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特許5943346評価方法、半導体装置、電気光学装置、及び電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5943346
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】評価方法、半導体装置、電気光学装置、及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20160621BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20160621BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   H01L21/66 L
   H01L21/66 V
   H01L29/78 613A
   H01L29/78 624
【請求項の数】10
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2012-181426(P2012-181426)
(22)【出願日】2012年8月20日
(65)【公開番号】特開2014-38976(P2014-38976A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2015年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】597065329
【氏名又は名称】学校法人 龍谷大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095728
【弁理士】
【氏名又は名称】上柳 雅誉
(74)【代理人】
【識別番号】100116665
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 和昭
(72)【発明者】
【氏名】廣島 安
(72)【発明者】
【氏名】木村 睦
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 光敏
【審査官】 堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−077336(JP,A)
【文献】 特開2001−196434(JP,A)
【文献】 特開2007−322270(JP,A)
【文献】 特開2002−319683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
H01L 21/336
H01L 29/786
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N型半導体領域を含む第一領域と、P型半導体領域を含む第二領域と、平面視にて前記第一領域と前記第二領域とで挟まれ、前記第一領域よりドナー型元素の濃度が低く、かつ、前記第二領域よりアクセプター型元素の濃度が低い第三領域と、を有する半導体層と、
少なくとも前記第三領域に重なる誘電体膜と、
前記第一領域に電気的に接続される第一電極と、
前記第二領域に電気的に接続される第二電極と、
前記誘電体膜を介して少なくとも前記第三領域に対面する第三電極と、
を備えた半導体装置に対して、
前記第一電極と前記第三電極との間又は前記第二電極と前記第三電極との間で容量電圧特性を測定する事で、前記第三領域の状態密度を計測する事を特徴とする評価方法。
【請求項2】
N型半導体領域を含む第一領域と、P電型半導体領域を含む第二領域と、平面視にて前記第一領域と前記第二領域とで挟まれ、前記第一領域よりドナー型元素の濃度が低く、かつ、前記第二領域よりアクセプター型元素の濃度が低い第三領域と、を有する半導体層と、
少なくとも前記第三領域に重なる誘電体膜と、
前記第一領域に電気的に接続される第一電極と、
前記第二領域に電気的に接続される第二電極と、
前記誘電体膜を介して少なくとも前記第三領域に対面する第三電極と、
を備えた半導体装置に対して、
前記第三電極に振動電位を印加し、前記第一電極又は前記第二電極に流れる電流を測定する事で、前記第三領域の状態密度を計測する事を特徴とする評価方法。
【請求項3】
前記状態密度は、前記第三領域と前記誘電体膜との界面での界面捕獲準位と前記第三領域でのバルク半導体捕獲準位との和に対応する密度で有る事を特徴とする請求項1又は2に記載の評価方法。
【請求項4】
N型半導体領域とP型半導体領域とを含む第一領域と、N型半導体領域とP型半導体領域とを含む第二領域と、平面視にて前記第一領域と前記第二領域とで挟まれ、前記第一領域よりドナー型元素の濃度が低く、かつ、前記第二領域よりアクセプター型元素の濃度が低い第三領域と、を有する半導体層と、
少なくとも前記第三領域に重なる誘電体膜と、
前記第一領域におけるN型半導体領域とP型半導体領域とに電気的に接続される第一電極と、
前記第二領域におけるN型半導体領域とP型半導体領域とに電気的に接続される第二電極と、
前記誘電体膜を介して少なくとも前記第三領域に対面する第三電極と、
を備え、
前記第一領域におけるN型半導体領域とP型半導体領域とは、平面視にて前記第三領域に接し、
前記第二領域におけるN型半導体領域とP型半導体領域とは、平面視にて前記第三領域に接する事を特徴とする半導体装置。
【請求項5】
前記第一領域におけるN型半導体領域と前記第二領域におけるP型半導体領域とが、前記第三領域を介して対向し、
前記第一領域におけるP型半導体領域と前記第二領域におけるN型半導体領域とが、前記第三領域を介して対向する事を特徴とする請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の半導体装置に対して、前記第一電極と前記第三電極との間又は前記第二電極と前記第三電極との間で容量電圧特性を測定する事で、前記第三領域の状態密度を計測する事を特徴とする評価方法。
【請求項7】
請求項4又は5に記載の半導体装置に対して、前記第三電極に振動電位を印加し、前記第一電極又は前記第二電極に流れる電流を測定する事で、前記第三領域の状態密度を計測する事を特徴とする評価方法。
【請求項8】
N型半導体領域を含む第一領域と、P型半導体領域を含む第二領域と、平面視にて前記第一領域と前記第二領域とで挟まれ、前記第一領域よりドナー型元素の濃度が低く、かつ、前記第二領域よりアクセプター型元素の濃度が低い第三領域と、を有する半導体層と、
前記第三領域に断面視で上側に重なる上側誘電体膜と、前記第三領域に断面視で下側に重なる下側誘電体膜と、
前記第一領域に電気的に接続する第一電極と、
前記第二領域に電気的に接続する第二電極と、
前記上側誘電体膜を介して少なくとも前記第三領域に対面する上側第三電極と、前記下側誘電体膜を介して少なくとも前記第三領域に対面する下側第三電極と、
を備えた事を特徴とする半導体装置。
【請求項9】
請求項4又は5又は8に記載の半導体装置を備えた事を特徴とする電気光学装置。
【請求項10】
請求項9に記載の電気光学装置を備えた事を特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、評価方法、半導体装置、電気光学装置、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜トランジスター(TFT)は液晶装置や有機EL装置等の表示装置に広く使用されている。取り分け、多結晶シリコンTFTは、トランジスター性能が高く、CMOS構成を容易に取り得る事から、各種表示装置等でキーデバイスとして採択が進んでいる。昨今では、こうした表示装置の高機能化や高性能化に伴い、製品の歩留まりや信頼性を確保する為に、トランジスターの特性を正確に把握する必要性が生じている。
【0003】
