(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般に、静電塗装とは、被塗物をアース極とし、塗装装置側の電極を陰極とし、これらの間に高電圧を加えることにより静電界(電気力線)を形成させるとともに、塗料粒子をマイナスに帯電させ、静電気力によって被塗物に塗料を効率良く塗着させる塗装方法である。静電塗装によって、塗装効率の向上(塗装つきまわり性の向上による塗装時間の短縮化)や、塗着効率の向上(被塗物に塗着する塗料の量比率の向上による塗料の使用量の低減化)などの効果を得ることができる。
【0003】
また、静電塗装の被塗物は電極であるため、導電性を有することが必要であり、非導電性被塗物に静電塗装を実施する場合、以下の技術が用いられる。
・導電材又は導電剤の混入による素材への導電性付与。
・導電プライマーなどの導電膜の塗布による被塗面への導電性付与。
・界面活性剤の塗布などの帯電防止処理による被塗面への一時的な弱導電性付与。
・被塗面の接地及び導電性塗料の使用による被塗面への弱導電性付与。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
導電材等の混入による導電性の付与の場合、混入する導電材等によって最終製品の性能が低下するおそれがある。また、導電材等の混入はコストの上昇を招く。
【0006】
導電膜の塗布による導電性を付与の場合、静電塗装の前工程として導電膜の塗布工程が必要となり、工数の増大及びコストの上昇を招く。
【0007】
界面活性剤の塗布などの帯電防止処理による弱導電性の付与の場合、界面活性剤を被塗面に万遍なくムラなく塗布しなければならない。また、帯電防止効果は、被塗面上の界面活性剤皮膜に空気中の水分が吸着して形成される水分子膜の発現によって得られることから、一般に60%を超える一定の相対湿度管理が必要であり、湿度管理が不十分であると、塗着効率の変動や塗装ムラが生じ、塗装品質の低下を招く。このため、上記導電膜を塗布する場合と同様に、静電塗装の前工程として界面活性剤の塗布工程が必要となり、工数の増大及びコストの上昇を招く。特に、自動車のラジエータグリルのような複雑な形状を有する被塗物に対しては、相応の設備や管理が必要となり、コストが大幅に上昇してしまう。
【0008】
これに対し、被塗面の接地及び導電性塗料の使用による弱導電性付与の場合、導電性塗料を被塗面の接地部近傍から塗り拡げていくため、工数の増大やコストの上昇は抑制される。しかし、静電塗装中において、接地部(例えば被塗物を保持する冶具の金属部分)の通電状態や接地部と被塗物との接触状態を継続して維持させなければならない。このため、接地部の汚れの除去を頻繁に行うなどの細かいメンテナンスが必要であり、作業が煩雑である。また、導電性塗料の塗布によって被塗面に弱導電性を付与するため、塗装の初期段階では、弱導電性が付与されていない被塗面への塗装となり、つきまわり性の向上や塗着効率の向上などの静電塗装の効果を得ることができない。
【0009】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたものであって、作業の煩雑化を招くことなく、工数の増加やコストの上昇を抑制しつつ、良好な静電塗装を継続して行うことが可能な非導電性被塗物の静電塗装方法及び静電塗装用ガンの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成すべく、本発明に係る静電塗装方法では、マイナスに帯電した導電性液体塗料を、フリーイオン
の発生を抑制した状態で被塗面に塗布する。
【0012】
フリーイオンの発生は、導電性液体塗料に高電圧電極
を接触させて高電圧を直接印加して導電性塗料を
放電極としながらマイナスに帯電させることによって抑制
される。導電性
液体塗料の体積固有抵抗値は、100MΩcm以下が好ましく、20MΩcm以下がさらに好適である。また、印加する電圧は、60kV以上が好適である。
【0013】
なお、フリーイオンとは、コロナ放電によって塗料を負に帯電させる際に、塗料の帯電に利用されないイオンであり、主にイオン化した空気として存在する。
【0014】
