【文献】
辻 善夫 他,”720 分離型モーメント印加装置に関する研究”,日本機械学会[No.11-2]Dynamics and Design Conference 2011 CD-ROM論文集,2011年 9月 5日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜5いずれか記載の分離型モーメント印加装置における吸着部を試料の所定点に吸着させた状態で、被打撃部の被打撃面にハンマを用いて打撃力を加えることにより、試料にモーメントを印加するモーメント印加方法。
【背景技術】
【0002】
近年の機械設計においては、製品の重量をいかに抑えるかが重要視されるようになってきている。例えば、自動車の設計においては、車体を軽量化することで燃費が向上し、環境負荷を軽減できるようになるため、各自動車メーカーは、ドアパネル、屋根、ボンネット又はトランクリッドといった自動車のボデーパーツに高張力鋼板を使用するなど、車体の軽量化を意識した開発を行うようになってきている。ところが、これらの製品は、軽くすればするほど振動しやすくなり、静寂性や遮音性が低下するため、その設計段階においては、製品の振動特性を十分に評価しておく必要がある。しかし、自動車のボデーパーツなどは、モデル化が困難な複雑な形状を有していることが多く、その振動特性を有限要素法などの数値解析的手法のみによって高精度で評価することは困難である。このため、自動車のボデーパーツなどの設計段階においては、試作品(試料)を製造し、該試料の振動特性を実験的に評価することが一般的となっている。
【0003】
試料の振動特性を実験的に評価する方法は様々であるが、なかでも、インパルスハンマ或いはインパクトハンマと呼ばれるハンマで試料の表面に打撃力を加え、その際の打撃力と試料の表面の加速度から試料の周波数応答関数(FRF)を求め、試料の固有振動数と対応する振動モードを確認する方法が一般的となっている(例えば、非特許文献1)。インパルスハンマのヘッド部分には、ロードセルなど、加えた打撃力を電圧などに変換して出力することが可能な力センサが設けられている(例えば、特許文献1)。試料の表面の加速度は、試料の表面に取り付けた加速度ピックアップなどの加速度センサによって計測される。しかし、このような方法では、並進力に対する試料の振動特性しか測定できないという問題がある。つまり、実際の試料に印加される力には、並進力とモーメントの2種類があり、試料の振動特性は、この両者に対する振動応答によって決定される。したがって、並進力に対する振動特性の評価のみでは不十分であり、このことが振動特性の予測精度の低下を招いていた。
【0004】
また、これまでには、
図1に示すように、試料100の表面に固定したT型の剛体ブロック80をハンマ70(インパクトハンマでなくてもよい)で打撃し、剛体ブロック80に取り付けた加速度センサ81が検知した剛体ブロック80の各部の加速度と、剛体ブロック80の寸法形状とから、試料100の表面に加えられたモーメントを算出し、該モーメントに対する周波数応答関数を求める方法も行われている(例えば、非特許文献2の第30頁〜第32頁を参照。)。この方法では、試料100の表面に加えられたモーメントを比較的正確に知ることが可能である。しかし、この方法において、剛体ブロック80は、ボルトなどを用いて試料100に完全に固定されるため、試料100にモーメントが加えられた後も剛体ブロック80が試料100に固定されたままの状態を維持する。したがって、剛体ブロック80によって試料100の見掛けの重量が増加し、試料100の振動特性が変化してしまうため、得られた測定データに補正処理を行う必要があった。また、剛体ブロック80を試料100に固定する作業を要するため、測定作業が煩雑になるという欠点もあった。
【0005】
このような実状に鑑みて、本発明者らは、
図2に示すように、試料100に吸着させるための吸着部91と、外力を加えるための操作部92と、吸着部91と操作部92とを連結する柱状部93と、柱状部93の歪みを検知するための歪み検知手段94と、試料100に対する吸着部91の吸着力を瞬時に遮断するための吸着力遮断手段95とを備えた吸着型モーメント印加装置90を提案した(特許文献2及び非特許文献3,4を参照)。ここで、「吸着型モーメント印加装置」における「吸着型」とは、そのモーメント印加装置が試料に完全に固定されて使用されるものではなく、試料に一時的に吸着させて使用するものであることを意味している。吸着型モーメント印加装置90は、試料100における所定点Pに吸着部91を吸着させて操作部92に外力を加えることで柱状部93を弾性的に湾曲変形させ、その状態で吸着力遮断手段95を用いて吸着部91の吸着力を瞬時に遮断することにより、吸着力が遮断される前に試料100における所定点Pに印加されたモーメントMを検知することができるものとなっている。この吸着型モーメント印加装置90は、試料100に剛体ブロックなどを取り付ける必要がないため、操作性に優れているだけでなく、得られた測定データに補正処理を行う必要もなかった。しかし、この吸着型モーメント印加装置90では、試料100に印加するモーメントMがステップ状になり、インパルス状のモーメントMを印加することができないため、試料100に印加することのできる振動は、低周波数帯域のものに限られるという欠点があった。ここで、「ステップ状」とは、横軸を時間とし、縦軸をモーメントMとしてグラフを描いた場合に該グラフの形状が横長のステップ状になることを意味しており、「インパルス状」とは、前記グラフの形状が瞬間的に立ち上がるインパルス状になることを意味している。