トランジスターの特性を評価する方法は、例えば特許文献1に記載されている。特許文献1では、N型薄膜トランジスターについて、容量電圧特性とドレイン電流ゲート電圧特性(伝達特性)とを測定し、バンドギャップ中の上半分に存在する欠陥準位密度を抽出している。バンドギャップ全体に渡って欠陥準位密度を抽出するには、非特許文献1(従来論文)に記載されている様に、N型薄膜トランジスターとP型薄膜トランジスターの各々について前述の二種類の測定を実施する。その上で、N型薄膜トランジスターの伝達特性とP型薄膜トランジスターの伝達特性とから、まずフラットバンド電圧を求める。次いで、N型薄膜トランジスターの容量電圧特性と伝達特性とから、伝導帯からフラットバンド条件のエネルギー値までの欠陥準位密度を抽出する。同様に、P型薄膜トランジスターの容量電圧特性と伝達特性とから、価電子帯からフラットバンド条件のエネルギー値までの欠陥準位密度を抽出する。最後にこれらの欠陥準位密度分布を結合することで、伝導帯から価電子帯までのバンドギャップ全体に渡る欠陥準位密度を把握していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−196434号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】M. Kimura, Solid−State Electronics 63 (2011) 94−99(従来論文)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1や非特許文献1(従来論文)に記載の方法では、正確で精度の高い計測が困難であるという課題があった。容量電圧特性の測定は準静的状態で実施する必要がある為、低周波数(例えば1Hz以下)での測定が不可欠となり、それ故にノイズに対する計測信号の比(S/N比)が小さくなり、高い精度で欠陥準位密度を抽出する事が困難となっていた。又、測定には、N型薄膜トランジスターとP型薄膜トランジスターとの2つのトランジスターが必要で、半導体膜が異なっていた。即ち、異なった2つの半導体膜を用い、この2つの半導体膜が同じ特性を有すると仮定して、欠陥準位密度を抽出していた。この事は単に計測の精度が落ちるに止まらず、少なくても2つのトランジスターに対して測定と解析とを行う必要があり、作業効率も著しく劣っていた。換言すると、従来の半導体膜の評価方法では、正確で精度の高い計測が困難で、更に計測作業自体も容易に行いがたいという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前述の課題の少なくとも一部を解決する為になされたものであり、以下の形態又は適用例として実現する事が可能である。
【0008】
本適用例に係わる評価方法は、N型半導体領域を含む第一領域と、P型半導体領域を含む第二領域と、平面視にて第一領域と第二領域とで挟まれた第三領域と、を有する半導体層と、少なくとも第三領域に重なる誘電体膜と、第一領域に電気的に接続される第一電極と、第二領域に電気的に接続される第二電極と、誘電体膜を介して少なくとも第三領域に対面する第三電極と、を備えた半導体装置に対して、第一電極と第三電極との間又は第二電極と第三電極との間で容量電圧特性(CV特性)を測定する事で、第三領域の状態密度を計測する事を特徴とする。
この方法によれば、第三領域をなす半導体のバンドギャップの上半分はN型半導体領域と第三電極との間のCV特性によって求められ、第三領域をなす半導体のバンドギャップの下半分はP型半導体領域と第三電極との間のCV特性によって求められるので、第三領域をなす半導体のバンドギャップの全体に渡って、欠陥準位密度を高精度で比較的容易な計測作業にて抽出する事ができる。
【0009】
本適用例に係わる評価方法は、N型半導体領域を含む第一領域と、P電型半導体領域を含む第二領域と、平面視にて第一領域と第二領域とで挟まれた第三領域と、を有する半導体層と、少なくとも第三領域に重なる誘電体膜と、第一領域に電気的に接続される第一電極と、第二領域に電気的に接続される第二電極と、誘電体膜を介して少なくとも第三領域に対面する第三電極と、を備えた半導体装置に対して、第三電極に振動電位を印加し、第一電極又は第二電極に流れる電流を測定する事で、第三領域の状態密度を計測する事を特徴とする。
この方法によれば、第三領域をなす半導体のバンドギャップの上半分はN型半導体領域に流れる電流を測定する事によって求められ、第三領域をなす半導体のバンドギャップの下半分はP型半導体領域に流れる電流を測定する事によって求められるので、第三領域をなす半導体のバンドギャップの全体に渡って、欠陥準位密度を高精度で比較的容易な計測作業にて抽出する事ができる。
【0010】
上記適用例に係わる評価方法において、状態密度は、第三領域と誘電体膜との界面での界面捕獲準位と第三領域でのバルク半導体捕獲準位との和に対応する密度で有る事が好ましい。
第三領域をなす半導体の欠陥準位には、第三領域と誘電体膜との界面での界面捕獲準位と第三領域でのバルク半導体捕獲準位とがある。この方法によれば、これらの和に対応する密度(欠陥準位密度)を高精度で比較的容易な計測作業にて抽出する事ができる。
【0011】
本適用例に係わる半導体装置は、N型半導体領域とP型半導体領域とを含む第一領域と、N型半導体領域とP型半導体領域とを含む第二領域と、平面視にて第一領域と第二領域とで挟まれた第三領域と、を有する半導体層と、少なくとも第三領域に重なる誘電体膜と、第一領域におけるN型半導体領域とP型半導体領域とに電気的に接続される第一電極と、第二領域におけるN型半導体領域とP型半導体領域とに電気的に接続される第二電極と、誘電体膜を介して少なくとも第三領域に対面する第三電極と、を備え、第一領域におけるN型半導体領域とP型半導体領域とは、平面視にて第三領域に接し、第二領域におけるN型半導体領域とP型半導体領域とは、平面視にて第三領域に接する事を特徴とする。
この構成によれば、第三領域のいずれの場所も、第一領域又は第二領域のN型半導体領域に近接させる事ができ、更に、第三領域のいずれの場所も、第一領域又は第二領域のP型半導体領域に近接させる事ができる。従って、第三領域をキャリアーが移動する際の電気抵抗が小さくなり、高精度に欠陥準位密度を抽出する事ができる。
【0012】
上記適用例に係わる半導体装置において、第一領域におけるN型半導体領域と第二領域におけるP型半導体領域とが、第三領域を介して対向し、第一領域におけるP型半導体領域と第二領域におけるN型半導体領域とが、第三領域を介して対向する事が好ましい。
この構成によれば、第三領域のいずれの場所も、第一領域又は第二領域のN型半導体領域に近接させる事ができ、更に、第三領域のいずれの場所も、第一領域又は第二領域のP型半導体領域に近接させる事ができる。従って、第三領域をキャリアーが移動する際の電気抵抗が小さくなり、高精度に欠陥準位密度を抽出する事ができる。
【0013】
本適用例に係わる評価方法は、上記適用例に記載の半導体装置に対して、第一電極と第三電極との間又は第二電極と第三電極との間で容量電圧特性を測定する事で、第三領域の状態密度を計測する事を特徴とする。
この方法によれば、第三領域をなす半導体のバンドギャップの上半分はN型半導体領域と第三電極との間のCV特性によって求められ、第三領域をなす半導体のバンドギャップの下半分はP型半導体領域と第三電極との間のCV特性によって求められるので、第三領域をなす半導体のバンドギャップの全体に渡って、欠陥準位密度を高精度で比較的容易な計測作業にて抽出する事ができる。
【0014】
本適用例に係わる評価方法は、上記適用例に記載の半導体装置に対して、第三電極に振動電位を印加し、第一電極又は第二電極に流れる電流を測定する事で、第三領域の状態密度を計測する事を特徴とする。
この方法によれば、第三領域をなす半導体のバンドギャップの上半分はN型半導体領域に流れる電流を測定する事によって求められ、第三領域をなす半導体のバンドギャップの下半分はP型半導体領域に流れる電流を測定する事によって求められるので、第三領域をなす半導体のバンドギャップの全体に渡って、欠陥準位密度を高精度で比較的容易な計測作業にて抽出する事ができる。
【0015】
本適用例に係わる半導体装置は、N型半導体領域を含む第一領域と、P型半導体領域を含む第二領域と、平面視にて第一領域と第二領域とで挟まれた第三領域と、を有する半導体層と、第三領域に断面視で上側に重なる上側誘電体膜と、第三領域に断面視で下側に重なる下側誘電体膜と、第一領域に電気的に接続する第一電極と、第二領域に電気的に接続する第二電極と、上側誘電体膜を介して少なくとも第三領域に対面する上側第三電極と、下側誘電体膜を介して少なくとも第三領域に対面する下側第三電極と、を備えた事を特徴とする。
【0016】
本適用例に係わる電気光学装置は、上記適用例に記載の半導体装置を備えた事を特徴とする。
この構成によれば、電気光学装置に使用されるトランジスターの特性を正確に把握できるので、電気光学装置の歩留まりを高め、電気光学装置の信頼性を確保する事ができる。
【0017】
本適用例に係わる電子機器は、上記適用例に記載の電気光学装置を備えた事を特徴とする。
この構成によれば、電気光学装置に使用されるトランジスターの特性を正確に把握できるので、電子機器の歩留まりを高め、電子機器の信頼性を確保する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態1に係わる半導体装置の概要を説明する図。
図2】実施形態1に係わる半導体装置を用いたCV測定の概要を説明する回路図。
図3】実施形態1に係わるCV測定での電圧印加方法を説明する図。
図4】実施形態1に係わるCV測定結果の一例を説明する図。
図5】実施形態1に係わる半導体装置を用いたCV測定から得られた欠陥準位密度を説明する図。
図6】液晶装置の構造を示す模式平面図。
図7】液晶装置の模式断面図。
図8】液晶装置の電気的な構成を示す等価回路図。
図9】三板式プロジェクターの構成を示す平面図。
図10】実施形態2に係わる半導体装置の概要を説明する図。
