(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
交流を直流にする変換部と該変換部から入力された直流を任意の周波数でON/OFFして出力する逆変換部とを有し単一の加熱コイルへ接続して給電する一又は複数の電力供給装置に取り付けられて用いられ、前記電力供給装置からの出力を監視する出力監視装置であって、
前記変換部から前記逆変換部に出力される直流の電流及び電圧をサンプリング時間毎に測定する測定部と、
前記測定部によって測定した電流及び電圧のサンプリング時間毎の値から周波数毎に電力量を求め周波数毎の電力量に基いて各周波数の平均電力を求める処理部と、
を備える、出力監視装置。
前記測定部は、前記変換部から前記逆変換部に出力される直流の電流及び電圧をサンプリング時間毎に測定する電流電圧測定部と、前記逆変換部がON/OFFする単位時間当たりの回数をカウントする周波数測定部と、を備え、
前記処理部は、前記電流電圧測定部によって測定した電流及び電圧のサンプリング時間毎の値から、前記周波数測定部が求めた周波数毎の電力量を求め、周波数毎の電力量に基いて各周波数の平均電力を求める、請求項1に記載の出力監視装置。
前記逆変換部が高周波及び低周波の各出力電力を、出力周期に対する高周波と低周波の出力時間の比として調整することにより、一台の前記電力供給装置から前記単一の加熱コイルに時分割多重で給電し、
前記処理部が、一台の前記電力供給装置から出力される高周波と低周波の各平均電力を、前記測定部で測定した値に基いて求める、請求項1に記載の出力監視装置。
前記電力供給装置として第1の電力供給装置と第2の電力供給装置とを備え、該第1の電力供給装置における逆変換部が変換部から入力される直流を第1の周波数でON/OFFして出力することにより、かつ前記第2の電力供給装置における逆変換部が変換部から入力される直流を第2の周波数でON/OFFして出力することにより、前記二台の電力供給装置から前記単一の加熱コイルに第1の周波数と第2の周波数とを重畳して給電し、
前記測定部として、前記第1の電力供給装置における変換部から逆変換部に出力される直流の電流及び電圧をサンプリング時間毎に測定する第1の測定部と、前記第2の電力供給装置における変換部から逆変換部に出力される直流の電流及び電圧をサンプリング時間毎に測定する第2の測定部とを備え、
前記処理部が、前記第1の測定部によって測定した電流及び電圧のサンプリング時間毎の値から第1の周波数の電力量を求め、前記第2の測定部によって測定した電流及び電圧のサンプリング時間毎の値から第2の周波数の電力量を求め、周波数毎の電力量に基いて第1の周波数の平均電力及び第2の周波数の平均電力を求める、請求項1に記載の出力監視装置。
前記電力供給装置は、単一の加熱コイルをそれぞれ有する複数の誘導加熱機に切替手段を介して取り付けられることによって、該複数の誘導加熱機から前記切替手段を制御して前記電力供給装置が任意の一台の誘導加熱機に接続自在とし、
前記複数の誘導加熱機の各々に設けられた前記処理部が、前記測定部による測定した値を取得して、求めた各周波数の平均電力と前記電力供給装置に対して行った供給指令との整合性を判断する、請求項2に記載の出力監視装置。
第1の周波数と第2の周波数で一の直流を時間で分けてON/OFFして異なる周波数の電力を出力することにより時分割多重で誘導加熱を行うに際し、一の直流の電流及び電圧をサンプリング時間毎に測定しつつ、
第1の周波数でON/OFFした際に測定した電流及び電圧の積をサンプリング時間毎に加算して誘導加熱時間で割ることにより第1の周波数の平均電力を求め、
第2の周波数でON/OFFした際に測定した電流及び電圧の積をサンプリング時間毎に加算して誘導加熱時間で割ることにより第2の周波数の平均電力を求め、
求めた第1の周波数、第2の周波数の各平均電力に基いて出力される電力を監視する、出力監視方法。
求めた第1の周波数及び第2の周波数の各平均電力の値が時系列によって変化するか否かにより、第1の周波数と第2の周波数との切り替えを指定する信号の異常を監視する、請求項11に記載の出力監視方法。
第1の直流を第1の周波数でON/OFFすることと第2の直流を第2の周波数でON/OFFすることとを交互に繰り返し出力して誘導加熱を行うに際し、第1の直流及び第2の直流に係る電流及び電圧をサンプリング時間毎に測定しつつ、
第1の周波数でON/OFFした際に測定した第1の直流に係る電流及び電圧の積をサンプリング時間毎に加算して誘導加熱時間で割ることにより第1の周波数の平均電力を求め、
第2の周波数でON/OFFした際に測定した第2の直流に係る電流及び電圧の積をサンプリング時間毎に加算して誘導加熱時間で割ることにより第2の周波数の平均電力を求め、
求めた第1の周波数、第2の周波数の各平均電力に基いて、出力される電力を監視する、出力監視方法。
第1の直流を第1の周波数でON/OFFして出力しかつ第2の直流を第2の周波数でON/OFFして出力することにより第1の周波数と第2の周波数とを重畳して誘導加熱を行うに際し、第1の直流及び第2の直流の各電流及び電圧をサンプリング時間毎に測定しつつ、
第1の周波数でON/OFFした際に測定した第1の直流に係る電流及び電圧の積をサンプリング時間毎に加算し誘導加熱時間で割ることにより、第1の周波数の平均電力を求め、
第2の周波数でON/OFFした際に測定した第2の直流に係る電流及び電圧の積をサンプリング時間毎に加算し誘導加熱時間で割ることにより、第2の周波数の平均電力を求め、
求めた第1の周波数の平均電力と求めた第2の平均電力の値に基いて、出力される電力を監視する、出力監視方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る出力監視装置とそれを備える誘導加熱システムについて詳細に説明する。
【0021】
〔誘導加熱システムの全体構成〕
図1は、本発明の実施形態に係る出力監視装置を備える誘導加熱システムの構成図である。本発明の実施形態に係る誘導加熱システム1は、
図1に示すように、複数の誘導加熱機10と、第1の電源21及び第2の電源26とからなる電源系20と、電源系20と各誘導加熱機10との間に介在して接続を切り替える切替手段30と、を備える。切替手段30は、第1の電源21に接続される第1の電源用出力切替器31と、第2の電源26に接続される第2の電源用出力切替器32と、各誘導加熱機10の入力側に接続される高周波用入力切替器33及び低周波用入力切替器34とから構成される。
図1では、複数の誘導加熱機10は三台を示しているが、二台でも、四台以上であっても、或いは一台であってもよい。以下、三台の場合を例にとって各部の構成について説明する。
【0022】
〔誘導加熱機〕
誘導加熱機10として、
図1では第1、第2、第3の誘導加熱機10A,10B,10Cを備えており、誘導加熱機10は、何れも、高周波用電流変成器11と低周波用電流変成器12と加熱コイル13と加熱機制御部14とを備える。
【0023】
高周波用電流変成器11及び低周波用電流変成器12は何れも一次巻線と二次巻線とを備えている。誘導加熱機10毎に高周波用であるか低周波用であるかにより巻数比が異なっている。高周波用電流変成器11,低周波用電流変成器12は何れも鉄心等のコアを有してもよい。高周波用電流変成器11はコアがなくて空芯であってもよい。高周波用電流変成器11がコアを備えるか否かは誘導加熱機10毎に異なってもよい。
【0024】
高周波用電流変成器11及び低周波用電流変成器12の各二次巻線は加熱コイル13に並列接続されている。ここで、加熱コイル13の形状や寸法は、誘導加熱機10毎に誘導加熱されるワークによって選定される。よって、加熱コイル13のインダクタンスは、加熱コイル13毎に異なる。
【0025】
〔電源系〕
電源系20は、第1の電源21と第2の電源26とからなる。
第1の電源21は、出力周期に対する高周波と低周波の出力時間の比を変えて、異なる周波数の各電力を出力する。第1の電源21は、例えば200kHzという高周波と例えば10kHzの低周波を短時間で交互に出力する。第1の電源21は、或る時間(「出力周期」と呼ぶ。)Tの間において高周波と低周波との出力割合を0以上100%以下の間で調整する。
図2は、第1の電源21から出力される波形を模式的に示す図である。横軸は時間であり、縦軸は、低周波占有率DT、出力強度である。
図2に示すように、例えば100m秒という出力周期Tにおいて、時間t
Lでは低周波を出力し、時間t
Hでは高周波を出力する。低周波占有率とは、出力周期において第1の電源21から出力される電圧、電流であって、低周波のみが出力される場合を低周波占有率100%とし、高周波のみが出力される場合を低周波占有率0%としている。出力周期Tはt
Lとt
Hとの和であり、出力周期Tに対して低周波のみが出力される時間t
Lの割合t
L/Tを出力比と呼び、t
L/Tを0から1の範囲で任意に設定することができる。この出力比は低周波のデューティ比である。なお、高周波のデューティ比は1から低周波のデューティ比を引いた値で定義される。よって、出力割合を0%に設定して第1の電源21は高周波のみ出力するようにしてもよいし、出力割合を100%に設定して第1の電源21は低周波のみ出力するようにしてもよい。
【0026】
第2の電源26は、第1の電源21の出力周波数とは異なる周波数の電力を出力する。例えば、3kHz、8.5kHzという低周波の電力を出力する。これにより、第2の電源26のみから誘導加熱機10に給電してもよいし、第1の電源21から高周波を出力し第2の電源から低周波のみ出力することによって、誘導加熱機10における加熱コイルに高周波と低周波との合成した波で給電してもよい。
【0027】
本発明の実施形態にあっては、第1の電源21と第2の電源26とが異なる周波数で誘導加熱機10に給電するため、ワーク表面から異なる深さでかつ異なる温度に加熱することができる。さらに詳しい説明については後述する。
【0028】
〔切替手段〕
切替手段30は、第1の電源21及び第2の電源26の電源系20と各誘導加熱機10との間の接続を切り替えるものであって複数の切替器からなる。切替手段30は、第1の電源21の低周波用出力端子に接続される第1の電源用出力切替器31と、第2の電源26の出力端子に接続される第2の電源用出力切替器32と、各誘導加熱機10における高周波用入力切替器33及び低周波用入力切替器34とを備え、切替制御部35がこれらの各切替器31〜34のON、OFF制御を統括的に行う。
【0029】
各誘導加熱機10において、高周波用入力切替器33が高周波用電流変成器11の一次巻線に接続され、低周波用入力切替器34が低周波用電流変成器12の一次巻線に接続される。切替制御部35は、第1の電源側出力切替器31と、第2の電源側出力切替器32と、各誘導加熱機10における高周波側入力切替器33及び低周波側入力切替器34とを制御する。
【0030】
〔切替手段による電源系から各誘導加熱機への給電の方式〕
従来から知られているように、表皮効果により、低い周波数ではワークの表面から深い領域まで渦電流が流れ、高い周波数ではワークの表面近傍、即ち浅い領域にしか渦電流が流れない。このような効果に基いて焼入れ、焼戻しなどの各種の誘導加熱処理において、周波数の違いにより硬化層の深さを制御することができる。本明細書においては、この効果のことを周波数効果と呼ぶことにする。実際に誘導加熱処理を行う際には、電源として、最適な硬化層の厚みが得られるように適切な周波数を出力するものを選択している。
【0031】
図1に示す誘導加熱システムにおいては、第1の電源21と第2の電源26の二種類の電源を組み合わせた電源系20を備えることによって、第1の電源21のみを用いて時分割方式で給電することも、第1の電源21から出力された高周波と第2の電源26から出力された低周波とを重ね合わせて加熱コイル13に供給する、所謂重畳方式で給電することもできる。時分割方式を用いた場合にあっては、第1の電源21から出力される高周波数f
Hと低周波数f
Lとの出力比を制御している。そのため、高周波数f
H、低周波数f
Lとの間の周波数f(f
L<f<f
H)による誘導加熱の効果(以下、この効果を「周波数効果」と呼ぶことにする。)が得られる。重畳方式を用いた場合にあっては、第1の電源21から出力される高周波と第2の電源26から出力される低周波の周波数の電力比を制御している。そのため、高周波と低周波との間の周波数による誘導加熱効果が得られる。つまり、時分割方式であっても重畳方式であっても単一の電源系20が多周波電源機能を有することになる。
