特許第5943531号(P5943531)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5943531-既存コンクリート構造物の耐震補強構造 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5943531
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】既存コンクリート構造物の耐震補強構造
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20160621BHJP
【FI】
   E04G23/02 F
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-17611(P2016-17611)
(22)【出願日】2016年2月2日
【審査請求日】2016年2月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505086152
【氏名又は名称】槇谷 栄次
(73)【特許権者】
【識別番号】504079601
【氏名又は名称】新日本建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119220
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 武彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100094787
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 健二
(72)【発明者】
【氏名】槇谷 栄次
【審査官】 油原 博
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5780442(JP,B1)
【文献】 特開2015−063890(JP,A)
【文献】 特開2015−004252(JP,A)
【文献】 特開2000−087563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート柱又はコンクリート梁からなる既存コンクリート構造物の耐震補強構造であって、
断面コ字形本体の上下に水平補強リブ、水平補強リブの端部に垂直補強リブを形成し、垂直補強リブが既存コンクリート柱又は既存コンクリート梁の一面側に接し、隣り合う水平補強リブが接するように連設され、垂直補強リブと既存コンクリート柱又は既存コンクリート梁が固定ボルトで固定される補強部材と
補強部材と既存コンクリート柱又は既存コンクリート梁に囲まれた空間に充填される固化剤と、からなることを特徴とする既存コンクリート構造物の耐震補強構造。
【請求項2】
補強部材の外周に繊維シートを配置することを特徴とする請求項1に記載の既存コンクリート構造物の耐震補強構造。
【請求項3】
補強部材を連設配置する際、隣り合う水平補強リブを連結ボルトで連結するための連結ボルト用孔を水平補強リブに形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の既存コンクリート構造物補強構造。
【請求項4】
補強部材と既存コンクリート柱又は既存コンクリート梁に囲まれた空間に複数の主筋と複数の主筋間にフープ筋を配筋することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の既存コンクリート構造物の耐震補強構造。
【請求項5】
既存コンクリート柱又は既存コンクリート梁に配置したあと施工アンカーの突出部を主筋又はフープ筋の近傍に位置させることを特徴とする請求項4に記載の既存コンクリート構造物の耐震補強構造。
【請求項6】
補強部材を金属製又は樹脂製とすることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の既存コンクリート構造物の耐震補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート柱又はコンクリート梁からなる既存コンクリート構造物の耐震補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、既存コンクリート構造物の耐震補強構造として、既存コンクリート柱の補強必要長さにほぼ対応する長さにわたって一対のL字形のガイド部材を既存コンクリート柱の一面側にアンカーボルトで固定し、ガイド部材に一対の鋼板を接触させて固定して補強枠体を形成し、既存コンクリート柱と補強枠体に囲まれた空間にコンクリートを充填する耐震補強構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−86690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の既存コンクリート構造物の耐震補強構造は、一対のガイド部材と一対の鋼板を組み立てて補強枠体を形成するため、組み立て作業に時間を要し、結果として高コストの耐震補強構造になるという問題点を有する。
【0005】