図11】実施形態3に係わる半導体装置の概要を説明する図。
図12】実施形態4に係わる半導体装置の概要を説明する図。
図13】変形例1と変形例2とに係わる半導体装置の断面構造を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。尚、以下の各図においては、各層や各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各層や各部材の尺度を実際とは異ならせしめている。
【0020】
(実施形態1)
「評価用半導体装置」
図1は、実施形態1に係わる半導体装置の概要を説明する図であり、(a)は半導体層の平面図、(b)は半導体装置の断面図、(c)は半導体装置の平面図である。以下、図1を参照してトランジスター特性評価用の半導体装置1000の構成を説明する。
【0021】
図1(b)に示す様に、トランジスター特性評価用の半導体装置1000は、半導体層10を備え、この半導体層10は、図1(a)に示す様に、N型半導体領域Nを含む第一領域11と、P型半導体領域Pを含む第二領域12と、平面視にて第一領域11と第二領域12とで挟まれた第三領域13と、を有する。本実施形態で半導体層10は多結晶シリコン膜であるが、これ以外にも非晶質シリコン膜や単結晶シリコン膜(Silicon−on−InsulatorやSilicon−on−Quart等で使用される半導体膜)、単結晶シリコンウェファー、などPN接合を作り得る各種半導体が半導体層10として使用される。
【0022】
第三領域13は平面視でほぼ四角形をなし、四角形をなす四辺の内の少なくとも一辺に接する様に第一領域11が設けられ、同様に、四角形をなす四辺の内の少なくとも一辺に接する様に第二領域12が設けられる。本実施形態では、第一領域11が接する第三領域13の一辺と、第二領域12が接する第三領域13の一辺と、は互いに対向し、ほぼ平行となっている。本実施形態では、第一領域11がN型半導体領域Nとなり、第二領域12がP型半導体領域Pとなり、第三領域13が真性半導体領域となっているので、第一領域11が接する第三領域13の一辺にはN型半導体と真性半導体との接合(NI接合)が形成され、第二領域12が接する第三領域13の一辺にはP型半導体と真性半導体との接合(PI接合)が形成されている。従って、半導体層10全体としては平面視でPINダイオード構造を第二領域12から第三領域13、第一領域11へと形成している事になる。第三領域13の長さL(第一領域11から第二領域12までの距離)は20マイクロメーター(L=20μm)で、第三領域13の幅W(第一領域11や第二領域12が接する第三領域13の一辺の幅)は1000マイクロメーター(W=1000μm)である。第三領域13の面積(長さLと幅Wとの積)が10000平方マイクロメーター(LW=10000μm2)以上とすると、トランジスター特性を高精度に計測でき、好ましい。
【0023】
図1(b)と(c)とに示すトランジスター特性評価用の半導体装置1000を用いて、容量電圧特性(CV特性)を測定する。この測定に適した第三領域13の長さLと幅Wとを説明する。第三領域13の幅Wは100μm以上3mm以下の範囲にあるのが好ましい。第三領域13の幅Wが広い程、CV特性における電流量の変化が大きくなる為、第三領域13の幅Wを100μm以上とすると、低周波数でCV特性を測定しても、ノイズに対する信号の比(S/N比)が確保する事ができる。一方、第三領域13幅Wが3mm以上と大きすぎると、第三電極23のパターニングに不良が発生し易くなり、正常な測定が困難となる。即ち、第三領域13幅Wが3mm以下であると、第三電極23にパターニン不良は殆ど発生しなくなり、正常な測定が容易に行われる。第三領域13の長さLは10μm以上100μm以下の範囲にあるのが好ましい。第三領域13の長さLが10μm以下と短い場合は、半導体装置1000を製造する際の熱工程により第一領域11や第二領域12からのドナー型元素やアクセプター型元素が第三領域13に拡散し、これにより第三領域13の実効的な長さLが短縮される為、正確な計測が困難となる。従って、第三領域13の長さLが10μm以上の場合には、第一領域11や第二領域12からのドナー型元素やアクセプター型元素の第三領域13への拡散の影響が低減し、正確な計測を行う事ができる。又、第三領域13の長さLが100μm以上と長い場合は、CV特性における電流量が小さくなる為、測定精度が確保し難い。即ち、第三領域13の長さLが100μm以下であると、CV特性における電流量が比較的大きくなり、高精度で計測を行う事ができる。
【0024】
N型半導体領域Nにはドナー型の元素が高濃度に添加され、N型半導体領域NはN型の縮体半導体となっている。本実施形態では、N型半導体領域Nに燐が1.2×1020cm-3の濃度に添加されている。同様に、P型半導体領域Pにはアクセプター型の元素が高濃度に添加され、P型半導体領域PはP型の縮体半導体となっている。本実施形態では、P型半導体領域Pに硼素が1.2×1020cm-3の濃度に添加されている。尚、縮体半導体とはドナー型元素やアクセプター型元素が概ね1×1019cm-3以上半導体に添加されて、フェルミレベルが伝導体又は価電子帯から数kT以内に位置する半導体である。ここでkはボルツマン定数で、Tは絶対温度である。従って、N型半導体領域Nにおけるドナー型元素の濃度は1×1019cm-3以上であり、P型半導体領域Pにおけるアクセプター型元素の濃度は1×1019cm-3以上である。尚、本実施形態で、第三領域13は真性半導体であるが、真性とはドナー型元素及びアクセプター型元素の濃度が概ね1×1018cm-3以下となっている半導体を指す。
【0025】
図1(b)は(c)のA−A’における断面図である。図1(b)に示す様に、トランジスター特性評価用の半導体装置1000は、第三領域13を覆い、第三領域13に平面視で重なる誘電体膜DFを備える。更に、トランジスター特性評価用の半導体装置1000は、第一領域11に電気的に接続される第一電極21と、第二領域12に電気的に接続される第二電極22と、誘電体膜DFを介して少なくとも第三領域13に対面する第三電極23と、を備える。第一領域11や第二領域12を覆う誘電体膜DFにはコンタクトホール24が開口され得おり、第一電極21はコンタクトホール24を介して第一領域11に電気的に接続し、第二電極22はコンタクトホール24を介して第二領域12に電気的に接続する。
【0026】
平面視にて、図1(c)に示す様に、第三電極23の延在方向は第三領域13の延在方向にほぼ一致しており、第三電極23の一辺は第一領域11が接する第三領域13の一辺にほぼ一致している。同様に、第三電極23の他の一辺は第二領域12が接する第三領域13の一辺にほぼ一致している。これは半導体層10に対して第三電極23をマスクとして利用してドナー型元素やアクセプター型元素をイオン打ち込みする事で、自己整合的に形成される。即ち、第一領域11は第三電極23に対してセルフアライン構造をなし、第二領域12は第三電極23に対してセルフアライン構造をなす。半導体層10と第三電極23の平面視における重なり部はほぼ第三領域13となる。第三電極23を第一領域11や第二領域12に対してセルフアライン構造とし、第一領域11や第二領域12を縮体半導体とすると、第一領域11や第二領域12の電気抵抗が下がるので、CV特性計測の時定数が小さくなり、低周波でも比較的速くCV特性を計測する事が可能になる。更に、第一領域11や第二領域12が空乏化する事もないので、空乏化容量がCV特性の計測に寄生する事もなくなり、高精度な計測を行う事ができる。
【0027】
トランジスター特性評価用の半導体装置1000では、第一領域11と第二領域12とにそれぞれ複数個のコンタクトホール24が開口され、第一電極21は、第一領域11が接する第三領域13の一辺に、平面視で平行して延在し、その延設された配線の一端に第一端子61を備える。同様に、第二電極22は、第二領域12が接する第三領域13の一辺に、平面視で平行して延在し、その延設された配線の一端に第二端子62を備える。第一端子61と第二端子62とは一つの端子で兼用しても良い。第三電極23は、第一電極21と第二電極22とに平面視にて挟まれると共に、第一電極21と第二電極22とに平行に延在し、その延設された配線の一端に第三端子63を備える。第一端子61も第二端子62も第三端子63も、半導体装置1000と外部の計測器などと電気的な接続を取る為の端子で、具体的には計測器の探針を接触させたり、或いは、ワイヤーボンディング用の金属ワイヤーを接続させたりする部位である。第一端子61と第三端子63とは、平面視で、半導体層10を挟んだ反対側にそれぞれ対向配置される。又、第二端子62と第三端子63とは、平面視で、半導体層10を挟んだ反対側にそれぞれ対向配置される。即ち、第三端子63と、第一端子61又は第二端子62と、は同じ側に設けず(近接させず)、できる限り離す構成とする。もし、第三端子63と、第一端子61又は第二端子62と、を同じ側に形成し、これらの端子間距離(第三端子63と第一端子61との距離や第三端子63と第二端子62との距離)が狭まると、探針間の容量が寄生容量として計測値に載ってしまう。その結果、S/N比が低下する事になる。取り分け、本実施形態で説明する評価方法では、低周波でのCV測定で微小な信号を検出する為、ノイズの影響は最小限に止める必要性がある。従って第三端子63と、第一端子61又は第二端子62と、を反対側に対向配置すれば、端子間距離を広げる事ができ、S/N比を向上させる事が可能になる。即ち、より高精度なCV測定を行う事ができる。
