特許第5943522号(P5943522)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5943522
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】ウェッジメイク装置及びコイル挿入装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/10 20060101AFI20160621BHJP
   H02K 15/06 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   H02K15/10
   H02K15/06
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-99205(P2013-99205)
(22)【出願日】2013年5月9日
(65)【公開番号】特開2014-220934(P2014-220934A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2015年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】510054049
【氏名又は名称】E−Tec株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143111
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】細野 聖二
【審査官】 宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−177942(JP,A)
【文献】 特開昭55−103062(JP,A)
【文献】 特表2012−528560(JP,A)
【文献】 特開昭52−58802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/00−15/02
H02K 15/04−15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル挿入機のアッパーツールに支えられた電動機用のステータコアの内周面に配列されたスロット孔に、巻線されたコイル束と共に挿入されるウェッジを製造するウェッジメイク装置であって、
略円柱形状とされると共にその軸方向に沿って所望の間隔で外周に複数の溝部を有するウェッジマガジンと、所望の長さのウェッジ素材を前記溝部の溝底に向かって打ち込んで略U字状の断面形状をなすウェッジに成形するパンチと、前記ウェッジを前記溝部が伸びる方向に沿って前記ウェッジマガジンから押し出すプッシュロッドとを含み、
前記溝部の両端部が開放された状態とされていると共に、前記溝部のいずれかが、形状又はウェッジマガジンの表面からの深さが異なる溝部とされている、
ことを特徴とするウェッジメイク装置。
【請求項2】
前記溝部の両端部が開放された状態とされていると共に、前記溝部のいずれかが、形状及びウェッジマガジンの表面からの深さが同一の溝部とされている、
ことを特徴とする請求項1に記載のウェッジメイク装置。
【請求項3】
各々の前記プッシュロッドが、各々の断面形状に整合された前記溝部の開放端に向かうように環状に配列され、その端部が板体で固定されてウェッジプッシャーとされ、
前記ウェッジマガジンと前記ウェッジプッシャーとを同期して回転させる回動手段と、前記ウェッジプッシャーを延伸させる延伸手段とを備え、
所望の前記溝部が前記パンチに面するようにされる前記ウェッジマガジンの回動と、前記パンチによる前記ウェッジ素材の前記溝部に向けての打ち込みとにより、前記ウェッジプッシャーの延伸によりウェッジガイドに挿入させる少なくとも一つのウェッジを成形させ、
いずれのウェッジも格納されていないウェッジガイドの延長線上に、成形された前記のウェッジが位置されるように、前記回動手段によって前記ウェッジマガジンが回動され、
前記ウェッジプッシャーが前記延伸手段によって延伸されることにより、ウェッジマガジンから押し出された前記ウェッジが前記ウェッジガイドに格納され、所望のウェッジの成形から格納までが行われ、
更に前記延伸手段と前記回動手段との復帰動作により、前記ウェッジマガジンと前記ウェッジプッシャーとが前記ウェッジ素材を成形させる前の状態に復帰されて、一連のウェッジの成形から前記ウェッジマガジンの復帰動作がされ、
前記のウェッジの成形から前記ウェッジマガジンの復帰動作までと同様に、
前記ウェッジの成形と、前記アッパーツールの所望のウェッジガイドへの前記ウェッジの格納と、前記ウェッジマガジンと前記ウェッジプッシャーの復帰とが繰り返される、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のウェッジメイク装置。
【請求項4】
前記回動手段が、前記ウェッジマガジンの端面から、その軸方向に沿って伸びる軸体を含み、
前記板体には、プッシュロッドが伸びる方向に貫通孔が形成され、
前記軸体が前記貫通孔に沿って摺動され、ウェッジマガジンとウェッジプッシャーが同期して回動される、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のウェッジメイク装置。
【請求項5】
前記パンチを含むパンチ加工部が傾斜手段を有し、
前記傾斜手段が、所望の長さとされた前記ウェッジ素材に前記パンチが接してから、前記ウェッジ素材の上方又は下方のいずれかを先行するようパンチを傾斜させて、前記ウェッジ素材を前記溝部に打ち込むことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のウェッジメイク装置。
【請求項6】
前記パンチ加工部が、前記ウェッジマガジンから離間可能とされている、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のウェッジメイク装置。
【請求項7】
アッパーツールに所望の形状のステータコアを支え、コイル束とウェッジとを前記ステータコアの内周面に配列されたスロット孔に挿入させるコイル挿入機であって、
