(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
(1)第1の実施の形態
(1−1)立体ディスプレイの構成
図1は本発明の第1の実施の形態に係る立体ディスプレイの模式的断面図である。
図2は
図1の立体ディスプレイの模式的平面図である。
図3は
図1および
図2の立体ディスプレイに用いられる光線制御子の斜視図である。
【0025】
図1に示すように、立体ディスプレイは、光線制御子1、複数のプロジェクタ2、制御装置3および記憶装置4により構成される。
【0026】
図1および
図2の立体ディスプレイは、テーブル5に設けられる。テーブル5は、天板51および複数の脚52からなる。天板51は円形孔部を有する。
【0027】
図3に示すように、光線制御子1は、軸Cを中心として回転対称な円錐形状を有する。光線制御子1の底部は開口している。光線制御子1は、入射した光線が稜線方向Tおよび軸Cを中心とする円周方向Rにおいて微小に拡散して透過するように形成されている。
【0028】
図1に示すように、光線制御子1は、底部開口が上方を向くように天板51の円形孔部に嵌め込まれる。テーブル5の周囲にいる観察者10は、テーブル5の天板51のよりも高い位置から光線制御子1の内周面を観察することができる。
【0029】
テーブル5の下方には、光線制御子1の軸Cを中心として回転対称な仮想湾曲面DPに沿うように複数のプロジェクタ2が面状に密に配置されている。例えば、複数のプロジェクタ2が軸Cを中心とする円環状の列を仮想湾曲面DPに沿うように複数段に形成する。本例では、仮想湾曲面DPは放物線形状の断面を有する。
【0030】
複数のプロジェクタ2は、光線制御子1の下方から光線制御子1の外周面に光を照射するように設けられる。なお、テーブル5の円形孔部に透明の円形板が嵌め込まれてもよい。また、その円形板が光線を微小に拡散させる特性を有してもよく、円形板の他に光線を微小に拡散させる特性を有するフィルムが配置されてもよい。
【0031】
プロジェクタ2は、2次元的な画像を光線制御子1の外周面に投影するように、複数の光線からなる光線群を出射する。プロジェクタ2としては、例えば、走査型プロジェクタが用いられる。走査型プロジェクタは、レーザ光からなる光線を出射するとともにその光線を水平面内および垂直面内で偏向させることにより、擬似的に複数の光線からなる光線群を出射する。なお、プロジェクタ2として、LCD(液晶ディスプレイ)、DMD(デジタルミラーデバイス)またはLCOS(Liquid Crystal on Silicon)等の空間光変調器および投影レンズを備えたプロジェクタが用いられてもよい。
【0032】
複数のプロジェクタ2は、軸C上の共通の位置(以下、基準位置と呼ぶ)PSにそれぞれ向けられることが好ましい。基準位置PSは、例えば立体画像300が提示される領域の中心位置である。この場合、複数のプロジェクタ2の光軸がそれぞれ基準位置PSを通過する。プロジェクタ2の光軸とは、光線群の中心となる光線の軸をいう。また、基準位置PSに関して、複数のプロジェクタ2の光軸が等角度間隔であることが好ましい。さらに、基準位置PSと複数のプロジェクタ2との間の距離が均一であることが好ましい。
【0033】
記憶装置4は、例えばハードディスク、メモリカード等からなる。記憶装置4には、立体画像300を提示するための立体形状データが記憶される。制御装置3は、例えばパーソナルコンピュータからなる。制御装置3は、記憶装置4に記憶される立体形状データに基づいて複数のプロジェクタ2を制御する。それにより、光線制御子1の内部および上方に立体画像300が提示される。
【0034】
(1−2)光線制御子の構成および製造方法
図4は、光線制御子1の一部の拡大断面図である。
図4(a)の光線制御子1は、制御子本体11および微小拡散層12を有する。制御子本体11は、入射した光線が拡散することなく透過するように構成される。制御子本体11の外周面を覆うように微小拡散層12が設けられる。微小拡散層12中には、大きさおよび形状が不規則な複数の粒子12aが分散的に配置される。粒子12aは、例えばガラスまたは他の高分子材料等からなる。微小拡散層12は、入射した光線が微小に拡散して透過するように構成される。
【0035】
例えば、樹脂溶液中に複数の粒子12aを混合し、その溶液を制御子本体11の外周面上に塗布して硬化させることにより、微小拡散層12を形成することができる。また、制御子本体11の外周面上に例えば紫外線硬化樹脂からなる接着剤を塗布し、その接着剤に複数の粒子12aを分散的に接着させることにより微小拡散層12を形成することができる。
