特許第5943297号(P5943297)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5943297
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】見切り構造及び時計
(51)【国際特許分類】
   G04B 19/10 20060101AFI20160621BHJP
【FI】
   G04B19/10 Z
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-175631(P2012-175631)
(22)【出願日】2012年8月8日
(65)【公開番号】特開2014-35231(P2014-35231A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2015年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096699
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿嶋 英實
(72)【発明者】
【氏名】丸山 善弘
【審査官】 櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−114572(JP,A)
【文献】 特開平08−248147(JP,A)
【文献】 特開平11−166983(JP,A)
【文献】 米国特許第05541895(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内に見切り板を取り付ける見切り構造において、
前記ケースの内周面に沿って前記ケースに対する前記見切り板の円周方向における取付誤差の範囲よりも小さいピッチで連続して設けられた第1凹凸部と、
前記ケースの前記第1凹凸部に対応する前記見切り板の外周面に沿って前記第1凹凸部と同じピッチで連続して設けられ、かつ前記第1凹凸部に嵌合する第2凹凸部と、
を備えていることを特徴とする見切り構造。
【請求項2】
請求項1に記載の見切り構造において、前記第1凹凸部と前記第2凹凸部とは、その凹凸のピッチが前記見切り板の円周方向の角度において0.3度〜0.5度の角度範囲内に設定されていることを特徴とする見切り構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の見切り構造において、前記第1凹凸部と前記第2凹凸部とは、それぞれローレット加工によって形成されていることを特徴とする見切り構造。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の見切り構造において、前記ケースは金属で形成されており、前記見切り板は合成樹脂で形成されていることを特徴とする見切り構造。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の見切り構造において、前記ケースと前記見切り板とには、その両方を互いに位置合わせるための位置合せ部が設けられていることを特徴とする見切り構造。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の見切り構造において、前記見切り板には目盛が所定の間隔で設けられていることを特徴とする見切り構造。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載の見切り構造を備えたことを特徴とする時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、腕時計などの時計に用いられる見切り構造及び時計に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、腕時計においては、特許文献1に記載されているように、腕時計ケースの内周面に鍔状の突起部を腕時計ケースの内側に向けて突出させて設け、この突起部の上側に位置する腕時計ケース内に見切り板を位置決めして配置するように構成された見切り構造が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭60−61687号公報
【0004】
このような腕時計の見切り構造では、見切り板を腕時計ケース内に位置決めするために、腕時計ケースの突起部の一部に切欠き部を設け、見切り板の下面に位置規制突起を設け、腕時計ケース内に見切り板を配置する際に、腕時計ケースの突起部の切欠き部に見切り板の位置規制突起を嵌合させることにより、見切り板を腕時計ケース内に位置決めするように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような腕時計の見切り構造では、腕時計ケースの突起部に切欠き部を高い精度で形成し、かつ見切り板の下面に位置規制突起を高い精度で形成しなければ、腕時計ケースに見切り板を正確に位置決めして配置することができないという問題がある。このため、腕時計ケースの製作および見切り板の製作が面倒で、時間がかかり、製作コストが高くなるという問題がある。
