【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例に基づきさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例により制限されるものではない。
下記合成例1〜4に示す各工程により、本発明に係るジフェニルスルホン誘導体の代表例を合成した。
(合成例1)1CzSOの合成
以下のような工程により、前駆体を合成後、対応するフェニルボロン酸との反応により、1CzSOを合成した。
【0030】
【化4】
【0031】
まず、温度計、窒素導入管及び還流管を備えた200ml四つ口フラスコに、3−ブロモヨードベンゼン8.49g(30.0mmol)、ヨウ化銅(I)571mg(3.00mmol)、炭酸カリウム8.29g(60.0mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)150mlを加え、窒素雰囲気下、100℃まで加熱撹拌した。3,5−ジクロロベンゼンチオール5.37g(30.0mmol)を加え、4時間反応させた。薄層クロマトグラフィ(TLC)にて原料の消失を確認した。
水100mlを反応液に加え、分液漏斗に移し、ヘキサン:酢酸エチル=1:1の混合溶媒で抽出し(100ml×2回)、有機層を飽和食塩水100mlで洗浄した。この有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去し、透明黄色液体を得た(収量9.51g、収率95.1%)。目的物(mBrDClS)の同定は、
1H−NMRスペクトルにて行った。
【0032】
【化5】
【0033】
次に、温度計、還流冷却器、塩化カルシウム管及び滴下漏斗を備えた500ml四つ口フラスコに、ジクロロメタン(DCM)250mlを加え、0〜5℃に冷却した後、30%m−クロロ過安息香酸32.7g(56.8mmol)を加えた。撹拌しながら、mBrDClS9.50g(28.4mmol)をジクロロメタン100mlに溶解させた溶液を0〜10℃で30分間かけて滴下した。滴下終了後、室温下で2時間反応させた。TLCにて原料の消失を確認した。
反応容器に、撹拌しながら飽和重曹水175mlを少量ずつ加え、加え終わった後30分間撹拌し、分液漏斗に移して有機層を回収した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ別後、溶媒を留去した。エタノールを用いた分散洗浄にて精製し、減圧下乾燥後、白色固体を得た(収量8.76g、収率84.2%)。目的物(mBrDClSO)の同定は、
1H−NMRスペクトルにて行った。
【0034】
【化6】
【0035】
そして、温度計、窒素導入管及び還流管を付えた200ml四つ口フラスコに、mBrDClSO3.66g(10.0mmol)、カルバゾール1.67g(10.0mmol)、炭酸カリウム4.15g(30.0mmol)を加え、窒素フローした。これに、乾燥キシレン150mlを加え、1時間窒素バブリングした。酢酸パラジウム(II)89.8mg(0.40mmol)、トリ−tert−ブチルホスフィン0.376ml(1.60mmol)を加え、20時間還流した。TLCにて原料の消失を確認した。
水100mlを反応液に加え、分液漏斗に移し、ヘキサン:酢酸エチル=1:1の混合溶媒で抽出し(100ml×2回)、有機層を飽和食塩水100mlで洗浄した。この有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去した。得られた茶色固体を、トルエンを用いた再結晶法により精製した(収量1.80g、収率39.8%)。目的物(CzDClSO)の同定は、
1H−NMR及びマススペクトルにて行った。
【0036】
【化7】
【0037】
さらに、温度計、窒素導入管及び還流管を備えた100ml四つ口フラスコにCzDClSO1.58g(3.50mmol)、2‐フェニル‐4,4,5,5‐テトラメチル‐1,3,2‐ジオキサボロラン(PhDOB)1.43g(7.00mmol)、1.35Mリン酸三カリウム水溶液15.6ml(21.0mmol)を加え、1時間窒素バブリングした。これに、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)0.160g(0.175mmol)、トリシクロヘキシルホスフィン0.147g(0.525mmol)を加え、1時間還流した。TLCにて原料の消失を確認した。
反応液に水100mlを加え、分液漏斗に移し、ヘキサン:酢酸エチル=1:1の混合溶媒で抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下、溶媒を15ml程度まで濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィにて、ヘキサン:酢酸エチル=5:1の混合溶媒を用いて精製し、茶色固体を得た。再度、シリカゲルカラムクロマトグラフィにて、トルエンを用いて精製し、無色透明粘体を得た。これをメタノールを用いた分散洗浄にて精製し、白色固体を得た(収量0.53g、収率28.3%)。目的物(1CzSO)の同定は、
1H−NMR及びマススペクトルにて行った。
さらに、得られた白色固体(1CzSO)を昇華精製した後、元素分析による同定も行った。
