(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記オフセット二次凹曲面鏡がオフセットパラボラ凹面鏡の場合、前記オフセットパラボラ凹面鏡の一方の幾何学的な焦点位置が前記オフセットパラボラ凹面鏡の光学的な実焦点位置に対応し、
前記オフセットパラボラ凹面鏡の光軸と平行に前記オフセットパラボラ鏡に入射する前記対象物の物体面上の各物点からの光線群が、前記オフセットパラボラ凹面鏡の実焦点位置に無収差で集光し、
これにより、前記オフセットパラボラ凹面鏡の光軸と平行に前記オフセットパラボラ凹面鏡に入射する各光線は、前記対象物の物体面上の各物点に対応する主光線となり、且つ前記主光線を含む少なくとも1つの断面内において、前記対象物の物体面と直交関係を呈する、請求項2に記載の装置。
前記オフセット二次凹曲面鏡がオフセット双曲凹面鏡の場合、前記オフセット双曲凹面鏡の一方の幾何学的な焦点位置が光学的には前記オフセット双曲凹面鏡の像界側の軸上像点に対応し、前記オフセット二次凹曲面鏡の他方の幾何学的な焦点位置が、光学的に前記オフセット双曲凹面鏡に向かう光線群の入射瞳位置に対応し、
これにより、前記対象物の物体面上の各物点を出射して前記オフセット双曲凹面鏡の他方の幾何学的な焦点位置に向かう前記光線群は前記対象物の物体面上の各物点に対応した主光線群を構成し、且つ前記対象物から前記オフセット二次凹曲面鏡に向かう前記主光線群が収束性を呈する、請求項2に記載の装置。
前記オフセット二次凹曲面鏡がオフセット楕円凹面鏡の場合、前記オフセット楕円凹面鏡の一方の幾何学的な焦点位置が光学的には前記オフセット楕円凹面鏡の像界側の軸上焦点に対応し、前記オフセット二次凹曲面鏡の他方の幾何学的な焦点位置が、光学的に前記オフセット楕円凹面鏡に向かう光線群の入射瞳位置に対応し、
これにより、前記対象物の物体面上の各物点を出射して前記オフセット楕円凹面鏡の他方の幾何学的な焦点位置に向かう前記光線群は対象物の物体面上の各物点に対応した主光線群を構成し、且つ前記対象物から前記オフセット二次凹曲面鏡に向かう前記主光線群が発散性を呈する、請求項2に記載の装置。
前記オフセット凹曲面鏡で反射した前記光線群が前記集光光学系の入射瞳に到達するまでの光路中に少なくとも1つの光路折り曲げ鏡を配置した、請求項1〜5の何れか1項に記載の装置。
前記オフセット凹曲面鏡で反射した前記光線群が前記集光光学系の入射瞳に到達するまでの光路中に配置した前記少なくとも1つの光路折り曲げ鏡が、前記オフセット凹曲面鏡で反射した光路の2回以上の折り曲げ面として作用する、請求項6に記載の装置。
前記オフセット凹曲面鏡の反射面形状が理論的な理想曲面でないこと、又は当該反射面が理想的に配置されないことに起因して生じる前記主光線の射出方向のずれを、前記光路折り返し鏡の傾角を調整することで補償する、請求項6又は7に記載の装置。
直線上に配置された前記対象物の各々を前記光学ユニットが検出する場合に生じる検出画像の歪曲は、前記オフセット凹曲面鏡からの射出主光線に対しその歪を相殺させる方向に前記集光光学系の光軸を傾斜させて矯正する、請求項1〜8の何れか1項に記載の装置。
前記対象物の物体面上の各物点から出射する光束に含まれる少なくとも1つの光線が前記主光線に代わって前記オフセット凹曲面鏡により反射された後、前記集光光学系の入射瞳を通過して前記各結像点に到達する、請求項1〜10の何れか1項に記載の装置。
請求項1〜11の何れか1項に記載の装置を用いて取得される検出画像を所定の基準と比較することで前記対象物の良否を判定し、当該良否の判定結果に基づき前記対象物を分別する手段を更に備えた選別装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に図面を参照しながら、本発明に係る装置を選別機に適用したときの実施形態について説明する。選別機により選別される対象物は米粒とし、この米粒の光学的情報を取得する。収穫される米には、不良米や石などの異物が一定程度含まれているためこれらを除去する必要があり、本実施形態の選別機は、取得した光学的情報に基づき、基準を満たす米とそれ以外のものとに分別する。
なお、本発明は、選別機の備える構成の中で特に光学ユニット100に関する技術であるため、選別機における光学ユニット以外の構成及び機能についての詳細は省略する。
【0015】
本発明に係る装置の光学ユニットが備える凹曲面鏡は、必ずしも凹曲面鏡全体が単一の二次凹曲面形状として定義されていることを要しておらず、凹曲面を形成する円錐曲線や曲率半径が面上の位置や方位に応じて変化する任意凹曲面鏡を用いることを含む。ただし、後述するように、第一の実施形態〜第三の実施形態で用いる光学ユニットは、任意凹曲面鏡が二次凹曲面鏡であり、中でもパラボラ凹面鏡のタイプ、楕円凹面鏡のタイプ、双曲凹面鏡のタイプを使用する場合についてそれぞれ説明する。
【0016】
はじめに、二次凹曲面鏡と円錐曲線との関係について述べる。円錐曲線は、円錐を任意の平面で切断したときの断面の輪郭形状として得られる曲線群の総称である。この円錐曲線は、円・楕円・放物線・双曲線に分類され、
図9に示すとおり、円錐の軸に対して垂直な平面(傾斜角90°)で切断した断面の輪郭形状が(a)円、円錐の半頂角よりも大きな傾斜角の平面で切断した断面の輪郭形状が(b)楕円、円錐の半頂角と平行な傾斜角の平面(すなわち、母線に平行な平面)で切断した断面の輪郭形状が(c)放物線、円錐の半頂角よりも小さな傾斜角の平面で切断した断面の輪郭形状が(d)双曲線、となる。
【0017】