【0006】
また、本発明者らは、
図3に示すように、試料100に吸着させるための吸着部11と、外部から打撃力を加えるための被打撃部12(同図において網掛けハッチングで示した部分)と、吸着部11と被打撃部12を連結する柱状部13と、柱状部13の歪みを検知するための歪み検知手段14とを備えた分離型モーメント印加装置10を提案した(非特許文献5を参照)。ここで、「分離型モーメント印加装置」における「分離型」とは、それに打撃力を加えた際の衝撃で試料から分離するものであることを意味している。すなわち、この分離型モーメント印加装置10は、試料100の所定点Pに吸着部11を吸着させた吸着状態(同図(a)を参照)で被打撃部12の所定点Rに打撃力F
Rを加える(同図(b)を参照)ことにより、試料100の所定点PにモーメントMを印加し、その際の衝撃で吸着部11が試料から分離する(同図(c)を参照)ものとなっている。モーメントMの値は、打撃力F
Rを加えた際に歪み検知手段14が検知した柱状部13の歪みから求めることができる。
【0007】
図3に示す分離型モーメント印加装置10は、試料100にインパルス状のモーメントMを印加することができるため、高周波数帯域の振動を試料100に印加することができる。しかし、分離型モーメント印加装置10では、吸着部11が試料100から分離した後に分離型モーメント印加装置10が試料100に接触し、試料100の振動に影響を及ぼすおそれがある。このため、測定者は、
図3(a)の吸着状態にあるときから、吸着部11の吸着力fを超えない範囲の大きさの張力Tで、分離型モーメント印加装置10に結び付けた紐15などを試料100とは反対側に予め引き上げておく必要があった。したがって、紐15の張力Tによって吸着力fが相殺されることになり、試料100に印加するモーメントMや、試料100の表面に対して垂直な方向に印加する並進力Fを大きくすることが困難であった。また、試料100の表面に対して垂直な方向に印加される並進力Fをインパルス状とすることも困難であった。さらに、試料100の表面に対して平行な方向に打撃力F
Rが印加される構造となっていたため、試料100の表面に対して平行な方向にも並進力が印加され、該並進力が試料100の振動に影響を及ぼすおそれがあった。加えて、吸着部11と試料100との間にズレが生じる場合もあった。よって、モーメントや並進力などの印加条件を一定に保つことが困難であり、試料100の振動特性を安定して評価することが困難であった。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】試料表面に固定した剛体ブロックをハンマで打撃することによって行われる従来のモーメント印加方法を示した図である。
【
図2】従来の吸着型モーメント印加装置を使用することによって行われる従来のモーメント印加方法を示した図である。
【
図3】従来の分離型モーメント印加装置を使用することによって行われる従来のモーメント印加方法を示した図である。
【
図4】本発明の第一実施態様の分離型モーメント印加装置を使用することによって行われる本発明のモーメント印加方法を示した図である。
【
図5】本発明の第一実施態様の分離型モーメント印加装置を試料に吸着させた状態を示した正面図である。
【
図6】本発明の第一実施態様の分離型モーメント印加装置を試料に吸着させた状態を示した側面図である。
【
図7】本発明の第一実施態様の分離型モーメント印加装置を用いて試料の振動特性を評価するシステムの一例を示した図である。
【
図8】本発明の第二実施態様の分離型モーメント印加装置を試料に吸着させた状態を示した正面図である。
【
図9】本発明の第二実施態様の分離型モーメント印加装置を特殊なハンマを用いて打撃する状態を示した図である。
【
図10】分離型モーメント印加装置がその被打撃部に加えられた打撃力の上向き成分によって試料から分離される場合について説明する図である。
【
図11】分離型モーメント印加装置がその被打撃部に加えられた打撃力によって生じたモーメントによって試料から分離される場合について説明する図である。
【
図12】本発明の分離型モーメント印加装置を用いて試料に加振力を加えた際のモーメントの時間変化を示したグラフである。
【
図13】本発明の分離型モーメント印加装置を用いて試料に加振力を加えた際の並進力の時間変化を示したグラフである。
【
図14】従来の分離型モーメント印加装置を用いて試料に加振力を加えた際のモーメントの時間変化を示したグラフである。
【
図15】従来の分離型モーメント印加装置を用いて試料に加振力を加えた際の並進力の時間変化を示したグラフである。
【
図16】本発明及び従来の分離型モーメント印加装置を用いて試料に印加したモーメントのオートパワースペクトルをそれぞれ示したグラフである。
【
図17】本発明及び従来の分離型モーメント印加装置を用いて試料に印加した並進力のオートパワースペクトルをそれぞれ示したグラフである。
【
図18】本発明及び従来の分離型モーメント印加装置を用いて試料を加振した場合における単位並進力当たりの加速度についての周波数応答関数の測定値と、有限要素法による解析によって求めた周波数応答関数H
11(加速度/並進力)とをそれぞれ示したグラフである。
【
図19】
図18に示したそれぞれの場合における周波数と位相との関係をそれぞれ示したグラフである。
【
