【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、建設現場の敷地内に点在しあるいは該敷地内を縦横に走行する多数の建設工事用機械の中からいずれが騒音源となっているのかを速やかに特定することが可能な騒音源探索システムを提供することを目的とする。
【0015】
また、本発明は、小型化を可能にしつつ騒音規制法に基づいた騒音監視が可能でありかつ騒音レベルが目標値を上回ったときに騒音の原因が敷地内にあるのかどうかを適切に判断することが可能な騒音源探索システムを提供することを目的とする。
【0016】
上記目的を達成するため、本発明に係る騒音源探索システムは請求項1に記載したように、騒音監視エリアである敷地の境界近傍に設定された計測地点で発生音の音圧を計測する音圧計測手段と、該音圧計測手段で計測された音圧値を用いて前記発生音の到来角度を算出する到来角度算出部と、該到来角度算出部から得られた到来角度を合成対象到来角度とし該合成対象到来角度に対応する方向表示画像を前記敷地内の音源配置状況が平面配置図として示された平面配置画像であって該平面配置画像上における前記計測地点の対応位置に重ね合わせて合成画像を作成する合成画像作成部と、該合成画像を表示する表示手段とを備えたものである。
【0017】
また、本発明に係る騒音源探索システムは、前記計測地点を相異なる2つの計測地点として該2つの計測地点で発生音の音圧値がそれぞれ計測されるように前記音圧計測手段を構成するとともに、前記2つの計測地点で計測された音圧値から該2つの計測地点における到来角度が2つの合成対象到来角度としてそれぞれ算出されるように前記到来角度算出部を構成し、前記合成画像作成部を、前記2つの合成対象到来角度にそれぞれ対応する方向表示画像が前記平面配置画像であって該平面配置画像上における前記2つの計測地点の対応位置にそれぞれ重ね合わされるように構成したものである。
【0018】
また、本発明に係る騒音源探索システムは、前記音圧計測手段を、指向性を有する2つのマイクロホンを最大感度方向が互いに逆方向を向くように配置してマイクロホン対とし該マイクロホン対を互いに平行でない複数の軸線に沿ってかつそれらの原点を挟むようにそれぞれ配置して構成したものである。
【0019】
また、本発明に係る騒音源探索システムは、前記計測地点近傍に配置され発生音の音圧を騒音レベルとして計測する騒音計測手段を備えるとともに、該騒音レベルを前記表示手段に出力するように構成したものである。
【0020】
また、本発明に係る騒音源探索システムは、前記計測地点近傍に配置され発生音の音圧を騒音レベルとして計測する騒音計測手段と、
該騒音計測手段に内蔵されている周波数重み特性と実質同一の周波数重み特性で前記各マイクロホンで計測された音圧値をフィルタリングする聴感補正回路が設けられその処理結果を前記到来角度算出部に出力するフィルタ部と、
前記到来角度算出部で得られた到来角度を用いて所定時間幅における前記発生音の到来数を到来角度ごとに計数する到来頻度計数部と、
該到来頻度計数部で得られた到来角度ごとの到来数を全方位の総和で除して到来角度ごとの影響率を算出するとともに、該影響率及び前記騒音レベルを用いて前記敷地が見渡される角度範囲内の発生音に起因する騒音指標を敷地内騒音レベルとして算出し、該敷地内騒音レベルを前記騒音レベルとともに前記表示手段に出力するように構成した騒音指標作成部とを備えたものである。
【0021】
また、本発明に係る騒音源探索システムは、前記騒音レベル又はそれに加えて前記敷地内騒音レベルの時刻歴波形を作成するとともに該時刻歴波形を前記表示手段に出力する騒音波形処理部を備えたものである。
【0022】
また、本発明に係る騒音源探索システムは、前記音圧計測手段で計測された音圧値又は該音圧値を用いて前記到来角度算出部で算出された到来角度をデータ保存する音圧関連データ蓄積手段と、再生時刻を指定する時刻指定手段とを備え、前記時刻指定手段を介して入力された指定時刻に一致する音圧計測時刻の音圧値を前記音圧関連データ蓄積手段から読み出し該音圧値を用いて前記到来角度算出部で算出された到来角度を前記合成対象到来角度とするか、又は前記指定時刻に一致する音圧計測時刻の到来角度を前記音圧関連データ蓄積手段から読み出してこれを前記合成対象到来角度とし、前記合成対象到来角度を前記合成画像作成部に出力するようになっているものである。