円・楕円・放物線・双曲線は何れも二次曲線であり、これらのいずれもユークリッド幾何学上の焦点f
1,f
2と呼ばれる特異点が2つ存在する。具体的には、「楕円」の二つの独立した焦点はいずれも曲線に囲まれた閉空間の内側に存在し(
図10(a))、「円」は特殊な楕円で、二つの焦点f
1,f
2が同一点を共有しており、見かけ上、一つの焦点(すなわち、円の中心)のみが存在しているように見える。「放物線」は、二つの焦点のうちの一方が、無限遠方に存在する楕円である。「双曲線」は、二つの焦点のうちの一方f
1が、曲線に囲まれた閉空間の外側に存在する楕円である(
図10(b))。これら二次曲線の2つの焦点を結ぶ軸周りにその輪郭形状を回転させたとき球面・楕円面・放物面・双曲面を形成し、各面の内側からみると二次凹曲面に属する球凹面、楕円凹面、放物凹面、双曲凹面となる。
【0018】
例えば、
図10(a)の楕円曲線をみると、一方の焦点f
1から楕円曲線上の1点(P)を経由して、もう一方の焦点f
2に向かう直線の長さの合計は、楕円曲線上のどの点Pを選んだとしても一定値となる(f
1P+f
2P)。
このような幾何学的な内容を光学的事象と対応づけてみると、一方の焦点f
1を射出した光線がその二次凹曲面の任意の点Pで反射すると、必ず他方の焦点f
2に無収差で到達すると解することができる。これは、出射側の焦点を到達側の焦点と入れ替えても同様に成立する。二次凹曲面の2つの焦点f
1,f
2は可換であり、共役関係にあるのである。
【0019】
ただし、上述した二次凹曲面の焦点f
1,f
2は、幾何学上の焦点であって、光学上の焦点と一致するとは限らないという点に留意されたい。幾何学的焦点のうちの一方f
1を、光学的定義に基づく光線の起点である「物点」に対応づけたとき、もう一方の幾何的焦点f
2は光学的定義上では「像点」に対応づけられるにすぎない。つまり、光学的定義に基づく「焦点」を意味していないのである。光学的定義の「焦点」とは、二次凹曲面の幾何的対称軸に平行な近軸光束を入射させた際に、二次凹曲面で反射した後の光束が集光する点のことである。ここで、物点からの光束が二次凹曲面の幾何的対称軸に平行であるとは、その物点が無限遠方に置かれている場合に相当することに他ならないことから、このような物点を焦点f
1として有するのは、二次凹曲面のうち放物凹面のみであることは明らかである。そして、この場合、像点は、幾何的焦点f
2に一致する。
【0020】
一方で、二次凹曲面が球面である場合は上述したように2つの焦点が一致し、球の中心に存在する一方の焦点f
1に物点が配置されたとき、やはり球の中心に存在する他方の幾何的焦点f
2が像点に対応づけられる。したがって、必然として、物点が無限遠方に配置され、すなわち物点から球面に入射する光線群が平行束である場合には、もはや幾何的焦点f
2に球面からの反射光が集光することはなく、反射光はむしろ、幾何的焦点f
2よりも球面寄りの位置に向かうことになる。つまり、光学的な定義に基づく焦点位置が、幾何的焦点f
2に一致しなくなるのである。
【0021】
よく知られたパラボラアンテナの面形状は、放物線をその幾何的対称軸を中心として回転させた曲面として定義される放物面に一致することから、放物凹面の形状をした放物凹面鏡はパラボラ凹面鏡とも称される。光学的焦点と幾何的焦点が一致する、この特殊ともいうべき放物面を有するパラボラ凹面鏡(狭義には、パラボラ凹面鏡をオフセットさせた「オフセットパラボラ凹面鏡」)を用いた光学ユニットを、第一の実施形態として説明する。
【0022】
(第一の実施形態)
第一の実施形態における選別機の光学ユニット100について説明をするために、まず、物体側テレセントリック光学系の概念について説明をする。
(1)物体側テレセントリック光学系
図3に示すように、レンズ1の光軸に平行に入射する光線は、当然にレンズ1の射出側の焦点位置P
fで光軸と交わる。この性質ゆえに、焦点位置P
fに絞りを置けば、絞りの中心を通る光線(主光線)はレンズ1への入射前にはレンズ1の光軸と平行に進行することとなる。いわゆる物体側テレセントリック光学系が構成されることになるのである。
【0023】
図3においては凸レンズ1を用いてテレセントリック光学系の原理を示したが、これを反射ミラーで説明したのが
図4である。2’はパラボラ凹面鏡であり、6は対象物面上の物体面である。対象物Xの各物点から放射される各光線のうち、パラボラ凹面鏡2’の光軸(幾何的対称軸)と平行な平行光線群は、パラボラ凹面鏡2’で反射されると、パラボラ凹面鏡の光学特性より、いずれもパラボラ凹面鏡の焦点P
fで互いに交わるように進行する。この性質ゆえに、焦点位置P
fに絞りを置けば、絞りの中心を通る光線(主光線)はパラボラ凹面鏡への入射前にはパラボラ凹面鏡の光軸と平行に進行することとなる。すなわち、物体側テレセントリック光学系が構成されるのである。
上述した焦点位置P
f上の絞りを、物体面上の各物点からの発散光束を反射する二次凹曲面鏡の射出瞳とし、その瞳形状が例えば円形であるなら、各物点からの発散光は、それぞれの各主光線を軸とする円錐状(発散角θ)の発散光束群となってパラボラ凹面鏡2’に到達するのであって、そのとき、パラボラ凹面鏡に関する入射瞳は無限遠方に形成されることとなる。この原理は、物体面上の各物点からの発散光束を反射する二次凹曲面鏡の入射瞳および射出瞳と、幾何的焦点位置との関係として既に説明した光学的原理にそのまま対応付けられるものである。
また、
