(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記板ばねは、長手方向の一端で前記振動体に接続される接続部と、他端で前記周壁面に取り付けられる取付部と、該接続部と該取付部の間をなし、前記振動体を迂回して延びる中間部とから形成され、
前記接続部と前記取付部とは、前記振動体の振動方向と交差する方向にて、前記振動体を間に挟んだ一方側に前記接続部が位置され、他方側に前記取付部が位置され、
前記中間部は、振動方向に関して前記振動体よりも外側の領域にて、振動方向と交差し、
前記ダンパー部材は、前記振動体の前記他方側に位置する端縁部と前記板ばねの中間部との間に配置されている、請求項1又は2に記載の振動発生装置。
前記板ばねは、長手方向の一端で前記振動体に接続される接続部と、他端で前記周壁面に取り付けられる取付部と、該接続部と該取付部の間をなし、前記振動体を迂回して延びる中間部とから形成され、
前記接続部と前記取付部とは、前記振動体の振動方向と交差する方向にて、前記振動体を間に挟んだ一方側に前記接続部が位置され、他方側に前記取付部が位置され、
前記中間部は、振動方向に関して前記振動体よりも外側の領域にて、振動方向と交差し、
前記ダンパー部材は、前記基端部が前記振動体に取り付けられ、前記先端部が前記取付部の内面に向けて延びている、請求項1に記載の振動発生装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、安定した低いQ値のモータを製造することが困難であり、振動の周波数特性を改善して振動体の過振を抑えることが困難である。
【0009】
特許文献3に記載された技術では、時間の経過に伴って、防振材が劣化することにより弾性が低下する。こうした現象はノイズが発生する原因となる。
【0010】
グリスや磁性流体等の流体を充填する手段では、流体の粘度が低い場合には、振動体に対する抵抗を付与することができず、振動体の過振を抑制することは困難である。これに対し、流体の粘度が高すぎる場合には、振動体の振動自体を妨害し、振動発生装置の起振特性が低下してしまう。また、流体を利用した場合には、振動発生装置の温度が変化することに伴って、流体の粘度も変化してしまい、振動体に対する抵抗値も変化してしまう。さらに、振動体の振動に伴って流体が飛散してしまい、Q値を変化させてしまうという不都合な点もある。
【0011】
本発明はこうした問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、振動体が過振することを効果的に防止でき、かつ、ノイズの発生も防止することができる振動特性に優れた振動発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための本発明に係る振動発生装置は、周囲を囲む周壁面と、該周壁面の内側でコイルと対向して配置され、一方向に往復振動される振動体と、該振動体と前記周壁面との間に配置され、該振動体を前記周壁面に支持する帯状の板ばねと、前記振動体及び前記板ばねのいずれか一方に基端部が取り付けられ、他方に向けて先端部が延びるダンパー部材と、を備え、該ダンパー部材の先端部は、前記板ばね又は前記振動体に対して摺動されることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、振動体と板ばねとの間にダンパー部材を設けているので、振動体の過振を防止すると共に、振動体を速やかに静止させることができる。
【0014】
本発明に係る振動発生装置において、前記ダンパー部材の先端部と前記板ばね又は前記振動体との接触面積が、前記振動体の振動に伴って変化することを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、振動体の振動に伴って板ばねが変形したときに、ダンパー部材の先端部と板ばね又は振動体との接触面積を大きくする。そのため、板ばねに局部的な大きな力を作用させることがなく、ダンパー部材の作用を適切に板ばねに伝えることができる。
【0016】
本発明に係る振動発生装置において、前記板ばねは、長手方向の一端で前記振動体に接続される接続部と、他端で前記周壁面に取り付けられる取付部と、該接続部と該取付部の間をなし、前記振動体を迂回して延びる中間部とから形成され、前記接続部と前記取付部とは、前記振動体の振動方向と交差する方向にて、前記振動体を間に挟んだ一方側に前記接続部が位置され、他方側に前記取付部が位置され、前記中間部は、振動方向に関して前記振動体よりも外側の領域にて、振動方向と交差し、前記ダンパー部材は、前記振動体の前記他方側に位置する端縁部と前記板ばねの中間部との間に配置されていることを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、板ばねに発生する応力を低減し、振動発生装置の寿命を長期化することができる。また、板ばねの内側に形成されるスペースを大きくでき、振動体の振動方向の寸法を大きく形成することや、振幅を大きくすることができる。振動体を大きく形成することや振幅を大きくすることに伴って、振動体は過振しやすくなるが、ダンパー部材を設けることで、過振の発生を防止することができる。