本発明は、従来技術の持つ課題を解決するもので、構造が簡単で、製造が容易で組み立て作業が短時間ですむ既存コンクリート構造物の耐震補強構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の既存コンクリート構造物の耐震補強構造は、前記課題を解決するために、コンクリート柱又はコンクリート梁からなる既存コンクリート構造物の耐震補強構造であって、断面コ字形本体の上下に水平補強リブ、水平補強リブの端部に垂直補強リブを形成し、垂直補強リブが既存コンクリート柱又は既存コンクリート梁の一面側に接し、隣り合う水平補強リブが接するように連設され、垂直補強リブと既存コンクリート柱又は既存コンクリート梁が固定ボルトで固定される補強部材と、補強部材と既存コンクリート柱又は既存コンクリート梁に囲まれた空間に充填される固化剤と、からなることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の既存コンクリート構造物の耐震補強構造は、補強部材の外周に繊維シートを配置することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の既存コンクリート構造物の耐震補強構造は、補強部材を連設配置する際、隣り合う水平補強リブを連結ボルトで連結するための連結ボルト用孔を水平補強リブに形成することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の既存コンクリート構造物の耐震補強構造は、補強部材と既存コンクリート柱又は既存コンクリート梁に囲まれた空間に複数の主筋と複数の主筋間にフープ筋を配筋することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の既存コンクリート構造物の耐震補強構造は、既存コンクリート柱又は既存コンクリート梁に配置したあと施工アンカーの突出部を主筋又はフープ筋の近傍に位置させることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の既存コンクリート構造物の耐震補強構造は、補強部材を金属製又は樹脂製とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
コンクリート柱又はコンクリート梁からなる既存コンクリート構造物の耐震補強構造であって、断面コ字形本体の上下に水平補強リブ、水平補強リブの端部に垂直補強リブを形成し、垂直補強リブが既存コンクリート柱又は既存コンクリート梁の一面側に接し、隣り合う水平補強リブが接するように連設され、垂直補強リブと既存コンクリート柱又は既存コンクリート梁が固定ボルトで固定される補強部材と、補強部材と既存コンクリート柱又は既存コンクリート梁に囲まれた空間に充填される固化剤と、からなることで、一定形状の補強部材を連接するだけで既存コンクリート柱、既存コンクリート梁の一面側への補強部材の配置、固定作業が容易に実施可能であり、固化剤により既存コンクリート柱、既存コンクリート梁と補強部材が一体化されると、補強部材の上下の補強リブが補強部の耐震性をより向上させることが可能となる。
補強部材の外周に繊維シートを配置することで、引張強度とエネルギー減衰性を向上することが可能となる。
補強部材を連設配置する際、隣り合う水平補強リブを連結ボルトで連結するための連結ボルト用孔を水平補強リブに形成することで、上下方向、水平方向への補強部材の連設作業を容易にすることが可能となる。
補強部材と既存コンクリート柱又は既存コンクリート梁に囲まれた空間に複数の主筋と複数の主筋間にフープ筋を配筋することで、耐震性能をより向上させることが可能となる。
既存コンクリート柱又は既存コンクリート梁に配置したあと施工アンカーの突出部を主筋又はフープ筋の近傍に位置させることで、既存コンクリート柱、既存コンクリート梁と補強部との一体性を向上させることが可能となる。
補強部材を金属製又は樹脂製とすることで、入手、成形が容易で低価格の補強部材とすることが可能となる。

【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態を示す図である。
図2】本発明の実施形態を示す図である。
図3】本発明の実施形態を示す図である。
図4】本発明の実施形態を示す図である。
図5】本発明の実施形態を示す図である。
図6】本発明の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態を図により説明する。図1は、本発明の既存コンクリート構造物耐震構造に用いる補強部材の斜視図であり、図2は、補強部材の上面図、図3は、補強部材の正面図である。
【0015】
補強部材1は、断面コ字形の本体部2と、本体部2の上下に水平に内側に伸びる上下水平補強リブ3、4と、コ字形の本体部2の端部と上下水平補強リブ3、4と連結する左右垂直補強リブ5、6から構成される。
【0016】
左右垂直リブ5,6には、既存コンクリート柱、既存コンクリート梁の一面に固定ボルトで固定するための固定ボルト用孔7が複数形成される。
【0017】
上下水平補強リブ3、4には、補強部材1を連設する際、隣り合う上下水平補強リブ3,4を連結ボルトで連結するための連結ボルト用孔8が複数形成される。
【0018】
補強部材1は、一定の強度を有し、成形の容易性を考慮して鋼等の金属や強化樹脂等の樹脂で形成される。
