特許第5943391号(P5943391)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5943391
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】光触媒脱臭装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/00 20060101AFI20160621BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20160621BHJP
   A61L 9/18 20060101ALI20160621BHJP
   B01J 23/30 20060101ALI20160621BHJP
   B01J 23/42 20060101ALI20160621BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20160621BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   A61L9/00 C
   A61L9/01 B
   A61L9/18
   B01J23/30 A
   B01J23/42 A
   B01J35/02 J
   B01D53/36 J
   B01D53/36 H
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-208426(P2013-208426)
(22)【出願日】2013年10月3日
(65)【公開番号】特開2015-70959(P2015-70959A)
(43)【公開日】2015年4月16日
【審査請求日】2015年5月19日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502046696
【氏名又は名称】東洋興商株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082670
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 民雄
(74)【代理人】
【識別番号】100180068
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 怜史
(72)【発明者】
【氏名】生田 博美
【審査官】 神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−006428(JP,A)
【文献】 特開2009−056398(JP,A)
【文献】 特開2009−233655(JP,A)
【文献】 特開2011−001238(JP,A)
【文献】 特開2011−033296(JP,A)
【文献】 特開2012−152452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00−9/22
B01D 53/34−53/96
B01J 19/00−19/32
B01J 21/00−38/74
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒に、光源からの光を照射して、光触媒反応により脱臭を行わせるようにした光触媒脱臭装置において、
前記光触媒に、酸化タングステン触媒を用いると共に、
前記光源に、前記酸化タングステン触媒が脱臭効果を発揮可能な特定波長の可視光を発生するLEDを用いるものとされ、
前記光源は、前記特定波長として中心波長が400nm〜450nmの可視光を発生するLEDであり、
酸化タングステン触媒に銅を担持させたものを有することにより、
メチルメルカプタンに対する脱臭効果も更に得られるようにしたことを特徴とする光触媒脱臭装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光触媒脱臭装置において、
前記光源は、前記特定波長として中心波長が400nm〜420nmの可視光を発生するLEDであることを特徴とする光触媒脱臭装置。
【請求項3】
請求項1に記載の光触媒脱臭装置において、
前記酸化タングステン触媒に銅を担持させたものに対する光源は、前記特定波長として中心波長が450nmの可視光を発生するLEDであることを特徴とする光触媒脱臭装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光触媒脱臭装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、ガス中に含まれる臭気成分を脱臭するのに、光触媒脱臭装置が用いられている。
このような光触媒脱臭装置は、ガス中に置かれた光触媒に、光源からの光を照射することにより、光触媒反応を利用してガスに含まれる臭気成分を分解するようにしたものである。
この光触媒脱臭装置は、他の方式の脱臭装置と比べて設備の簡易化や小型化が図り易く、しかも、光触媒は光をエネルギー源として自己再生機能を発揮するため廃棄処理が不要であり、半永久的に使用できることからランニングコストが低いので、近年、注目を集めているものである。
【0003】