【0018】
本発明に係る振動発生装置において、前記板ばねは、前記ダンパー部材によって非線形特性ばねとされていることを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、振動体が振動方向のいずれかの最大振幅の近傍まで移動したときには、板ばねの変形に伴って、ダンパー部材の弾性力が板ばねに作用する。そのため、板ばねの振動特性は非線形特性のばねとなる。非線形特性のばねで振動体を支持するため、板ばねの共振点を周波数の高い値にずらすことができ、共振点に達するまでの周波数に対する加速度の変化率をなだらかにすると共に、共振点での加速度の値を低下させる。その結果、板ばねは、振動体が過振してしまう加速度よりも低い値の加速度しか与えず、振動体が過振することを防止することができる。共振点に達するまでの加速度の変化率がなだらかになることに伴って、振動体が所望の加速度で振動する周波数の範囲を広くすることができる。
【0020】
本発明に係る振動発生装置において、前記板ばねは、金属材料によって形成され、前記振動体は、該板ばねの共振周波数の近傍の周波数で振動され、前記ダンパー部材のばね定数は、前記板ばねのばね定数よりも小さいことを特徴とする。
【0021】
この発明によれば、板ばねが金属材料で形成されているので、板ばねの共振周波数が明確となり、共振現象が生じる振動発生装置を容易に形成することができる。また、ダンパー部材のばね定数を板ばねのばね定数よりも小さくすることで、ダンパー部材は、振動体が振動することを妨害することがない。そのため、振動体は、過振が防止され、且つ、所望の大きさの加速度で振動される。
【0022】
本発明に係る振動発生装置において、前記ダンパー部材の共振周波数は、前記板ばねの共振周波数の1/10以下であることを特徴とする。
【0023】
この発明によれば、振動発生装置は、適切な大きさの加速度で振動体を確実に振動させることができる。
【0024】
本発明に係る振動発生装置において、前記板ばねは、長手方向の一端で前記振動体に接続される接続部と、他端で前記周壁面に取り付けられる取付部と、該接続部と該取付部の間をなし、前記振動体を迂回して延びる中間部とから形成され、前記接続部と前記取付部とは、前記振動体の振動方向と交差する方向にて、前記振動体を間に挟んだ一方側に前記接続部が位置され、他方側に前記取付部が位置され、前記中間部は、振動方向に関して前記振動体よりも外側の領域にて、振動方向と交差し、前記ダンパー部材は、前記基端部が前記振動体に取り付けられ、前記先端部が前記取付部の内面に向けて延びていることを特徴とする。
【0025】
この発明によれば、振動体が振動されている状態では、ダンパー部材は、振動体の振動を妨害せず、コイルに流す電流が停止されて振動体の振動が停止されるときには、振動体の振動を速やかに静止させることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る振動発生装置によれば、振動体が過振することを防止して、ノイズの発生を防止することができる。また、振動体の振動を速やかに静止させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本発明の技術的範囲は、以下の記載や図面にのみ限定されるものではない。
【0029】
本発明に係る振動発生装置1A,1Bの基本構成について最初に説明する。
【0030】
本発明に係る振動発生装置1A,1Bは、携帯電話等の携帯端末に組み込まれて利用される。本発明に係る振動発生装置1A,1Bの基本構成は、周囲を囲む周壁面13と、この周壁面13の内側でコイル20と対向して配置され、一方向に往復振動される振動体30と、この振動体30と周壁面13との間に配置され、振動体30を周壁面13に支持する帯状の板ばね50とを備えている。振動体30と板ばね50のとの間には、ダンパー部材70,80が設けられる。ダンパー部材70,80は、振動体30及び板ばね50のいずれか一方に基端部71,81が取り付けられ、他方に向けて先端部72,82が延びるように構成される。このダンパー部材70,80の先端部72,82は、板ばね50又は振動体30に対して摺動される。