【0023】
また、本発明に係る騒音源探索システムは、前記騒音レベル又はそれに加えて前記敷地内騒音レベルの時刻歴波形を作成するとともに前記時刻指定手段を介して入力された指定時刻に一致する該時刻歴波形上の位置に再生位置マーカーを画像表示して時刻歴波形画像とし該時刻歴波形画像を前記表示手段に出力する騒音波形処理部を備えたものである。
【0024】
また、本発明に係る騒音源探索システムは、前記到来角度算出部を、前記発生音のエネルギーの大きさが該発生音ごとのエネルギー値として算出されるように構成するとともに、前記到来頻度計数部を、前記発生音の到来数が該発生音のエネルギー値で重み付けされるように構成したものである。
【0025】
また、本発明に係る騒音源探索システムは、前記敷地内の建設工事用機械の種類に応じた周波数特性で前記各マイクロホンによる計測値をフィルタリングする重機選別回路を前記フィルタ部に設けるとともに、前記敷地内騒音レベルを重機別敷地内騒音レベルとしたものである。
【0026】
また、本発明に係る騒音源探索システムは、前記敷地内騒音レベル又は前記重機別敷地内騒音レベルの大きさを予め定められた目標値と比較し該敷地内騒音レベル又は重機別敷地内騒音レベルが前記目標値を上回ったときに警報データを作成する警報作成部と、該警報作成部で作成された警報データを出力する警報出力部とを備えたものである。
【0027】
また、本発明に係る騒音源探索システムは、前記警報出力部を前記敷地内で稼働する建設工事用機械に設けたものである。
【0028】
本発明に係る騒音源探索システムにおいては、計測された発生音の音圧値を用いて到来角度算出部で発生音の到来角度を算出し、該到来角度算出部から得られた到来角度を合成対象到来角度とするとともに、該合成対象到来角度に対応する方向表示画像を、敷地内の音源配置状況が平面配置図として示された平面配置画像であって該平面配置画像上における計測地点の対応位置に重ね合わせて合成画像を作成し、これをモニター等の表示手段に表示する。
【0029】
このようにすると、発生音がどこから到来しているのかを、敷地内の音源配置状況が示された平面配置図上で確認することが可能となり、かくして騒音源の位置を適切かつ迅速に特定することができる。
【0030】
合成対象到来角度に対応する方向表示画像を平面配置画像に重ね合わせるには、到来角度の基準方位を平面配置図の基準方位に一致させる必要があるが、到来角度の基準方位は、音圧計測手段の設置方向あるいは設置姿勢から一意にかつ一定値として定めることができるので、例えば初期条件として適宜設定しておけばよい。平面配置図の基準方位についても図面作成時に定まるので同様に処理すればよい。
【0031】
方向表示画像は、発生音が平面配置図あるいはそれを画像化した平面配置画像上でどの角度から到来しているのかを把握することができる限り、任意の図形で構成することが可能であって、例えば平面配置画像上における計測地点の対応位置を通るように該平面配置画像に重ね合わされたライン図形や、同じくその計測地点の対応位置が起点となるように平面配置画像に重ね合わされた矢印図形で構成することが可能であり、後者の場合、矢印の長さで発生音の音圧を表現することが可能である。また、方向表示画像を表示する際、任意のエフェクトをかけることが可能であり、後述するリアルタイムモードであれ再生モードであれ、例えばフェードアウトをかけるようにすれば、到来角度の時間変化を視覚的に捉えることが可能となる。
【0032】
ブルドーザ、トラクターショベル、バックホウ、クレーン、ダンプトラックといった各種建設工事用機械は、それら自体の作動音あるいは運転音をはじめ、稼働に伴って生じる様々な作業音が周囲に伝播し騒音となり得るが、本発明の平面配置図は、それら発生音が生じる箇所、すなわち音源の位置や音源の範囲が示されたものであって、各種建設工事用機械の位置、形状、運転範囲、ブームの旋回範囲などが含まれる。
【0033】
騒音源の探索は、方向表示画像に沿ったあるいはその延長上に存在する平面配置画像上の建設工事用機械を特定することで可能であるが、方向表示画像が一つだけの場合、該方向表示画像に沿ってあるいはその延長上に複数の建設工事用機械が存在するときの相互の識別は必ずしも容易ではない。
【0034】