【0032】
切替手段30の中で複数の誘導加熱機10のうち任意の誘導加熱機10における高周波用入力切替器33及び低周波用入力切替器34をONにすることにより、電源系20から特定の誘導加熱機10に給電することができる。よって、単一の電源系20により、それぞれ各誘導加熱機10に対して、加熱条件に応じた給電を行うことができる。
【0033】
本発明の実施形態においては、このように複数の周波数を出力する電源系20を完備しているため、電源系20から誘導加熱機10に高周波と低周波を同時に出力することも又は交互に出力することもできる。よって、電源系20から誘導加熱機10に対して供給される電力のうち低周波成分と高周波成分と任意の割合に選択することができ、誘導加熱による周波数効果が得られる。
【0034】
しかも、
図1に示すように、複数の誘導加熱機10のうち任意の一台又は複数台が、切替制御部35による接続切替により単一の電源系20に接続され、切替制御部35を経由して、例えば周波数選択、出力比の調整、高周波及び低周波の各強度など各種パラメータが設定される。よって、それぞれの誘導加熱機10において最適な周波数効果を有するよう誘導加熱を行うことができる。単一の電源系20としていることにより、電源系20の利用率を向上し、省スペース化、最適周波数による効率的な誘導加熱で省エネルギー効果を有する。
【0035】
ここで、各誘導加熱機10には加熱機制御部14が備えられており、加熱機制御部14は切替制御部35に接続されている。切替制御部35は、第1の電源21の電源制御部21x、第2の電源26の電源制御部26x、第1の電源用出力切替器31、第2の電源出力切替器32並びに各誘導加熱機10に接続されている高周波用入力切替器33及び低周波用入力切替器34に接続されている。よって、第1の電源21及び第2の電源26並びに各誘導加熱機10の加熱機制御部14の信号は、全て切替制御部35に入力される。第1の電源21、第2の電源26、各誘導加熱機10の加熱機制御部14、各誘導加熱機10に接続されている高周波用入力切替器33及び低周波用入力切替器34への指令信号は、全て切替制御部35により出力される。これらのことから、切替制御部35はシステム制御部と呼んでもよい。
【0036】
〔
図1に示す誘導加熱システムにおける電気回路構成〕
次に、
図1に示す誘導加熱システム1において、切替制御部35が第1の電源用出力切替器31をONにし、第2の電源用出力切替器32をOFFにし、第1の誘導加熱機10Aにおける高周波用入力切替器33及び低周波用入力切替器34をONにし、それ以外の誘導加熱機10B,10Cにおける高周波用入力切替器33及び低周波用入力切替器34をOFFにした場合を例にとり、電源系20と加熱コイル13との間の回路構成についてさらに詳細に説明する。なお、第1の誘導加熱機10A以外の或る特定の誘導加熱機10B,10Cにおける高周波用入力切替器33及び低周波用入力切替器34をONにした場合であっても、その回路構成は同様である。ただし、誘導加熱機10毎に、電源系20と誘導加熱機10との間の給電路の距離が異なるので、給電路のインダクタンス等が異なるところ、この事項については説明を簡略化するために給電路の回路定数の違いは触れないことにする。
【0037】
図3は
図1に示す誘導加熱システムにおいて電源系20と加熱コイル13との間の回路図である。ただし、第1の電源用出力切替器31並びに任意の或る誘導加熱機における高周波用入力切替器33及び低周波用入力切替器34がON状態であることを示している。電源系20としての第1の電源21は、高周波用出力端子と低周波用出力端子を備えている。高周波用出力端子には高周波用電流変成器11の一次側が接続されている。低周波用出力端子には低周波用電流変成器12が接続されている。加熱コイル13は、高周波用電流変成器11及び低周波用電流変成器12の各二次側に並列に接続されている。
【0038】
第1の電源21は、商用電源2から供給される商用電力を直流に変換する変換部21aと変換部21aから出力された直流を所定の周波数に変換する逆変換部21bを有する。変換部21a及び逆変換部21bは何れも電源制御部21xとしてのインバータ制御部21cにより制御され、特に、逆変換部21bはインバータ制御部21cからの制御信号によって直流を指定の周波数に変換する。逆変換部21bに対してハイパスフィルタ21dとローパスフィルタ21eとが並列接続されており、高周波用出力端子がハイパスフィルタ21dの出力側に設けられ、低周波用出力端子がローパスフィルタ21eの出力側に設けられている。
【0039】
高周波用電流変成器11では、一次巻線11aと二次巻線11bとによりトランスが構成されている。図示の場合では、二次巻線11bは二本のコイル11d,11eが直列接続されている。コイル11dとコイル11eとの間にはコンデンサ11cが介在している。コンデンサ11cは高周波数に対してはインピーダンスが小さく、低周波数に対してはインピーダンスが大きくなるようにコンデンサ11cの容量を設定することにより、高周波と低周波をそれぞれよいバランスで各電力をコイル13に投入することができる。
【0040】
低周波用電流変成器12では、一次巻線12aと二次巻線12bとによってトランスが構成されている。図示では、一次巻線12aには巻数を調整可能に複数のタップ12cが取り付けられている。鉄心等のコア12dにより一次巻線12aと二次巻線12bとの相互誘導しやすくなるよう、鉄心等のコア12dが設けられている。さらに、二次巻線12bの各両端にはブスバーがそれぞれ接続されており、各ブスバーが加熱コイル13に接続されている。
図3ではブスバーが有するインダクタンス12e,12fとして示している。インダクタンス12e,12fは一種のフィルタを構成しており、高周波用電流変成器11から低周波用電流変成器12に高周波が入力しないようになっている。
【0041】
上述したように、高周波用電流変成器11及び低周波用電流変成器12は、単に一次巻線と二次巻線とによるトランスを有するのみならず、加熱コイル13と電源系20との間でのインピーダンス整合をとるための整合回路を備えている。また、高周波用電流変成器11及び低周波用電流変成器12は、加熱コイル13に並列接続されるため、高周波用電流変成器11の二次側から低周波が流入しても二次巻線11bに入力されないように、また、低周波用電流変成器12の二次側から高周波が流入しても二次巻線12bに入力されないよう、それぞれフィルタ回路を備えている。よって、各電流変成器は、トランスと整合回路とフィルタ回路とを含む調整回路と呼んでもよい。
【0042】
図4は、
図1に示す誘導加熱システムにおいて電源系20と加熱コイル13との間の別の回路図である。ただし、第2の電源用出力切替器32並びに任意の或る誘導加熱機における高周波用入力切替器33及び低周波用入力切替器34がON状態である場合を示している。
【0043】
図4に示す回路は、第2の電源26が第2の電源用出力切替器32を介して低周波用電流変成器12に接続されている点において、
図3に示す回路と異なっている。第2の電源26は、例えば、
図4に示すように、第1の電源21と同様の回路構成を備えているが、電源制御部26xとしてのインバータ制御部26cによる変換部26a,逆変換部26bの制御のうち、逆変換部26bの制御が常に特定の周波数の電力を出力するように構成されている点で異なっている。
【0044】
〔高周波用電流変成器と低周波用電流変成器との配置〕
図1に示すシステム構成において、各誘導加熱機10は高周波用電流変成器11と低周波用電流変成器12とを備えている。前述したように、高周波用電流変成器11はコアを有しないのに対し、低周波用電流変成器12はコアを有する。高周波用電流変成器11がコアを備えない理由は、高周波は低周波よりも変成器の一次側に加わる電圧が高いことにより、その高い電圧に耐えうるコア入りのトランスを容易に作製することが難しいからである。
【0045】
通常、コアは鉄心等で構成されるため、低周波用電流変成器12が高周波用電流変成器11と比べて重い。そのため、高周波用電流変成器11と低周波用電流変成器12とを上下に配置する場合には、コアを有する低周波用電流変成器12を下側に配置し、その上に高周波用電流変成器11を配置する(
図6参照)。これにより、高周波用電流変成器11と低周波用電流変成器12とを横に並べて配置する場合と比べ、誘導加熱機10の平面視での寸法を小さくすることができる。特に、
図1に示すように、複数の誘導加熱機10を単一の電源系20により給電する場合、出来るだけ、電源系20と誘導加熱機10との距離が短いことが好ましい。このようにすれば、電源系20と誘導加熱機10との接続配線、例えばブスバーが短いことにより、接続配線によるインダクタンス成分の影響を考慮する必要が少ない。また、電源系20から誘導加熱機10までで電圧降下を抑えられる。
【0046】
〔低周波用電流変成器の交換必要性その1〕
本発明の実施形態に係る誘導加熱システム1においては、ワークの加熱領域の形状、寸法に応じた加熱コイル13を設計して当該加熱コイル13を誘導加熱機10に設置し、ワークの加熱条件に応じて周波数を組み合わせるか否か、周波数の大きさ等を選定する。しかも、種類の異なるワークを誘導加熱するために、各誘導加熱機10にワーク毎に加熱条件に応じて設計した加熱コイル13を取り付け、単一の電源系20により誘導加熱機10毎に設定される加熱条件に応じて電源系20から電力を供給する。そのため、加熱コイル13は誘導加熱機10毎に異なっている。
【0047】
前述したように、高周波用電流変成器11が一次巻線11aと二次巻線11bとを備えていても鉄心等のコアを備えていない場合にあっては、高周波用電流変成器11の出力端子側に接続される加熱コイル13のインピーダンスの変化が、電源系20側に伝達され難い。よって、加熱コイル13が高いインピーダンスを有する場合、電源系20側から見た負荷側のインピーダンスの変化が大きくならない。
【0048】
しかしながら、低周波用電流変成器12は一次巻線12aと二次巻線12bとを備え、一次巻線12aと二次巻線12bとの間の結合をよくするために鉄心等のコア12dを備えている。そのため、低周波用電流変成器12の出力端子側に接続されている加熱コイル13を交換すると、加熱コイル13のインピーダンスの変化が電源系20側に伝達され易い。よって、加熱コイル13が高いインピーダンスを有する場合、電源系20側から見た負荷側のインピーダンスが高くなり、インピーダンス整合をとり難くなる。
【0049】
そのため、加熱コイル13を取り替えた場合には、一次巻線12aと二次巻線12bとの巻数比の異なる低周波用電流変成器12を交換しなければならない場合がある。この点、低周波用電流変成器12において、
図3に示すように、一次巻線12aに多数のタップを設けることで、巻数比の調整範囲を大きくすることが考えられる。しかしながら、一次巻線12aに多数のタップを設けた場合、例えば巻数に応じて4Tから8Tまでにそれぞれタップを設けたトランスでは、4Tのタップで整合がとれるワークを誘導加熱すると、4Tにかかる電圧の2倍の電圧が8Tのタップに発生してしまう。一次巻線12aにかかる電圧は整合条件により例えば最大4000Vと非常に高い電圧になるため、この電圧が4Tのタップにかかると8Tのタップには8000Vの電圧が生じる。また、第1の電源21の出力も最大で600kWと非常に大きいことから、スパーク等の絶縁破壊が生じる可能性が高くなる。よって、低周波用電流変成器12の一次巻線に切替用のタップを多く設けることは実用的ではない。
【0050】
〔低周波用電流変成器の交換必要性その2〕
電源系20から時分割方式で交互に高周波と低周波とを加熱コイル13に供給する場合にあっては、低周波の方が高周波と比べてインピーダンス整合をとり難い場合がある。
図5は、
図3に示す第1の電源21から出力制御する信号波形を模式的に示す図である。横軸は時間であり、縦軸は信号強度である。
図5において、(a)は第1の電源21からの出力ON/OFFの波形、(b)は低周波占有率の波形、(c)は第1の電源21における直流電圧Vdcの波形、(d)は第1の電源21における直流電流Idcの波形である。
【0051】