図4に示す断面内においてパラボラ凹面鏡2’の光軸に直交する物体面6がパラボラ凹面鏡2’の光学的な焦点を含む(物体距離Lと焦点距離fが一致する)時、パラボラ凹面鏡2’の光軸と平行な平行光線群を軸とする円錐状(発散角θ)の発散光束群は、パラボラ凹面鏡2’で反射した後、集光光学系3に到達するまで、その反射した主光線に沿った平行光束として進行する。
【0024】
本実施形態の光学ユニット100は、対象物からの光をパラボラ凹面鏡で反射させた後、集光光学系により光検出器へと導くように構成されている。対象物の物体面上の各物点を出射し、パラボラ凹面鏡を反射した後に集光光学系の入射瞳の中心を通過する各主光線は、いずれも対象物面上からパラボラ凹面鏡の幾何的対称軸と平行に射出しており、パラボラ凹面鏡に向かう光線群の入射瞳は無限遠方に配置されている。
【0025】
具体的には
図11(b)のとおり、物体面上の各物点X
bからの発散光束は、パラボラ凹面鏡2bで反射し、パラボラ凹面鏡2bの幾何学的焦点f
2の位置に入射瞳をもつ集光光学系3bに向かって進み、集光光学系3bに到達した光束はその後、集光光学系3bの像点I
bに集光するのである。その際、とりわけ物体距離がパラボラ凹面鏡2bの放物面の光学的な定義に基づく焦点距離に一致していれば、パラボラ凹面鏡2bによって反射し集光光学系3bに向かう光束は平行光束となる。
【0026】
以上のとおり、パラボラ凹面鏡の幾何的対称軸と平行に当該パラボラ凹面鏡に入射する各光線は、いずれもパラボラ凹面鏡の幾何的かつ光学的な焦点を通過するので、この焦点位置に入射瞳を持つ集光レンズ3を配置して、パラボラ凹面鏡2’を反射した後に前記入射瞳の中心を通過する光線を主光線とすれば、それはパラボラ凹面鏡の幾何的対称軸に垂直な物体面の各点を起点とし当該物体面の法線方向に射出する光線を主光線とすることと同意となる。パラボラ凹面鏡2’を反射した後、集光光学系3を通過する光束は、対象物Xの物体面6上の各物点から前記主光線のまわりに円錐状の発散性(発散角θ)を呈しながらその各物点を出射することを勘案するなら、パラボラ凹面鏡を用いた光学ユニット100が、対象物の物体面6を直下視する性質(つまり、物体面に直交又はほぼ直交する方向から撮像すること)を有するのは容易に理解されよう。開口の大きな屈折型レンズは高額であり、仮にそのようなレンズを使用する光学ユニット100を選別機に組み込むとすれば、選別機の製造コストを大幅に上昇させてしまうことにつながる。しかしながら、本実施の形態においては高価なレンズに代わり比較的安価で広い視野を確保できるパラボラ凹面鏡(実際には、後述するオフセットパラボラ凹面鏡)を使用することにより、選別機の製造コストを格段に削減しながら、対象物の光学的情報を取得することができるのである。
【0027】
なお、本実施形態の光学ユニット100が物体側テレセントリック光学系の光学原理を基礎としている以上、パラボラ凹面鏡2’の幾何的対称軸に平行な主光線群がこのパラボラ凹面鏡に入射することが前提である。ただし、パラボラ凹面鏡に入射する主光線がパラボラ凹面鏡の光軸と完全に平行でなければ、ただちに対象物Xの物体面を直下視できなくなるということにはならない点には留意が必要である。パラボラ凹面鏡2’によって反射した後に集光レンズ3の入射瞳を通過する対象物からの発散光束中に含まれる任意の1本の光線が、パラボラ凹面鏡の幾何的対称軸に直交する対象物Xの物体面上の物点における法線に沿ってパラボラ凹面鏡に向かって進行するのであれば、その光線が主光線でなくとも事実上、パラボラ凹面鏡を用いた光学ユニット100は、対象物Xの物体面6を直下視する性質を引き続き有すると解することができる。このような主光線の置き換えの必要性は、集光レンズ3によって定まる入射瞳の配置位置が、パラボラ凹面鏡2’の幾何的な焦点位置と厳密に一致するようには配置されない場合や、パラボラ凹面鏡2’が数学上又は幾何学上のパラボラ面として厳密に形成されていない場合などにとりわけ生じることになろう。本実施の形態におけるパラボラ凹面鏡(実際には、後述するオフセットパラボラ凹面鏡)を用いた光学ユニット100は、このような必要性に配慮し、主光線の置き換えが生じるケースを含んでいるのであって、パラボラ凹面鏡に入射する“主光線”がパラボラ凹面鏡の光軸と完全に平行であるという要件を厳密に要求しているものではない。
【0028】
(2)オフセットパラボラ凹面鏡
図1は、本実施形態の選別機で使用する光学ユニット100の断面概略図であり、オフセットパラボラ凹面鏡2を組み込んだ光学ユニットの一例を示している。
図13及び
図14に示すように、大量の米粒を光学ユニット100で検出するには、シュート52と呼ばれる一定の幅を有するガイド板に米粒を投入させ選別機の上方から一気に落下させる。
【0029】
図2は、光学ユニット100及び照明手段30を筐体に収納したときの断面概略図である。光学ユニット100では、自家発光する対象物は勿論のこと、自家発光しない対象物の場合は選別機内の照明手段30による照明光で照射することによって対象物それ自体が光源とみなせるようにし、シュートに流し込まれた米粒が物体面6で上方から落下すると、対象物Xの物体面上の各物点から出射する光線群をオフセットパラボラ凹面鏡2で反射させる。
【0030】
なお、1台の光学ユニット100が、オフセットパラボラ凹面鏡2に向けて入射する米粒の片側半分からの光を検出し、米粒の反対側の半分からの発散光は同一構造である対の光学ユニットを用いて同じ検出原理によって検出される。
【0031】
上述したように、本実施形態の光学ユニット100は、
図5(b)に示すような、パラボラ凹面鏡の放物面の光軸からオフセットした部分放物面を有するオフセットパラボラ凹面鏡2を使用する。
