(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
二つの取付口を有するショックセンサユニットに二電極一体型溶接トーチを接続するために、前記二電極一体型溶接トーチの各々の接続部に筒状の締結部品を用いて固定される接続金具であって、
前記各接続金具には、一端に前記ショックセンサユニットに接続される筒状体接続部が形成され、他端に前記二電極一体型溶接トーチの接続部に接続される互いに曲率の異なる半球が一体的に形成された球面状軸体接続部が形成される円筒形状の金具本体と、
前記球面状軸体接続部の一側の球面に対応する第1滑動面が内面に形成され、前記金具本体の一端側から取り付けられるリング形状の一端側受け部と、
前記球面状軸体接続部の他側の球面に対応する第2滑動面が内面に形成され、前記金具本体の他端側から取り付けられると共に、前記二電極一体型溶接トーチの接続部の端面に当接するリング形状の他端側受け部と、を備え、
前記他端側受け部は、
直径が前記締結部品の収容内径よりも小さく形成されると共に、前記二電極一体型溶接トーチの接続部の端面に摺動可能に当接する摺動当接部を有する、
ことを特徴とする接続金具。
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の接続金具を用いて、ロボットアームの先端に設置される前記ショックセンサユニットに前記二電極一体型溶接トーチを接続する接続方法であって、
前記一端側受け部及び前記他端側受け部を取り付けた状態で前記球面状軸体接続部を前記締結部品の内部に仮締め状態で収容させ、前記接続金具の前記筒状体接続部を前記締結部品の外部に露出させた状態とする第1工程と、
前記筒状体接続部を前記ショックセンサユニットに接続させ、前記締結部品を締結させる第2工程と、
前記金具本体、前記一端側受け部、及び前記他端側受け部を、通電性のあるろう材を用いてろう付けさせる第3工程と、
を有することを特徴とする接続方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、二電極一体型溶接トーチを備える溶接ロボットには、溶接トーチと手首部(ロボットアーム)との間に二電極一体型溶接トーチに対応したタンデム用のショックセンサユニットを取り付ける構成が提案されていない。その理由の一つとして、タンデム用のショックセンサユニットは、溶接トーチが接触や衝突により傾動や移動した後に原点位置へ自動復帰可能なように弾性的にそれぞれの溶接トーチを保持しなければならないので、原点位置における溶接トーチを保持する溶接トーチ保持部が平行した構造でなければならない。そのため、
図10に示すように、接続金具と溶接トーチ保持部との角度が異なり、タンデム用のショックセンサユニットに二電極一体型溶接トーチをそのままでは取り付けることができなかった。
【0006】
その対処方法として、二電極一体型溶接トーチのトーチ本体に対して接続金具が並列になるような曲げ加工を施すことが想定されるが、この曲げ加工には幾つかの弊害がある。
第1の弊害として、トーチ本体に対する曲げ加工は、トーチ本体内を挿通する溶接ワイヤの送給性を阻害しないよう、湾曲部分を可能な限り少なくする必要があり、簡易かつ緩やかな加工でなければならない点が挙げられる。
【0007】
第2の弊害として、トーチ本体は、
図11に示すように溶接ワイヤの形状に対応させたカーブド型が前提になっているので、さらに接続金具が並列になるような曲げ加工をトーチ本体に行うことは、曲げ加工について3次元方向での調整が必要になり角度決めや位置決めが難しい点が挙げられる。
【0008】
第3の弊害として、トーチ本体の材料として銅を使用する場合を想定すると、曲げ加工がしやすい代わりに曲げ寸法に加工できない点が挙げられる。なお、トーチ本体の加工は、ショックセンサユニットに接続されるため、高い精度(例えば、0.1mm〜0.2mmの範囲内の精度)が必要になる。
【0009】
その為、二電極一体型溶接トーチのトーチ本体に対して接続金具が並列になるような曲げ加工を施すことにより、タンデム用のショックセンサユニットに二電極一体型溶接トーチを接続させることは可能であるが、曲げ加工の高度な技術が必要となり、加工にも時間がかかるという問題があった。また、トーチ本体のカーブド型の形状や溶接トーチ同士のなす角度の影響で、組立時においても高度な技術が必要となり、組み立てにも時間がかかるという問題があった。
