特許第5943438号(P5943438)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5943438炭化水素前駆体物質を利用するグラフェン系炭素粒子の作製
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5943438
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】炭化水素前駆体物質を利用するグラフェン系炭素粒子の作製
(51)【国際特許分類】
   C01B 31/02 20060101AFI20160621BHJP
【FI】
   C01B31/02 101Z
【請求項の数】18
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-533366(P2014-533366)
(86)(22)【出願日】2012年9月28日
(65)【公表番号】特表2014-528897(P2014-528897A)
(43)【公表日】2014年10月30日
(86)【国際出願番号】US2012057811
(87)【国際公開番号】WO2013049498
(87)【国際公開日】20130404
【審査請求日】2014年4月18日
(31)【優先権主張番号】13/249,315
(32)【優先日】2011年9月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/309,894
(32)【優先日】2011年12月2日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】399074983
【氏名又は名称】ピーピージー・インダストリーズ・オハイオ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PPG Industries Ohio,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ハン, チェン−ハン
(72)【発明者】
【氏名】バニエル, ノエル アール.
【審査官】 佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】 特表平09−505551(JP,A)
【文献】 特開2007−268692(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0055017(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0045116(US,A1)
【文献】 米国特許第05851507(US,A)
【文献】 特表平11−502760(JP,A)
【文献】 特開平07−187633(JP,A)
【文献】 特開2009−143799(JP,A)
【文献】 特開2011−178617(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/086391(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 31/00−31/36
WPI
CiNii
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフェン系炭素粒子を作製する方法であって、
2炭素断片化学種を形成可能である炭化水素前駆体物質またはメタンを含む炭化水素前駆体物質を熱ゾ−ン(20)に導入する工程;
該熱ゾーン(20)において3,500℃よりも高い温度に該炭化水素前駆体物質を熱し、該炭化水素前駆体物質から該グラフェン系炭素粒子を形成させる工程;および
該グラフェン系炭素粒子を収集する工程を含み、
ここで、該グラフェン系炭素粒子は、3:1より大きい平均アスペクト比を有しそして1グラムにつき少なくとも70平方メートルのB.E.T.比表面積を有する、
方法。
【請求項2】
前記炭化水素前駆体物質は、n−プロパノール、エタン、エチレン、アセチレン、塩化ビニル、1,2−ジクロロエタン、アリルアルコール、プロピオンアルデヒドまたは臭化ビニルを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記炭化水素前駆体物質は、n−プロパノールを含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記炭化水素前駆体物質は、メタンを含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記熱ゾーン(20)は、実質的に不活性雰囲気である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記熱ゾーン(20)は、プラズマ(29)を含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
不活性ガスを前記プラズマ(29)に導入する工程をさらに含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記不活性ガスおよび炭化水素前駆体物質は、共に前記プラズマ(29)に導入される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記不活性ガスは、前記炭化水素前駆体とは別に、前記プラズマ(29)に導入される請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記不活性ガスは、アルゴン、水素、ヘリウムまたは窒素を含む請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記グラフェン系炭素粒子は、平均30または30より小さい炭素原子層を有する請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記グラフェン系炭素粒子は、10ナノメートルより小さい厚みを有する請求項1に記載の方法。
【請求項13】
集められた前記グラフェン系炭素粒子は、前記炭化水素前駆体物質の少なくとも10パーセントである重量を有する請求項1に記載の方法。