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、ケースおよび見切り板の製作が容易にでき、かつケースに対して見切り板を正確に位置決めすることができる見切り構造及び時計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、ケース内に見切り板を取り付ける見切り構造において、前記ケースの内周面に沿って前記ケースに対する前記見切り板の円周方向における取付誤差の範囲よりも小さいピッチで連続して設けられた第1凹凸部と、前記ケースの前記第1凹凸部に対応する前記見切り板の外周面に沿って前記第1凹凸部と同じピッチで連続して設けられ、かつ前記第1凹凸部に嵌合する第2凹凸部と、を備えていることを特徴とする見切り構造である。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、ケースの第1凹凸部と見切り板の第2凹凸部との嵌合によって、ケースに対して見切り板をその両方の取付誤差の範囲以内で正確に位置決めして配置することができる共に、第1凹凸部と第2凹凸部とを同じ形状で形成することができるので、ケースと見切り板とに第1凹凸部と第2凹凸部とを簡単にかつ容易に設けることができる。このため、ケースおよび見切り板の製作が容易にできると共に、ケースに対して見切り板を正確に位置決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】この発明を指針式の腕時計に適用した一実施形態を示した拡大正面図である。
図2図1に示された腕時計のA−A矢視における要部を破断して示した拡大斜視図である。
図3図1に示された腕時計の腕時計ケースを裏面側から見た拡大斜視図である。
図4図1に示された腕時計の見切り板を示した拡大斜視図である。
図5図1に示された腕時計における腕時計ケースの要部を示した拡大斜視図である。
図6図4に示された見切り板を裏面から見た状態における要部を示した拡大斜視図である。
図7図5に示された腕時計ケースの第1凹凸部と図6に示された見切り板の第2凹凸部とが嵌合した状態を示した要部の拡大裏面図である。
図8図1における腕時計の位置合せ部を示し、(a)は位置合せ部の見切りマークとケースマークとが一致している状態を示した要部の拡大斜視図、(b)は位置合せ部の見切りマークとケースマークとが位置ずれしている状態を示した要部の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1図8を参照して、この発明を指針式の腕時計に適用した一実施形態について説明する。
この腕時計は、図1および図2に示すように、金属製の腕時計ケース1を備えている。この腕時計ケース1の上部開口部には、時計ガラス2がパッキン2aを介して取り付けられている。この腕時計ケース1内における時計ガラス2の下側には、合成樹脂製の見切り板3が配置されている。
【0011】
また、この腕時計ケース1の3時側の側部には、図1に示すように、押釦スイッチ4が設けられており、この腕時計ケース1の12時側および6時側に位置する各側部には、バンド取付部5がそれぞれ設けられている。また、腕時計ケース1内における見切り板3の下側には、時計モジュール(図示せず)が配置されている。この時計モジュールは、指針6を運針させて時刻を指示する時計ムーブメントなどの時計機能に必要は各種の部品を備えている。さらに、この腕時計ケース1の下部には、裏蓋(図示せず)が取り付けられている。
【0012】
ところで、この腕時計ケース1の内周面には、図2および図3に示すように、見切り板3の周縁部を支持するための鍔状の支持突起部7が、腕時計ケース1の内側に向けて突出した状態で、環状に形成されている。また、見切り板3は、図2および図4に示すように、全体がリング状に形成され、腕時計ケース1の支持突起部7上に配置されて、時計ガラス2との間に挟まれるように構成されている。
【0013】
この見切り板3の上面には、図2および図4に示すように、外周側から内周側に向けて次第に低くなる傾斜面3aが形成されている。また、この見切り板3の下面には、腕時計ケース1の支持突起部7が挿入する装着凹部8が環状に形成されている。この装着凹部8は、下側および外周側に開放された凹部であり、その形状が支持突起部7と同じ形状に形成されている。
【0014】