図20】本発明及び従来の分離型モーメント印加装置を用いて試料を加振した場合における単位モーメント当たりの加速度についての周波数応答関数の測定値と、有限要素法による解析によって求めた周波数応答関数H
12(加速度/モーメント)とをそれぞれ示したグラフである。
【
図21】
図20に示したそれぞれの場合における周波数と位相との関係をそれぞれ示したグラフである。
【
図22】本発明及び従来の分離型モーメント印加装置を用いて試料を加振した場合における単位並進力当たりの角加速度についての周波数応答関数の測定値と、有限要素法による解析によって求めた周波数応答関数H
21(角加速度/並進力)とをそれぞれ示したグラフである。
【
図23】
図22に示したそれぞれの場合における周波数と位相との関係をそれぞれ示したグラフである。
【
図24】本発明及び従来の分離型モーメント印加装置を用いて試料を加振した場合における単位モーメント当たりの角加速度についての周波数応答関数の測定値と、有限要素法による解析によって求めた周波数応答関数H
22(角加速度/モーメント)とをそれぞれ示したグラフである。
【
図25】
図24に示したそれぞれの場合における周波数と位相との関係をそれぞれ示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の分離型モーメント印加装置とこれを用いたモーメント印加方法の好適な実施態様について、図面を用いてより具体的に説明する。以下においては、2つの実施態様(第一実施態様及び第二実施態様)の分離型モーメント印加装置を例に挙げて本発明の分離型モーメント印加装置を説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの実施態様に限定されるものではなく、発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更を施すことができる。
【0021】
1.第一実施態様の分離型モーメント印加装置
(1)第一実施態様の分離型モーメント印加装置の概要
まず、第一実施態様の分離型モーメント印加装置について説明する。
図4は、第一実施態様の分離型モーメント印加装置10を使用することによって行われる本発明のモーメント印加方法を示した図である。
図5は、第一実施態様の分離型モーメント印加装置10を試料100に吸着させた状態を示した正面図である。
図6は、第一実施態様の分離型モーメント印加装置10を試料100に吸着させた状態を示した側面図である。
図7は、第一実施態様の分離型モーメント印加装置10を用いて試料100の振動特性を評価するシステムの一例を示した図である。
【0022】
第一実施態様の分離型モーメント印加装置10は、
図5又は
図6に示すように、試料100に吸着させるための吸着部11と、外部から打撃力を加えるための被打撃部12と、吸着部11と被打撃部12とを連結する柱状部13と、柱状部13の歪みを検知するための歪み検知手段14,15とを備えている。この分離型モーメント印加装置10は、
図4に示すように、試料100の所定点Pに吸着部11を吸着させた吸着状態(
図4(a))で被打撃部12に打撃力F
Rを加えることにより、吸着部11から試料100の所定点Pにインパルス状のモーメントM及び並進力Fを印加し(
図4(b))、その際の衝撃で吸着部11が試料100から分離してその全体が跳ね上げられるものとなっている(
図4(c))。試料100の点Pに印加されたモーメントM及び並進力Fは、被打撃部12に打撃力F
Rを加えた際に柱状部13に生ずる弾性的な変形を歪み検知手段14,15で検知することにより求めることができる。
【0023】
(2)吸着部
吸着部11は、試料100の表面に対して吸着させるための部分となっている。したがって、吸着部11は、上述した通り、試料100に吸着させることができるものであれば特に限定されない。第一実施態様の分離型モーメント印加装置10においては、残留磁束密度1230〜1290mT程度のネオジム磁石を採用した。吸着部11の寸法は、吸着部11の残留磁束密度と試料100の磁性との兼ね合いなどによっても異なり、特に限定されないが、小さすぎると、試料100に対する吸着力f(
図4(a))が小さくなったり、吸着部11を試料100の表面に吸着させた際の分離型モーメント印加装置10の安定性が低下したりするおそれがある。一方、吸着部11を大きくしすぎると、試料100に対する吸着力fが大きくなり過ぎて、被打撃部12に打撃力F
Rを印加しても吸着部11が試料100から分離しなくなるおそれがある。このため、吸着部11の吸着面(試料100に吸着される面)の面積は、通常、0.1〜10cm
2とされ、好ましくは、0.5〜5cm
2とされる。第一実施態様の分離型モーメント印加装置10において、吸着部11は、吸着面の一辺の長さが1cmで厚み(高さ)が3mmの直方体としている。このため、吸着面の面積は1cm
2となっている。
【0024】
(3)柱状部
柱状部13は、被打撃部12に打撃力F
Rを加えた際に弾性的に変形するための部分となっている。吸着部11から試料100の所定点Pに印加されたモーメントM及び並進力Fは、後述する歪み検知手段14,15で検知した柱状部13の歪みから求めることができる。したがって、柱状部13の素材は、外力F