【0036】
なお、制御子本体11の外周面上に微小拡散層12が設けられる代わりに、制御子本体11の内周面上に微小拡散層12が設けられてもよい。また、制御子本体11の外周面上および内周面上の両方に微小拡散層12が設けられてもよい。また、微小拡散層12を単独で形成することが可能であれば、制御子本体11を設けなくてもよい。
【0037】
図4(a)の光線制御子1の代わりに、
図4(b)の光線制御子1を用いてもよい。
図4(b)の光線制御子1においては、制御子本体11の外周面に不規則的なパターンを有する凹凸13aが形成される。これにより、制御子本体11に入射した光線が微小に拡散して透過する。
【0038】
凹凸13aは、機械加工、レーザ加工またはエッチング等によって形成することができる。例えば、凹凸13aに対応する形状を有する金型を作製し、その金型を制御子本体11の表面に押し当てることにより凹凸13aを形成することができる。また、例えば、ポンチ等によって制御子本体11の表面に不規則的に凹部を形成することにより凹凸13aを形成することもできる。また、インクジェットプリンタにより制御子本体11の表面に光透過性のインクを付着させることにより凹凸13aを形成することもできる。また、凹凸13aの代わりに光透過部と遮光部とを格子状のパターンとして有する制御子本体11を作製し、回折格子のような2値のビットパターンにより類似の光学特性を実現してもよい。
【0039】
なお、制御子本体11の外周面に凹凸13aが設けられる代わりに、制御子本体11の内周面に凹凸13aが設けられてもよい。また、制御子本体11の外周面および内周面の両方に凹凸13aが設けられてもよい。
【0040】
(1−3)プロジェクタ2の動作
図5および
図6はプロジェクタ2の動作を説明するための模式的平面図および模式的断面図である。
図5および
図6にはそれぞれ1つのプロジェクタ2のみが示される。
【0041】
上記のように、各プロジェクタ2は、光線制御子1の外周面に2次元的な画像を投影するように光線群を出射する。この場合、光線群の各光線Lが、投影される画像の各画素に対応する。各光線Lの色(各画素の色)は、提示されるべき立体画像300に応じて設定される。
【0042】
なお、プロジェクタ2として走査型プロジェクタを用いる場合には、光線Lの出射方向ごとに光線Lの色が設定される。これにより、擬似的に上記同様の光線群を形成することができる。
【0043】
図5および
図6に示すように、プロジェクタ2は、光線制御子1の回転方向および稜線方向に拡がる複数の光線Lを光線制御子1に照射する。複数の光線Lは、それぞれ任意の色に設定される。それにより、光線制御子1の複数の位置PNをそれぞれ設定された色の光線Lが透過する。光線制御子1は、円周方向および稜線方向において各光線Lを微小拡散させてほぼ直線状に透過させる。そのため、複数の光線Lのうち、観察者の眼に入射する光線Lはほぼ一本の光線である。したがって、観察者は、各プロジェクタ2から出射される複数の光線Lのうち一本の光線Lのみを視認することができる。実際には、観察者の右眼および左眼の各々に一本の光線Lが入射する。
【0044】
(1−4)立体画像300の提示方法
図7および
図8は立体画像300の提示方法を説明するための模式的平面図および模式的断面図である。
図7および
図8においては、3つのプロジェクタ2A,2B,2Cが示される。プロジェクタ2A,2B,2Cは、仮想湾曲面DPの円周方向において異なる位置にあり(
図7)、かつ仮想湾曲面DPの半径方向において互いに異なる位置にある(
図8)。
【0045】
図7および
図8において、例えば、光線制御子1の上方の位置PRに赤色の画素を提示する場合には、プロジェクタ2Aから位置PRを通る方向に赤色の光線LA0を出射し、プロジェクタ2Bから位置PRを通る方向に赤色の光線LB0を出射し、プロジェクタ2Cから位置PRを通る方向に赤色の光線LC0を出射する。
【0046】
それにより、赤色の光線LA0,LB0,LC0の交点に点光源となる赤色の画素が提示される。この場合、観察者の眼が位置IA0,IB0,IC0にある場合に、位置PRに赤色の画素が見える。位置IA0,IB0,IC0は、軸Cを中心とする円周方向において互いに異なり、かつ上下方向において互いに異なる。
【0047】