このような光触媒脱臭装置では、これまで、光触媒に酸化チタン触媒を用いると共に、光源に蛍光灯型の紫外線ランプを用いるようにしていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−230806号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した光触媒脱臭装置には、以下のような問題があった。
即ち、上記光触媒脱臭装置では、光源に蛍光灯型の紫外線ランプを用いていたが、蛍光灯型の紫外線ランプには寿命があるため、定期的に交換しなければならないなどのメンテナンス上の問題があった。
また、蛍光灯型の紫外線ランプには水銀が使用されているため環境面において問題があり、点灯するのに安定器などの高電圧回路を使用するため費用が掛かるという問題があった。
更に、蛍光灯型の紫外線ランプは、消費電力が通常の蛍光灯と同じかまたはそれ以上であるため、近年の電力事情に鑑みて、より一層の省電力化が望まれている。
そこで、本発明は、上記した問題点を解決することを、主な目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、光触媒に、光源からの光を照射して、光触媒反応により脱臭を行わせるようにした光触媒脱臭装置において、
前記光触媒に、酸化タングステン触媒を用いると共に、
前記光源に、前記酸化タングステン触媒が脱臭効果を発揮可能な特定波長の可視光を発生するLEDを用いるものとされ、
前記光源は、前記特定波長として中心波長が400nm〜450nmの可視光を発生するLEDであり、
酸化タングステン触媒に銅を担持させたものを有することにより、
メチルメルカプタンに対する脱臭効果も更に得られるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。
即ち、光源としてのLEDは、他の可視光源(例えば、蛍光灯や通常のキセノンランプなど)と比べて発生する光の発光波長の幅が極めて狭いという特性を有している。そのため、光触媒としての酸化タングステン触媒に対して、脱臭効果を(最も)有効に発揮可能な特定波長の可視光のみを意図的に効率的且つ集中的に照射することが可能となる。よって、このような脱臭効果を有効に発揮可能な特定波長が実際に存在することが解明されれば、可視光であっても、酸化タングステン触媒に、高い脱臭効果を発揮させることが可能となる。その結果、酸化タングステン触媒と上記LEDとの組合せによって、これまでの酸化チタン触媒と蛍光灯型の紫外線ランプとの組合せとほぼ同等またはそれ以上の脱臭性能を達成することが可能となる。
また、LEDは、蛍光灯型の紫外線ランプよりも格段に寿命が長く、消費電力が小さいので、現行の酸化チタン触媒と蛍光灯型の紫外線ランプとを組合せた設備と比べて、大幅にメンテナンスの手間を削減することができると共に、ランニングコストを下げることができる。
更に、紫外線を用いずに、(上記した特定波長の)可視光で脱臭が行えるので安全であり、しかも、水銀が使用されないので環境的にも好ましい設備にすることができる。
また、酸化タングステン触媒に銅を担持させたものを有することにより、メチルメルカプタンに対する脱臭効果を更に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例にかかる光触媒脱臭装置の全体図である。このうち、(a)は側面図、(b)は上方から見た水平断面図である。
図2図1の脱臭ユニットの全体図である。このうち、(a)は正面図、(b)は側方から見た縦断面図、(c)はフィルターユニットを取外した正面図である。
図3図2の蛍光灯型LEDランプの全体斜視図である。
図4】LEDの発光スペクトルと、光触媒の拡散反射スペクトルとを示すグラフである。
図5】実験1などに用いる実験装置を示す図である。このうち、(a)は全体構成図、(b)は反応容器の縦断面図である。
図6】実験1の結果を波長ごとにまとめたグラフである。このうち、(a)は中心波長400nmの光、(b)は中心波長420nmの光、(c)は中心波長450nmの光に対するものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施の形態、および、それを具体化した実施例を、図面を用いて詳細に説明する。
図1図6は、この実施の形態の実施例およびその変形例を説明するためのものである。
【0010】
(構成)
図1に示すように、ガス1中に含まれる臭気成分を脱臭するのに、光触媒脱臭装置2などの空気浄化装置が用いられている。
この光触媒脱臭装置2は、図2(特に、図2(b))に示すように、(ガス1中に置かれた)光触媒3に、光源4からの光5を照射することにより、光触媒反応を利用して脱臭を行わせるようにしたものとされる。
【0011】
(補足説明)
ここで、上記についての補足説明を行う。
上記した「ガス1」は、脱臭処理の対象となる(臭気成分を含んだ)気体のことである。
上記した「光触媒脱臭装置2」は、文字通り、光触媒3を利用した脱臭装置のことである。
上記した「光触媒3」は、光5を吸収して、他の物質に化学反応を起こさせる触媒機能を有する物質である。
上記した「光源4」は、光触媒3に光触媒反応を起こさせるための光5を発生させる発光部のことである。
上記した「光触媒反応」は、光触媒3と光5とを利用した酸化・還元反応などのことである。
上記した「脱臭」は、ガス1中に含まれる臭気成分を分解して低臭化することである。
【0012】
そして、上記した光触媒3と、光源4とを用いた具体的な光触媒脱臭装置2は、図1図2に示すようなものなどとすることができる。