【0010】
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり、トーチの曲げ加工精度や組立精度の確保のために必要な加工時間や調整時間、さらには熟練者による高度な技術を必要とせずに、二電極一体型溶接トーチとタンデム用のショックセンサユニットとをごく短い時間で接続することができる接続金具、及び接続方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明に係る接続金具は、二つの取付口を有するショックセンサユニットに二電極一体型溶接トーチを接続するために、前記二電極一体型溶接トーチの各々の接続部に筒状の締結部品を用いて固定される接続金具であって、前記各接続金具には、一端に前記ショックセンサユニットに接続される筒状体接続部が形成され、他端に前記二電極一体型溶接トーチの接続部に接続される互いに曲率の異なる半球が一体的に形成された球面状軸体接続部が形成される円筒形状の金具本体と、前記球面状軸体接続部の一側の球面に対応する第1滑動面が内面に形成され、前記金具本体の一端側から取り付けられるリング形状の一端側受け部と、前記球面状軸体接続部の他側の球面に対応する第2滑動面が内面に形成され、前記金具本体の他端側から取り付けられると共に、前記二電極一体型溶接トーチの接続部の端面に当接するリング形状の他端側受け部と、を備え、前記他端側受け部が、直径が前記締結部品の収容内径よりも小さく形成されると共に、前記二電極一体型溶接トーチの接続部の端面に摺動可能に当接する摺動当接部を有する、ことを特徴とする。
【0012】
かかる構成によれば、接続金具は、第1滑動面や第2滑動面を球面状軸体接続部が滑動することができる。したがって、本発明に係る接続金具によれば、ショックセンサユニットに接続される金具本体の角度を自由に調整することができる(角度調整機能)。その為、二電極一体型溶接トーチを構成する各々の溶接トーチが並列でなくとも、各溶接トーチの接続部に取り付けられた接続金具が並列になるように各接続金具の角度を調整するだけで、ショックセンサユニットの平行した構造である二つの取付口に各溶接トーチを接続することができる。
【0013】
また、接続金具は、他端側受け部が締結部品内部を調整移動することができる。したがって、本発明に係る接続金具によれば、ショックセンサユニットに接続される金具本体の中心軸を自由に調整することができる(位置調整機能(オフセット調整機能))。その為、二電極一体型溶接トーチを構成する二つの溶接トーチの接続部の軸心間の距離とショックセンサユニットに構成される二つの取付口の軸心間の距離とに誤差が生じても、各溶接トーチの接続部に取り付けられた接続金具の幅が二つの取付口の幅になるように各接続金具の中心軸を調整するだけで、それぞれの軸心間の距離の誤差を吸収し、ショックセンサユニットの二つの取付口に各溶接トーチを接続することができる。
【0014】
さらに、接続金具は、金具本体が傾斜する角度に関わらず、球面状軸体接続部が第2滑動面に面接触するので、通電性や気密性に影響を与えることなく角度調整を行うことが可能である。
【0015】
また、本発明に係る接続金具は、前記球面状軸体接続部において、一側が円筒部分の外径よりも大きい直径の第1半球体と、他側が円筒部分の外径よりも小さい直径の第2半球体とを備えることを特徴とする。
【0016】
かかる構成によれば、接続金具は、第1半球体に比べて第2半球体の寸法を小さくすることができる。したがって、本発明に係る接続金具によれば、接続金具自体をコンパクトにすることや、溶接トーチの種々のサイズに対応することができる。
【0017】
また、本発明に係る接続金具は、前記他端側受け部において、前記第2滑動面が形成される板の厚みが前記第2半球体の高さよりも小さく形成されていることが好ましい。
【0018】
かかる構成によれば、接続金具は、他端側受け部と第1半球体との間に所定の間隔ができる。したがって、本発明に係る接続金具によれば、金具本体が傾斜する角度を所定範囲内に制限することができる。
【0019】
また、本発明に係る接続金具は、前記金具本体、前記一端側受け部、及び前記他端側受け部が、通電性のあるろう材を用いて前記締結部品にろう付けされて固定されることが好ましい。
【0020】
