特許第5943521号(P5943521)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5943521高濃度夾雑細胞群から低濃度の特定細胞を検出する方法と検出した細胞を回収し解析する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5943521
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】高濃度夾雑細胞群から低濃度の特定細胞を検出する方法と検出した細胞を回収し解析する方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/02 20060101AFI20160621BHJP
   G01N 15/14 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   C12Q1/02
   G01N15/14 P
   G01N15/14 C
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-544337(P2012-544337)
(86)(22)【出願日】2011年11月21日
(86)【国際出願番号】JP2011076800
(87)【国際公開番号】WO2012067259
(87)【国際公開日】20120524
【審査請求日】2014年9月2日
(31)【優先権主張番号】特願2010-258934(P2010-258934)
(32)【優先日】2010年11月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505281023
【氏名又は名称】株式会社オンチップ・バイオテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】武田 一男
(72)【発明者】
【氏名】神間 史恵
(72)【発明者】
【氏名】高尾 雅
【審査官】 福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−181349(JP,A)
【文献】 特表2005−520513(JP,A)
【文献】 Cytometry Part B, (2009) CCS Abstracts, p.405-406, 31
【文献】 Cytometry Part B, (2009) CCS Abstracts, p.405, 30
【文献】 Cytometry Part A, (published online 2010 Mar), vol.77A, no.7, p.591-606
【文献】 Mouse Monoclonal Antibody Against Human Epithelial Cells Clone 5E11,StemCell Technologies, 2004,[検索日:2015年10月5日],URL,http://www.veritastk.co.jp/attached/1223/01422-PIS.pdf
【文献】 医学のあゆみ, 2009, vol.228, no.11, p.1105-1108
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q
C12M
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
定の細胞の数を評価する方法であって、
特定の細胞を濃縮し、蛍光染色処理を行う前処理過程と、
特定の細胞をその蛍光信号強度に基づいて自動的に識別し、試料中の全ての特定細胞を計数する過程とを含み、
前記細胞を計数する過程は、サンプルリザーバー及び回収リザーバー、並びにサンプルリザーバーの底部から回収リザーバーの底部へのマイクロ流路を基板上に含む、交換可能なマイクロ流路チップをフローセルとして用いるフローサイトメーターにより、サンプル液を全量測定し、自動的に特定細胞を計数するものであって、前記サンプル液の全量測定の終点を検知する方法は、サンプルリザーバーのサンプル液が流れきった後にマイクロ流路内で発生する気泡を、異なる方向の複数の散乱光信号を用いて、サンプル液の終点として検出することを特徴とする、特定細胞の数の評価方法。
【請求項2】
前記前処理過程において、特定の細胞を生きたまま濃縮し、前記細胞を計数する過程において、細胞を生死判定別に計数する、請求項1に記載の特定細胞の数の評価方法。
【請求項3】
梢血から末梢循環腫瘍細胞(CTC)を検出するCTC濃度評価方法であって、
CTCの濃縮と蛍光染色処理とを含む前処理過程と、
CTCを識別計数する過程とを含み、
前処理過程は、
上皮性細胞由来のCTCに発現しているEpCAMに磁気ビーズを付着させて磁石を利用してCTCを濃縮する処理と、
CTCを抗EpCAM抗体又は5E11抗体を利用して蛍光標識する処理とを含み、
CTCの識別計数過程は、
サンプルリザーバー及び回収リザーバー、並びにサンプルリザーバーの底部から回収リザーバーの底部へのマイクロ流路を基板上に含む、交換可能なマイクロ流路チップをフローセルとして用いるフローサイトメーターにより、サンプル液を全量測定し、CTCを計数するものであって、前記サンプル液の全量測定の終点を検知する方法は、サンプルリザーバーのサンプル液が流れきった後にマイクロ流路内で発生する気泡を、異なる方向の複数の散乱光信号を用いて、サンプル液の終点として検出することを特徴とする、CTC濃度評価方法。
【請求項4】
前記前処理過程が、更に細胞膜透過性及び細胞膜非透過性の2種類の核染色処理を含み、前記識別計数過程が、生きているCTCと死んでいるCTCとを区別して計数する
請求項3に記載のCTC濃度評価方法。
【請求項5】
前記前処理過程が、CTCに対して抗EpCAM抗体を固定した磁気ビーズを付着させて磁石を利用してCTCを濃縮する処理、APC標識抗EpCAM抗体によるCTCの蛍光標識処理、及びSYTO9及びPIによる核染色処理とを含み、
CTCの識別計数過程は、波長640nm近傍の光励起で発生する波長が異なる2種類の蛍光信号強度の比率でAPC蛍光スペクトルを識別することでCTCの同定を行い、波長480nm近傍の光励起で発生するSYTO9とPIの蛍光信号によりCTCの生死判定を行う、請求項4に記載のCTC濃度評価方法。
【請求項6】
前記前処理過程において、APC標識抗EpCAM抗体に代えて、APC標識5E11抗体を用いる、請求項5に記載のCTC濃度評価方法。
【請求項7】
前記CTCを濃縮する処理が、APC標識抗EpCAM抗体によるCTCの蛍光標識、及び抗APC抗体磁気ビーズによるCTCへの磁気ビーズの付着を含む、請求項3に記載のCTC濃度評価方法。
【請求項8】
APCの蛍光信号によるCTC識別と、PIによる死菌識別とを同時に解析可能とするために、PI蛍光励起用青色レーザー出力をAPC蛍光励起用赤色レーザー出力より、1/10以下に設定することを含む、請求項5に記載のCTC濃度評価方法。
【請求項9】