同様にして、光線制御子1の上方の位置PGに緑色の画素を提示する場合には、プロジェクタ2Aから位置PGを通る方向に緑色の光線LA1を出射し、プロジェクタ2Bから位置PGを通る方向に緑色の光線LB1を出射し、プロジェクタ2Cから位置PGを通る方向に緑色の光線LC1を出射する。
【0048】
それにより、緑色の光線LA1,LB1,LC1の交点に点光源となる緑色の画素が提示される。この場合、観察者の眼が位置IA1,IB1,IC1にある場合に、位置PGに緑色の画素が見える。位置IA1,IB1,IC1は、軸Cに平行な方向において互いに異なり、かつ軸Cを中心とする円周方向において互いに異なる。
【0049】
このようにして、複数のプロジェクタ2A,2B,2Cの各々から立体画像300の各位置を通る方向に提示すべき色の光線が出射される。
【0050】
プロジェクタ2A,2B,2Cを含む複数のプロジェクタ2が光線制御子1の下方において仮想湾曲面DPに沿うように密に並べられており、それらの複数のプロジェクタ2から出射される光線群によって光線制御子1の内部および上方の空間が十分に密に交点群で満たされていれば、テーブル5(
図1)よりも高いいずれの位置から光線制御子1の内部を観察しても位置PR,PGを通過する適切な光線が眼に入射することになり、人の眼はそこに点光源があるように認識する。実物体の表面にて反射または拡散した照明光を人は物体として認識するので、物体の表面は点光源の集合とみなすことができる。すなわち、物体の表面としたいある位置PR,PGの色を複数のプロジェクタ2A,2B,2Cより飛来する光線によって適切に再現することにより、立体画像300を提示することができる。
【0051】
このようにして、立体画像300を光線制御子1の内部および上方の空間に提示することができる。この場合、観察者は、テーブル5(
図1)よりも高い位置において、同一の立体画像300をそれぞれ異なる方向から視認することができる。
【0052】
制御装置3は、設定した光線群の各光線の色に基づいて複数のプロジェクタ2を制御する。それにより、光線制御子1の上方に立体画像300が提示されるように、各プロジェクタ2から設定された色をそれぞれ有する光線群が出射される。
【0053】
上記のようにして、本実施の形態に係る立体ディスプレイによれば、立体画像300は、どのような方向からでも正しく観察されるように表示される。
【0054】
(1−5)両眼視差の発生原理
ここで、本実施の形態に係る立体ディスプレイにおける両眼視差の発生原理について説明する。
【0055】
図9は本実施の形態に係る立体ディスプレイにおける両眼視差の発生原理を説明するための模式的平面図である。
図9には、4つのプロジェクタ2a,2b,2c,2dが示される。
【0056】
図9において、観察者が光線制御子1の点P31を見た場合には、右眼100Rにプロジェクタ2aから出射された光線Laが入射し、左眼100Lにプロジェクタ2bから出射された光線Lbが入射する。また、観察者が光線制御子1の点P32を見た場合には、右眼100Rにプロジェクタ2cから出射された光線Lcが入射し、左眼100Lにプロジェクタ2dから出射された光線Ldが入射する。
【0057】
ここで、光線Laの色と光線Ldの色とは同じであり、光線Lbの色は光線Laの色と異なり、光線Lcの色は光線Ldの色とは異なるとする。この場合、光線制御子1上の点P31の色は見る方向により異なる。また、光線制御子1上の点P32の色も見る方向により異なる。
【0058】
光線Laにより立体画像300の点Paが作られ、光線Lbにより立体画像300の点Pbが作られ、光線Lcにより立体画像300の点Pcが作られ、光線Ldにより立体画像300の点Pdが作られる。
【0059】
図9の例では、立体画像300の点Paと点Pdとが同じ位置にある。すなわち、光線Laと光線Ldとの交点に立体画像300の点Pa,Pdが作られる。点Pa,Pdは、仮想的な点光源とみなすことができる。この場合、右眼100Rで点Pa,Pdを見る方向と左眼100Lで点Pa,Pdを見る方向とが異なる。すなわち、右眼100Rの視線方向と左眼100Lの視線方向との間に輻輳角がある。これにより、光線群により形成される画像の立体視が可能となる。
【0060】
(1−6)光線の拡散範囲
(1−6−1)
図10は、光線制御子1による光線の拡散について説明するための模式図である。
図10に示すように、光線制御子1に入射した光線Lは、所定の角度範囲θ0で拡散して透過する。以下、拡散の角度範囲θ0を拡散角度θ0と呼ぶ。また、光線制御子1により拡散された光を拡散光と呼ぶ。