上記方法では、フリーイオンを抑制した状態で弱導電性の被塗面の静電塗装が行われ、フリーイオンの抑制は、被塗面に到達するイオン量を低減し、弱導電性の被塗面の帯電を抑制する。このため、弱導電性の被塗面の帯電を低レベルに維持することができ、良好な静電塗装を継続して行うことができる。
【0016】
また、高電圧を直接印加して導電性
液体塗料をマイナスに帯電させてフリーイオンの発生を抑制する
ので、コロナ放電電極とフリーイオン除去電極が不要であり、フリーイオン除去電極の塗料汚れ問題が無い点、コロナ放電電極によるスパーク危険性問題が無い点、そしてコロナ放電電極と被塗物間の電気力線が無くなることによる被塗物凹部への塗料入り込み性向上に代表される塗装均一性が向上する点で有利である。
【0018】
被塗
面が非導電性
被塗物の
表面の場合、被塗面
に帯電防止処理
を施してもよく、
非導電性被塗
物を接地
してもよい。被塗面の帯電防止処理は、被塗面に帯電防止液をワイプ塗布することによって行ってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、作業の煩雑化を招くことなく、工数の増加やコストの上昇を抑制しつつ、良好な静電塗装を継続して行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態を図面を参照して説明する。なお、以下の説明における上下は、
図1中の上下方向に対応し、前後は、
図1中の左右に対応する。
【0022】
図1〜
図3に示すように、本実施形態のスプレーガン(静電塗装用ガン)1は、例えば自動スプレーガンであり、非導電性被塗物20の静電塗装に使用される。スプレーガン1は、絶縁樹脂製のガン本体2と、ガン本体2の先端部に取り付けられた絶縁樹脂製のペイントノズル3と、ガン本体2の前端部に取り付けられてペイントノズル3の外周を覆う絶縁樹脂製のエアキャップ(例えば扇パターンの噴霧を形成するタイプ)4とを備える。
【0023】
ガン本体2内の上部には、高電圧発生回路を構成する昇圧トランス及び高圧整流回路を一体にモールドしたカスケード(高電圧発生装置)5が収納され、ガン本体2内の前上部には、導電性を有する連体棒6が下方に向かって配設されている。カスケード5の前端は、連体棒6と当接し、両者は電気的に接続している。
【0024】
ペイントノズル3の中心部には孔10が形成され、この孔10に絶縁樹脂製の電極外筒7が収容され支持されている。電極外筒7の後端部は、ガン本体2に形成された孔11に挿入されている。電極外筒7の中心部には、コロナピン(例えばタングステン製の放電極)8が収容され支持されている。孔10の前端は、吐出口12を介して外部と連通し、コロナピン8の前端は、吐出口12を挿通して電極外筒7の前端から突出する。コロナピン8は、電極外筒7に内蔵された保護抵抗14の前端側に接続されている。保護抵抗14の後端側は、電極外筒7の後端から露出し、孔10に収容されたスプリング9を介して連体棒7に電気的に接続されている。
【0025】
エアキャップ7には、2種類のエア噴射口(図示省略)が設けられている。一方のエア噴射口は、吐出された塗料を霧化する霧化エアとして機能し、他方の噴射口は、扇パターンの噴霧を形成するパターンエアとして機能する。
【0026】
電源コネクタ(図示外)から取り入れられた高周波電圧は、グリップ3内の配線ケーブル(図示外)を介してカスケード5内の昇圧トランスに供給される。供給された高周波電圧は、昇圧トランスで昇圧された後、高電圧整流回路で更に昇圧されると同時に整流され、マイナス数万Vの直流高電圧が発生する。発生した直流高電圧は、カスケード5から連体棒6、保護抵抗14及びスプリング9を介してコロナピン8に印加され、コロナ放電(ピン先端に集中する不平等電界により出現する安定した空気絶縁破壊放電)により大量のマイナスイオンを発生する。印加する高電圧は、60kV以上が好適である。
【0027】
ガン本体2には、孔11と連通する塗料流通孔16が形成されている。導電性塗料は、塗料流通孔16から孔11へ供給され、孔10を流通して吐出口
12から吐出する。
【0028】
ガン本体2の前端部の外周には、アース線に接続されたステンレス製のフリーイオン除
去電極(接地電極)15が着脱自在に装着されている。フリーイオン除去電極15は、二