図の光触媒脱臭装置2は、例えば、大規模商業施設や、オフィスビルや、集合住宅などの建物の屋上などに設置されるような、比較的大型のものとなっている。但し、光触媒脱臭装置2の構成や大きさや設置場所などは、これに限るものではない。
【0013】
図1に示すように、この光触媒脱臭装置2には、臭気成分を含むガス1(未処理ガス)の入口部11と、脱臭後のガス1(処理ガスまたは脱臭ガス)の出口部12とを有する中空の建屋13(脱臭装置本体)が備えられる。この場合、建屋13は、ほぼ直方体状のものとされている。上記したガス1の入口部11と出口部12とは、直方体状をした建屋13の離れた位置、例えば、相対向する面(端面)に形成されている。なお、入口部11や出口部12は、建屋13の上面や側面などに対して設けることもできる。そして、ガス1の入口部11には、建物の排気設備から延びる図示しない排気ダクトが接続される。また、ガス1の出口部12は、大気に開放されるか、あるいは、図示しない排気ダクトに接続される。なお、建屋13には、点検用のドア13aが開閉可能に設けられている。この場合、点検用のドア13aは、建屋13の(入口部11および出口部12と直交する)側面(一方の側面または両側面)に設けられている。但し、点検用のドア13aの位置や個数は、これに限るのではない。また、建屋13の外側面には、制御盤13bが取付けられている。
【0014】
そして、この中空の建屋13の内部に、ガス1の入口部11と、出口部12との間を2つの独立した空間に仕切る仕切部14が設けられる(図1(b)参照)。この仕切部14の形状は任意である。この場合、仕切部14は、出口部12へ向かって広がる平面視V字状のものとされている。そして、この仕切部14に対して、図2に示すような、光触媒フィルター15と、光源4とが取付けられる。光触媒フィルター15は、フィルター基材に光触媒3を担持させたものである。この場合、光触媒フィルター15と光源4とは、後述するような脱臭ユニット16を構成するものとされている。この脱臭ユニット16は、仕切部14に対して、着脱可能に取付けられる。そのために、仕切部14は、脱臭ユニット16を着脱可能な棚状や取付枠状のものなどとされている。
【0015】
上記した脱臭ユニット16は、ガス1の流れ方向に対し間隔を有して配設された複数層の光触媒フィルター15と、光触媒フィルター15の各層間に配設された光源4とを有すると共に、これらを、枠状のユニット本体17に取付けてユニット化したものである。この場合、光触媒フィルター15は、二層とされているが、三層以上のものとしても良い。なお、光触媒フィルター15と光源4との配置については、これに限るものではない。更に、ガス1に含まれるオイルミストによる光触媒フィルター15の汚れを防止するために、枠状のユニット本体17の前段にグリスフィルターなどを取付けるようにしても良い。
【0016】
そして、各層の光触媒フィルター15は、複数枚並べてフィルター枠18に一体的に取付けることにより、ユニット本体17に対して着脱可能な面状のフィルターユニット19を構成するものとされている。更に、フィルターユニット19は、ユニット本体17に対し、表裏反転して取付けることができるように構成されている。この場合、フィルターユニット19は、4枚の光触媒フィルター15を同一面内で碁盤目状に並べたものなどとされているが、光触媒フィルター15の枚数や配置についてはこれに限るものではない。
なお、光源4については、後述する。
そして、上記した構成に対し、この実施例では、以下のような構成を備えるようにする。
【0017】
(構成1)
上記光触媒3に、白金担持酸化チタン触媒または酸化タングステン触媒を用いるようにする。
そして、上記光源4に、上記白金担持酸化チタン触媒または酸化タングステン触媒が脱臭効果を(有効に)発揮可能な特定波長の可視光を発生する(可視域の)LED23を用いるようにする。
【0018】
(補足説明1)
ここで、上記した「白金担持酸化チタン触媒」は、白金化合処理された酸化チタン(Pt−TiO)のことである。
上記した「酸化タングステン触媒」は、酸化タングステン(WO)を用いた触媒のことである。
光触媒3は、基本的に、白金担持酸化チタン触媒または酸化タングステン触媒の少なくとも1つを主成分とするものであるが、光触媒3には上記の他に、吸着剤や、シリカなどの周知の添加物が混合されていても良い。
上記した「特定波長の可視光」は、可視光に含まれる様々な波長の光のうち、白金担持酸化チタン触媒または酸化タングステン触媒が吸収して脱臭効果を有効に発揮する特別な波長(特定の可視吸収波長または可視脱臭促進波長)の光5のことである。特定波長は、単波長(特定波長)であることが望ましいが、狭い幅(特定波長域)を有していても良い。この場合、上記した狭い幅は、LED23が有する波長の幅程度のものとされる。
【0019】
上記した「LED23」は、発光ダイオード(Light Emitting Diode)のことである。この場合、LED23には、例えば、図3に示すような、蛍光灯型LEDランプが用いられる。この蛍光灯型LEDランプは、光5を透過可能な筒型のランプ本体24の内部に、複数個のLED23が取付けられた基板25を挿入配置すると共に、ランプ本体24の両端部を封止するように端子部26を設けたものとされる。この端子部26には、ランプ本体24を360°回転(軸転)可能な回転ソケット26aを設けることができる。この蛍光灯型LEDランプは、通常の蛍光灯型の紫外線ランプと代替可能なものとされる。蛍光灯型LEDランプは、図中水平方向に延びるものが、上下方向に所要の間隔を有して複数本設置されている。