第1の電源21からの出力をONにして低周波と高周波とを交互に出力する場合、低周波の出力状態から高周波の出力状態に遷移すると、直流電流Idcが増加し始める。逆に高周波の出力状態から低周波の出力状態に遷移すると、直流電流Idcが低下し始める。電源側20から見た負荷のインピーダンスに関して、例えば図示のように高周波のインピーダンスが低周波のインピーダンスよりも小さい場合、即ち、高周波と低周波とで大きく異なっている場合には、高周波と低周波とを切り替えるたびに、図のようにIdcが増減するので、高周波と低周波の電源側から見たインピーダンスを同程度に調整することが望ましい。この調整のため、低周波用電流変成器を交換する必要がある。
【0052】
〔誘導加熱機の各部の配置構成〕
そこで、本発明の実施形態にあっては、低周波用電流変成器を交換する機構(以下、交換機構と呼ぶ。)を例えば後付けで備えることができる。交換機構を説明する前提として、誘導加熱機10における高周波用電流変成器11、低周波用電流変成器12、加熱コイル13、それらを電気的に接続する給電路(以下、「送電用ブスバー」又は単に「ブスバー」と呼ぶ。)の配置構成等について説明する。
【0053】
〔誘導加熱機全体の構成〕
図6は誘導加熱機の配置構成を示す概略側面図である。誘導加熱機10では、
図6に示すように、架台80に低周波用電流変成器12及び高周波用電流変成器11が載置されて支持される。低周波用電流変成器12と高周波用電流変成器11とは、一次側ブスバー81,83を介してそれぞれ
図6には示さない切替器と接続され、二次側ブスバー82を介して加熱コイル13に対して並列に接続されている。以下では、ワークを加熱して急冷する焼入機を想定して説明する。
【0054】
図6では、架台80に低周波用電流変成器12を交換する機構を元々備えていない場合であって、架台80に配置している低周波用電流変成器12を交換することができるように後付けで各種部材を組み付けて構築した交換機構90を示している。低周波用電流変成器12を後ろに(
図6において向かって左側に)引き出すことができるように別の交換機構として、低周波用電流変成器12の両側面下端部にコロが設けられ、低周波用電流変成器12を後ろにガイドするレールなどの案内部材が架台80に取り付けられている場合には、
図6乃至
図10を参照して後述する交換機構90よりも簡単な交換機構が架台に組み付けられる。
【0055】
〔加熱コイル〕
加熱コイル13は、高周波用電流変成器11及び低周波用電流変成器12に接続された板状の二次側ブスバー82に接続されることで支持されている。誘導加熱機10においては、加熱コイル13としてワークの加熱領域に対応した形状及び寸法を有するものを選択して装着可能となっている。誘導加熱機10には、誘導加熱した後に焼入液を噴射するための焼入液噴射ノズル84が設けられている。
【0056】
〔電流変成器〕
高周波用電流変成器11は、上述のように一次巻線及び二次巻線を有する。高周波用電流変成器11の一次巻線及び二次巻線にはそれぞれ通液路が設けられており、図示しない冷却液系からの冷却液が通液可能となっている。
【0057】
低周波用電流変成器12は、上述のように一次巻線と二次巻線とコアを有する。コアは一次巻線と二次巻線とを結合する。本実施形態においては、一次巻線及び二次巻線の巻き数が異なる低周波用電流変成器12が複数用意されており、その中から加熱コイル13に対応してインピーダンス整合条件を満たすものを選択し、架台80に配設する。低周波用電流変成器12の一次巻線及び二次巻線にも通液路が設けられており、図示しない冷却液系からの冷却液が通液可能となっている。
【0058】
低周波用電流変成器12の後端面には接続部86が設けられており、この接続部86に一次側ブスバー83が取り外し可能に接続される。低周波用電流変成器12の前端部には接続部87が設けられており、この接続部87に二次側ブスバー82が取り外し可能に接続されている。低周波用電流変成器12の一次巻線及び二次巻線の各通液路はカプラを介して冷却液系と接続されており、カプラにより切り離し可能となっている。カプラは、接続を解除して離間させると内部のバルブが流路を閉止する構造を有している。
【0059】
〔架台〕
架台80はアングル鋼材等で中空の立体形状に形成されている。架台80には、上部に高周波用電流変成器11を支持する上部支持部88が設けられ、上部支持部88の下に低周波用電流変成器12を支持する下部支持部89が設けられている。上部支持部88及び下部支持部89の前方は加熱コイル13が配置され。上部支持部88及び下部支持部89の前側面は加熱位置との間を仕切るためのカバー部材91により覆われている。架台80は、このような構成であれば図示した形状に限らない。
【0060】
〔交換機構〕
前述したように、簡易な交換機構が架台80に取り付けられている場合にはその交換機構を使用することで足りる。架台80にそのような交換機構が設けられていない場合、次のような交換機構を配備する。
【0061】
下部支持部89には、
図7に示すように、低周波用電流変成器12を交換するための交換機構90を組み立てて構築する。このような後付けの交換機構90は、架台80に固定して前後方向に延設された前後方向支持部92と、前後方向支持部92上に前後に変位可能に支持されたベースプレート93と、ベースプレート93上の走行面を前後に移動可能な台車94とを備える。元々、交換機構を備えていない架台80において、
図10(a)に示すように架台80に低周波用電流変成器12が配置されている状態で別の低周波用電流変成器に交換する際、作業者は、ベースプレート93を低周波用電流変成器12と前後方向支持部92との間に挿入し、ベースプレート93を前側に変位させる。すると、前側の架台80の前側に取り付けた傾斜部材96にベースプレート93が乗り上げ、ベースプレート93が僅かに上昇する(
図10(b))。後述するように、作業者は、上下動変位手段97によって台車プレート94bの後端を上昇させ、台車プレート94bを水平にして低周波用電流変成器12を架台80から浮かして台車プレート94bによって支持させ(
図10(c))、低周波用電流変成器12を台車94と共に後方にスライドさせる。
【0062】
前後方向支持部92は、例えば架台80を構成する枠材のような部材であってもよく、架台80に固定されたプレートのような部材であってもよい。前後方向支持部92は低周波用電流変成器12を支持するに十分な強度を有してベースプレート93を安定して支持できるものであればよい。ベースプレート93は低周波用電流変成器12を支持可能な強度を備え、
図8及び
図9に示すように、上面に台車94の走行面93aを有する。ベースプレート93の上面の左右両側縁には互いに略平行に前後方向に延びるベース用リブ93cが設けられる。ベース用リブ93cを設けることで、ベースプレート93は強度が確保され薄肉化される。
【0063】
図8及び
図9に示すように、一対の側縁ガイド部80aが、架台80に、ベースプレート93の左右両側縁に沿って前後方向に延びて固設されている。元々、交換機構を備えていない架台では、一対の側縁ガイド部80aによって低周波用電流変成器12が支持されている。ベースプレート93は一対の側縁ガイド部80a間に配置されて前後方向支持部92上に載置される。左右のベース用リブ93cの外側面がそれぞれ側縁ガイド部80aの内側面と対向して摺動可能であるため、側縁ガイド部80aによりベース用リブ93cが案内されてベースプレート93が前後に変位可能となっている。特に限定されるものではないがベースプレート93は水平に配置されるのがよい。
【0064】
ベースプレート93の後端側の左右両側に前方変位手段95が設けられ、この前方変位手段95でベースプレート93と架台80とが連結されると共に、架台80に対しベースプレート93が前後に変位可能となる。前方変位手段95は、ベースプレート93の後端側左右の架台80に固定した固定ブロック95aと、ベースプレート93の後端から左右に突設して固定ブロック95aの後方側に対向して配置されたベース突設部93bと、固定ブロック95aに固定されてベース突設部93bを貫通して配置された押し込みネジ部95bと、を備える。前方変位手段95では、押し込みネジ部95bの螺合部材95cを回転させることで、ベース突設部93bを押圧してベースプレート93を前進させることができる。
【0065】
架台80のうちベースプレート93の前端側に対応する位置には、
図10に示すように、前後方向支持部92上に傾斜部材96を設けて固定する。傾斜部材96は前方が高くなる勾配を有している。傾斜部材96として、下部支持部89の左右全幅に延びるクサビ形状の板を用いる。前方変位手段95によりベースプレート93を前進させると、ベースプレート93の前端側が傾斜部材96に乗り上げ、前進量に応じてベースプレート93の前端側を前後方向支持部92に対して上昇させることができる。
【0066】
図7及び
図8に示すように、上下変位手段97がベースプレート93の後端側に設けられており、これによりベースプレート93の後端側が架台80に対して上下に変位される。上下変位手段97は例えばベースプレート93の後端側に螺合された複数のネジ部材からなる。各ネジ部材をねじ込むことでベースプレート93を架台80の前後方向支持部92から上昇させることができる。
【0067】
台車94は、
図7乃至
図9に示すように、板状の台車プレート94bと、台車プレート94bの下面の左右縁側にそれぞれ前後方向に一列に配列して転動自在な多数のコロ98と、台車プレート94bの後端側に上面から突出して固定されたハンドル94aとを備えている。台車プレート94bの下面には、左右のコロ98の列に沿って前後方向に延びる一対の台車リブ94cが設けられており、台車プレート94bの強度を確保して台車プレート94bを薄肉化している。台車94の各側のコロ98は、少なくとも3個以上、好ましくはより多くのコロ98が互いに平行に配設されている。多くのコロ98が配設されることで、低周波用電流変成器12の重量を各コロ98に分散して負荷することができる。台車94は各部材がボルトやネジで固定されており、溶接されていない。これにより台車94の歪みが防止され狭い空間で安定して動作できる。
【0068】
台車プレート94bは平板状に形成され、台車プレート94bの左右の前端側と後端側とにはそれぞれ左右のベース用リブ93cの内側面に当接して転動するカムフォロア94dが配設されている。多数のコロ98がベースプレート93の走行面93aを転動すると共に、カムフォロア94dがベース用リブ93cの内側面に当接して転動する。これにより、台車94がベースプレート93上でベース用リブ93cに沿って前後に移動可能となっている。
【0069】
台車プレート94bの上面には、
図8に示すように、低周波用電流変成器12の前端縁を係止する治具99と後端縁を係止する治具99とが取り付けられるとよい。治具99は、台車プレート94b上に載置される低周波用電流変成器12を所定位置に位置決めするもので、それぞれ棒状に形成されて台車94の幅方向に延びるように固定される。治具99の側面には、低周波用電流変成器12を載置する際に低周波用電流変成器12の前端縁又は後端縁を案内するための案内面99aが設けられる。
【0070】
台車プレート94bには、複数の位置に治具99の各固定位置がそれぞれ複数設けられる。固定位置を選択して治具99を固定することで、前後方向の長さが異なる複数の低周波用電流変成器12に使用可能である。治具99はそれぞれ治具固定ネジ99bにより台車94の上面に固定される。各治具99の治具固定ネジ99bが各治具99の幅方向の中心に対して一方側に偏心して配置されており、前後を反転させて固定することで、各治具99の案内面99aの位置を2通りに変化させることができる。これにより、同じ治具99を用いて前後方向長さが異なる低周波用電流変成器12を台車94に位置決めして載置できる。
【0071】
低周波用電流変成器12を位置決めして載置した状態で台車94を前進又は後退することで、低周波用電流変成器12を加熱コイル13との接続位置P1に配置可能で、後退させることで交換位置P2に配置可能である。
【0072】
図10(a)(b)に示すように、台車94の前縁と対向する位置の架台80には、台車94と当接する台車ストッパ80bが設けられている。この台車ストッパ80bは突出量を調整することで、台車94との当接位置を調整し精度よく接続位置に配置可能である。
【0073】