上皮性細胞由来のCTCに発現しているEpCAMに磁気ビーズを付着させて磁石を利用してCTCを濃縮する処理の代わりに、白血球に発現している表面マーカーのうちCEC及び/又はCEPに発現していない抗原に対する抗体磁気ビーズを利用したネガティブセレクションにより白血球を除去してCTCを計数することを特徴とする請求項3に記載のCTC濃度評価方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がん患者の末梢血から末梢循環腫瘍細胞(CTC)の検出方法など、高濃度夾雑細胞群から特定細胞を検出する方法、及びそれを利用したがん治療などの治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化学療法の効果を予測するバイオマーカーとしては、これまでに末梢循環腫瘍細胞(CTC:circulating tumor cell)や、末梢循環血管内皮細胞(CEC:circulating endothelial cell)、骨髄由来の血管内皮前駆細胞(CEP:circulating endothelial progenitor)が有用であるとの報告がなされている(非特許文献1)。末梢循環腫瘍細胞(CTC)検出は以下の意義がある。すなわち、癌細胞の転移を血液中で検出することは、以下の理由から、転移がんの発見やがん治療に有効であると考えられる。
(1) 癌組織から癌細胞が脱落し末梢血中に入り、他に運ばれて増殖することががん転移であると考えられる。
(2) CTC数と、癌の転移及び予後とは相関することが報告されている。
(3) 乳癌の進行度や悪性度、予後をCTC数で診断することが臨床的に行われている。
【0003】
このような細胞をがん患者の末梢血から検出することを考えると、高濃度の血球細胞群の中からそれらの濃度に対して1000,000,000分の1の割合程度の非常に低濃度の細胞を検出することになる。このため、数え落としや患者の検体間のコンタミネーションが大きな誤診断につながる。CTC計測としては、現在唯一の製品であるCell Searchシステム(米国製)を用いて行われている例がある。この技術は、特許文献1と非特許文献1に開示されているように、核染色とサイトケラチン染色を行いCD326抗体磁気ビーズを反応させて磁場を利用して浮上させた細胞をレーザービームを走査することで蛍光イメージを取得して、人間がその画像をみてCTCと判断する方法であり、装置による自動認識ではない。次にCTC-chipと呼ばれる技術がある。この技術は、特許文献2に開示されているように、名刺サイズのシリコンウエハーに8万本の微小ポストを形成したチップに血液を通し、CD326に対する抗体をコーティングした8万本の微小ポストの全数画像認識により吸着したCTCを識別計数する方法である。特許文献3は、特許文献1の方法で検出されたCTCを回収し、fluorescence in situ hybridization (FISH) 法によりCTCの遺伝子解析を行う方法を開示している。非特許文献2は、がん細胞のみに感染するウイルスを用い、そのウイルスによってがん細胞に蛍光タンパクであるGFPを発現させて、蛍光顕微鏡で検出する方式を開示する。特許文献4には、複数の熱応答性磁性粒子を用いて、それぞれに異なる種類の抗体を結合させて、多種類の細胞群と抗原抗体反応をさせたのちに、勾配磁場による分離を複数の温度で順次行うことで、複数の抗原抗体反応にもとづく選別分離を行い、試料液回収可能なフローセルを用いるフローサイトメーターで測定し、細胞数を計測し、計測後の細胞を回収することで、多種類の細胞群から特定の細胞を分離する方法が記述されている。
【0004】
また、末梢血からCTCを磁気濃縮する基礎研究用試薬キットとして、CD326 (EpCAM) Tumor Cell Enrichment and Detection Kit (Miltenyi Biotec, Catalog # 130-090-500)が知られている。このキットは、CD326(EpCAM)抗体磁気ビーズと、サイトケラチン用蛍光抗体などからなり、サイトケラチン染色の蛍光をもとに検出することを前提としているため、濃縮された細胞は細胞内のサイトケラチン染色処理の段階ですべて死んだ細胞である。Stem Cell Technologies社の上皮性細胞を磁気濃縮する試薬キット(HUMAN EpCAM POSITIVE SELECTION KIT(Stem Cell Technologies, Catalog # 18356))も知られているが、そのカタログには、血液中のCTCを濃縮するためのプロトコールは記載されていない。また、血液中のCTCをCTC以外の夾雑細胞である赤血球と白血球とは抗体を利用してクロスリンクさせて密度勾配遠心によりネガティブセレクションするための試薬キット(Tumor Cell Enrichment Cocktail(Stem Cell Technologies, Catalog # 15167))も知られている。但し、このキットで濃縮された細胞がCTCのみであるという確証は得られない。また、抗体磁気ビーズと磁石によるネガティブセレクションによってCTCを濃縮する試薬キット(Tumor Cell Enrichment Cocktail(Stem Cell Technologies, Catalog # 14152))も知られている。同様に、このキットで濃縮された細胞がCTCのみであるという確証は得られない。蛍光分子であるアロフィコシアニン(allophycocyanin;以下、APCと称する)に対する抗体磁気ビーズ(APC Selection Kit(Stem Cell Technologies, Catalog # 18451))では、抗体によるAPC標識後にAPCに対して磁気ビーズを付ける。特許文献5は、フローセルを含む送液系が固定である従来方式のフローサイトメーターの技術内容を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】US20020172987
【特許文献2】US20070026469
【特許文献3】特開2007-178193
【特許文献4】特開2010-181349
【特許文献5】特開2006-29921
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】医学のあゆみ Vol228 No11 2009年 1105-1108頁
【非特許文献2】The Journal of Clinical Investigation Volume 119 Number 10 October 2009
【非特許文献3】「アイエスエーシー2010プログラム・アンド・アブストラクト(ISAC2010 Program and Abstract)」2010年、第180頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
CTCを検出し計数する方法は、1mL当り109個の高濃度の夾雑細胞群から1個/mL程度の少数の特定の細胞数を検出計数する方法である。この方法については、検体間クロスコンタミネーションフリーの条件で、CTCを生きた状態で濃縮し、生きているCTCと死んでいるCTCを区別して検出計数し、CTCを生きたまま回収可能とする方法の公知例が存在しない。
【0008】
