特許第5943497号(P5943497)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5943497
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】紙製カップ、その製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
   B31B 49/00 20060101AFI20160621BHJP
   B31B 1/88 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   B31B49/00 E
   B31B1/88 301
   B31B49/00 L
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-530233(P2015-530233)
(86)(22)【出願日】2015年3月3日
(86)【国際出願番号】JP2015056267
【審査請求日】2015年6月16日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000223193
【氏名又は名称】東罐興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083183
【弁理士】
【氏名又は名称】西 良久
(72)【発明者】
【氏名】門脇 貞一
【審査官】 長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−142837(JP,A)
【文献】 特開2011−184833(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/149074(WO,A1)
【文献】 特開昭60−143926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B31B 1/88
B31B 49/00
B65D 81/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙製カップの胴部、または胴部外周に巻き付ける外スリーブのブランクに、エンボスを対向する一対のエンボスロールによって成形してなる紙製カップの製造方法において、
該一対のエンボスロールの表面に形成される各押し型が、略同一形状であって、 規則的な間隔で縦横方向に延びて交差する格子枠で囲まれた各四角形のセルを仕切る平坦面からなる枠部と、前記セルの各辺の四方向からセルの中央側に向かって隆起する四つの側壁面および該側壁面の先端で集合する面または線状に形成される頂部を有する突起部とを備えており、
前記一対のエンボスロールの押し型が、それぞれの突起部を前記ブランクに向けて接近する方向に配置すると共に、
前記セルと、該セルの隣接する縦横の辺に沿って延びる二辺の枠部および枠部の交差個所とを含んだ単位部分の四角形の縦横の長さを各1ピッチとして、一方の押し型に対して他方の押し型を縦横方向に半ピッチずつずらして配置し、
前記ブランクに凹凸のエンボスを加工してなることを特徴とする紙製カップの製造方法。
【請求項2】
一対の押し型の各突起部の頂部が、対向する押し型で縦横に隣接する4つの突起部の中央となる枠部の所定の交差部分に接近した状態で対峙し、
一対の押し型の各突起部の側壁面の四つの隅部は、対向する押し型の4つの突起部のそれぞれの1個所の隅部と整合するように接近した状態で対峙し、
一対の押し型の各突起部の前記側壁面の四隅を除いた傾斜面は、対向する押し型の枠部と傾斜した状態で対峙し、
一対の押し型の縦または横方向に隣接する一対の突起部の間の枠部と、対向する押し型の横方向または縦方向に隣接する一対の突起部の間の枠部とが重なる交差個所では、前記一対の押し型の枠部が離間した状態で対峙してなることを特徴とする請求項1に記載の紙製カップの製造方法。
【請求項3】
一対の押し型の突起部の頂部が、対向する押し型で頂部と対峙する枠部の横幅以内の幅に設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の紙製カップの製造方法。
【請求項4】
一対の押し型は、先にブランクに接する押し型の縦枠の横幅と突起部の横幅に対して、前記押し型に対向して後からブランクに接する押し型の縦枠の横幅と突起部の横幅の方が短く設定されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の紙製カップの製造方法。