分割分離着脱型の板部材であり、コロナピン
8の後方近傍の広範囲に配置される。
【0029】
非導電性被塗物20の被塗面21には、帯電防止処理によって弱導電性が予め付与され、非導電性被塗物20の接地部23は、アース線に接続されて接地される。
【0030】
帯電防止処理は、被塗面21に帯電防止液(例えば4級アンモニウム塩界面活性剤を0.1〜10%程度にイソプロピルアルコールに溶解させた溶液)をワイプ塗布することによって行われ、ワイプ塗布によって被塗面21上に帯電防止処理皮膜24が形成される。ワイプ塗布とは、帯電防止液を含浸させた布で被塗面21を拭くことであり、ワイプ塗布によって被塗面21に帯電防止液が塗布されるとともに、被塗面21に付着したゴミや埃が拭き取られる。ワイプ塗布は、塗布ムラが発生する低品質な処理であり、その作業は極めて簡易である。
【0031】
一般に、静電塗装の前処理として非導電性被塗物20の被塗面21に帯電防止液を塗布する場合には、塗装品質の低下を防止するため、スプレー塗布や浸漬塗布によって被塗面21の全域に均一な連続被膜を形成する。これに対し、本実施形態では、後述するフリーイオンの抑制効果によって、ワイプ塗布のような低品質な前処理であっても塗装品質が低下せず、前処理の簡略化を図ることができる。
【0032】
コロナ放電は、主にコロナピン
8とフリーイオン除去電極15との間で発生し、塗料吐
出口29から吐出され霧化された塗料粒子は、発生した放電域を突き抜けながら飛行する
ことによって、電荷を受け取りマイナスに帯電する。帯電した塗料粒子は、ミラー効果と
呼ばれる接地物表面に現れるプラス電荷と塗料粒子のマイナス電荷間に形成される静電気
力によって引き付けられて、被塗面21に到達する。被塗面21に到達した電荷は、塗着
した導電性塗料と帯電防止処理皮膜24とによって付与される弱い導電性により、接地部
23から排出される。一方、導電性塗料の帯電に寄与しなかったフリーイオンは微少質量
であるために殆ど慣性飛行すること無く、電気力線に沿ってフリーイオン除去電極15へ
飛行して衝突し、電荷を失う。すなわち、フリーイオン除去電極によって、フリーイオン
が低減又は除去される。このように、被塗面21には、主に塗着する塗料粒子が担持する
電荷が到達し、フリーイオンによってイオン化された空気の接触による被塗面21の帯電
が抑制される。
【0033】
上記塗着した導電性塗料と帯電防止処理皮膜24とによって付与される弱い導電性は、帯電防止処理皮膜24上に導電性塗料を膜厚30μm程度塗布した直後において、700MΩ
/□程度の表面抵抗値であることが確認された。これは、金属被塗物(表面抵抗値はほぼゼロΩ
/□)や導電プライマーが塗布された被塗物(表面抵抗値は10MΩ
/□程度)と比較すると、はるかに高い表面抵抗値である。従って、フリーイオンを抑制せずに静電塗装を行った場合、フリーイオンによって非導電性被塗物20に大量の電荷が供給され、接地部23からの電荷の排出が間に合わず、非導電性被塗物20が高レベルに帯電していくことになる。その結果、滞留する電荷が静電反発を引き起こし、静電反発は、塗装膜厚ムラ、塗装つきまわり不良、塗り薄、塗着効率の低下、塗装機器や塗装作業者への吹き戻りなどの様々な静電塗装不具合の発生を誘因する。このような不具合は、その発生防止の管理が難しく、特に自動車のラジエータグリルのような大型で複雑な形状の非導電性被塗物の場合、不具合の発生防止が不可能であり、導電材等の混入による導電性付与や導電プライマーの塗布による導電性付与によって、静電塗装が実現されているのが実状である。
【0034】
これに対し、本実施形態では、フリーイオンの抑制によって非導電性被塗物20の帯電を低レベルに維持することができるので、大型で複雑な形状の非導電性被塗物であっても、煩雑な管理を要することなく、工数の増加やコストの上昇を抑制しつつ、簡単な作業によって良好な静電塗装を継続して行うことができる。
【0035】
また、導電性塗料を使用する必要がないため、幅広い種類の塗料によって非導電性被塗物20の静電塗装を行うことができる。
【0036】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態を図面を参照して説明する。なお、以下の説明における上下は、