【請求項14】
グラフェン系炭素粒子を作製する装置であって、
2炭素断片化学種を形成可能な炭化水素前駆体物質またはメタンを含む炭化水素前駆体物質の源;
収束要素(22)を含むプラズマチャンバー(20);および
該炭化水素前駆体物質を該プラズマチャンバー(20)に供給するための少なくとも1つの供給ライン(50)を含み、
該炭化水素前駆体物質が該プラズマチャンバー(20)内で3,500℃よりも高い温度に加熱されて、該グラフェン系炭素粒子を形成することを特徴とする、
装置。
【請求項15】
前記炭化水素前駆体物質は、n−プロパノール、エタン、エチレン、アセチレン、塩化ビニル、1,2−ジクロロエタン、アリルアルコール、プロピオンアルデヒドまたは臭化ビニルを含む請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記炭化水素前駆体物質は、n−プロパノールを含む請求項14に記載の装置。
【請求項17】
前記炭化水素前駆体物質は、メタンを含む請求項14に記載の装置。
【請求項18】
前記プラズマチャンバーに不活性ガスを供給するための少なくとも1つの不活性ガス供給ライン(14)をさらに含む請求項14に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明はグラフェン系(graphenic)炭素粒子に関し、より詳細には炭化水素前駆体物質を利用するこのような粒子の作製に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景情報)
グラフェンは1原子層である構造を持つ炭素の同素体である。平面構造は、蜂の巣状結晶格子に密集して充填されたsp−結合炭素原子を含んでいる。互いに積み重なったsp−結合炭素原子の厚さ1原子の平面シートを平均してほんのわずかにしか持たないことにより、グラフェン系物質は、この理想的な構造に近づく。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の局面はグラフェン系炭素粒子を作製する方法を提供することである。この方法は炭化水素前駆体物質を熱ゾーンに導入すること、炭化水素前駆体物質からグラフェン系炭素粒子を形成するために炭化水素前駆体物質を熱ゾーンで少なくとも1,000℃の温度に加熱すること、およびグラフェン系炭素粒子を収集することを含む。
【0004】
本発明の別の局面はグラフェン系炭素粒子を作製するための装置を提供することである。この装置は炭化水素前駆体物質の源、プラズマチャンバー、および少なくとも1つの炭化水素前駆体物質をプラズマチャンバーに供給するための供給ラインを含む。
【0005】
これらおよび他の本発明の局面は下記の説明により明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、本発明の実施形態に従って炭化水素前駆体物質からグラフェン系炭素粒子を作製する方法を例証している概略フローチャートである。
図2図2は、本発明の実施形態に従ってグラフェン系炭素粒子を作製するためのプラズマシステムの部分的な概略縦断面図である。
図3図3は、本発明の実施形態に従ってn−プロパノール炭化水素前駆体物質から作製されたグラフェン系炭素粒子の試料についてのラマンシフト対反射率のプロットである。
図4図4および5は、図3に対応するグラフェン系炭素粒子のTEM顕微鏡写真である。
図5図4および5は、図3に対応するグラフェン系炭素粒子のTEM顕微鏡写真である。
図6図6は、エタノール前駆体物質から作製されたグラフェン系炭素粒子の試料についてのラマンシフト対反射率のプロットである。
図7図7および8は、図6に対応するグラフェン系炭素粒子のTEM顕微鏡写真である。
図8図7および8は、図6に対応するグラフェン系炭素粒子のTEM顕微鏡写真である。
図9図9は、イソ−プロパノール前駆体物質から作製された炭素粒子の試料についてのラマンシフト対反射率のプロットである。
図10図10および11は、図9に対応する炭素粒子のTEM顕微鏡写真である。
図11図10および11は、図9に対応する炭素粒子のTEM顕微鏡写真である。
図12図12は、n−ブタノール前駆体物質から作製された炭素粒子の試料についてのラマンシフト対反射率のプロットである。
図13図13および14は、図12に対応する炭素粒子のTEM顕微鏡写真である。
図14図13および14は、図12に対応する炭素粒子のTEM顕微鏡写真である。
図15図15は、n−ペンタノール前駆体物質から作製された炭素粒子の試料についてのラマンシフト対反射率のプロットである。
図16図16および17は、図15に対応する炭素粒子のTEM顕微鏡写真である。
図17図16および17は、図15に対応する炭素粒子のTEM顕微鏡写真である。
図18図18は、n−ヘキサン前駆体物質から作製された炭素粒子の試料についてのラマンシフト対反射率のプロットである。
図19図19および20は、図18に対応する炭素粒子のTEM顕微鏡写真である。
図20図19および20は、図18に対応する炭素粒子のTEM顕微鏡写真である。
図21図21は、本発明の実施形態に従ってメタン前駆体物質から作製されたグラフェン系炭素粒子の試料についてのラマンシフト対反射率のプロットである。
図22図22は、図21に対応するグラフェン系炭素粒子のTEM顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(詳細な説明)
本発明の特定の実施形態はグラフェン系炭素粒子を作製するための方法および装置、ならびにこのような方法および装置により作製されるグラフェン系炭素粒子に関する。本明細書において使用される場合、用語「グラフェン系炭素粒子」は、蜂の巣状結晶格子に密集して充填されたsp−結合炭素原子の厚さ1原子の平面シートを1層または1層より多く含む構造を持つ炭素粒子を意味する。重なっている層の平均数は100より小さい、たとえば50より小さくてもよい。特定の実施形態では、重なっている層の平均数は30または30より小さい。グラフェン系炭素粒子は実質的に平らであり得る。しかしながら、少なくとも平面シートの一部は実質的に曲がっている、丸まっている、または歪んでいることがあり得る。粒子は一般的に回転楕円体または等軸形態を有しない。