【請求項5】
紙製カップの胴部、または胴部外周に巻き付ける外スリーブのブランクに、エンボスを対向する一対のエンボスロールによって成形する紙製カップの製造装置において、
該一対のエンボスロールの表面に形成される各押し型が、略同一形状であって、 規則的な間隔で縦横方向に延びて交差する格子枠で囲まれた各四角形のセルを仕切る平坦面からなる枠部と、前記セルの各辺の四方向からセルの中央側に向かって隆起する四つの側壁面および該側壁面の先端で集合する面または線状に形成される頂部を有する突起部とを備えており、
前記一対のエンボスロールの押し型が、それぞれの突起部を前記ブランクに向けて接近する方向に配置すると共に、
前記セルと、該セルの隣接する縦横の辺に沿って延びる二辺の枠部および枠部の交差個所とを含んだ単位部分の四角形の縦横の長さを各1ピッチとして、一方の押し型に対して他方の押し型を縦横方向に半ピッチずつずらして配置され、
前記ブランクに凹凸のエンボスが加工されてなることを特徴とする紙製カップの製造装置。
【請求項6】
請求項1から4のいずれかに記載の紙製カップの製造方法に用いることを特徴とする紙製カップの製造装置。
【請求項7】
紙製カップの胴部、または胴部外周に巻き付ける外スリーブのブランクの表面と裏面に対向するエンボスを有する紙製カップにおいて、
ブランクの表面に、規則的な間隔で縦横方向に延びて交差する格子枠で囲まれた各四角形のセルを仕切る枠部と、前記セルの各辺の四方向からセルの中央側に向かってブランクの表面から一側方へ隆起する側壁面および該側壁面の先端で集合する面または線状に形成される頂部を有する凸部が形成されており、
ブランクの裏面に、ブランクの表面と同じ規則的な間隔で縦横方向に延びて交差する格子枠で囲まれた各四角形のセルを仕切ると共に、前記表面の枠部の縦方向および横方向に半ピッチずれて形成される枠部と、前記セルの各辺の四方向からセルの中央側に向かってブランクの裏面から他側方に隆起する側壁面および該側壁面の先端で集合する面または線状に形成される底部を有すると共に、前記表面の凸部の縦方向および横方向に半ピッチずれて形成されブランクの表面から見た凹部が形成されており、前記凸部の側壁面と凹部の側壁面が少なくとも四隅で一致した傾斜面からなることを特徴とする紙製カップ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内カップの外周に、エンボス加工を施した外スリーブを巻きつけてなる紙製カップ、その製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、紙コップまたは紙カップ等と称せられる紙製カップが使用されている。この紙製カップには、冷温の飲料水のほか、高温の飲料水等を収容して、その紙製カップの外周を安全に手指で掴むことができるように断熱性処理を施したものが知られている。
その例として、特許文献1に記載された断熱性紙カップは、紙カップ側壁部の外周に、凸部と凹部を交互に配列した紙製の断熱性シートを巻きつけた構成を有するものである。
このような断熱性紙カップによれば、断熱性シートに形成した凸部と凹部によって、高温の内容物の熱が直接カップの外周に伝わり難くなるため、カップの外周を容易に手指で掴むことが可能となる。
そして、断熱効果を高めるには、凸部を高くし、また凸部を密集させることで断熱効果を高めることができるが、押し型を用いたエンボス加工では、凸部を高くしたり、更に、凸部を密集して配置するようにした場合に、断熱性シートのブランクが押し型によって強圧されるために亀裂を生じたり破損するおそれがあった。
また、断熱用に限らず凹凸のエンボス加工したシートにおいては同様の不具合があった。