かかる構成によれば、接続金具は、金具本体、一端側受け部、及び他端側受け部がより強固な力で固定される。したがって、本発明に係る接続金具によれば、二電極一体型溶接トーチとショックセンサユニットとの接続状態を通電性に影響を与えることなく長期にわたって維持することができる。
【0021】
また、本発明に係る接続金具を用いた接続方法は、ロボットアームの先端に設置される前記ショックセンサユニットに前記二電極一体型溶接トーチを接続する接続方法であって、一端側受け部及び他端側受け部を取り付けた状態で球面状軸体接続部を締結部品の内部に仮締め状態で収容させ、接続金具の筒状体接続部を前記締結部品の外部に露出させた状態とする第1工程と、前記筒状体接続部を前記ショックセンサユニットに接続させ、前記締結部品を締結させる第2工程と、前記金具本体、前記一端側受け部、及び前記他端側受け部を、通電性のあるろう材を用いてろう付けさせる第3工程と、を行うことを特徴とする。
【0022】
かかる構成によれば、接続方法は、ショックセンサユニットに接続される金具本体の角度を自由に調整することができ(角度調整機能)、また、金具本体の中心軸を自由に調整することができる(位置調整機能(オフセット調整機能))。したがって、本発明に係る接続方法によれば、二電極一体型溶接トーチとショックセンサユニットとの接続に際し、トーチ本体のカーブド型の形状や溶接トーチ同士のなす角度の影響を受けることがない。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、トーチの曲げ加工精度や組立精度の確保のために必要な加工時間や調整時間、さらには熟練者による高度な技術を必要とせずに、二電極一体型溶接トーチとタンデム用のショックセンサユニットとをごく短い時間で接続することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[実施形態]
以下、本発明の実施するための形態を、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、参照する図面において、本発明を構成する部材の寸法は、説明を明確にするために誇張して表現されている場合がある。なお、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0026】
なお、実施形態において、タンデム溶接トーチ2は、溶接する際の溶接作業の状態によって上下左右の向きが変化する。このため、本発明の実施形態では、便宜上、
図1に対して上側を「上」、下側を「下」、左側を「前」、右側を「後」として説明する。
【0027】
≪溶接ロボットの構成≫
図1に示すように、溶接ロボット1は、2本の溶接ワイヤW(第1電極W1、第2電極W2)で同時にアークを出してタンデム溶接するタンデム溶接トーチ2を備え、高能率で高速な溶接が可能な自動溶接装置である。この溶接ロボット1は、被溶接物を溶接する際に、不図示のワイヤ供給装置のスプールから巻き解かれてタンデム溶接トーチ2に自動的に送給される溶接ワイヤWと、溶接電流とを供給しながらアーク溶接する溶接装置である。
【0028】
溶接ロボット1は、被溶接物に対して溶接を行うタンデム溶接トーチ2と、溶接ワイヤWに電流を供給する電源(図示省略)と、スプール(図示省略)に巻き回わされた溶接ワイヤWを供給するワイヤ供給装置(図示省略)と、タンデム溶接トーチ2を移動させるロボットアーム11と、を主に備えている。ロボットアーム11の先端には、タンデム用のショックセンサユニット3を介在してタンデム溶接トーチ2が取り付けられている。
【0029】
<タンデム溶接トーチの構成>
図2及び
図3に示すように、タンデム溶接トーチ2は、2つの溶接トーチ21,22を有する二電極一体型トーチである。タンデム溶接トーチ2は、被溶接物を溶接するための一対の溶接ワイヤWと、この溶接ワイヤWに供給する溶接電流と、シールドガスが供給されて溶接を行なう器具である。
【0030】
(溶接トーチの構成)
図2及び
図3に示すように、溶接トーチ21,22は、互いの軸心間のなす角度が所定角度(例えば、2°〜15°)になるように並べられた、2つのトーチからなるダブルトーチであり、それぞれ溶接ワイヤW(
図3参照)を挿通する中空状の円筒部材からなる。溶接トーチ21,22は、前端部がトーチ固定部23に固定され、後端部が接続金具40A,40Bを介してタンデム用のショックセンサユニット3に接続される。