図7は、
図6に示すパラボラ凹面鏡2に入射光が入って反射する様子を上からみたときの図である。光の繰り返し反射については後述するが、
図7に示すように、オフセットパラボラ凹面鏡2の長さ方向(
図7の上下方向)は、シュートの幅にあわせて、例えば数十cm幅の放物面である。このように、第一の実施形態の光学ユニット100に配置されるオフセットパラボラ凹面鏡2は、放物面全体のうち、上下方向の幅を狭く切り出して形成されており、シュート上を滑走後に落下する複数の米粒からの各発散光をまとめて反射する。
【0032】
上述した通り、この光学ユニット100の特徴は、パラボラ凹面鏡2’の放物面の光軸からオフセットした部分放物面であるオフセットパラボラ凹面鏡2を使用することである。パラボラ凹面鏡中央部の幾何的対称軸(光軸)を含まない放物面で入射光を反射させている。仮に、パラボラ凹面鏡の放物面が光軸をはさんで対称となる通常のパラボラ凹面鏡2’を用いて、パラボラ凹面鏡の光軸を含む面内に物体からの主光線群を配置したとすると、特許文献2と同様に、パラボラ凹面鏡2’の焦点位置に配置する集光光学系3が、米粒の各物点からパラボラ凹面鏡2’に向かって入射しようとする光の進行を遮ってしまうこととなる(
図5(a)参照)。これに対し、オフセットパラボラ凹面鏡2を使用した場合はこの不都合さを回避できる。つまり、
図5(b)に示すように、米粒からの発散光がオフセットパラボラ凹面鏡2で反射した場合、主光線群の反射光が集光するオフセットパラボラ凹面鏡の焦点位置は、対象物Xからオフセットパラボラ凹面鏡2に向かう光路に干渉しない位置に存在する。したがって、オフセットパラボラ凹面鏡2の焦点位置に入射瞳をもつ集光光学系3は、オフセットパラボラ凹面鏡2に入射しようとする光の光路途中に存在しないので、米粒からの光を確実に検出することができるのである。これは、上述した特許文献2の
図15及び
図16に示されるような、第2の反射体部分11,11Aの後方から第1の反射体10,10Aに向かって進行する物体からの入射光を、第2の反射体11,11A及び受光手段5が遮ってしまう配置とは異なっている。
【0033】
なお、
図5(b)に示すようなオフセットパラボラ凹面鏡2を用いずに、
図5(a)に示す通常のパラボラ凹面鏡2’を傾けることでオフセットパラボラ凹面鏡2と同様の機能を生じさせようとしても、米粒からの主光線群は、傾けた後のパラボラ凹面鏡2’’からみると光軸に平行ではない入射角θで光が入射することに相当する(
図5(c)参照)。そのために発生する収差が主光線群の同一点における収束性を低下させるので、反射光の集光位置に集光光学系3を配置したとしても、光検出器の二次像面に収差が伝搬してにじみ等の像劣化が生じ、米粒からの高精細な光情報を検出できなくなる。本実施形態の光学ユニット100はこれを回避するために、通常のパラボラ凹面鏡2’ではない、オフセットパラボラ凹面鏡2に向かって、その光軸に平行な主光線群を入射させた後、その焦点位置に配置した集光光学系3によって光検出を行う構成である。
【0034】
(3)光路の折り曲げ
上述したように、本願発明の目的の一つは装置の小型化を実現することであって、そのために内蔵する光学ユニット100についてもできるだけ小さくする必要がある。そこで、
図1に示すように、途中で光路を折り曲げて光学ユニットのサイズを小さくする工夫をしている。
【0035】
光学ユニット100による光路の折り曲げを示したのが
図6及び
図7である。米粒上のそれぞれの点を物点とする発散光束がオフセットパラボラ凹面鏡2で反射した後、各光束に属する主光線が互いに交わるオフセットパラボラ凹面鏡2の焦点位置までの途中で、反射ミラー4が、オフセットパラボラ凹面鏡側へ光路を戻し、反射ミラー5に向かうようにする。反射ミラー5は、戻された光線群を再び反射ミラー4へ向けて反射させる。特に、このときの光線群を受けるのはオフセットパラボラ凹面鏡2で反射された光を受けたときの同じ反射ミラー4であり、反射ミラー4が2回目の反射をおこなうことになる。その後、光線群は、集光光学系3’に入射し、背後の結像面10’上で像を形成して米粒を検出する。なお、本実施の形態の光学ユニット100は、反射ミラー4により2回目の反射を行った後、背後の結像面10’に置かれた近赤外線用イメージセンサ7’、及び結像面10に置かれた可視用イメージセンサ7の両方に光が導かれるようにするため、光路分岐素子としてダイクロイックミラー9を用いている。オフセットパラボラ凹面鏡2で反射した後の集光光学系3までの光路長が、複数回の折り返した光路を総計した全光路長に相当する。ダイクロイックミラー9などの光路分岐素子は、光線群の波長に応じて光路を分岐する他に、落下する複数の米粒に対する広い視野を複数のイメージセンサが各々の担当領域を処理できるようにするために使用することもあり得る。さらに、広い視野を一様な分解能で処理するのではなく、例えば、視野中央が高分解能の検出領域であるといった観察される対象領域の空間分解能にバリエーションをもたせるために光路分岐素子によって特定の光線群の光路を制御するようにしてもよい。
【0036】
上述したように、本実施形態の場合、ダイクロイックミラー9による反射を除くと、合計4回の反射(オフセットパラボラ凹面鏡2による反射を含む)を行う。この際、光路の綿密な設計に基づき、1つの反射ミラー4が2回の反射を形成するようにミラー面の寸法及び傾角を調整している。複数回光路を折り曲げることが、オフセットパラボラ凹面鏡2で反射した後の集光光学系3までの光路長に相当させながら、できるだけオフセットパラボラ凹面鏡2から離れない位置に集光光学系3を配置することを可能にした。したがって、本発明に係る装置を適用した選別機の光学ユニット100を従来のものと較べて格段に小型化することができるとともに、使用する反射ミラー数を少なくすることに成功し、光線の全長をコンパクトに抑制しながら選別機の製造コストの削減を図るという効果も奏している。