Rによって弾性的に曲げ変形するものであれば特に限定されない。しかし、柱状部13をヤング率の低い素材で形成すると、柱状部13を太く形成しなければならなくなり、分離型モーメント印加装置10が取り扱いにくいものとなるおそれがある。一方、柱状部13をヤング率の高い素材で形成すると、柱状部13が変形しにくくなり、得られるモーメントMや並進力Fの測定精度を高く維持できなくなる(歪み検知手段14,15で検知される柱状部13の歪みの誤差が大きくなる)おそれがある。このため、柱状部13を形成する素材のヤング率は、30〜300GPaであると好ましく、50〜250GPaであるとより好ましい。このような素材としては、アルミニウム(ヤング率70GPa)や、銅(ヤング率110〜130GPa)や、鉄(ヤング率150〜210GPa)などの金属が例示される。第一実施態様の分離型モーメント印加装置10においては、鉄(SS20)で柱状部13を形成している。
【0025】
また、柱状部13の長さは、上述した通り、通常、吸着部11から被打撃面12bまでの距離L(
図5)を20〜200mmとできる範囲に設定される。第一実施態様の分離型モーメント印加装置10では、吸着部11から被打撃面12bまでの距離Lが78mmとなるように柱状部13の長さを設定している。さらに、柱状部13の断面寸法(柱状部13の長手方向に垂直な断面の寸法)は、想定される打撃力F
Rの大きさや、柱状部13を形成する素材のヤング率や、柱状部13の長さなどによっても異なるため、特に限定されない。しかし、柱状部13の断面寸法を小さくしすぎると、柱状部13の強度を維持するのが困難になり、柱状部13が破損しやすくなるおそれがある。一方、柱状部13の断面寸法を大きくしすぎると、柱状部13が変形しにくくなり、得られるモーメントMや並進力Fの測定精度を高く維持することが困難になるおそれがある。このため、柱状部13の断面積は、通常、0.1〜10cm
2とされ、好ましくは、0.5〜5cm
2とされる。柱状部13の断面寸法は、場所によって変化させてもよいが、この場合には、柱状部13が複雑な形状となり、柱状部13の製造が困難になるおそれがある。また、モーメントMや並進力Fの算出方法が複雑になるおそれもある。このため、柱状部13の断面寸法は、被打撃部12に打撃力F
Rを加えた際に柱状部13がその中心軸に沿って一様に曲げ変形するように、場所にかかわらず一定にすると好ましい。すなわち、柱状部13は、四角柱や円柱など、できるだけ単純な形状とすると好ましい。第一実施態様の分離型モーメント印加装置10において、柱状部13の断面は、いずれの場所においても一辺の長さが1cmの正方形となっており、その全体は直方体となっている。
【0026】
(4)被打撃部
被打撃部12は、ハンマ70などによって打撃力F
Rを加えるための部分となっている。第一実施態様の分離型モーメント印加装置10において、被打撃部12は、
図5に示すように、正面視逆三角形状となっており、柱状部13よりも外方(
図5の左右方向)に張り出した張出部12a(同図において網掛けハッチングで示した部分)を有する形態となっており、張出部12aにおける下面が打撃力を加えるための被打撃面12bとなっている。このため、被打撃部12に打撃力F
Rが加えられた分離型モーメント印加装置10を、
図4(c)に示すように、試料100から跳ね上げさせることが可能となっている。第一実施態様の分離型モーメント印加装置10においては、被打撃部12の張出部12aに紐通し孔12cを設けている。被打撃部12の素材は、打撃力F
Rを加えても塑性変形しない程度の強度を有するものであれば特に限定されない。被打撃部12の素材としては、アルミニウムや、鉄などの金属を好適に採用することができる。第一実施態様の分離型モーメント印加装置10においては、アルミニウムで被打撃部12を形成している。
【0027】
被打撃面12bの面積は、特に限定されないが、狭くしすぎると、ハンマ70を当てることが困難になる。このため、被打撃面12bの面積は、通常、1cm
2以上とされる。被打撃面12bの面積は、2cm
2以上であると好ましく、3cm
2以上であるとより好ましい。一方、被打撃面12bの面積を広くしすぎると、必然的に被打撃部12の寸法も大きくなり、分離型モーメント印加装置10を取り扱いにくくなるおそれがある。このため、被打撃面12bの面積は、通常、20cm
2以下とされる。被打撃面12bの面積は、15cm
2以下であると好ましく、10cm
2以下であるとより好ましい。第一実施態様の分離型モーメント印加装置10において、被打撃面12bは、幅約1.3cm、長さ約4cmの長方形状となっており、その面積は約5cm
2となっている。
【0028】
また、被打撃面12bの傾斜角度θ(
図5)は、上述した通り、0°よりも大きく、120°以下の範囲で適宜決定することができる。第一実施態様の分離型モーメント印加装置10では、一般的なハンマ70(
図4)で被打撃面12bを容易に打撃することができるようにすることを考慮して、被打撃面12bの傾斜角度θを30°に設定している。ここで、被打撃面12bの傾斜角度θを決定する目安となる考え方について説明しておく。分離型モーメント印加装置10の被打撃部12をハンマ70で打撃した際に、吸着部11が試料100から分離する態様には、打撃力F
Rの上向き成分によって試料100から分離される場合と、打撃力F
Rによって生じたモーメントによって試料100から分離される場合との2通りがある。
【0029】
まず、吸着部11が打撃力F
Rの上向き成分によって試料100から分離される場合について説明する。簡単のため、水平に支持された試料100の上面に分離型モーメント印加装置10を垂直(柱状部13が鉛直)となるように吸着させた場合について説明する。