【0031】
トーチ固定部23は、2つの溶接トーチ21,22の先端側をまとめて固定する部材である。トーチ固定部23の上側には、不図示の冷却水供給源からホースを介して各溶接トーチ21,22自体に冷却水を供給して冷却するための一対のホース接続部23aが設けられている。
【0032】
<ショックセンサユニットの構成>
図2及び
図3に示すタンデム用のショックセンサユニット3は、溶接トーチ21,22が被溶接物や治具等の異物と接触、衝突等した際に、溶接トーチ21,22の傾動及び移動をそれぞれ検出して、溶接ロボット1を停止させるための保護装置である。
【0033】
ショックセンサユニット3は、一方の溶接トーチ21の後側(基端側)を保持する第1基端トーチ保持部25と、他方の溶接トーチ22の基端部を保持する第2基端トーチ保持部26と、第1基端トーチ保持部25及び第2基端トーチ保持部26を傾動及び軸方向(図中の前後方向)に移動可能に、かつ、自動復帰可能に弾性的に支持しているショックセンサ27,28と、を主に備えている。この構成により、ショックセンサユニット3は、溶接トーチ21,22の傾動及び軸方向の移動をそれぞれ検出することができる。なお、ショックセンサユニット3は、一部が円筒状のゴム部材等の絶縁材からなる絶縁カバー24により覆われている。
【0034】
<接続金具の構成>
図2、
図3に示す接続金具40A,40Bは、タンデム溶接トーチ2とショックセンサユニット3とを接続する場合に、溶接トーチ21,22と第1基端トーチ保持部25及び第2基端トーチ保持部26との間に発生する位置ずれや角度ずれを調整して接続するための部材である。
図4に示すように、この接続金具40A,40Bは、溶接トーチ21,22の後端部に設置される収容部品51A,51Bに前端部が収容された状態で、溶接トーチ21,22から離脱しないように締付部品52A,52Bが締結され、後端部がショックセンサユニット3に接続される。接続金具40A,40Bは、通電性を考慮して、溶接トーチ21,22と同じ材料を用いるのがよい。
【0035】
ここで、接続金具40A,40Bは、ろう付けされる前において、締付部品52A,52Bが収容部品51A,51Bに接続されているが完全に締結されていない仮締め状態において、収容部品51A,51B内部で中心軸(
図4の前後方向)に対して直交方向(上下左右方向)に移動可能である。また、接続金具40A,40Bは、仮締め状態において、後記する金具本体42A,42B(
図5参照)が、中心軸(
図4の前後方向)に対して傾動可能である。
【0036】
一方、接続金具40A,40Bは、締付部品52A,52Bが収容部品51A,51Bにスパナ等の工具を用いて完全に締結されている本締め状態において、直交方向への移動や傾動ができない拘束状態となり、移動した位置や傾動した状態で固定される。接続金具40A,40Bは、溶接トーチ21,22とショックセンサユニット3の第1基端トーチ保持部25及び第2基端トーチ保持部26との間に発生している軸の位置ずれを調整する位置調整機能(オフセット調整機能)と軸心間の角度ずれを調整する角度調整機能とを備える。
【0037】
図5に示すように、接続金具40A,40Bは、それぞれ後記するトーチ側受け部41A,41Bと、金具本体42A,42Bと、センサ側受け部43A,43Bと、を備えて構成されている。ここで、接続金具40Aと接続金具40Bとは、同様の構成である。なお、接続金具40B及びトーチ側受け部41Bは、内部形状を表わすために一部を断面図で記載している。以下では接続金具40Aと接続金具40Bとをまとめて「接続金具40」と呼び、トーチ側受け部41Aとトーチ側受け部41Bとをまとめて「トーチ側受け部41」と呼び、センサ側受け部43Aとセンサ側受け部43Bとをまとめて「センサ側受け部43」と呼ぶことにする。なお、トーチ側受け部41を「他端側受け部」と、センサ側受け部43を「一端側受け部」と呼ぶ場合がある。
【0038】
(金具本体の構成)
図5及び
図6に示すように、金具本体42は、接続金具40の主要部材である。
金具本体42は、溶接ワイヤW(
図3参照)を挿通する中空が形成された円筒形状をなし、一端(
図5及び
図6では後端)にショックセンサユニット3が接続される筒状体接続部42aが形成され、他端(
図5及び