この場合、蛍光灯型LEDランプは、LED23が、基板25の片面側に対して、基板25の長手方向にほぼ沿うように多数取付けられることにより、基板25の片面側に対してのみ発光可能なものとされている(片面発光タイプ)。即ち、この蛍光灯型LEDランプは、ランプ本体24の周方向に対し、最大で180°の照射角度を有するものとされている。但し、LED23を、基板25の両面に取付けることにより、基板25の両面側に対して発光が可能なものとすることもできる(両面発光タイプ)。
なお、上記した片面発光タイプの場合、光5を光源4の両側に配置された各光触媒フィルター15に対して万遍なく照射できるようにするために、上下方向に位置する蛍光灯型LEDランプを、交互に反対側の光触媒フィルター15へ向けて光5を照射するように、ランプ本体24の向きが180°反対になるように取付けたり、または、上記した回転ソケット26aによって角度を調整したり微調整したりするようにしている。但し、LED23には、上記した蛍光灯型LEDランプ以外の形態のものを用いることもできる。
【0020】
(構成2)
上記光源は、上記特定波長として中心波長が400nm〜490nmの可視光を発生するLED23とされる。
【0021】
(補足説明2)
「可視光」は、波長の下限が360nm〜400nmとされ、波長の上限が760nm〜830nmとされる。そして、上記した400nm〜490nmの可視光は、ほぼ紫色から青色の光5となる。なお、より高い脱臭効率を得るためには、LED23の中心波長は、400nm〜470nm程度の範囲とするのが好ましい。
「LED23」は、中心波長に対して±20nm〜30nm程度の狭い波長の幅を有する光5を発光することができるものである。ここで、一般に、LED23の中心波長は、製造時のバラ付きなどによって、表示値に対する誤差を有している。そのため、上記した蛍光灯型LEDランプも、中心波長に誤差を有するLED23が使われる可能性が高いが、この場合には、誤差の範囲を±10nm程度以下に抑えるようにしている。なお、蛍光灯型LEDランプは、上記した波長範囲内(400nm〜490nm)で様々な中心波長を有するLED23を組合せて構成するようにしても良い。
【0022】
(構成3)
より具体的には、上記光触媒3が、白金担持酸化チタン触媒とされる。
そして、上記光源4が、白金担持酸化チタン触媒に対する特定波長となる、中心波長400nm〜450nmの可視光を発生するLED23とされる。
【0023】
(補足説明3)
光触媒3が白金担持酸化チタン触媒の場合、より一層高い脱臭効率を得るためには、LED23は、中心波長400nm〜420nmの可視光を発光するものを使用するのが好ましい。
【0024】
(構成4)
または、上記光触媒3が、酸化タングステン触媒とされる。
そして、上記光源4が、酸化タングステン触媒に対する特定波長となる、中心波長400nm〜470nmの波長の可視光を発生するLED23とされる。
【0025】
(補足説明4)
光触媒3が酸化タングステン触媒の場合、より一層高い脱臭効率を得るためには、LED23は、中心波長400nm〜450nmの可視光を発光するものを使用するのが好ましい。
【0026】
<作用効果>この実施例によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
(作用効果1)
上記構成1によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
即ち、光源4としてのLED23は、他の可視光源(例えば、蛍光灯や通常のキセノンランプなど)と比べて発生する光5の発光波長の幅が極めて狭いという特性を有している。そのため、光触媒3としての白金担持酸化チタン触媒または酸化タングステン触媒に対して、これらが脱臭効果を(最も)有効に発揮可能な特定波長の可視光のみを意図的に効率的且つ集中的に照射することが可能となる。よって、このような脱臭効果を有効に発揮可能な特定波長が実際に存在することが解明されれば、可視光であっても、白金担持酸化チタン触媒または酸化タングステン触媒に、高い脱臭効果を発揮させることが可能となる。その結果、白金担持酸化チタン触媒または酸化タングステン触媒と上記LED23との組合せによって、これまでの酸化チタン触媒と蛍光灯型の紫外線ランプとの組合せとほぼ同等またはそれ以上の脱臭性能を達成することが可能となる。
【0027】
これに対し、他の可視光源(例えば、通常のキセノンランプなど)を使用した場合には、他の可視光源は、可視光を幅広い波長で発生するものであるため、白金担持酸化チタン触媒または酸化タングステン触媒に対して、脱臭効果を有効に発揮可能な可視領域の特定の波長の光5のみを効率的または集中的に照射することができない。そのため、他の可視光源(例えば、通常のキセノンランプなど)では、所望の脱臭効果を得ることは難しい。よって、他の可視光源(例えば、通常のキセノンランプなど)を使用する場合には、例えば、白金担持酸化チタン触媒または酸化タングステン触媒に対して触媒活性を促進するための手段(例えば、銅などを担持させるなどの手段)を別途適用することが必要になる。しかし、上記したように、光源4として、適正に波長を選定された可視域のLED23を使用すれば、上記したような触媒活性を促進するための手段を用いる必要がなくなるので、白金担持酸化チタン触媒または酸化タングステン触媒を、そのまま使用することが可能となる。即ち、上記したような触媒活性を促進するための手段などを不要化することができる。