即ち、従来は、雄雌型で構成された押し型を用いたプレス加工又はロール加工であったが、前者のプレス加工では、順に手前からブランクを手繰り寄せながら織り込んでいくことはできない。また、ロール加工でも、上型と上型の凹凸を反転させた下型とでは、強圧個所が余裕なくかみ合ってしまい、ブランクが引っ張られて、切れたりしわが生じやすいという不具合が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第2603108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、上記事情に鑑みて創案されたものであって、その主たる課題は、 対向する一対のエンボスロールの表面に形成された一対の押し型を略同一形状で凸部が向かい合うように配置すると共に、一対の押し型を縦方向および横方向に半ピッチずらして配置して、一対のエンボスロール間を通るブランクを型押しすることで、前記ブランクに亀裂や損傷を生じさせることなく、凸部を高く隆起させると共に凸部を密集させたエンボスを形成しうるようにした紙製カップの製造方法、製造装置および紙製カップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の問題を解決するため、請求項1の発明では、
紙製カップの胴部、または胴部外周に巻き付ける外スリーブのブランクに、エンボスを対向する一対のエンボスロールによって成形してなる紙製カップの製造方法において、
該一対のエンボスロールの表面に形成される各押し型が、略同一形状であって、 規則的な間隔で縦横方向に延びて交差する格子枠で囲まれた各四角形のセルを仕切る平坦面からなる枠部と、前記セルの各辺の四方向からセルの中央側に向かって隆起する四つの側壁面および該側壁面の先端で集合する面または線状に形成される頂部を有する突起部とを備えており、
前記一対のエンボスロールの押し型が、それぞれの突起部を前記ブランクに向けて接近する方向に配置すると共に、
前記セルと、該セルの隣接する縦横の辺に沿って延びる二辺の枠部および枠部の交差個所とを含んだ単位部分の四角形の縦横の長さを各1ピッチとして、一方の押し型に対して他方の押し型を縦横方向に半ピッチずつずらして配置し、
前記ブランクに凹凸のエンボスを加工してなることを特徴とする。
請求項2の発明では、
前記一対の押し型の各突起部の頂部が、対向する押し型で縦横に隣接する4つの突起部の中央となる枠部の所定の交差部分に接近した状態で対峙し、
一対の押し型の各突起部の側壁面の四つの隅部は、対向する押し型の4つの突起部のそれぞれの1個所の隅部と整合するように接近した状態で対峙し、
一対の押し型の各突起部の前記側壁面の四隅を除いた傾斜面は、対向する押し型の枠部と傾斜した状態で対峙し、
一対の押し型の縦または横方向に隣接する一対の突起部の間の枠部と、対向する押し型の横方向または縦方向に隣接する一対の突起部の間の枠部とが重なる交差個所では、前記一対の押し型の枠部が離間した状態で対峙してなることを特徴とする。
請求項3の発明では、
一対の押し型の突起部の頂部が、対向する押し型で頂部と対峙する枠部の横幅以内の横幅に設定されていることを特徴とする。
また、請求項5の発明では、
紙製カップの胴部、または胴部外周に巻き付ける外スリーブのブランクに、エンボスを対向する一対のエンボスロールによって成形する紙製カップの製造装置において、
該一対のエンボスロールの表面に形成される各押し型が、略同一形状であって、 規則的な間隔で縦横方向に延びて交差する格子枠で囲まれた各四角形のセルを仕切る平坦面からなる枠部と、前記セルの各辺の四方向からセルの中央側に向かって隆起する四つの側壁面および該側壁面の先端で集合する面または線状に形成される頂部を有する突起部とを備えており、
前記一対のエンボスロールの押し型が、それぞれの突起部を前記ブランクに向けて接近する方向に配置すると共に、
前記セルと、該セルの隣接する縦横の辺に沿って延びる二辺の枠部および枠部の交差個所とを含んだ単位部分の四角形の縦横の長さを各1ピッチとして、一方の押し型に対して他方の押し型を縦横方向に半ピッチずつずらして配置され、
前記ブランクに凹凸のエンボスが加工されてなることを特徴とする。
更に、請求項7の発明では、
紙製カップの胴部、または胴部外周に巻き付ける外スリーブのブランクの表面と裏面に対向するエンボスを有する紙製カップにおいて、
ブランクの表面に、規則的な間隔で縦横方向に延びて交差する格子枠で囲まれた各四角形のセルを仕切る枠部と、前記セルの各辺の四方向からセルの中央側に向かってブランクの表面から一側方へ隆起する側壁面および該側壁面の先端で集合する面または線状に形成される頂部を有する凸部が形成されており、
ブランクの裏面に、ブランクの表面と同じ規則的な間隔で縦横方向に延びて交差する格子枠で囲まれた各四角形のセルを仕切ると共に、前記表面の枠部の縦方向および横方向に半ピッチずれて形成される枠部と、前記セルの各辺の四方向からセルの中央側に向かってブランクの裏面から他側方に隆起する側壁面および該側壁面の先端で集合する面または線状に形成される底部を有すると共に、前記表面の凸部の縦方向および横方向に半ピッチずれて形成されブランクの表面から見た凹部が形成されており、前記凸部の側壁面と凹部の側壁面が少なくとも四隅で一致した傾斜面からなることを特徴とする。