【0061】
図11は、拡散光の出射方向と光量との関係を示す図である。
図11において、横軸は、拡散光の出射角度を示し、縦軸は相対光量を示す。拡散光の出射角度とは、光線制御子1に対する光線Lの入射方向と拡散光の出射方向とがなす角度をいう。相対光量とは、光線制御子1に対する光線Lの入射方向と等しい方向に出射される拡散光の光量を1とした場合の相対的な光量の大ききをいう。
【0062】
図11に示すように、出射角度が0度の拡散光(入射方向と同じ方向に出射される拡散光)の相対光量が最も大きい。出射角度が大きくなるほど、拡散光の相対光量が減少する。拡散角度θ0は、例えば、相対光量が2分の1以上となる拡散光の出射角度の範囲である。
【0063】
(1−6−2)
図12および
図13は、拡散角度θ0の設定例について説明するための模式的平面図である。
図12および
図13においては、仮想湾曲面DPの円周方向において互いに隣り合う2つのプロジェクタ2P,2Qのみが示される。
【0064】
図12および
図13の例では、プロジェクタ2P,2Qが基準位置PSに向けられる。プロジェクタ2Pの光軸とプロジェクタ2Qの光軸とは角度θ1をなす。以下、角度θ1を配置角度θ1と呼ぶ。基準位置PSに画素を提示するために、プロジェクタ2Pから光軸に沿った光線L11が出射され、プロジェクタ2Qから光軸に沿った光線L12が出射される。光線L11は、光線制御子1により拡散角度θ0の範囲で拡散されて拡散光L11aとなり、光線L12は、光線制御子1により拡散角度θ0の範囲で拡散されて拡散光L12aとなる。
【0065】
図12の例では、拡散角度θ0が配置角度θ1よりも小さい。この場合、光線制御子1の外方(斜め上方)において、拡散光L11aと拡散光L12aとの間に間隙が形成される。その間隙内の位置PXにおいては、基準位置PSの画素を認識することができない。一方、拡散角度θ0が大きすぎると、多数の拡散光が重なり合う。そのため、観察者が立体画像300の立体形状を適切に認識することが難しくなる。
【0066】
本実施の形態では、複数の光線群により提示される立体画像300に実質的に間隙が形成されずかつ立体画像300の立体形状が認識されるように拡散角度θ0が設定される。ここで、「実質的に間隙が形成されず」とは、立体画像300に観察者10の眼で認識される程度の間隙が形成されないことを意味する。実際には、複数のプロジェクタ2間の間隔、提示されるべき立体画像300の大きさ、提示されるべき立体画像300の位置、および観察者10とプロジェクタ2との距離等の観察条件を考慮して設定される。
【0067】
図13の例では、拡散角度θ0が配置角度θ1の1倍以上でかつ2倍以下に設定される。拡散角度θ0が配置角度θ1の1倍以上であることにより、光線制御子1の外方において、拡散光L11aと拡散光L12aとの間に間隙が形成されない。そのため、拡散光L11aと拡散光L12aとの間に、基準位置PSの画素を認識することができない位置が存在しない。したがって、プロジェクタ2P,2Qと同様の角度間隔で全てのプロジェクタ2が仮想湾曲面DPに沿って配置されることにより、光線制御子1よりも高い任意の位置において、基準位置PSの画素を認識することが可能となる。
【0068】
また、拡散角度θ0が配置角度θ1の例えば2倍以下であることにより、多数の拡散光の重なりを抑制することができる。それにより、明確に立体画像300の立体形状を認識することが可能となる。隣り合う光線の色が異なる場合は、拡散光の重なり部分で色の変化が生じる。しかしながら、隣り合う2つの拡散光の重なりが立体画像300の立体形状に与える影響は小さい。
【0069】
なお、
図12および
図13には、仮想湾曲面DPの円周方向において互いに隣り合う2つのプロジェクタ2P,2Qから出射される光線L11,L12の拡散について示されるが、仮想湾曲面DPの半径方向において隣り合う2つのプロジェクタから出射される光線も
図12および
図13の例と同様に拡散する。そのため、仮想湾曲面DPの半径方向において隣り合う2つのプロジェクタの光軸がなす角度も、上記の配置角度θ1と等しいことが好ましい。
【0070】
また、
図12および
図13の例では、光線L11,L12が基準位置PSで交差するので、光線L11,L12がなす角度(以下、光線角度と呼ぶ)が配置角度θ1と等しいが、光線L11,L12が基準位置PS以外の位置で交差する場合、すなわち、光線L11,L12が基準位置PS以外の位置に画素を提示する場合には、光線角度が配置角度θ1と異なる。しかしながら、光線角度と配置角度θ1との差は微小である。そのため、基準位置PS以外の位置に画素を提示する場合においても、上記のように配置角度θ1に対して拡散角度θ0を設定することにより、同様の効果を得ることができる。