下部支持部89の前側に設けられたカバー部材91は、下部支持部89の前方を覆う大きさを有し、接続位置P1に配置された低周波用電流変成器12の前端面が当接して密着できるように配設されている。カバー部材91の中央には低周波用電流変成器12の接続部87が配置される接続開口91aが設けられている。接続開口91aの周囲には無端状に接続開口91aを囲むパッキン91bが配置されている。低周波用電流変成器12が接続位置P1に配置されることで、低周波用電流変成器12の接続部87の周囲がパッキン91bに密着する。パッキン91bにより、加熱位置において焼入液を噴射した際、焼入液が盤内に侵入することを確実に防止できる。パッキン91bの潰し代は台車ストッパ80bの当接位置を調整することで調整される。
【0074】
ここで、
図6に示すように、交換機構が設けられていない架台80に低周波用電流変成器12Aが載置されている状態において、別の低周波用電流変成器12Bと交換する場合を説明する。
【0075】
交換機構が設けられていない架台80においては、
図6に示すように、一次側ブスバー83が低周波用電流変成器12Aの後方側の接続部86に接続され、二次側ブスバー82が低周波用電流変成器12の前方側の接続部87に接続され、加熱コイル13が二次側ブスバー82に接続されている。高周波用電流変成器11の二次巻線と低周波用電流変成器12の二次巻線とが加熱コイル13に対して並列に接続される。一次側ブスバー83、二次側ブスバー82、低周波用電流変成器12の一次巻線及び二次巻線の通液路がカプラにより冷却液系に接続される。このような状況下において、低周波用電流変成器12と一次側ブスバー83とを切り離し、低周波用電流変成器12と二次側ブスバー82とを切り離し、冷却液の経路のカプラを外す。
【0076】
これにより、低周波用電流変成器12Aの交換準備ができる。先ず、
図10(a)に示すように、左右の前後方向支持部92の先端側でカバー部材91寄りに、傾斜部材96を、後ろから前になるに従い高くなるように配置する。このとき、
図10(a)に示すように、低周波用電流変成器12Bは架台80のアングル、具体的には側縁ガイド部80a上端の載置支持部80cのアングルによって支持されている。
【0077】
次に、ベースプレート93を低周波用電流変成器12Aと前後方向支持部92との間に挿入し、ベースプレート93上に台車94を走行させ、
図10(b)に示すように、ストッパ80bが架台80に当接するまで台車94を低周波用電流変成器12Aとベースプレート93の間に挿入する。この状態では、低周波用電流変成器12Aと台車94との間にはまだ隙間がある。
【0078】
次に、前方向変位手段95をベースプレート93の後端側の左右両側に配置し、前方向変位手段95をベースプレート93と架台80とに連結する。前方向変位手段95の螺合部材95cを回転させてベースプレート93を前側に変位させ、傾斜部材96の傾斜によるくさび効果を利用して前方向の小さな力で上方向に大きな力を発生させる。これにより、ベースプレート93が前側に変位することにより、前側の架台80の前側に取り付けた傾斜部材96に乗り上げ、ベースプレート93が僅かに上昇する。
【0079】
その後、上下動変位手段97によって台車プレート94bの後端を上昇させ、台車プレート94bを水平にして低周波用電流変成器12Aを架台80から浮かして台車プレート94bによって支持させ(
図10(c)、低周波用電流変成器12を台車94と共に後方にスライドさせる。その際、延長プレート93dが、ベースプレート93の後方側に、ベースプレート93の上面と平滑に連続するように配置されているので、高周波用電流変成器11と上下に重ならない交換位置P2に、低周波用電流変成器12Aと共に台車94を移動して引き出す。その後、交換位置P2に台車94を停止させた状態で、例えば図示しないクレーンにより低周波用電流変成器12を台車94から下ろす。
【0080】
次に、台車プレート94b上に、例えば図示しないクレーンなどを用いて別の低周波用電流変成器12Bを載せ、台車94をベースプレート93上で前進させる。台車プレート94bの前端を台車ストッパ80bに当接させて台車94を停止させる。これにより、前後方向の位置決めがなされ、低周波用電流変成器12を接続位置P1の位置に配置することができる。
【0081】
その後、台車94を固定するために、
図8に示すように固定部材94eによって、固定部材94eを介して台車94をベースプレート93に固定する。
【0082】
ここで、低周波用電流変成器12Aを交換する前の一次側ブスバー83、二次側ブスバー82よりも、若干高い位置に、低周波用電流変成器12Bの後方側の接続部86、低周波用電流変成器12Bの前方側の接続部87が配置される。そのため、一次側ブスバー83、二次側ブスバー82の取付穴を広げるなどして位置調整して、それぞれを接続することになる。
【0083】
以上説明したように、ベースプレート93、傾斜部材96及び前方向変位手段95については組み付けたままとし、これらと台車94により交換機構90を架台80に後付することができる。
【0084】
後付けした後は、低周波用電流変成器12を交換する場合には、固定部材94eをベースプレート93から外してベースプレート93上で台車94を後退させ引き出せるだけでよい。
【0085】
よって、誘導加熱機10を用いてワークの焼入処理を行う場合、ワーク及び焼入領域に対応した加熱コイル13を選択し、選択した加熱コイル13に対応したインピーダンス整合条件を満たす低周波用電流変成器12を選択する。架台80の上部支持部88には予め高周波用電流変成器11が設置されていても、その選択した低周波用電流変成器12を下部支持部89に設置することができる。
【0086】
図6に示すように、低周波用電流変成器12と高周波用電流変成器11とは上下に重ねて配置しているため、配置スペースが小さくできる。しかも低周波用電流変成器12がコアを有しており、高周波用電流変成器11に比べて重量が大きいため、低周波用電流変成器12を高周波用電流変成器11の下に配置することで、誘導加熱機10の重心を低くできて全体を安定して設置できる。
【0087】
誘導加熱機10では、低周波用電流変成器12と高周波用電流変成器11とが並列に加熱コイル13に接続されており、低周波用電流変成器12及び高周波用電流変成器11がそれぞれ切替器を介して電源系20と接続されている。そのため、切替器を適宜切替えることで、様々な加熱効果を実現でき、ワークの加熱領域に応じた適切な加熱を実現できる。
【0088】
特にインピーダンスが異なる複数の加熱コイル13から任意の一つを選択して、二次側ブスバー82に装着することができ、一次巻線及び二次巻線の巻き数が異なる複数の低周波用電流変成器12から加熱コイル13に対応したインピーダンス整合条件を満たすものを選択することができる。低周波用電流変成器12を交換することで、加熱コイル13に対応したインピーダンス整合条件を満たすことができ、ワークに応じた種々の加熱効果を効率よく実現できる。
【0089】
ここで、交換機構90は
図1に示すような誘導加熱システム1における各誘導加熱機10のみに使用されるものではなく、次のような場合においても使用することができる。例えば1台の電流変成器を備えた誘導加熱機10であっても、電流変成器の上に他の部材が配設されているために電流変成器を装置上側から着脱することができないような場合、上述のような交換機構90を設けることで、電流変成器の着脱を容易にできる。電流変成器が故障したような場合に架台80から電流変成器を引き出して修理することもできる。
【0090】
図1に示す誘導加熱システム1では、複数の誘導加熱機10に対して単一の電源系20が給電するので、電源系20から誘導加熱機10まで、具体的には誘導加熱機10に取り付けられている高周波用入力切替器33及び低周波用入力切替器34までの間は、ブスバーを用いて給電される。単一の電源系20が一台の誘導加熱機10毎に対応して設けられているわけではないので、各誘導加熱機10と単一の電源系20の距離を短くすることはできない。そのため、ブスバーを連結して距離を稼ぐ必要がある。一方、本発明の実施形態に係る誘導加熱システム1においては単一の電源系20によって、数千ボルトのオーダーの高電圧でしかも大電力を給電することになる。ブスバーの配設の仕方についてもそれらの点を考慮しなければならない。以下、順に説明する。
【0091】
〔高周波用給電路、低周波用給電路〕
高周波用給電路、低周波用給電路は、整合器、切替器、電流変成器などを収容したケース中のダクトに配設されている。
図11は、高周波用給電路、低周波用給電路をダクトのフレームに配設した状態を示す図であり、(a)は断面図、(b)は平面図である。ダクトフレーム51は、縦フレーム51aと横フレーム51bと奥行きフレーム51cによって断面矩形の枠が奥行き方向に延びているとする。枠中には、一方のブスバー52aと他方のブスバー52bとが間隔をあけて配設されることによって高周波用給電路52が配設され、一方のブスバー53aと他方のブスバー53bとが間隔をあけて配設されることによって低周波用給電路53が配設されている。
【0092】
前述したように、単一の電源系20によって複数の誘導加熱機10に給電を行うため、電源系20から各誘導加熱機10までの距離が長くなる。そのため、ブスバーの対におけるインダクタンスが大きくなる。すると、電源系20と電流変成器11,12及び加熱コイル13とが接続される回路中においてブスバーのインダクタンスの影響が無視できなくなり、共振周波数が低下する。特に、200kHz程度の高周波が給電されると、リアクタンスが大きくなり給電路において電圧降下が大きくなる。
【0093】
そこで、本発明の実施形態にあっては、送電ブスバーのインダクタンスを可及的に小さくなるように、ブスバーの幅を広くし、一方のブスバー52a,53aと他方のブスバー52b,53bとの間隔、つまりギャップを出来るだけ小さくなるように、一方のブスバー52a,53aと他方のブスバー52b,53bとの間隔を狭くする。
【0094】
図11(A)及び(B)に示すように、左右で対の縦フレーム51a,51a間に高周波用送電ブスバー52a,52bの対と低周波用送電ブスバー53a,53bの対とを並べて配設する。その際、平面視で、高周波用送電ブスバー52a,52bの間隔L
Hは低周波用送電ブスバーの間隔L
Lよりも大きくし、例えば、L
H=60〜100mm、L
L=10〜50mmとする。L
H>L
Lとしているのは、高周波の電圧が低周波の電圧より大きいからである。何れの送電ブスバーにおいても上下に耳と呼んでいる取付用フック52c,52d,53c,53dがある。送電ブスバー52a,52b,53a,53bは取付用フック52c,52d,53c,53dに碍子54を介在して横フレーム51bに上下で固定される。一つの送電ブスバー52a,52b,53a,53bには取付用フック52c,52d,53c,53dが長手方向、即ち、配設方向に対して間隔をあけて設けられている。
【0095】
何れの送電ブスバー52a,52b,53a,53bにおいてもギャップL
L,L
Hを大きくすると、高周波用送電ブスバー52bと低周波用送電ブスバー53aとの間隔が狭くなる。しかも、何れの送電ブスバー52a,52b,53a,53bにも数千Vという高い電圧が加わっているため絶縁破壊を起こす可能性がある。そこで、高周波用送電ブスバー52a,52bの対と低周波用送電ブスバー53a,53bの対とが互いに対向する双方のブスバー52b,53a同士が、上述の取付用フック52d,53cを配設方向にずらして設けられている。
【0096】
さらに、何れの送電ブスバー52a,52b,53a,53bにおいても、碍子54を介在して横フレーム51bに固定されるが、横フレーム51bには横フレーム51bに沿ってそれぞれ長穴55が設けられ、その長穴55により、横フレーム51bと碍子54、ひいては送電ブスバー52a,52b,53a,53bの間隔を調整することができる。
【0097】
〔切替器〕
図1に示す誘導加熱システムにおいては、切替器として、第1の電源用出力切替器31、第2の電源用出力切替器32、高周波用入力切替器33、低周波用入力切替器34が設けられている。これら切替器は、略同じような構成を有している。
図12は、
図1に示す誘導加熱システムにおける各切替器の構成を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【0098】
切替器60は、例えばU相、V相の2つの相のうち一方の相における上流側ブスバー取付部61aと下流側ブスバー取付部61bとが対向してベースプレート63に立設されており、他方の相における上流側ブスバー取付部62aと下流側ブスバー取付部62bとが対向してベースプレート63に立設されている。上流側ブスバー取付部61a,62a、下流側ブスバー取付部61b,62bは内部に冷却用流路(図示せず)が形成され、テーブル下面に設けた冷却水導入口64a、冷却水排出口64bに連通している。