例えば、CTCを検出する方法としては特許文献1に開示されている方法があり、その方法に基づく装置がCell Searchシステムとして製品化されている。その方法は装置が取得した複数の候補細胞の画像群から、判定者が人間の画像認識を利用して目的の細胞かどうか判定する方法である。この方法の欠点は、自動判定ではない点、及びCTCを認識するために、細胞内サイトケラチンの蛍光抗体染色を行うために細胞膜に穴をあける処理が必要となり、そのためCTCがその処理で死んでしまう点である。そのため、その細胞は培養不可能である。
【0009】
特許文献2に開示されている方法は、チップ内に形成した約8万本の円柱に抗体を利用してトラップした特定の細胞を画像計測する方法であり、8万本全数の画像認識に8時間以上を要することが問題である。
【0010】
非特許文献2に開示されている方法は、がん細胞に特異的に感染するウイルスを患者が採血した末梢血のCTCに感染させ、GFPが発現したCTCを、蛍光顕微鏡で検出する方法である。検出に十分なGFPが発現するまで要する時間は1日以上必要である。そのため検出は早くとも採血から2日後になってしまう。更にウイルスが感染しているためにその細胞の培養は不可能である。
【0011】
特許文献5に記載されているように、従来のフローセルを含む送液系が固定であるフローサイトメーターは、検体間クロスコンタミネーションをゼロにすることは不可能であり、更にサンプルチューブ内のサンプル液をキャピラリーで上に吸い上げてフローセルにサンプル液を流す方式をとるために、サンプルチューブの底にサンプル液が残るので、原理的に全量測定が不可能である。つまり、従来のサンプルの全量測定が不可能なフローサイトメーターでは、サンプルに含まれる細胞総数を評価することは出来ない。また、細胞は重力によって沈降するために、サンプル液の底に細胞が時間と共に濃縮する。その現象にも拘わらずに細胞濃度の絶対評価を可能とするためには全量測定を行うことが必須である。
【0012】
特許文献4には、コンタミネーションフリーを実現したフローサイトメーターの技術が記載されているが、その技術を利用した全量測定方法は記載されていない。
更に、非特許文献3には、CTCを磁気ビーズによって濃縮し、そして生死を判別して測定する方法が記載されている。しかしながら、実験的にCTCを添加した場合の、CTCの回収率は70%であった。ここでは、全量測定の方法を記載していない。
【0013】
以上の従来技術の課題は、以下の様に分類することができる。
【0014】
第一課題
CTCを生きたままの状態で短時間に自動判定し計数する技術がない。
【0015】
第二課題
生きた状態のCTCと死んだ状態のCTCを区別して検出計数し、その後生きたCTCを回収し培養する可能とするプロセスが実現していない。このプロセスは、培養するために検体間クロスコンタミネーションフリーと培養する細胞の無菌処理が必須条件である。
【0016】
第三課題
CTCを短時間に自動判定可能と考えられるフローサイトメーター技術において、コンタミネーションフリーかつサンプル全量を測定可能な公知例が存在しない。その他の公知の測定方法は第一課題を満足しない。
【0017】
本発明は、上記三種類の課題を同時に解決する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、大量の細胞中に含まれている少量の細胞を、コンタミネーションフリーかつサンプル全量を測定することについて、鋭意検討を重ねた結果、サンプルリザーバー及び回収リザーバー、並びにサンプルリザーバーの底部から回収リザーバーの底部へのマイクロ流路を基板上に含む、交換可能なマイクロ流路チップをフローセルとして用いるフローサイトメーターを用い、サンプル液の全量を測定することによって、前記課題を解決できることを見出した。具体的には、前記マイクロ流路チップは、サンプルリザーバーの底部から直接マイクロ流路へサンプル液を全量流すことが可能であり、そしてサンプル液が全量流れた後に発生する気泡により、全量測定の終点を検出することが可能であることを見出した。
本発明は、このような知見に基づくものである。
【0019】
すなわち、本発明は、
[1]高濃度の細胞から特定の細胞の数を評価する方法であって、特定の細胞を生きたまま磁気濃縮し、蛍光染色処理を行う前処理過程と、特定の細胞をその蛍光信号強度に基づいて自動的に識別し、試料中の全ての特定細胞を計数する過程とを含み、前記細胞を計数する過程は、サンプルリザーバー及び回収リザーバー、並びにサンプルリザーバーの底部から回収リザーバーの底部へのマイクロ流路を基板上に含む、交換可能なマイクロ流路チップをフローセルとして用いるフローサイトメーターにより、サンプル液を全量測定し、自動的に特定細胞を計数するものであって、前記サンプル液の全量測定の終点は、サンプルリザーバーのサンプル液が流れきった後にマイクロ流路内で発生する気泡を終点として検出することを特徴とする、特定細胞の数の評価方法、
[2]前記前処理過程において、特定の細胞を生きたまま濃縮し、前記細胞を計数する過程において、細胞を生死判定別に計数する、[1]に記載の特定細胞の数の評価方法、
[3]高濃度の血球を含む末梢血から末梢循環腫瘍細胞(CTC)を検出するCTC濃度評価方法であって、CTCの濃縮と蛍光染色処理とを含む前処理過程と、CTCを識別計数する過程とを含み、前処理過程は、上皮性細胞由来のCTCに発現しているEpCAMに磁気ビーズを付着させて磁石を利用してCTCを濃縮する処理と、CTCを抗EpCAM抗体又は5E11抗体を利用して蛍光標識する処理とを含み、CTCの識別計数過程は、サンプルリザーバー及び回収リザーバー、並びにサンプルリザーバーの底部から回収リザーバーの底部へのマイクロ流路を基板上に含む、交換可能なマイクロ流路チップをフローセルとして用いるフローサイトメーターにより、サンプル液を全量測定し、CTCを計数するものであって、前記サンプル液の全量測定の終点は、サンプルリザーバーのサンプル液が流れきった後にマイクロ流路内で発生する気泡を終点として検出することを特徴とする、CTC濃度評価方法、
[4]前記前処理過程が、更に細胞膜透過性及び細胞膜非透過性の2種類の核染色処理を含み、前記識別計数過程が、生きているCTCと死んでいるCTCとを区別して計数する、[3]に記載のCTC濃度評価方法、
[5]前記前処理過程が、CTCに対して抗EpCAM抗体を固定した磁気ビーズを付着させて磁石を利用してCTCを濃縮する処理、APC標識抗EpCAM抗体によるCTCの蛍光標識処理、及びSYTO9及びPIによる核染色処理とを含み、CTCの識別計数過程は、波長640nm近傍の光励起で発生する波長が異なる2種類の蛍光信号強度の比率でAPC蛍光スペクトルを識別することでCTCの同定を行い、波長480nm近傍の光励起で発生するSYTO9とPIの蛍光信号によりCTCの生死判定を行う、[4]に記載のCTC濃度評価方法、
[6]前記前処理過程において、APC標識抗EpCAM抗体に代えて、APC標識5E11抗体を用いる、[5]に記載のCTC濃度評価方法、
[7]前記CTCを濃縮する処理が、APC標識抗EpCAM抗体によるCTCの蛍光標識、及び抗APC抗体磁気ビーズによるCTCへの磁気ビーズの付着を含む、[3]に記載のCTC濃度評価方法、
[8]APCの蛍光信号によるCTC識別と、PIによる死菌識別とを同時に解析可能とするために、PI蛍光励起用青色レーザー出力をAPC蛍光励起用赤色レーザー出力より、1/10以下に設定することを含む、[5]に記載のCTC濃度評価方法、又は