図6では前端)に溶接トーチ21,22に接続される球面状軸体接続部42bが形成される。
【0039】
筒状体接続部42aは、ショックセンサユニット3の第1基端トーチ保持部25及び第2基端トーチ保持部26に接続される機構であり、接続された状態で固定されることができるものであれば構成は特に限定されない。本実施形態では、金具本体42の中心付近の外径R11よりも小さい外径の円筒形状をなし、後端部付近にシールドガスの漏れ防止のためのO(オー)リングが設置されている。
【0040】
球面状軸体接続部42bは、溶接トーチ21,22に接続される機構である。
球面状軸体接続部42bは、中心付近の円筒部分と第1段差構造を介して一体に形成され、円筒部分(金具本体42の中央部分)の外径R11よりも大きい直径R12の半球形状をなす第1半球体42hと、第1半球体42hと第2段差構造を介して一体に形成され、円筒部分の外径R11よりも小さい直径R13の球体形状をなす第2半球体42jと、を備えて構成される。
【0041】
球面状軸体接続部42bは、半球形状の直径が異なる第1半球体42hと第2半球体42jとの端面を対面させた状態にすることで、第2段差構造には端面42dが存在する。この構成により、球面状軸体接続部42bには、トーチ側受け部41やセンサ側受け部43が着脱自在に設置される。ここで、第1半球体42hの中心と第2半球体42jの中心とは、軸心上の同一点である。また、第1半球体42h及び第2半球体42jは、中心に溶接ワイヤW(
図3参照)を挿通する中空が形成されている。
【0042】
(トーチ側受け部の構成)
図5及び
図6に示すように、トーチ側受け部41は、金具本体42の球面状軸体接続部42bに前方(他端側)から装着され、金具本体42の取り付け角度、及び取り付け位置を調整する部材である。
トーチ側受け部41は、第1半球体42hの直径R12と外径が同一、あるいは外径が直径R13よりも大きく直径R12より自身(トーチ側受け部41)の強度を損なわない程度に小さいリング形状をなし、前後方向の厚みが第2半球体42jの高さよりも小さく形成されている。
【0043】
トーチ側受け部41は、リング状に形成され、その内面に第2半球体42jの球面と曲率が同じ(公差)曲面41c(第2滑動面)と摺動当接部41bの盗み部とから成る受け部41aが形成されている。受け部41aは、前後方向の奥行きが第2半球体42jの前後方向の高さよりも小さい。これにより、第2半球体42jは、側面41dと端面42dとが当接するまでの範囲において、受け部41aに嵌合した状態で滑動することができる。
【0044】
また、トーチ側受け部41は、内径が溶接トーチ21,22の端部21a,22aの外径より大きい凹形状の盗み部を備える摺動当接部41bがトーチ側に形成されている。摺動当接部41bは、収容部品51の内部に突出する溶接トーチ21,22の端部21a,22aが盗み部に挿入され、収容部品51の底面51aに当接した状態で摺動可能である。トーチ側受け部41の外径は、収容部品51の有底円筒部51bにおける内径R41よりも通電性を損なわない程度に小さく形成されている。これにより、トーチ側受け部41は、摺動可能な移動量が収容部品51の内径R41内に限定されている。
【0045】
(センサ側受け部の構成)
図5及び
図6に示すように、センサ側受け部43は、金具本体42の球面状軸体接続部42bに後方(一端側)から装着され、金具本体42の取り付け角度を調整する部材である。
センサ側受け部43は、金具本体42の第1半球体42hの直径R12と外径がほぼ等しく、かつ、円筒部分の外径R11よりも内径R31が大きいリング形状をなす。また、センサ側受け部43は、後端側の外面にフランジ43bが形成される。フランジ43bの外径は、収容部品51の有底円筒部51bにおける内径R41よりも大きく、締付部品52の内径R51よりも小さくなるように形成されている。
【0046】
センサ側受け部43は、前端側の内面に、第1半球体42hの球面と曲率が同じ曲面43d(第1滑動面)で形成される受け部43aが形成されている。受け部43aは、前後方向の奥行きが第1半球体42hの前後方向の高さと同等であり、前記した通り、円筒部分の外径R11よりも内径R31が大きい。これにより、第1半球体42hは、受け部43aに嵌合した状態で、外径R11と内径R31との間において滑動することができる。
【0047】
<収容部品及び締付部品の構成>