【0099】
上流側ブスバー取付部61a,62aと下流側ブスバー取付部61b,62bとの間で絶縁破壊しないように、ベースプレート63において上流側ブスバー取付部61a,62aと下流側ブスバー取付部61b,62bとの間には長穴63a,63bが設けられて沿面距離が長く設定されている。さらに、一方の相の下流側ブスバー取付部61bと他方の相の上流側ブスバー取付部62aとの間で絶縁破壊しないように、ベースプレート63において上流側ブスバー取付部62aと下流側ブスバー取付部61bとの間には長穴63cが設けられ、沿面距離が長く設定されている。
【0100】
上述したように、各相毎に上流側ブスバー取付部61a,62a及び下流側ブスバー取付部61b,62bとが、間隔をあけてベースプレート63に立設されている。これらブスバー取付部61a,61b,62a,62bのうち各端面に接続ブロック65をそれぞれ当接することによって、両ブスバー取付部を電気的に接続して、ON、OFFの切替を行う。このため、接続ブロック65が相毎に設けられている。図示するように、接続ブロック65は、上流側ブスバー取付部61a,62aと下流側ブスバー取付部61b,62bとを電気的に接続する当接部65aと、当接部65aを鉛直軸回りに回動可能に支持する支持部65bと、支持部65bにおいて当接部65aと逆側に延びるロッド65cとで構成されている。ベースプレート63上であって接続ブロック65を挟んで61a,62a及び下流側ブスバー取付部61b,62bと対峙する位置には、支持ブロック66がエアシリンダ67により左右に変位可能に配置されている。各相それぞれの接続ブロック65のロッド65cが一つの支持ブロック66に貫通しており、圧縮バネ68が各ロッド65cに装着されて、接続ブロック65を付勢している。図示するように、接続ブロック65は垂直軸回りに所定の範囲回動する。従って、支持ブロック66がエアシリンダ67により一方側に変位すると、各接続ブロック65はそれに伴って一方側に変位し、上流側ブスバー取付部61a,62a及び下流側ブスバー取付部61b,62bの各端面に圧縮バネ68により確実に圧接される。
【0101】
なお、ベースプレート63上には、各接続ブロック65に冷却水を導入して該接続ブロック65から冷却水を排水するための冷却配管69と、エアシリンダ67に対してエアを注入排出制御するための電磁弁70と、エアシリンダ67の前進端と後進端を確認するためのリミットスイッチ71とが設けられている。
【0102】
ベースプレート63下面には、複数の碍子72が取り付けられ、切替器60それ自体が電気的に絶縁されている。接続ブロック65、上流側ブスバー取付部61a,62a及び下流側ブスバー取付部61b,62bには冷却水によって水冷される。このため、冷却水流量が規定値を超えたかを検知したりエアシリンダやそれに必要となる配管内の異常を検知したりする各種の検知センサが取り付けられている。切替器60は検知センサにより空圧異常、冷却水流量異常を検知すると、切替制御部35に対して空圧異常信号、冷却水流量異常信号を送信する。これにより、切替制御部35は、各誘導加熱機や電源系に対してシステム動作をしないように指令する。
【0103】
〔誘導加熱システムによって複数のワークを順次加熱する方法〕
図1に示す誘導加熱システム1において、各誘導加熱機10でワークを順次加熱する方法について説明しながら、さらに、誘導加熱システムについて詳説する。
【0104】
図13は、
図1に示す誘導加熱システム1によって各誘導加熱機10がワークを誘導加熱するシーケンスを示す図であって、特に第1の誘導加熱機10Aが第1の電源21から時分割方式で給電を受けて熱処理する場合を示している。
ST1−1として、第1の誘導加熱機10Aが切替制御部35に対してOFFからONへの切替要求信号を送信する。
ST1−2として、切替制御部35は、OFFからONへの切替要求信号を受信すると第1の電源用出力切替器31に対しOFFからONへの切替要求信号を送信する。
ST1−3として、第1の電源用出力切替器31は、OFFからONへの切替要求信号を受信するとOFFからONへ切替制御を行う。
ST1−4として、第1の電源用出力切替器31は、OFFからONへの切替制御が完了すると切替制御部35に切替完了信号を送信する。
ST1−5として、切替制御部35は、OFFからONへの切替要求信号を受信すると、第1の誘導加熱機10Aに接続された高周波用入力切替器33及び低周波用入力切替器34に対して、OFFからONへの切替要求信号を送信する。
ST1−6として、第1の誘導加熱機10Aに接続された高周波用入力切替器33及び低周波用入力切替器34は、OFFからONへの切替要求信号を受信すると、OFFからONへ切替制御を行う。
ST1−7として、第1の誘導加熱機10Aに接続された高周波用入力切替器33及び低周波用入力切替器34は、切替制御部35に切替完了信号を送信する。
ST1−8として、切替制御部35が、第1の電源用出力切替器31並びに第1の誘導加熱機10Aに接続された高周波用入力切替器33及び低周波用入力切替器34から、OFFからONへの切替完了信号を受信すると、第1の誘導加熱機10Aに対して切替完了信号を送信する。
ST1−9として、ST1−8において第1の誘導加熱機10Aが切替完了信号を受信したことを契機として、第1の電源21に対して出力開始信号を送信する。
第1の電源21は、ST1−9により出力開始信号を受信すると、出力開始信号と共に受信した出力制御情報に基いて第1の誘導加熱機に給電する。ここでいう出力制御情報としては、第1の電源21に対して通知される出力制御情報であり、その項目として、例えば高周波、低周波の何れも出力するのかそれとも高周波のみ出力するのかの識別情報、高周波と低周波の出力比、各出力強度、周波数設定が可能な場合にあってはその周波数の値、トータルの出力時間などが挙げられる。
ST1−10として、第1の電源21は上記出力制御情報に基づく給電を終了すると、第1の誘導加熱機10Aに対して給電終了信号を送信する。
ST1−11として、第1の誘導加熱機10Aは、給電終了信号を受信すると、切替制御部35に対してONからOFFへの切替要求信号を送信する。
ST1−12として、切替制御部35は、ONからOFFへの切替要求信号を受信すると第1の電源用出力切替器31に対しONからOFFへの切替要求信号を送信する。なお、切替制御部35は、ONからOFFへの切替要求信号を受信した時点において、他の誘導加熱機、例えば第2の誘導加熱機10Bから切替要求信号が入力されていると、第2の誘導加熱機10Bの要求に従って第1の電源用出力切替器31、第2の電源用出力切替器32並びに第2の誘導加熱機10Bの高周波用入力切替器33及び低周波用入力切替器34のうち何れか一又は複数の切替器を切り替える。切替制御部35が他の誘導加熱機からの切替要求信号を受信していなければ、切替器の状態は現状を維持する。
ST1−13として、第1の電源用出力切替器31は、ONからOFFへの切替要求信号を受信するとONからOFFへ切替制御を行う。
ST1−14として、第1の電源用出力切替器31は、ONからOFFへの切替制御が完了すると切替制御部35に対して切替完了信号を送信する。
ST1−15として、切替制御部35は、ONからOFFへの切替要求信号を受信すると、第1の誘導加熱機10Aに接続された高周波用入力切替器33及び低周波用入力切替器34に対して、ONからOFFへの切替要求信号を送信する。
ST1−16として、第1の誘導加熱機10Aに接続された高周波用入力切替器33及び低周波用入力切替器34は、ONからOFFへの切替要求信号を受信すると、ONからOFFへ切替制御を行う。
ST1−17として、第1の誘導加熱機10Aに接続された高周波用入力切替器33及び低周波用入力切替器34は、切替を完了すると切替制御部35に切替完了信号を送信する。
ここで、ST1−2とST1−5とは同時になされてもよいし時系列が前後してもよい。ST1−12とST1−15とは同時になされてもよいし時系列が前後してもよい。
【0105】
図13に示すシーケンスにおいて、切替制御部35は、一旦第1の誘導加熱機10AからONへの切替要求を受けると、ST1−17におけるONからOFFへの切替完了信号を受信するまで他の誘導加熱機からONへの切替要求信号を受けても待ち状態とし、ST1−17によるONからOFFへの切替完了信号を受信して、他の誘導加熱機からの切替要求信号に係る処理を行う。
このようなシーケンスを採用することにより、単一の電源系20であっても複数の誘導加熱機10からの切替要求をバッティングなく処理することができる。
【0106】
図13を参照して説明したシーケンスでは、複数の誘導加熱機を用いて誘導加熱を行う場合を想定しているが、
図1に示すシステムを用いて一台の誘導加熱機だけで熱処理を繰り返してもよい。その場合には、出力切替器を誘導加熱機10Aにのみ接続された状態にしておくことにより、切替器の寿命を延ばすことができる。なお、他の誘導加熱機からの切替要求信号がなくなるたびに切替器をOFFにしてもよい。
【0107】
図13に示すシーケンスは一例であり、例えば次のように変更してもよい。
図13のST1−8及びST1−9の代わりに、切替制御部35が、第1の電源用出力切替器31並びに第1の誘導加熱機10Aに接続された高周波用入力切替器33及び低周波用入力切替器34から、OFFからONへの切替完了信号を受信すると、直接、第1の電源21に対して出力開始信号を送信する。第1の電源21は、切替制御部35から出力開始信号を受信すると、出力開始信号と共に受信した出力制御情報に基いて第1の誘導加熱機10Aに給電する。出力制御情報の項目としては前述と同様である。
図13のST1−10及びST1−11の代わりに、第1の電源21は、上記出力制御情報に基づく給電を終了すると、切替制御部35が第1の電源用出力切替器31をONからOFFになるように切替制御を行い(ST1−12)、第1の誘導加熱機10Aに接続された高周波用入力切替器33及び低周波用入力切替器34に対して、ONからOFFへの切替要求信号を切替制御部35が送信する(ST1−15)。
【0108】
図13では第1の誘導加熱機10Aがイニシアティブをとって、第1の電源21、切替制御部35、第1の電源用出力切替器31、並びに、第1の誘導加熱機に接続された高周波用入力切替器33及び低周波用入力切替器34を制御している。しかしながら、
図1に示す誘導加熱システムのシーケンス制御は
図13に示すシーケンス制御以外でもよい。例えば第1の誘導加熱機10Aから切替制御部35へのONへの切替要求をトリガーとし、その切替要求と共に出力制御情報が切替制御部35に出力され、切替制御部35が第1の電源21、第1の電源用出力切替器31、並びに、第1の誘導加熱機に接続された高周波用入力切替器33及び低周波用入力切替器34を制御してもよい。このように、切替制御部35は、単に各切替器のON/OFFを制御するだけでなく、第1の電源21を制御することから、切替制御部35をシステム制御部と呼んでもよい。
【0109】
図14は、
図1に示す誘導加熱システム1によって各誘導加熱機10がワークを誘導加熱するシーケンスを示すもので、特に第1の誘導加熱機10Aが第1の電源21及び第2の電源26から重畳方式で給電を受けて熱処理する場合を示している。
図14においては、
図13において第1の電源用出力切替器31の代わりに第2の電源用出力切替器32が制御され、ST1−9、ST1−10が次のように変更されればよい。
ST2−9として、ST1−9の代わりとして、ST1−8において第1の誘導加熱機10Aが切替完了信号を受信したことを契機として、第1の電源21及び第2の電源26に対してそれぞれ出力開始信号を送信する。
第1の電源21及び第2の電源26は、ST2−9により出力開始信号を受信すると、出力開始信号と共に受信した出力制御情報に基いて第1の誘導加熱機10Aに給電する。ここでいう出力制御情報とは、第1の電源21に対して通知される出力制御情報の項目としては、例えば高周波のみ出力するという識別情報、出力強度、トータルの出力時間などが挙げられる。第2の電源26に対して通知される出力制御情報の項目としては出力強度、周波数選択可能な場合にあってはその周波数の値、トータルの出力時間などが挙げられる。
ST2−10として、ST1−10の代わりとして、第1の電源21及び第2の電源は上記出力制御情報に基いて給電を終了すると、それぞれ第1の誘導加熱機10Aに対して給電終了信号を送信する。