【0037】
なお、必ず光路を折り曲げなくてはならないというものではないし、本実施形態のように必ずしも合計4回の反射でなければならないというわけではない。さらに、反射ミラー4による反射は1回のみ、又は3回以上の場合も含む。選別機又は光学ユニットの大きさや、集光光学系3を配置する位置等に対応して、光路の折り曲げの可否及びその折り曲げ回数を適宜決定すればよい。
【0038】
また、光学ユニット100を実際に選別機等の装置内に実装するときは、厳密にオフセットパラボラ凹面鏡2の焦点位置fに物体面6があること(物体距離Lと焦点距離fが一致)を必ずしも要求していない。選別機の小型化、すなわち光学ユニット100のコンパクト化を実現する目的で、焦点位置fよりもオフセットパラボラ凹面鏡寄りに物体面6があることを許容する。物体面6がオフセットパラボラ凹面鏡2に近づく程、オフセットパラボラ凹面鏡2を反射した光線群は平行とならずに発散角が大きくなってしまうが、これは集光光学系3に用いるレンズの入射瞳を大きくすることで対応する。さらに、オフセットパラボラ凹面鏡2を反射した光線群が平行でないことによる像のにじみや歪み等は、集光光学系3で収差補正を行うことで対処する。同様に、光学ユニット100に含まれる様々な構成部品との位置関係から、物体距離Lがオフセットパラボラ凹面鏡2の焦点距離fよりも大きな距離となってしまうこともあり得る。この場合も、オフセットパラボラ凹面鏡2を反射した光線群が平行とならないことによる収差は集光光学系3で補正すればよい。
【0039】
(4)集光像の歪曲修正
オフセットパラボラ凹面鏡2を用いて反射された光を複数回屈折させ、集光光学系3により結像面で形成される光学像はにじみがなく鮮明である。しかし、通常のパラボラ凹面鏡2’ではなく、オフセットパラボラ凹面鏡2を用いているがゆえにオフセットの影響で像が歪んで検出されてしまうことは避けられない。可視用イメージセンサ7が一次元のラインセンサのときは受光素子センサの直線状の受光素子配列に対応する光学画像は、
図8のように歪曲し、直線状物体の全体を瞬時画像としてとらえることができない。
【0040】
したがって、この歪曲した歪みを補正する必要がある。そこで、本実施形態の光学ユニット100は、集光光学系3の光軸を敢えて傾けることで検出像の歪を解消させることとした。すなわち、集光光学系3に入射するオフセットパラボラ凹面鏡からの入射光が、集光光学系3の光軸に対して斜入射となるように集光光学系3の光軸を傾けることにより、オフセットパラボラ凹面鏡が発生させたのとは逆方向に同量の歪曲を集光光学系3に発生させた。この結果、検出像の歪みが打ち消されることとなり、近赤外線用イメージセンサ7’及び可視用イメージセンサ7が直線状の受光素子配列になっていても直線状物体の全体を瞬時視野として検出することが可能になる。
【0041】
また、上述した歪曲の程度は、製造誤差等に対応してばらつき得る。このばらつきは、集光光学系3の光軸そのものを傾斜させることで解消する方法の他、反射ミラー4、5の傾角調整により集光光学系3に対する主光線傾角を変化させることで補償してもよい。
【0042】
使用するオフセットパラボラ凹面鏡2の反射面の曲率半径や円錐係数の許容誤差量を高度に制約することで理想的な放物面に十分に一致しているとみなせるほどの面形状を実現し、かつ、必要なサイズにオフセットして切り出す際にも正確を期し、さらに光学ユニット100内への組み付け誤差も極小とすれば、米粒表面の各物点に対応した主光線は、十分な精度でテレセントリックな光線を構成することとなる。
しかし現実には凹曲面を理想的なパラボラ鏡に作りこみ、切り出し誤差や組み付け誤差を零に突き詰めることは非常に高い製造コストを生じせしめることとなるばかりか、そもそも製造技術的にも困難を伴う。そのため、現実的な精度で製造された凹面鏡をそのまま組み付けただけの不完全な光学系においては、物点から凹面鏡に向かう主光線群がテレセントリックな光線群になるとは限らない。
このような場合には、オフセットパラボラ面と、集光レンズの入射瞳面の理想的な幾何関係の崩れが補償されるように複数の反射ミラー4、5の配置角度を調整することで光学系の製造上の不完全性を補償し、主光線がテレセントリックな光線であると十分にみなせるよう維持することが望ましい。
【0043】
上述してきた光学ユニット100によって各米粒の光学的情報を取得すると、選別機は、所定の基準情報と比較し、基準外や異物が含まれていないかを判断する。そして、イジェクターノズルから噴出されるエアーの力を利用した分別手段(図示せず)により、基準外や異物と判定された米粒を吹き飛ばして、基準内の米粒が落下して収納される貯留タンクとは別の貯留タンクへと搬送する。
【0044】
(第二の実施形態)
次に、第一の実施形態で使用したオフセットパラボラ凹面鏡に代わり、オフセット楕円凹面鏡を使用した光学ユニットについて説明する。
なお、第一の実施形態で説明した、オフセットパラボラ凹面鏡を使用しているという「オフセット」の技術意義、少なくとも1つの反射ミラーを用いた光路の折り曲げによる作用効果、集光像の歪曲修正の方法などは、第二の実施形態についても同じく適用されるため、繰り返しの説明は省略することとする(後述する第三の実施形態及び第四の実施形態についても同様である)。