収容部品51及び締付部品52は、トーチ側受け部41やセンサ側受け部43により取り付け角度、及び取り付け位置が調整された金具本体42を溶接トーチ21,22の端部21a,22aに取り付ける部材である。この収容部品51及び締付部品52は、ここでは螺子構造により金具本体42を溶接トーチ21,22に取り付けるように構成されている。なお、収容部品51及び締付部品52を合わせて「締結部品」と呼ぶ場合がある。
【0048】
収容部品51は、外面の一端に螺旋状の溝を設けた有底円筒部51bを有し、締付部品52に対して雄ねじに相当する。収容部品51は、有底円筒部51bの内径R41が、第1半球体42hの直径R12やトーチ側受け部41の外径よりも大きく形成されている。また、収容部品51には、端部21a,22aの中空開口部にテーパーが形成された溶接トーチ21,22が底面51aから突出している。
【0049】
締付部品52は、内周面に螺旋状の溝を設けた円筒状体をなし、収容部品51に対して雌ねじに相当する。締付部品52は、内径R51がフランジ43bの外径よりも大きく形成されている。また、締付部品52は、第1基端トーチ保持部25及び第2基端トーチ保持部26側に、内径R52がフランジ43b部分の外径よりも小さい締付部52aが形成されている。締付部52aは、締付部品52が収容部品51に締め付けられることで、当接面52cがセンサ側受け部43のフランジ43bの端面43cに当接し、センサ側受け部43を締め付け方向(
図6の前方)に押圧する。締付部品52の収容部品51への締め付けは、スパナ等の工具を用いて行うのがよい。また、締付部品52は、図示しない止めねじ用の貫通孔52bが形成されている。図示しない止めねじは、締付部品52の締め付け後に、緩み止めとして用いることができる。
【0050】
この構成により、収容部品51及び締付部品52は、仮締め状態において、接続金具40を中心軸(
図5及び
図6の前後方向)に対して直交方向(上下左右方向)に移動可能、かつ、金具本体42が中心軸(
図5及び
図6の前後方向)に対して傾動可能に保持し、本締め状態において、接続金具40を前記の移動した位置や傾動した状態で固定する。
以上で、実施形態に係る接続金具40、タンデム溶接トーチ2、及びショックセンサユニット3についての説明を終了する。
【0051】
≪接続金具の角度調整機能、及び位置調整機能(オフセット調整機能)の説明≫
<接続金具の角度調整機能>
図2に示すタンデム溶接トーチ2(二電極一体型溶接トーチ)を構成する各々の溶接トーチ21,22が並列でない場合、平行した構造である第1基端トーチ保持部25及び第2基端トーチ保持部26(二つの取付口)に各溶接トーチ21,22を接続することができない。
【0052】
そこで、本実施形態に係る接続金具40は、
図7(適宜、
図6参照)に示すように、第1半球体42hがセンサ側受け部43に形成される受け部43aの曲面(第1滑動面)を滑動した状態、及び第2半球体42jがトーチ側受け部41に形成される受け部41aの曲面(第2滑動面)を滑動した状態で、締付部品52が収容部品51に締結される(本締め状態)。すなわち、接続金具40は、可動端に筒状体接続部42aが形成される金具本体42が中心軸に対して傾斜する(角度調整機能)。なお、接続金具40の球面状軸体接続部42bと収容部品51の有底円筒部51bとの間には、隙間が設けられる。この隙間は、後記する位置調整機能を実現するために金具本体42が摺動移動可能な空間である。
【0053】
その為、タンデム溶接トーチ2(二電極一体型溶接トーチ)を構成する各々の溶接トーチ21,22が並列でなくとも、各溶接トーチ21,22に取り付けられた接続金具40A,40Bが並列になるように各接続金具40A,40Bの角度を調整することで、ショックセンサユニット3の平行した構造である第1基端トーチ保持部25及び第2基端トーチ保持部26(二つの取付口)に各溶接トーチ21,22を接続することができる。その為、接続金具40A,40Bを用いれば、溶接トーチ21,22の曲げ加工精度や組立精度の確保のために必要な加工時間や調整時間、さらには熟練者による高度な技術を必要とせずに、ごく短い時間で接続することができる。
【0054】
また、接続金具40は、金具本体42が傾斜する角度に関わらず、第2半球体42jがトーチ側受け部41の曲面(第2滑動面)に面接触するので、通電性に影響を与えることなく、角度調整を行うことが可能である。