図2中の上下方向に対応し、前後は、
図2中の左右に対応する。また、第1の実施形態と共通する構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0037】
本実施形態は、導電性塗料を使用し、コロナ放電を行わず、導電性塗料に高電圧を直接印加して導電性塗料をマイナスに帯電させるものであり、フリーイオンの発生自体を抑制している。
【0038】
図4及び
図5に示すように、スプレーガン30のペイントノズル3には、第1の実施形態の絶縁樹脂製の電極外筒7に代えて、電極外筒7とほぼ同じ外形を有する金属製の高電圧直接印加電極(高電圧電極)31が設けられている。高電圧直接印加電極31の後端は、スプリング9を介して連体棒7に電気的に接続されており、第1の実施形態のようなコロナピン8は設けられていない。
【0039】
直流高電圧は、カスケード5から連体棒6及びスプリング9を介して高電圧直接印加電極31に供給され、孔10を流通する導電性塗料は、高電圧直接印加電極31に直接接触することによって印加され、導電性塗料そのものが放電極となって電荷を担持し、帯電塗料粒子となって吐出口12から吐出され霧化される。
【0040】
次に、高電圧直接印加電極31との接触によって印加された導電性塗料の状態について、
図6〜
図10を参照して説明する。
【0041】
図6〜
図10は、ガン本体の塗料霧化部であるエアキャップ7からのエアの噴射を完全に停止し、印加電圧を60kVに固定し、導電性塗料の体積固有抵抗値を変更して導電性塗料を吐出口12から水鉄砲状に吐出させた様子を撮影した写真である。
図6は200MΩcm、
図7は100MΩcm、
図8は50MΩcm、
図9は20MΩcm、
図10は10MΩcmである。
【0042】
これらの図から明らかなように、200MΩcm(
図6)のときの塗料液糸は、水鉄砲状の液糸であるのに対し、100MΩcm(
図7)のときの塗料液糸では、吐出後数cm先で液糸が静電反発を起こして棘状に分裂霧化していることが判る。また、棘状の分裂霧化は、導電性塗料の体積固有抵抗値が低くなるほど、塗料液糸内の電圧降下が小さくなって実効電圧が上昇することにより早期に発生し、棘状も顕著化することが判る。
【0043】
本実施形態では、高電圧を直接印加して導電性塗料をマイナスに帯電させてフリーイオンの発生自体を抑制する。このため、コロナ放電が不要であり、コロナ放電によるフリーイオンの発生自体が抑制される。従って、被塗面21の帯電をさらに低レベルに維持することができる。
【0044】
また、孔(塗料供給路)10に高電圧直接印加電極31を設けるという簡単な構造によって、コロナ放電によるフリーイオンの発生自体を抑制して、被塗面21の帯電を低レベルに維持することができ、良好な静電塗装を継続して行うことができる。
【0045】
特に、コロナ放電によるフリーイオンの発生自体を抑制するため、発生したフリーイオンの低減又は除去するためのフリーイオン除去電極が不要であり、フリーイオン除去電極の清掃や洗浄作業も発生しない。また、放電電流を低く抑えることができ、高電圧発生装置の低容量化を図ることができる。さらに、コロナピンとは異なり、高電圧直接印加電極31が外部に露出しないため、スパークの発生が抑制され、安全性が向上する。
【0046】
なお、水溶性塗料は、高い導電性を有しているため、塗料経路からの高電圧漏洩防止対策を条件として、本実施形態の塗料として使用可能である。
【0047】
<効果確認実験1>
次に、効果確認実験1について説明する。
【0048】
本実験では、非導電性被塗物として500ccのペットボトルを使用し、レシプロケータに取り付けた静電塗装用の自動スプレーガンを、縦方向に3往復レシプロさせ、ペットボトルの範囲でのみ塗料を吐出させて静電塗装を行った。その際、導電性塗料が被塗面の接地部近傍から塗り拡げられるように、スプレーガンの移動を設定した。導電性塗料に印加した高電圧は、0kV、30kV、60kV、90kVである。使用した導電性塗料は、2液ウレタン塗料に導電剤を添加したものであり、体積固有抵抗値は1MΩcmであった。ペットボトルの表面(被塗面)には、4級アンモニウム塩0.35%イソプロピルアルコール溶液をワイプ塗布した。