【0031】
本発明によれば、振動発生装置1A,1Bが、適切な振動を発生させるだけではなく、振動発生装置1A,1Bが備える振動体30の過振を防止して、振動発生装置1A,1Bからノイズが発生することを効果的に防止することができるという特有の効果を奏する。また、振動体30の振動を迅速に静止させることができるという特徴的な効果も奏する。
【0032】
こうした本発明の振動発生装置1A,1Bは、
図1〜
図7に示す第1実施形態に係る振動発生装置1Aと、
図8及び
図9に示す第2実施形態に係る振動発生装置1Bとがある。以下では、実施形態ごとに発明の内容を説明する。
【0033】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係る振動発生装置1Aの基本構成は次のとおりである。
【0034】
振動発生装置1Aは、
図1〜
図3に示すように、振動発生装置1Aの外殻をなすハウジング10を備えている。ハウジング10は、底面11と、底面11に被せるケース12とから構成され、ケース12は、周囲を囲む周壁面13と、上部を覆う天面14とから構成されている。
【0035】
ハウジング10の内部には、底面11に取り付けられたコイル20と、コイル20と対向して配置された振動体30と、振動体30をケース12の周壁面13に対して支持する帯状の板ばね50とが設けられている。
【0036】
コイル20は、中央部に空間が形成されるようにして、素線が渦巻き状に巻かれた空芯渦巻きコイル20である。振動体30は、外形が長方形又は略長方形に形成された振動子であり、自らが形成する磁界と、底面11に取り付けられたコイル20が形成する磁界との相互作用によって、コイル20と天面14との間で一方向に往復振動される。
【0037】
板ばね50は、一対設けられており、振動体30の振動方向の両側に振動体30と周壁面13との間に配置されて、振動体30を周壁面13に支持している。この板ばね50は、板ばね50が延びる長手方向の一端で振動体30に接続される接続部51と、他端で周壁面13に取り付けられる取付部52と、振動体30を迂回して延び、接続部51と取付部52との間をなす中間部53とから形成されている。接続部51と取付部52とは、振動体30の振動方向と交差する方向にて、振動体30を間に挟んだ一方側と他方側とにそれぞれ位置されている。中間部53は、振動体30よりも外側の領域にて、振動体30の振動方向を交差して延びている。そして、振動体30と板ばね50と間には、ダンパー部材70が設けられている。
【0038】
ダンパー部材70は、帯状の部材であり、基端部71が振動体30に取り付けられていて、先端部72が板ばね50の中間部53に向けて延びている。この振動発生装置1Aでは、このダンパー部材70を設けて、板ばね50の振動特性を非線形特性にしている。
【0039】
以下では、本発明の各構成を
図1〜
図3を参照して、さらに詳細に説明する。
【0040】
ハウジング10は、
図1〜
図3に示すように、振動発生装置1Aの外殻をなすもので、高さの低い平坦な直方体状に形成されている。
【0041】
ハウジング10は非磁性体で形成されており、矩形又は略矩形に形成された平坦な底面11と、この底面11に被せるケース12とから構成されている。ケース12は、周囲を囲む周壁面13と、上部を覆う天面14とから形成されている。
【0042】
底面11には、
図3に示すように、周縁をなす各辺に外側に向けて部分的に突出する位置決め突起11aが2ヶ所ずつ形成されている。一方、ケース12の周壁面13の下部には、位置決め突起11aがはめ込まれる凹所13aが、位置決め突起11aに対応する位置に形成されている。底面11とケース12とは、ケース12の周壁面13に形成された凹所13aに底面11に形成された位置決め突起11aがはめ込まれて組み立てられる。底面11の中央部には、コイルホルダ15が形成されていて、コイル20は、このコイルホルダ15に保持される。
【0043】
コイル20は、電流が流される素線が、中央部分に空間が形成されるようにして渦巻き状に巻かれた空芯渦巻きコイル20である。コイル20は、縦方向の寸法が横方向の寸法に比べて長く形成された楕円又は略楕円状に形成されていて、長く形成された縦方向が振動体30の振動方向とは直交する向きに配置されてコイルホルダ15に保持される。
【0044】
振動体30は、
図2に示すように、コイル20の上面と隙間を空けて、コイル20と平行に配置されて板ばね50によって支持される。振動体30は、全体の形状が長方形又は略長方形に形成されている。この振動体30は、振動体30の長尺方向である横方向の両側に配置された一対のウエイト31と、ウエイト31の内側に配置された一対のマグネット35と、マグネット35の上から被せるカバー40が一体的に構成されている。