【0055】
ここで、金具本体42が傾斜する角度を所定範囲内に制限したい場合は、トーチ側受け部41の厚みや第2半球体42jの前後方向の高さと受け部41aの前後方向の奥行きとの関係、円筒部分の外径R11とセンサ側受け部43の内径R31との関係、円筒部分の外径R11と締付部52a部分の内径R52との関係を球継手の要領で調整すればよい。
【0056】
<位置調整機能(オフセット調整機能)>
図2に示すタンデム溶接トーチ2(二電極一体型溶接トーチ)を構成する各々の溶接トーチ21,22が並列であったとしても、二つの溶接トーチ21,22の軸心間の距離とショックセンサユニット3に構成される第1基端トーチ保持部25及び第2基端トーチ保持部26(二つの取付口)の軸心間の距離幅とに誤差がある場合、第1基端トーチ保持部25及び第2基端トーチ保持部26(二つの取付口)に各溶接トーチ21,22を接続することができない。
【0057】
そこで、本実施形態に係る接続金具40は、
図8(適宜、
図6参照)に示すように、トーチ側受け部41の外径が収容部品51の内径R41よりも小さく形成されることで収容部品51内部の接続金具40との間に隙間が形成され、金具本体42、トーチ側受け部41、及びセンサ側受け部43が一体的に組み立てられた状態となったまま収容部品51内部の隙間を中心軸に対して直交方向(上下左右方向)に摺動移動する(位置調整機能(オフセット調整機能))。そして、摺動移動した状態で、締付部品52が収容部品51に締結される(本締め状態)。
【0058】
その為、タンデム溶接トーチ2(二電極一体型溶接トーチ)を構成する二つの溶接トーチ21,22の軸心間の距離とショックセンサユニット3に構成される第1基端トーチ保持部25及び第2基端トーチ保持部26(二つの取付口)の軸心間の距離とに誤差がある場合でも、各溶接トーチ21,22に取り付けられた接続金具40A,40Bの幅が第1基端トーチ保持部25及び第2基端トーチ保持部26(二つの取付口)の幅になるように各接続金具40A,40Bの中心軸を調整するだけで、それぞれの軸心間の距離の誤差を吸収し、ショックセンサユニット3に構成される第1基端トーチ保持部25及び第2基端トーチ保持部26(二つの取付口)に各溶接トーチ21,22を接続することができる。その為、接続金具40A,40Bを用いれば、溶接トーチ21,22の曲げ加工精度や組立精度の確保のために必要な加工時間や調整時間、さらには熟練者による高度な技術を必要とせずに、ごく短い時間で接続することができる。
【0059】
ここで、接続金具40が移動する距離を所定範囲内に制限したい場合は、摺動当接部41bの内径とトーチ本体部21a,22aの外径との関係、トーチ側受け部41の外径や第1半球体42hの直径R12と収容部品51の内径R41との関係を調整すればよい。
【0060】
なお、
図7及び
図8では、接続金具40の角度調整機能、及び位置調整機能(オフセット調整機能)を別々に説明したが、
図2に示すタンデム溶接トーチ2(二電極一体型溶接トーチ)を構成する各々の溶接トーチ21,22が並列でなく、さらに、二つの溶接トーチ21,22の軸心間の距離とショックセンサユニット3に構成される第1基端トーチ保持部25及び第2基端トーチ保持部26(二つの取付口)の軸心間の距離とに誤差がある場合には、角度調整機能及び位置調整機能(オフセット調整機能)が同時に機能することになる。具体的には、各溶接トーチ21,22に取り付けられる接続金具40A,40Bは、可動端に筒状体接続部42aが形成される金具本体42が中心軸に対して傾斜し、さらに、中心軸に対して直交方向(上下左右方向)に移動した状態で締結することができる。
【0061】
ここで、角度調整機能により金具本体42が傾斜する方向、及び位置調整機能(オフセット調整機能)により金具本体42が摺動移動する方向は、共に3次元方向なので、これらの機能が同時に発揮される場合に、傾斜する方向と摺動移動する方向との組合せは様々なものが想定される。例えば、傾斜した方向にさらに移動することも可能であるし、傾斜した方向とは反対方向に移動することも可能であるし、傾斜した方向以外の他の方向(例えば、直交する方向)に移動することも可能である。
以上で、実施形態に係る接続金具40の位置調整機能(オフセット調整機能)及び角度調整機能についての説明を終了する。