図10は、分離型モーメント印加装置10がその被打撃部12に加えられた打撃力F
Rの上向き成分によって試料100から分離される場合について説明する図である。
図10から、被打撃部12に打撃力F
Rを加えた際に、分離型モーメント印加装置10が試料100の表面に平行な方向に滑らないための条件は、試料100の表面と吸着部11との間の静止摩擦係数をμとし、試料100に対する吸着部11の吸着力をF
MAGとし、分離型モーメント印加装置10の質量をmとし、重力加速度をgとすると、下記式1によって与えられる。
【数1】
【0030】
また、
図10から、被打撃部12に打撃力F
Rを加えた際に、分離型モーメント印加装置10の吸着部11が試料100の表面から分離する条件は、下記式2によって与えられる。
【数2】
【0031】
上記式1,2から、下記式3が成立する。
【数3】
したがって、吸着部11が打撃力F
Rの上向き成分によって試料100から分離されることを想定した場合には、被打撃面12bの傾斜角度θは、上記式3を満たす値に設定すればよいことになる。
【0032】
次に、打撃力F
Rによって生じたモーメントによって試料100から分離される場合について説明する。ここでも、簡単のため、水平に支持された試料100の上面に分離型モーメント印加装置10を垂直となるように吸着させた場合について説明する。
図11は、分離型モーメント印加装置10の被打撃部12に打撃力F
Rが加えられた際に、その打撃力F
Rに起因して吸着部11の角部における点O回りに生じたモーメントによって、分離型モーメント印加装置10が試料100から分離される場合について説明する図である。打撃力F
Rに起因して点O回りに生じるモーメントをM
HAMとすると、モーメントM
HAMは、下記式4によって表わされる。
【数4】
ただし、試料100の表面から打撃点Rまでの距離をL
10とし、打撃点Rから点Oまでの試料100の表面に沿った距離をL
11とした。
【0033】
また、被打撃部12に打撃力F
Rを加えた際に、吸着部11の吸着力(磁力)に起因して点O回りに生じるモーメントをM
MAGとすると、モーメントM
MAGは、下記式5によって表わされる。
【数5】
ただし、試料100に対する吸着部11の吸着面単位面積当たりの吸着力をf
MAGとし、吸着部11の吸着面における紙面(
図11)左右方向での幅をw
1とし、紙面(
図11)に垂直な方向での幅をw
2とした。また、x軸は、紙面(
図11)左右方向にとり、点Oを原点として左向きを正とした。
【0034】
このとき、吸着部11が試料100から分離するためには、モーメントM
HAMがモーメントM
MAGよりも大きければよいので、上記式4,5から下記式6が導かれる。
【数6】
したがって、吸着部11が打撃力F
Rによって生じたモーメントによって試料100から分離されることを想定した場合には、被打撃面12bの傾斜角度θは、上記式6を満たす値に設定すればよいことになる。
【0035】
(5)歪み検知手段
歪み検知手段14,15は、被打撃部12に打撃力F
Rが加えられた際に柱状部13の所定箇所に生ずる歪みを検知するためのものとなっている。第一実施態様の分離型モーメント印加装置10においては、
図5に示すように、分離型モーメント印加装置10の先端(吸着部11の吸着面)から距離L
Aの箇所(点A)における柱状部13の側面と、分離型モーメント印加装置10の先端から距離L
Bの箇所(点B)における柱状部13の側面とに歪み検知手段14を固定しており、柱状部13の点Cにおける側面に歪み検知手段15を固定している。歪み検知手段14,15は、柱状部13の片側の側面にのみ設けてもよいが、第一実施態様の分離型モーメント印加装置10においては、柱状部13の点A,B,Cにおける両側の側面に歪み検知手段14,15を対称に設けている。これにより、歪み検知手段14の測定値に対する、柱状部13の中心軸方向に引張力として作用する構造物に印加された並進力の影響や、歪み検知手段15の測定値に対するモーメントの影響や、計測点(点A,B,C)の温度変化の影響をキャンセルすることが可能となっている。
【0036】
第一実施態様の分離型モーメント印加装置10において、点Aの両側に固定された歪み検知手段14は、被打撃部12に打撃力F
Rを加えた際に柱状部13の点A回りに発生する曲げモーメントM
Aを求めるためのものとなっている。また、点Bの両側に固定された歪み検知手段14は、被打撃部12に打撃力F
Rを加えた際に柱状部13の点B回りに発生する曲げモーメントM
Bを求めるためのものとなっている。この曲げモーメントM
Aと曲げモーメントM
Bの大きさが分かれば、被打撃部12に打撃力F
Rを加えた際に試料100の点P回りに印加されるモーメントMの大きさを知ることができる。さらに、点Cの両側に固定された歪み検知手段15は、被打撃部12に打撃力F
Rを加えた際に柱状部13の点Cに発生する引張力F
Cを求めるためのものとなっている。引張力F
Cは、被打撃部12に打撃力F
Rを加えた際に試料100の点Pに印加される並進力Fに等しい。このため、引張力F
Cが分かれば、試料100に印加された並進力Fを知ることができる。第一実施態様の分離型モーメント印加装置10において、点Cは、点Aと点Bの中点としたが、点Cは、柱状部13における他の部分であってもよい。
【0037】