この場合、腕時計ケース1の支持突起部7の内周面には、図2図5および図7に示すように、第1凹凸部10が支持突起部7の内周面に沿って連続して形成されている。また、見切り板3の装着凹部8の外周面、つまり腕時計ケース1の支持突起部7の内周面に設けられた第1凹凸部10が対応する装着凹部8内の外周面には、図2図6および図7に示すように、第1凹凸部10に嵌合する第2凹凸部11が装着凹部8の外周面に沿って連続して形成されている。
【0015】
第1凹凸部10と第2凹凸部11とは、図5図7に示すように、その各中心軸方向と平行する断面山形の凹凸であり、その凹凸のピッチPが、腕時計ケース1に対する見切り板3の円周方向における取付誤差の範囲よりも小さいピッチP、例えば凹凸のピッチPが見切り板3の円周方向の角度において0.3度〜0.5度の角度範囲で、好ましくは0.4度の角度に設定されている。
【0016】
すなわち、第1凹凸部10と第2凹凸部11との凹凸のピッチPは、図7に示すように、見切り板3の円周方向の角度において0.3度〜0.5度の角度範囲に設定されていることにより、第1凹凸部10と第2凹凸部11とが嵌合した際に、腕時計ケース1と見切り板3との円周方向における取付誤差を1度以下の微小な角度にすることが可能になる。
【0017】
また、この第1凹凸部10と第2凹凸部11とは、それぞれローレット加工によって形成されている。このローレット加工とは、図示しないが、第1凹凸部10と第2凹凸部11と同じ凹凸が表面に形成された回転体を工具の先端に回転自在に取り付け、この工具の回転体によって腕時計ケース1の支持突起部7の内周面または見切り板3の装着凹部8の外周面に凹凸を形成する加工である。
【0018】
すなわち、このローレット加工は、工具の回転体を腕時計ケース1の支持突起部7の内周面または見切り板3の装着凹部8の外周面に押し付け、この状態で腕時計ケース1または見切り板3を回転させて、工具の回転体を各周面に沿って相対的に転動させると、この回転体の表面の凹凸を各周面に転写させることにより、腕時計ケース1の支持突起部7の内周面に第1凹凸部10を形成し、また見切り板3の装着凹部8の外周面に第2凹凸部11を形成する加工である。
【0019】
これにより、見切り板3は、図2に示すように、腕時計ケース1の上方から腕時計ケース1の内部に挿入されて、腕時計ケース1の支持突起部7上に見切り板3の装着凹部8が配置される際に、図7に示すように、支持突起部7の内周面の第1凹凸部10に装着凹部8の外周面の第2凹凸部11が嵌合するように構成されている。
【0020】
また、この見切り板3は、図2および図7に示すように、支持突起部7の内周面の第1凹凸部10に装着凹部8の外周面の第2凹凸部11が嵌合した状態で、第1凹凸部10と第2凹凸部11との各凹凸に沿って、腕時計ケース1の内部から腕時計ケース1の上方に引き出すと、支持突起部7の内周面の第1凹凸部10から装着凹部8の外周面の第2凹凸部11が抜けるように構成されている。
【0021】
一方、腕時計ケース1と見切り板3とには、図1および図8に示すように、その両方を互いに位置合わせるための位置合せ部12が設けられている。この位置合せ部12は、見切り板3の上面における12時に位置する外周部に設けられた見切りマーク12aと、この見切り板3の外周部に接近する腕時計ケース1の上面における12時に位置する内周部に設けられたケースマーク12bとを有している。
【0022】
これにより、腕時計ケース1と見切り板3とは、図8(a)に示すように、見切り板3を腕時計ケース1の上方から腕時計ケース1の内部に挿入して、支持突起部7の内周面の第1凹凸部10と装着凹部8の外周面の第2凹凸部11とを嵌合させる際に、見切りマーク12aとケースマーク12bとを対応させることにより、腕時計ケース1と見切り板3とを位置合せするように構成されている。
【0023】
また、この見切り板2の上面に位置する傾斜面3aには、図4に示すように、時字などの目盛13が等間隔設けられている。この目盛13は、1時から12時までの時間を表す時目盛13aが30度の間隔で設けられていると共に、60分の分時間を表す分目盛13bが6度の間隔で設けられた構成になっている。これにより、目盛13は、時計ガラス2を通して腕時計ケース1の外部上方から見えるように構成されている。
【0024】
次に、この腕時計の作用について説明する。
まず、腕時計ケース1と見切り板3とに第1凹凸部10と第2凹凸部11とを形成する場合について説明する。腕時計ケース1の支持突起部7の内周面に第1凹凸部10を形成する際には、ローレット加工用の工具の回転体を支持突起部7の内周面に押し付け、この状態で腕時計ケース1を回転させると、工具の回転体が支持突起部7の内周面に沿って転動するので、回転体の表面に設けられた凹凸が支持突起部7の内周面に転写される。これにより、腕時計ケース1の支持突起部7の内周面に第1凹凸部10が形成される。