【0028】
また、LED23は、蛍光灯型の紫外線ランプよりも格段に寿命が長く、消費電力が小さいので、これまでの酸化チタン触媒と蛍光灯型の紫外線ランプとを組合せたものと比べて、大幅にメンテナンスの手間を削減することができると共に、ランニングコストを下げることができる。
なお、LED23は、波長が長いもの程、安価に入手することができるため、上記した特定波長の光5は、波長が長くなる程、コスト的には有利となる。
更に、紫外線を用いずに、(特定波長の)可視光で脱臭が行えるので安全であり、しかも、水銀が使用されないので環境的にも好ましい設備にすることができる。
【0029】
(作用効果2)
上記構成2によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
即ち、中心波長が400nm〜490nmの可視光を発生するLED23を用いることにより、白金担持酸化チタン触媒および酸化タングステン触媒は、脱臭性能を有効に発揮することができる。
【0030】
(作用効果3)
上記構成3によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
即ち、白金担持酸化チタン触媒は、LED23からの中心波長400nm〜450nm、好ましくは中心波長400nm(の特定波長)の可視光を照射することによって、最も高い脱臭性能を発揮することができる。
【0031】
(作用効果4)
上記構成4によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
即ち、酸化タングステン触媒は、LED23からの中心波長400nm〜470nm、好ましくは中心波長400nm〜450nm(の特定波長)の可視光を照射することによって、高い脱臭性能を発揮することができる。
【0032】
(考察)
以下、光触媒3と光5の波長との関係について説明する。
【0033】
図4は、LED23の発光スペクトルと、光触媒3の拡散反射スペクトルとを示すグラフである。図中、横軸は光5の波長である。また、縦軸は、LED23の発光スペクトルについては光5の強度(Intensity)であり、光触媒3の拡散反射スペクトルについてはKubelka-Munk関数(クーベルカ=ムンク関数)で表した指標である。
【0034】
そして、線aが中心波長400nmの可視光を発生するLED23の発光スペクトル、線bが中心波長420nmの可視光を発生するLED23の発光スペクトル、線cが中心波長450nmの可視光を発生するLED23の発光スペクトルである。上記したように、各LED23とも、中心波長に対して±20nm〜30nm程度の波長の幅を有している。
また、線dが現在最も多く使われている酸化チタン触媒の拡散反射スペクトル、線eが白金担持酸化チタン触媒の拡散反射スペクトル、線fが酸化タングステン触媒の拡散反射スペクトルである。
【0035】
この図によると、まず、現行の酸化チタン触媒(線d)は、400nmの中心波長のLED23(線a)の裾位置(380nm付近)に対して僅かな重なりがあり、僅かに光5の吸収がある。これに対し、420nmの中心波長のLED23(線b)や450nmの中心波長のLED23(線c)とは重なりがほとんどなく、光5の吸収がほとんどない。
【0036】
次に、白金担持酸化チタン触媒(線e)は、400nmの中心波長のLED23(線a)との重なりが酸化チタン触媒の場合よりも大きく、光5をより多く吸収する。また、420nmの中心波長のLED23(線b)および450nmの中心波長のLED23(線c)に対して僅かに重なりがあり、僅かに光5の吸収がある。
【0037】
そして、酸化タングステン触媒は(線f)は、470nm〜490nm付近まで延びているため、400nmの中心波長のLED23(線a)、420nmの中心波長のLED23(線b)、450nmの中心波長のLED23(線c)の全てと十分に重なりがあり、それぞれ光5の吸収がある。
【0038】
以上のような検討により、現行の酸化チタン触媒は、可視域の上記いずれの波長でも光触媒反応がほとんど進行されないが、白金担持酸化チタン触媒は、主に400nmの波長の可視光によって、光触媒反応が進行され、また、酸化タングステン触媒は、400nm、420nm、450nmの全ての波長の可視光で、光触媒反応が進行されるものと考えられる。
【0039】
(実験1)
上記考察の結果を確かめるために、以下のような実験を行った。
実験には、図5に示すような装置を用いた。この実験装置は、一面に透明な窓板31を有する反応容器32の内部に、水で溶いた光触媒3を塗布して乾燥させた試料33を、スペーサ34を介して設置し、反応容器32に臭気成分としてのアセトアルデヒド(AcH)を含むガス1(空気)を供給しつつ、反応容器32の外部に設置されたLED23(蛍光灯型LEDランプなどの光源4)からの光5を、窓板31を通して試料33に照射し、光触媒反応によるアセトアルデヒドの除去率を測定装置35で測定するようにしたものである。この際、蛍光灯型LEDランプと試料33の表面との間隔は30mmとし、窓板31と試料33との間の空気層は5mmとしている。
なお、その他の構成については、特に説明しないが、図に記載した通りである。
【0040】
この実験は、JIS R1701−2(光触媒3材料の空気浄化性能試験:第2部:アセトアルデヒド除去性能試験)を参考にしたものである。主な条件は以下の通りである。なお、JIS R1701−2では、光5の照射時間は3時間となっているが、アセトアルデヒドの除去率が途中で十分に安定した場合には、光5の照射時間を短縮して、例えば、1時間などで中断している。