[9]末梢血から、CTC、CEC、及びCEPからなる群の少なくとも2つを同時に計数する方法であって、白血球に発現している表面マーカーのうちCEC及び/又はCEPに発現していない抗原に対する抗体磁気ビーズを利用したネガティブセレクションにより白血球を除き、前記抗体磁気ビーズと反応しなかった細胞に対して、CTC検出用として抗CD326抗体、CEC検出用として抗CD146抗体、及びCEP検出用として抗CD133抗体からなる群の少なくとも2つの抗体を用いて、異なる蛍光標識を行うことを含む、計数方法、
に関する。
【0020】
また、本明細書は、
[1]高濃度の細胞群から特定の少数の細胞数を評価する方法であって、高濃度細胞群から特定の細胞を生きたまま磁気濃縮し蛍光染色処理を行う前処理過程と、特定の細胞をその蛍光信号強度に基づいて自動的に識別し、計数する過程とを含み、細胞を計数する過程は、フローセルを含む送液系全体が検体毎に交換可能でかつサンプル液全量中の総細胞数が測定可能であるフローサイトメーターにより、蛍光信号強度により自動的に特定細胞を認識し、かつその細胞を生死判定別に計数する、特定細胞数の評価方法、
[2]前記細胞を検出する過程で用いるフローサイトメーターは、使い捨て交換可能なマイクロ流路チップをフローセルとして用いるものであって、サンプル液の全量測定はマイクロ流路チップ基板上に形成したサンプルリザーバーの底から流れきった直後にマイクロ流路内で発生する気泡の検出信号を終点検出信号として利用する、[1]に記載の特定細胞数の評価方法、
[3]高濃度の血球群を含む末梢血から低濃度の末梢循環腫瘍細胞(CTC)を検出する方法であって、CTCを濃縮と蛍光染色処理を含む前処理過程と、CTCを識別計数する過程とを含み、前処理過程は、上皮性細胞由来のCTCに発現しているEpCAMに磁気ビーズを付着させて磁石を利用してCTCを濃縮する処理と、CTCの上皮性細胞の表面マーカーをEpCAM抗体又は5E11抗体を利用して蛍光標識する処理と、細胞膜透過性と非透過性の2種類の核染色を行う処理とを含み、CTCを識別計数過程は、フローセルを含む送液系全体が検体毎に交換可能でかつサンプル液全量計測が可能であるフローサイトメーターを用い、複数の蛍光信号強度の比率によりCTCを自動認識し、生きているCTCと死んでいるCTCを区別して計数することで、生死別CTCの血液量に対する絶対濃度を評価することを含む、CTC濃度評価方法、
[4]前記CTCを識別計数する過程で用いるフローサイトメーターは、使い捨て交換可能なマイクロ流路チップをフローセルとして用いるものであって、サンプル液の全量測定はマイクロ流路チップ基板上に形成したサンプルリザーバーの底に接続するマイクロ流路にサンプル液が全量流れ終えた直後に流路内に発生する気泡の検出信号をサンプル液の終点検出信号として利用することでサンプル全量測定を行う、[3]に記載のCTC濃度評価方法、
[5]前記前処理過程が、CTCに対してヒトEpCAM抗体を固定した磁気ビーズを付着させる反応と、APC標識ヒトEPCAM抗体によるCTCの蛍光染色処理、SYTO9とPIによる核染色処理とを含み、CTCを識別検出する過程は、波長640nm近傍の光励起で発生する波長が異なる2種類の蛍光信号強度の比率でAPC蛍光スペクトルを識別することでCTCの同定を行い、波長480nm近傍の光励起で発生するSYTO9とPIの蛍光信号によりCTCの生死判定を行う、[3]に記載のCTC濃度評価方法、
[6]前記CTCを濃縮する過程が、ヒトEpCAM抗体磁気ビーズと蛍光標識ヒト5E11抗体の反応を含む、[3]に記載のCTC濃度評価方法、
[7]前記CTCを濃縮する過程が、ヒトEpCAM抗体APCラベルとそのAPCに対する抗体磁気ビーズを吸着させる抗体反応処理を含む、[3]に記載のCTC濃度評価方法、
[8]前記CTCの識別計数する過程が、CTC識別とCTCの生死判定とを行うこと含む、[3]に記載のCTC計数方法、
[9]前記CTCを蛍光染色する過程が、PIによる死細胞の核染色と、EpCAM抗体APCラベル染色とを含み、APCの蛍光信号によるCTC識別とPIによる死菌識別とが同時に解析可能とするために、PI蛍光励起用青色レーザー出力をAPC蛍光励起用赤色レーザー出力より、1/10以下に設定していることを含む、[3]に記載のCTC数の評価方法、
[10]末梢血からCTCの他に別のバイオマーカーであるCECやCEPを同時に検出計数する方法であって、又は
赤血球を溶血した後に、白血球に発現している複数の表面マーカーのうちCECとCEPに発現していない抗原に対する抗体を利用したネガティブセレクションにより白血球を除き、前記抗体磁気ビーズと反応しなかった細胞に対して、CTC検出用としてCD326、CEC検出用としてCD146、CEP検出用としてCD133を用いて、それぞれ異なる蛍光標識を行うことを含む、複数バイオマーカー濃度の同時計数方法
を開示する。
【0021】
本発明では、上記状況を鑑み、まず一般的な特定細胞の評価に対しては以下の手段を提供する。
【0022】
本発明の特定細胞の数の評価方法は、高濃度の細胞群から特定の少数の細胞数を評価する方法であって、高濃度細胞群から特定の細胞を抗体磁気ビーズを付着させて磁場を利用した濃縮処理と、検出のための蛍光染色処理を行う前処理過程と、特定の細胞を蛍光信号に基づいて計数する過程とを含み、その細胞を計数する過程は、フローセルを含む送液系全体が検体毎に交換可能でかつサンプル液全量を計測可能であるフローサイトメーターを用いる計測過程であることを特徴とする細胞濃度評価方法である。
本発明の特定細胞の数の評価方法は、細胞を計数する過程において、細胞を生死判定別に計数してもよく、細胞の生死を判別せずに計数してもよい。特定細胞は、大量の細胞に含まれる少数の細胞であれば、特に限定されるものでないが、例えば末梢循環腫瘍細胞(CTC)、末梢循環血管内皮細胞(CEC)、又は骨髄由来の血管内皮前駆細胞(CEP)を挙げることができる。また、本明細書において、「少数の細胞」とは、例えば、生体内の血液中の細胞において1/105以下の濃度であれば特に限定されるものではないが、好ましくは1/106以下であり、より好ましくは1/107以下であり、更に好ましくは1/108であり、最も好ましくは1/109である。例えば、初期のがん患者において検出されるCTC濃度は通常1個/mL程度であることが知られており、例えば血液5mL中に含まれるCTCの総数は約5個程度と見積もられるが、このような低濃度の細胞濃度を正確に測定するためには、サンプル液の全量測定が効果的である。何故ならば、一般的にフローサイトメーターで行われているサンプル液の部分測定による少ない細胞数の結果からサンプル液全体の細胞数を計算で求める方法では、サンプル液中の細胞濃度が均一であるという前提が必要であるが、細胞は重力沈降の影響があるのでその前提は成り立たないのが普通である。従って、サンプル液中に含まれる特定の細胞濃度の絶対測定において、本願発明の効果が顕著に得られる。
【0023】
上記の手段のうち、検出する過程が特徴的であり、詳細は次のようになる。
【0024】