【0049】
効果確認実験1の結果を、
図11の表1に示す。この結果から、以下のことが判る。なお、第1の実施形態には、60kVでのコロナ放電+フリーイオン除去電極が対応し、第2の実施形態には、60kVでの直接印加が対応する。
【0050】
第1の実施形態及び第2の実施形態ともに、塗着効率が4.7%からそれぞれ23.7%と27.0%に大幅に向上しており、塗料使用量の節減と、塗着せずに破棄される塗料の大幅な削減が可能である。
【0051】
第1の実施形態及び第2の実施形態ともに、ペットボトルの背面へのつきまわり(背面塗装状態)が良好であり、側面や背面等に正対する塗装を省略することが可能である。このため、塗装軌跡の大幅な削減(塗装時間の短縮)が可能である。
【0052】
第2の実施形態は、第1の実施形態に比べて、塗装電流値が大幅に低減しており、電流の削減による高電圧発生装置の小型化(小容量化)が可能である。
【0053】
<効果確認実験2>
次に、効果確認実験2について説明する。
【0054】
本実験では、非導電性被塗物としてASA樹脂製のラジエータグリルを使用し、自動スプレーガンを備えた塗装ロボットによって、0kVでの直接印加(非印加)による塗装と、60kVでの直接印加(第2の実施形態)による静電塗装とを行った。なお、その他の条件は効果確認実験1と同様である。
【0055】
実験の結果、第2の実施形態の方が非印加よりも塗料使用量が28%低減し、ロボット塗装時間が60秒から30秒へ50%低減することが確認された。
【0056】
また、塗着効率向上とつきまわり向上との相乗効果として、凹凸面や側面にまで均等に塗膜が形成されていることが確認され、塗装の均一塗布性を実証することができた。
【0057】
<効果確認実験3>
次に、効果確認実験3について説明する。
【0058】
本実験では、効果確認実験1において、導電性塗料に印加する高電圧を60
kVとし、導電性塗料の体積固有抵抗値200MΩcmから0.5MΩcmまで変化させて、塗着効率を測定した。
【0059】
効果確認実験3の結果を、
図12に示す。この結果から、導電性塗料の体積固有抵抗値は、100MΩcm以下が好ましく、20MΩcm以下がさらに好適であることが判る。
【0060】
なお、上記実施形態では、非導電性被塗物20の被塗面21に弱導電性を付与する場合を説明したが、弱導電性素材からなる被塗物にも本発明は適用可能である。この場合、被塗面への弱導電性の付与を考慮することなく、静電塗装を行うことができる。
【0061】
また、上記実施形態では、帯電防止液の塗布による被塗面21の帯電防止処理と、被塗面21の接地及び導電性塗料の使用との双方によって、被塗面21に弱導電性を付与しているが、両者の一方のみによって被塗面21に弱導電性を付与してもよく、また、他の方法によって被塗面21に弱導電性を付与してもよい。
【0062】
また、上記第1の実施形態では、静電塗装用ガンとして、エアスプレータイプのスプレーガン1を使用する場合を説明したが、これに代えて、コロナ放電を行うエアレスタイプのスプレーガンを用いてもよい。
【0063】
また、上記第2の実施形態では、導電性塗料に高電圧を直接印加してマイナスに帯電させる静電塗装用ガンとして、エアスプレータイプのスプレーガン30を説明したが、本発明の静電塗用ガンはこれに限定されるものではなく、導電性塗料に高電圧を直接印加してマイナスに帯電させるための内部構造とフリーイオン発生する高電圧印加導電体(コロナ電極ピン、金属ベルカップ、金属スプレーキャップ、金属スプレーノズルなど)を絶縁体化した構造を有するエアレススプレーガンや回転霧化ガンであってもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、塗装装置側の電極を陰極として塗料粒子をマイナスに帯電させる場合について説明したが、塗装装置側の電極を陽極として塗料粒子をプラスに帯電させてもよい。
【0065】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、上記実施形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。