【0045】
図11(a)に示すとおり、第二の実施形態の場合、通常の楕円凹面鏡をオフセットさせたオフセット楕円凹面鏡2aを用いるので、物体面の各物点Xaから出射する主光線群はオフセット楕円凹面鏡の幾何的対称軸(すなわち、光軸O)に対して発散性を持つことが、第一の実施形態のオフセットパラボラ凹面鏡における主光線群の光軸に対する平行性と異なる。
【0046】
物体面の各物点Xaからオフセット楕円凹面鏡2aに向かう主光線群が、オフセット楕円凹面鏡2aの光軸Oに対して発散性を呈するのは、以下の理由による。
このオフセット楕円凹面鏡2aに対向してオフセット楕円凹面鏡2aの一方の幾何学的焦点f
2に入射瞳を有する集光光学系3aを配置する本光学ユニットは、オフセット楕円凹面鏡2aを反射した主光線群にとっての射出瞳を幾何学的焦点f
2の位置に配置した光学系として機能する。したがって、オフセット楕円凹面鏡2aの他方の幾何学的焦点f
1は必然的にオフセット楕円凹面鏡2aで反射する主光線群にとっての入射瞳となる。一方で、オフセット楕円凹面鏡2aのこれら二つの幾何学的焦点f
1,f
2は、楕円体によって形成される閉空間の内側に内包されているのであるから、対象物の物体面6上の各物点Xaからオフセット楕円凹面鏡2a上の任意の反射点P
i(i=1,2,…,n)に向かう各主光線の光路は、必ずオフセット楕円凹面鏡2aの光軸O上の一方の幾何学的焦点f
1から反射点P
i(i=1,2,…,n)に向かう発散性の光路上に取られるのである。
【0047】
このようにして、オフセット楕円凹面鏡2aの一方の幾何学的な焦点f
2の位置に、オフセット楕円凹面鏡2aを反射した光束に対する射出瞳を配置することにより、対象物の物体面上の各物点Xaからオフセット楕円凹面鏡2aに向かう各出射光束は、オフセット楕円凹面鏡2aの他方の幾何学的焦点f
1を入射瞳として伝搬する光路上の一部をとりながら進行することとなる。すなわち、対象物の物体面上の各物点Xaからの各出射光束に属する各主光線は、オフセット楕円凹面鏡2aによる反射前には幾何学的焦点f
1からオフセット楕円凹面鏡2aに向かって射出した光路上を互いに発散性を呈しながら伝搬し、オフセット楕円凹面鏡2aによる反射後は、オフセット楕円凹面鏡の他の幾何学的焦点f
2に向かって無収差で集光することになるのである。
【0048】
したがって、観察する対象物が例えば球形の場合、オフセット楕円凹面鏡2aは球の縁に沿った最上部(北極部分)を見下ろす光路と同時に球の最下部(南極部分)を見上げる光路を扱うことができるようになり、物体面の光学情報を漏れなく確実に取得しやすくするというメリットがある。
【0049】
なお、発散性を呈しながら物体面6上の各物点Xaを射出した各主光線に沿って、Xaから射出する各発散光束は、オフセット楕円凹面鏡2aで反射し、オフセット楕円凹面鏡2aの幾何学的焦点f
2の位置に入射瞳をもつ集光光学系3aに向かって集合し、その後、それぞれ集光光学系3aの各像点I
aに集光するのであるが、その際、とりわけ物体距離がオフセット楕円凹面鏡2aの焦点距離に一致している場合には、オフセット楕円凹面鏡2aによって反射した後に集光光学系3aに向かう光束が平行束となることはいうまでもない。
【0050】
(第三の実施形態)
次に、オフセット双曲凹面鏡を使用した光学ユニットについて説明する。
図11(c)に示すとおり、オフセット双曲凹面鏡2cを用いた時の特徴は、オフセット双曲凹面鏡2cに入射する物体面の各物点Xcからの主光線群がオフセット双曲凹面鏡2cの幾何的対称軸(すなわち、光軸O)に対して収束性を持つことである。
【0051】
対象物の物体面上の各物点Xcからオフセット双曲凹面鏡2cに向かう主光線群が光軸Oに対して収束性を呈するのは、以下の理由による。
このオフセット双曲凹面鏡2cに対向してオフセット双曲凹面鏡2cの一方の幾何学的焦点f
2に入射瞳を有する集光光学系3cを配置する本光学ユニットは、オフセット双曲凹面鏡2cを反射した主光線群にとっての射出瞳を幾何学的焦点f
2の位置に配置した光学系であることを意味している。したがって、オフセット双曲凹面鏡2cの他方の幾何学的焦点f
1は、必然的に対象物の物体面上の各物点を出射してオフセット双曲凹面鏡2cで反射する主光線群にとっての入射瞳となる。一方で、幾何学的焦点f
1の位置に形成されるこの入射瞳は、オフセット双曲凹面鏡2cの凸側空間(すなわち、双曲面体によって形成される閉空間の外側)に存在するので、オフセット双曲凹面鏡2cの凹側空間に存在する物体面上の各物点Xcから射出する各主光線は、他方の幾何的焦点f
1に向かって収束性をもって進行するしかない。
【0052】
このように、オフセット双曲凹面鏡2cの凹面側空間に位置するオフセット双曲凹面鏡の幾何学的焦点f
2の位置に、このオフセット双曲凹面鏡2cを反射した光束に対する射出瞳を配置することにより、対象物の物体面上の各物点Xcからオフセット双曲凹面鏡2cに向かう各光束は、オフセット双曲凹面鏡2cの凸面側空間に位置するオフセット双曲凹面鏡の他方の幾何学的焦点f
1を入射瞳として伝搬する光路上の一部をとりながら進行することとなる。すなわち、対象物の物体面上の各物点Xcからの各出射光束に属する各主光線は、オフセット双曲凹面鏡2cによる反射前には他方の幾何学的焦点f
1に向かって互いに収束性を呈しながら伝搬し、オフセット双曲凹面鏡2cによる反射後は一方の幾何学的焦点f
2に向かって無収差で集光することになるのである。
【0053】