【0071】
(1−6−3)
図14は、拡散角度θ0の他の設定例について説明するための模式的平面図である。
図14においては、
図13の2つのプロジェクタ2P,2Qのみが示される。
【0072】
図14において、隣り合うプロジェクタ2のうち一方のプロジェクタ2Pの光線の出射位置と他方のプロジェクタ2Qの光線の出射位置との間の距離(以下、ピッチと呼ぶ)は、PTである。
【0073】
観察者の眼が位置IPにある場合、観察者は、プロジェクタ2Pからの光線LPにより提示される画素およびプロジェクタ2Qからの光線LQにより提示される画素を認識することができる。光線LPと光線LQとは、角度θ3をなす。光線LPは、光線制御子1により拡散角度θ0の範囲で拡散されて拡散光LPaとなり、光線LQは、光線制御子1により拡散角度θ0の範囲で拡散されて拡散光LQaとなる。
【0074】
本例では、拡散角度θ0が角度θ3とほぼ等しくなるように設定される。この場合、複数の拡散光の間に間隙が形成されず、かつ多数の拡散光の重なりが抑制される。それにより、観察者は、複数の光線により提示される画素とを離散的ではなく連続的に認識することができ、かつ各画素を明確に認識することができる。したがって、より明確に立体画像300の立体形状を認識することが可能となる。
【0075】
(1−6−4)
図15は、拡散角度θ0のさらに他の設定例について説明するための模式図である。
図15(a)および
図15(b)は、複数のプロジェクタ2の正面図である。
図15の横方向は、仮想湾曲面DPの円周方向に相当し、
図15の縦方向は、仮想湾曲面DPの半径方向に相当する。
【0076】
図15(a)の例では、複数のプロジェクタ2がマトリクス状に配置される。この場合、互いに最も近接する4つのプロジェクタ2から出射される4つの光線の間の位置IXにおいては、間隙が形成されやすくなる。例えば、位置IXにおいて、周囲の4つのプロジェクタ2からの拡散光の相対光量(
図11)がそれぞれ4分の1となるように、拡散角度θ0を設定することが考えられる。しかしながら、
図11に示すように、相対光量と出射角度とは比例関係になく、出射角度によって相対光量が急激に変化する場合とゆるやかに変化する場合とが混在する。そのため、特定の位置において、相対光量を4分の1に調整することは容易ではない。そこで、
図15(a)の斜め方向におけるピッチPTaは、横方向および縦方向のピッチPTの√2倍であるので、光線制御子1の拡散角度θ0を角度θ3の√2倍に設定することが考えられる。この場合も、複数の拡散光間に間隙が形成されることを防止することができる。
【0077】
図15(b)の例では、複数のプロジェクタ2が千鳥状に配置される。この場合、隣り合うプロジェクタ2間におけるピッチPTがいずれの方向においても均一となる。そのため、本例では、光線制御子1の拡散角度θ0が角度θ3とほぼ等しく設定された場合でも、複数の光線間に間隙が形成されることが防止される。
【0078】
(1−7)効果
本実施の形態では、複数のプロジェクタ2が面状に配置されるので、3次元的に異なる複数の出射位置から飛来する複数の光線により立体画像300の各画素を形成することができるとともに、テーブル5上に3次元空間に広がる視域を定義することができる。また、複数の光線群により提示される立体画像300に実質的に間隙が形成されずかつ立体画像300の立体形状が認識されるように光線制御子1による光線の拡散角度θ0が設定される。それにより、観察者は、3次元空間に広がる視域から同じ位置に変形しない高品質の立体画像300を視認することができる。その結果、任意の位置から違和感なく視認可能な立体画像300が提示される。
【0079】
また、本実施の形態では、光線制御子1が円錐形状を有するとともに複数のプロジェクタ2が回転対称な仮想湾曲面DPに沿うように設けられ、複数のプロジェクタ2から光線制御子1の外周面に複数の光線群が出射される。これにより、複数のプロジェクタ2から複数の光線群を仮想湾曲面DPの中心軸Cの周囲に集中させることができる。それにより、光線制御子1による光線の拡散角度θ0を小さくした場合でも、複数の光線間に間隙が生じない。したがって、より高品質の立体画像300を提示することが可能になる。
【0080】
(1−8)変形例