歪み検知手段14,15としては、従来用いられている各種の歪みセンサを用いることができる。なかでも、柱状部13における所定箇所(点A,B,C近傍)に追従して変形する検知部を備え、該検知部が前記所定箇所に追従して変形する際に生じ得る該検知部の電気抵抗や磁束密度の変化により、前記所定箇所の歪みを検知する歪みゲージと呼ばれるものが一般的である。柱状部13における点A,B,C近傍のヤング率や断面係数が既知であるならば、歪みゲージによって検知された点A,B,C近傍の歪みから、点A回りに発生した曲げモーメントM
A点B回りに発生した曲げモーメントM
B及び点Cに発生した引張力F
Cを計算によって求めることができる。
【0038】
以下、歪み検知手段14によって検知された曲げモーメントM
A及び曲げモーメントM
Bから、被打撃部12に打撃力F
Rを加えた際に試料100の点P回りに印加されるモーメントMの大きさが求められる原理について説明する。
図5に示すように、被打撃部12に打撃力F
Rを加えた際に、分離型モーメント印加装置10の先端(吸着部11の吸着面)から距離L
Qの点Qに発生する力の柱状部13の中心軸方向に垂直な成分の大きさをF
Qとし、柱状部13の点Q回りに発生する曲げモーメントの大きさをM
Qとすると、その際に試料100における点P回りに印加されるモーメントMは、下記式7で表わすことができる。
【数7】
【0039】
また、曲げモーメントM
Aと曲げモーメントM
Bは、それぞれ下記式8,9で表わすことができる。
【数8】
【数9】
【0040】
上記式8,9からF
QとM
Qを求め(F
QとM
QをL
A,L
B,L
Q,M
A,M
Bを用いて表し)、そのF
QとM
Qを上記式7に代入してMについて整理すると、下記式10が得られる。
【数10】
上記式10は、距離L
A,L
Bが既知であれば、曲げモーメントM
A,M
Bを測定することにより、被打撃部12に打撃力F
Rを加えた際に試料100の点P回りに印加されるモーメントMを求めることができることを意味している。
【0041】
(6)試料の振動特性の評価方法
続いて、第一実施態様の分離型モーメント印加装置10を用いて行う試料100の振動特性の評価方法の一例について説明する。試料100の振動特性の評価は、
図7に示すように、分離型モーメント印加装置10を試料100に吸着させた状態でその被打撃部12をハンマ70により打撃し、分離型モーメント印加装置10を試料100から分離させる際の、試料100の振動を観察することにより行う。本例において、試料100は、その一端側を固定手段200に固定することにより、片持ち梁状に支持させた。分離型モーメント印加装置10における歪み検知手段14,15は、ブリッジボックス30、ハイパスフィルタ40及びFFTアナライザ50を介してパーソナルコンピュータ60に接続している。
【0042】
また、試料100の所定箇所(点S)には、加速度ピックアップ20(加速度センサ)を取り付けおく。本例では、2つの加速度ピックアップ20a,20bを取り付けており、これらは、ハイパスフィルタ40を介してFFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)アナライザ50に接続している。FFTアナライザ50は、パーソナルコンピュータ60に接続している。この加速度ピックアップ20a,20bによって、試料100における点Sの加速度x”(文字変数の右上の「”」は該文字変数を時間で2回微分することを意味する。以下同じ。)及び点S回りの角加速度φ”を検知することができる。
【0043】
例えば、加速度センサ20aが検知した加速度をx
a”とし、加速度センサ20bが検知した加速度をx
b”とすると、加速度x”は、下記式11に示すように、加速度x
a”とx
b”の平均値により求めることができる。各式中の各文字における右下の添え字の「n」は、各測定(n=1,2)を意味している。
【数11】
【0044】
また、加速度センサ20a,20bの中心間の距離をL
4とすると、角加速度φ”は、下記式12によって求めることができる。
【数12】
【0045】
さらに、分離型モーメント印加装置10に対してハンマ70で打撃力を加えた際の加速度x”及び角加速度φ”は、加速度/並進力の周波数応答関数をH
11とし、加速度/モーメントの周波数応答関数をH
12とし、角加速度/並進力の周波数応答関数をH
21とし、角加速度/モーメントの周波数応答関数をH
22とすると、下記式13によって表わされる。
【数13】
【0046】
したがって、測定回数を2回(n=1,2)とすると下記式14が得られる。
【数14】
【0047】
この上記式14を用いることにより、試料100の周波数応答関数H
11,H
12,H
21,H
22を求めることができ、試料100の振動特性を評価することができる。ただし、時間窓の両端で信号レベルが異なる場合、そのままでは時間窓が影響して周波数応答関数H
11,H
12,H
21,H
22を算出することができない。このため、本実験では、
図7に示すように、ハイパスフィルタ40をFFTアナライザ50の入力側に接続し、低周波数成分の影響を除去できるようにした。ハイパスフィルタ40は、カットオフ周波数が0.7Hzで、カットオフスロープが−20dB/decのものを用いた。
【0048】
2.第二実施態様の分離型モーメント印加装置
次に、第二実施態様の分離型モーメント印加装置について説明する。
図8は、本発明の第二実施態様の分離型モーメント印加装置10を試料100に吸着させた状態を示した正面図である。上述した第一実施態様の分離型モーメント印加装置10では、