【0045】
ウエイト31は、振動方向の外側部分に位置するウエイト側部32と、振動方向と交差する方向の、取付部52が設けられた他方側に位置し、ウエイト側部32から振動体30の中心側に向けて延びるウエイト下部33とによってアルファベットのL字状にそれぞれ形成されている。各ウエイト31は、振動体30の横方向の中心に対して左右対称に配置されていて、横方向に延びるウエイト下部33の先端同士が相互に対向している。各ウエイト31が左右のバランスを保って対称に配置されることで、振動体30が円滑に振動する。なお、各ウエイト側部32の上面には、ウエイト側部32が延びる縦方向に対して横方向に延びる合わせ溝34が形成されている。こうしたウエイト31は、
図2に示すように、ウエイト側部32が、振動体30の振動方向に関してコイル20の外周部の位置よりも外側に配置されている。
【0046】
マグネット35は、直方体状にそれぞれ形成されていて、その長尺方向が振動体30の縦方向に向けられてウエイト31の間に並列をなして配置される。このマグネット35は、振動体30の横方向の中心に対して対称となるようにバランスよく配置される。
【0047】
カバー40は、磁性体で形成されている。このカバー40は、マグネット35が配置された領域を上から覆う本体部41と、本体部41の両側縁から左右の外側に向けてそれぞれ延びる腕部42とから形成されている。この腕部42は、各ウエイト31に形成された合わせ溝34にはめ込まれる。
【0048】
振動体30には、さらに、板ばね50が接続される座面36が形成されている。座面36は、ウエイト下部33が配置された振動体30の側縁と対向する側縁に形成されている。この座面36は、振動体30の中心よりもやや外側の位置に、左右対称に形成される。
【0049】
こうした振動体30は、その長尺方向がコイル20の縦方向と直交する向きに配置されて板ばね50で支持される。そして、振動体30は、コイル20が形成する磁界と、マグネット35が形成する磁界との相互作用によって、振動体30の長尺方向をなす横方向に往復振動される。
【0050】
板ばね50は、ばね鋼等の金属材料によって細長い帯状に形成されていて、振動体30の両側にそれぞれ1つずつ設けられている。各板ばね50には、この板ばね50が延びる長手方向の一端に振動体30に接続される接続部51が形成され、他端には、板ばね50がケース12の周壁面13の内面に取り付けられる取付部52が形成されている。これらの接続部51と取付部52との間をなす中間部53には、板ばね50の延びる長手方向を湾曲させた複数の湾曲部60,61,62,63が形成されている。
【0051】
接続部51と取付部52とは、振動体30の振動方向に交差する方向にて、振動体30を間に挟んだ一方側と他方側とで、接続部51が振動体30に接続され、取付部52が周壁面13に取り付けられる。接続部51は、板ばね50の一端が直線状に延びるようにして形成されていて、振動体30を構成する振動体30の座面36に固着される。板ばね50は、接続部51が位置する一方側の領域では、3つの湾曲部60,61,62によって、振動体30側から周壁面13側に向けて張り出すように形成されている。
【0052】
中間部53は、接続部51の位置から振動体30を迂回して振動体30よりも外側に向けて延び、振動体30よりも外側の領域にて、振動体30の振動方向と交差して延びている。板ばね50は、振動体30よりも外側の領域にて、一方側の領域から取付部52が位置する他方側の領域に向かうにつれて、振動体30側から周壁面13側に漸近するように斜めに傾けられて形成されている。そして、振動体30よりも外側の領域から取付部52までの範囲は、湾曲部63によって振動体30の中央に向けて大きく湾曲されている。
【0053】
取付部52は、板ばね50の他端が直線状に延びて形成されていて、ケース12の周壁面13の1つに固着される。
【0054】
なお、板ばねは一部材で形成されたものを使用してもよい。一部材で板ばねを形成する場合には、振動体30の両側に配置された板ばねの接続部51の位置で板ばねが連続されるように形成したり、取付部52の位置で板ばねが連続されるように形成したりする。板ばねを一部材で形成すると、振動発生装置1Aの部品数を減少させることができる。部品数の減少に伴って、組立工数が減少するため、組み立てを容易に行うことができると共に、製造コストを削減することができる。また、一部材で板ばねを形成すると、板ばねの剛性強度及び精度を安定させることができる。
【0055】