したがって、観察する対象物が例えば球形の場合、球の最上部(北極部分)及び最下部(南極部分)からの主光線が対象物自体に遮られてしまってオフセット双曲凹面鏡2cへ到達しなくなり、対象物である球面上の半球面を観察する一つの本光学ユニット(残りの半球面については、一対のうちの別の本光学ユニットが観察する)が半球面全域に渡る光学情報を取得できなるということを意味する。しかし、この光学的性質は対象物の物体面上の各物点Xcを出射し、集光光学系3cの入射瞳を通過する各光束を反射させるのに必要となる凹曲面鏡のサイズを小さく抑制することに関しては有利に機能するため、装置全体のコンパクト化を実現する上ではオフセット双曲凹面鏡2cの使用はメリットとなる。
【0054】
なお、収束性をもって物体面6上の各物点Xcを射出した各主光線に沿って、Xcを射出する各発散光束は、オフセット双曲凹面鏡2cで反射し、オフセット双曲凹面鏡の幾何的焦点f
2の位置に入射瞳をもつ集光光学系3cに向かって集合し、その後、それぞれ集光光学系3cの各像点I
cに集光するのであるが、その際、とりわけ物体距離がオフセット双曲凹面鏡2cの焦点距離に一致している場合には、オフセット双曲凹面鏡2cによって反射した後に集光光学系3cに向かう光束が平行束となることはいうまでもない。
【0055】
(第四の実施形態)
さらに、第四の実施形態として、第一の実施形態〜第三の実施形態それぞれに示した二次凹曲面鏡を任意に組み合わせることで、局所的な曲率半径と円錐係数(あるいは離心率)が凹曲面鏡の位置や方位によって連続的に変化することを許容した任意凹曲面鏡(一般的な呼称でいえば、自由曲面、回転対称性を持たないアナモフィック非球面鏡、あるいは高次回転非球面鏡)を用いても良い。その一例を
図12に示す。
【0056】
図12に示す任意凹曲面鏡の場合、光軸付近は楕円凹面形状、その外側はパラボラ(放物)凹曲面形状、さらにその外側が双曲凹面形状である。ただし、
図12はあくまで一例であって、凹曲面鏡のどの局所部分がどの曲面形状に対応するかは、任意に組み合わせて良い。
【0057】
ただし、面上の位置や方向によって異なる円錐係数を有する任意凹曲面鏡を用いたとしても、この任意凹曲面鏡に対向して配置される集光レンズ3の入射瞳が、任意凹曲面鏡によって反射する対象物の物体面6上の各物点を射出した各光束にとっての射出瞳に対応づけられることは、第一〜第三の実施形態とまったく同様である。したがって、任意凹曲面鏡によって射出瞳と共役関係を結ぶ対象物の物体面からの光束にとっての入射瞳は、各光束の主光線が任意凹曲面鏡のどの箇所で反射するかによって異なる位置に形成されることになる。このことを利用して、対象物の物体面の各物点から任意凹曲面鏡に向かう主光線の、任意凹曲面鏡の幾何的対称軸(光軸)に対する傾角制御の自由度を向上させることができる。この傾角制御の自由度を使って、例えば、任意凹面鏡の光軸の一断面内では、各主光線が互いに収束性を呈するように整えつつも、当該一断面に直交する断面においては各主光線が互いに発散性を呈するように、光学ユニット内の光学部品の種類及び配置を決定して良い。
【0058】
主光線と対象物の法線とがなす角は、凹曲面鏡の面形状によってのみ制御され得るのではなく、凹曲面鏡に対する対象物の配置状態によって制御することもできる。その一例が、オフセットパラボラ鏡2を用いた第一の実施形態の光学ユニットで実現されている。あらためて第一の実施形態の光学ユニット100の構成を示す
図7を参照すると、
図7はオフセットパラボラ鏡に向かって直線上に配置された複数の対象物(例えば、米粒)からの光束群が入射する様子をあらわした一断面図である。この断面図内では、各光束に属する各主光線は光軸と平行に伝搬してオフセットパラボラ鏡2に入射している。つまり、
図7の断面において、物体面6はオフセットパラボラ鏡の光軸と直交するように配置されているので、各主光線と物体面の関係は当然に直交関係が成立していることになる。
【0059】
これに対し、
図6も光学ユニット100の一断面図であり、
図7の直交断面という関係である。
図7における物体面6とオフセットパラボラ鏡光軸との直交性と異なり、
図6おいてはオフセットパラボラ鏡の光軸と物体面6とは直交しておらず、その結果、対象物の物体面6は各主光線に直交しなくなっている。このような物体面の三次元的な法線の方向と主光線の方向を一致させない操作は、一例として次のような場合に行われる。すなわち、
図14に示す従来の選別機の光学ユニットと同様に、第一の実施形態の選別機は、
図6に示すオフセットパラボラ鏡を含む光学ユニット100の二組を一対として対象物を挟むように対向して配置し、対象物の表裏(左右)を各光学ユニット100が撮像する場合である。仮に、対象物の表側の半分を撮像する光学ユニットにおいて、対象物の物体面上の各物点からの主光線が各物体面6に直交するような配置になっていると、一方の光学ユニット100内にある対象物を照明するための照明手段30(
図2参照)の一部が、対向して配置された対象物の裏側の半分を撮像する他方の光学ユニットの背景板となり、前記背景板が一方の光学ユニット100の視野に重畳してしまうことがある。そこで、敢えて対象物の物体面をオフセットパラボラ鏡2の光軸に直交させずに、物体面6に対して斜方向から撮像する
図6に示すような位置関係にしておけば、一対のうちの一方の光学ユニット内にあり且つ他方の光学ユニットの背景板となる照明手段30の一部が、一方の光学ユニットの視野に重畳することを回避できるのである。なお、このような配置は、第一の実施形態においてのみ意義があるのではなく、第二の実施形態〜第四の実施形態として示した各配置においても同様である。