第1のロアーツールと第2のロアーツールとを含み、第1のロアーツールは請求項1乃至請求項6に記載のいずれか一項に記載のウェッジメイク装置を備え、
第2のロアーツールは前記スロット孔にコイル束とウェッジを挿入させる挿入手段を備え、
前記ウェッジメイク装置で成形された所望のウェッジが、第1のロアーツールの上方に位置されているアッパーツールに備えられたウェッジガイドに格納された後、前記アッパーツールが第2のロアーツールの上方に移動されて、前記スロット孔に前記コイル束と前記ウェッジが共に挿入されることを特徴とするコイル挿入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機用のステータコアのスロットに、予め巻線されたコイル束と共に挿入されるウェッジを製造するウェッジメイク装置及びこれを含んだコイル挿入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機を構成するステータコアの内周側には、環状に列をなして筋状の隙間を備えた複数のスロット孔が形成されている。そして、各々のスロット孔の中には磁相が変位するようにコイル束が巻かれて挿入され、あわせてコイル束とステータコアを絶縁するためにウェッジが配設される。具体的には、あらかじめ前記筋状の隙間を除いたスロット内面部分にスロット絶縁紙を嵌め込んでおいて、コイル線を高密度で巻いたコイル束を前記筋状の隙間から押し込むと共に、前記隙間を塞ぐウェッジが挿入されている。
【0003】
ステータコアは、電動機の種類に応じて異なる形状とされ、スロット孔の数・大きさも異なって構成されている。ステータコアの形状の変更はステータコアを構成する薄板の形状が変更されることにより、ステータコアの高さの変更は薄板の積み重ね枚数の変更により行われている。
【0004】
所望の形状のステータコアが、コイル挿入機のアッパーツールをなすウェッジガイド軸の先端部に支えられる。ウェッジガイド軸は環状に配列されたブレード軸の外方に接して配列され、隣り合うブレード軸同士及びウェッジガイド軸同士がなす隙間にはコイル束が引っ掛けられるとともに、その隙間がウェッジが移動されるウェッジガイドとされる。引っ掛けられたコイル束が、コイル束押し出し体により前記スロット孔に押し込まれると共に、ロアーツールに備えられるウェッジメイク装置で形成されたウェッジが、アッパーツールのウェッジガイドとされる隙間に連なるロアーツールから伸びる溝に沿って、ウェッジプッシャーにより押されて前記スロット孔に挿入されている。
【0005】
ウェッジは、ロアーツールを構成するウェッジマガジンの外周に、ウェッジマガジンの軸方向に沿って伸びるように形成された溝において成形される。具体的には、所望の長さに切断されたウェッジ素材が前記溝の側方から、パンチにより打ち込まれて断面U字形状に成形される。前記溝は、ウェッジマガジンの外周に所定の間隔で形成されると共に軸方向両端が開放されて形成される。前記パンチは、ウェッジの長さに相当する長さとされると共に前記溝よりもやや狭い幅とされている。一つのウェッジが成形された後に、まだウェッジが成形されていない別の溝が前記パンチに対向するように、ウェッジマガジンが回転され、次のウェッジの成形の準備がされる。そして、前記のようにウェッジの成形とウェッジマガジンの回転が繰り返されて所望の数のウェッジが成形されて、ウェッジマガジンの所望の溝に格納されていた。
【0006】
従来は、ウェッジマガジンの位置に格納された所望のウェッジは、ウェッジマガジンの外周に形成された溝の位置から、アッパーツールに形成されたウェッジガイドに沿って、ステータコアのスロット内まで、一連の動作でウェッジプッシャーにより押し上げられていた。そうするとウェッジの移動距離が長くなるため、ウェッジプッシャーが長くなり、それにともないロアーツールの高さが高くなって、アッパーツールにおけるステータコアの高さも高くなり、ステータコアの交換の際に作業員の手が届きにくくなり、作業性が悪くなるという課題があった。
【0007】
この課題を解決するために、まずウェッジマガジンの外周に形成された溝からウェッジガイドまでウェッジを挿入させておいて、次に別の位置で前記ウェッジガイドからステータコアのスロット内まで挿入させ、ウェッジの押し上げを2工程で挿入させるという技術が特許文献1に開示されている。
【0008】
特許文献1では、第1と第2のウェッジ押し上げ駆動装置を設けて、まず第1のウェッジ押し上げ駆動装置により、ウェッジガイドまでウェッジを挿入しておいてから、コイル挿入治具であるアッパーツールの位置を移動させる。そして、予め前記ウェッジガイドに挿入されたウェッジが、第2のウェッジ押し上げ駆動装置によってステータコアまで押し上げられるようにされている。
【0009】
すなわち、一連の動作で押し上げられていたウェッジの押し上げ長さを分割して、ウェッジプッシャーの長さを抑えることにより、アッパーツールを支えるテーブルの高さが高くなることが防がれている。これにより、アッパーツールを変更する際にも、テーブルの高さが作業員の手が届く高さとされ、アッパーツールの交換作業が容易にされていた。しかし、この技術によっても、ステータコアの変更に伴ってアッパーツールを交換する際に、それとともにロアーツールの主要部品であるウェッジマガジンをテーブルの下方において交換する必要があり、ステータコアの変更に伴う段取り替えに手間がかかっていた。
【0010】
一方、ステータコアの高さだけが変更される場合に対応して、ウェッジの長さだけを変更する技術が、特許文献2及び特許文献3に開示されている。具体的には、特許文献2では、ステータコアの高さの変更に対応して1台のウェッジメイク装置でウェッジを供給するために、パルスモータを駆動して、ウェッジ素材をカットするストップ位置を変えるウェッジ長さ調整機構により、ウェッジ素材の供給長さが変更されていた。
【0011】
また、特許文献3では、ステータコアの高さが変更された場合に、ウェッジの長さが容易に変更できるように、事前に変更されたステータコアの高さをウェッジ送りモータのコントローラに入力して、カットされるまでのウェッジ素材の送り長さを調整する技術が開示されていた。