【0008】
特定の実施形態では、本発明に従って作製されたグラフェン系炭素粒子は炭素原子層に対し垂直方向に測定された10ナノメートル以下の厚さ、たとえば5ナノメートル以下、または、特定の実施形態では3もしくは1ナノメートル以下の厚さを有する。特定の実施形態では、グラフェン系炭素粒子は厚さ1原子層から10、20または30原子層、またはそれより大きくてもよい。
【0009】
特定の実施形態では、グラフェン系炭素粒子は炭素原子層に平行方向に測定された少なくとも50ナノメートルの幅および長さ、たとえば100ナノメートルより大きい、ある場合では100ナノメートルより大きく500ナノメートル以下、または100ナノメートルより大きく200ナノメートル以下の幅および長さを有する。グラフェン系炭素粒子は3:1より大きい、たとえば10:1より大きい比較的高いアスペクト比(アスペクト比は粒子最長の寸法と粒子最短の寸法の比として定義されている)を持つ超薄のフレーク、小板(platelet)またはシートの形で提供され得る。
【0010】
特定の実施形態では、グラフェン系炭素粒子は比較的低い酸素含有量を有する。たとえば、グラフェン系炭素粒子は5ナノメートル以下または2ナノメートル以下の厚さを有する時でさえ、2原子重量パーセント以下、たとえば1.5もしくは1原子重量パーセント以下、または0.6原子重量以下、たとえば約0.5原子重量パーセントの酸素含有量を有することがあり得る。グラフェン系炭素粒子の酸素含有量はたとえばD. R. Dreyerら、Chem. Soc. Rev. 39, 228−240 (2010).に記載されているX線光電子分光法を用いて決定することができる。
【0011】
特定の実施形態では、グラフェン系炭素粒子は、少なくとも1グラムにつき50平方メートル、たとえば1グラムにつき70から1000平方メートル、または特定の場合では、1グラムにつき200から1000平方メートル、または1グラムにつき200から400平方メートルのB.E.T.比表面積を有する。本明細書において使用される場合、用語「B.E.T.比表面積」とは、定期刊行物“The Journal of the American Chemical Society”, 60, 309 (1938)に記載されているBrunauer−Emmett−Teller方法に基づくASTMD 3663−78 standardを基準として窒素吸着により決定される比表面積をいう。
【0012】
特定の実施形態では、グラフェン系炭素粒子は少なくとも1.1、たとえば、少なくとも1.2または1.3のラマン分光法2D/Gピーク比を持つ。本明細書において使用される場合、用語「2D/Gピーク比」は2692cm−1の2Dピークの強度と1,580cm−1のGピークの強度の比を参照している。
【0013】
特定の実施形態では、グラフェン系炭素粒子は比較的低い嵩密度を有している。たとえば、グラフェン系炭素粒子は0.2g/cmより低い、たとえば0.1g/cm以下の嵩密度(タップ密度)を有することにより特徴づけられる。本発明のために、グラフェン系炭素粒子の嵩密度は0.4グラムのグラフェン系炭素粒子を判読可能な目盛を有するガラスメスシリンダーに配列させることにより決定される。グラフェン系炭素粒子をシリンダー内に配列させるためにシリンダーはおおよそ1インチ上げられ100回シリンダーの台座を固い表面に打つことで軽くたたかれる。それから粒子の体積が測定され、および0.4グラムを測定された体積で割ることにより、嵩密度は計算される。この嵩密度はg/cmによって表現される。
【0014】
特定の実施形態では、グラフェン系炭素粒子は、グラファイト粉末および特定の種類の実質的に平らなグラフェン系炭素粒子の圧縮密度および緻密化率(percent densification)より小さい圧縮密度および緻密化率を有する。より低い圧縮密度およびより低い緻密化率はそれぞれ現在、より高い圧縮密度およびより高い緻密化率を示すグラフェン系炭素粒子よりもよりよい分散および/またはレオロジー的な性質に貢献すると考えられる。特定の実施形態では、グラフェン系炭素粒子の圧縮密度は0.9または0.9より小さい、たとえば0.8より小さい、0.7より小さい、たとえば0.6から0.7である。特定の実施形態では、グラフェン系炭素粒子の緻密化率は40パーセントより小さい、たとえば30パーセントより小さい、たとえば25から30パーセントである。
【0015】
本発明のために、グラフェン系炭素粒子の圧縮密度は一定質量の粒子の測定された厚さから圧縮後に計算される。詳細には、測定された厚さは0.1グラムのグラフェン系炭素粒子を1.3センチメートル型において15,000ポンドの力で冷圧に45分間さらすことにより決定される。この接地圧は500メガパスカルである。それからグラフェン系炭素粒子の圧縮密度は、この測定された厚さから下記の式に従って計算される。
【0016】
【数1】
【0017】
それからグラフェン系炭素粒子の緻密化率は上述のように決定される計算されたグラフェン系炭素粒子の圧縮密度とグラファイトの密度2.2g/cmの比として決定される。
【0018】
特定の実施形態では、グラフェン系炭素粒子は、少なくとも100マイクロジーメンス、たとえば少なくとも120マイクロジーメンス、たとえば少なくとも140マイクロジーメンスの測定バルク液体導電率(bulk liquid conductivity)を有する。このバルク液体導電率は、混合後ただちにおよび後ほどの時点で、たとえば10分、または20分、または30分、または40分で測定される。本発明のために、グラフェン系炭素粒子のバルク液体導電率は次のように決定される。はじめに、ブチルセロソルブ中でグラフェン系炭素粒子の0.5%溶液を含む試料を音波発生装置槽により30分間音波処理する。超音波処理の次にただちに、試料を標準較正電解導電率セル(K=1)に入れる。Fisher Scientific AB 30 conductivity meterは試料の導電率を測定するために試料に導入される。導電率は約40分間にわたってプロットされる。
【0019】