【0060】
以上説明してきたとおり、本発明に係る装置の光学ユニットが備える凹曲面鏡は、凹曲面を形成する円錐曲線や曲率半径が面上の位置や方位に応じて変化する任意凹曲面鏡を含むが、凹曲面鏡の製造容易性や製造コスト等を考慮して、一般的に用いられることが多い二次凹曲面鏡を使用することがある。この場合、二次凹曲面鏡を反射した後の光束に対する射出瞳を二次凹曲面鏡の一方の幾何学的な焦点に配置することで対象物の物体面を射出して前記射出瞳の中心を通過する主光線に関し、対象物の物体面上の各物点から二次凹曲面鏡に向かう光路は、二次凹曲面鏡の類型に応じて異なる伝搬方向を呈する。具体的には、二次凹曲面鏡がパラボラ凹面鏡の場合、前記光路はパラボラ凹面鏡の対称軸と平行となる。二次凹曲面鏡が双曲凹面鏡の場合、前記光路は双曲凹面鏡の対称軸に対して収束性を呈し、更に、二次凹曲面鏡が楕円凹面鏡である場合、前記光路は楕円凹面鏡の対称軸に対して発散性を呈するのである。これはオフセット二次凹曲面鏡についても同じである。
【0061】
二次凹曲面鏡の類型に応じた物体面上の各物点から二次凹曲面鏡に向かう主光線の光路伝搬特性により、二次凹曲面鏡としてオフセットパラボラ凹面鏡を使用する場合には、オフセットパラボラ鏡の幾何的対称軸と直交する物体面に対して直下視可能な光学ユニットを構成することができる。よって、各物点を起点とする発散光束は主光線を含む各反射光束として、オフセットパラボラ鏡の幾何学的かつ光学的な焦点位置に配置された集光光学系にそれぞれ集合し、死角のない完全な対象物の像形成をするための対象物面上の光学情報が検出されることになる。
【0062】
また、二次凹曲面鏡としてオフセット双曲凹面鏡を使用する場合には、テレセントリシティの低下と引き換えに視野サイズよりも小さな凹面鏡によって光学系を構成できるので、対象物の物体面の縁(北極及び南極)部分における死角の程度と、光学ユニットの小型化の程度とのトレードオフを自在に行えるという優位性が発揮されるのである。
【0063】
さらに、二次凹曲面鏡としてオフセット楕円凹面鏡を使用する場合には、対象物の物体面の縁を、オフセットパラボラ凹面鏡の場合よりも大きな伏角で撮像可能な光学ユニットを構成できるという特長を提供できるので、対象物の光学情報の緻密化に貢献できる。
【0064】
二次凹曲面鏡がパラボラ面であるか、双曲あるいは楕円面であるかは、二次凹曲面鏡の円錐係数(あるいは離心率)によって規定される。一般化された凹曲面鏡においては、円錐係数は、凹曲面鏡に到達する対象物の物体面上の各物点からの主光線を含む断面ごとに異なる値であることが許容され、例えば、ある一断面では凹曲面鏡が楕円凹面鏡の切断面形状に相当しており、別の一断面では双曲凹面鏡の切断面形状に相当していてもよい。このような面形状は、特にアナモフィック面、あるいは自由曲面と呼称されるが、この場合であっても、物体面上の各物点からの発散光束に対する入射瞳および射出瞳の関係および効果は、二次凹曲面鏡の幾何学的焦点位置に入射瞳および射出瞳を配置した際に得られる関係および効果と同様に維持されることに留意されたい。
【0065】
特に、本発明に係る装置が、オフセットした二次凹曲面鏡を用いた光学ユニットを用いて構成していることにより、凹曲面鏡が有する光路の集合の機能と、オフセット断面内に光路を無収差で屈曲(ベンド)させる機能とが同時に具体化し、装置内の光学ユニットの包絡サイズをさらに縮小させることが可能となっている。その際、二次凹曲面鏡による光路の屈曲をオフセット二次凹曲面鏡自体の屈曲ベンド(傾き角調整)ではなく、オフセット(シフト)によって為している点に留意されたい。このことにより、オフセット二次凹曲面鏡で反射した後の反射光路のベンド方向やベンド量を、二次凹面鏡に入射する光路と干渉しない様に選択したとしても、収差の発生は変わらず抑制されることとなり、対象物の物体面上の光学情報の劣化を何ら伴わないという特筆されるべき技術的優位性が実現されるのである。
【0066】
(産業上の利用可能性)
第一の実施の形態〜第四の実施の形態においては、米粒を対象とした選別機の例を説明したが、必ずしもこれに限定するわけではない。例えば、米以外の大豆等の穀粒やコーヒー豆や種などの粒型固体はもちろんのこと、茶葉やタブレット、さらには自動車のバンパーなどの合成樹脂はリサイクル工程でペレット状に加工されるが、色塗料を含む樹脂ペレットを本願発明の選別機による選別の対象として用いることができる。
さらにまた、対象物が米粒などの粒型の対象物ではなく、例えばコンベア上に積置したシート若しくはフィルム状の対象物である場合は、そのシート状等の対象物を鉛直方向から光学ユニット100によって観察し、シート状の対象物内で異物を検出するとコンベア上の搬路変更手段が駆動して、異物を含んだシート状の対象物のみが規格外対象物用の貯留ケースに搬送されるようにすることが可能である。
【解決手段】凹曲面鏡として例えばオフセットパラボラ凹面鏡2を用い、オフセットパラボラ凹面鏡2の幾何学的な焦点位置に入射瞳を持つ集光光学系3を配置することにより、オフセットパラボラ凹面鏡2の光軸と平行に入射する光線群が、オフセットパラボラ凹面鏡2の光軸と直交する物体面6に対してテレセントリックな主光線となり、物体面6上の各物点からの発散光をオフセットパラボラ凹面鏡2の焦点位置にある集光光学系3がつくる二次像面上で死角なく検出できる。更にオフセットパラボラ凹面鏡2で反射した光束を反射ミラー4、5で折り曲げた後に集光光学系3に入射させてから対象物の像を検出するため、格段に装置のコンパクト化及び低価格化が実現可能である。