(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5943538
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】赤外線を反射するガラス板又はガラスセラミック板
(51)【国際特許分類】
F24B 1/192 20060101AFI20160621BHJP
F24C 15/02 20060101ALI20160621BHJP
C03C 17/245 20060101ALI20160621BHJP
C03C 17/34 20060101ALI20160621BHJP
C03B 23/023 20060101ALI20160621BHJP
C03B 32/02 20060101ALI20160621BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
F24B1/192
F24C15/02 M
C03C17/245 A
C03C17/34 Z
C03B23/023
C03B32/02
B32B9/00 A
【請求項の数】21
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-81707(P2010-81707)
(22)【出願日】2010年3月31日
(65)【公開番号】特開2010-280556(P2010-280556A)
(43)【公開日】2010年12月16日
【審査請求日】2013年3月26日
(31)【優先権主張番号】10 2009 017 547.4
(32)【優先日】2009年3月31日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Schott AG
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100096943
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100102808
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 憲通
(74)【代理人】
【識別番号】100128646
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 恒夫
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン ヘン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイト ルター
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ハーン
(72)【発明者】
【氏名】ドクター.ヴィルフガング シュミットバウアー
【審査官】
山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−302038(JP,A)
【文献】
特開平11−011982(JP,A)
【文献】
特開2002−128542(JP,A)
【文献】
特開2000−086297(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0029187(US,A1)
【文献】
特開昭48−101412(JP,A)
【文献】
特表2003−535004(JP,A)
【文献】
特開2001−199744(JP,A)
【文献】
特開2004−075510(JP,A)
【文献】
特開平11−287013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24B 1/18
1/192
F24C 15/02
C03C 15/00−23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスセラミックの基板とスズに対して2〜6重量%のアンチモンを含有し20〜2000nmの厚さを有する酸化スズ結晶層とを含むガラスセラミック板を具えた暖炉であって、前記酸化スズ層は3000nm未満のプラズマエッジを有して赤外線を反射し可視領域で透明な単層反射層として形成され、前記ガラスセラミック板は3000nmと4000nmとの間の波長において30%超の反射率を有し可視光領域において40%超の平均透過率を有することを特徴とする暖炉。
【請求項2】
前記酸化スズ結晶層が、前記基板に直接隣接している請求項1に記載の暖炉。
【請求項3】
結合剤の層が前記基板と前記酸化スズ結晶層との間に配置されている請求項1に記載の暖炉。
【請求項4】
反射防止層が前記酸化スズ結晶層上に導入されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の暖炉。
【請求項5】
