す信号レベルの差異に比べて、乗算器30から出力される各CHのデータ示す信号レベルの差異は小さいものになる。
図3はN個のチャンネルのデータ処理の概念を示しており、並列的にN個同時に処理する場合と、N個の処理を高速で順次処理する場合とがある。
【0027】
図4は、チャンネルゲイン調整器のゲインパラメータを求める機能を示す説明図である。チャンネルゲイン調整器16は、任意のチャンネル信号を乗算器30へ入力する前に、当該チャンネル信号に対応させたゲインパラメータを求めている。具体的には、チャンネルゲイン調整器16は、例えばCH1〜CHnに各々対応させてn個のチャンネルレベル判定器32およびチャンネルゲインパラメータ生成器33を備え、チャンネル毎にゲインパラメータを生成・設定する。
【0028】
例えば、チャンネルレベル判定器(CH1)32は、スイッチ15から順次出力されるCH1のデータを入力し、このデータが示す信号レベルを予め設定された基準レベルと比較する。この比較結果を用いてCH1の信号レベルの調整量、即ちレベル増減の度合を示すCH1レベル信号を生成し、チャンネルゲインパラメータ生成器(CH1)33に出力する。
図4に示したようにチャンネルレベル判定器(CH1)32は、スイッチ15から順次出力される同一チャンネルのIchとQchとを入力し、ここで入力したIchの値をP、Qchの値をQとしたとき、(P
2+Q
2)
1/2の演算(a)によりCH1の信号レベルを求め、この信号レベルと基準レベルとを比較する。
【0029】
この基準レベルは、チャンネルレベル判定器(CH1)32自身が記憶保持しているものである。また、同様にチャンネルレベル判定器(CH2)32〜チャンネルレベル判定器(CHn)32は、各々基準レベルを記憶保持している。上記の基準レベルは、各チャンネルレベル判定器32に予め記憶設定されている。また、例えば、チャネライザ1が通信衛星に搭載される場合には、上記の基準レベルを地上局からフィーダリンクを介して設定するようにしてもよい。なお、基準レベルは、各チャンネル共通の同一値を有するものであっても、各チャンネル信号の特性等に応じて設定された、各チャンネルにおいて異なる値を有するものであってもよい。
【0030】
比較の結果、演算(a)によって求めた信号レベルと基準レベルとの差異がない、もしくはないとみなせる場合には、ゲインパラメータを予め原点として設定した値とし、この値を示すCH1レベル信号を生成する。この場合のゲインパラメータは、チャンネルの信号レベルの増減処理を実行しないことを示すものである。
また、比較の結果、演算(a)によって求めた信号レベルが基準レベルよりも大きい場合には、ゲインパラメータを上記の原点とした設定値から所定の設定幅分を減じたものに変更し、この値を示すCH1レベル信号を生成する。この場合のゲインパラメータは、チャンネルの信号レベルを所定量小さくすることを示すものである。
また、比較の結果、演算(a)によって求めた信号レベルが基準レベルよりも小さい場合には、ゲインパラメータを上記の原点とした設定値に所定の設定幅分を加えたものに変更し、この値を示すCH1レベル信号を生成する。この場合のゲインパラメータは、チャンネルの信号レベルを所定量大きくすることを示すものである。
【0031】
上記の基準レベルは、予めチャンネルごとに設定されたレベルである。詳しくは、
図1に示したD/A変換器20がデジタルデータを変換してアナログ信号を生成したとき、このアナログ信号がD/A変換器20のダイナミックレンジの範囲内に入るレベルである。また、この基準レベルは、出力ビームに含まれる信号の数や特性(性質)に基づいて統計的に予測・設定した値である。
【0032】
チャンネルゲインパラメータ生成器(CH1)33は、チャンネルレベル判定器(CH1)32から入力したCH1レベル信号の内容を用いてCH1ゲインパラメータを生成し、このパラメータを表すデータをゲインパラメータ設定テーブル31に書き込む(設定する)。
ここで生成されるゲインパラメータは、例えば信号レベルの増減量を示す複数のビットから成るビット信号と、スイッチ15から出力されるCH1の信号位置を示す識別信号などを多重化したものである。また、ゲインパラメータは、各チャンネルの信号レベルを予め設定(規定)されているレベルとなるように調整する値を有している。
【0033】
ゲインパラメータ設定テーブル31に格納されたゲインパラメータは、前述のように乗算器(1)30へ入力され、CH1の信号レベル調整に使用される。
上述の説明と同様に、CH2〜CHnの各信号レベルをチャンネルレベル判定器(2)32〜チャンネルレベル判定器(n)32によって判定し、CH2レベル信号〜CHnレベル信号をそれぞれ生成する。また、これらの信号を用いてチャンネルゲインパラメータ生成器(2)33〜チャンネルゲインパラメータ生成器(n)33が、それぞれのチャンネルのゲインパラメータを生成し、これらのゲインパラメータをゲインパラメータ設定テーブル31に書き込む。
なお、上記のゲインパラメータは、当該ゲインパラメータと対応するチャンネル信号が乗算器30に入力される前に生成され、ゲインパラメータ設定テーブル31に格納される。
【0034】
例えばチャネライザ1が通信衛星に搭載される場合には、前述のゲインパラメータは通信衛星に搭載されたゲインパラメータ生成器33によって生成されるが、地上局側において、同様なゲインパラメータを生成するように構成することも可能である。