【0025】
同様に、見切り板3の装着凹部8の外周面、つまり腕時計ケース1の支持突起部7の内周面が対応する装着凹部8内の外周面に第2凹凸部11を形成する際には、ローレット加工用の工具の回転体を装着凹部8内の外周面に押し付け、この状態で見切り板3を回転させると、工具の回転体が装着凹部8内の外周面に沿って転動するので、回転体の表面に設けられた凹凸が支持突起部7の内周面に転写される。これにより、見切り板3の装着凹部8の外周面に第2凹凸部11が形成される。
【0026】
この場合、第1凹凸部10と第2凹凸部11とは、腕時計ケース1に対する見切り板3の円周方向における取付誤差の範囲よりも小さいピッチP、例えば凹凸のピッチPが見切り板3の円周方向の角度において0.3度〜0.5度の角度範囲で、好ましくは0.4度の角度で形成される。このため、第1凹凸部10と第2凹凸部11とが嵌合した際に、腕時計ケース1と見切り板3との円周方向における取付誤差を1度以下の微小な角度にすることが可能になる。
【0027】
次に、見切り板3を腕時計ケース1に取り付ける場合について説明する。
この場合には、時計ガラス2を腕時計ケース1に取り付ける前に、まず、見切り板3を腕時計ケース1に取り付ける。このときには、腕時計ケース1のケースマーク12bに見切り板3の見切りマーク12aを合わせながら、腕時計ケース1の上方から見切り板3を腕時計ケース1内に挿入し、腕時計ケース1の支持突起部7の内周面に設けられた第1凹凸部10に、見切り板3の装着凹部8内の外周面に設けられた第2凹凸部11を嵌合させる。
【0028】
すなわち、腕時計ケース1の上方から見切り板3を腕時計ケース1内に挿入すると、腕時計ケース1の支持突起部7の内周面に設けられた第1凹凸部10と、見切り板3の装着凹部8内の外周面に設けられた第2凹凸部11とが、同じピッチPで同じ形状に形成されているので、互いに噛み合って嵌合する。このため、第1凹凸部10と第2凹凸部11との噛み合いによって、衝撃や外的要因に対して腕時計ケース1と見切り板3とが位置ずれするのを確実に防ぐことができる。
【0029】
このときには、第1凹凸部10と第2凹凸部11とが腕時計ケース1に対する見切り板3の円周方向における取付誤差の範囲よりも小さいピッチP、例えば見切り板3の円周方向の角度において0.3度〜0.5度の角度範囲で、好ましくは0.4度の角度で形成されるので、第1凹凸部10と第2凹凸部11とが嵌合した際には、腕時計ケース1と見切り板3とにおける両方の取付誤差の範囲以内で正確に位置決めされる。このため、第1凹凸部10と第2凹凸部11との嵌合により、腕時計ケース1と見切り板3との円周方向における取付誤差を1度以下の微小な角度にすることができるので、正確に位置決めすることができる。
【0030】
また、腕時計ケース1の上方から見切り板3を腕時計ケース1内に挿入するときには、腕時計ケース1のケースマーク12bと見切り板3の見切りマーク12aとを合わせることにより、腕時計ケース1に対して見切り板3を正確に位置合せすることができる。このとき、図8(b)に示すように、腕時計ケース1のケースマーク12bと見切り板3の見切りマーク12aとが位置ずれしている場合には、一度、見切り板3を腕時計ケース1内から取り外し、この取り外した見切り板3を再び腕時計ケース1内に挿入する。
【0031】
このときには、見切り板3を少し回転させて、見切り板3の見切りマーク12aと腕時計ケース1のケースマーク12bとを正確に一致させ、この状態で腕時計ケース1の上方から見切り板3を腕時計ケース1内に挿入し、腕時計ケース1の支持突起部7の内周面に設けられた第1凹凸部10に、見切り板3の装着凹部8内の外周面に設けられた第2凹凸部11を嵌合させれば良い。
【0032】
このように腕時計ケース1に見切り板3を取り付ける際に、第1凹凸部10と第2凹凸部11との噛合い位置をずらすことにより、腕時計ケース1に対する見切り板3の取付位置を、見切り板3の円周方向における取付誤差の範囲以内において、微調整することができ、これにより腕時計ケース1に対して見切り板3を正確に位置決めすることができる。
【0033】
このため、時計ムーブメントの指針6を運針させて指針6の位置を確認した後に、見切り板3の位置を調整することができるので、指針6と見切り板3の目盛13とを正確に位置合わせすることができる。なお、この後は、腕時計ケース1の上部開口部にパッキン2aを介して時計ガラス2を嵌め込んで見切り板3上に配置する。これにより、見切り板3が時計ガラス2によって支持突起部7上に押し付けられて固定される。
【0034】