これにより、ST1−11において、第1の誘導加熱機10Aは、第1の電源21及び第2の電源26から給電終了信号を受信すると、切替制御部35に対してONからOFFへの切替要求信号を送信する。
【0110】
図14に示すシーケンスは一例であり、
図13の場合と同様に、種々変更することができる。
図14のST1−8、ST2−9の代わりに、切替制御部35が、第2の電源用出力切替器32、第1の誘導加熱機10Aに接続された高周波用入力切替器33及び低周波用入力切替器34から、OFFからONへの切替完了信号を受信すると、切替制御部35は第1の電源21及び第2の電源26に対してそれぞれ出力開始信号を送信する。第1の電源21及び第2の電源26は、出力開始信号をそれぞれ受信すると、出力開始信号と共に受信した出力制御情報に基いて第1の誘導加熱機10Aに給電する。出力制御情報の項目としては前述と同様である。
【0111】
図14のST2−10及びST1−11の代わりに、第1の電源21及び第2の電源26が上記出力制御情報に基づく給電を終了すると、それぞれ切替制御部35に対して給電終了信号を送信する。すると、切替制御部35は、第2の電源用出力切替器32、第1の誘導加熱機10Aに接続された高周波用入力切替器33及び低周波用入力切替器34に対してONからOFFへの切替要求信号を送信する(ST1−12,ST1−15)。
【0112】
図14では、第1の誘導加熱機10Aがイニシアティブをとって、第1の電源21、第2の電源26、切替制御部35、第1の電源用出力切替器31、並びに、第1の誘導加熱機に接続された高周波用入力切替器33及び低周波用入力切替器34を制御するようにしている。しかしながら、
図1に示す誘導加熱システムのシーケンス制御は
図14に示すシーケンス制御以外でもよい。例えば第1の誘導加熱機10Aから切替制御部35へのONへの切替要求をトリガーとし、その切替要求と共に出力制御情報が切替制御部35に出力され、切替制御部35が第1の電源21、第2の電源26、第1の電源用出力切替器31、並びに、第1の誘導加熱機に接続された高周波用入力切替器33及び低周波用入力切替器34をシーケンス制御するようにしてもよい。このように、切替制御部35は単に各切替器のON/OFFを制御するだけでなく、第1の電源21及び第2の電源26を制御することから、切替制御部35をシステム制御部と呼んでもよい。
【0113】
図14に示すシーケンスによって、単一の電源系20であっても複数の誘導加熱機10からの切替要求をバッティングなく処理することができる。
【0114】
図13及び
図14に示すシーケンス制御のように、単一の電源系20、すなわち電力供給装置を、複数の誘導加熱機10のうち一機に接続し、電力供給装置から電力を供給することができる。これは、
図1に示す各誘導加熱機10において、加熱機制御部14及び切替制御部35が次のような機能を有するからである。
【0115】
すなわち、加熱機制御部14が、第1の電源用出力切替器31、第2の電源用出力切替器32の何れか一方をONにし他方をOFFにする指令と、高周波用入力切替器33及び低周波用入力切替器34のON、OFFの何れかに切り替える指令と、を切替制御部35に対して要求するからである。
【0116】
切替制御部35は、各誘導加熱機10から指令要求を受けると、その指令要求に従って第1の電源用出力切替器31及び第2の電源用出力切替器32並びにその指令要求を出力した誘導加熱機10に接続された高周波用入力切替器33及び低周波用入力切替器34を切替制御する。当該切替制御が完了すると、切替制御部35は当該誘導加熱機10に対して切替完了信号を出力する。そこで、各誘導加熱機10は、切替制御部35から切替完了信号を受けると、加熱機制御部14により、第1の電源21及び第2の電源26の出力を制御する。
【0117】
これは一つのシーケンス制御を示すものに過ぎず、例えば次のように変更してもよい。すなわち、切替制御部35は、各誘導加熱機10から指令要求を受けると、その指令要求に従って第1の電源用出力切替器31及び第2の電源用出力切替器32並びにその指令要求を出力した誘導加熱機10に接続された高周波用入力切替器33及び低周波用入力切替器34を切替制御する。その後、当該切替制御が完了すると、切替制御部35は、各誘導加熱機10から上述の指令要求と共に受けた出力制御情報に従って第1の電源21及び第2の電源26の何れか一方又は双方の出力を制御する。
【0118】
このように、
図1に示す誘導加熱システム1によれば、次のような4種類の切替モードにより様々な加熱処理を行うことができる。
第1の切替モードとして、第1の電源21から一方の周波数、即ち高周波の電力供給を受ける。
第2の切替モードとして、第2の電源26から電力の供給を受ける。
第3の切替モードとして、第1の電源21から時分割で異なる周波数の電力の供給を受ける。
第4の切替モードとして、第1の電源21から一方の周波数を有する電力と第2の電源26から電力とを受けて双方の電力を重畳して供給を受ける。
よって、
図1に示す誘導加熱システム1によれば、周波数効果を有する熱処理を行うことができる。
【0119】
誘導加熱システム1によって複数のワークを順次加熱する方法について説明をしたが、
図1に示す誘導加熱システム1は、電源系20から電気的に対称な二以上の誘導加熱機10に対して同時に給電することも可能である。その際には、切替制御部35において、同時に給電を行う誘導加熱機10に接続されている高周波用入力切替器33及び低周波用入力切替器34をONにする必要がある。それ以外は
図13及び
図14に示すシーケンスに準じて適宜変更すればよい。
【0120】
また、或る誘導加熱機10により焼入れを行って別の誘導加熱機10により焼戻しを行うなど、ワークの熱処理に応じて誘導加熱システム1を使用することができるなど、汎用性はきわめて高い。
【0121】
〔一つの電源系による複数の誘導加熱機への供給〕
図15は、一つの電源系を用いて何台の誘導加熱機へ供給することが可能となるかを示すタイムチャートであり、(a)は2台の誘導加熱機を用いた場合、(b)は3台の誘導加熱機を用いた場合、(c)は5台の誘導加熱機を用いた場合を示す。サイクルタイムをτとする。なお、このタイムチャートでは、一つの電源系20を用いて複数の誘導加熱機10により同じ熱処理を行うことを前提としている。このタイムチャートは重畳方式、時分割方式の何れの電力供給にも適用される。
【0122】
図15において、「切替処理」とは、
図1に示す誘導加熱システム1において第1の電源用出力切替器31と第2の電源用出力切替器32と各誘導加熱機10の高周波用入力切替器33及び低周波用入力切替器34についてのON,OFFを切り替えることをいう。
【0123】
図15において、「加熱処理」とは、
図1に示す誘導加熱システム1において任意の誘導加熱機10に対して電源系、つまり、第1の電源21及び第2の電源26の何れか一方又は双方から電力を一台の誘導加熱機10に供給し、誘導加熱機10における加熱コイル13によりワークを加熱することをいう。
【0124】
図15において、「冷却処理」とは、
図1に示す誘導加熱システム1において焼入液や冷却液をワークに噴射するなどしてワークを冷却することをいう。
【0125】
図15において、「着脱処理」とは、
図1に示す誘導加熱システム1においてワーク支持手段(図示せず)から誘導加熱処理を施したワークを外して次のワークに配置することをいう。
【0126】
各誘導加熱機10では、切替処理、加熱処理、冷却処理及び着脱処理をこの順に繰り返す。切替時間、加熱時間、冷却時間、着脱時間を、それぞれTa、Tb、Tc、Tdとする。n台の誘導加熱機10を用いる場合には、加熱時間、冷却時間をTbn、Tcnとして表記することにする。なお、切替時間Ta、着脱時間Tdについては台数に依存しない値としている。サイクルタイムτと各時間Ta、Tb、Tc、Tdとは、τ=Ta+Tb+Tc+Tdの関係がある。
【0127】
誘導加熱システム1において、二台の誘導加熱機10を用いる場合には、
図15(a)に示すように、第1の誘導加熱機10Aの切替処理を行い、次いで加熱処理を行う。加熱処理が終了すると切替処理が開始され、第1の誘導加熱機10Aでは冷却処理が直ちに開始される一方、第2の誘導加熱機10Bでは切替処理の完了を待って加熱処理を行う。第1の誘導加熱機10Aにおいて冷却時間Tc2が経過すると着脱処理がなされるが、第2の誘導加熱機10Bにおいては加熱処理が継続される。第2の誘導加熱機10Bにおいて加熱時間Ta2が経過すると切替処理が開始され、第2の誘導加熱機10Aでは冷却処理が直ちに開始される一方、第1の誘導加熱機10Aでは切替処理の完了を待って加熱処理を行う。その後、第1の誘導加熱機10Aは順に同じ処理を繰り返し、第2の誘導加熱機10Bでは冷却時間Tcnが経過すると着脱処理がなされ、以下順に同じ処理を繰り返す。
【0128】
ここで、同じサイクルタイムτで、誘導加熱システム1において作動させる誘導加熱機10を三台とした場合には、切替時間Ta、着脱時間Tdは短縮することが難しいので、
図15(b)に示すように、加熱時間Tbと冷却時間Tcの時間を、誘導加熱機10が二台の場合と異ならせる。
【0129】
そこで、同じサイクルタイムτで、誘導加熱システム1において、n台(nは2以上の任意の整数)作動させるとすると、
図15(c)に示すように、加熱時間Tbnと冷却時間Tcnの各時間を求め、求めた熱処理時間Tbnに応じて誘導加熱条件、冷却時間Tcnに応じた冷却条件を設定する。
【0130】
以上説明したように、一つの電源系により複数台の誘導加熱機10をサイクルタイムτで作動させる場合、各誘導加熱機10に電源系20が接続されて電力投入できる期間、つまり加熱時間を求め、各誘導加熱機10においてその求めた加熱時間に対応して所定の加熱条件を満たすように、DT比、周波数の選定、各周波数の電力などの条件出しをすればよい。
【0131】
〔誘導加熱機からの制御の設定〕
図1に示す誘導加熱システム1において、各誘導加熱機10から切替制御部35を含むシステム制御部への加熱条件を設定する手法について説明する。
【0132】
図16は、各誘導加熱機から切替制御部を含むシステム制御部への加熱条件を設定する際に使用する条件設定画面の例を示しており、(a)はステップの条件設定の例、(b)は時分割方式その1の設定テーブル、(c)は時分割方式その2の設定テーブル、(d)は重畳方式その1のテーブルを示す図である。
【0133】
図16(a)に示すテーブルにおいて、縦の各項目がステップの順番を示し、横の各項目は、STEPがステップ番号であり、TIMERが時間であり、ROTATEがワークの回転数であり、HSWTABLEが時分割方式のテーブル参照先情報であり、HSW2VRが出力強度であり、HSW2DTが高周波と低周波の出力比であり、2BADTABLEが重畳方式のテーブル参照先情報であり、2BNDVRが第2の電源26の出力強度であり、2BNDFREQが第2の電源26の周波数に関する情報である。
【0134】
図16(a)に示すように、ステップ毎に、TIMERの項目に時間が設定され、ROTATEの項目にワークの回転数が設定される。
時分割方式を採用する場合において、テーブル加熱を実施するときは参照する設定テーブル先の情報が設定され、ステップ加熱を実施するときは、
図16(a)に示すように出力強度VRと低周波占有率DTのそれぞれが設定される。
重畳方式を採用する場合において、テーブル加熱を実施するときは参照する設定テーブル先の情報が設定され、ステップ加熱を実施するときは出力強度VRと周波数が設定される。ここで、周波数の設定というのは、第2の電源26が出力する周波数を設定できる場合を想定して、何れの周波数を出力するかを設定することを意味する。
【0135】
ここで、ステップ加熱とは、出力強度VR及び低周波占有率DTを項目とする加熱条件と加熱信号とがステップ毎に誘導加熱機から切替制御部35を経由して電源系20に対して送信され、第1の電源21、第2の電源26の各電源が当該加熱条件及び加熱信号を受信することで出力制御して、ワークを加熱する手法をいう。
一方、テーブル加熱とは、
図16(b)乃至(d)に示すようなテーブルを、予め誘導加熱機から切替制御部35を経由して電源系20に送信しておき、第1の電源21、第2の電源26の各電源がそのテーブルに沿って出力制御してワークを加熱する手法をいう。
【0136】