【0012】
上述のように、所望の長さとされたウェッジ素材がウェッジに成形されてから、ウェッジはロアーツールからアッパーツールの外周に設けられるウェッジガイドに沿って、ウェッジマガジンの位置からアッパーツールに支えられたステータコアのスロットに挿入されていた。しかしウェッジ素材の長さが調整されても、ステータコアの高さの変更に伴い、ステータコアを支えるアッパーツールの交換とともに、ウェッジマガジン等のロアーツールの主要部品も交換しなければならないという課題は解決されていなかった。
【0013】
電動機のステータコアの大きさは多様であるが、同一種類の電動機を多く製造する際においては、アッパーツールとロアーツールの段取り替えは頻繁ではなく、段取り替えに伴う作業効率の低下も限定されていた。ところが、異なる種類の電動機を数少なく製造する場合には、アッパーツールとロアーツールの段取り替えの頻度が多くなる。また、アッパーツールとロアーツールの位置調整が精度を要する作業であるため、段取り替えに手間がかかり作業効率が低下していた。
【0014】
更に、電動機が大型となる場合には、アッパーツールの大型化とともにロアーツールの代表的な部品であるウェッジマガジンも大型化し、クレーンなどを使って交換することが必要になっていた。更に、ウェッジマガジンはテーブルの下方にあるため、交換作業が困難で、手間がかかると共に危険性も伴った。
【0015】
特許文献4には、アッパーツールの交換や小ロットで多機種の電動機の製造に対応する技術が開示されている。この文献には、作業効率を向上させることを課題として、複数のツーリング(以下「アッパーツール」という)をストックするツールストッカを備えさせ、アッパーツールとアクチュエータを係脱自在にするとともに、ウェッジカッタ、ウェッジ成形具及び成形用パンチを相互に一体的に固定させて、一体化させたものをウェッジメイク装置本体に着脱自在に固定させるコイル挿入機の技術が開示されている。
【0016】
しかし、大型の電動機、例えばトンネルの送風機等に使用される特殊な大型の電動機のウェッジを成形させるウェッジマガジンは、高さ・直径がともに40cmを超える大きさの金属製の塊である。そして、このような大型のウェッジマガジンを含んだウェッジ成形具を着脱させるためには、クレーンを使う必要があり、非常に手間と時間がかかるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】実開昭63−172273号公報
【特許文献2】特開昭59−70169号公報
【特許文献3】特開2000−116077号公報
【特許文献4】特開昭55−103062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
そこで、本発明はウェッジメイク装置のウェッジマガジンを取り外して、別のウェッジマガジンに交換しなくても、多種類のウェッジが製造できるようにすることを課題とした。これにより、電動機が大型であって、その製造数が少なくても、そのウェッジマガジンを交換しないで、多種類のウェッジが製造できるようになり、段取り替えをすることが容易となる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の第1の発明は、コイル挿入機のアッパーツールに支えられた電動機用のステータコアの内周面に配列されたスロット孔に、巻線されたコイル束と共に挿入されるウェッジを製造するウェッジメイク装置であって、略円柱形状とされると共にその軸方向に沿って所望の間隔で外周に複数の溝部を有するウェッジマガジンと、所望の長さのウェッジ素材を前記溝部の溝底に向かって打ち込んで略U字状の断面形状をなすウェッジに成形するパンチと、前記ウェッジを前記溝部が伸びる方向に沿って前記ウェッジマガジンから押し出すプッシュロッドとを含み、前記溝部の両端部が開放された状態とされていると共に、前記溝部のいずれかが、形状又はウェッジマガジンの表面からの深さが異なる溝部とされていることを特徴としている。
【0020】
第1の発明によれば、形状又はウェッジマガジンの表面からの深さが異なる複数の溝部が、所望の間隔でウェッジマガジンの外周に、軸方向の両端部が開放された状態で形成されている。そして、コイル束とウェッジを挿入させるステータコアが変更され、そのスロット孔の形状又は位置が異なったものとなった場合であっても、そのスロットに対応された溝部が備えられていることにより、前記スロットに挿入させるウェッジを成形して、ウェッジマガジンの溝部に沿って移動させることが可能である。
【0021】
これによりステータコアが変更されて、スロットの数、大きさ、位置が異なっても、ウェッジマガジンを交換しなくても、そのスロットに挿入させるウェッジを成形することが可能であるという従来技術にない有利な効果がある。ウェッジマガジンを取り外して交換する必要がないことにより、ウェッジマガジンが大型となる場合であっても、クレーン等を使う必要がなく、ステータコアの変更に簡易にかつ安全に対応することが可能である。
【0022】
本発明の第2の発明は、第1の発明のウェッジメイク装置であって、前記溝部の両端部が開放された状態とされていると共に、前記溝部のいずれかが、形状及びウェッジマガジンの表面からの深さが同一の溝部とされていることを特徴としている。
【0023】
第2の発明によれば、ウェッジマガジンの外周に、形状又はウェッジマガジンの表面からの深さが異なる複数の溝部だけでなく、形状及びウェッジマガジンの表面からの深さが同一の複数の溝部が備えられている。ステータコアの複数のスロット孔に挿入させる所望の同一形状のウェッジを複数個格納させておいてから、それを一度に押し出すことが可能になる。
【0024】
これにより、ウェッジを成形させてから、ウェッジをウェッジガイドに押し出す際の、ウェッジマガジンの復帰動作時間及びウェッジプッシャーの押し出し回数を減らすことができ、ウェッジの挿入時間を短縮することが可能である。
【0025】