このように、この腕時計の見切り構造によれば、腕時計ケース1の支持突起部7の内周面に沿って腕時計ケース1に対する見切り板3の円周方向における取付誤差の範囲よりも小さいピッチPで連続して設けられた第1凹凸部10と、腕時計ケース1の支持突起部7の内周面に設けられた第1凹凸部10が対応する見切り板3の装着凹部8の外周面に沿って第1凹凸部10と同じピッチPで連続して設けられ、かつ第1凹凸部10に嵌合する第2凹凸部11と、を備えていることにより、腕時計ケース1および見切り板3の製作が容易にでき、かつ腕時計ケース1に対して見切り板3を正確に位置決めすることができる。
【0035】
すなわち、この腕時計の見切り構造では、腕時計ケース1の第1凹凸部10と見切り板3の第2凹凸部11との嵌合によって、腕時計ケース1に対して見切り板3をその両方の円周方向における取付誤差の範囲以内で正確に位置決めして配置することができると共に、衝撃や外的要因に対して腕時計ケース1と見切り板3とが位置ずれするのを確実に防ぐことができる。また、第1凹凸部10と第2凹凸部11とを同じ形状で形成することができるので、腕時計ケース1と見切り板3とに第1凹凸部10と第2凹凸部11とを簡単にかつ容易に設けることができる。
【0036】
このため、腕時計ケース1および見切り板3の製作が容易にできると共に、腕時計ケース1に見切り板3を取り付ける際に、第1凹凸部10と第2凹凸部11との噛合い位置をずらすことにより、腕時計ケース1に対する見切り板3の取付位置を、見切り板3の円周方向における取付誤差の範囲以内において、微調整することができ、これにより腕時計ケース1に対して見切り板3を正確に位置決めすることができる。
【0037】
この場合、第1凹凸部10と第2凹凸部11とは、その凹凸のピッチPが見切り板3の円周方向の角度において0.3度〜0.5度の範囲内で、かつ好ましくは0.4度の角度に設定されていることにより、第1凹凸部10と第2凹凸部11とが嵌合した際に、腕時計ケース1と見切り板3との両方の円周方向における取付誤差を1度以下の微小な角度にすることができる。このため、腕時計ケース1に対して見切り板3を精度良く位置決めすることができる。
【0038】
また、第1凹凸部10と第2凹凸部11とは、それぞれローレット加工によって形成されているので、腕時計ケース1の支持突起部7の内周面に第1凹凸部10を簡単にかつ容易に形成することができると共に、見切り板3の装着凹部8の外周面に第2凹凸部11を簡単にかつ容易に形成することができる。
【0039】
すなわち、ローレット加工とは、第1凹凸部10と第2凹凸部11と同じ形状の凹凸が表面に形成された回転体を工具の先端に回転自在に取り付け、この工具の回転体を腕時計ケース1の支持突起部7の内周面または見切り板3の装着凹部8の外周面に押し付け、この状態で腕時計ケース1または見切り板3を回転させて、回転体を各周面に沿って相対的に転動させることにより、腕時計ケース1の支持突起部7の内周面に第1凹凸部10を簡単にかつ容易に形成することができると共に、見切り板3の装着凹部8の外周面に第2凹凸部11を簡単にかつ容易に形成することができる。
【0040】
また、この腕時計の見切り構造では、腕時計ケース1が金属で形成されており、見切り板3が合成樹脂で形成されていることにより、腕時計ケース1の第1凹凸部10と見切り板3の第2凹凸部11とを嵌合させる際に、第1凹凸部10と第2凹凸部11とが0.3度〜0.5度の角度範囲内の微細なピッチPであっても、金属製の第1凹凸部10に合成樹脂製の第2凹凸部11を無理なく確実にかつ良好に嵌合させることができる。
【0041】
さらに、この腕時計の見切り構造では、腕時計ケース1と見切り板3とに、その両方を互いに位置合わせるための位置合せ部12が設けられていることにより、この位置合せ部12によって腕時計ケース1に対して見切り板3を位置合わせることができ、これにより見切り板3を腕時計ケース1に対して正確に取り付けることができる。
【0042】
すなわち、この位置合せ部12は、見切り板3の上面における12時に位置する外周部に設けられた見切りマーク12aと、この見切り板3の外周部に接近する腕時計ケース1の上面における12時に位置する内周部に設けられたケースマーク12bとを有しているので、見切り板3を腕時計ケース1内に挿入して、支持突起部7の内周面の第1凹凸部10に装着凹部8の外周面の第2凹凸部11を嵌合させる際に、見切りマーク12aとケースマーク12bとを対応させることにより、腕時計ケース1と見切り板3とを正確にかつ確実に位置合せすることができる。
【0043】
この場合、見切り板3には、目盛13が所定の間隔で設けられているので、位置合せ部12によって見切り板3が腕時計ケース1に対して正確に位置合せされることにより、目盛13を腕時計ケース1に対して正確にかつ良好に設置することができる。この場合、見切り板3の上面には、その外周側から内周側に向けて次第に低くなる傾斜面3aが設けられているので、この傾斜面3aに目盛13を設けることにより、時計ガラス2を通して目盛13を良好に見ることができる。