上記の細胞を検出する過程で用いるフローサイトメーターは、図1に示した使い捨て交換可能なマイクロ流路チップをフローセルとして用いるものであって、図2に示したようにレーザー光源と、前方散乱光検出器62と側方散乱光検出器67と複数の蛍光検出器63, 64, 65, 66を有する。この装置によってサンプル液の全量測定する方法は、マイクロ流路チップ基板上に形成したサンプルリザーバー1に空気圧を加えることでリザーバーの底に接続したマイクロ流路内にサンプル液を全部流すことが可能であるため、サンプル液が全部流れるまで測定すればよい。サンプル全量が流れ終わった瞬間から、図3のa)に示した様に、流路内に気泡が発生するので、その気泡の検出信号をサンプル液の終点検出信号として利用し、測定を自動終了させる。測定終了後に気泡を含まない検出信号データのみで細胞数を評価し、測定したサンプルの全体積に含まれる細胞数により、細胞濃度の絶対評価を行う。
【0025】
前記マイクロ流路チップ(フローセル)としては、例えば特許第4358888号に記載の、
「基板上に形成された、微粒子を含む試料液が導入される第1の流路と、第1の流路の両側に配置されてシース液が導入される第2及び第3の流路と、第1〜第3の流路が合流する第4の流路とを備えるフローセルであって、前記フローセルは、第4の流路の上流側に第1〜第3の流路を有し下流側に第5〜7流路を有し、更にその上流側と下流側にそれぞれ形成された第1貯水槽と第2貯水槽とを備え、シース液を導入する第2及び第3の流路は第1貯水槽に接続されており、試料液を導入する第1の流路は第1貯水槽の内側に設けられた第3貯水槽に接続しており、前記第2及び第3の流路は第1貯水槽内で共通の液面を有し、第3貯水槽は第1貯水槽とは独立しており第1貯水槽内でシース液と試料液が混合しない構造となっており、下流の中央の第5の流路は第2貯水槽の内側に設けられた第4貯水槽に接続し、両側の第6及び第7の分離流路が第2貯水槽に接続し、大気圧より高い一定の圧力の気体を第1貯水槽内に取り外し可能なキャップ構造を利用して導入し、当該気体圧力の制御によって試料液の流速を一定に制御する液体中微粒子計測装置において、第4の流路の上流側の第1〜第3の流路と下流側の第5〜7流路が対称パターンであって、下流側の第4貯水槽内に試料液が回収され、第2貯水槽にシース液が回収される構造となっているフローセル」を用いることができ、これらの構成は図1に示されているものである。
【0026】
次に、特にCTCの濃度評価の手段を記載する。
【0027】
CTC濃度評価方法は、高濃度の血球群を含む末梢血から低濃度の末梢循環腫瘍細胞(CTC)を検出する方法において、CTCを生きたままでの濃縮と蛍光染色処理を含む前処理過程とCTCを識別計数する過程とを含み、前処理過程は、例えばヒト上皮性細胞由来のCTCに発現している表面マーカーに対する抗体を固定した磁気ビーズをCTCに付着させて、磁石を利用してCTCを特異的に濃縮する処理と、ヒト上皮性細胞の表面マーカーである抗体を利用して蛍光標識する処理と、細胞膜透過性と非透過性の2種類の核染色を行う処理とを含み、CTCを識別して計数過程は、フローセルを含む送液系全体が検体毎に交換可能でかつサンプル液全量計測が可能であるフローサイトメーターを用い、複数の蛍光信号強度の比率によりCTCを自動認識し、生きているCTCと死んでいるCTCを区別して計数することで、生死別CTCの血液量に対する絶対濃度を評価することを特徴とするCTC濃度評価方法である。
なお、本発明において、細胞膜透過性と非透過性の2種類の核染色を行う処理、及び生きているCTCと死んでいるCTCを区別して計数することは、任意の工程であり、これらの工程を行うことが好ましいが、これらの工程を行わないCTC濃度評価方法も本願発明に含まれる。また、CTCはヒト由来のものに限定されるものではなく、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ウサギ、マウス、又はラットなどの哺乳類由来のものを含む。
【0028】
上記の手段のうち、CTCを生きたままで濃縮と染色し、サンプル全量測定によって生きているCTCと死んでいるCTCを区別して計数し、それぞれ濃度評価することが好ましく、具体的には次のようになる。
【0029】
上記の手段において、CTCを生きたまま濃縮と染色する方法は、細胞膜に穴をあける必要があるサイトケラチン染色は行わずに、上皮性細胞由来のCTCの表面マーカーに対する抗体を利用することで磁気濃縮と染色を行うことで、CTCを特異的に濃縮し蛍光染色を行う。CTCを識別検出する過程で用いるフローサイトメーターは、使い捨て交換可能なマイクロ流路チップをフローセルとして用いるものであって、サンプル液の全量測定はマイクロ流路チップ基板上に形成したサンプルリザーバーの底に接続するマイクロ流路にサンプル液が全量流れ終えた直後に流路内に発生する気泡の検出信号をサンプル液の終点検出信号として利用することでサンプル全量測定を行うことでCTCの数え落としを極力低減したCTC濃度評価方法によって行うことができる。
【0030】
次に、上記手段のうち、例えばCTCの濃縮と染色に用いる具体的な抗体と蛍光標識としては、以下のものを利用することができる。
【0031】
CTCの磁気濃縮用磁気ビーズとしてはヒトEpCAM抗体を固定した磁気ビーズを利用し、CTCの特異的蛍光標識用抗体としてはAPC標識ヒトEPCAM抗体又はAPC標識ヒト5E11抗体のどちらかを利用し、CTCの生死判定用核染色剤としてはSYTO9とPIを利用する。CTCの特異的蛍光標識用抗体は図4のプロセスフローチャートの内の抗体反応工程のTypeAとTypeBに相当する。TypeAの場合は磁気ビーズの抗体と同じ表面マーカーに対する抗体なので競争阻害が発生する可能性があるが、実際に行ったデータによると実用的には問題ない。TypeBの場合は競争阻害の問題はない。CTCを識別検出する過程は、図2に示した様に、2種類のレーザー(発振波長が470から490nmまでの範囲の青色レーザーと発振波長が630nmから650nmまでの範囲の赤色レーザー)を同時に照射して蛍光4色以上検出する検出光学系を有する装置構成を利用し、以下の様にCTCを識別するための解析を行う。すなわち、図6a)に示したように赤色レーザー照射で発生する蛍光を波長が異なる2種類の蛍光信号として検出し、図6b)に示すようにその二つの信号強度の比率によりAPC蛍光スペクトルを識別する。比率が共通である検出細胞は、図6b)に示した様に一直線上に分布する。蛍光スペクトルが異なる場合は比率が異なるので、異なる直線状に分布するのでスペクトルを区別することができる。このようにして、APC蛍光スペクトルを有する細胞を識別することでCTCであると自動認識する。APC蛍光標識細胞としては、CTCの他に白血球への非特異的蛍光標識反応が考えられるので、APC-Cy7標識CD45抗体を用いて白血球を標識し、APC蛍光スペクトルからスペクトルをシフトさせることで白血球を区別する。更に、青色レーザーの照射で発生するSYTO9とPIの蛍光信号により、SYTO9のみで染色しているCTCを生細胞(LIVE-CTC)として、SYTO9とPIの両方で染色しているCTCを死細胞(DEAD-CTC)と判定して、CTCの生死判定を行う。上記のAPCの蛍光スペクトル識別とSYTO9とPIの蛍光スペクトル識別において、図7のa)に示す蛍光スペクトルから分かるように問題が存在する。その問題とは、青レーザー励起のPIの蛍光スペクトルと赤レーザー励起のAPCの蛍光スペクトルが重なるということである。すなわち、APC蛍光検出信号とPI蛍光検出信号とは干渉する。