ここで紙製カップは、紙コップや、カップ状の紙製容器を含む広義で使用しており、原紙に各種素材のフィルムを積層したものも含む。
【発明の効果】
【0006】
本発明の紙製カップの製造方法、製造装置および紙製カップは、略同一形状の押し型を、その突起部が向かい合いように配置し、縦方向および横方向に半ピッチずらして配置した一対のエンボスロールにより、紙製カップの胴部、または胴部外周に巻き付ける外スリーブを形成するためのブランクに、その表側と裏側とを強圧することで、エンボスの凸部の高さを高くし、且つ凸部密度を高めることができるエンボスを、前記ブランクに亀裂や損傷を与えることなく成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】紙製カップの一部のエンボスを図示省略した正面図である。
図2】エンボスロールの一例を示す正面図である。
図3】一対のエンボスロールの側面図である。
図4(a)】エンボスを形成する一対の押し型の部分断面図であって、ブランク上部側用の部分断面図である。
図4(b)】エンボスを形成する一対の押し型の部分断面図であって、ブランク下部側用の部分断面図である。
図5】押し型を正面から見た展開図である。
図6】押し型の上下の突起部と枠部の一部を示す正面図である。
図7】ブランクの上部にエンボス加工する押し型の一部を示す平面から見た説明図である。
図8(a)】一対の押し型の強圧時の状態を示す説明図である。
図8(b)】図8(a)のハッチングが示す一対の押し型の位置関係を説明する図である。
図9(a)】ブランクの下部にエンボス加工する一方の押し型の一部を示す平面から見た説明図である。
図9(b)】ブランクの下部にエンボス加工する他方の押し型の一部を示す平面から見た説明図である。
図10図9の一対の押し型の強圧時の状態をハッチングで示す説明図である。
図11(a)】図8(a)のx−x線端面図である。
図11(b)】図8(a)のy−y線端面図である。
図11(c)】図8(a)のz−z線端面図である。
図11(d)】図11(a)の位置における一対の押し型で同時に挟まれている個所(直線)と挟まれていない個所とを横軸方向に並べ、縦軸方向をエンボスロールの流れ方向とした説明図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0008】
図1は、本実施例の紙製カップの側面図であり、1は紙製カップ、2は内カップ、3は外スリーブ、4は外スリーブ3に形成した凸部、5は外スリーブ3に形成された凹部である。
本実施例の紙製カップ1は、図1に示すように、上方が開口された逆円錐台形の紙製による内カップ2の胴部外周にエンボス加工を施した外スリーブ3を巻きつけた公知構成からなっているが、この発明では、紙製カップ1に外スリーブ3を設けず、内カップの胴部に直接にエンボス加工を施したものでもよい。
【0009】
本実施例で、外スリーブ3は、扇形に形成されたブランクBを用いており、この外スリーブ3には紙製カップの高さ方向(縦方向)と横方向(円弧方向)に沿って格子状となる多数の四角形の枠部6で囲まれて規則的に上下左右方向に並んだ凸部4と、前記枠部6の交差個所が最底部となる凹部5とが設けられた構成とされている(図5の押し型参照)。
【0010】
このような外スリーブ形状で、凸部4を紙製カップの上下方向(縦方向)および、左右方向(横方向)にそれぞれ規則的に整列させて配置するには、外スリーブ3の紙製カップの上側に配置される凸部4の横幅と枠部6の横幅は、その幅を紙製カップの下側に向かって段階的に縮小して設定する必要がある。縦列における各凸部4の縦幅は上下で同じであってもよいし、上下の一方(例えば下方)に向かって漸次短くするなど、凸部4が規則的に揃っていれば、任意の長さでよい。
【0011】
更に、凸部4の隆起する高さを、紙製カップの上から下に向かって次第に低くなるように形成しておけば、スタッキングした紙製カップを下または上から1つずつ取り外しやすくなる。
図示例では、格子状の枠部6は、縦と横が直角に交差する正方形または長方形の場合を例示したが、この発明では枠部6は直角以外の角度で交叉する菱形などの四角形であってもよい。また、凸部4の縦横の配列は、斜めに傾斜するものでもよい。