【0028】
尚、図1(a)から判る様に、第三領域13内でN型半導体領域Nから最も離れた距離DN(これをN型半導体領域N迄の距離DNと称する)は第三領域13の長さLに等しく、第三領域13内でP型半導体領域Pから最も離れた距離DP(これをP型半導体領域P迄の距離DPと称する)は第三領域13の長さLに等しい。従って、本実施形態ではDN=DP=Lである。
【0029】
「CV測定」
図2は、実施形態1に係わる半導体装置を用いたCV測定の概要を説明する回路図である。又、図3は実施形態1に係わるCV測定での電圧印加方法を説明する図である。図4は、実施形態1に係わるCV測定結果の一例を説明する図である。以下、図2乃至4を参照して、実施形態1に係わる半導体装置1000を用いたCV測定を説明する。
【0030】
図2に示す様に、上述した半導体装置1000を用いて、容量電圧特性(CV特性)を計測する。即ち、少なくとも第一電極21又は第二電極22の一方の電極と第三電極23との間でCV特性を測定する。具体的には、第三電極23に電圧発生器72を接続して振動電位を印加し、更に、第一電極21と第二電極22に電流計71を接続して、第一電極21又は第二電極22に流れる電流を測定する。第三電極23に印加される振動電位の平均電位値は、負電位から正電位(若しくは正電位から負電位)に渡り掃引され、各平均電位値において、第一電極21や第二電極22に現れる交流電流を計測する事で、各平均電位値における容量を測定する。計測精度を上げるには、図2に示す様に、第一電極21と第二電極22とから延設される配線を接続し、第一端子61と第二端子62とを共通の端子として、この端子に電流計71を接続する。電圧発生器72は基準電位(本実施形態では接地電位)と第三電極23との間に配置され、電流計71は基準電位と第一電極21及び第二電極22との間に配置される。
【0031】
図3に示す様に、i番目の振動電位の平均電位値がViの際に、振幅はVAで表され、CV測定の周波数fは振動電位の一周期の逆数である。本実施形態では、i+1番目の振動電位の平均電位値Vi+1とi番目の振動電位の平均電位値がViとの差は0.1Vである(|Vi+1−Vi|=0.1V)。又、振幅は0.0707Vである(VA=0.0707V)。i番目の振動電位での容量計測が終了すると、i+1番目の振動電位での容量計測に移る。
【0032】
図4は、こうした計測結果の一例で、トランジスター特性評価用の半導体装置1000を用いて各周波数fにてCV特性を計測した例である。まず、従来は、同サイズのN型薄膜トランジスターとP型薄膜トランジスターとの伝達特性から、フラットバンド電圧を特定していた。これに対して、本実施形態では、図4から第三領域13全体が空乏化して真性条件となるV0がフラットバンド電圧Vfbと容易に判定する事ができる(V0=Vfb)。具体的に図4の例では、第三電極23の電位Vが−1.5Vでフラットバンドとなっている事が判る(V=V0=Vfb=−1.5V)。要するに5Hz程度以上の高い周波数fでのCV計測で容量値が最少となる第三電極23の電位VをV0=Vfbと特定できる。更に、図4から、このフラットバンド電圧Vfbに対して第三電極23の電位がマイナス側とプラス側とが、1Hz以下の低い周波数fでの測定においても連続的にノイズが小さい状態で測定できている事が判る。従来は、N型とP型の薄膜トランジスターで別々に測定していた2つのCV特性を、本実施形態では、一度に同じ一つの半導体装置1000にて、連続的に測定する事が可能になっている。更に、従来は、特にノイズの影響により高い精度での計測が困難であった低周波におけるフラットバンド電圧付近とトランジスターのオフ領域に相当する領域(従来のN型薄膜トランジスターでは、Vfbよりもマイナス側のゲート電圧範囲、従来のP型薄膜トランジスターでは、Vfbよりもプラス側のゲート電圧範囲)についても、連続的に、安定して高精度に計測できる様になっている。
【0033】
「欠陥準位密度の抽出」
図5は、実施形態1に係わる半導体装置を用いたCV測定から得られた欠陥準位密度を説明する図である。以下、図5を参照して、実施形態1に係わる半導体装置1000を用いたCV測定から欠陥準位密度Dtを抽出する方法を説明する。
【0034】
図4に示すCV測定結果より、図5に示す欠陥準位密度Dtが抽出される。次にCV測定結果から欠陥準位密度Dtを計算する方法を説明する。まず、誘電体膜DFに対してQ=CVの関係を適応する事で、CV測定結果からサーフェイスポテンシャルφSを数式1から数式3に示す様に求める。
【0035】
【数1】
【0036】
【数2】
【0037】
【数3】
【0038】
尚、ここでC0は第三領域13と第三電極23とが誘電体膜DFを挟んで形成する容量を幾何学的に計算して得られた値であり、CmはCV計測結果で得られる容量値である。サーフェイスポテンシャルφSは第三電極23の電位Vの関数で、数式3では、V=Viの際のサーフェイスポテンシャルφSを示している。数式3にCmを代入する事で各Viの際のサーフェイスポテンシャルφSが計算される。次にポテンシャルφの曲がりの半導体層10の厚み(x)方向に関する表面での傾き(φをxにて偏微分した関数の表面での値)を、ガウスの法則を誘電体膜DF表面に適応して、数式4と計算する。
【0039】
【数4】
【0040】
尚、数式4でεiとεSとはそれぞれ誘電体膜DFと半導体層10との誘電率であり、tiは誘電体膜DFの厚みである。サーフェイスポテンシャルφSを数式4に代入してポテンシャルφの曲がりの半導体層10の厚み(x)方向に関する表面での傾きが数式4と計算される。
【0041】
本実施形態では、ポテンシャルφはフェルミレベルEFを基準としたバンドの曲がり(真性フェルミレベルEiの曲がり)である。要するに、真性フェルミレベルEiとフェルミレベルEFとの差がポテンシャルφとなり(φ=Ei−EF)、ポテンシャルφの表面における値がサーフェイスポテンシャルφSである。フラットバンド状態における真性フェルミレベルをEi0にて表し、フェルミレベルEFとフラットバンド状態における真性フェルミレベルEi0との差をφ0とすると(φ0=EF−Ei0)、ポテンシャルφはφ=Ei−Ei0−φ0である。従って、表面ポテンシャルφSはフラットバンド条件でφS=−φ0となる。但し、本実施形態では、第三領域13は真性半導体であるのでφS=φ0=0である。
【0042】
次に、ポテンシャルφの半導体層10の厚みに関する空間的な関数を、数式5に示すポワッソン方程式と、数式6と7とに示すキャリアー密度方程式とを適応して、計算する。この際に、ポテンシャルφと捕獲された電荷の密度Ntとは、欠陥準位密度Dtと数式8の関係にあるので、サーフェイスポテンシャルφSやポテンシャルφの曲がりの半導体層10の厚み(x)方向に関する表面での傾き等を適宜最適化する事で、欠陥準位密度Dtが抽出される。
【0043】
【数5】
【0044】
【数6】
【0045】
【数7】
【0046】
【数8】
【0047】
ここでqは電荷素量で、nとpとはそれぞれ電子と正孔のキャリアー密度である。又、NDは第三領域13に添加されているドナー型元素のドーズ量で、NAは第三領域13に添加されているアクセプター型元素のドーズ量である。本実施形態では、真性半導体膜を第三領域13に使用して居るので、ND=NA=0としている。この様にして、図4に示すCV特性の計測結果から、図5に示す欠陥準位密度Dtが求まる。
【0048】
従来は、N型薄膜トランジスターとP型薄膜トランジスターとで別々に測定していた2つのCV特性から欠陥準位密度Dtを求めていた。而もそのCV測定時にはノイズの影響が大きく、その為に高精度な欠陥準位密度Dtの抽出が困難であった。これに対して、上に示した様に、本実施形態では、単一の半導体層10に対して、伝導帯から価電子帯までのバンドギャップ全域に渡り、容易に欠陥準位密度Dtの分布を把握する事ができる。
【0049】
欠陥準位密度Dtは単に状態密度とも言われる事がある。第三領域13をなす半導体の欠陥準位には、第三領域13と誘電体膜DFとの界面での界面捕獲準位と第三領域13でのバルク半導体捕獲準位とがある。欠陥準位密度Dt(状態密度)とは、第三領域13と誘電体膜DFとの界面での界面捕獲準位と第三領域13でのバルク半導体捕獲準位との和に対応する密度で有る。又、ここでは、第三領域13をなす半導体のバンドギャップの上半分はN型半導体領域Nと第三電極23との間のCV特性(V0よりもプラス側のCV特性)によって求められ、第三領域13をなす半導体のバンドギャップの下半分はP型半導体領域Pと第三電極23との間のCV特性(V0よりもマイナス側のCV特性)によって求められている。即ち、バンドギャップの上半分の欠陥準位密度Dtを求めるには、数式3でV0よりもプラス側のCV特性から得られるViとCmとを用いて計算し、バンドギャップの下半分の欠陥準位密度Dtを求めるには、数式3でV0よりもマイナス側のCV特性から得られるViとCmとを用いて計算する。