【0044】
また、目盛13は、30度の間隔で1時から12時までの時間を表す時目盛13a、および6度の間隔で60分の分時間を表す分目盛13bを有していても、これら時目盛13aおよび分目盛13bを見切り板3の傾斜面3aに設けることができるので、時計ガラス2を通して時目盛13aおよび分目盛13bを腕時計ケース1の外部上方から良好に見ることができる。
【0045】
なお、上述した実施形態では、第1凹凸部10を腕時計ケース1の支持突起部7の内周面に設け、第2凹凸部11を見切り板3の装着凹部8の外周面に設けた場合について述べたが、これに限らず、例えば第1凹凸部10を支持突起部7の上側に位置する腕時計ケース1の内周面に設け、第2凹凸部11を装着凹部8の上側に位置する見切り板3の外周面に設けた構成であっても良い。このように構成しても、上述した実施形態と同様の作用効果がある。
【0046】
また、上述した実施形態では、第1凹凸部10と第2凹凸部11との各凹凸を断面山形状に形成した場合について述べたが、これに限らず、例えば各凹凸の上下部が円弧状をなすような波形状に形成した構成であっても良い。
【0047】
また、上述した実施形態では、見切り板3を合成樹脂で形成した場合について述べたが、必ずしも合成樹脂を射出成形によって形成する必要はなく、金属で形成しても良い。この場合にも、ローレット加工によって見切り板3に第2凹凸部11を容易に形成することができる。
【0048】
さらに、上述した実施形態では、指針式の腕時計に適用した場合について述べたが、必ずしも指針式の腕時計である必要はなく、液晶表示パネルやEL(エレクトロ・ルミネッセンス)表示パネルなどの平面型の表示部で時刻などの情報を表示するデジタル式の腕時計にも適用することができるほか、必ずしも腕時計に限らず、例えばトラベルウオッチ、目覚まし時計、置き時計、掛け時計などの各種の時計にも広く適用することができる。
【0049】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、これに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0050】
(付記)
請求項1に記載の発明は、ケース内に見切り板を取り付ける見切り構造において、前記ケースの内周面に沿って前記ケースに対する前記見切り板の円周方向における取付誤差の範囲よりも小さいピッチで連続して設けられた第1凹凸部と、前記ケースの前記第1凹凸部に対応する前記見切り板の外周面に沿って前記第1凹凸部と同じピッチで連続して設けられ、かつ前記第1凹凸部に嵌合する第2凹凸部と、を備えていることを特徴とする見切り構造である。
【0051】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の見切り構造において、前記第1凹凸部と前記第2凹凸部とは、その凹凸のピッチが前記見切り板の円周方向の角度において0.3度〜0.5度の角度範囲内に設定されていることを特徴とする見切り構造である。
【0052】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の見切り構造において、前記第1凹凸部と前記第2凹凸部とは、それぞれローレット加工によって形成されていることを特徴とする見切り構造である。
【0053】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の見切り構造において、前記ケースは金属で形成されており、前記見切り板は合成樹脂で形成されていることを特徴とする見切り構造である。
【0054】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の見切り構造において、前記ケースと前記見切り板とには、その両方を互いに位置合わせるための位置合せ部が設けられていることを特徴とする見切り構造である。
【0055】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の見切り構造において、前記見切り板には目盛が所定の間隔で設けられていることを特徴とする見切り構造である。
【符号の説明】
【0056】
1 腕時計ケース
2 時計ガラス
3 見切り板
3a 傾斜面
6 指針
7 支持突起部
8 装着凹部
10 第1凹凸部
11 第2凹凸部
12 位置合せ部
12a 見切りマーク
12b ケースマーク
13 目盛
13a 時目盛
13b 分目盛
P 凹凸のピッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8