【0012】
次に、前記凸部4と凹部5を形成する押し型K1,K2の一例について説明する。
押し型K1,K2は、夫々同様の形状から構成されており、一対のエンボスローラR1,R2の表面に形成されており、図示例では押し型K1を上型、押し型K2を下型とし、下型に半ピッチ遅れて上型がブランクBに押し当てられるが、この発明では逆でもよい(図2図6参照)。
以下、説明の便宜上、異なる押し型で同一の構造については、説明の便宜上、一方には同一の符号に「'」を付して説明する。
【0013】
前記押し型K1(K2)は、図7に一部を示すと、縦横に交差する格子枠状に形成される帯状で平坦面からなる枠部15a、15b(15a'、15b')と、該枠部15a、15bで仕切られた四角形の各セルcの各辺から該セルcの中央側に向かって傾斜しながら突出する4つの側壁面12(12')および、該側壁面12の上端で面または線状に形成される頂部13(13')を備えた突起部14(14')を有している。
ここで、前記セルcは、突起部14の基端外周と一致する。
【0014】
そして、各押し型K1,K2は、図4(a)(b)に示すように、それぞれの突起部14、14'の頂部13、13'がずれて向かい合うように前記一対のエンボスロールR1,R2に配置されている。
なお、図4(a)は紙製カップの上方側、同(b)は下方側の凹凸を形成するものであり、上方側に比して下方側の突起部14、14'の方が、高さが低く、横幅も狭くなっている(図6参照)。
ここで、横幅が狭いのは、本実施例で、上方側の左右一列の突起部の数と下方側の左右一列の突起部の数を同数に設定したためである。
【0015】
前記押し型K1,K2は、前記四角形のセルcと、該セルcの縦横に隣接する二辺c1,c2に沿うと共に、該二辺の交点c3に対応した交差個所を含んだL状の枠部分F(図7の斜線部分)とを合わせた矩形の縦横の長さL1、L2をそれぞれ1ピッチとし、一方のエンボスロールR1の押し型K1に対して他方のエンボスロールR2の押し型K2を縦方向および横方向にそれぞれ半ピッチ(L1/2、L2/2)の間隔でずらして配置して、型押しに使用する(図8参照)。
【0016】
これにより、一方の押し型K1(図8(a)では細線で示す。)の突起部14の頂部13が、対向する押し型K2(図8(a)では太線で示す。)で縦横に隣接する4つの突起部14'で囲まれた中央であって、枠部15a'と15b'の交差部15c'に接近して対峙し、前記一対の押し型K1の突起部14の側壁面12の四つの隅部12cは、対向する押し型K2の前記4つの各突起部14'の側壁面12'の近接する隅部12c'と略同一角度の傾斜面となって接近して対峙するよう配置される(図11参照)。
【0017】
同様に他方の押し型K2の突起部14'の頂部13'は、対向する押し型K1で縦横に隣接する4つの突起部14で囲まれた中央に位置する、枠部15a、15bの交差個所15cに接近して対峙し、前記他方の押し型K2の突起部14'の側壁面12'の隅部12c'は、対向する押し型K1の前記4つの突起部14の側壁面12の近接する隅部12cと略同一角度の傾斜面となるように接近して対峙して配置される。
図示例の場合、隅部12c、12c'は、1つの突起部内で隣接する側壁面12の端部が接する、前記2つの側壁面の上端から下端まで伸びる稜線を略中心にして、突起部14と14'とが相互に重なりうる範囲をいう。
換言すると、図示例で前記隅部は、平面視で正方形または長方形からなり、前記稜線は1つの対角線位置となり、該稜線を境にして前記セルcの縦方向と横方向とに傾斜する2面を含んでいる。
【0018】
上記のように押し型K1,K2を配置したエンボスロールR1、R2の間にブランクBを通して強圧し、凹部5と凸部4のエンボス模様が加工される。
ここで、一方の押し型K1の突起部14が、ブランクBの表面に凸部4を形成し、他方の押し型K2の突起部14'がブランクBの裏面に凸部、即ち、ブランク表面から見て凹部5を形成することになる。
【0019】
図8(a)(b)を参照にして説明すると、前記突起部14の頂部13と対峙する枠部15a'、15b'の交叉個所15c'とで平行に接近して強圧される個所が、凸部4の頂部が形成されるA部(図8(b))となる。
逆に、前記突起部14'の頂部13'と対峙する枠部15a、15bの交叉個所15cとで平行に接近して強圧される個所が、凹部5の底部が形成されるD部となる。
【0020】