特定の実施形態に従って、導電性グラフェン系炭素粒子の間で長領域相互連結結合性(long range interconnectivity)として定義される浸出(percolation)が起こる。このような浸出により、グラフェン系粒子が分散した物質の抵抗率は減少し得る。導電性グラフェン系粒子は、粒子が連続なまたはほとんど連続なネットワークを形成するように、複合マトリックスの中に最小体積を占めることがあり得る。このような場合、グラフェン系炭素粒子のアスペクト比は、浸出に必要とされる最少体積に影響を及ぼし得る。さらに、グラフェン系炭素粒子の表面エネルギーはマトリックス物質の表面エネルギーと同一または類似であり得る。さもなければ、粒子を処理されたとき、粒子が凝集または分離する傾向があり得る。
【0020】
本発明の実施形態に従って、グラフェン系炭素粒子は熱ゾーンで高温に熱された炭化水素前駆体物質から作製される。炭化水素前駆体物質は炭素および水素を含む任意の有機分子であり、および、このような炭化水素前駆体物質は本明細書で記述されるように不活性条件の下で高めの温度まで熱せられたとき、2炭素断片化学種(two−carbon−fragment species)、すなわち互いに結合された2つの炭素原子を有する化学種、を生ずる分子構造を有し得る。2炭素断片化学種は、炭素のみから構成され得、または特定の実施形態では、少なくとも1つの水素原子を含み得る。任意の特定の理論により拘束されることを意図しないものの、高い熱ゾーン温度で、分解が起こると、水素原子は完全にまたは部分的に失われ得る。本発明の実施形態に従って、残留2炭素断片化学種は比較的高い生成物収率でグラフェン系炭素粒子を形成する。
【0021】
特定の実施形態では、熱処理過程の間で2炭素断片化学種を作製する小分子炭化水素前駆体物質は、上質のグラフェン系炭素粒子を作製するために用いられる。炭化水素前駆体物質の例には、n−プロパノール、エタン、エチレン、アセチレン、塩化ビニル、1,2-ジクロロエタン、アリルアルコール、プロピオンアルデヒド、臭化ビニルおよび同様なものを含む。熱分解で2炭素断片化学種が得られる他の供給物質もまた用いられ得る。2炭素断片化学種を形成できるいくつかの炭化水素前駆体の構造は下に示されている。
【0022】
【化1】
【0023】
【化2】
【0024】
本発明の実施形態に従って、グラフェン系炭素粒子は熱ゾーンで高温に熱せられるメタン前駆体物質から作製される。本明細書において使用される場合、用語「メタン前駆体物質」は、有意な量のメタン、一般的に少なくとも50重量パーセントメタンを含む物質を意味する。たとえば、メタン前駆体物質は少なくとも95もしくは99パーセント純度またはそれより高い純度のガス状または液体メタンを含み得る。特定の実施形態において、メタン前駆体は少なくとも99.9または99.99パーセントの純度を有する。実施形態においてメタン前駆体は天然ガスの形で提供され得る。
【0025】
任意の特定の理論により拘束されることを意図しないものの、高い熱ゾーン温度で、メタンの分解または熱分解は2炭素断片化学種の形成を含み得る:
【0026】
【化3】
【0027】
【0028】
特定の実施形態では、低濃度のさらなる供給物質またはB,N,O,F,Al,Si,P,Sおよび/もしくはLiの原子を含むドーパントは低水準のドーピング原子または複数のドーピング原子を含むドープされたグラフェンを作製するために、熱ゾーンで導入され得る。ドーパント供給物質は一般に、メタンの濃度と比較して15重量パーセントより小さく含んでいる。グラフェンの官能基化またはドーピングも同様に、過程の冷却器ゾーン、たとえば、冷却位置またはその近くでこれらのドーパントまたは反応性有機分子を導入することにより達成され得る。たとえば、冷却段階で低濃度酸素を導入することにより、ヒドロキシル、エポキシおよび/またはカルボキシル基を有するグラフェンの官能基化が生じ得る。
【0029】
図1は本発明の方法の特定の実施形態が描かれているフローチャートである。本発明に従って選択された少なくとも1つの炭化水素前駆体物質が供給物質として提供される。本発明の特定の方法に従って、炭化水素前駆体供給物質は不活性キャリアガスと接触する。適切な不活性キャリアガスはアルゴン、水素、ヘリウム、窒素およびこれらの組み合わせを含むものの、これらに制限されない。
【0030】
次に、本発明の特定の実施形態に従って、水素前駆体物質は、熱ゾーン、たとえば、プラズマシステムにより熱せられる。特定の実施形態では、水素前駆体物質は、1,000℃から20,000℃の範囲の温度、たとえば1,200℃から10,000℃の範囲の温度に熱せられる。たとえば、熱ゾーンの温度は、1,500から8,000℃、たとえば2,000から5,000℃に及ぶ、または3,500℃より大きく10,000℃に及び得る。本発明の実施形態に従って、熱ゾーンはプラズマシステムにより生成し得るものの、任意の他の適切な熱システムが熱ゾーン、たとえば電気で熱せられる管状炉などを含む様々な型の炉を作り出すために用いられ得ると理解されている。
【0031】
本発明の特定の方法では、ガス状流(gaseous stream)は1または1より多い冷却流と接触する。この冷却流は少なくとも1つの冷却流注入開口部を通してプラズマチャンバーに注入される。たとえば、冷却流はガス状流内で冷却流の互いの衝突が生じる流量および注入角で注入される。冷却流は形成を促進しまたはグラフェン系炭素粒子の粒子サイズもしくは形態を調節するためにガス状流を冷やすことがあり得る。冷却流に使用される適切な物質は、不活性ガス、たとえば、アルゴン、水素、ヘリウム、窒素などを含むものの、これらに限られない。
【0032】
特定の実施形態では、さまざまな冷却流の特定の流量および注入角は変化し得る、およびガス状流内で互いに衝突しガス状流が急速に冷やされる結果となり得る。たとえば、グラフェン系炭素粒子が形成される前、間および/または後にガス状流の急速冷却が起こることにより、冷却流は断熱膨張ではなく希釈によって、冷却流は主としてガス状流を冷やし得る。特定の実施形態では、粒子が以下で記述する収束要素(converging member)、たとえば収束−発散ノズルを通り抜ける前にこのような冷却が起こり得る。
【0033】