【0019】
図4図5は、既存コンクリート柱9の一面側に補強部材1を配置する耐震補強の一実施形態を示す図である。床又は基礎10から立設する既存コンクリート柱9の一面側に、補強部材1の左右垂直補強リブ5、6が接するように配置する。左右垂直補強リブ5、6に形成した固定ボルト用孔7を通して固定ボルト11を既存コンクリート柱9に打ち込む補強部材1を既存コンクリート柱9に固定する。
【0020】
補強部材1の既存コンクリート柱9への固定は、床又は基礎10と接する位置から順に上方向に連設する。補強部材1を上方向に連設する際、下部に位置する補強部材1の上水平補強リブ3に形成した連結ボルト用孔8と上部に位置する補強部材1の下水平補強リブ4に形成した連結ボルト用孔8に連結ボルト12を挿入してナットで固定する。
【0021】
補強部材1と既存コンクリート柱9に囲まれた空間に上方に伸びる主筋13を複数配置する。主筋13の下端部は、床又は基礎10に形成した穴に固定する。複数の主筋13間
に所定高さ毎にフープ筋14を配置する。
【0022】
既存コンクリート柱9には所定高さ毎のあと施工アンカー15を埋設配置する。あと施工アンカー15の突出部の先端に定着板16を固定し、定着板16を主筋13又はフープ筋14の近傍に位置させる。
【0023】
既存コンクリート柱9の補強対象位置まで補強部材1の連設が終了し、主筋13とフープ筋14の配筋が終了すると、補強部材1の外周に繊維シート17を接着剤を介して配置する。繊維シート17の端部を延長し延長部分を既存コンクリート柱9の側面に接着剤を介して固定する。
【0024】
補強部材1の外周への繊維シート17の配置が終了すると、補強部材1と既存コンクリート柱9に囲まれた空間に固化剤を充填する。固化剤としては高流動性コンクリート等が用いられる。一定期間の養生を経て、既存コンクリート柱9と補強部材1が一体に固定される。
【0025】
図6は、既存コンクリート梁18の一面側に補強部材1を配置する耐震補強の一実施形態を示す図である。既存コンクリート梁18の一面側に、補強部材1の左右垂直補強リブ5、6が接するように配置する。左右垂直補強リブ5、6に形成した固定ボルト用孔7を通して固定ボルト11を既存コンクリート柱9に打ち込む補強部材1を既存コンクリート梁18に固定する。
【0026】
既存コンクリート梁18の補強対象範囲に沿って補強部材1を横方向に連設する。隣り合う補強部材1の上水平補強リブ3と下補強リブ4に形成した連結ボルト用孔8に連結ボルト12を挿入してナットで固定する。
【0027】
補強部材1と既存コンクリート梁18に囲まれた空間に水平に伸びる主筋13を複数配置する。複数の主筋13間に所定間隔毎にフープ筋14を配置する。
【0028】
既存コンクリート梁18には所定間隔毎にあと施工アンカー15を埋設配置する。あと施工アンカー15の突出部の先端に定着板16を固定し、定着板16を主筋13又はフープ筋14の近傍に位置させる。
【0029】
既存コンクリート梁18の補強対象位置まで補強部材1の連設が終了し、主筋13とフープ筋14の配筋が終了すると、補強部材1の外周に繊維シート17を接着剤を介して配置する。繊維シート17の端部を延長し延長部分を既存コンクリート梁18の側面に接着剤を介して固定する。
【0030】
補強部材1の外周への繊維シート17の配置が終了すると、補強部材1と既存コンクリート梁18に囲まれた空間に固化剤を充填する。固化剤としては高流動性コンクリート等が用いられる。一定期間の養生を経て、既存コンクリート柱9と補強部材1が一体に固定される。
【0031】
以上のように、本発明の既存コンクリート構造物の耐震補強構造は、一定形状の補強部材を連接するだけで既存コンクリート柱、既存コンクリート梁の一面側への補強部材の配置、固定作業が容易に実施可能であり、固化剤により既存コンクリート柱、既存コンクリート梁と補強部材が一体化されると、補強部材の上下の補強リブが補強部の耐震性をより向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0032】
1:補強部材、2:断面コ字形本体、3:上水平補強リブ、4:下水平補強リブ、5:左垂直補強リブ、6:右垂直補強リブ、7:固定ボルト用孔、8:連結ボルト用孔、9:既存コンクリート柱、10:床又は基礎、11:固定ボルト、12:連結ボルト、13:主筋、14:フープ筋、15:あと施工アンカー、16:定着板、17:繊維シート、18:既存コンクリート梁
【要約】
【課題】構造が簡単で、製造が容易で組み立て作業が短時間ですむ既存コンクリート構造物の耐震補強構造を提供することを目的とする。
【解決手段】コンクリート柱及びコンクリート梁からなる既存コンクリート構造物の耐震補強構造であって、断面コ字形本体の上下に水平補強リブ、水平補強リブの端部に垂直補強リブを形成し、垂直補強リブが既存コンクリート柱及び既存コンクリート梁の一面側に接し、隣り合う水平補強リブが接するように連設され、垂直補強リブと既存コンクリート柱及び既存コンクリート梁が固定ボルトで固定される補強部材と、補強部材と既存コンクリート柱及び既存コンクリート梁に囲まれた空間に充填される固化剤と、からなることを特徴とする。
【選択図】 図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6