前述のように通信衛星が受信した周波数分割多重信号は時分割多重信号に変換されている。この時分割多重信号における各チャンネルの信号の時間的な位置、即ち各処理が行われるタイミングは、地上局においても認識することができる。即ち、通信衛星側の処理動作に応じて、地上局側で例えばゲインパラメータを生成し、当該通信衛星に送信して各チャンネルの信号レベルを調整することも可能である。
【0035】
通信衛星にチャネライザ1等を搭載したときには、当該通信衛星がユーザリンクを介して受信した周波数分割多重信号、即ちチャネライザ1のA/D変換器11へ入力する周波数分割多重信号を、通信衛星側に備えた送信手段が分波する。次に、この送信手段は、ユーザリンクより取得した周波数分割多重信号から分波した周波数分割多重信号(A)を、フィーダリンク帯域内の周波数に変換して、当該フィーダリンクを介して地上局に送信する。
また、上記の地上局側には、通信衛星において分波された周波数分割多重信号(A)を、フィーダリンクを介して受信する受信手段や、この周波数分割多重信号(A)を時分割多重信号(B)に変換する時分割多重信号生成手段を備えておく。この時分割多重信号生成手段は、前述のA/D変換器11、直交検波器12、間引きフィルタ13、分波器14、スイッチ15等と同様なものを含む構成をしており、また同様な機能を有している。
【0036】
また、上記の地上局側には、前述のチャンネルレベル判定器32ならびにチャンネルゲインパラメータ生成器33とそれぞれ同様な、チャンネルレベル判定手段ならびにチャンネルゲインパラメータ生成手段がチャネライザ1の構成部分として備えられる。
チャンネルレベル判定手段は、前述の時分割多重信号生成手段から出力される時分割多重信号をなす各チャンネルの信号レベルを、チャンネルレベル判定器32と同様に基準レベルと比較する。
ゲインパラメータ生成手段は、チャンネルレベル判定手段の比較結果に応じて、チャンネルゲインパラメータ生成器33と同様にゲインパラメータを生成する。
【0037】
上記の地上局側において、ゲインパラメータ生成手段が生成したゲインパラメータは、当該地上局の送信手段がフィーダリンクを介して通信衛星に送信し、当該通信衛星の受信手段を介してチャンネルゲイン調整器16へ入力させる。なお、上記のゲインパラメータを送信する地上局の送信手段や、前述の分波された周波数分割多重信号(A)を受信する地上局の受信手段は、地上局がフィーダリンクに用いる通信手段である。また、前述の周波数分割多重信号(A)を送信する通信衛星の送信手段や、ゲインパラメータを受信する通信衛星の受信手段は、通信衛星がフィーダリンクに用いる通信手段である。
【0038】
ここで用いられるチャンネルゲイン調整器16は、上記の地上局に備えられたチャンネルゲインパラメータ生成手段が生成したゲインパラメータを用いてスイッチ15から出力される時分割多重信号をなす各チャンネルの信号レベルの増減を行うレベル調整器を備えている。このレベル調整器は、前述の乗算器30ならびにゲインパラメータ設定テーブル31によって構成されている。なお、ここで通信衛星に搭載されるチャンネルゲイン調整器16には、チャンネルレベル判定器32ならびにチャンネルゲインパラメータ生成器33が含まれていない。
【0039】
チャンネルゲイン調整器16によって増減され、所定の信号レベルとなった各チャンネル信号は、合波器16へ入力されてチャンネル毎に所定の周波数となるように周波数分割多重化が行われる。この合波器16は、例えば逆フーリエ変換を使用してチャンネルゲイン調整器16から出力される時分割多重信号を周波数多重信号に変換する。
内挿フィルタ18は、合波器17から出力された信号をM倍の周波数にアップサンプリングし、ベースバンド帯域からIF帯域の信号に変換する。
【0040】
直交変調器19は、内挿フィルタ18から出力された信号のIchとQchとを多重化する直交変調を行う。
D/A変換器20は、直交変調器19から出力されたデジタルデータ形式のIF帯域の信号をアナログ信号に変換してチャネライザ1の外部へ出力する。
この後、上記のIF帯域の信号は、図示されない送信手段によって、例えば衛星通信用の周波数帯域の信号に変換されてユーザリンクを介して送信先(地上局など)へ送信される。
【0041】
以上のように本実施例の周波数分割多重信号用チャネライザによれば、受信した各チャンネルの信号レベルを所定の基準レベルと比較し、当該比較結果に応じて各チャンネルの信号レベルの増減を行うようにしたので、各チャンネルの信号について大きなダイナミックレンジを確保することができ、通信品質を安定させることができる。
また、C/N環境が良好ではない場合であっても通信ラインを確保することが可能になり、衛星通信においては、地上局の送信電力が弱い場合や、通信衛星と地上局との間、もしくはその近傍に通信障害を発生させる因子が存在する場合であっても、通信状態を維持することが可能になる。
また、各チャンネルの信号レベルを調整するゲインパラメータを地上局側で生成するように構成することにより、通信衛星において受信した各チャンネルの受信レベルを地上局において適当に調整することが可能になる。また、通信衛星に搭載する装置等を削減することができ、搭載重量や搭載スペースを抑制することができる。