【0032】
この問題を解決するために、青レーザーの出力を赤レーザーの出力に比べて10分の1以下にすることでAPC検出用信号であるFL3とFL4におけるPI蛍光信号を無視できるほど小さくする。すなわち、図7b)に示すように、473nmレーザー出力を1mW以下として640nmレーザーを30mW以上とすることで、APC蛍光検出信号とPI蛍光検出信号とは独立して解析可能である。これによって、図7a)b)に示した様に、APCスペクトル識別によるCTC同定とCTCのLIVE/DEAD判定の両立を実現した。この解析方法のメリットの一つは、通常のフローサイトメトリー計測において必要とされる面倒な蛍光補正が不要である点である。
【0033】
次に、上記の手段において、CTCを濃縮する過程にヒトEpCAM抗体APCラベルとそのAPCに対する抗体磁気ビーズを吸着させる抗体反応処理とを含むことも可能である。これは、図4のプロセスフローチャートにおける抗体反応のTypeCに対応する。この場合は、1種類のCD326抗体の特異的選択性に依存し、競争阻害の問題は存在しない。
【0034】
次に、CTCの他に、CECやCEPなど他のバイオマーカーを同時に検出することで、がん診断の進行状態を正確に評価するための手段を説明する。本発明においては、CTC、CEC、及びCEPからなる群から選択される少なくとも2つのバイオマーカーを同時に検出してもよく、3つのバイオマーカーを同時に検出してもよい。
【0035】
CTCの他に同時に検出するCECやCEPを濃縮する方法は、それぞれの表面マーカーに対する抗体磁気ビーズによる磁気濃縮においてポジティブセレクションを行わずに、夾雑細胞に対するネガティブセレクションを利用する。すなわち、赤血球を溶血で除いた後は、全ての白血球を抗体磁気ビーズでトラップする。そのネガティブセレクションするための抗体磁気ビーズの抗体の種類は、全ての白血球で発現しており、CTC、CEC、及び/又はCEPで発現していない表面マーカーに対する抗体から選択する。例えば、CD2, CD3, CD4, CD5, CD8, CD10, CD11b, CD14, CD15, CD16, CD19, CD20, CD24, CD25, CD27, CD29, CD33, CD36, CD38, CD41, CD45, CD45RA, CD45RO, CD56, CD66b, CD66e, CD69, CD124から選ぶのがよい。通過した細胞に対して、以下の蛍光標識抗体による特異的蛍光標識を行う。すなわち、CTCはAPC蛍光標識CD326抗体であり、CECはAlexaFluor660蛍光標識CD146抗体である。CEPはAlexaFluor680蛍光標識CD34抗体を用いる。図11a)は、蛍光標識分子であるAPCとAlexaFlou660とAlexaFlou680の蛍光スペクトルであるが、すべて640nmの赤レーザーで励起可能であり、FL3とFL4の蛍光信号強度の相関では図11b)に示すように、それぞれ別々のラインに分布することで区別して計数することができる。この場合は白血球はネガティブセレクションにより取り除かれているので、APC-Cy7蛍光標識CD45抗体は不要である。この方法では、SYTO9とPIによる核染色により、図7のb)で説明したLIVE/DEAD判定を、CTC, CEC, CEPそれぞれについて行うことが可能である。
【発明の効果】
【0036】
生きたCTCを生きた状態で濃縮染色を可能とすることにより、生きたCTCと死んだCTCとを区別してそれぞれ同時に計測することは、従来の方法では不可能であった。それを実現したのが本発明である。この機能は、転移可能である生きているCTCの濃度と転移不可能なCTCの濃度の評価を可能とするので、抗癌剤投与や放射線治療などによる治療効果の判定やがん転移の進行を判断する情報が得られる。患者個々から検出したCTCを生きた状態で回収して培養し、十分な細胞数にした後にそのCTCを、治療方針を決定するための遺伝子解析や表面マーカー解析に活かすことができる。更に、製薬メーカーにおける分子標的抗体医薬開発に寄与することができる。
本発明の特定細胞の数の評価方法又はCTC濃度評価方法によれば、後述の実施例に記載のように、大量の細胞中に、少量の細胞を添加して、本発明の方法により回収率を測定したところ、ほぼ100%の回収率を得ることができた。これは、サンプルリザーバーの底部から直接マイクロ流路へサンプル液を全量流すことが可能であり、そして全量測定をサンプル液が全量流れた後に発生する気泡により全量測定の終点を検出することができたからであると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の検体間クロスコンタミネーションフリーを実現するフローサイトメーター用の使い捨てチップ型マイクロ流路フローセルチップを示す図である。a)断面、b)上面、及びc)マイクロ流路パターンをそれぞれ示す。
図2】本発明の検体間クロスコンタミネーションフリーとサンプル全量測定を実現するフローサイトメーターの照射光学系及び測定光学系を含む測定系の全体構成を示す模式図である。
図3】本発明において使い捨てマイクロ流路チップを用いてサンプル全量測定を行うために、サンプル液の終点検出信号として利用する気泡の発生の模式図(a)、気泡を含むデータによる散布図(b)、及び気泡を除去した散布図(c)を示す。
図4】本発明のサンプル処理プロセスのフローチャートを示す。
図5】CTCに付着した抗体磁気ビーズと蛍光標識抗体の付着状態を示した模式図である。(a)はTypeA、(b)はTypeB、及び(c)はTypeCに対応する。
図6】波長の異なる2種類の蛍光信号を用いたAPCスペクトル及びそれらを識別する方法を記した図である。(a)はAPCの蛍光スペクトルと、2種類の蛍光検出波長領域、(b)は2種類の蛍光検出信号の相関から、比率に基づいてAPC蛍光スペクトルを識別する原理をそれぞれ示す。
図7】(a)CTCのAPC標識蛍光スペクトルの識別とCTCのLIVE/DEAD判定における問題点を示す蛍光スペクトルグラフ、及び(b)その解決策の効果を示したグラフである。(b)では、APC標識蛍光スペクトルの識別後にLIVE/DEAD判定した。
図8】(a)LIVE-CTCを自動識別する手順、及び(b)DEAD-CTCを自動識別する手順をそれぞれ示す図である。(c)CTC識別における非特異的APCラベル細胞の除去効果を示すデータ。
図9】末梢血中に肺がん由来セルラインであるPC-9を混入したサンプルから検出したデータを解析した結果を示すグラフである。
図10】蛍光標識した細胞を使い捨て交換型のマイクロ流路チップを用いて測定した後に、回収して培養して増殖することを確認した結果を示す写真を示す図である。
図11】(a) 末梢血中からCTCの他にCECやCEPを同時に検出する場合の蛍光標識の蛍光スペクトルを示したグラフ、及び(b)2種類の蛍光信号強度で3種類の蛍光標識を分離するための原理を示したグラフをそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
CTCを検出し計数する方法は、1mL当り109個の赤血球と白血球の夾雑細胞群から1個/mL程度の少数の特定のがん細胞を検出計数する方法である。以下の実施例は、末梢血4mLから数個程度のCTCを検出する方法とそのデータを用いて説明する。