ダンパー部材70は、樹脂等によって帯状に形成された弾性部材であり、ダンパー部材70のばね定数は、板ばね50のばね定数よりも小さい。ダンパー部材70の材質は、板ばね50のばね定数よりもばね定数が小さいものであれば、樹脂には限定されないが、板ばね50に対して円滑に摺動する部材を選択することが好ましい。このダンパー部材70の共振周波数は、板ばね50の共振周波数よりも小さいことが必要であり、ダンパー部材70の共振周波数は、板ばね50の共振周波数の1/10以下に形成するとよく、1/10以下であれば、特に限定されない。
【0056】
このダンパー部材70は、2つの板ばね50に対応するように板ばね50ごとに設けられる。各ダンパー部材70は、基端部71が振動体30に取り付けられ、先端部72が板ばね50の中間部53に向けて延びていて、振動体30の取付部52が位置する他方側の端縁部と板ばね50の中間部53とを連絡した状態で配置される。
【0057】
基端部71は直線状に延びていて、振動体の4つの端縁部のうち、板ばね50の取付部52が設けられた他方側に位置する端縁部に接着剤等によって接着される。基端部71が接着される位置は、振動体30の中心よりも振動方向の外側の位置に左右対称となる位置である。ダンパー部材70は、基端部71よりも先端部72側の部位が、振動体30よりも外側に向けて延びていて、振動体30の近傍の部位73が、接続部51が位置する一方側の領域に向けて湾曲されている。湾曲された振動体30の近傍の部位73から先端部72までの部位74は直線状に延びていて、中間部53の内側から中間部53に対し斜めに傾けられている。先端部72は、中間部53の内面に対して摺動されるように接触しており、先端部72は、板ばね50との接触面積が振動体の振動に伴って変化する。
【0058】
こうしたダンパー部材70は、振動体30の振動に伴って先端部72と板ばね50との接触面積が変化することにより、板ばね50の振動特性を変化させている。具体的には、振動体30が振動方向の中央付近に位置するときには、板ばね50には負荷がかからず、板ばね50は変形していない状態となる。この状態では板ばね50はダンパー部材70から受ける力が小さい。そのため、板ばね50の振動特性は、荷重とたわみとの関係が直線的に変化する線形特性ばねに近似する特性となる。この状態では、先端部72と板ばね50との接触面積が小さくても、板ばね50はダンパー部材70から不必要な力が局部的に付与されることはない。
【0059】
これに対し、振動体30が振動方向のいずれかの方向に振れて振幅が大きくなると板ばね50は変形する。この状態では、板ばね50は、ダンパー部材70から受ける力が大きくなる。そのため、板ばね50の振動特性は、荷重とたわみとの関係が直線的な関係にはない非線形特性ばねとなる。この状態では、先端部72と板ばね50との接触面積が大きくなり、板ばね50がダンパー部材70からの力を局部的に受けることが防止される。
【0060】
板ばね50がダンパー部材70によって非線形特性のばねにされると、板ばね50の共振点がずらされると共に、加速度のピークが低下される。こうした作用によって、板ばね50に支持された振動体30は、過振することが防止される。
【0061】
ダンパー部材70を設けたことで、振動体30の過振を防止できることを表したのが、
図4及び
図5に示すグラフである。
【0062】
図4は、振動体30の振動数と加速度との関係について、振動体30を板ばね50だけで支持した場合と、ダンパー部材70を設けて振動体30を板ばね50で支持した場合とを比較したものである。グラフの横軸は振動体30の周波数であり、縦軸は加速度である。グラフの中で、実線で示したものがダンパー部材70を設けた場合であり、破線で示したものがダンパー部材70を設けずに板ばね50だけで振動体30を支持した場合である。また、グラフに示す2本の水平線L1,L2は、当該振動発生装置1Aによって発生させたい振動の加速度の上限と下限とを表している。下限の加速度は約7m/s
2であり、上限の加速度は約8m/s
2である。下限を表すL2よりも加速度が小さい場合には振動が小さく、こうした小さな振動しか発生しない振動発生装置を携帯端末に組み込んだ場合には、受信したことを使用者に適切に報知することができないことがある。これに対し、上限を表すL1よりも加速度が大きい場合には振動体30が過振してしまい、振動体30が板ばね50やハウジング10に干渉してノイズが発生してしまうことがある。L1とL2との間の領域が、当該振動発生装置1Aにとって最適な振動を発生する加速度の適性領域である。
【0063】