(1−8−1)
上記実施の形態では、円錐形状の光線制御子1が用いられるが、光線制御子1の形状はこれに限らず、光線制御子1が平面状または曲面状に形成されてもよい。
図16は、光線制御子1の他の形状について説明するための模式的斜視図である。
図16および後述の
図17においては、テーブル5の図示が省略される。
【0081】
図16の立体ディスプレイは、平面状に形成された光線制御子1を備える。上記実施の形態と同様に、光線制御子1は、入射した光線が微小に拡散して透過するように構成される。仮想湾曲面DPに沿うように配置された複数のプロジェクタ2から光線制御子1の下面に複数の光線群が照射される。それにより、上記実施の形態と同様に、光線制御子1の上方の空間を十分に密に交点群で満たすことができる。したがって、光線制御子1の上方の空間に立体画像300が提示される。
【0082】
この場合、大きな空間に立体画像300を提示することが可能となる。また、光線制御子1の製造が容易になるとともに、立体ディスプレイの薄型化が可能となる。
【0083】
(1−8−2)
上記実施の形態では、複数のプロジェクタ2が仮想湾曲面DPに沿うように配置されるが、複数のプロジェクタ2の配置はこれに限らず、仮想平面または仮想曲面に沿うように複数のプロジェクタ2が配置されてもよい。
図17は、複数のプロジェクタの他の配置例について説明するための模式的斜視図である。
【0084】
図17の例では、複数のプロジェクタ2が光線制御子1の下方において仮想平面DPaに沿うように配置される。複数のプロジェクタ2の光軸は、それぞれ基準位置PSを通ることが好ましい。また、基準位置PSに対して、複数のプロジェクタ2の光軸が等角度間隔であることが好ましい。仮想平面DPaに沿うように配置された複数のプロジェクタ2から光線制御子1の外周面に複数の光線群が照射される。それにより、上記実施の形態と同様に、光線制御子1の内部および上方の空間を十分に密に交点群で満たすことができる。したがって、光線制御子1の内部および上方の空間に立体画像300が提示される。
【0085】
この場合、大きな空間に立体画像300を提示することが可能となる。また、立体ディスプレイの薄型化が可能となる。
【0086】
(1−8−3)
図16の光線制御子1が用いられるとともに、
図17の例のように複数のプロジェクタ2が仮想平面または仮想曲面に沿うように配置されてもよい。この場合、立体ディスプレイのさらなる薄型化が可能となる。
【0087】
(1−8−4)
1または複数のプロジェクタ2を仮想平面DPまたは仮想平面DPaに沿って移動させるための移動機構が設けられてもよい。この場合、仮想平面DPまたは仮想平面DPaに沿うように複数のプロジェクタ2を密に配置しなくても、1または複数のプロジェクタ2を仮想平面DPまたは仮想平面DPaに沿って高速で移動させることにより、上記実施の形態と同様に、仮想平面DP上または仮想平面DPa上の複数の出射位置から複数の光線群を出射することができる。それにより、光線制御子1の内部および上方の空間が十分に密に交点群で満たすことができる。その結果、プロジェクタ2の数を削減しつつ、光線制御子1の内部および上方に立体画像300を提示することができる。
【0088】
(2)第2の実施の形態
(2−1)立体ディスプレイの構成
図18は第2の実施の形態に係る立体ディスプレイの主要部の模式的縦断面図である。
図19は第2の実施の形態に係る立体ディスプレイの主要部の模式的平面図である。
図18においては、
図1のテーブル5の図示が省略される。
図19においては、テーブル5および光線制御子1の図示が省略される。
【0089】
第2の実施の形態に係る立体ディスプレイが第1の実施の形態に係る立体ディスプレイと異なるのは、以下の点である。
【0090】
図18および
図19の立体ディスプレイは、複数のプロジェクタ2の代わりに、走査型プロジェクタ21および複数の反射素子22を備える。
【0091】
図18に示されるように、複数の反射素子22は、仮想湾曲面DPに沿うように軸Cを中心とする複数の円周上に配置されている。走査型プロジェクタ21は、軸C上に配置されている。走査型プロジェクタ21は、光線を出射するとともにその光線を軸Cを中心とする円周方向に移動させるとともに上下方向に揺動させることにより、光線で複数の反射素子22の反射面を円周方向および半径方向に走査することができる。この場合、走査型プロジェクタ21は、仮想湾曲面DPに沿うように配置された複数の反射素子22の反射面に順次光線を照射することができる。それにより、走査型プロジェクタ21は、擬似的に複数の光線からなる光線群を出射する。制御装置3(