ステップ加熱を採用すると、誘導加熱機から電源に対してステップ毎に信号が送信されて加熱開始及び加熱終了の制御を行うため、信号の送受信により加熱時間に誤差が生じる。これに対して、テーブル加熱を採用すると、誘導加熱機から加熱開始の信号や終了の信号の送受信が加熱毎にないため、加熱時間を精度よく制御することができる。テーブル加熱では、一つのテーブル内で加熱条件を時系列で変化させる場合にでもそれぞれの加熱条件での加熱時間を精度よく制御することができる。つまり、テーブル加熱を採用することで、予め電源に加熱条件を送ることにより加熱時間の精度を上げ、加熱条件が変化する際であっても、それぞれの加熱条件の加熱時間で精度よく出力することが可能となる。
【0137】
図16(a)の各ステップにおいて、HSWTABLEの項目が「0」とは第1の電源21がテーブル加熱を行わないことを意味し、2BANDTABLEの項目が「0」とは第1の電源21、第2の電源26がテーブル加熱を行わないことを意味する。一方、HSWTABLEの項目が「1」では、
図16(b)に示す時分割方式のその1のテーブルを参照することを意味し、HSWTABLEの項目が「2」では、
図16(c)に示す時分割方式のその2のテーブルを参照することを意味し、2BANDTABLEの項目が「1」では、
図16(d)に示す重畳方式のその1のテーブルを参照することを意味する。
【0138】
図16(b),(c)において、VR,DT、HTはそれぞれ、出力強度、低周波占有率、加熱時間を示し、
図16(d)において、VR,FRQ,HTはそれぞれ、出力強度、出力周波数、加熱時間を示す。
【0139】
このようにして、各誘導加熱機10から切替制御部35を含むシステム制御部への加熱条件が設定される。
【0140】
〔出力監視のための設定〕
図16に示す各テーブルのように条件設定を行った場合の出力監視を、どのように行うのかについて説明する。
図17は、出力監視画面の例を示す図である。
【0141】
図16では、電力供給がSTEP3とSTEP5とSTEP7でなされるので、出力監視ステップとしてはSTEP3、STEP5、STEP7の番号「3」、「5」、「7」が示してある。STEP3,STEP5,STEP7のそれぞれにおいて、テーブル監視行とは、例えばSTEP3では
図16(a)のテーブルからHSWTABLEが「1」であるので、
図16(b)を参照し、その何行目で監視をするかを設定する。「監視マスク時間」とは、加熱開始後監視しない時間の意味であり、「終了監視のみ」が「あり」とは、加熱終了時の値で監視することを意味する。
図17では時分割方式、重畳方式のそれぞれで設定され、それぞれ電力P1、P2、
図3及び
図4において変換部21a,26aから逆変換部21b,26bに入力される直流電流Idc、直流電圧Vdc、周波数F1、F2が設定される。何れのパラメータについても、上限、下限が設定され、測定値が表示される。
【0142】
ところで、第1の電源21、第2の電源26の各電源制御部21x、26xは、直流電圧が一定になるように制御するか、又は直流電流が一定になるように制御している。そのため、各電源からの出力状況は、その制御対象を監視する。つまり、各電源制御部21x、26xが直流電圧一定制御であれば直流電圧Vdcを監視し、直流電流一定制御であれば直流電流Idcを監視する。
【0143】
よって、時分割方式では、制御対象であるVdc、Idcの何れかと周波数とを連続監視し、電力は加熱終了時の値を監視する。一方、重畳方式では、制御対象であるVdc、Idcの何れかと周波数とを連続監視し、電力は加熱終了時の値を監視する。なお、
図17において「終了監視のみ」が「あり」となっている場合には、すべて加熱終了時の値を監視する。
【0144】
次に、監視方法について説明する。
テーブル加熱を採用した場合には、次のような監視方法がある。
第1の手順として、
図17に示すような監視画面上で各値を設定する。
第2の手順として、条件設定のどのステップのテーブル加熱を監視するか、さらにその監視するテーブルの15行のどの行を監視するか、を設定する。
図17では、監視するテーブル加熱の行として3行設定可能な場合を示している。
第3の手順として、インバータテーブル運転測定データデバイスを常時読み出し、対応テーブル行を監視する。ここで、インバータテーブル運転測定データデバイスとは後述する測定部のことである。電力については後述するように、平均電力で監視するので、加熱終了時の値を読み出して監視する。
【0145】
なお、ステップ加熱を採用した場合、つまり、ステップの出力強度VR、低周波占有率DT、周波数を入力した際であっても、監視画面で各値を設定し、条件設定のどのステップのステップ加熱を監視するかを設定し、インバータテーブル運転測定データデバイスを常時読み出し、監視対象として設定したステップの直流電圧Vdc、直流電流Idc、加熱終了時の電力、周波数を監視すればよい。
【0146】
〔電力を監視するための設備〕
図3、
図4に示す回路からどのように電力を監視するかについて詳細に説明する。
図3、
図4に示すように、インバータ制御部21c,26cにより、変換部21a,26a、逆変換部21b,26bが制御される。よって、変換部21a,26aから逆変換部21b,26bに流れる直流の電流Idc、電圧Vdcが
図3、
図4に示す電流センサ101、電圧センサ102で測定されて測定部103に入力される。測定部103に入力された値は、デジタル変換されて処理部104に出力される。測定部103はそれぞれ第1の電源21、第2の電源26に設けられ、処理部104は各誘導加熱機10に設けられるか又は誘導加熱システム1を統括する管理部(図示しない)に設けられる。
【0147】
誘導加熱システム1を運転中の電力については種々の監視方法がある。以下、DT信号により時分割方式で電力を供給している場合を説明する。
【0148】
図18は第1の出力監視方法を説明するための図であり、横軸は時間、縦軸がVdc、Idc、DTである。第1の出力監視方法としては、DT信号がONとなっているとき、すなわち、低周波の出力がなされているときに、瞬時値v
dc,i
dcを電流センサ101、電圧センサ102で検出する。これにより、低周波、高周波の電力が次の式から求まる。
低周波電力P1(kW)は、
P1=v
dc(V)×i
dc(A)×DT(%)×10
-2×10
-3
高周波電力P2(kW)は、
P2=v
dc(V)×i
dc(A)×(100−DT(%))×10
-2×10
-3
【0149】
この第1の出力監視方法ではv
dcは比較的安定しているところ、IdcはDT内で時間の経過とともに変化する。これは、時分割方式では、電源の制御方式により例えば直流電圧を一定にするように出力するため、負荷インピーダンスの変化により電流が変化するためである。そのため、精度のよい監視とはならない。
【0150】
そこで、第2の監視方法として、本発明では、所定の間隔Δt(例えば0.5ms)毎に、瞬時値v
dc,i
dcを電流センサ101、電圧センサ102で検出し、v
dc×i
dcから、すなわちサンプリング時間毎に各直流電圧、直流電流の瞬時値の積を求め、各ステップ加熱期間中、低周波、高周波別々に加算して、ステップ終了時に電力を求める。
【0151】
図19は第2の出力監視方法を説明するための図であり、(a)は直流電圧、電流の時間変化を示し、(b)〜(e)はそれぞれDT信号、低周波の積算電力量、高周波の積算電力量、加熱信号の時間変化を示す。
【0152】
図19(a)に示すように、直流電圧、電流が時間経過とともに変化するので、サンプリング時間、例えば0.5ms毎に、瞬時値を電流センサ101、電圧センサ102で検出する。そして、サンプリング時間毎に電力の時間積q(J)を次式により求める。
q(J)=v
dc(V)×i
dc(A)×サンプリング時間(s)
【0153】
次に、低周波の時間積の総和QL(J)と高周波の時間積の総和QH(J)とをそれぞれ次式により求める。
QL(J)=Σq(J) (ただし、DTがHigh(低周波出力)の期間加算する。)
QH(J)=Σq(J) (ただし、DTがLow(高周波出力)の期間加算する。)
【0154】
すると、低周波の平均電力P1(kJ/s)と高周波の平均電力P2(kJ/s)とが次式により求まる。ただし、HT(s)はトータルの加熱時間である。
P1(kJ/s=kW)=QL(J)/HT(s)×10
-3
P2(kJ/s=kW)=QH(J)/HT(s)×10
-3
【0155】
本発明の実施形態に係る誘導加熱システム1においては、
図3及び
図4に示す電源系としての電力供給装置20中の第1の電源21及び第2の電源26に、出力監視装置110が配線接続されて取り付けられる。
図20は出力監視装置110のブロック構成図である。出力監視装置110は測定部103と処理部104を備える。
【0156】
測定部103は、
図3及び
図4に示す変換部21a,26aから逆変換部21b,26bに出力される直流の電流Idc及び電圧Vdcをサンプリング時間で測定する。
処理部104は、測定部103によって測定した電流及び電圧のサンプリング時間毎の値から周波数毎に電力量を求め、周波数毎の電力量に基いて各周波数の平均電力を求める。
【0157】
電力供給装置120が、複数の誘導加熱機10に切替手段30を介在して取り付けられ、複数の誘導加熱機10から切替手段30を制御することにより、電力供給装置120が任意の一台の誘導加熱機10に接続可能に構成される。そのように構成されている場合、処理部104が複数の誘導加熱機10の各々に設けられる。これにより、電力供給装置120に対して測定部103による測定データを取得することができ、各処理部104が、各周波数の平均電力と電力供給装置120に対して行った供給指令との整合性を判断する。
【0158】
図20に示すように、測定部103は、電力供給装置120が時分割で電力を供給する方式に対応するように、電流電圧測定部103aと周波数測定部103bを備える。すなわち、電流電圧測定部103aは、
図3、
図4に示す電流センサ101及び電圧センサ102から入力される検出値から、変換部21a,26aから逆変換部21b,26bに出力される直流の電流及び電圧をサンプリング時間で測定する。周波数測定部103bは、逆変換部21b,26bがON/OFFする単位時間当たりの回数をカウントすることにより、出力される電流、電圧の周波数を測定する。
【0159】
よって、処理部104は、電流電圧測定部103aによって測定した電流及び電圧のサンプリング時間毎の値から、周波数測定部103bが求めた周波数毎の電力量を求め、周波数毎の電力量に基いて各周波数の平均電力を求める。
【0160】
〔出力監視方法〕
図20に示す出力監視装置110を用いて出力を監視する方法について説明する。
図3に示すように、逆変換部21bにより第1の周波数(例えば低周波)と第2の周波数(例えば高周波)とで直流をON/OFFして出力する際、先ず、電流電圧測定部103aが、電流センサ101,電圧センサ102から入力される検出データから、直流の電流及び電圧をサンプリング時間で測定する。
【0161】
次に、逆変換部21bが第1の周波数でON/OFFした際に、電流電圧測定部103aによりサンプリングして測定した電流及び電圧の入力を処理部104が受ける。処理部104は、入力された値、すなわち電流、電圧の積をサンプリング時間毎に加算して出力時間である誘導加熱時間で割ることにより、第1の周波数の平均出力電力を求める。また、逆変換部21bが第2の周波数でON/OFFした際に、電流電圧測定部103aによりサンプリングして測定した電流及び電圧の入力を処理部104が受ける。処理部104bは入力された値、すなわち電流、電圧の値を積算して、その積算した結果値をサンプリング時間毎に加算して、出力時間である誘導加熱時間で割ることにより、第2の周波数の平均出力電力を求める。
【0162】
そして、処理部104は、求めた第1の周波数の平均出力電力と第2の周波数の平均出力電力の値から、供給される電力を表示部(図示せず)に表示するなどして監督者に監視させる。処理部104で設定した上限値、下限値の中に、第1の周波数と第2の周波数の各平均出力電力が収まっているかを監視し、上限と下限の範囲から外れた場合に、停止信号を出力し、出力を停止させる。このように、閾値を設定しその閾値を外れたときや、許容範囲を設定しその範囲から外れたときに、出力を停止させ、誘導加熱処理が適切に施されていないワークを取り除くことができる。
【0163】