前記ガラスセラミック板が、熱負荷の下で成形した後に、3000nmと4000nmとの間の波長において40%超の反射率を有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の暖炉。
【請求項6】
前記ガラスセラミック板が、可視光領域において50%超の平均透過率を有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の暖炉。
【請求項7】
前記ガラスセラミック板が、可視光領域において70%超の平均透過率を有する請求項6に記載の暖炉。
【請求項8】
前記ガラスセラミック板が、曲がった形態に成形されている請求項1〜7のいずれか一項に記載の暖炉。
【請求項9】
前記酸化スズ結晶層が、200〜1000nmの厚さを有する請求項1〜8のいずれか一項に記載の暖炉。
【請求項10】
前記酸化スズ結晶層が、600〜700nmの厚さを有する請求項9記載の暖炉。
【請求項11】
前記酸化スズ結晶層が、850℃超の永久使用温度を有するように形成された請求項1〜10のいずれか一項に記載の暖炉。
【請求項12】
前記酸化スズ結晶層が、2500nm未満のプラズマエッジを有する請求項1〜11のいずれか一項に記載の暖炉。
【請求項13】
前記酸化スズ結晶層が、2000nm未満のプラズマエッジを有する請求項12記載の暖炉。
【請求項14】
赤外線を反射するガラスセラミック板の製造方法であって、
ガラスセラミックの基板を準備する工程と、
スズに対して2〜6重量%のアンチモンを含有し20〜2000nmの厚さを有する可視領域で透明な酸化スズ結晶層を、前記基板上に堆積する工程と、を含み、
前記酸化スズ結晶層は3000nm未満のプラズマエッジを有し、
前記ガラスセラミック板は3000nmと4000nmとの間の波長において30%超の反射率を有し可視光領域において40%超の平均透過率を有し、
前記堆積する工程が、前記酸化スズ結晶層をスパッタリングによって前記基板上に堆積させた後、該基板を少なくとも550℃に加熱することを含み、
前記ガラスセラミック板を高温状態でさらに曲げ成形することを含む方法。
【請求項15】
前記酸化スズ結晶層をマグネトロンスパッタリングによって堆積させる請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記酸化スズ結晶層を酸化アンチモンと酸化スズとを含有するセラミックターゲットを使用するスパッタリングによって堆積させる請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記スパッタリング中に酸素を調節する請求項14〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記酸化スズ結晶層をグリーンガラス上に堆積させ、続いてこれをセラミック化する請求項14〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記酸化スズ結晶層の前記堆積後に、前記基板を少なくとも850℃に加熱する請求項14〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記酸化スズ結晶層の前記堆積後に、前記基板を焼き戻す請求項14〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記酸化スズ結晶層の前記堆積中に、前記ガラスセラミック板を150〜600℃の温度に維持する請求項14〜20のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線を反射するガラス板(pane)又はガラスセラミック板、及びその製造方法に関する。本発明は、詳細には、オーブン又は暖炉用の前板、及び耐火窓ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線を反射する板、とりわけ、ベーキングオーブンの板又は暖炉の覗き窓(viewing panes)が既知である。通常、これらは、可視光領域におけるよりも赤外領域における透過率が低いコーティングを備える、ガラス又はガラスセラミックから成る基板ガラスを伴う。このため、使用者は、オーブン又は暖炉の内部を見ることができ、これにより例えば、燃焼によりオーブン内で生じる赤外線が、部分的にしか環境中に放出されなくなる。
【0003】
したがって、赤外線を反射する構造に基づき、オーブン周辺の物品の加熱が抑えられるだけでなく、板及び板の周囲が、接触時に燃焼する可能性のある温度まで加温されることを回避することができる。
【0004】
ガラスセラミック板用の従来のコーティングは、例えば、スズをドープした酸化インジウムから構成されている。さらに、アルミニウムをドープした酸化スズ層、及びフッ素をドープした酸化スズ層が知られている。さらには約2000nm以降の波長のためのコーティングを用いて、より高い反射率を達成することができる。