かかる場合において、前記計測地点を相異なる2つの計測地点として該2つの計測地点で発生音の音圧値がそれぞれ計測されるように前記音圧計測手段を構成するとともに、前記2つの計測地点で計測された音圧値から該2つの計測地点における到来角度が2つの合成対象到来角度としてそれぞれ算出されるように前記到来角度算出部を構成し、前記合成画像作成部を、前記2つの合成対象到来角度にそれぞれ対応する方向表示画像が前記平面配置画像であって該平面配置画像上における前記2つの計測地点の対応位置にそれぞれ重ね合わされるように構成したならば、騒音源となっている建設工事用機械を、2つの方向表示画像の交点、あるいはそれらの延長線の交点に存在する平面配置画像上の建設工事用機械として特定することができるので、騒音源をより確実に探索することが可能となる。
【0035】
音圧計測手段及び到来角度算出部は、音圧値を計測可能でかつその音圧値を用いて発生音の到来角度を算出することができる限り、任意の構成とすることが可能であって、例えばp−p法であれば、2つの無指向性マイクロホンからなるマイクロホン対で到来角度を算出することができる(特許文献1〜3、非特許文献1)。
【0036】
一方、c−c法であれば、指向性を有する2つのマイクロホンからなるマイクロホン対で計測された音圧の差分値を、記憶手段に予め格納された到来角度ごとのマイクロホン感度差に照合することで到来角度を推定したり(特許文献4,5、非特許文献2)、マイクロホン対でそれぞれ計測された音圧の加算値及び差分値を乗じるか又は二乗音圧の差分値を計算し、次いで音響インピーダンスρc(ρ;空気密度、c;音速)で除することにより、該マイクロホン対の配置軸線に沿った音響インテンシティ成分を算出するとともに、別のマイクロホン対を用いて異なる軸線方向に沿った音響インテンシティ成分を同様に算出し、これら音響インテンシティのベクトル成分から到来角度を推定したりすることが可能である(特許文献4,6、非特許文献3)。
【0037】
これらc−c法によれば、対象周波数に関わらず、マイクロホンの離間寸法を一定に保つことができるため、p−p法よりも音圧計測手段の小型化が可能であり、建設現場への適用が容易となる。
【0038】
c−c法に基づいて到来角度を算出する場合、音圧計測手段は、指向性を有する2つのマイクロホンを最大感度方向が互いに逆方向を向くように配置してマイクロホン対とし、該マイクロホン対を互いに直交する3つの軸線に沿ってそれぞれ配置する構成が主として想定されるが、2次元平面、例えば水平面で発生音の到来角度を近似的に把握すれば足りるのであれば、該水平面内で2方向に延びる2つの軸線に沿ってマイクロホン対をそれぞれ設置するようにしてもかまわない。一方、音響インテンシティのベクトル成分から到来角度を推定するにあたり、複数の軸線が必ずしも直交している必要はなく、例えば正四面体の中心から4つの頂点に向けてそれぞれ延びる4本の軸線に沿ってマイクロホン対をそれぞれ設置することで、三次元空間における到来角度の把握が可能である。
【0039】
すなわち、c−c法に基づいて到来角度を算出する場合の音圧計測手段は、互いに平行でない複数の軸線に沿ってかつそれらの原点を挟むようにマイクロホン対をそれぞれ配置した構成とすれば足りる。
【0040】
マイクロホンは、c−c法においては、カーディオイド、スーパーカーディオイド、ハイパーカーディオイドといった指向性を有するものとする。
【0041】
騒音源の探索は、騒音レベルとは関係なく行うようにしてもかまわないが、前記計測地点近傍に配置され発生音の音圧を騒音レベルとして計測する騒音計測手段を備えるとともに、該騒音レベルを前記表示手段に出力するように構成したならば、騒音規制法などの騒音規制に関する法の定めにしたがって騒音レベルを監視しつつ、該騒音レベルが規制値あるいはそれに基づく目標値を上回った場合に、上述した騒音源の探索を行うことが可能となり、騒音源の探索をより効率的に行うことが可能となる。
【0042】
本発明においては、敷地を見渡す角度範囲で音圧計測を行えば足り、該音圧計測を必ずしも全方位にわたって行う必要はないが、発生音の音圧を騒音レベルとして計測する騒音計測手段を別途備えた上、算出された到来角度を用いて所定時間幅における発生音の到来数を到来角度ごとに計数し、該到来角度ごとの到来数を全方位の総和で除して到来角度ごとの影響率を算出するとともに、該影響率及び騒音レベルを用いて敷地が見渡される角度範囲内の発生音に起因する騒音指標を敷地内騒音レベルとして算出し、これらを表示手段に出力するようにすれば、騒音規制に関する法に基づく騒音監視を行いつつ、騒音源を合理的に探索することが可能となる。