本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明のウェッジメイク装置であって、各々の前記プッシュロッドが、各々の断面形状に整合された前記溝部の開放端に向かうように環状に配列され、その端部が板体で固定されてウェッジプッシャーとされ、前記ウェッジマガジンと前記ウェッジプッシャーとを同期して回転させる回動手段と、前記ウェッジプッシャーを延伸させる延伸手段とを備え、
(1)所望の前記溝部が前記パンチに面するようにされる前記ウェッジマガジンの回動と、前記パンチによる前記ウェッジ素材の前記溝部に向けての打ち込みとにより、前記ウェッジプッシャーの延伸によりウェッジガイドに挿入させる少なくとも一つのウェッジを成形させ、
(2)いずれのウェッジも格納されていないウェッジガイドの延長線上に、成形された前記のウェッジが位置されるように、前記回動手段によって前記ウェッジマガジンが回動され、
(3)前記ウェッジプッシャーが前記延伸手段によって延伸されることにより、ウェッジマガジンから押し出された前記ウェッジが前記ウェッジガイドに格納され、所望のウェッジの成形から格納までが行われ、
(4)更に前記延伸手段と前記回動手段との復帰動作により、前記ウェッジマガジンと前記ウェッジプッシャーとが前記ウェッジ素材を成形させる前の状態に復帰されて、一連のウェッジの成形から前記ウェッジマガジンの復帰動作がされ、
前記(1)のウェッジの成形から前記(4)のウェッジマガジンの復帰動作までと同様に、
前記ウェッジの成形と、前記アッパーツールの所望のウェッジガイドへの前記ウェッジの格納と、前記ウェッジマガジンと前記ウェッジプッシャーの復帰とが繰り返されることを特徴としている。なお、ウェッジマガジンに複数の同一の深さ、形状の溝部が形成されている場合には、(1)のウェッジ成形工程で、複数の溝部に対してウェッジを成形してもよく、1つの溝部毎にウェッジを成形してもよい。
【0026】
第3の発明によれば、前記各々の溝部に向かうプッシュロッドが端部で板体に固定され、一体とされたウェッジプッシャーが、ウェッジマガジンと同期して回転される。ステータコアが変更され、ウェッジマガジンの異なる溝部でウェッジを成形する場合であっても、その溝部に対応したプッシュロッドが、前記溝部の中を、前記溝部に沿って延伸される。
【0027】
これによりウェッジマガジンを交換することが不要となるだけでなく、ロアーツールの主要部品であるウェッジプッシャーの交換も不要となり、ステータコアの変更による段取り替え作業が容易かつ簡易になるだけでなく、段取り替え作業時間が短縮される。
【0028】
本発明の第4の発明は、第1乃至第3の発明のウェッジメイク装置であって、前記回動手段が、前記ウェッジマガジンの端面から、その軸方向に沿って伸びる軸体を含み、前記板体には、前記プッシュロッドが伸びる方向に貫通孔が形成され、前記軸体が前記貫通孔に沿って摺動され、ウェッジマガジンとウェッジプッシャーが同期して回動されることを特徴としている。
【0029】
第4の発明によれば、ウェッジマガジンの端面から伸びる軸体が、ウェッジプッシャーに備えられた板体の貫通孔を貫通して摺動可能とされた状態で、ウェッジマガジンとウェッジプッシャーとが同期して回動される。ここで、軸体の本数は限定されない。一本の軸体とする場合には、ウェッジマガジンの中心軸に位置させて、軸体に沿って凸部を形成させて、貫通孔に形成させた凹部と摺動させると好適である。複数の軸体とする場合には、ウェッジマガジンの底面にバランスよく配設させればよい。
【0030】
これにより、ウェッジマガジンとウェッジプッシャーに個別に駆動装置を設けて、同期させるように制御する必要がなくなり、簡単な構成で同期が可能となり、ウェッジメイク装置が故障しにくくなる。
【0031】
本発明の第5の発明は、第1乃至第4の発明のウェッジメイク装置であって、前記パンチを含むパンチ加工部が傾斜手段を有し、前記傾斜手段が、所望の長さとされた前記ウェッジ素材に前記パンチが接してから、前記ウェッジ素材の上方又は下方のいずれかを先行するようパンチを傾斜させて、前記ウェッジ素材を前記溝部に打ち込むことを特徴としている。
【0032】
第5の発明によれば、パンチがウェッジ素材に接してから、傾斜してウェッジ素材を打ち込む。これにより、スロット孔が長いステータコアに対応して前記溝部の長さが長いものであっても、また前記溝部の深さが深いものであっても、押込み抵抗を小さくさせて、ウェッジ素材を少ない力で安定して溝底まで打ち込むことが可能となる。
【0033】
本発明の第6の発明は、第1乃至第5の発明のウェッジメイク装置であって、前記パンチ加工部が、前記ウェッジマガジンから離間可能とされていることを特徴としている。
【0034】
従来は、ウェッジマガジンを取り外して、ウェッジマガジンが位置していた側からパンチを交換していた。第6の発明によれば、パンチ加工部が、ウェッジマガジンから離間可能とされ、ウェッジマガジンを固定させたままの状態としても、パンチを交換する空間が確保でき、パンチの交換が可能である。これにより、ステータコアが変更されても、ウェッジマガジンを固定したまま、所望のウェッジを成形させるパンチを容易且つ安全に交換することが可能である。
【0035】
本発明の第7の発明は、アッパーツールに所望の形状のステータコアを支え、コイル束とウェッジとを前記ステータコアの内周面に配列されたスロット孔に挿入させるコイル挿入機であって、第1のロアーツールと第2のロアーツールとを含み、第1のロアーツールは第1から第6のいずれかの発明に記載のウェッジメイク装置を備え、第2のロアーツールは前記スロット孔にコイル束とウェッジを挿入させる挿入手段を備え、前記ウェッジメイク装置で成形された所望のウェッジが、第1のロアーツールの上方に位置されているアッパーツールに備えられたウェッジガイドに格納された後、前記アッパーツールが第2のロアーツールの上方に移動されて、前記スロット孔に前記コイル束と前記ウェッジが共に挿入されることを特徴としている。
【0036】