【0005】
しかしながら、高い熱負荷を伴う場合、特に450℃を超える温度では、層が、部分的に永久に、赤外領域におけるそれらの反射効果を失うという、赤外線を反射する既知のコーティングについての欠点が示されている。
【0006】
それゆえ、最大500℃の長時間温度負荷しか実現することができていない。このため、これらのタイプのガラスセラミック板は、耐火用途の板として最適なものではない。
【0007】
加えて、グリーンガラスからのガラスセラミックの製造におけるセラミック化プロセス中に温度は約900℃に達する。この温度への加熱後、赤外線を反射する従来の層はそれらの効果を大幅に失う。
【0008】
セラミック化プロセス後に赤外線を反射する層を導入することは、より複雑なプロセスであり、特に、セラミック化プロセスの過程で成形し、特に曲げることによって所望の最終形状をとるガラス板には、極めて複雑な手順でしか均質なコーティングを施すことができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それにひきかえ、本発明の目的は、従来技術の挙げられている欠点を少なくとも緩和する、赤外線を反射するガラス板又はガラスセラミック板を提供することである。
【0010】
詳細には、高耐熱性を有するガラス板又はガラスセラミック板が提供されるものとする。本発明の別の目的は、簡潔且つコスト効率良く製造することができるガラス板又はガラスセラミック板を提供することである。
【0011】
最後に、本発明の目的は、良好な光学的外観を有する板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的は、独立請求項のいずれか一項に記載の赤外線を反射するガラス板又はガラスセラミック板、及びガラス板又はガラスセラミック板を製造する方法によって解決される。
【0013】
本発明の好ましい実施形態及び改良形態は、個々の従属請求項から理解することができる。
【0014】
一方、本発明は、ガラス板又はガラスセラミック板、特に、耐火窓ガラスとして、オーブン若しくは暖炉用の前板として、又はオーブンマッフルとして形成される、赤外線を反射し且つ酸化アンチモンを含有する酸化スズ層を備えるガラス板又はガラスセラミック板に関する。
【0015】
さらに、ガラス板又はガラスセラミック板は、4.2未満、好ましくは3.5未満の熱膨張係数aを有するガラス又はガラスセラミックの基板を備える。したがって、高耐熱性を有するガラス、又はガラスセラミックが使用される。
【0016】
アンチモンをドープした酸化スズ層は、単層反射層として形成される。単層反射層は、その構造から光学的な交互層系のようには反射しない層として理解される。むしろ、アンチモンによって生じる欠陥、及びドーピングによる遊離電子の結晶特性から、アンチモンをドープした酸化スズ層は、赤外領域における反射効果に関して用途があると考えられる。
【0017】
反対に、可視領域において、上記層は透明であり、それゆえ、少なくとも可視光の一部に対して透過性であるため、板を覗き窓として使用することができる。
【0018】
本発明者等は、酸化アンチモンでドープされる酸化スズ層が、同時に生じる赤外領域における良好な反射効果と共に高耐熱性を有することを発見した。
【0019】
とりわけ、本発明者等は、層が初めから、それゆえ熱的後処理を用いずとも可視領域において透明であり、また同時に、赤外領域において比較的高い反射率を有することを見出した。
【0020】
とりわけ、3000nm〜4000nmの波長でさえ、30%超、好ましくは40%超の反射率が達成され、これにより、可視領域における平均透過率は、40%超、好ましくは50%超、特に好ましくは70%超となる。
【0021】
本発明者等は加えて、このタイプのコーティングを用いた場合には、900℃までの温度で焼き戻した後に、赤外線反射効果が依然として示されるだけでなく、いっそう改善されることを発見した。
【0022】
酸化スズ層は、酸化スズを主に含有する層であると理解される。コーティングは酸化アンチモンに加えて、他の成分を含有し得ると理解される。
【0023】
加えて、本発明によるコーティングが、或る種のスモークガラス、すなわち灰色の外観をもたらすため、着色コーティングと比べた場合に非常に優れた光学的外観を有することが判明した。
【0024】
本発明の一実施の形態では、酸化スズ層が、ガラス又はガラスセラミックの基板に直接隣接する。それゆえ、酸化スズ層は基板上に直接導入される。本発明者等は、酸化スズ層が、任意に事前加熱される基板上に直接導入される場合でも、十分な耐摩耗性を得ることができることを発見した。
【0025】
代替的な実施の形態では、結合剤の層が、酸化スズ層とガラス又はガラスセラミックの基板との間に配置される。
【0026】
本発明のこの実施の形態は、ガラスの熱的後処理前、とりわけ続くセラミック化プロセス前の酸化スズ層の堆積に特に好適である。
【0027】