【0038】
(合成例2)2CzSOの合成
以下のような工程により、前駆体を合成後、対応するカルバゾールとの反応により、2CzSOを合成した。
【0039】
【化8】
【0040】
まず、温度計、窒素導入管及び還流管を備えた200ml四つ口フラスコにヨードベンゼン15.0g(73.5mmol)、3,5−ジクロロベンゼンチオール15.8g(88.2mmol)、銅粉4.67g(73.5mmol)、炭酸セシウム28.7g(88.2mmol)、ジメチルスルホキシド(DMSO)100mlを加え、170℃で窒素雰囲気下、20時間反応させた。TLCにて原料の消失を確認した。
反応液をセライトろ過し、ろ液を水200mlで2回洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィにて、ヘキサンを用いて精製し、無色透明溶液4.50g(収率23.9%)を得た。目的物(2ClS)の同定は、
1H−NMRにて行った。
【0041】
【化9】
【0042】
次に、温度計、還流冷却器、塩化カルシウム管及び滴下漏斗を備えた300ml四つ口フラスコに、ジクロロメタン(DCM)100mlを加え、0〜5℃に冷却した後、30%m−クロロ過安息香酸21.3g(37.0mmol)を加えた。撹拌しながら、2ClS4.50g(17.6mmol)をジクロロメタン50mlに溶解させた溶液を0〜10℃で20分間かけて滴下した。滴下終了後、室温下で1時間反応させた。TLCにて原料の消失を確認した。
反応容器に、撹拌しながら飽和重曹水80mlを少量ずつ加え、加え終わった後30分間撹拌し、分液漏斗に移して水で洗浄した(100ml×4回)。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ別後、溶媒を留去した。得られた白色固体をエタノールで分散洗浄し、不溶物を吸引ろ過にて単離した。単離した固体を、トルエンを用いた再結晶法にて精製し、黄白色固体を得た(収量3.13g、収量62.0%)。目的物(2ClSO)の同定は、
1H−NMR及びマススペクトルにて行った。
【0043】
【化10】
【0044】
そして、温度計、窒素導入管及び還流管を備えた100ml四つ口フラスコに、2ClSO1.15g(4.00mmol)、カルバゾール1.34g(8.40mmol)、炭酸カリウム3.32g(24.0mmol)を加え、窒素フローした。これに、乾燥キシレン70mlを加え、1時間窒素バブリングした。次に、酢酸パラジウム(II)35.9mg(0.16mmol)、トリ−tert−ブチルホスフィン0.15ml(0.64mmol)を加え、14時間還流した。TLCにて原料の消失を確認した。
反応液を、シリカゲルを用いて吸引ろ過した。ろ液を水で洗浄し(100ml×2回)、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去した。得られた黄色固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィにて、トルエンを用いて精製し、飴状固体を得た。これをメタノール30mlで分散洗浄し、白色固体を得た。得られた白色固体を減圧下乾燥した(収量1.46g、収率66.7%)。目的物(2CzSO)の同定は、
1H−NMR及びマススペクトルにて行った。
さらに、得られた白色固体(2CzSO)を昇華精製した後、元素分析による同定も行った。
【0045】
(合成例3)3CzSOの合成
以下のような工程により、前駆体を合成後、対応するカルバゾールとの反応により、3CzSOを合成した。
【0046】
【化11】
【0047】
まず、温度計、窒素導入管及び還流管を備えた100ml四つ口フラスコに、1−クロロ−4−ヨードベンゼン5.00g(21.0mmol)、3,5−ジクロロベンゼンチオール3.75g(21.0mmol)、炭酸カリウム8.71g(63.0mmol)、DMF70mlを加え、30分窒素バブリングした。これに、ヨウ化銅(I)0.40g(2.10mmol)を加え、100℃で窒素雰囲気下、22時間反応させた。TLCにて原料の消失を確認した。
反応液を吸引ろ過し、DMF50mlで洗浄した。ろ液を濃縮し、クロロホルム60mlを加え、不溶物を単離した。さらに、ろ液を30ml程度まで濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィにて精製し、橙色液体を得た(収量6.48g、収率96.0%)。目的物(3ClS)の同定は、
1H−NMR及びマススペクトルにて行った。
【0048】
【化12】
【0049】
次に、温度計、還流冷却器、塩化カルシウム管及び滴下漏斗を備えた200ml四つ口フラスコに、ジクロロメタン(DCM)100mlを加え、0〜5℃に冷却した後、30%m−クロロ過安息香酸23.8g(41.4mmol)を加えた。撹拌しながら、3ClS6.00g(20.7mmol)をジクロロメタン50mlに溶解させた溶液を0〜10℃で15分間かけて滴下した。滴下終了後、室温下で1時間反応させた。TLCにて原料の消失を確認した。