第7の発明によれば、第1のロアーツールでウェッジを所望の本数ずつ成形・挿入している間に、上方に位置されたアッパーツールのブレード軸に作業者がコイル束を引っ掛ける作業をすればよい。そして、第1のロアーツールの上方において所望のウェッジガイドへのウェッジの挿入とブレード軸へのコイル束の引っ掛けが終わった後に、第2のロアーツールの上方にアッパーツールが移動されて、コイル束とウェッジの挿入が行われる。
【0037】
これにより、アッパーツールを支えるテーブルの位置が高くならず、ウェッジを成形している間に別の作業をすることが容易であることに加えて、ウェッジマガジンを取り外して交換する必要がなく、ステータコアの変更に簡易にかつ安全に対応することが可能となり、コイル挿入作業及び段取り替えが容易になる。
【発明の効果】
【0038】
・本発明の第1の発明によれば、ステータコアが変更されて、スロットの数、大きさ、位置が異なっても、ウェッジマガジンを交換しなくても、そのスロットに挿入させるウェッジを成形することが可能であるという従来技術にない有利な効果がある。ウェッジマガジンを取り外して交換する必要がないことにより、ウェッジマガジンが大型となる場合であっても、クレーン等を使う必要がなく、ステータコアの変更に簡易にかつ安全に対応することが可能である。
・本発明の第2の発明によれば、ウェッジを成形させてから、ウェッジをウェッジガイドに押し出す際の、ウェッジマガジンの復帰動作時間及びウェッジプッシャーの押し出し回数を減らすことができ、ウェッジの挿入時間を短縮することが可能である。
・本発明の第3の発明によれば、ウェッジマガジンを交換することが不要となるだけでなく、ロアーツールの主要部品であるウェッジプッシャーの交換も不要となり、ステータコアの変更による段取り替え作業が容易かつ簡易になるだけでなく、段取り替え作業時間が短縮される。
【0039】
・本発明の第4の発明によれば、ウェッジマガジンとウェッジプッシャーに個別に駆動装置を設けて、同期させるように制御する必要がなくなり、簡単な構成で同期が可能となり、ウェッジメイク装置が故障しにくくなる。
・本発明の第5の発明によれば、スロット孔が長いステータコアに対応して前記溝部の長さが長いものであっても、また前記溝部の深さが深いものであっても、押込み抵抗を小さくさせて、ウェッジ素材を少ない力で安定して溝底まで打ち込むことが可能である。
・本発明の第6の発明によれば、ステータコアが変更されても、ウェッジマガジンを固定したまま所望のウェッジを成形させるパンチを容易且つ安全に交換することが可能である。
・本発明の第7の発明によれば、アッパーツールを支えるテーブルの位置が高くならず、その間に別の作業をすることが容易であることに加えて、ウェッジマガジンを取り外して交換する必要がなく、ステータコアの変更に簡易にかつ安全に対応することが可能となり、コイル挿入作業及び段取り替えが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】ウェッジマガジンを含むロアーツールの構成を説明する分解斜視図(実施例1)
図2】第1及び第2のロアーツールを含むコイル挿入機の説明図(実施例1)
図3】パンチ加工部の作用の説明図(実施例1)
図4】ステータコアの説明図(実施例1)
図5】ウェッジの成形工程の説明図(実施例1)
図6】ウェッジの成形工程の説明図(実施例1)
図7】ウェッジの成形工程の説明図(実施例1)
図8】ウェッジの成形工程の説明図(実施例1)
図9】コイル挿入機の平面の説明図(実施例1)
【発明を実施するための形態】
【0041】
ステータコアの変更があっても、ウェッジマガジンを交換しないで、変更されたステータコアに対応したウェッジを成形して、それをウェッジガイドに格納可能とするために、ウェッジマガジンの側面に備えられている複数の溝部のいずれかを、形状又はウェッジマガジンの表面からの深さが異なる溝部とすると共に、溝部の両端部が開放された状態とした。
【実施例1】
【0042】
本発明の、実施例1のウェッジメイク装置100及びこれを含んだコイル挿入機200を、図1から図9を参照して説明する。図1は実施例1のウェッジマガジン10を含むロアーツール1の主要部品の構成を説明する分解斜視図、図2は第1のロアーツール1及び第2のロアーツール2を含むコイル挿入機200の説明図、図3はパンチ加工部30の作用の説明図である、図4は種類が異なるステータコアの説明図である。図5から図8はウェッジの成形工程の説明図である。図9はコイル挿入機200の平面の説明図である。
【0043】
図2を参照して、コイル挿入装置の構成の一例を説明する。実施例1のコイル挿入機200は、回転駆動手段201に水平に回転可能に支持されたテーブル202と、第1のロアーツール1と、第2のロアーツール2と、それらを支持する図示しない基台とを備えている。テーブル202は、平面視円形形状をなし、その中央軸の周りに回転可能とされ、アッパーツール203を支持する第1の支持部204と、アッパーツール203を支持する第2の支持部206とが点対称の位置に支持されている(図9参照)。アッパーツール203はブレード軸215と、ウェッジガイド軸209と、それを固定する図示しない固定具を含んで構成されている。ウェッジガイド軸209は環状に配列されたブレード軸215の外方に接して配列され、隣り合うブレード軸同士及びウェッジガイド軸同士がなす隙間にはコイル束が引っ掛けられるとともに、その隙間がウェッジが移動されるウェッジガイド205とされる。第1の支持部においてアッパーツールのウェッジガイド205に所望のウェッジが格納され、コイル束212が引っ掛けられてから、第2の支持部の位置に移動される。
【0044】
第1の支持部におけるアッパーツール203の下方には、第1のロアーツール1が配設される。第1のロアーツール1には、ウェッジメイク装置100と、ウェッジ素材供給装置40とが含まれている。ウェッジメイク装置100には、ウェッジマガジン10と、ウェッジプッシャー20と、パンチ加工部30と、ウェッジマガジン10とウェッジプッシャーを同期して回転させる軸体50とが含まれている。
【0045】