【0050】
尚、本実施形態では第三領域13は真性であったが、第三領域13は真性に限らず、N型であっても、P型であっても、構わない。例えば第三領域13にアクセプター型元素が添加されて、第三領域13がP型になっている場合、数式6でND=0とし、NA≠0となる。アクセプター型元素のドーズ量に応じて、第三領域13のフェルミレベルEFが定まる。フェルミレベルEFと真性フェルミレベルEiとの差がポテンシャルφなので、フラットバンド条件の際には、サーフェイスポテンシャルφSはフェルミレベルと真性フェルミレベルとの差に等しくなる(V=Vfbの際にφS=EF−Ei)。要するに数式3で求めたサーフェイスポテンシャルφSがフェルミレベルと真性フェルミレベルとの差に一致した時の電圧値がフラットバンド電圧Vfbに相当する。この後、こうして得られたフラットバンド電圧Vfbを基準にして、上述の抽出方法を適応する事で、バンドギャップ全域に渡って、欠陥準位密度Dtを抽出する事ができる。
【0051】
「原理」
本願発明者が鋭意研究した所によると、半導体層10の欠陥準位での電荷の捕獲や放出に関する時定数は1秒程度のオーダーである。この時定数は半導体層10(第三領域13内や第一領域11又は第二領域12)において電荷が被る電気抵抗と欠陥準位の容量との積にて定まる。この為に本実施形態ではCV測定時の周波数fが1Hz程度以下とすると欠陥準位密度Dtを抽出する事が可能となった。これに対して、従来のTFTを用いたCV測定ではオフ状態に相当する計測では、ゲート電極下の半導体層10とソースドレイン領域との間に空乏領域が形成され、電荷の移動を阻害していた。例えば、N型トランジスターでゲート電極を負にした場合、P型のチャンネルとN型ソースドレイン領域との境界領域にPN接合が形成され、キャリアーが空乏化していた。この空乏領域の電気抵抗が大きく、時定数を大きくしていた。この結果、従来は、1Hz程度のCV測定では時定数よりも充放電期間が短時間になるので、容量をアンダーエスティメイトしていた。又、欠陥準位に起因する容量が定まっている一方で、大きい時定数の影響を排除する為に長時間の測定を試みると(要するにCV測定の計測周波数fを小さくすると)、計測される電流値が極めて小さくなり、SN比の低下を避けられなかった。
【0052】
本実施形態の評価方法では、第三領域13とN型半導体領域Nとの間に空乏領域ができる際には(第三領域13が電気的にP型となっている際には)、第三領域13とP型半導体領域Pとで、空乏領域の影響を被ることなく、CV測定が行われる。同様に、第三領域13とP型半導体領域Pとの間に空乏領域ができる際には(第三領域13が電気的にN型となっている際には)、第三領域13とN型半導体領域Nとで、空乏領域の影響を被ることなく、CV測定が行われる。この様に単一の半導体装置1000にて欠陥準位密度Dtと云ったトランジスター特性の一つを高精度に評価する事ができる。又、従来は単一のTFTではフラットバンド電圧を特定できず、而もバンドギャップの半分しか欠陥準位密度Dtを抽出できなかったが、本実施形態に記載の半導体装置1000を用いた評価方法では、単一の半導体装置1000でフラットバンド電圧の特定もバンドギャップ全域に渡る欠陥準位密度Dtの抽出も可能になる。
【0053】
「電気光学装置」
図6は、液晶装置の構造を示す模式平面図である。図7は、図6に示す液晶装置のA−A’線に沿う模式断面図である。以下、液晶装置の構造を、図6及び図7を参照しながら説明する。
【0054】
図6及び図7に示す様に、液晶装置100は、薄膜トランジスター46(TFT素子46と称する、図8参照)を画素35のスイッチング素子として用いたTFTアクティブマトリックス方式の液晶装置である。液晶装置100では、一対の基板を構成する素子基板52と対向基板53とが、平面視で略矩形枠状に配置されたシール材14にて貼り合わされている。
【0055】
液晶装置100は、シール材14に囲まれた領域内に液晶層15(図7参照)が封入された構成になっている。尚、シール材14には液晶を注入する為の液晶注入口31が設けられ、液晶注入口31は封止材32により封止されている。
【0056】
液晶層15としては、例えば、正の誘電率異方性を有する液晶材料が用いられる。液晶装置100は、シール材14の内周近傍に沿って遮光性材料からなる平面視矩形枠状の遮光膜33が対向基板53に形成されており、この遮光膜33の内側の領域が表示領域34となっている。表示領域34の外側で遮光膜33に隠された領域の素子基板52には半導体装置1000が形成されている。半導体装置1000は比較低サイズが大きいので、上述の場所に形成されているが、この他の場所に設置しても構わない。例えば、シール材14に平面視で重なる様に半導体装置1000が形成されても良い。
【0057】
遮光膜33は、例えば、遮光性材料であるアルミニウム(Al)で形成されており、対向基板53側の表示領域34の外周を区画する様に、更に、上記した様に、表示領域34内で走査線16と信号線17に対向して設けられている。
【0058】
表示領域34内には、画素35がマトリックス状に設けられている。画素35は、交差する走査線16と信号線17とによって特定される領域で、一つの画素35は一本の走査線16からその隣の走査線16まで、且つ、一本の信号線17からその隣の信号線17までの領域である。シール材14の外側の領域には、信号線駆動回路36及び外部接続端子37が素子基板52の一辺(図6における下側)に沿って形成されている。更に、シール材14の内側の領域には、この一辺に隣り合う二辺に沿って走査線駆動回路38がそれぞれ形成されている。素子基板52の残る一辺(図6における上側)には、前述の如く半導体装置1000が形成されている。対向基板53側に形成された遮光膜33は、例えば、素子基板52上に形成された走査線駆動回路38及び半導体装置1000に対向する位置(言い換えれば、平面的に重なる位置)に形成されている。
【0059】
一方、対向基板53の各角部(例えば、シール材14のコーナー部の4箇所)には、素子基板52と対向基板53との間の電気的導通をとるための上下導通端子41が配設されている。
【0060】
「電気光学装置の断面構造」
図7は液晶装置の模式断面図である。以下、液晶装置100の構造を、図7を参照して説明する。尚、本明細書において、「○○上に」「○○上側に」と記載された場合、○○の上に接する様に配置される場合、又は、○○の上に他の構成物を介して配置される場合、又は、○○の上に一部が接する様に配置され一部が他の構成物を介して配置される場合、を表すものとする。又、「上」や「上側」とは、素子基板52などの基板に対して、膜や層が積まれている向きを指す。
【0061】
図7に示す様に、素子基板52の液晶層15側には、複数の画素電極42が形成されており、これら画素電極42を覆う様に第1配向膜43が形成されている。画素電極42は、インジウム錫酸化物(ITO)等の透明導電材料からなる導電膜である。一方、対向基板53の液晶層15側には、格子状の遮光膜33が形成され、その上に平面ベタ状の共通電極27が形成されている。そして、共通電極27上には、第2配向膜44が形成されている。共通電極27は、ITO等の透明導電材料からなる導電膜である。
【0062】
液晶装置100は透過型であって、素子基板52及び対向基板53における光の入射側と出射側とにそれぞれ偏光板(図示せず)等が配置されて用いられる。なお、液晶装置100の構成は、これに限定されず、反射型や半透過型の構成であってもよい。
【0063】
「回路構成」
図8は、液晶装置の電気的な構成を示す等価回路図である。以下、液晶装置100の電気的な構成を、図8を参照しながら説明する。
【0064】
図8に示す様に、液晶装置100は、表示領域34を構成する複数の画素35を有している。各画素35には、それぞれ画素電極42が配置されている。又、画素35には、TFT素子46が形成されている。
【0065】
TFT素子46は、画素電極42へ通電制御を行う画素スイッチング素子である。TFT素子46のソース側には、信号線17が電気的に接続されている。各信号線17には、例えば、信号線駆動回路36から画像信号S1、S2、…、Snが供給される様になっている。
【0066】
又、TFT素子46のゲート側には、走査線16が電気的に接続されている。走査線16には、例えば、走査線駆動回路38から所定のタイミングでパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmが供給される様になっている。又、TFT素子46のドレイン側には、画素電極42が電気的に接続されている。