【0043】
すなわち、かかる構成においては、各マイクロホンによる音圧計測とは別に、騒音計測手段で発生音の音圧を騒音レベルとして計測する。騒音計測手段は、検定を受けた騒音計で構成するものとする。
【0044】
次に、各マイクロホンによる計測値を騒音計測手段に内蔵されている周波数重み特性と実質同一の周波数重み特性、例えば騒音計測手段に内蔵されている周波数重み特性がA特性であればA特性でフィルタリングした後、到来角度算出部に出力し、次いで、上述したc−c法の手順に従って発生音の到来角度を算出する。
【0045】
なお、騒音レベルは、従来技術においては、周波数重み特性のうち、A特性でフィルタリングされた音圧レベルを意味するが、本発明では、A特性に限らず、聴感補正のための他の周波数重み特性も包摂されるとともに、敷地内騒音レベルも同様とする。
【0046】
到来角度算出部で発生音の到来角度を算出するにあたっては、例えば0.1秒を時間幅Δtとし、該各時間幅Δtにおいて発生音を0.001秒間隔でサンプリングして、それぞれの到来角度を上述した推定方法で算出するようにすればよい。
【0047】
次に、時間幅Δtにおける発生音の到来数を、到来角度算出部で得られた到来角度データを用いて到来角度ごとに到来頻度計数部で計数する。
【0048】
到来角度ごとに計数を行うにあたっては、2次元平面であれば、全周360゜を例えば0゜〜10゜、10゜〜20゜・・・というように10゜ずつに分割し、それらの角度幅ごとに発生音の到来数を計数し、3次元空間で把握するのであれば、例えば上述の2次元平面に直交する別の2次元平面について同様に発生音の到来数を計数すればよい。
【0049】
次に、到来頻度計数部で得られた到来角度θごとの到来数をN(θ)、それらのθに関する総和、すなわち全方位の総和をΣN(θ)としたとき、次式、
C(θ)=N(θ)/ΣN(θ) (2)
により、C(θ)を騒音指標作成部で算出する。ここで、C(θ)は、
0≦C(θ)≦1
である。
【0050】
C(θ)は、到来角度θごとの発生音の到来数N(θ)をそれらの総和ΣN(θ)で除したものであって、全方位からの発生音の到来頻度に対する到来角度θごとの到来頻度の比率であり、以下、C(θ)を影響率と呼ぶ。なお、θは、演算処理の便宜上、上述したように、0゜〜10゜、10゜〜20゜・・・というように一定幅を持つ値として取り扱うことが想定されるが、騒音源の位置が変化せず到来角度が一定であるような場合においては、実質的に幅を持たない値として取り扱われることも考えられる。
【0051】
影響率C(θ)は、上述したように全方位からの発生音の到来頻度に対する到来角度θごとの到来頻度の比率として定義されたものであるので、C(θ)を用いて騒音レベルを割り振ることにより、所定角度範囲からの発生音に起因する騒音指標を評価することができる。
【0052】
例えば、角度範囲θ
1〜θ
2におけるC(θ)の総和ΣC(θ)(θ=θ
1〜θ
2)をC
Tとすると、全方位から到来する発生音のエネルギーを便宜的にEと定めてこれにC
Tを乗じた場合、その乗算結果は、所定角度範囲θ
1〜θ
2から到来した発生音のエネルギーE
Tと考えることができる。すなわち、
E
T=E・C
T (3)
ここで、発生音のエネルギーの基準値をE
0とした場合、
E
T/E
0=E/E
0・C
T
となるので、両辺の常用対数をとって10を乗じると、
10・log(E
T/E
0)=10・log(E/E
0)+10・logC
T (4)
となる。
【0053】
一方、騒音レベルは、音圧の二乗、あるいは音のエネルギーをデシベル表示したものであって、(4)式の右辺第1項はこの騒音レベルに相当するため、これを騒音レベルL、左辺をL
Tとおけば、
L
T=L+10・logC
T (1)
となる。
【0054】
ここで、(1)式の右辺第2項がゼロ又は負の値をとることから、L
Tは、騒音レベルLよりも小さな値であって、所定の角度範囲からの発生音に起因する騒音指標であると考えることができる。
【0055】
従来技術における騒音レベルは、無指向性のマイクロホンを用いて発生音を全方位で計測することを前提とした騒音指標であって、到来角度の違いに応じて騒音を把握できるものではない。それに対し、上述の構成においては、全方位からの発生音の到来頻度に対する到来角度θごとの到来頻度の比率を算出し、これを影響率C(θ)と定義した上、該影響率又は所定の角度範囲θ