【0041】
実験条件
・アセトアルデヒド初期濃度:5ppm
(約200ppmの標準ガスボンベのガス1を空気精製装置の精製空気で希釈して調整)
・反応容器32 :JIS R1701−2
・サンプルサイズ :幅50mm、長さ100mm(または50mm)
・光触媒塗布量 :0.20g
・前処理 :UV照射10W/m(16h)
・流量 :1.0L/min
・湿度 :50%(25℃換算)
・光源4の位置 :試料33(サンプル)の表面から30mm
・ガス分析 :FID検出器付きガスクロマトグラフ
【0042】
また、使用した光触媒3は、以下の通りである。
・酸化チタン :日本エアロジル P25(TiO
・白金担持酸化チタン :石原産業 MPT623
・酸化タングステン :日本無機化学工業 WO(Lot#101059)
・鉄担持酸化チタン :石原産業 MPT625(実験1bで使用)
【0043】
この実験により、以下のようなデータが得られた。
番号 光触媒 LED波長 AcH除去率 CO転化率
1 酸化チタン触媒(比較例)400nm 21.3% 18.3%
2 同上 420nm 12.5% 7.3%
3 同上 450nm 1.4% 2.1%
4 白金担持酸化チタン触媒 400nm 80.1% 92.8%
5 同上 420nm 78.0% 68.0%
6 同上 450nm 41.3% 18.0%
7 酸化タングステン触媒 400nm 68.7% 70.2%
8 同上 420nm 73.7% 78.9%
9 同上 450nm 74.4% 79.6%
【0044】
また、このデータを波長ごとに整理して、図6に示すようなグラフを作成した。
この実験の結果、まず、現行の「酸化チタン触媒」(TiO)では、上記したどのLED23との組合せでもアセトアルデヒドの除去率が低く(それぞれ21.3%(400nm)、12.5%(420nm)、1.4%(450nm))、可視域のLED23との組合せは不向きであることが確認された。
【0045】
なお、現行の酸化チタン触媒と、380nm以下の中心波長の紫外域のLED23とを組合せることも考えられるが、380nm以下の中心波長のLED23は、高価であり、エネルギー効率も低いため、実用的ではない。これに対し、400nm以上の可視域の中心波長のLED23は、比較的安価であり、エネルギー効率も高いため、実用性が高い。よって、実用化には、400nm以上の中心波長のLED23を使えることが必要となる。
また、400nm以上の中心波長のLED23については、波長が長くなる程、安価かつ高効率になる(エネルギー当たりの発生光子数が多くなる)という傾向があるため、波長が長い程、実用化にとっては有利となる。
【0046】
次に、「白金担持酸化チタン触媒」(Pt−TiO)では、400nmの中心波長のLED23との組合せで最も高いアセトアルデヒドの除去率(80.1%)が得られ、CO転化率も高い値(92.8%)となった。なお、アセトアルデヒドの除去率よりもCO転化率の方が高くなったのは、光触媒3に以前から吸着していたアセトアルデヒドや副生成物などの有機物が分解したためであると考えられる。
また、420nmの中心波長のLED23との組合せについても高いアセトアルデヒドの除去率(78.0%)が得られた(CO転化率68.0%)。
そして、450nmの中心波長のLED23との組合せではアセトアルデヒドの除去率は上記よりも低く(41.3%)、CO転化率も上記より低くなった(18.0%)。
【0047】
そして、「酸化タングステン触媒」(WO)では、白金担持酸化チタン触媒と400nmの中心波長のLED23との組合せには及ばないものの、どのLED23との組合せでも高いアセトアルデヒドの除去率(それぞれ68.7%(400nm)、73.7%(420nm)、74.4%(450nm))が得られた。また、CO転化率も高く(それぞれ70.2%(400nm)、78.9%(420nm)、79.6%(450nm))、アセトアルデヒドがCOにまで酸化されて、無害化されたことが確認できた。
【0048】
以上をまとめると、高い脱臭性能を得るには、白金担持酸化チタン触媒と400nmの中心波長のLED23との組合せが有利であり、比較的安価に所要の脱臭性能を得るには、酸化タングステン触媒を用いるのが有利である、ということが解った。
【0049】
(実験1a)
また、追加として、異なる方法で銅を担持させた二種類の酸化タングステン触媒(Cu−WO)について、上記と同様の実験を行った(硝酸銅水溶液を用いる銅の担持方法(方法1)と、塩化銅水溶液を用いる銅の担持方法(方法2))。
【0050】
この実験の結果、
方法1の銅担持酸化タングステン触媒は、アセトアルデヒドの除去率が42.6%、CO転化率が18.2%となった。
また、方法2の銅担持酸化タングステン触媒は、アセトアルデヒドの除去率が51.4%となり、CO転化率が27.1%となった。
よって、特定波長の可視光に特化した本実験では、銅を担持させないものの方が、性能が良いという結果となった。
【0051】
(実験1b)
また、サンプルサイズを半分にして(幅50mm、長さ50mm)、同様の実験を行った。
この実験では、光触媒3として、酸化チタン触媒に鉄を担持させたもの(鉄担持酸化チタン触媒)や、酸化タングステン触媒に白金担持酸化チタン触媒を混合したもの(混合光触媒A)や、酸化タングステン触媒に酸化チタン触媒を混合したもの(混合光触媒B)などを用いて、光触媒3を組合せた場合の効果などについても調べた。