本発明の特定の実施形態では、ガス状生成物流が冷却流と接触した後で、超微細粒子はプラズマシステムがそれらのファウリングを最小限にするように設計されている収束要素を通り抜け得る。特定の実施形態では、収束要素は収束−発散(ドラバル)ノズルを含む。これらの実施形態では、収束−発散ノズルは特定の程度まで生成物流を冷やすために働くものの、冷却流はグラフェン系炭素粒子の相当な量をノズルの上流で作製するように、冷却の大部分を行う。これらの実施形態では、収束−発散ノズルは主として、そこで物質の滞留時間を増加させることにより、より高い圧で反応器の作動を可能にするチョーク位置として働き得る。
【0034】
図1に示されるように、本発明の特定の実施形態では、グラフェン系炭素粒子がプラズマシステムを出た後で、それらは集められる。任意の適した方法は、グラフェン系炭素粒子をガス流、たとえば、バッグフィルター、サイクロン分離器または基質上の沈殿物からグラフェン系炭素粒子を分離するために用いられる。
【0035】
本発明の実施形態に従って、比較的高い生成物収率が達成される。たとえば、集められたグラフェン系粒子の重量は、プラズマシステムに供給される炭化水素前駆体物質の重量の少なくとも10または12パーセントであり得る。
【0036】
図2は本発明の特定の実施形態に従ってグラフェン系炭素粒子を作製するための装置の部分的な概略断面図である。プラズマチャンバー20は図2に示される実施形態において炭化水素前駆体物質をプラズマチャンバー20に導入するために用いられる供給注入口50を含むと規定している。もう1つの実施形態では、供給注入口50は供給物質の分離注入口(示されていない)と取り替えられ得る。少なくとも1つのキャリアガス供給注入口14もまた提供され、キャリアガスは矢印30の方向にプラズマチャンバー20へと流れる。キャリアガスおよび炭化水素前駆体物質はプラズマ29へと流れるガス流を形成する。冷却注入口23および排出口25は、二重壁プラズマチャンバー20に存在し得る。これらの実施形態では、冷却剤の流れは矢印32および34により示されている。
【0037】
図2に示されている実施形態では、プラズマトーチ21が提供されている。プラズマチャンバー20の注入口を通して流れが供給されているプラズマ29の内部もしくは近くで、トーチ21は供給物質を熱的に分解、または気化させ得る。図2に見られるように、特定の実施形態では、アークがプラズマ発生器の環状陽極13またはトーチに取り付いている場所の下流で、供給物質は注入される。
【0038】
プラズマは少なくとも部分的に(1から100パーセント)イオン化された高温発光ガスである。プラズマはガス原子、ガスイオンおよび電子から構成される。熱プラズマはガスを電子アークに通すことにより、作り出すことができる。電子アークはアークを通してマイクロセカンド内で非常に高い温度まで抵抗加熱および放射加熱により急速にガスを熱する。プラズマは9,000ケルビンより上の温度でしばしば発光する。
【0039】
プラズマは任意の種々のガスにより作製できる。ガスがたとえばアルゴン、ヘリウム、窒素、水素などのように不活性であり得るとき、このことによりプラズマ内で起こる任意の化学反応の発生を良好に調節することができる。本発明に従って、グラフェン系炭素粒子を作製するために、このような不活性ガスが使われ得る。図2では、プラズマガス供給注入口が31に描かれている。
【0040】
ガス状生成物流がプラズマ29から出るとき、このガス状生成物流はプラズマチャンバー20の排出口に向かう。冷却流を注入する前にさらなる流を反応チャンバーに必要に応じて注入することができる。さらなる流のための供給注入口は図2において33に示されている。
【0041】
図2に見られるように、本発明の特定の実施形態では、ガス状流は複数の冷却流と接触している。この冷却流はプラズマチャンバー20の周辺に位置している複数の冷却流注入部位40を通って矢印41の方向にプラズマチャンバー20に入る。以前に示したように、冷却流の特定の流量および注入角により、ガス状流内で互いに冷却流41が衝突する結果となり得る。特定の場合では、ガス状流の中央または中央に近いところで、グラフェン系炭素粒子の粒子サイズおよび/または形態を調節するためにガス状流が急速に冷却される結果となる。このことによりガス状流が希釈によって冷却される結果となり得る。
【0042】
本発明の特定の方法では、ガス状流が冷却流に接触することにより、グラフェン系炭素粒子の形成および/またはサイズもしくは形態が調節される結果となり得る。この炭素粒子は収束要素を通り抜けている。本明細書において使用される場合、用語「収束要素」は、収束要素の上流と下流の差に圧力をかけることで、プラズマチャンバーでの流れの滞留時間を調節することにより、そこを通る流路を制限する装置を参照する。
【0043】
特定の実施形態では、収束要素は、収束−発散(ドラバル)ノズル、たとえば図2で描かれている、プラズマチャンバー20の排出口内に位置しているものを含む。ノズルの収束または上流部分、すなわち、収束要素はガス流路を制限しおよびプラズマチャンバー20内で物質の滞留時間を調節する。ノズル22の収束部位を通るときに流れの断面サイズにおいて起こる収縮により、少なくとも特定の流れの運動は回転および振動運動を含むランダムな方向からプラズマチャンバー軸に平行な直線運動に変わると考えられる。特定の実施形態では、プラズマチャンバー20の寸法および物質流は制限されたノズル喉内で音速を達成するように選ばれる。
【0044】
制限流(confined stream of flow)がノズル22の発散または下流部位に入るとき、ノズル排出口の円錐壁に沿って体積が次第に増加する結果、この制限流は圧力の超高速な減少にさらされる。ノズル寸法を適切に選択することにより、プラズマチャンバー20は望まれる滞留時間を達成するために、大気圧もしくは大気圧よりもわずかに小さい圧、または特定の場合では加圧条件で作動することができる。他方ノズル22の下流にあるチャンバー26は真空生成装置、たとえば真空ポンプ60の働きにより真空圧に維持され得る。ノズル22を通る通路の次に、グラフェン系炭素粒子はクールダウンチャンバー26に入り得る。
【0045】
図2に示されるノズルは、収束部位および下流の発散部位を含むものの、他のノズル構成も使われ得る。たとえば、下流の発散部位は直線部位と置き換えられ得る。冷却流は収束部位から直線部位への移行またはその近くで導入され得る。
【0046】