第2の支持部におけるアッパーツールの下方には、第2のロアーツール2が配設される。第2のロアーツール2には、図示しない延伸手段により延伸されて第2の支持部においてウェッジガイド205に格納されているウェッジ214を押し上げるウェッジプッシャー210が備えられている。アッパーツール2に配設されているストリッパー211がコイル束212をステータコア213のスロット孔に挿入させると共に、ウェッジプッシャー210がウェッジガイド205に格納されているウェッジ214を押し上げて、第2の支持部206の位置でコイル束212とウェッジ214の挿入が行われる。
【0046】
次に、図1図2を参照して、ウェッジメイク装置100の構成を説明する。ウェッジマガジン10は、図示しないサーボモータ装置により回動されるギア207(図2参照)と噛み合って、ウェッジマガジンを回転させる回転駆動部11(図1参照)と、側方からウェッジ素材が押し込まれる溝部とを備えたウェッジマガジン本体12と、下方からプッシュロッドを挿通させる下方部材13とからなり、それらが図示しないボルト、ネジ部材等の連結部材により一体に構成される。ウェッジマガジン10は、テーブル202の下方において、ベアリング208を介して回動可能とされている。
【0047】
ウェッジマガジン本体12の周囲には、ウェッジマガジン周面からの深さと形状が異なる複数の溝部14a,14b,14c,14d,14e,14f,14gが、所望の間隔をあけて形成されている。各々の溝部は溝底部を除いて均一な幅とされ、ウェッジマガジン本体12の全長に亘って形成される。そして溝底部の断面形状は先方がすぼまった台形形状とされ、溝底部の開放側は溝部の均一な幅の部分よりもやや広い幅とされ段部が形成されている。これによりウェッジ素材が溝部に打ち込まれて、断面U字形状のウェッジ214に形成されてからは、その縁部が前記段部に引っ掛かり溝底部から外れない。
【0048】
回転駆動部11は、略円板形状をなし、その周囲にギア15が形成され、前記サーボモータにより回動されるギア207と噛み合ってウェッジマガジン10を、その軸の回りに回動させる。回転駆動部11には、前記各々の溝底部から軸方向に延長させた位置に、前記の台形形状に対応した形状の孔16a,16b,16c,16d,16e,16f,16gが形成される。下方部材13も略円板形状をなし、前記各々の溝底部に沿う延長線の位置に、前記の台形形状に対応した形状の孔17a,17b,17c,17d,17e,17f,17gが形成される。
【0049】
ウェッジマガジンの中央軸の位置には、ウェッジマガジン10とウェッジプッシャー20を同期して回動させるようにする軸体50が貫通されている。軸体50は、ウェッジマガジン10の略中央部に上下に貫通させた孔17に貫通し固定されている。軸体の周面には凸部51が形成され、前記孔17に形成された窪部18に嵌着されて固定されている。
【0050】
ウェッジプッシャー20には、ウェッジマガジン10の溝部の溝底部に沿って、ウェッジマガジン10の軸方向に摺動されるように、前記各々の溝底部よりもやや小さい断面形状とされた複数のプッシュロッド21a,21b,21c,21d,21e,21f,21gが備えられている。各々のプッシュロッドの基部が円盤状をなすウェッジプッシャー基板22に固定される。前記溝底部に延伸される各々のプッシュロッドの内方側が先行するように傾斜して形成され、前記溝部の先端に打ち込まれて形成された断面U字形状のウェッジのフランジ部に当接されて、ウェッジ214を図1の一点鎖線に沿って上方に押し出すようにされている。
【0051】
前記ウェッジプッシャー基板22の中央部には、貫通孔23が形成され前記軸体50が摺動可能とされるように下方に貫通されている。ウェッジプッシャー基板22の周囲は、延伸手段により回転可能に把持されて(図2(B−1)図、図2(B−2)図、図2(B−3)図参照)、ウェッジマガジン10の溝部に沿って、各々のプッシュロッド21a,21b,21c,21d,21e,21f,21gを延伸させる。ウェッジプッシャー20が図において上方に移動した場合には、各々のプッシュロッドの先端は回転駆動部11の天部と同一の高さとされ、アッパーツールの下端の位置までウェッジを挿入させる。また、ウェッジプッシャー20が下方に降下した場合には、各々のプッシュロッドの先端が下方部材の孔17a,17b,17c,17d,17e,17f,17gにとどまる位置となるように移動され、プッシュロッドの脱落が防止される。
【0052】
ここで図2(B−1)図、図2(B−2)図、図2(B−3)図を参照して、複数の種類のウェッジプッシャー20の延伸手段を説明する。図2(B−1)図は、ロッドレスシリンダー24を延伸手段とした例を説明する図である。ロッドレスシリンダーによる場合には、ウェッジプッシャーがウェッジマガジンと共に同期して回動可能とされるように、ウェッジプッシャー基板22の周縁を上下方向から挟み部により摺動可能に挟んだ状態で、挟み部をロッドレスシリンダーにより図に示す矢印方向に移動させて、ウェッジプッシャー20を延伸させている。ロッドレスシリンダーによる場合には、延伸手段の全体の長さを短くすることが可能である。テーブル下方の高さを低く抑えるためにはロッドレスシリンダーを延伸手段とすることが好適である。
【0053】
図2(B−2)図は、エアーシリンダー25とガイドバー26とを延伸手段とした例を説明する図である。エアーシリンダー25による場合には、ガイドバー26に沿わせて、ウェッジプッシャー基板22の周縁を上下方向から挟み部により挟んで、挟み部をエアーシリンダー25により移動させて、ウェッジプッシャー20を延伸させている。図2(B−3)図は、ボールネジを含んだ挟み部とボールネジが摺動する軸体とガイドバー26とを延伸手段とした例を説明する図である。この例ではサーボモータ28を駆動させ、ベルト27を介して挟み部内を貫通されて、周囲にボールネジ受部が形成された軸体を回動させて、ガイドバー26に沿わせて、ボールネジ部29が含まれた挟み部を移動させることにより、ウェッジプッシャー20を延伸させている。テーブル下方の高さの制約がない場合には、これらのいずれの延伸手段によってもよいことは勿論のことである。
【0054】