図1)は、記憶装置4(
図1)に記憶される立体形状データに基づいて走査型プロジェクタ21および複数の反射素子22を制御する。
【0092】
(2−2)反射素子の構成
図20は1つの反射素子22の構成の一例を示す模式図である。
図20の反射素子22は、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)により作製される。なお、反射素子22としてガルバノミラーまたはポリゴンミラーのように光線の反射方向を変更可能な他の反射素子が用いられてもよい。
【0093】
図20において、互いに直交する2軸をX軸およびY軸と呼ぶ。X軸は、
図18の軸Cを中心とする仮想湾曲面DPの円周方向に沿う。Y軸は、軸Cを中心とする仮想湾曲面DPの半径方向に沿う。反射素子22は、支持枠31、可動枠32および反射部材33により構成される。支持枠31は、仮想湾曲面DPに沿うように配置される。可動枠32は、矢印aで示すように、X軸を中心として回転可能に支持枠31に取り付けられる。反射部材33は、矢印bで示すように、Y軸を中心として回転可能に可動枠32に取り付けられる。反射部材33の一面が反射面34となる。反射面34の一辺の長さは、例えば0.5mm〜1mm程度である。
【0094】
このような構成により、反射面34は、Y軸を中心として揺動可能に設けられるとともに、X軸を中心として揺動可能に設けられる。これにより、反射面34に入射した光線を任意の角度で反射させることが可能となる。その結果、反射面34から前方の任意の方向に光線を出射することができる。
【0095】
上記のように、走査型プロジェクタ21から複数の反射素子22の反射面34上に順次光線が照射される。走査型プロジェクタ21から各反射素子22の反射面34に光線が照射された状態で、反射面34がY軸およびX軸を中心として揺動される。それにより、照射された光線を反射面34で異なる複数の方向に時分割で反射させることができる。
【0096】
この場合、走査型プロジェクタ21は、時分割で光線の色を設定することができる。したがって、反射面34で反射される複数の方向の光線は、それぞれ任意の色に設定される。その結果、反射面34から前方の任意の方向にそれぞれ設定された色の光線が出射される。本実施の形態では、複数の反射素子22の反射面24を複数の出射位置とみなすことができる。
【0097】
これにより、3次元状に配置された複数の反射素子22から複数の光線群を出射することができる。したがって、上記第1の実施の形態と同様に、光線制御子1の内部および上方の空間を十分に密に交点群で満たすことができ、立体画像300を光線制御子1の内部および上方の空間に提示することができる。
【0098】
(2−3)効果
本実施の形態に係る立体ディスプレイにおいては、複数のプロジェクタ2の代わりに複数の反射素子22が仮想湾曲面DPに沿うように配置されるので、より多くの出射位置からより多くの光線群を出射することができる。それにより、立体画像300の各画素をより緻密に形成することができる。その結果、コストを増加させることなく、より高品質の立体画像300を提示することが可能となる。
【0099】
(2−4)変形例
(2−4−1)
上記第2の実施の形態では、1つの走査型プロジェクタ21が用いられるが、複数の走査型プロジェクタ21が用いられてもよい。この場合、複数の走査型プロジェクタ21に対応して、複数の反射素子22が複数の群に区分される。各走査型プロジェクタ21は、対応する群の複数の反射素子22の反射面を円周方向および半径方向に走査することができる。これにより、各反射素子22の反射面に光線が照射される時間を十分に確保することができる。
【0100】
(2−4−2)
光線制御子1が蓄光効果を有してもよい。その場合、各反射素子22に光線が照射される時間を短くすることができる。その結果、反射素子22の数を増加させることが可能となる。
【0101】
(2−4−3)
図16の例と同様に、平板状の光線制御子1が用いられてもよい。また、
図17の例と同様に、複数の反射素子22が仮想平面または仮想曲面に沿うように配置されてもよい。さらに、
図16の光線制御子1が用いられるとともに、複数の反射素子22が仮想平面または仮想曲面に沿うように配置されてもよい。
【0102】
(3)請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0103】