板ばね50だけで振動体30を支持した場合、破線で示すように、加速度は、周波数が140Hzと150Hzとの略中間の値のときに下限を表すL2を超えて適性領域に到達する。しかし、150Hzよりもやや小さな周波数のときに上限を表すL1を超えてしまう。そして、加速度は、周波数が約150Hzのときに10m/s
2をやや超えたピークに到達する。加速度は、150Hzを若干超えた周波数で再び適性領域に戻り、150Hzと160Hzとの略中間の値のとき下限を表すL2よりも降下する。このように、板ばね50だけで振動体30を支持した場合には、周波数が150Hz前後のときに過振が生じてしまう。
【0064】
これに対し、ダンパー部材70を設けて振動体30を支持した場合、実線で示すように、加速度は、周波数が150Hzと160Hzとの略中間の周波数のときに下限を表すL2を超える。そして、周波数が160Hzよりも若干小さな周波数のときに加速度の値はピークに到達するが、上限を表すL1よりも低い値にとどまる。加速度は、このピークを過ぎると急激に低下して下限を表すL2よりも低下する。このように、ダンパー部材70を設けると、共振現象が生じる周波数の値を大きくすると共に、共振点での加速度の値を低下させ、過振が生じることを防止する。
【0065】
ダンパー部材70を設けると、過振を防止するだけでなく加速度を適性領域にとどめておくことができる周波数の領域を広くすることができる。このことを示したのが
図5である。
図5の横軸は周波数を、縦軸は加速度をそれぞれ表し、破線は、板ばね50だけで振動体30を支持した場合を示し、実線はダンパー部材70を設けた場合を示している。各グラフにハッチングを施した部分は、振動体30の加速度が適性領域の範囲内にある周波数領域をそれぞれ表している。
【0066】
図5に示すように、板ばね50だけで振動体30を支持した場合、適性領域に加速度が存在する周波数領域は、140Hzと150Hzの略中間の周波数値のときと、150Hzを超えた周波数値のときの極めて狭い範囲だけである。これに対し、ダンパー部材70を設けた場合には、加速度が適性領域にとどまっている周波数領域は、150Hzよりも若干大きな周波数値から160Hzよりも若干小さな周波数値までの広範囲である。このように、ダンパー部材70を設けることで、広い周波数領域で振動体30を所望の大きさの加速度に振動させることができ、使い勝手のよい振動発生装置1Aを形成することができる。
【0067】
次に、ダンパー部材70以外の手段で振動体3の過振を防止する場合と、ダンパー部材70を使用して過振を防止する場合との比較について、
図6及び
図7を参照して説明する。
【0068】
図6に示すグラフの横軸は周波数を表し、縦軸は加速度を表している。また、実線はダンパー部材70を設けた場合、破線は高い粘度のグリスを充填した場合、一点鎖線は適切な粘度のグリスを充填した場合、二点鎖線はゴム等のクッション材を振動体30の振動方向の両脇に取り付けた場合をそれぞれ示している。
【0069】
ダンパー部材70を設けた場合には、上記のように、周波数が150Hzをやや超えた値から160Hzよりも若干低い値の間の広い周波数領域において、加速度が適性領域に存在する。
【0070】
これに対し、粘度の高いグリスを充填した場合には、加速度の下限を表すL2にさえ到達せず、加速度の値のピークが6m/s
2までしか上昇しない。適切な粘度を有するグリスを充填した場合には、加速度は、周波数が150Hz前後で適性領域に存在し、しかも共振点での加速度のピークは、上限を表すL1よりも低い値までしか上がらないことが分かる。しかし、グリスは温度によって粘度が変化するため、振動発生装置1Aの温度によって、加速度が適性領域に入ったり入らなかったりするという問題がある。また、振動体30の振動に伴ってグリスが飛散すると、Q値を変化させてしまうという問題点も存在する。
【0071】
クッション材を用いた場合、共振点を150Hzの近傍から160Hzの近傍に変化させることはできる。加速度自体の値は、周波数が150Hzを超えたあたりで下限を表すL2を超えて適性領域に入る。しかし、加速度は、周波数が150Hzと160Hzとの略中間の値のときに上限を表すL1を超えてしまい、160Hzの近傍でピークに到達する。そして、加速度は、周波数が160Hzを超えると急激に降下し、上限を表すL1よりも低い値となり、さらに下限を表すL2よりも降下する。
【0072】
クッション材を用いた場合、振動体30が最大振幅の近傍に達すると、振動体30がクッション材に突き当たり、振動体30の振動が強制的に制限される。そのため、振動体30がハウジング10の周壁面13と干渉することを防止して、振動体30とハウジング10の周壁面13とが干渉することにより発生する異音を防止することができる。しかし、ゴム等のクッション材は時間の経過と共に劣化してしまう。クッション材が劣化することに伴って、振動体30が劣化したクッション材に干渉して別の異音が発生する。