次に、前記突起部14の側壁面12の四隅12cは、前記4つの突起部14'の側壁面12'の近接する隅部12c'と略同一角度の傾斜面となるように略平行に接近して強圧される個所が、凸部4の側壁面の隅部および同時に凹部5の側壁面の隅部が形成されるB部となる。
【0021】
前記突起部14の側壁面12の四隅12cを除いた側壁面12の中央部分で頂部13の縦方向および横方向に延びる傾斜面は、平坦面の枠部15b'と対峙するC部となる。
同様に、突起部14'の側壁面12'の四隅12c'を除いた側壁面の中央部分で頂部13'の縦方向および横方向に延びる傾斜面は、平坦面の枠部15bと対峙するE部となる。
このC部およびE部は、傾斜面の一方が水平な平坦面と接近し、他方が前記水平面から離間した状態で強圧されるので、ブランクは接近側がやや挟圧されるが離間側は自由となる。
【0022】
縦方向に隣接する突起部14間で対向するC部間に挟まれた枠部15a'の個所であって、横方向に隣接する突起部14'間で対向するE部間に挟まれた枠部15bとの交差個所は、平坦な枠部が離間した状態で対峙するF部となる。
同様に、縦方向に隣接する突起部14'間で対向するE部間に挟まれた枠部15aの個所であって、横方向に隣接する突起部14間で対向するC部間に挟まれた枠部15b'の交差個所は、平坦な枠部が離間した状態で対峙するF部となる。 このF部は、強圧時に枠部間が離間しているので強圧されず、ブランクBの該当個所の変形は自由となる。
【0023】
上記のようにブランクBは表裏両側から型押しされるので、ブランクBの表面と裏面の凹部と凸部は縦横に半ピッチずれた状態でエンボス加工される。
この際に、従来は、ブランクB全面を面で挟み込んでいたため、紙の逃げ場がなかったが、本実施例では、押し型K1,K2は、全てが面で挟み込むのではなく、線で挟む個所があるために、型押しによる強圧時にブランクBに自由に変形しうる個所が残されて、当該個所は凸部と凹部の成形時に負荷のかかる方に手繰られて変形しうるので、凹凸の高低差を確保すると共に、凸部を可及的に密集させたエンボス加工を、ブランクBに亀裂や損傷を与えることなく形成することができる。
【0024】
即ち、軸方向に対して、面(線)で、挟み込んでいる個所の両端は、自由にブランクが動くことができる。(図11(a)、(d)参照)。
同時に、一対の押し型K1.K2で押して挟まれている個所の次に、エンボスロールR1、R2の回転で前記押し型K1、K2は、前の段階で押していなかった(自由にブランクが動く)個所を押す。
つまり、図11(d)に示すように、挟まれている個所の両端の自由に動く個所が、前記ロールの回転により、次に挟み込まれる個所になる。
このように、前記押し型K1、K2で押しているところと押していない個所の分布が、軸方向に対して均等になる。
以上の理由により、前記ブランクにエンボスを成形してもしわができにくく、破けにくい。
【0025】
本実施例では、前述のように、ブランクの紙製カップ装着時に下方となる部分では、突起部14,14'や枠部15a、15a'の横幅が狭くなり、且つ突起部14、14'の高さも低く設定されている。
このような場合の突起部14、14'の形状の一例を図9(a)(b)に示す。
この突起部14、14'は、セルcの4辺からそれぞれ中央に向かって傾斜する側壁面12、12'を有し、一方の対向する一対の側壁面は、その上端が集合して線状の頂部13、13'を形成し、他方の対向する一対の側壁面はその上端が前記頂部13、13'のそれぞれの端部で集合する寄せ棟形状の様に形成されている。
【0026】
本実施例では、ブランクBが扇形となっているため、上下の押し型K1、K2の突起部14、14’(セルc)は、ブランクBの横幅の長い上端の弧側から横幅の短い下端の弧側、つまり、カップの胴部の上から下に向かって、徐々に横幅が狭くなっている。
そこで、説明の便宜上、前記セルcの行を上から下に向かう列方向に順次、行1,行2,行3・・とすると、セルcの各行におけるセルの横幅は同一であるが、相対的に下の行のセルc(たとえば行2のセル)の横幅は上の行のセルc(たとえば行1のセル)の横幅以下の長さとなる。
また、上型となる押し型K1と下型となる押し型K2の各セルcの横幅は、上下方向に半ピッチずれて、下型の押し型K2に対して遅れて上型の押し型K2がブランクBにあたるので、下型の押し型K2の行1のセルcの横幅は、上型の押し型K1の行1のセルcの横幅、および下型の押し型K2の行2のセルcの横幅以上となり、この関係は順次繰り返される。