上記第1および第2の実施の形態では、光線制御子1が光線制御子の例であり、拡散角度θ0が所定の角度範囲の例であり、制御部3が制御部の例であり、仮想湾曲面DPが仮想湾曲面の例であり、仮想平面DPaが仮想平面の例であり、基準位置PSが基準位置の例である。また、上記第1の実施の形態では、複数のプロジェクタ2が光線発生部の例であり、各プロジェクタ2の出射位置が出射位置の例である。上記第2の実施の形態では、1または複数の走査型プロジェクタ21および複数の反射素子22が光線発生部の例であり、各反射素子22の反射面34が出射位置の例である。
【0104】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
〈参考形態〉
(1)本参考形態に係る立体ディスプレイは、立体形状データに基づいて立体画像を提示するための立体ディスプレイであって、複数の出射位置を有し、各出射位置から異なる方向の複数の光線からなる光線群を出射するように構成された光線発生部と、光線発生部の複数の出射位置から出射された複数の光線群の各光線を所定の角度範囲で拡散させて透過させる光線制御子と、立体形状データに基づいて、光線制御子を透過した複数の光線群により立体画像が提示されるように光線発生部を制御する制御部とを備え、複数の出射位置は、面状に配置され、所定の角度範囲は、複数の光線群により提示される立体画像に実質的に間隙が形成されずかつ立体画像の立体形状が認識されるように設定されるものである。
その立体ディスプレイにおいては、光線発生部の各出射位置から異なる方向の複数の光線からなる光線群が出射される。出射された複数の光線群の各光線が光線制御子を所定の角度範囲で拡散されつつ透過する。光線制御子を透過した複数の光線群の交点が点光源となる。観察者は、各点光源を立体画像の画素として認識し、点光源の集合を立体画像として認識する。制御部は、立体形状データに基づいて、光線制御子を透過した複数の光線群により立体画像が提示されるように光線発生部を制御する。
この場合、複数の出射位置が面状に配置されるので、3次元的に異なる複数の出射位置から飛来する複数の光線により立体画像の各画素を形成することができるとともに3次元空間に広がる視域を定義することができる。また、複数の光線群により提示される立体画像に実質的に間隙が形成されずかつ立体画像の立体形状が認識されるように光線制御子による光線の拡散の角度範囲が設定される。それにより、観察者は、3次元空間に広がる視域から同じ位置に変形しない高品質の立体画像を視認することができる。その結果、任意の位置から違和感なく視認可能な立体画像が提示される。
(2)光線発生部の複数の出射位置は、回転対称な仮想湾曲面に沿うように設けられてもよい。
この場合、複数の出射位置から複数の光線群を仮想湾曲面の中心軸の周囲に集中させることができる。それにより、光線制御子による各光線の拡散の角度範囲を小さくした場合でも、複数の光線間に間隙が生じない。したがって、より高品質の立体画像を提示することが可能になる。
(3)光線発生部の複数の出射位置は、仮想平面に沿うように設けられてもよい。
この場合、大きな空間に立体画像を提示することが可能となる。また、立体ディスプレイの薄型化が可能となる。
(4)光線制御子は回転対称な外周面を有し、光線発生部は、複数の出射位置から光線制御子の外周面に複数の光線群を出射するように構成されてもよい。
この場合、光線制御子により拡散された複数の光線を光線制御子の中心軸の周囲に集中させることができる。それにより、光線制御子による各光線の拡散の角度範囲を小さくした場合でも、複数の光線間に間隙が生じない。したがって、より高品質の立体画像を提示することが可能になる。
(5)光線制御子は平面または曲面を有し、光線発生部は、複数の出射位置から光線制御子の平面または曲面に複数の光線群を出射するように構成されてもよい。
この場合、大きな空間に立体画像を提示することが可能となる。また、立体ディスプレイの薄型化が可能となる。
(6)光線発生部の複数の出射位置は、立体画像が提示されるべき領域において予め設定された基準位置に関して略等角度間隔で設けられ、所定の角度範囲は、隣り合う出射位置のうち一方の出射位置から基準位置を通るように出射される光線と他方の出射位置から基準位置を通るように出射される光線とがなす角度の2倍以下の範囲であってもよい。
この場合、光線制御子により拡散された複数の光線が互いに重なることが抑制される。それにより、立体画像をより鮮明に認識することが可能となる。