1〜θ
2におけるC(θ)の総和C
Tを用いて例えば(1)式の演算を行うことにより、全方位である騒音レベルLを角度範囲ごとの騒音指標L
Tに割り振ることができる。
【0056】
なお、所定の角度範囲からの発生音に起因する騒音指標は従来技術には存在しないため、以下、所定の角度範囲が、敷地を見渡すことができる角度範囲である場合の騒音指標L
Tを敷地内騒音レベルと呼び、全方位である騒音レベルLとは区別することにする。
【0057】
敷地が見渡される角度範囲は、敷地が長方形であってその隅部近傍を計測地点とするのであれば90゜、同じく長手側又は短手側縁部近傍を計測地点とするのであれば180゜とそれぞれ設定することができる。
【0058】
敷地内騒音レベルL
Tは例えば、騒音監視エリアである敷地が計測地点から見て0゜〜90゜の角度範囲で見渡される場合において、全周360゜を0゜〜90゜とそれ以外の角度範囲に分割し、0゜〜90゜の角度範囲においてΔtの間に到来する発生音の到来数を50、それ以外の角度範囲における到来数を50とした場合、到来角度ごとの到来数の総和、すなわち全方位からの到来数は100となるので、0゜〜90゜の角度範囲における敷地内騒音レベルL
Tは、
L
T=L+10・log(50/100)≒L−3
となり、敷地内騒音レベルL
Tは、騒音レベルLよりも約3dBだけ小さくなる。すなわち、上記の例であれば、騒音レベルLを用いて騒音監視を行うのではなく、該騒音レベルよりも3dB低い敷地内騒音レベルL
Tを用いて騒音監視を行えばよいことがわかる。
【0059】
このように、影響率及び騒音レベルを用いて騒音指標作成部で敷地内騒音レベルを算出するとともにこれらの数値を表示手段に出力するようにすれば、騒音計で計測された騒音レベルが、到来角度ごとの影響率に応じて所定角度範囲ごとに角度別騒音レベルとして割り振られるため、騒音監視エリアに応じた角度範囲を適宜設定することにより、その角度範囲に対応する角度別騒音レベル、すなわち敷地内騒音レベルが目標値を上回ったときだけ、騒音源の探索を行えば足りることとなり、騒音監視エリア以外からの発生音、例えば周辺道路を走行する自動車からの発生音によって騒音レベルが目標値を上回るような、本来的に騒音源の探索が不要な場合にまで騒音源の探索を行う必要がなくなる。
【0060】
また、騒音源の探索が必要な場合においても、上述したように発生音がどこから到来しているのかを平面配置画像上で即座に確認することができるので、騒音源の位置を適切かつ迅速に特定することが可能となる。
【0061】
なお、影響率及び騒音レベルを用いて騒音指標作成部で敷地内騒音レベルを算出する上記構成は、監視対象となる発生音が監視対象外の発生音と合成された状態で騒音レベルとして計測されるがゆえに監視対象について適切な騒音対策を講じることができないすべての状況に適用することが可能であり、例えば騒音規制法が規制の対象としている金属加工機械、圧縮機、織機、印刷機といった製造機械が設置された生産施設や、さまざまな建設工事現場に適用することができる。
【0062】
音圧計測手段で計測された音圧値あるいは該音圧値から算出された到来角度は、データ保存せずともリアルタイムな騒音監視を行うことは可能であるが、音圧計測手段で計測された音圧値又は該音圧値から算出された到来角度を音圧関連データ蓄積手段にデータ保存しておき、音圧計測中又は音圧計測後、指定された所望の再生開始時刻に一致する音圧計測時刻の音圧値を音圧関連データ蓄積手段から読み出し、該音圧値から到来角度算出部で到来角度を算出してこれを合成対象到来角度とし、該合成対象到来角度を合成画像作成部に出力するようにすれば、リアルタイムな騒音監視を行いながら、あるいはそれとは別の機会に、過去の合成画像を用いた騒音対策の確認や検討を行うことが可能となり、例えば終日にわたってデータ保存された合成画像を見ながら、前日における発生音の状況を把握したり、騒音対策の効果確認あるいはあらたな対策の検討を行ったりすることができる。
【0063】
時刻指定手段は、再生時刻を数値で直接入力する構成でもかまわないが、再生位置を示すボタンをポインティングデバイスでスライド操作することで再生時刻を任意に変更あるいは指定するグラフィックインターフェースが知られており、これを表示手段に表示させるように構成することが可能である。