【0067】
走査線16から供給された走査信号G1、G2、…、Gmは画素スイッチング素子に対する選択電位で、画素スイッチング素子は選択電位が印加された際に導通状態となり、非選択電位が印加された際に非導通状態となる。即ち、スイッチング素子であるTFT素子46は選択電位が供給された一定期間だけオン状態となることで、信号線17から供給された画像信号S1、S2、…、Snが、画素電極42を介して画素35に所定のタイミングで書き込まれる様になっている。
【0068】
画素35に書き込まれた所定電位の画像信号S1、S2、…、Snは、画素電極42と共通電極27(図7参照)との間で形成される液晶容量で一定期間保持される。尚、保持された画像信号S1、S2、…、Snの電位が、漏れ電流により、低下する事を抑制すべく、画素電極42と容量線47とで保持容量48が形成されている。
【0069】
液晶層15に電圧信号が印加されると、印加された電圧レベルにより、液晶分子の配向状態が変化する。これにより、液晶層15に入射した光が変調されて、画像光が生成される。
【0070】
各画素35には、TFT素子46が配置されているが、TFT素子46はN型TFTで、素子基板52に形成されている。TFT素子46をなすN型TFTは、断面視では、図1(b)に示す半導体装置1000と殆ど同じ構造をなす。具体的には、N型TFTの半導体膜は半導体層10と同じであり、N型TFTでは、この半導体膜にN型半導体のソース領域とドレイン領域、弱いP型半導体のチャンネル形成領域が形成されている。チャンネル形成領域は第三領域13に相当する。ソース領域とドレイン領域とは低濃度のドナー型元素添加領域と高濃度のドナー型元素添加領域とを有し、第一領域11や第二領域12に相当する。N型TFTのゲート絶縁膜は誘電体膜DFと同じであり、N型TFTのゲート電極は第三電極23と同じである。更に、信号線駆動回路36や走査線駆動回路38には、P型TFTも使用されているが、このP型TFTも、断面視では、図1(b)に示す半導体装置1000と殆ど同じ構造をなす。具体的には、P型TFTの半導体膜は半導体層10と同じであり、P型TFTでは、この半導体膜にP型半導体のソース領域とドレイン領域、弱いP型半導体のチャンネル形成領域が形成されている。チャンネル形成領域は第三領域13に相当する。ソース領域とドレイン領域とは高濃度のアクセプター型元素添加領域となっており、第一領域11や第二領域12に相当する。P型TFTのゲート絶縁膜は誘電体膜DFと同じであり、P型TFTのゲート電極は第三電極23と同じである。この様に、電気光学装置で使用されているN型TFTとP型TFTとは半導体装置1000と殆ど同じ構造をなすので、半導体装置1000を解析する事で、電気光学装置に使用されているN型TFTとP型TFTのトランジスター特性を特定する事ができる。
【0071】
尚、本実施形態では、電気光学装置として液晶装置100を用いて説明したが、この他に電気光学装置としては、電気泳動表示装置や有機EL装置なども対象となる。
【0072】
本実施形態に記載された電気光学装置は、上述の半導体装置1000を備えているので、電気光学装置に使用されるTFT素子の特性を正確に把握できる。従って、電気光学装置の歩留まりを高め、電気光学装置の信頼性を確保する事ができる。
【0073】
「電子機器」
図9は、電子機器としての三板式プロジェクターの構成を示す平面図である。次に図9を参照して、本実施形態に係る電子機器の一例としてプロジェクターを説明する。
【0074】
プロジェクター2100において、超高圧水銀ランプで構成される光源2102から出射された光は、内部に配置された3枚のミラー2106及び2枚のダイクロイックミラー2108によって赤(R)、緑(G)、青(B)の三原色の光に分離され、各原色に対応する液晶装置100R、100G及び100Bに導かれる。尚、青色の光は、他の赤色や緑色と比較すると、光路が長いので、その損失を防ぐ為に、入射レンズ2122、リレーレンズ2123及び出射レンズ2124からなるリレーレンズ系2121を介して導かれる。
【0075】
液晶装置100R、100G及び100Bは、上述した構成を取り、それぞれが半導体装置1000を備えている。外部装置(図示省略)から供給される赤、緑、青の各色に対応する画像信号にて、それぞれ駆動される。
【0076】
液晶装置100R、100G、100Bによってそれぞれ変調された光は、ダイクロイックプリズム2112に三方向から入射する。そして、このダイクロイックプリズム2112において、赤色及び青色の光は90度に屈折される一方、緑色の光は直進する。ダイクロイックプリズム2112において合成されたカラー画像を表す光は、レンズユニット2114によって拡大投射され、スクリーン2120上にフルカラー画像が表示される。
【0077】
尚、液晶装置100R、100Bの透過像がダイクロイックプリズム2112により反射した後に投射されるのに対し、液晶装置100Gの透過像はそのまま投射されるため、液晶装置100R、100Bにより形成される画像と、液晶装置100Gにより形成される画像とが左右反転の関係になる様に設定されている。
【0078】
本実施形態のプロジェクター2100は、上述の液晶装置100R、100G、100Bが用いられているので、明るく高精細で画像品位の高いフルカラー画像を投射する事ができる。
【0079】
電子機器としては、図9を参照して説明したプロジェクターの他にも、リアプロジェクション型テレビ、直視型テレビ、携帯電話、携帯用オーディオ機器、パーソナルコンピューター、ビデオカメラのモニター、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、ディジタルスチルカメラなどが挙げられる。そして、これらの電子機器に対しても、本実施形態にて詳述した電気光学装置を適用させる事ができる。
【0080】
本実施形態に記載の電子機器は、上述の電気光学装置を備えているので、電気光学装置に使用されるトランジスターの特性を正確に把握する事ができる。従って、電子機器の歩留まりを高め、電子機器の信頼性を確保する事ができる。
【0081】
(実施形態2)
「第一領域と第二領域との構造を変えた形態」
図10は、実施形態2に係わる半導体装置の概要を説明する図であり、(a)は半導体層の平面図、(b)は半導体装置の平面図である。以下、図10を参照して、実施形態2に係わるトランジスター特性評価用の半導体装置2000の構成を説明する。尚、実施形態1と同一の構成部位については、同一の符号を附し、重複する説明は省略する。
【0082】
本実施形態(図10)は実施形態1(図1)と比べて、第一領域11と第二領域12とにおける半導体層10の導電型が異なっている。それ以外の構成は、実施形態1とほぼ同様である。実施形態1(図1)では、第一領域11はN型半導体領域Nで、第二領域12はP型半導体領域Pとなっていた。これに対して、図10(a)に示す様に、本実施形態では、第一領域11はN型半導体領域NとP型半導体領域Pとを含み、第二領域12もN型半導体領域NとP型半導体領域Pとを含んでいる。第三領域13が平面視にて第一領域11と第二領域12とで挟まれ、半導体層10が第一領域11と第二領域12と第三領域13とを有する点は、実施形態1と同じである。誘電体膜DFは、第三領域13に重なり、この誘電体膜DFを介して、図10(b)に示す様に、第三電極23は、少なくとも第三領域13に対面している。第一電極21は、第一領域11におけるN型半導体領域NとP型半導体領域Pとに電気的にコンタクトホール24を介して接続されている。同様に、第二電極22は、第二領域12におけるN型半導体領域NとP型半導体領域Pとに電気的にコンタクトホール24を介して接続されている。第一領域11におけるN型半導体領域NとP型半導体領域Pとは、平面視にて第三領域13に接し、第二領域12におけるN型半導体領域NとP型半導体領域Pとは、平面視にて第三領域13に接する。その他の半導体装置2000に関する構成は実施形態1と同じであり、評価方法も実施形態1と同じである。
【0083】
こうする事で、第三領域13で、第三電極23の延在方向に直交する辺の近傍を除いて、第三領域13のいずれの場所でも、第一領域11又は第二領域12のN型半導体領域Nに近接させる事ができる。同様に、第三領域13で、第三電極23の延在方向に直交する辺の近傍を除いて、第三領域13のいずれの場所も、第一領域11又は第二領域12のP型半導体領域Pに近接させる事ができる。この結果、第三領域13をキャリアーが移動する際の電気抵抗が小さくなり、その分、CV特性計測の時定数が小さくなるので、高精度に欠陥準位密度Dtを抽出する事ができる。次にこの事を説明する。
【0084】