図2から明白なように、本発明の特定の実施形態では、グラフェン系炭素粒子はクールダウンチャンバー26から冷却部分45を通って収集場所27に流れ得る。この冷却部分45はたとえば冷却ジャケット管を含み得る。特定の実施形態では、収集場所27はバッグフィルターまたは他の収集手段を含む。下流のスクラバー28は必要に応じて、真空ポンプ60に入る流れより前の流れの中で物質を凝縮し、収集するために使われ得る。
【0047】
特定の実施形態では、プラズマチャンバー20内で物質に対する滞留時間はおおよそミリ秒(複数形)である。炭化水素前駆体物質はプラズマを貫通し、混ざるために十分な速度を達成するために、小さいオリフィスを通って圧力の下で(たとえば1から300ポンド毎平方インチ)で注入され得る。加えて、多くの場合において注入流はプラズマガスの流れに対し直角(90°角)である。特定の場合では、90°からの正または負の傾きは30°まで望まれ得る。
【0048】
高温のプラズマは供給物質を急速に分解および/または蒸発させ得る。プラズマチャンバー20の長さに沿った温度勾配とガス流動形式には実質的な違いがあり得る。プラズマアーク注入口で、流れは乱れており、および高い温度勾配があり得ると考えられる。この温度勾配はたとえば、チャンバーの軸で約20,000ケルビンまでの温度からチャンバー壁で約375ケルビンまでである。ノズル喉で、流れは層流であり、かつ制限された開口を横切った非常に低い温度勾配があると考えられる。
【0049】
プラズマチャンバーは水冷ステンレ鋼、ニッケル、チタン、銅、アルミニウム、または他の適切な物質からしばしば構成される。またプラズマチャンバーは激しい化学的および熱的環境に持ちこたえるためにセラミック物質から組み立てることもできる。
【0050】
プラズマチャンバー壁は内部で、放射、対流および伝導の組み合わせにより熱せられ得る。特定の実施形態では、プラズマチャンバー壁を冷却することにより、表面での望まれない融解および/または腐食が妨げられる。このような冷却を制御するために用いられるシステムにより、選ばれた壁材が耐久可能なできるだけ高い温度に壁は維持されるはずである。この壁材は予期される壁温度ではプラズマチャンバー内の物質に対してしばしば不活性である。このことは対流および伝導による熱にさらされ得るノズル壁に対しても当てはまる。
【0051】
プラズマチャンバーの長さは使用者が目標閾値温度を定めることができる引き伸ばされた管を初めに使用することにより、しばしば実験的に決定される。その次に平衡状態に達しおよび望まれる最終生成物の生成を終えるために、高温での滞留時間を有するために十分に長いプラズマチャンバーを設計することができる。
【0052】
プラズマチャンバー20の内径はプラズマおよび移動ガス状流の流体特性により決定され得る。この内径は必要なガス流を可能にするために十分な大きさであるべきである。しかし、この内径はチャンバーの壁に沿って循環渦(recirculating eddys)または停滞ゾーンが形成されるほどには大きくない。このような有害な流動形式はガスを早まって冷やし、望まれない生成物を沈殿させ得る。多くの場合、プラズマチャンバー20の内径はプラズマチャンバーの注入端でプラズマの直径の100パーセントよりも大きい。
【0053】
特定の実施形態では、ノズルの収束部位は直径において高いアスペクト比変化を有する。このアスペクト比変化により、はじめに険しい角度(たとえば45°より大きい)つぎに、より小さい角度(たとえば45度より小さい)でノズル喉に導く平滑な転移が維持される。ノズル喉の目的は、しばしば流れの中でガスを圧縮し、音速を達成することである。ノズル喉およびノズルの発散部位の下流で達成される速度は、プラズマチャンバーとノズルの発散部位の下流部位の間の差の圧力により調節される。この目的のために、負の圧力は下流で適用され、または正の圧力は上流で適用され得る。本発明における使用に適している型の収束発散ノズルは米国再発行特許発明第37,853号第9欄第65行から第11欄第32行において記述される。この引用される部分は本明細書において参考として援用する。
【0054】
下記の例は本発明の特定の実施形態を例証することを意図するものの、本発明の範囲を制限することを意図しない。
【実施例】
【0055】
実施例1
グラフェン系炭素粒子を図2に示したシステムと同様のDC熱プラズマ反応器システムを用いて作製した。主反応システムはDCプラズマトーチ(Model SG−100 Plasma Spray Gun、Praxair Technology, Inc., Danbury, Connecticutより市販される)を含んでおり、このDCプラズマトーチは1分間につき60標準(Standard)リットルのアルゴンキャリアガスおよび26キロワット電力をトーチに供給することにより作動した。n−プロパノール前駆体(Alfa Aesar, Ward Hill, Massachusettsより市販される)をプラズマトーチ排出口の下流約0.5インチに位置している気体補助液体噴霧器より反応器に1分間につき12グラムの速度で供給した。この噴霧器において、液体前駆体の噴霧を補助するために、1分間につき15標準リットルのアルゴンを供給した。14インチ長反応器部位の次に、複数の冷却流注入開口部が提供され、この開口部には半径方向に60°離れた位置に配置された6 1/8インチ径ノズルを含んでいた。冷却アルゴンガスを冷却流注入開口部位を通して1分間につき185標準リットルの速度で供給した。作製した粒子はバッグフィルターに集めた。集められた固体物質は供給物質の13重量パーセントであり、これは13パーセント収率に相当した。ラマン分析および高倍率透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた粒子の形態分析により3.6ナノメートルより小さい平均厚さを持つグラフェン系層構造が形成されたことを示している。図3に示したラマンプロットはプロット上の2692にある鋭く高いピークならびに1348および1580にある、より短いピークを特徴とする、グラフェン系炭素粒子が形成されたことを実証する。図4のTEM画像に薄板様グラフェン系粒子を示している。他方図5の高倍率TEM画像は分子層が数層重なった小板1つのエッジビューを示している。
【0056】
実施例2