【0064】
なお、音圧関連データ蓄積手段に蓄積すべきデータは、上述の音圧値に代えて、音圧値から到来角度算出部で算出された到来角度とすることも可能であり、その場合においては、音圧関連データ蓄積手段から到来角度を読み出し、これをそのまま合成対象到来角度とすればよい。
【0065】
騒音レベルや敷地内騒音レベルは、数値として表示手段に表示された場合であっても、上述したように合理的な騒音監視を行うことが可能であるが、騒音レベル又はそれに加えて敷地内騒音レベルの時刻歴波形を作成するとともに該時刻歴波形を表示手段に出力する騒音波形処理部を備えたならば、騒音レベルや敷地内騒音レベルを過去の値と比較しながら現時点の値を確認することができるため、より適切な騒音監視が可能となる。
【0066】
ここで、音圧値又は該音圧値から算出された到来角度を音圧関連データ蓄積手段にデータ保存する場合においては、時刻指定手段を介して入力された指定時刻に一致する該時刻歴波形上の位置に再生位置マーカーを画像表示して時刻歴波形画像とし、該時刻歴波形画像が表示手段に出力されるように騒音波形処理部を構成する。
【0067】
このようにすれば、合成画像と同じ時刻における騒音レベルや敷地内騒音レベルの大きさが、それらの時刻歴波形の位置として再生位置マーカーで示されるため、過去の合成画像を用いた騒音対策の検討をより綿密に行うことが可能となる。
【0068】
到来頻度計数部は、発生音の到来数が到来角度ごとに計数される限り、その構成は任意であって、例えば発生音が到来するたびに単純にその回数をカウントするようにしてもかまわないが、前記到来角度算出部を、前記発生音のエネルギーの大きさが該発生音ごとのエネルギー値として算出されるように構成するとともに、前記到来頻度計数部を、前記発生音の到来数が該発生音のエネルギー値で重み付けされるように構成したならば、影響率や敷地内騒音レベルについても発生音のエネルギー値で重み付けされた形で算出されるため、騒音への影響がより支配的な発生音を主体として騒音監視を行うことが可能となる。
【0069】
ここで、前記敷地内の建設工事用機械の種類に応じた周波数特性で前記各マイクロホンによる計測値をフィルタリングする重機選別回路を前記フィルタ部に設けるようにしたならば、算出された敷地内騒音レベルがどの建設工事用機械に起因するのかを容易に特定することが可能となる。以下、特定の建設工事用機械に対応した敷地内騒音レベルを、特に重機別敷地内騒音レベルと呼ぶ。
【0070】
なお、重機別敷地内騒音レベルは、聴感補正のための周波数重み特性に加え、重機を選別するための周波数重み特性でフィルタリングされた新規な騒音指標であって、A特性で聴感補正された従来の騒音レベルとは異なるものである。
【0071】
重機選別回路は、複数の建設工事用機械に対応するように構成するとともに、どの建設工事用機械に対応したフィルタリングを行うのかを切換自在に構成しておき、さらには建設工事用機械に対応した周波数フィルタリングを行うかどうかについても切換自在に構成しておくのが望ましい。
【0072】
上述した手順で算出された敷地内騒音レベル又は重機別敷地内騒音レベルをどのように騒音監視で用いるのかは任意であり、例えば終日にわたって算出された敷地内騒音レベル又は重機別敷地内騒音レベルに基づいて適切な騒音対策を検討した後、該騒音対策を翌日の施工作業に反映させるようにしてもかまわないが、前記敷地内騒音レベル又は前記重機別敷地内騒音レベルの大きさを予め定められた目標値と比較し該敷地内騒音レベル又は重機別敷地内騒音レベルが前記目標値を上回ったときに警報データを作成する警報作成部と、該警報作成部で作成された警報データを出力する警報出力部とを備えるようにしたならば、騒音対策をリアルタイムに講じることが可能となる。
【0073】
ここで、警報出力部をどのような構成でどこに設置するかは任意であって、例えば工事事務所に設置したコンピュータに画面表示させるようにしておき、警報が出力されたときに工事事務所から建設工事用機械のオペレータに連絡を入れる方法も採用可能であるが、警報出力部を敷地内で稼働する建設工事用機械に設けるようにしたならば、騒音対策の即時性をさらに高めることが可能となる。この場合、警報出力部は、例えば運転席に設置された携帯情報端末を用いて構成することができる。