反応容器に、撹拌しながら飽和重曹水115mlを少量ずつ加え、加え終わった後30分間撹拌し、分液漏斗に移して有機層を回収した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ別後、溶媒を留去した。得られた白色固体をエタノールで分散洗浄し、不溶物を吸引ろ過にて単離した。得られた桃色固体を減圧下乾燥した(収量5.08g、収量76.3%)。目的物(3ClSO)の同定は、
1H−NMR及びマススペクトルにて行った。
【0050】
【化13】
【0051】
そして、温度計、窒素導入管及び還流管を備えた200ml四つ口フラスコに、3ClSO2.57g(8.00mmol)、カルバゾール4.01g(24.0mmol)、炭酸カリウム9.95g(73.0mmol)を加え、窒素フローした。これに、乾燥キシレン160mlを加え、1時間窒素バブリングした。次に、酢酸パラジウム(II)71.8mg(0.32mmol)、トリ−tert−ブチルホスフィン0.301ml(1.28mmol)を加え、9時間還流した。TLCにて原料の消失を確認した。
反応液を、シリカゲルを用いて吸引ろ過した。ろ液を水で洗浄し(100ml×2回)、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去した。得られた黒緑色飴状固体をヘキサン:トルエン=2:1の混合溶媒15mlで分散洗浄し、不溶物を単離した。さらに、得られた白色固体をトルエン160mlに加熱溶解させ、不溶物を単離した。ろ液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィにてトルエンを用いて精製し、飴状固体を得た。これをメタノール30mlで分散洗浄し、白色固体を得た。得られた白色固体を減圧下乾燥した(収量2.28g、収率39.9%)。目的物(3CzSO)の同定は、
1H−NMR及びマススペクトルにて行った。
さらに、得られた白色固体(3CzSO)を昇華精製した後、元素分析による同定も行った。
【0052】
(合成例4)4CzSOの合成
合成例3における出発原料の1−クロロ−4−ヨードベンゼンを3,5−ジクロロヨードベンゼンに変えて、合成例3と同様の工程により、前駆体としてビス(3,5−ジクロロフェニル)スルフィド、次いで、ビス(3,5−ジクロロフェニル)スルホンを合成した(国際公開WO2010/018858 A1参照)。合成したビス(3,5−ジクロロフェニル)スルフィドと、対応するカルバゾールとの反応により、4CzSOを合成した。
【0053】
【化14】
【0054】
温度計、窒素導入管及び還流管を備えた100ml四つ口フラスコに、ビス(3,5−ジクロロフェニル)スルホン1.42g(4.00mmol)、カルバゾール2.74g(16.4mmol)、炭酸カリウム6.63g(48.0mmol)を加え、窒素フローした。これに、乾燥キシレン80mlを加え、1時間窒素バブリングした。次に、酢酸パラジウム(II)35.9mg(0.16mmol)、トリ−tert−ブチルホスフィン0.15ml(0.64mmol)を加え、3.5時間還流した。TLCにて原料の消失を確認した。
反応液を、シリカゲルを用いて吸引ろ過した。ろ液を水で洗浄し(50ml×2回)、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去した。得られた茶色固体をクロロホルム15mlで分散洗浄し、不溶物を吸引ろ過にて単離した。単離した白色固体を、トルエンを用いた再結晶法にて精製した(収量1.63g、収量46.3%)。目的物(4CzSO)の同定は、
1H−NMRにて行った。
さらに、得られた白色固体(4CzSO)を昇華精製した後、元素分析による同定も行った。
【0055】
(実施例1)リン光スペクトル測定
上記において合成した各ジフェニルスルホン誘導体について、ジフェニルスルホン誘導体:5wt%Ir(ppz)
3の共蒸着膜のリン光スペクトル測定を行い、スペクトルの立ち上がりから三重項エネルギーを見積もった。
その結果、いずれの誘導体も2.8eV以上の三重項エネルギーを示し、青色リン光発光材料での十分な三重項励起子閉じ込めが可能であることが認められた。
なお、Ir(ppz)
3の構造を下記に示す。
【0056】
【化15】
【0057】
(実施例2)素子評価
上記において合成した各ジフェニルスルホン誘導体をホスト材料として用い、青色リン光材料であるFIrpicをドープした発光層を有する有機EL素子を作製した。素子構成は、その概要を
図1に示すように、基板1/陽極2/正孔輸送層3/発光層4/電子輸送層5/電子注入層6/陰極7とした。具体的には、ITO/TAPC(20nm)/ホスト:11wt%FIrpic(10nm)/B3PyPB(50nm)/Liq(1.5nm)/Alとした。
なお、FIrpic、TAPC及びB3PyPBの各化合物の構造を下記に示す。
【0058】
【化16】
【0059】
各素子について、発光輝度100cd/m
2、1000cd/m
2のときの駆動電圧、電力効率、電流効率、外部量子効率の測定を行った。
これらの測定結果を表1にまとめて示す。
また、
図2に各素子の電流密度−外部量子効率曲線を示す。
【0060】
【表1】
【0061】
上記評価結果から、本実施例において合成したジフェニルスルホン誘導体は、高い三重項エネルギーを持つため、ホスト材料として用いることにより、青色リン光材料を効率よく発光させることができ、高効率な有機EL素子を提供可能であることが認められた。