下に示した分子構造を持つエタノール(Alfa Aesar, Ward Hill, Massachusettsより市販される)を供給原料として用いたことを除いて、実施例1を繰り返した。
【0057】
【化4】
【0058】
集められた固体物質は供給物質の1重量パーセントのみであり、これは1パーセント収率に相当した。図6から8に例証された粒子形態のラマンおよびTEM分析はグラフェン系層構造が形成されていることを示している。
【0059】
実施例3
下に示した分子構造を持つイソ−プロパノール(Alfa Aesar, Ward Hill, Massachusettsより市販される)を供給原料として用いたことを除いて、実施例1を繰り返した。
【0060】
【化5】
【0061】
集められた固体物質は供給物質の5重量パーセントであり、これは5パーセント収率に相当した。図9から11に例証された粒子形態のラマンおよびTEM分析は粒子がグラフェン系層構造を持たないことを示している。詳細には、ラマンプロットは2692領域に、区別不能であり、かつ広がったピークを含み、1348および1587領域に重要なピークを含んでいる。図10および11のTEM画像に示されるように、複数の粒子は板状ではない傾向にある。
【0062】
実施例4
下に示した分子構造を持つn−ブタノール(Alfa Aesar, Ward Hill, Massachusettsより市販される)を供給原料として用いたことを除いて、実施例1を繰り返した。
【0063】
【化6】
【0064】
集められた固体物質は供給物質の9重量パーセントであり、これは9パーセント収率に相当した。図12から14に示した粒子形態のラマンおよびTEM分析は、グラフェン系構造が主には形成されていないことを示している。つまり、粒子は回転楕円体結晶構造とグラフェン系層構造の混合物を含んでいる。
【0065】
実施例5
n−ペンタノール(Alfa Aesar, Ward Hill, Massachusettsより市販される)を供給原料として用いたことを除いて、実施例1を繰り返した。集められた固体物質は供給物質の12重量パーセントであり、これは12パーセント収率に相当した。図15から17に示した粒子形態のラマンおよびTEM分析は、グラフェン系構造が主には形成されていないことを示している。つまり、粒子は回転楕円体結晶構造とグラフェン系層構造の混合物を含んでいる。
【0066】
実施例6
ジエチルケトン(Alfa Aesar, Ward Hill, Massachusettsより市販される)を供給原料として用いたことを除いて、実施例1を繰り返した。集められた固体物質は供給物質の13重量パーセントであり、これは13パーセント収率に相当した。粒子形態のラマンおよびTEM分析は、グラフェン系構造が主には形成されていないことを示している。つまり、粒子は回転楕円体結晶構造とグラフェン系層構造の混合物を含んでいる。
【0067】
実施例7
プロパルギルアルコール(Alfa Aesar, Ward Hill, Massachusettsより市販される)を供給原料として用いたことを除いて、実施例1を繰り返した。集められた固体物質は供給物質の12重量パーセントであり、これは12パーセント収率に相当した。粒子形態のラマンおよびTEM分析は、粒子がグラフェン系層構造を持たないことを示している。
【0068】
実施例8
n−ヘキサン(Alfa Aesar, Ward Hill, Massachusettsより市販される)を供給原料として用いたことを除いて、実施例1を繰り返した。集められた固体物質は供給物質の30重量パーセントであり、これは30パーセント収率に相当した。図18から20に示した粒子形態のラマンおよびTEM分析は、粒子がグラフェン系層構造を持たないことを示している。
【0069】
実施例9
固体ナフタレン(naphalene)粒子(Alfa Aesar, Ward Hill, Massachusettsより市販される)を供給原料として用いたことを除いて、実施例1を繰り返した。粒子形態のラマンおよびTEM分析は、粒子がグラフェン系層構造を持っていないことを示している。
【0070】
実施例10
ベンゼン(Alfa Aesar, Ward Hill, Massachusettsより市販される)を供給原料として用いたことを除いて、実施例1を繰り返した。集められた固体物質は供給物質の67重量パーセントであり、これは67パーセント収率に相当した。粒子形態のラマンおよびTEM分析は、粒子がグラフェン系層構造を持っていないことを示している。
【0071】
実施例11
グラフェン系炭素粒子を図2に示したシステムと同様のDC熱プラズマ反応器システムを用いて作製した。主反応器システムはDCプラズマトーチ(Model SG−100 Plasma Spray Gun、Praxair Technology, Inc., Danbury, Connecticutより市販される)を含んでおり、このDCプラズマトーチは1分間につき60標準リットルのアルゴンキャリアガスおよび26キロワット電力をトーチに供給することにより作動した。Airgas Great Lakes, Independent, Ohioより市販されるメタン前駆体ガスをプラズマトーチ排出口の下流約0.5インチで反応器に1分間につき5標準リットルの速度で供給した。14インチ長反応器部位の次に、複数の冷却流注入開口部が提供され、この開口部には半径方向に60°離れた位置に配置された6 1/8インチ径ノズルを含んでいた。冷却アルゴンガスを冷却流注入開口部位を通して1分間につき185標準リットルの速度で供給した。作製した粒子はバッグフィルターに集めた。すべての集められた固体物質は供給物質の75重量パーセントであり、これは100パーセント炭素変換効率に相当した。ラマン分析および高倍率透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた粒子の形態分析により3.6ナノメートルより小さい平均厚さを持つグラフェン系層構造が形成されたことを示している。図21に示したラマンプロットはプロット上の2692にある鋭く高いピークならびに1348および1580にある、より短いピークを特徴とする、グラフェン系炭素粒子が形成されたことを実証する。図22のTEM画像に薄板様グラフェン系粒子を示している。Micromeritics Instrument Corp., Norcross, Georgia.より市販されるGemini model 2360 analyzerを用いて測定された、作製した物質のB.E.T.比表面積は1グラムにつき270平方メートルであった。