図5に示すように、被打撃部12が正面視逆三角形状のブロックとなっており、被打撃面12bの傾斜角度θが30°となっていた。これに対し、第二実施態様の分離型モーメント印加装置10では、
図8に示すように、被打撃部12が柱状部13に対して垂直な方向に延びる矩形状のブロックとなっている(分離型モーメント印加装置10が正面視T字状となっている)。被打撃面12bは、この被打撃部12における下面(試料100側を向く面)となっており、被打撃面12bの傾斜角度θが90°となっている。このような形態の分離型モーメント印加装置10を用いても、試料100における所定点P回りのモーメントMを印加することができる。第二実施態様の分離型モーメント印加装置10において、被打撃部12の形態以外の他の構成については、第一実施態様の分離型モーメント印加装置10と同様であるため、当該他の構成についての説明は割愛する。
【0049】
ところで、第二実施態様の分離型モーメント印加装置10を打撃する場合において、ハンマ70は、一般的なものを用いてもよいが、この場合には、分離型モーメント印加装置10における被打撃面12b以外の部分や試料100にハンマ70を当てることなく、ハンマ70で被打撃面12bを打撃することが困難になる。このため、第二実施態様の分離型モーメント印加装置10においては、
図9に示すように、柄71と、柄71の先端に固定されて柄71に対して垂直な向きに凹んだ溝72aを有する断面コの字状の打撃体72とで構成されたものを用いている。
図9は、本発明の第二実施態様の分離型モーメント印加装置10を特殊なハンマ70を用いて打撃する状態を示した図である。このハンマ70の打撃体72における溝72aの内部に分離型モーメント印加装置10の被打撃部12における張出部12aを挿入した状態でハンマ70の柄71を試料100とは反対側に引っ張ることにより、ハンマ70を被打撃面12b以外の箇所に干渉させることなく、被打撃面12bに打撃力を加えることができる。
【0050】
3.実験
(1)実験方法
本発明の分離型モーメント印加装置の有効性を検証するため、試料100の振動特性を評価する実験を行った。この実験は、
図7に示すシステムを用い、上記「1.第一実施態様の分離型モーメント印加装置」における「(6)試料の振動特性の評価方法」で記載した方法で行った。本発明の分離型モーメント印加装置10としては、
図5及び
図6に示した第一実施態様の分離型モーメント印加装置10を使用した。試料100は、鉄(SS400)製の板材を採用し、その一端側を固定手段200によって片持ち梁状に固定した。
図7において、試料100における突き出した部分の先端から基端までの距離L
1は500mmとし、試料100における突き出した部分の先端から加速度センサ20の固定点Sまでの距離L
2は400mmとし、試料100における突き出した部分の先端から分離型モーメント印加装置10の吸着点Pまでの距離L
3は225mmとし、加速度センサ20(加速度センサ21,22)の中心間の距離L
4は8.6mmとした。
【0051】
さらに、比較のため、
図7に示したものと同じシステムを用いて、従来の分離型モーメント印加装置についても同様の測定を行った。従来の分離型モーメント印加装置としては、
図3に示したものを用いた。張出部12aを有する被打撃部12が設けられていない以外の構成(吸着部11の寸法形状や素材、柱状部13の寸法形状や素材、歪み検知手段14,15の種類や配置、試料100の寸法形状や素材や固定方法、加速度センサ20の種類や配置、分離型モーメント印加装置を吸着させる箇所など)については、本発明の分離型モーメント印加装置と同じである。
【0052】
(2)実験結果
図12は、本発明の分離型モーメント印加装置を用いて試料に加振力を加えた際のモーメントMの時間変化を示したグラフである。
図13は、本発明の分離型モーメント印加装置を用いて試料に加振力を加えた際の並進力Fの時間変化を示したグラフである。
図14は、従来の分離型モーメント印加装置を用いて試料に加振力を加えた際のモーメントMの時間変化を示したグラフである。
図15は、従来の分離型モーメント印加装置を用いて試料に加振力を加えた際の並進力Fの時間変化を示したグラフである。
図16は、本発明及び従来の分離型モーメント印加装置を用いて試料に印加したモーメントMのオートパワースペクトルをそれぞれ示したグラフである。
図17は、本発明及び従来の分離型モーメント印加装置を用いて試料に印加した並進力Fのオートパワースペクトルをそれぞれ示したグラフである。
【0053】
従来の分離型モーメント印加装置を用いた場合では、
図14及び
図15の結果から分かるように、試料に対してモーメントMや並進力Fがステップ状に印加されている。これに対し、本発明の分離型モーメント印加装置を用いた場合では、
図12及び
図13の結果から分かるように、試料に対してモーメントMや並進力Fがインパルス状に印加されている。このことから、本発明の分離型モーメント印加装置は、従来の分離型モーメント印加装置よりも、試料に印加するモーメントMや並進力Fをインパルス状とすることができるものであることが分かった。また、
図12と
図14、及び
図13と
図15をそれぞれ見比べると、本発明の分離型モーメント印加装置を用いた場合では、従来の分離型モーメント印加装置を用いた場合の約2倍の大きさのモーメントM及び並進力Fが試料に印加されていることが分かる。このことから、本発明の分離型モーメント印加装置は、従来の分離型モーメント印加装置よりも大きなモーメントMや並進力Fを試料に印加できるものであることが分かった。