ここで、前記溝部にウェッジ素材を打ち込むパンチ34を備えたパンチ加工部30を、図2及び図3を参照して説明する。パンチ加工部30は、シリンダー駆動部31(図2参照)と、上シリンダー軸32と、下シリンダー軸33と、パンチ34と、からなっている。パンチ34は、ウェッジマガジンの溝部の幅よりもやや狭い幅の板体であり、その上部を上シリンダー軸32により、その下部を下シリンダー軸33により軸支されている。ウェッジ素材供給装置40により送り出されたウェッジ素材41が、各々が左右に分割されたダイプレート35とパンチガイド36に挟まれた状態で、カッター42により所望の長さにカットされ(図2図6(A−1)図参照)、ウェッジマガジン本体12の溝部に面した状態で保持される。そして、所望の長さとされたウェッジ素材が、前記溝部の側面開放部から溝底部に向かって、パンチ34により打ち込まれて断面U字形状のウェッジに形成される。溝底部に前記段部が形成されているため、打ち込まれたウェッジの縁部が段部に係り、ウェッジは溝底部の位置に保持される。
【0055】
ここで図9を参照して、パンチ加工部とウェッジマガジンの離間作用について説明する。パンチ加工部は、ターンテーブル202(図2参照)の下方において、ウェッジマガジン10の溝部とパンチ34の先端との距離を離間することが可能なように設置される(図9参照)。離間させる手段としては、スライドさせて後退させてもよく(図9(A)図参照)、パンチ加工部を水平方向に回動させてもよい(図9(B)図参照)。そして、パンチ加工部30とウェッジマガジン10の溝部とを離間させた状態で、変更されたステータコアに応じた前記溝部の所望の形状に対応したパンチ34が、前記溝部に打ち込み可能なように、上シリンダー軸32と下シリンダー軸33とに取り付けられて交換される。
【0056】
ここでパンチ加工部の作用を、図3を参照して詳細に説明する。図3(A)図はパンチ打ち込み前の状態、図3(B)図はウェッジ素材がパンチとウェッジマガジンに把持された状態、図3(C)図は溝部の中をパンチがウェッジを打ち込んでいる状態、図3(D)図は溝底部にウェッジの下方が達した状態、図3(E)図は溝底部にウェッジの上方も達した状態の各々の断面を説明する図である。パンチ加工部には、上シリンダー軸32と下シリンダー軸33の伸縮を個別に制御させる制御手段(図示していない。)が設けられている。
【0057】
まず、ダイプレート35とパンチガイド36(図3(A)図、図5(A−1)図参照)に保持された所望の長さのウェッジ素材41に、パンチ34先端全体が同時に接するように延伸される(図3(A)図、図3(B)図参照)。そして、その後は下方のシリンダー軸33が先行して、溝部の溝底に至るように延伸され(図3(C)図、図3(D)図参照)、上方のシリンダー軸32は追随して溝部の溝底に至るように延伸され(図3(E)図)、断面がU字形状のウェッジが成形される。これにより、成形されるウェッジ素材の長さが長くても、前記溝部に少ない力で安定した成形をすることが可能である。なお、上方のシリンダー軸を先行させてもよいことは勿論のことである。
【0058】
ここで、本発明でウェッジを挿入させる異なる種類のステータコア301,302を、図4に例を示して説明する。勿論ステータコアは、この形状に限定されるわけではない。図4(A)に示したステータコア301はスロット孔303が環状に48孔配列され、外径が23cm、積厚が14cmである。また図4(B)に示した別の形状のステータコア302は、スロット孔304が環状に72孔配列され、外径が37cm、積厚が27cmである。これらの複数の形状のステータコアのうちのいずれかが、図5(A)図に破線で示すように第1のロアーツールの上方に設置されたアッパーツール203のウェッジガイド軸209の先端に保持される。
【0059】
例えば、前記48孔のステータコアをアッパーツールに保持する場合には、そのスロット孔に対応したウェッジマガジンの溝部で成形されたウェッジ214が溝底部から押し上げられて、アッパーツールのウェッジガイド205に格納される(図2参照)。また、ステータコアが前記72孔のステータコアに変更された場合には、それを保持させるアッパーツールも交換され、前記72孔のステータコアのスロット孔には、そのスロット孔に対応したウェッジマガジンの溝部で成形されたウェッジが溝底(図1参照)から押し上げられて、アッパーツールのウェッジガイド205に格納される。そして、アッパーツールのウェッジガイド205にウェッジ214が格納されてから、第2のロアーツール2の上方に移動されて(図9参照)、前記のスロット孔301にコイル束212とともにウェッジ214が挿入される。
【0060】
次に、所望の形状のウェッジを成形して、アッパーツールの所望のウェッジガイド205に格納するまでの工程を、図5から図8を参照して説明する。図5から図8に各工程の図を、(A)図から(H)図の順に、ウェッジマガジンと、パンチ加工部と、ウェッジプッシャーの動作を示して説明している。図5(A)図はウェッジ素材を所望の長さでカットして、ウェッジ素材をウェッジマガジンの溝部に面する位置で保持させた状態を示した説明図である。図5(B)図はパンチを打ち込んだ状態、図6(C)図はパンチを引き抜いた状態、図6(D)図はウェッジマガジンを回動させた状態、図7(E)図はウェッジプッシャーを延伸させた状態、図7(F)図はウェッジプッシャーを引き下げた状態、図8(G)図はウェッジマガジンを元の位置に復帰させた状態の各々の状態を示した説明図である。図8(H)図は図5(A)図と同一の状態となり、ウェッジ素材を所望の長さでカットして、ウェッジ素材をウェッジマガジンの溝部に面する位置で保持させた状態を示した説明図である。また、(A)図から(H)図において(−1)の枝番号を示した図は、(A)図から(H)図の各図のA−A位置の断面図、例えば(A−1)図は(A)図A−A位置の断面図を示している。図5(A−2)図には、ステータコアの平面図、図5(A−3)図には、図5(A−2)B‐B位置のステータコアの断面図を示している。
【0061】