【0052】
この実験により、以下のようなデータが得られた。
番号 光触媒 LED波長 AcH除去率 CO転化率
1b 白金担持酸化チタン触媒 400nm 59.1% 80.6%
2b 白金担持酸化チタン触媒 420nm 46.6% 46.0%
3b 鉄担持酸化チタン触媒 400nm 46.5% 35.7%
4b 酸化タングステン触媒 450nm 47.7% 59.7%
5b 混合光触媒A 420nm 42.2% 44.5%
6b 混合光触媒B 420nm 46.5% 47.7%
【0053】
この実験の結果、白金担持酸化チタン触媒(400nm)と、酸化タングステン触媒(450nm)との両方で、高いアセトアルデヒドの除去率が得られた(それぞれ59.1%と47.7%)。しかも、その差は、19%となり、サンプルサイズが幅50mm、長さ100mmのときの差(14%)よりも大きかった。これは、サンプルサイズが幅50mm、長さ100mmの場合には、白金担持酸化チタン触媒によるアセトアルデヒドの除去率が飽和して過小評価されていたためであると考えられる。
【0054】
また、酸化チタン触媒に鉄を担持させた鉄担持酸化チタン触媒は、白金担持酸化チタン触媒(420nm)や酸化タングステン触媒(450nm)と同程度のアセトアルデヒドの除去率を示したが(46.5%)、CO転化率が低く(35.7%)、副生成物が多く発生したものと推察される。
【0055】
そして、酸化タングステン触媒に白金担持酸化チタン触媒を混合した混合光触媒Aは、酸化タングステン触媒単独のものよりも低いアセトアルデヒドの除去率(42.2%)となり、酸化タングステン触媒は、白金担持酸化チタン触媒を混合しないで単独で使用した方が良い結果となった。
【0056】
また、酸化タングステン触媒に酸化チタン触媒を1:1の割合で混合した混合光触媒Bは、酸化タングステン触媒単独のものよりも若干低いが、ほぼ同程度のアセトアルデヒドの除去率を示した(46.5%)。そのため、酸化タングステン触媒への酸化チタン触媒の混合は、酸化タングステン触媒の使用量を削減する手段として期待できることが解った。
【0057】
(実験2)
更に、上記した光触媒3を、実際にフィルター化しての実験も行った。
フィルター基材には、ガス1との接触効率や光利用効率が高い、3次元の網目状をしたセラミック製のものを用いた。そして、このフィルター基材に対し、光触媒3を水に懸濁させたコーティング溶液を付着させて乾燥させるなどの手段により、光触媒3を担持させるようにした。なお、フィルター基材に対する光触媒3の付加重量については、現行の酸化チタン触媒が最大除去率を示す約2gを基準とした。
【0058】
実験条件
・アセトアルデヒド初期濃度:5ppm程度
・反応容器32 :JIS R1701−2(フィルター用)
・サンプルサイズ :幅50mm、長さ25mm(JISの1/4)
・前処理 :UV照射16h
・流量 :1.0L/min
・湿度 :50%(25℃換算)
・光源4 :蛍光灯型の紫外線ランプ (酸化チタン触媒)
:中心波長400nmのLED23 (白金担持酸化チタン触媒)
:中心波長420nmのLED23 (酸化タングステン触媒)
・光源4の位置 :光触媒3の表面とLED23の外面との距離30mm
・ガス分析 :FID検出器付きガスクロマトグラフ
【0059】
この実験により、以下のようなデータが得られた。
番号 光触媒 付加重量(5×10cm当り) AcH除去率
21 酸化チタン触媒(比較例) (約2.00g) 40.3%
22 白金担持酸化チタン触媒 1.00g 54.4%
23 酸化タングステン触媒 1.49g 60.0%
24 同上(450nmLED23) 0.93g 58.5%
【0060】
この実験の結果、まず、現行の酸化チタン触媒と蛍光灯型の紫外線ランプとの組合せでは、アセトアルデヒドの除去率が40.3%であるのに対し、白金担持酸化チタン触媒と400nmの中心波長のLED23との組合せは、アセトアルデヒドの除去率が54.4%となって、現行の酸化チタン触媒の場合よりも高い値が得られた。
【0061】
また、酸化タングステン触媒と420nmの中心波長のLED23との組合せは、アセトアルデヒドの除去率が60.0%となり、また、酸化タングステン触媒と450nmの中心波長のLED23との組合せは、アセトアルデヒドの除去率が58.5%となって、共に現行の酸化チタン触媒よりも高い値が得られた。
【0062】
よって、上記光触媒3(白金担持酸化チタン触媒や酸化タングステン触媒)をフィルター化しても、現行の酸化チタン触媒と蛍光灯型の紫外線ランプとの組合せと同等かまたはそれ以上の脱臭性能が得られることが確認された。
【0063】
(実験3)
また、アセトアルデヒドの他に、臭気成分としてのメチルメルカプタンについての実験も行った。
【0064】
実験条件
・メチルメルカプタン初期濃度:5ppm(200ppmの標準ガスを希釈)
・反応容器32 :JIS R1701−5(フィルター用)
・サンプルサイズ :幅50mm、長さ25mm(JISの1/4)
・前処理 :UV照射16h
・流量 :1.0L/min
・湿度 :50%(25℃換算)
・光源4 :中心波長400nmのLED23(白金担持酸化チタン触媒)
:中心波長450nmのLED23(酸化タングステン触媒)
・光源4の位置 :光触媒3の表面とLED23の外面との距離30mm