【0039】
1 CTCの前処理工程
1-1 採血工程
CTCを生きた状態で計数するためには、血液保存管が細胞にダメージを与えるものであってはならない。CTC検出用の血液保存管としては、CellSearchシステムで使用されているCellSave保存管があるが、この保存管は、細胞にダメージを与えるので、生きたまま計測し、計測後に回収して培養する目的に使用することは不可能である。そのため、CellSaveシステムによるCTC計測では、生きたままCTCを計測することは不可能である。これを解決するために、保存管としては生きた状態でCTCを保存できるEDTA保存管などを用いるのが望ましい。
【0040】
1-2 溶血工程
患者からの採血した末梢血を処理する過程に、赤血球を除去するために溶血する工程を含める。密度勾配遠心によって赤血球層と白血球層を分離する血球分離方法があるが、CTCの密度が様々であり赤血球より密度が低いという保証もない為、その心配が不要な溶血方法により夾雑細胞群からまず赤血球を除去することが望ましい。採血量は4mLから7mLまでの範囲で一定量とする。
【0041】
1-3 抗体反応工程
上皮性細胞由来のCTCを生きたまま濃縮する方法と特異的に蛍光標識する方法を述べる。このためには、以下のTypeA、B、Cの3通りの抗体磁気ビーズと蛍光標識抗体を用いる。TypeAは、Miltenyi Biotec社のCatalog # 130-090-500に含まれるCD326抗体磁気ビーズが利用可能である。但し、この磁気ビーズを利用する場合は磁気濃縮のための磁石は、Miltenyi Biotec社のものを利用するのが望ましい。APC標識CD326抗体を用いる。APC-Cy7蛍光標識CD45抗体は、白血球に特異的に標識することで、白血球に非特異的に吸着したAPC蛍光標識細胞を区別する。このAPC-Cy7蛍光標識CD45抗体による白血球の標識の必要性は、図8のc)のグラフで理解することができる。つまり、磁気濃縮後も白血球の数が多く、血液中では上皮性由来のCTCにしかEpCAMが発現していない筈であるが、白血球にAPC標識CD326抗体が非特異的に吸着する。この非特異的な吸着を区別するために、白血球に特異的に吸着するCD45抗体でAPC-Cy7蛍光標識すると、APCスペクトルからシフトしたラインが現れていることが図8c)の破線で示した領域で示される。これを排除することで正しいCTCの計数を行うことが可能となる。
【0042】
TypeBの磁気ビーズはStem Cell Technologies社のCatalog # 18356のものが利用可能である。この場合は、Stem Cell Technologies社の磁石を利用するのが望ましい。蛍光標識抗体はAPC標識5E11抗体を用いる。この蛍光標識抗体は特別に準備する。
TypeCの場合は、CTCの特異的な蛍光標識抗体としてAPC蛍光標識CD326抗体を利用し、磁気ビーズはそのAPCに吸着するものを利用する方法である。その磁気ビーズとしては、APC抗体磁気ビーズ(Stem Cell Technologies社のCatalog # 18451)を利用することができる。この場合、磁石はStem Cell Technologies社のものを利用するのが望ましい。やはり、APC-Cy7蛍光標識CD45抗体を用いて白血球に標識することで、白血球に非特異的に吸着したAPC蛍光標識細胞を区別する。
【0043】
1-4 磁気濃縮工程
磁気濃縮は、磁気ビーズが吸着したCTCを磁力でトラップした状態で、夾雑物細胞をバッファーで洗い流す工程である。磁石については、前述したように使用する磁気ビーズに応じて必要な磁力が異なるために最適なものを選択する。抗体磁気ビーズは非特異的に夾雑細胞に吸着する場合があるので、磁気濃縮工程後の細胞純度は完全ではない。このために、 APC-Cy7蛍光標識CD45抗体による蛍光標識による対策が重要である。
【0044】
1-5 LIVE/DEAD判定用核染色
Invitrogen社製BacLightキット(Cat.No L34856)を用いる。この試薬キットは、細胞膜を透過するSYTO9と非透過性のPIの2種類の核染試薬を含んでおり、細菌用のLIVE/DEAD判定用試薬である。濃度を100倍程度に希釈することで細胞に適用することが可能である。図7のb)の右側の散布図は、この試薬キットを利用し、PC-9という細胞のLIVE/DEADを判定したグラフである。LIVEと判定されるのはSYTO9のみで染色された細胞であり、DEADと判定されるのはSYTO9とPIの両方で染色した細胞となる。この蛍光スペクトルの相違でLIVEかDEADかを判定する。
【0045】
2 CTCの計数工程
2-1 CTCのサンプル全量測定工程
医療検体に含まれる極微量のCTCを短時間で計数し、その後それを回収し培養する目的のためには、検体間クロスコンタミネーションフリーのフローサイトメーターを利用するのが最適である。このフローサイトメーターとしては、唯一オンチップバイオテクノロジーズ社の製品であるFISHMAN-Rが対応する。このフローサイトメーターは特許文献4に関連しており、図1に示した様にフローセルが使い捨て交換型チップを利用することで、チップ交換により送液系の全交換が可能で、完全な検体間クロスコンタミネーションフリーを実現している。本発明では、この装置で実現したサンプル全量測定方法を、図1図2図3を用いて説明する。図1は、使い捨て交換可能なチップの構造を示しており、a)は断面図であり、b)は写真であり、c)マイクロ流路パターンの写真を示している。CTCを含むサンプル液2は、チップの右側のシース液リザーバー3の上部のカバーを取り外して、サンプルリザーバー1に入れる。この最大容量は200μLである。シース液リザーバーの最大容量が3mLであり、シース液7はシース液リザーバー3に入れる。送液は上流のリザーバー3内に空気圧を加えることで非接触的にサンプル液を下流側に流す。サンプル液を全量流した場合はシース液が残る程度の余分なシース液の容量とする。下流側には図1c)に示したマイクロ流路で接続しており、シース液7によってサンプル液2が絞られて流れる。レーザー光9はそのサンプルが流れる位置に照射する。下流ではシース液とサンプル液が再度分離し、CTCを含む回収液5は回収リザーバー4から回収する。図2は測定系全体を示している。照射するレーザーは、2種類のレーザー(発振波長が470nmから490nmまでの範囲の青色レーザー65-1、及び発振波長が630から640nmまで範囲の赤色レーザー65-2)を利用する。散乱光検出系は前方散乱光(FS)検出器62と側方散乱(SS)検出器67を含み、蛍光検出光学系は、蛍光4色以上検出する検出器を有する装置構成を利用する。図7に示した4種類の蛍光検出領域FL1、FL2、FL3、FL4は、それぞれ検出器63、64、65、66の検出器が対応する。それぞれの検出波長範囲は各ダイクロイックミラー55、56、57の反射特性と、バンドパスフィルター58, 59, 60, 61の透過特性によって定まり、図7(A)にFL1, 2, 3, 4の波長領域を図示してある。側方散乱光用の検出器67はマイクロ流路内で発生した側方散乱光をチップ端面の斜面で全反射した側方散乱光を検出するものである。一個の細胞の検出信号はAD変換器68によってデジタル化して、制御コンピュータ69で演算処理が行われる。流速は空気ポンプ80で指定された圧力をチップリザーバーに加圧することで制御する。信号図3のa)は、サンプル液2がサンプルリザーバー1から全て流れ切った場合に、流路の合流部で気泡が発生する状況を模式的に示したものである。図3のb)はサンプル液を全量流しきった後で発生する気泡の検出データも含めた分布を示したものである。気泡は、サンプル液がなった直後から発生するので、検出時刻が最後のほうからデータを除去することで気泡を含まない細胞のデータのみのグラフを得ることができる(図3(c))。そのため、気泡が分布する領域において一定数以上カウントした場合に自動終了するように設定し、更に検出データから最後から気泡のデータを除去する。