【0062】
≪接続金具を用いた接続方法≫
続いて、
図9を参照して、接続金具40を用いたタンデム溶接トーチ2とタンデム用のショックセンサユニット3との接続方法について説明する。
最初に、接続金具40を用いてタンデム溶接トーチ2とタンデム用のショックセンサユニット3とを接続する者(以下では、「取付者」と呼ぶ。)は、金具本体42にトーチ側受け部41及びセンサ側受け部43を取り付け、接続金具40を組み合わせる(
図9(a)参照)。
【0063】
続いて、溶接トーチ21,22に形成される収容部品51に接続金具40を収容し、締付部品52A,52Bが収容部品51A,51Bに接続されているが完全に締結されていない程度(仮締め状態)に締め付けを行う(
図9(b)参照)。この仮締め状態では、接続金具40は、収容部品51内部において、摺動当接部41bを底面51aに当接した状態で中心軸に対して直交方向(上下左右方向)に摺動移動可能であると共に、中心軸に対して傾動可能である。
【0064】
続いて、取付者は、溶接トーチ21,22に取り付けた接続金具40の筒状体接続部42aをショックセンサユニット3の第1基端トーチ保持部25ならびに第2基端トーチ保持部26に接続する。このとき、溶接トーチ21,22と第1基端トーチ保持部25や第2基端トーチ保持部26との間に仮に位置ずれや角度ずれが発生しても、接続金具40が、収容部品51内部に形成される隙間内で中心軸に対して直交方向(上下左右方向)に摺動移動したり、中心軸に対して傾動することで、これらのずれを吸収して接続できる。取付者は、その後、締付部品52の締め付けを再度行い、締付部品52が収容部品51に完全に締結させる(本締め状態)。これにより、接続金具40が固定され、タンデム溶接トーチ2とショックセンサユニット3との接続が完了する(
図9(c)参照)。
【0065】
さらに、取付者は、それぞれの部品の隙間からろう材Bを注入してもよい。ろう材Bは、通電性のある材料(はんだ、スズ、亜鉛等)を用いるのがよい。これにより、接続金具40は、タンデム溶接トーチ2とショックセンサユニット3との接続状態を通電性に影響を与えることなく長期にわたって維持することができる(
図9(d)参照)。
【0066】
以上のように、実施形態に係る接続金具40を用いれば、溶接ロボットを製造する場合において、タンデム溶接トーチ2(二電極一体型溶接トーチ)とタンデム用のショックセンサユニット3との接続に際し、トーチ本体のカーブド型の形状や溶接トーチ同士の軸心間のなす角度の影響を受けることがない。そのため、タンデム溶接トーチ2(二電極一体型溶接トーチ)の製造に高度な曲げ加工の技術が必要ではなく、組み立てに時間がかかることがない。
以上で、実施形態に係る接続金具40を用いた接続方法についての説明を終了する。
【0067】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を変えない範囲で実施することができる。実施形態の変形例を以下に示す。
【0068】
実施形態の接続金具40は、球面状軸体接続部42bが、円筒部分の外径R11よりも大きい直径R12の半球形状をなす第1半球体42hと、円筒部分の外径R11よりも小さい直径R13の半球形状をなす第2半球体42jとで構成されていた。すなわち、第2半球体42jの直径R13<円筒部分の外径R11<第1半球体42hの直径R12という関係であった。しかしながら、第2半球体42jの直径R13を円筒部分の外径R11から第1半球体42hの直径R12の範囲内で設定してもよい。
【0069】
実施形態の接続金具40は、通電性を考慮して、溶接トーチ21,22と同じ材料を用いていたが、通電性が同様であれば異なる材料を用いることも可能である。また、センサ側受け部43は他の部品に比べて、溶接電流に影響を与えないので、トーチ側受け部41や金具本体42と通電性が異なる材料を用いたり、ゴム等の絶縁性材料を用いることも可能である。
【0070】
実施形態の接続金具40は、タンデム溶接トーチ2(
図4参照)側に球面状軸体接続部42b(
図5参照)を形成し、ショックセンサユニット3(
図4参照)側に筒状体接続部42aを形成していたが、タンデム溶接トーチ2側に筒状体接続部42aを形成し、ショックセンサユニット3側に球面状軸体接続部42bを形成してもよい。この場合、トーチ側受け部41及びセンサ側受け部43の構成も逆になる。