このように、出力監視装置110は、加熱時間全体のVdcとIdcとを一定の間隔でサンプリングして周波数毎に平均電力を求めているため、出力の立ち上がりなどの変化を含めて監視することができる。つまり、加熱時間を短くすることで、出力の立ち上がりの過渡状態も監視することができる。
【0164】
本発明の実施形態に係る出力監視方法では、低周波の積算電力量をトータルの加熱時間で割って平均電力とし、高周波の積算電力量をトータルの加熱時間で割って平均電力としている。
【0165】
そのため、処理部104において、求めた第1の周波数の平均電力と第2の周波数の平均電力の各大きさの変化により、第1の周波数と第2の周波数との切替を指定するDT信号の異常を監視することができる。
【0166】
もし、DT信号に異常が発生し、第1の周波数と第2の周波数の出力時間が変わった場合には、第1の周波数の出力期間の積算電力量と第2の周波数の出力期間の積算電力量が変化する。その結果、トータルの出力時間で割った各周波数の平均電力も変化する。よって、第1の周波数の平均電力の値と第2の周波数の平均電力の値とが時系列によって変化するか否かを監視すれば、第1の周波数と第2の周波数との切り替えを指定する所謂DT信号の異常を監視することができる。このように、各周波数の平均電力を監視することにより、DT信号も監視することができる。
【0167】
次に重畳方式の出力監視について説明する。
図1に示すシステムにおいて、第1の電源21と第2の電源26にそれぞれ直流電圧及び電流を積算して、トータルの加熱時間で割って平均電力を求めればよい。あとは、時分割方式と同様に出力監視することができる。
【0168】
〔出力監視方法の変形例〕
上述した出力監視方法は、時分割方式により電力が供給された場合の手法であるが、この監視方法は重畳方式において、低周波と高周波とを短時間に交互に出力する場合にも適用することができる。以下、詳細に説明する。
図21は、重畳方式により電力が供給される場合で、第1の周波数の出力の有無と第2の周波数の出力の有無を時系列に示す図である。
【0169】
図4に示す重畳方式の回路構成において、
図21に示すように、逆変換部21b,26bで直流を第1の周波数でON/OFFして出力する信号と、直流を第2の周波数でON/OFFして出力する信号と、を交互に出力する場合を想定する。
【0170】
先ず、
図4に示す各測定部103において、電流センサ101と電圧センサ102からの検出信号の入力を受けて、各直流の電流及び電圧をサンプリング時間で測定する。
【0171】
次に、逆変換部21bが第1の周波数でON/OFFした際に、処理部104は、電流電圧測定部103aによりサンプリングして測定した電流及び電圧の入力を受ける。処理部104は入力された値、すなわち電流、電圧の値を積算して、その積算した結果値をサンプリング時間毎に加算して出力時間で割ることにより、第1の周波数の平均出力電力を求める。また、処理部104が、逆変換部26bが第2の周波数でON/OFFした際に、電流電圧測定部103aによりサンプリングして測定した電流及び電圧の入力を受ける。そして、処理部104bは入力された値、すなわち電流、電圧の値を積算して、その積算した結果値をサンプリング時間毎に加算して出力時間で割ることにより、第2の周波数の平均出力電力を求める。
【0172】
そして、処理部104は、求めた第1の周波数の平均出力電力と第2の周波数の平均出力電力との大きさから、供給される電力を表示部(図示せず)に表示するなどして監督者に監視させる。
【0173】
このように、本発明の実施形態においては、電源20を構成する第1の電源21及び第2の電源26において、変換部21a,26aから逆変換部21b,26bに出力される直流電圧と直流電流を、測定部103によってサンプリング時間毎に測定する。そのため、第1の電源21及び第2の電源26から出力される電力などを監視することができる。
【0174】
〔一台の誘導加熱機に対する電力供給の監視について〕
これまでは、電源系20に対して切替手段30を介在して複数の誘導加熱機10のうち一台を接続して、電源系20から誘導加熱機10に対して給電する場合を主として説明した。しかしながら、一台の誘導加熱機10に電力を供給する場合であっても同様である。
【0175】
すなわち、
図1のうち、誘導加熱機10Aのみ設けられた誘導加熱システム1とすると、次のようになる。誘導加熱システム1は、一又は複数の電力供給装置120として、第1の電源21のみか又は第1の電源21及び第2の電源26の双方を有している。
図3及び
図4に示すように、第1の電源21は、交流を直流にする変換部21aと、変換部21aから入力された直流を任意の周波数でON/OFFして出力する逆変換部21bと、を有している。
図4に示すように、第2の電源26は、交流を直流にする変換部26aと、変換部26aから入力された直流を任意の周波数でON/OFFして出力する逆変換部21bと、を有している。電力供給装置120は、
図3、
図4に示すように、単一の加熱コイル13へ給電するように接続される。ここで、単一の加熱コイル13とは、一つのワークに複数の加熱領域が存在する場合に複数のコイル部が直列接続されるか又は並列接続される場合もあり、この場合の複数のコイルを纏めて呼ぶためである。一つのワークに対して一つの加熱コイルが対応しており、その一つの加熱コイルを単一の加熱コイルと称している。
【0176】
このような誘導加熱システム1において、
図20に示す測定部103と処理部104とを有する出力監視装置110が配備される。測定部110は、変換部21a,26aから逆変換部21b,26bに出力される直流の電圧及び電流をサンプリング時間毎に測定する。測定部103は、
図20を参照して説明したように、電流電圧測定部103aと周波数測定部103bとを備える。一方、処理部104は、測定部103によって測定した電流及び電圧のサンプリング時間毎の値から周波数毎に電力量を求め、周波数毎の電力量に基いて各周波数の平均電力を求める。
【0177】
このような誘導加熱システム1を用いて、一又は複数の周波数で一又は複数の直流をON/OFFしてスイッチングして誘導加熱を行うに際し、第1の電源21、第2の電源26の各変換部21a,26aから逆変換部21b,26bへ出力される電流、電圧をサンプリング時間毎に測定し、周波数毎にサンプリング時間で測定した電流及び電圧の積を加算して周波数毎の平均電力を求める。その結果、その求めた周波数毎の平均電力から電力供給装置120の出力状況を監視することができる。
【0178】
電力供給装置120が時分割方式で供給する場合には次のようになる。電力供給装置120として、
図3に示すように第1の電源21を有する。第1の電源21の逆変換部21bが、高周波及び低周波の各出力電力を、出力周期に対する高周波と低周波の出力時間の比として調整する場合、具体的には、第1の電源21の逆変換部21bが低周波と高周波とを交互に出力する場合には、処理部103が、電流センサ101と電圧センサ102から入力された値に基いて、測定部103でサンプリング時間毎の直流電流と直流電圧との積を計算することにより、一台の電力供給装置120としての第1の電源21から加熱コイル13に供給される高周波と低周波の平均電力を求める。
【0179】
つまり、第1の周波数としての高周波と第2の周波数としての低周波で、一の直流をDT信号により区別してON/OFFして高周波と低周波とを時分割多重で出力して誘導加熱を行うに際し、一の直流の電流及び電圧をサンプリング時間毎に測定する。第1の周波数でON/OFFした際に測定した電流及び電圧の積をサンプリング時間毎に加算して第1の周波数の平均電力を求める。同様に、第2の周波数でON/OFFした際に測定した電流及び電圧の積をサンプリング時間毎に加算して第2の周波数の平均電力を求める。これら求めた第1の周波数、第2の周波数の各平均電力から、出力される電力を監視することができる。
【0180】
電力供給装置120が重畳方式で供給する場合には次のようになる。
図4に示すように、電力供給装置120は、第1の電力供給装置として第1の電源21と、第2の電力供給装置として第2の電源26とにより構成される。この場合、第1の電源21では、逆変換部21bが第1の周波数で変換部21aから入力される直流をON/OFFして出力する。これと共に、第2の電源26では、逆変換部26bが第2の周波数で変換部21aから入力される直流をON/OFFして出力する。第1の電源21及び第2の電源26の二台の電源から加熱コイル13に第1の周波数と第2の周波数とを重畳して給電する。
【0181】
この場合、
図4に示すように、測定部103は、第1の電源21に配備される第1の測定部103cと第2の電源26に配備される第2の測定部103dとからなる。第1の測定部103cは、第1の電源21における変換部21aから逆変換部21bに出力される直流の電流及び電圧をサンプリング時間毎に測定する。第2の測定部103dは、第2の電源26における変換部26aから逆変換部26bに出力される直流の電流及び電圧をサンプリング時間毎に測定する。
【0182】
よって、処理部104が、第1の測定部103cによって測定した電流及び電圧のサンプリング時間毎の値から第1の周波数の電力量を求め、第2の測定部103dによって測定した電流及び電圧のサンプリング時間毎の値から第2の周波数の電力量を求め、周波数毎の電力量に基いて第1の周波数の平均電力及び第2の周波数の平均電力を求める。
【0183】
つまり、第1の電源21から第1の直流を第1の周波数でON/OFFして出力し、かつ第2の電源26から第2の直流を第2の周波数でON/OFFして出力して、第1の周波数と第2の周波数とを重畳して誘導加熱を行うに際し、第1の測定部103cによって第1の直流の電流及び電圧をサンプリング時間毎に測定すると共に、第2の測定部103dによって第2の直流の電流及び電圧をサンプリング時間毎に測定する。そして、処理部104によって、第1の周波数でON/OFFした際に測定した第1の直流に係る電流及び電圧の積をサンプリング時間毎に加算し、誘導加熱時間で割ることにより、第1の周波数の平均電力を求める。同様に、処理部104によって、第2の周波数でON/OFFした際に測定した第2の直流に係る電流及び電圧の積をサンプリング時間毎に加算し、誘導加熱時間で割ることにより、第2の周波数の平均電力を求める。処理部104は、求めた第1の周波数の平均電力と求めた第2の平均電力の値から、出力される電力を監視する。
【0184】
なお、
図1に示すように、誘導加熱システム1に、複数の誘導加熱機が配備されている場合には既に説明したので、ここでは繰り返し説明をする必要はないであろう。
【0185】
以上説明したように、誘導加熱システム1において出力監視装置110により供給電力を監視する。これにより、負荷の異常やブスバーの異常などを監視することができる。
【0186】
〔その他の監視〕
図1に示す誘導加熱システム1に出力監視装置110が配備されていることで、各誘導加熱機10に供給される電力を監視することができる。この出力監視装置110を用いることにより、実際に出力されている周波数とか、非常に短時間の加熱の際のVdcについても監視することができる。
【0187】
例えば、出力監視装置110において、電流電圧測定部103aにより、逆変換部21b,26bに入力される直流電圧Vdcをサンプリング時間毎に計測して常時監視することができる。その際、周波数の切替直後の数m秒間は無視して、例えば4〜6msの複数のデータを平均化した値から、その周波数の終了までの期間をサンプリング時間毎に積算して、その数で割ることにより、平均の直流電圧を監視することができる。
【0188】
例えば、出力監視装置110において、周波数測定部103bにより、
図3、
図4に示す逆変換部21b,26bによるスイッチングの単位時間当たりの回数を監視することで、周波数を測定することができる。従って、各周波数の電力を出力している間、常時、出力周波数を監視することができる。
【0189】
例えば、非常に短時間の加熱においても、Vdcと周波数を測定して、監視することができる。
【0190】
このように、電力供給中においても、制御対象となる直流電圧、周波数を常時監視することができ、適切に誘導加熱がなされているか否かを与える指針を与えることができる。
【0191】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の範囲は特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で変更したものも含まれる。