図10(a)には、第三領域13内でN型半導体領域Nから最も離れた点をしめす丸印と、N型半導体領域N迄の距離DNと、が記載されている。尚、図10(a)では、第一領域11や第二領域12におけるN型半導体領域Nの幅をWNにて表し、第一領域11や第二領域12におけるP型半導体領域Pの幅をWPにて表している。図10(a)に示す様に、第三領域13で、第三電極23の延在方向に直交する辺の近傍(図10(a)の例では、第三領域13の右端の領域)を除いて、第三領域13内でN型半導体領域Nから最も離れた点(丸印)は、第三領域13の長さL方向の中央で、且つP型半導体領域Pの幅W方向の中央となる位置である。従って、N型半導体領域N迄の距離DNは数式9と記述される。
【0085】
【数9】
【0086】
ここでDN<Lとすると、本実施形態におけるN型半導体領域N迄の距離DNは、実施形態1でのN型半導体領域N迄の距離DNよりも短くなる。数式9をこの不等号に関して解くと、数式10が得られる。
【0087】
【数10】
【0088】
数式10が満たされると、第三領域13内での電子に関する電気抵抗が実施形態1よりも小さくなり、それ故に電子に関するCV特性計測の時定数が小さくなるので、実施形態1よりも更に高精度にバンドギャップの上半分に関して欠陥準位密度Dtを抽出する事ができる。同様にして、数式11が得られる。
【0089】
【数11】
【0090】
数式11が満たされると、第三領域13内での正孔に関する電気抵抗が実施形態1よりも小さくなり、それ故に正孔に関するCV特性計測の時定数が小さくなるので、実施形態1よりも更に高精度にバンドギャップの下半分に関して欠陥準位密度Dtを抽出する事ができる。
【0091】
数式10では、第三領域13の右端の近傍を除いてその他の第三領域13の大半の領域で、N型半導体領域N迄の距離DNが実施形態1よりも短くなった。又、数式11では、第三領域13の左端の近傍を除いてその他の第三領域13の大半の領域で、P型半導体領域P迄の距離DPが実施形態1よりも短くなった。数式10や数式11を導いたのと同じ考え方で、数式12が満たされると、第三領域13の総ての位置で、N型半導体領域N迄の距離DNやP型半導体領域P迄の距離DPを実施形態1よりも短くする事ができる。
【0092】
【数12】
【0093】
従って、数式12が満たされると、実施形態1よりも更に高精度にバンドギャップの全域に渡って欠陥準位密度Dtを抽出する事ができる。
【0094】
以上述べたように、本実施形態によれば、実施形態1での効果に加えて、第三領域13のいずれの場所も、第一領域11又は第二領域12のN型半導体領域Nに実施形態1の場合よりも近接させる事ができ、更に、第三領域13のいずれの場所も、第一領域11又は第二領域12のP型半導体領域Pに実施形態1の場合よりも近接させる事ができる。従って、第三領域13をキャリアーが移動する際の電気抵抗が小さくなり、高精度に欠陥準位密度Dtを抽出する事ができる。
【0095】
(実施形態3)
「第一領域と第二領域との構造を変えた形態2」
図11は、実施形態3に係わる半導体装置の概要を説明する図であり、(a)は半導体層の平面図、(b)は半導体装置の平面図である。以下、図11を参照して、実施形態3に係わるトランジスター特性評価用の半導体装置3000の構成を説明する。尚、実施形態1乃至実施形態2と同一の構成部位については、同一の符号を附し、重複する説明は省略する。
【0096】
本実施形態(図11)は実施形態2(図10)と比べて、第一領域11と第二領域12とにおけるN型半導体領域NとP型半導体領域Pとの配置が異なっている。それ以外の構成は、実施形態2とほぼ同様である。実施形態2(図10)では、第一領域11のN型半導体領域Nは第二領域12のN型半導体領域Nに平面視で対面し、第一領域11のP型半導体領域Pは第二領域12のP型半導体領域Pに平面視で対面していた。これに対して、図11(a)に示す様に、本実施形態では、第一領域11におけるN型半導体領域Nと第二領域12におけるP型半導体領域Pとが、第三領域13を介して対向し、第一領域11におけるP型半導体領域Pと第二領域12におけるN型半導体領域Nとが、第三領域13を介して対向している。その他の半導体装置3000に関する構成は1実施形態1乃至実施形態2と同じであり、評価方法も実施形態1と同じである。
【0097】
こうする事で、第三領域13で、第三電極23の延在方向に直交する辺の近傍を除いて、第三領域13のいずれの場所でも、第一領域11又は第二領域12のN型半導体領域Nに近接させる事ができる。同様に、第三領域13で、第三電極23の延在方向に直交する辺の近傍を除いて、第三領域13のいずれの場所も、第一領域11又は第二領域12のP型半導体領域Pに近接させる事ができる。この結果、第三領域13をキャリアーが移動する際の電気抵抗が小さくなり、その分、CV特性計測の時定数が小さくなるので、高精度に欠陥準位密度Dtを抽出する事ができる。次にこの事を説明する。
【0098】
図11(a)には、第三領域13内でN型半導体領域Nから最も離れた点を示す丸印と、N型半導体領域N迄の距離DNと、が記載されている。尚、図11(a)では、第一領域11や第二領域12におけるN型半導体領域Nの幅をWNにて表し、第一領域11や第二領域12におけるP型半導体領域Pの幅をWPにて表している。図11(a)に示す様に、第三領域13で、第三電極23の延在方向に直交する辺の近傍(図11(a)の例では、第三領域13の左右端の領域)を除いて、第三領域13内でN型半導体領域Nから最も離れた点(丸印)は、第三領域13の長さL方向に関しては第三領域13と第一領域11又は第二領域12との境界部で、且つP型半導体領域Pの幅W方向の中央となる位置である。従って、N型半導体領域N迄の距離DNは数式13と記述される。
【0099】
【数13】
【0100】
ここでDN<Lとすると、本実施形態におけるN型半導体領域N迄の距離DNは、実施形態1や実施形態2でのN型半導体領域N迄の距離DNよりも短くなる。数式13をこの不等号に関して記述し直すと、数式14が得られる。
【0101】
【数14】
【0102】
数式14が満たされると、第三領域13内での電子に関する電気抵抗が実施形態1や実施形態2よりも小さくなり、それ故に電子に関するCV特性計測の時定数が小さくなるので、実施形態1や実施形態2よりも更に高精度にバンドギャップの上半分に関して欠陥準位密度Dtを抽出する事ができる。同様にして、数式15が得られる。
【0103】
【数15】
【0104】
数式15が満たされると、第三領域13内での正孔に関する電気抵抗が実施形態1や実施形態2よりも小さくなり、それ故に正孔に関するCV特性計測の時定数が小さくなるので、実施形態1や実施形態2よりも更に高精度にバンドギャップの下半分に関して欠陥準位密度Dtを抽出する事ができる。
【0105】
数式14や数式15では、第三領域13の左右端の近傍を除いてその他の第三領域13の大半の領域で、N型半導体領域N迄の距離DNが実施形態1よりも短くなり、P型半導体領域P迄の距離DPが実施形態1よりも短くなった。数式14や数式15を導いたのと同じ考え方で、数式16が満たされると、第三領域13の総ての位置で、N型半導体領域N迄の距離DNやP型半導体領域P迄の距離DPを実施形態1よりも短くする事ができる。
【0106】
【数16】
【0107】
従って、数式16が満たされると、実施形態1や実施形態2よりも更に高精度にバンドギャップの全域に渡って欠陥準位密度Dtを抽出する事ができる。
【0108】
以上述べたように、本実施形態によれば、実施形態1や実施形態2での効果に加えて、第三領域13のいずれの場所も、第一領域11又は第二領域12のN型半導体領域Nに実施形態1や実施形態2の場合よりも近接させる事ができ、更に、第三領域13のいずれの場所も、第一領域11又は第二領域12のP型半導体領域Pに実施形態1や実施形態2の場合よりも近接させる事ができる。従って、第三領域13をキャリアーが移動する際の電気抵抗が小さくなり、高精度に欠陥準位密度Dtを抽出する事ができる。
【0109】
(実施形態4)
「第一領域と第二領域との構造を変えた形態3」
図12は、実施形態4に係わる半導体装置の概要を説明する図であり、(a)は半導体層の平面図、(b)は半導体装置の平面図である。以下、図11を参照して、実施形態4に係わるトランジスター特性評価用の半導体装置4000の構成を説明する。尚、実施形態1乃至実施形態3と同一の構成部位については、同一の符号を附し、重複する説明は省略する。
【0110】
本実施形態(図12)は実施形態3(図11)と比べて、N型半導体領域Nの幅WNとP型半導体領域Pの幅WPとが異なっている。それ以外の構成は、実施形態3とほぼ同様である。実施形態3(図11)では、N型半導体領域Nの幅WNはP型半導体領域Pの幅WPとほぼ等しかった。これに対して、図12(a)に示す様に、本実施形態では、N型半導体領域Nの幅WNはP型半導体領域Pの幅WPと異なっており、より具体的には、N型半導体領域Nの幅WNはP型半導体領域Pの幅WPより狭くなっている(WP>WN)。その他の半導体装置4000に関する構成は実施形態1乃至実施形態3と同じであり、評価方法も実施形態1と同じである。
【0111】