・ガス分析 :FID検出器付きガスクロマトグラフ
【0065】
この実験により、以下のようなデータが得られた。
番号 光触媒 付加重量(5×10cm当り) 除去率
31 酸化チタン触媒(比較例) (2.00g) 43.1%
32 白金担持酸化チタン触媒 2.01g 57.0%
33 酸化タングステン触媒 0.93g 3%未満
34 酸化タングステン触媒+銀 同上(銀0.10%担持) 18.3%
35 酸化タングステン触媒+銅 同上(銅0.12%担持) 40.9%
【0066】
この実験の結果、現行の酸化チタン触媒と蛍光灯型の紫外線ランプとの組合せでは、メチルメルカプタンの除去率が43.1%であるのに対し、白金担持酸化チタン触媒と400nmの中心波長のLED23との組合せは、メチルメルカプタンの除去率が57%となって、現行の酸化チタン触媒の場合よりも高い値が得られた。
【0067】
これに対し、酸化タングステン触媒と450nmの中心波長のLED23との組合せは、メチルメルカプタンの除去率が3%未満となって、そのままでは効果が得られなかった。
【0068】
そこで、酸化タングステン触媒に0.10重量%の銀を担持させてみたところ、メチルメルカプタンの除去率が18.3%となった。また、酸化タングステン触媒に0.12重量%の銅を担持させてみたところ、メチルメルカプタンの除去率が40.9%となった(共に450nmの中心波長のLED23を使用)。よって、少なくとも酸化タングステン触媒の場合には、触媒活性を促進するための手段を採用することによって、メチルメルカプタンに対する脱臭効果を改善できることが確認された。
【0069】
よって、メチルメルカプタンに対する脱臭効果についても、そのままの状態で確保できるか(白金担持酸化チタン触媒と400nmの中心波長のLED23との組合せの場合)、または、調整によって効果が得られるようになる(例えば、酸化タングステン触媒に銅を担持させた場合)ことが確認された。
【0070】
(実験4)
更に、様々な(中心)波長の光源を使って実験を行った。
実験には、サンプルとして上記実験2の24番などで使用した酸化タングステン触媒と同じ触媒を使用した。
【0071】
実験条件
・アセトアルデヒド初期濃度:5ppm(200ppmの標準ガスを希釈)
・反応容器32 :JIS R1701−5(フィルター用)
・サンプルサイズ :幅50mm、長さ25mm(JISの1/4)
・前処理 :UV照射16h
・流量 :1.0L/min
・湿度 :50%(25℃換算)
・光源4の位置 :光触媒3の表面とLED23の外面との距離30mm
・ガス分析 :FID検出器付きガスクロマトグラフ
【0072】
この実験により、以下のようなデータが得られた。
番号 光源 除去率
41 中心波長450nmの蛍光灯型LEDランプ(脱臭装置用) 54.6%
42 一般の470nm青色LED(KBU−10W)10W蛍光灯型 30.0%
43 植物育成ライト(BSJ−81)455nmと670nmとの混合型 63.0%
44 浜松ホトニクス 波長可変光源(OSJL12194)
a 波長400nm 31.1%
b 波長425nm 26.9%
c 波長450nm 19.2%
d 波長460nm 11.7%
e 波長470nm 5.8%
f 波長480nm 2.5%
g 波長490nm 1.1%
h 波長500nm 0%
【0073】
なお、番号44の光源は、キセノンランプの光を分光してLED23の光24に似たスペクトルの単色光を照射できるようにした特殊な光源である。但し、この光源は光量がおおよそ一定であるので、波長によってエネルギー効率が異なるLED23とは、特性が違うものである。
【0074】
この実験の結果、酸化タングステン触媒では、波長400nmから波長490nmまでの光に対して、脱臭反応が生じることが確認された。また、アセトアルデヒドの除去率は、光量がほぼ一定の場合には、波長400nmから波長490nmに向って波長が長くなるに従い、低下して行くことが確認された。
【0075】
また、上記した植物育成ライト(BSJ−81)のように、脱臭効果を有効に発揮可能な特定波長である455nmの光と、特定波長ではない670nmの光とが混合された光源でも、脱臭効果が得られることが確認された。
【0076】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものである。よって、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施例に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、複数の実施例や変形例がこの発明のものとして開示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。更に、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。また、「ほぼ」「約」「程度」などの用語がある場合には、常識的に認められる範囲や精度のものを含むという意味で用いられている。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、光触媒脱臭装置に限らず、光触媒を用いた各種の装置への応用が期待できる。
【符号の説明】
【0078】
2 光触媒脱臭装置
3 光触媒
4 光源
5 光
23 LED
図1
図2
図3
図4
図5
図6