【0072】
そうではないと明示的に指定していない限り、本発明は、様々な別の改変および工程順序を想定してよいと理解すべきである。さらに,任意の実際の実施例以外、または他に示されていなければ、すべての表されている数、たとえば、明細書および特許請求の範囲で用いられる成分の量はすべての例において「約」という単語により修飾されると理解すべきである。したがって、もし反対に指示されなければ、下記の明細書および添付した特許請求の範囲に述べた数値パラメータは近似値である。この近似値は本発明により得られる望まれた性質に基づいて変化し得る。最低限でも、それぞれの数値パラメータは、均等論の適用を特許請求の範囲を制限する試みとしてではなく、少なくとも報告された有効数字の数値を考慮し、かつ通常の概数表示技術を適用することにより、解釈されるべきである。
【0073】
本発明の広い範囲に述べた数値域およびパラメータは近似値ではあるものの、具体例に述べた数値はできる限り正確に報告している。しかしながら、任意の数値はそれらの試験測定それぞれにおいて見出される標準的な変動から必然的に生じる特定の誤差を本質的に含んでいる。
【0074】
また、ここで列挙された任意の数値域は、そこに包括されるすべての部分領域を含むことを意図していると理解されるべきである。たとえば、「1から10」の領域は記載された最小値1と記載された最大値10の間(および含む)、つまり1以上の最小値および10以下の最大値を持つすべての部分領域を含むことを意図している。
【0075】
本出願では、他の点で具体的に言及されていなければ、単数形の使用は複数形を含み、かつ複数形は単数形を包含している。加えて、本出願では、特定の例で、「および/または」が明示的に使われ得るとしても、具体的にそうではないと言及されていなければ、「または」の使用は「および/または」を意味する。
【0076】
前述の説明で開示した概念から逸脱することなく本発明を変更することができるということを、当業者は容易に認識する。特許請求の範囲にそれらの言葉により、明示的に言及されていなければ、このような変更は下記の特許請求の範囲内に含まれると考慮されるべきである。したがって、ここで詳細に記載された特定の具体例は例示にすぎず、添付の特許請求の範囲の全範囲かつその任意および全ての均等物が与えられるべきである本発明の範囲を制限するものではない。
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、以下が提供される。
(項1)
グラフェン系炭素粒子を作製する方法であって、
2炭素断片化学種を形成可能である炭化水素前駆体物質またはメタンを含む炭化水素前駆体物質を熱ゾ−ン(20)に導入する工程;
該熱ゾーン(20)において少なくとも1,000℃の温度に該炭化水素前駆体物質を熱し、該炭化水素前駆体物質から該グラフェン系炭素粒子を形成させる工程;および
該グラフェン系炭素粒子を収集する工程を含む方法。
(項2)
前記炭化水素前駆体物質は、n−プロパノール、エタン、エチレン、アセチレン、塩化ビニル、1,2−ジクロロエタン、アリルアルコール、プロピオンアルデヒドまたは臭化ビニルを含む上記項1に記載の方法。
(項3)
前記炭化水素前駆体物質は、n−プロパノールを含む上記項1に記載の方法。
(項4)
前記炭化水素前駆体物質は、メタンを含む上記項1に記載の方法。
(項5)
前記熱ゾーン(20)は、3,500℃より高く10,000℃までの温度に維持される上記項1に記載の方法。
(項6)
前記熱ゾーン(20)は、2,000℃から5,000℃までの温度に維持される上記項1に記載の方法。
(項7)
前記熱ゾーン(20)は、実質的に不活性雰囲気である上記項1に記載の方法。
(項8)
前記熱ゾーン(20)は、プラズマ(29)を含む上記項1に記載の方法。
(項9)
不活性ガスを前記プラズマ(29)に導入する工程をさらに含む上記項8に記載の方法。
(項10)
前記不活性ガスおよび炭化水素前駆体物質は、共に前記プラズマ(29)に導入される上記項9に記載の方法。
(項11)
前記不活性ガスは、前記炭化水素前駆体とは別に、前記プラズマ(29)に導入される上記項9に記載の方法。
(項12)
前記不活性ガスは、アルゴン、水素、ヘリウムまたは窒素を含む上記項9に記載の方法。
(項13)
前記グラフェン系炭素粒子は、平均30または30より小さい炭素原子層を有する上記項1に記載の方法。
(項14)
前記グラフェン系炭素粒子は、10ナノメートルより小さい厚みを有する上記項1に記載の方法。
(項15)
前記グラフェン系炭素粒子は、3:1より大きい平均アスペクト比を有する上記項1に記載の方法。
(項16)
集められた前記グラフェン系炭素粒子は、前記炭化水素前駆体物質の少なくとも10パーセントである重量を有する上記項1に記載の方法。
(項17)
上記項1に記載の方法により作製されるグラフェン系炭素粒子。
(項18)
グラフェン系炭素粒子を作製する装置であって、
2炭素断片化学種を形成可能な炭化水素前駆体物質またはメタンを含む炭化水素前駆体物質の源;
プラズマチャンバー(20);および
該炭化水素前駆体物質を該プラズマチャンバー(20)に供給するための少なくとも1つの供給ライン(50)を含む装置。
(項19)
前記炭化水素前駆体物質は、n−プロパノール、エタン、エチレン、アセチレン、塩化ビニル、1,2−ジクロロエタン、アリルアルコール、プロピオンアルデヒドまたは臭化ビニルを含む上記項18に記載の装置。
(項20)
前記炭化水素前駆体物質は、n−プロパノールを含む上記項18に記載の装置。
(項21)
前記炭化水素前駆体物質は、メタンを含む上記項18に記載の装置。
(項22)
前記プラズマチャンバーに不活性ガスを供給するための少なくとも1つの不活性ガス供給ライン(14)をさらに含む上記項18に記載の装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22