【0073】
次に、
図7を参照して加速度が適性領域に存在する周波数の範囲について説明する。
【0074】
ダンパー部材70を用いた場合、上述したように、広い周波数領域で加速度を適性領域にとどめておくことができる。これに対し、高い粘度のグリスを充填した場合には、加速度を適性領域に到達させること自体ができない。適切な粘度を有するグリスを充填した場合には、比較的広い周波数領域で加速度を適性領域にとどめておくことはできる。しかし、上述したように、グリスは温度の変化に伴い粘度が変化するという問題があるし、振動体30の振動に伴って飛散するという問題点も存在する。クッション材を用いた場合、加速度は、周波数が150Hzを超えた狭い範囲と、160Hz近傍の極めて狭い範囲しか適性領域に存在しない。
【0075】
こうした現象を踏まえると、過振を防止する手段としては、加速度が適性領域にとどまる周波数領域の点からも、ダンパー部材70を用いた場合が他の手段に比べて優れていることが分かる。
【0076】
以上の各構成部品は、底面11に設けられたコイルホルダ15にコイル20が保持され、かつ、ケース12の周壁面13に振動体30が板ばね50によって支持された状態で、底面11にケース12を被せて組み立てられる。組み立てられた状態では、
図2に示すように、コイル20の上面と振動体30の下面には一定の隙間が形成される。また、振動体30の上面と天面14との間にも一定の隙間が形成される。
【0077】
こうした振動発生装置1Aによれば、コイル20に電流が流れると、コイル20が磁界を形成する。コイル20が形成する磁界と、振動体30のマグネット35が形成する磁界との相互作用によって、振動体30はこの振動体30の長尺方向に往復振動する。振動体30は、コイル20とケース12の天面14との間で板ばね50によって支持されているので円滑に往復振動する。この際、ダンパー部材70が板ばね50の振動特性を非線形特性にするので、振動体30の過振を防止する。
【0078】
以上では、第1実施形態に係る振動発生装置1Aについて、ダンパー部材70の基端部71が振動体30に取り付けられ、先端部72が板ばね50に対して摺動する場合について説明した。しかし、ダンパー部材は、板ばね50に基端部が固定され、先端部が振動体30に対して摺動するように構成してもよい。
【0079】
[第2実施形態]
第2実施形態では、振動発生装置1Bが別の実施形態に係るダンパー部材80を備えている。なお、第2実施形態の振動発生装置1Bは、ダンパー部材80以外の構成は第1実施形態の振動発生装置1Aと同様である。そのため、第2実施形態の振動発生装置1Bについては、第1実施形態の振動発生装置1Aと同一の構成には、図面に同一の符号を付して概略のみを説明し、異なる構成のみについて詳細に説明する。
【0080】
第2実施形態の振動発生装置1Bは、
図8及び
図9に示すように、振動発生装置1Bの外殻をなす非磁性体で形成された高さの低いハウジング10を備えている。ハウジング10は、底面11と底面11に被せるケース12とから構成され、ケース12は、周囲を囲む周壁面13と、上部を覆う天面14とから構成されている。
【0081】
ハウジング10の内部には、底面11に取り付けられたコイル20と、コイル20と対向して配置された振動体30と、振動体30をケース12の周壁面13に対して支持する板ばね50とが設けられている。
【0082】
コイル20は、空芯渦巻きコイル20でありハウジング10の底面11に保持されている。振動体30は、底面11と平行をなす平面内を往復振動する振動子である。振動体30は、外形が長方形又は略長方形に形成されていて、長尺方向である横方向の両側に配置される一対のウエイト31と、ウエイト31の間に配置された一対のマグネット35と、マグネット35の上から被せるカバー40とによって一体的に構成されている。
【0083】
ウエイト31は、ウエイト側部32とウエイト下部33とによってアルファベットのL字状にそれぞれ形成されている。各ウエイト31は、左右対称に配置されていて、ウエイト下部33の先端同士が一定の間隔を空けて相互に対向している。なお、各ウエイト側部32には、合わせ溝34がそれぞれ形成されている。
【0084】
マグネット35は、直方体状にそれぞれ形成されていて、その長尺方向が、振動体30の短尺方向に向けられて、左右対称となる位置でウエイト31同士の間に配置される。これら一対のマグネット35の間には、一定の隙間が形成され、後に説明するダンパー部材80の基端部81がこの隙間に挿入される。
【0085】