こうする事で、第三領域13のいずれの場所からのP型半導体領域Pまでの距離がN型半導体領域Nまでの距離よりも小さくなっている。正孔と電子とでは、電子の移動度の方が大きいので、実施形態3の場合、電子に関するCV特性計測の時定数は正孔に関するCV特性計測の時定数よりも小さくなる。この結果、実施形態3の場合は正孔に関するCV特性計測よりも電子に関するCV特性計測の方が正確になっていた。逆を云うと、実施形態3の場合は正孔に関するCV特性計測の精度は電子に関するCV特性計測ほど高くはなかった。これに対し、本実施形態では、第三領域13を正孔が移動する際の電気抵抗を、第三領域13を電子が移動する際の電気抵抗と、同程度にする事ができる。その結果、バンドギャップの上半分と下半分とを同程度の高精度さで、欠陥準位密度Dtを抽出する事ができる。更に、実施形態3に比べてCV特性の計測精度が劣ると思われる電子に関する計測も第三実施形態よりも高める事もできる。次にこの事を説明する。
【0112】
実施形態3と本実施形態とを比較すると、P型半導体領域Pの幅WPが広くなっているので、本実施形態でのP型半導体領域P迄の距離DPの方が、実施形態3でのP型半導体領域P迄の距離DPよりも短くなる。これに反して、本実施形態でのN型半導体領域N迄の距離DNは、実施形態3でのN型半導体領域N迄の距離DNよりも長くなると思われがちだが、半導体装置4000を以下の様に構成する事で。本実施形態でのN型半導体領域N迄の距離DNの方が、実施形態3でのN型半導体領域N迄の距離DNよりも短くし得る事を説明する。図12(a)には、第三領域13内でN型半導体領域Nから最も離れた点を示す丸印と、N型半導体領域N迄の距離DNと、が記載されている。図12(a)に示す様に、第三領域13内でN型半導体領域Nから最も離れた点(丸印)は、第三領域13の長さL方向の中央で、且つ第一領域11のP型半導体領域Pと第二領域12のP型半導体領域Pと幅W方向で重なっている部位の中央となる位置である。従って、N型半導体領域N迄の距離DNは数式17と記述される。
【0113】
【数17】
【0114】
ここでN型半導体領域NとP型半導体領域Pとを一組みとし、この組みが半導体層10の幅Wを分割している数をαとする(WP+WN=W/α)。更に、WPのWNに対する比をβとする(WP/WN=β)。すると、WPとWNとは数式18で表される。
【0115】
【数18】
【0116】
実施形態3(図11)と本実施形態(図12)とでα=3である。又、実施形態3(図11)ではβ=1で、本実施形態(図12)ではβ>1である。実施形態3におけるP型半導体領域Pの幅を、混乱しない様に、本実施形態ではWp3と記述すると、Wp3=W/2αであるので、Wp3は本実施形態におけるN型半導体領域Nの幅WNとP型半導体領域Pの幅WPとを用いて、数式19と表現される。
【0117】
【数19】
【0118】
数式17に示されるDNが、数式13を参照して、DN<Wp3/2とすると、本実施形態におけるN型半導体領域N迄の距離DNは、実施形態3でのN型半導体領域N迄の距離DNよりも短くなる。この不等号に数式17と数式19とを代入すると、数式20がえられる。
【0119】
【数20】
【0120】
数式20の不等号は、数式21と書き直される。
【0121】
【数21】
【0122】
βが3よりも大きいと、数式21は決して満たされる事はない。従って、少なくとも1<β<3でなくてはならない。言い換えると、1<β<3(数式22)で、且つ数式21が満たされると、本実施形態におけるN型半導体領域N迄の距離DNは、実施形態3でのN型半導体領域N迄の距離DNよりも短くなる。
【0123】
【数22】
【0124】
こうして、数式21と数式22とが満たされると、第三領域13内での電子に関する電気抵抗が実施形態3よりも小さくなり、実施形態3よりも更に高精度にバンドギャップの上半分に関して欠陥準位密度Dtを抽出する事ができる。又、前述の如く、実施形態3よりも高精度にバンドギャップの下半分に関して欠陥準位密度Dtを抽出する事ができるので、結局、実施形態3よりも更に高精度にバンドギャップの全域に渡って欠陥準位密度Dtを抽出する事ができる。
【0125】
以上述べたように、本実施形態によれば、実施形態1乃至実施形態3での効果に加えて、第三領域13のいずれの場所も、第一領域11又は第二領域12のN型半導体領域Nに実施形態1乃至実施形態3の場合よりも近接させる事ができ、更に、第三領域13のいずれの場所も、第一領域11又は第二領域12のP型半導体領域Pに実施形態1乃至実施形態3の場合よりも近接させる事ができる。而もバンドギャップの上半分と下半分とから同じ高精度で欠陥準位密度Dtを抽出する事ができる。
【0126】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良などを加えることが可能である。変形例を以下に述べる。
【0127】
(変形例1)
「第三電極が半導体層よりも下側に位置する形態」
図13は変形例1と変形例2とに係わる半導体装置の断面構造を説明する図である。以下、図13(a)を用いて、本変形例に係わる半導体装置5000について説明する。尚、実施形態1乃至4と同一の構成部位については、同一の符号を附し、重複する説明は省略する。
【0128】
本変形例に係わる半導体装置5000は、実施形態1乃至4と比べて、断面視にて半導体層10に対する第三電極23の位置が異なっている。それ以外の構成は、実施形態1乃至4とほぼ同様である。実施形態1乃至4では、図1(b)に示す様に、断面視にて第三電極23が半導体層10よりも上側に位置していた。これとは反対に、図13(a)に示す様に、断面視にて第三電極23が半導体層10よりも下側に位置していても良い。又、図1(b)に示す様に、第三領域13は第三電極23に対してセルフアライン構造である事が望ましいが、図13(a)に示す様に、第一領域11と第三電極23とは、断面視で、僅かに重なっていても良い。同様に、第二領域12と第三電極23とは、断面視で、僅かに重なっていても良い。
【0129】
(変形例2)
「第三電極が半導体層の上下に位置する形態」
図13(b)を用いて、本変形例に係わる半導体装置6000について説明する。尚、実施形態1乃至4と同一の構成部位については、同一の符号を附し、重複する説明は省略する。
【0130】
本変形例に係わる半導体装置6000は、実施形態1乃至4と比べて、断面視にて半導体層10の上下に第三電極23が形成されている。それ以外の構成は、実施形態1乃至4とほぼ同様である。実施形態1乃至4では、図1(b)に示す様に、断面視にて第三電極23が半導体層10よりも上側に位置していた。これに対して、第三電極23が上側第三電極23Uと下側第三電極23Lと複数個存在しても良い。具体的には、図13(b)に示す様に、断面視にて、上側第三電極23Uが半導体層10よりも上側に位置しており、更に下側第三電極23Lが半導体層10よりも下側に位置していても良い。この場合、半導体装置6000を構成する誘電体膜DFは、上側第三電極23Uと半導体層10とで挟まれる上側誘電体膜DFUと、下側第三電極23Lと半導体層10とで挟まれる下側誘電体膜DFLと、の複数個となる。又、図13(b)に示す様に、第一領域11と下側第三電極23Lとは、断面視で、僅かに重なっていても良い。同様に、第二領域12と下側第三電極23Lとは、断面視で、僅かに重なっていても良い。下側第三電極23Lは半導体装置6000に対する遮光膜とする事もできる。
【0131】
実施形態1乃至4の半導体装置6000を用いた場合、半導体層10の下側(第三電極23から遠い側)界面におけるポテンシャルの傾きはゼロを前提(境界条件)として解析が行われる。実際の半導体装置6000では積極的に下側界面のポテンシャルφを制御していない為、解析結果にはある程度の曖昧さが現れる恐れを否定できなかった。これに対して、本変形例の構成とすると、まず、下側第三電極23Lを用いてCV測定を行う事で、半導体層10の下側の界面に関するフラットバンド電圧を特定し、次に、下側第三電極23Lの電位を、こうして得られたフラットバンド電圧に固定した状態で、上側第三電極23Uに対してCV測定を実施する事で、先の境界条件を厳密に満たす事が可能となる。従って、実施形態1乃至4に比べても、更に正確に欠陥準位密度Dtを抽出する事ができる。
【符号の説明】
【0132】
10…半導体層、11…第一領域、12…第二領域、13…第三領域、21…第一電極、22…第二電極、23…第三電極、23L…下側第三電極、23U…上側第三電極、24…コンタクトホール、34…表示領域、35…画素、46…TFT素子、52…素子基板、53…対向基板、61…第一端子、62…第二端子、63…第三端子、71…電流計、72…電圧発生器、100…液晶装置、1000…半導体装置、2000…半導体装置、3000…半導体装置、4000…半導体装置、5000…半導体装置、6000…半導体装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13