まず、ウェッジマガジン10のいずれかの溝部と、連通されるように対応されたウェッジガイド205を備えたアッパーツール203が、テーブル202上の第1の支持部204の位置に載置される。そして、所望の長さのウェッジ素材がウェッジ素材供給装置40により送り出され、カッター42によりカットされ、ダイプレート35とパンチガイド36の隙間に挟まれた状態で保持される。この状態で、ウェッジマガジン10は、その中心軸の回りに回動されて、予め前記溝部がパンチ34の先端部に向くように位置されている(図5(A−1)図参照)。この状態がウェッジ成形の初期状態とされる(図5(A)図参照)。
【0062】
次に、前記溝部に向いていたパンチ34が溝底部に向いて前進して、ダイプレート35とパンチガイド36の隙間に挟まれた状態のウェッジ素材を打ち込んでウェッジを成形する(図5(B)図参照)。そして、パンチ34が前記溝部から引き抜かれることにより、ウェッジマガジン本体12の溝底部に断面U字形状のウェッジ214が成形される(図6(C)図参照)。断面U字形状とされたウェッジの両側の縁部が断面台形形状とされた溝底部の段部に引っ掛かり保持される。この状態で、アッパーツール203においては、コイル束212を引っ掛ける準備をしてもよい。同一形状でウェッジマガジンの表面からの深さが同一の複数の溝部が形成されている場合には、その全ての溝部に予めウェッジ214を成形しておけばよい。
【0063】
次にウェッジマガジン10とウェッジプッシャー20が同期して回転され、アッパーツール203においてウェッジを格納させるウェッジガイド205と前記溝部の上方開放部が対応した位置となるように回動される(図6(D)図参照)。この状態においては、ウェッジプッシャー20の延伸手段は、ウェッジプッシャー基板22を上下から挟んだままの状態で、ウェッジ基板22に対して摺動された状態となっている。このウェッジマガジン10が回動している状態で、アッパーツール203においては、コイル束212を引っ掛ける作業をしてもよい。
【0064】
次に、アッパーツール203において、ウェッジを格納させるウェッジガイド205と前記溝部の上方開放部が連通された状態で、ウェッジプッシャー基板22を挟んだ延伸手段が駆動されて、ウェッジプッシャー20が上方に移動する。そして、ウェッジマガジン10に格納されていたウェッジが、プッシュロッド21の先端に当接した状態で押し上げられて、所望の位置のウェッジガイド205に挿入される(図7(E)図参照)。この状態でアッパーツール203においては、別のコイル束212を引っ掛ける準備をしてもよい。
【0065】
次に、ウェッジプッシャー20を下降させて、ウェッジマガジン10から引き抜いた状態とさせる(図7(F)図参照)。そして、所望のウェッジガイドにウェッジが格納された状態とされる。
【0066】
次に、ウェッジマガジン本体12の前記溝部がパンチ34に向かう位置に復帰されるように回動される(図8(G)図参照)。そして前記溝部とパンチ34との間のダイプレート35とパンチガイド36の隙間にウェッジ素材が供給され、所望の長さにカットされ、ウェッジ打ち込み前の工程に復帰する。(図8(H)図参照)。(A)図と(H)図は同一の状態を示している。このように(A)図から(G)図に示した工程が繰り返されて、所望のウェッジガイド205にウェッジ214が格納される。ここで、ウェッジは全てのウェッジガイドに格納されてもよく、所望の一部のウェッジガイドに格納されてもよい。
【0067】
そして所望のウェッジガイドにウェッジを格納させてから、アッパーツール203は第1の支持部204から第2の支持部205に移動されて、コイル束とウェッジがステータコアのスロット孔に挿入される。(A)図から(H)図の過程で、アッパーツールにコイル束を引っ掛ける作業を説明したが、それぞれの過程で作業内容が限定されないことは勿論のことである。
【0068】
(その他)
・実施例1では発明の理解を容易にするため、上下方向にウェッジプッシャーを延伸させる例を説明したが、延伸方向は限定されない。また、アッパーツールを旋廻させて第1の支持部から第2の支持部に移動させたが、スライドさせて移動させてもよく、移動の態様は限定されない。
・実施例1のウェッジメイク装置では、溝部の形状をすべて異ならせたものとしたが、同一の深さで同一の形状の複数の溝部が含まれていてもよい。この場合には、各々の溝部に予めウェッジを格納させておいてから、それらを同時に第1のロアーツールの上方に位置された状態のアッパーツールのウェッジガイドに押し出すようにすればよい。
・今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、上記した説明に限られず特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0069】
1…第1のロアーツール、2…第2のロアーツール、
100、…ウェッジメイク装置、200…コイル挿入機、201…回転駆動手段、
202…テーブル、203…アッパーツール、204…第1の支持部、
205…ウェッジガイド、206…第2の支持部、207…ギア、
208…ベアリング、209…ウェッジガイド軸、210…ウェッジプッシャー、
211…ストリッパー、212…コイル束、213…ステータコア、
214…ウェッジ、215…ブレード軸、
10…ウェッジマガジン、20…ウェッジプッシャー、30…パンチ加工部、
40…ウェッジ素材供給装置、50…軸体、
11…回転駆動部、12…ウェッジマガジン本体、13…下方部材、
15…ギア、17…孔、51…凸部、18…窪部、
14a,14b,14c,14d,14e,14f,14g…溝部、
16a,16b,16c,16d,16e,16f,16g…孔、
17a,17b,17c,17d,17e,17f,17g…孔、
21a,21b,21c,21d,21e,21f,21g…プッシュロッド、
21…プッシュロッド、22…ウェッジプッシャー基板、23…貫通孔、
24…ロッドレスシリンダー、25…エアーシリンダー、26…ガイドバー、
27…ベルト、28…サーボモータ、29…ボールネジ部、
32…上シリンダー軸、33…下シリンダー軸、34…パンチ、
35…ダイプレート、36…パンチガイド、
41…ウェッジ素材、42…カッター、
301,302…ステータコア、303,304…スロット孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9