【0054】
また、
図16及び
図17の結果からも分かるように、本発明の分離型モーメント印加装置を用いた場合では、従来の分離型モーメント印加装置を用いた場合よりも、周波数に対するモーメントMや並進力Fの変動が小さい(特に100Hz以下の周波数帯域でのモーメントMの変動が小さい)ことが分かる。これは、従来の分離型モーメント印加装置では、試料の表面に対して平行な方向に打撃されるため、分離型モーメント印加装置の吸着部が試料の表面に対して滑りながら分離することなどによる影響が表れたものの、本発明の分離型モーメント印加装置では、そのような影響が小さかったためと考えられる。本発明の分離型モーメント印加装置を用いると、低周波帯域から高周波帯域までに亘ってモーメント及び並進力を計測することが可能であることが分かった。
【0055】
さらに、本実験では、有限要素法による解析値との比較も行った。この有限要素法による解析では、試料を2.5mmのメッシュ間隔で分割したシェルメッシュとした。また、試料の振動の減衰比は、同じ試料をインパクトハンマによって打撃する打撃実験を事前に行い、当該打撃実験で得られた減衰比を採用した。本発明及び従来の分離型モーメント印加装置による測定は、上述したものと同じシステムを用いて、同じ方法を採用して行った。
【0056】
図18は、本発明及び従来の分離型モーメント印加装置を用いて試料を加振した場合における単位並進力当たりの加速度についての周波数応答関数の測定値と、有限要素法による解析によって求めた周波数応答関数H
11(加速度/並進力)とをそれぞれ示したグラフである。
図19は、
図18に示したそれぞれの場合における周波数と位相との関係をそれぞれ示したグラフである。
図20は、本発明及び従来の分離型モーメント印加装置を用いて試料を加振した場合における単位モーメント当たりの加速度についての周波数応答関数の測定値と、有限要素法による解析によって求めた周波数応答関数H
12(加速度/モーメント)とをそれぞれ示したグラフである。
図21は、
図20に示したそれぞれの場合における周波数と位相との関係をそれぞれ示したグラフである。
図22は、本発明及び従来の分離型モーメント印加装置を用いて試料を加振した場合における単位並進力当たりの角加速度についての周波数応答関数の測定値と、有限要素法による解析によって求めた周波数応答関数H
21(角加速度/並進力)とをそれぞれ示したグラフである。
図23は、
図22に示したそれぞれの場合における周波数と位相との関係をそれぞれ示したグラフである。
図24は、本発明及び従来の分離型モーメント印加装置を用いて試料を加振した場合における単位モーメント当たりの角加速度についての周波数応答関数の測定値と、有限要素法による解析によって求めた周波数応答関数H
22(角加速度/モーメント)とをそれぞれ示したグラフである。
図25は、
図24に示したそれぞれの場合における周波数と位相との関係をそれぞれ示したグラフである。
【0057】
図18、
図20、
図22及び
図24を見ると、本発明の分離型モーメント印加装置を用いて求めた周波数応答関数H
11,H
12,H
21,H
22も、従来の分離型モーメント印加装置を用いて求めた周波数応答関数H
11,H
12,H
21,H
22も、解析値に概ね一致していることが分かる。しかし、従来の分離型モーメント印加装置を用いて求めた周波数応答関数H
11,H
12,H
21,H
22では、周波数応答関数H
11(
図18)における40Hz付近、周波数応答関数H
12(
図20)における40Hz付近と630Hz付近、周波数応答関数H
21(
図22)おける40Hz付近と150Hz付近及び700Hz付近、及び周波数応答関数H
22(
図24)における40Hz付近と150Hz付近と600Hz付近と770Hz付近の反共振周波数では、解析値から大きくずれていることが分かる。また、従来の分離型モーメント印加装置を用いて求めたモーメントMに対する周波数応答関数H
12,H
22(
図20及び
図24)では、高周波数帯域において解析値よりも大きく計測される傾向があることも分かった。
【0058】
これに対し、本発明の分離型モーメント印加装置を用いて求めた周波数応答関数H
11,H
12,H
21,H
22では、上記の反共振周波数のうち、周波数応答関数H
12(
図20)における630Hz付近、及び周波数応答関数H
22(
図24)における600Hz付近と770Hz付近では、解析値に一致しなかったものの、周波数応答関数H
11(
図18)における40Hz付近、周波数応答関数H
12(
図20)における40Hz付近、周波数応答関数H
21(
図22)における40Hz付近と150Hz付近及び700Hz付近、及び周波数応答関数H
22(
図24)における40Hz付近と150Hz付近の反共振周波数では、解析値に概ね一致している。また、従来の分離型モーメント印加装置を用いた場合には、解析値よりも大きく計測される傾向のあった、モーメントMに対する周波数応答関数H
12,H
22(
図20及び
図24)の高周波数帯域においても、本発明の分離型モーメント印加装置を用いた場合には、ある程度、解析値に近い値をとっている。以上のことから、本発明の分離型モーメント印加装置を用いた場合には、従来の分離型モーメント印加装置を用いた場合よりも、解析値に近い周波数応答関数を得られることが分かった。