セルcの横幅は上下の各行毎に変化するものでも、複数の行毎に変化するものでもよい。
【0027】
そして、突起部14、14'の頂部13、13'は、直線状となっており、プレス時、枠部15a、15a'の横幅内に前記頂部13'、13がそれぞれ含まれており、且つ該頂部13、13'は、それぞれ枠部の交差個所15c'、15cの面に主要部が含まれるように配置される。
図10に押し型K1とK2を半ピッチずらして配置した場合を図示し、前記図8(b)のA部からF部のハッチングを用いて、押し型の組み合わせを図示した。
その他の構成は前記実施例と同様であるので、その説明を省略する。
このような突起部14,14'と格子状となる縦横の枠部15a、15b、15a'、15b'であっても、前記図8と同様に、一方の押し型K1と他方の押し型K2とが縦方向および横方向に半ピッチずらして配置されているので、ブランクBの下方に前記構造に準じた凸部4と凹部5を形成することができる(図8参照)。
【0028】
これにより、 ブランクBの表面には、規則的な間隔で縦横方向に延びて交差する格子枠で囲まれた各四角形のセルcを仕切る四角形の枠部6と、枠部6で囲まれたセルcの各辺の四方向からセルcの中央側に向かってブランクBの表面から一側方へ隆起する側壁面4aおよび該側壁面4aの先端で集合する面または線状に形成される頂部4bを有する凸部4が形成されている。
【0029】
一方、ブランクBの裏面には、ブランクBの表面と同じ規則的な間隔で縦横方向に延びて交差する格子枠で囲まれた各四角形のセルcを仕切ると共に、前記表面の枠部6の縦方向および横方向に半ピッチずれて形成される枠部6'と、前記セルcの各辺の四方向からセルcの中央側に向かってブランクBの裏面から他側方に隆起する側壁面6a'および該側壁面6a'の先端で集合する面または線状に形成される凹部5b'を有すると共に、前記表面の凸部4の縦方向および横方向に半ピッチずれて形成されブランクBの表面から見た凹部5'が形成されており、前記凸部4の側壁面4aと凹部5'の側壁面5a'が少なくとも四隅で一致した傾斜面が形成される。
なお、前記凹部5'は、ブランクBの表面から見たら凹部だが、裏面から見たら凸部である。
【0030】
そして、凸部4と凹部5'の側壁面4a、5a'の中央部分や、枠部6、6'の一定間隔毎の交差個所は直接に強圧されることがないので、前記型押しで負荷のかかった個所があっても、自由にブランクを手繰りよせることができ、ブランクBを亀裂させたり、損傷されることなく、型押しを行うことができる。
【0031】
上記実施例では、ブランクBが扇形の場合を例示したが、正方形や長方形、その他の任意の形状であってもよい。
また、ブランクBの全面にエンボス加工する一例を示したが、ブランクBの一部にエンボス加工する場合でもよい。
その他、要するにこの発明の要旨を変更しない範囲で種々設計変更しうること勿論である。
【符号の説明】
【0032】
1 紙製カップ
2 内カップ
3 外スリーブ
4 凸部
5 凹部
6 枠部(格子状の枠部)
12,12' 側壁面
13,13' 頂部
14、14' 突起部
15a、15a'縦方向の枠部
15b、15b'横方向の枠部
15c、15c'交差個所
c セル
c1,c2 セルの隣接する2辺
c3 交点
K1,K2 押し型
R1、R2 エンボスロール
【要約】
【課題】紙製カップの胴部、又は胴部外周に巻付ける外スリーブに、エンボスを対向する一対のエンボスロールによって成形する紙製カップの製造方法、製造装置及び紙製カップの改良に関する。
【解決手段】一対のエンボスロールの表面に形成される各押型が、略同一形状で、規則的な間隔で縦横方向に延びて交差する格子枠で囲まれたセルを仕切る平坦面からなる枠部と、前記セルの各辺の四方向からセルの中央側に向かって隆起する四つの側壁面及び該側壁面の先端で集合する面又は線状に形成される頂部を有する突起部とを備え、前記一対の押型が、それぞれの突起部を前記ブランクに向けて接近する方向に配置すると共に、前記セルと、該セルの隣接する縦横の辺に沿って延びる二辺の枠部及び枠部の交差個所とを含んだ単位部分の四角形の縦横の長さを各1ピッチとして、一方の押し型に対して他方の押型を縦横方向に半ピッチずつずらして配置してなることを特徴とする。
【選択図】図7
図1
図2
図3
図4(a)】
図4(b)】
図5
図6
図7
図8(a)】
図8(b)】
図9(a)】
図9(b)】
図10
図11(a)】
図11(b)】
図11(c)】
図11(d)】