カバー40は、磁性体で形成されている。このカバー40は、マグネット35が配置されたウエイト31同士の間の領域を上から覆う本体部41と、本体部41の両側縁から左右の外側に向けてそれぞれ延びる腕部42とから形成されている。この腕部42は、各ウエイト31に形成された合わせ溝34にはめ込まれる。
【0086】
振動体30には、さらに、板ばね50が接続される座面36が形成されている。座面36は、ウエイト下部33が配置された側縁と対向する側縁にて、振動体30の長尺方向の中心を境に左右対称となるように、中心よりもやや外側の位置にそれぞれ形成されている。
【0087】
板ばね50は、振動体30が振動する方向の両側で、振動体30と周壁面13との間に配置されていて、振動体30を周壁面13に支持している。この板ばね50は、振動体30に接続される接続部51と、周壁面13に取り付けられる取付部52と、振動体30を迂回して延び、接続部51と取付部52との間をなす中間部53とから形成されている。板ばね50の接続部51と取付部52とは、振動体30の振動方向に対して交差する方向に位置され、振動体30を間に挟んだ一方側と他方側とで、接続部51が振動体30に接続され、取付部52が周壁面13に取り付けられている。
【0088】
なお、この板ばねについても、振動体30の両側に配置された形態のものを一部材で形成したものを使用してもよい。
【0089】
ダンパー部材80は、こうした板ばね50と振動体30との間に設けられる。ダンパー部材80は樹脂等で帯状に形成された部材であり、直線状に延びる基端部81と、基端部81に対して直角又は略直角をなして直線状に延びる先端部82とから形成されている。基端部81と先端部82とは、ダンパー部材80を円弧状に湾曲した湾曲部83によって連絡されている。
【0090】
このダンパー部材80は、振動体30の両側に配置されている板ばね50に対応して一対設けられる。各ダンパー部材80は、基端部81が振動体30のマグネット35同士の間に挿入されて振動体30に保持される。各ダンパー部材80の先端部82は、板ばね50の取付部52が位置される他方側で、振動体30から板ばね50の取付部52に向けて突出される。なお、ダンパー部材80が振動体30から突出される根本の部位では、基端部81が、ウエイト下部33の先端同士の間に形成されている隙間に挿入され、ウエイト31に挟み込まれて保持される。
【0091】
先端部82は、振動体30の中央から振動方向の外側にそれぞれ向けられていて、先端部82の外面が板ばね50の取付部52の内面と接触している。各先端部82は、弱い力で取付部52側に向けてそれぞれ付勢されている。
【0092】
こうしたダンパー部材80は、振動体30が往復振動することに伴って、振動体30と一体的に振動し、先端部82が板ばね50の取付部52に対して摺動する。ダンパー部材80は、樹脂等で形成されているので、先端部82が取付部52に対して摺動する際には、先端部82と取付部52との間に生じる摩擦力が小さく抑えられる。ダンパー部材80と取付部52との間に生じる摩擦力が小さいので、ダンパー部材80は、振動体30が振動しているときには、振動体30の振動に悪影響を与えることがない。一方、コイル20に流れる電流が停止されて振動体30の振動が停止されるときには、振動している振動体30を短時間で静止させることができる。
【0093】
なお、振動体30の振動を静止させる手段としては、グリスや磁性流体等を充填し、グリスや磁性流体等の抵抗を利用して振動体を静止させるものが従来から存在する。しかしながら、グリスや磁性流体等を利用する手段では、グリスや磁性流体等が振動体30の振動にともなってハウジング10内に飛散してQ値を変化させてしまうという問題がある。また、グリスや磁性流体等の流体は、温度によって粘度が変化するため、振動体30を静止させる作用が温度によって変化してしまうという問題点もある。
【0094】
ダンパー部材80は、上記のように樹脂等で形成しているため、ハウジング10の内部をQ値を変化させることなく振動体30を速やかに静止させることができる。また、温度の変化によって振動体30を静止させる作用に変化がほとんど生じないという特有の効果を奏することができる。
【0095】
以上、基端部81を振動体30に取り付け、先端部82を板ばね50の取付部52に向けて延ばした態様を例に説明したが、基端部を取付部52に取り付け、先端部を振動体30に向けて延ばし、先端部が振動体30の側縁部に対して摺動するように形成してもよい。
【0096】
なお、ダンパー部材70を備えた振動発生装置1Aと、ダンパー部材80を備えた振動発生装置1Bとをそれぞれ個別に説明したが、ダンパー部材70とダンパー部材80との双方を設けて振動発生装置を形成してもよい。