【0046】
2-2 LIVE-CTCとDEAD-CTCを自動認識する工程
図8(a)は、サンプル全量測定後に気泡データを除去したデータに対して、最初にFS信号の閾値がある一定以上という条件を設定する。この条件は、細胞に吸着していないフリーな蛍光標識抗体を除去するために行う。
【0047】
次に、FL3とFL4の蛍光強度相関グラフによって、APC標識された細胞分布を選択する。これはCTCの識別に対応する。
【0048】
次に、FL1とFL2の蛍光強度相関グラフによって、SYTO9のみの核染色細胞とSYTO9とPIの両方で核染色した細胞を識別する。これによってLIVEとDEADを識別する。LIVE-CTCの計数では、LIVE分布を選択することで個数を求める。図8(b)はDEADーCTCの計数であり、FL1とFL2の相関グラフにおいてDEAD分布を選択して個数を求める。
【0049】
図9のデータは、採血量4mLの末梢血に肺がん由来のセルラインであるPC-9を混入させて、TypeAの抗体試薬キットを用いて上記ステップにより計数して、検出率を求めたグラフである。横軸は血球計算盤で評価したPC-9の混入数であって、縦軸はFISHMAN-Rで、LIVE-CTCとDEAD-CTCを合計数である。異なる時期の2回分のデータであるが、ほぼ100%の検出効率を達成している。
【0050】
3 CTCを回収して、培養する工程
図10を用いて説明する。使用するチップのマイクロ流路パターンは、流路が下流側の3分岐流路と上流側の3合流路とがほぼ対象パターンであるため、試料液とその両側をはさんで流れるシース液は下流側の分岐流路において再度分離する。そのため、試料液は中央のリザーバーで回収することができる。
細胞の写真は、末梢血中に混入して検出して回収したMCF-7を培養したものである。
【0051】
4 CTCの診断
患者毎にCTCを計数したのちに回収し、必要に応じて培養を行い、FISH法やPCR法によって、CTCの遺伝子解析を行う。例えば、 HER2遺伝子増幅の検出やEGFR遺伝子変異の検出などにより、患者の治療に効果的な分子標的治療薬の選択を行う。
以上は、CTCを生きたままの状態で生死を区別して計数を行って、生きたまま回収して培養可能なCTCを得てCTCの細胞診断を行う技術である。
【0052】
次は、CTCの他に、CECやCEPなど他のバイオマーカーを同時に検出することで、がん診断の進行状態を正確に評価するため有効な実施例を説明する。
CTCの他に同時に検出するCECやCEPを濃縮する方法は、ネガティブセレクションを利用する。このネガティブセレクションには、磁気ビーズを利用しない方法(例えば、Tumor Cell Enrichment Cocktail (Stem Cell Technologies, Catalog # 15167)を用いる方法)と、磁気ビーズを用いる方法がある。磁気ビーズを用いる場合は、赤血球を溶血で除いた後は、全ての白血球を抗体磁気ビーズでトラップする。そのネガティブセレクションするための抗体磁気ビーズの抗体の種類は、全ての白血球で発現しており、CTC, CEC, CEPで発現していない表面マーカーに対する抗体から選択する。例えば、CD2, CD3, CD4, CD5, CD8, CD10, CD11b, CD14, CD15, CD16, CD19, CD20, CD24, CD25, CD27, CD29, CD33, CD36, CD38, CD41, CD45, CD45RA, CD45RO, CD56, CD66b, CD66e, CD69, CD124から選ぶのがよい。磁気ビーズを用いない場合でも、用いる場合でも、ネガティブセレクション後の細胞液に対して、以下の蛍光標識抗体による特異的蛍光標識を行う。すなわち、CTCはAPC蛍光標識CD326抗体であり、CECはAlexaFluor660蛍光標識CD146抗体である。CEPはAlexaFluor680蛍光標識CD34抗体を用いる。
【0053】
図11a)は、蛍光標識分子であるAPCとAlexaFlou660とAlexaFlou680の蛍光スペクトルであるが、すべて640nmの赤レーザーで励起可能であり、FL3とFL4の蛍光信号強度の相関では図11b)に示すように、それぞれ別々のラインに分布することで区別して計数することができる。この場合に、白血球はネガティブセレクションにより取り除かれているので、APC-Cy7蛍光標識CD45抗体は不要である。この方法では、SYTO9とPIによる核染色により、図7のb)で説明したLIVE/DEAD判定をCTC, CEC, CEPに対して行う。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、以下のメリットがある。1)患者の採血のみでCTCを検出することでがんを発見するというメリット、2)がん組織を手術で摘出した患者が採血のみで再発の早期発見できるメリット、3)個々の患者からCTCを検出して回収し、その遺伝子解析や表面マーカーの発現解析や薬剤スクリーニングにより、どの分子標的治療薬が効果的か調べることが可能となるので、病院におけるがんの個別治療や製薬メーカーにおける分子標的治療薬開発に寄与する。
以上、本発明を特定の態様に沿って説明したが、当業者に自明の変形や改良は本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1…サンプルリザーバー
2…サンプル
3…シース液リザーバー
4…回収リザーバー
5…回収サンプル
6…廃液シース液リザーバー
7…シース液
8…廃液シース液
9…照射レーザー光
10…空気
11…気泡
12…チップ基板
20…CD326抗体磁気ビーズ
21…APC蛍光標識CD326抗体
22…APC蛍光標識5E11抗体
23…APC抗体磁気ビーズ
50-1…波長473nmのレーザー光源
50-2…波長640nmのレーザー光源
51…対物レンズ
52, 53, 54, 55, 56…ダイクロイックミラー
57, 58, 59, 60, 61…バンドパスフィルター
60…透過レーザー光遮断用空間フィルター
62…フォトダイオード
63, 64, 65, 66…光電子増倍管
65-1…波長473nmのレーザー光源のドライバー回路
65-2…波長640nmのレーザー光源のドライバー回路
68…AD変換器
69…AD変換器
70…キーボード
71…ディスプレイ
72…マウス
80…空気ポンプ
81…空気ポンプのドライバー回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11