複数の材料、とりわけ酸化ケイ素又は酸化アルミニウム、及び高い炭素分率を有する堆積された軟質層が、結合剤層として好適である。結合剤層は、火炎熱分解、ロール塗、噴霧、又はPVD法若しくはCVD法等の様々なタイプのコーティング方法によって導入することができる。
【0028】
本発明の改良形態では、反射防止層が酸化スズ層上に導入され、これが、可視領域において反射防止効果を有する。これはとりわけ干渉系を伴い得る。本発明のこの実施の形態は耐火ドアの板に特に好適である。
【0029】
板は好ましくはガラスセラミック板として形成される。これらのタイプの材料はまた、高い機械的負荷を受けることができる極めて温度安定性の平面ガラスとして提供することができる。とりわけ、かかる材料は、いわゆるゼロ膨張材料として提供することができ、このため、長さに関する熱膨張係数は20℃〜700℃で±0.8×10
−6K
−1未満となる。
【0030】
本発明の好ましい実施の形態では、赤外線を反射する酸化スズ層中におけるスズに対するアンチモンの比率が、0.5%〜20%、好ましくは1%〜12%、特に好ましくは2%〜6%となる(重量%に基づき測定)。
【0031】
とりわけ、同時に生じる可視領域における良好な透過率と共に、好ましい範囲における特に良好な反射効果が達成され得ることが発見された。
【0032】
赤外線を反射する酸化スズ層は好ましくは、堆積法、とりわけスパッタリングによって導入され、本発明の好ましい実施の形態では、20nm〜2000nm、好ましくは200nm〜1000nm、特に好ましくは600nm〜700nmの厚さを有する。
【0033】
上記層は、特に単層として形成される必要はなく、多層系の一部であってもよいと理解される。
【0034】
反射スペクトルを2つの領域に分割するプラズマエッジは、本発明による層において、3000nm未満、好ましくは2500nm未満、特に好ましくは2000nm未満に位置し得る。このように形成される板は、火が通常は強度最大値が約2500nmという極めて短い波長の放射(very short-wave radiation)を発する暖炉用の前板として特に好適である。
【0035】
加えて、本発明は、基板、とりわけガラス基板を準備し、且つ酸化アンチモンを含有する酸化スズ層を基板上に堆積する、赤外線を反射するガラス板又はガラスセラミック板を製造する方法に関する。
【0036】
4.2未満、好ましくは3.5未満の熱膨張係数aを有するガラス又はガラスセラミックの基板が、上記基板として使用される。
【0037】
均質な知覚色を有する結晶層が上記方法によって導入されることが好ましい。
【0038】
層は好ましくは、スパッタリング、CVD又はゾル・ゲル法によって、とりわけマグネトロンスパッタリング法によって堆積される。これらのタイプのスパッタリング法を用いてコスト効率良く大表面積をコーティングすることもできる。
【0039】
本発明の好ましい実施の形態では、特にセラミック様に(ceramically)形成され、且つ酸化アンチモンと酸化スズとを含有するターゲットが使用される。
【0040】
本発明のこの実施の形態は、ターゲットの組成が、スパッタリング法によって略同一の形態で基板に移行し得るという利点を有する。それゆえ一方では、使用されるターゲットは1つしか必要ない。加えて、セラミックターゲットを使用する場合、スパッタリングプロセス中の酸素の調節(metering)は絶対に必要というわけではない。
【0041】
当然ながら、セラミックターゲットを使用する場合であっても、所望の層特性に応じて毎回、スパッタリング中に酸素を導入することは有益となり得ることが判明している。実際のところ、酸素分率が高くなると、赤外領域における反射効果が幾らか小さくなる。しかしながら、可視領域における透過率が同時にかなりの程度増大する。
【0042】
本発明の好ましい実施の形態において、酸化アンチモンを含有する酸化スズ層は、グリーンガラス(セラミック化プロセス用のガラスブランク)上に堆積され、これは、層の堆積後にセラミック化される。
【0043】
本発明による酸化スズ層は、赤外線を反射する効果を失うことなく、セラミック化プロセスで生じる約900℃の温度を許容することが判明した。
【0044】
それゆえ、層をセラミック化前に導入することができ、板を、セラミック化プロセス中に高温状態で成形し、特に曲げて、本質的にその最終形状とすることができる。
【0045】
本発明の好ましい実施の形態では、基板が、酸化アンチモンを含有する酸化スズ層の堆積後に、少なくとも550℃、好ましくは少なくとも850℃に加熱される。かかる加熱は、必要というわけではないが、セラミック化プロセスの過程において実行してもよい。むしろ、赤外線を反射する効果が焼き戻しの際に実際に増大することが示されている。
【0046】
赤外線を反射する酸化スズ層の堆積中、とりわけ、スパッタリング中に、本発明の好ましい実施の形態では、基板が、150℃〜600℃、好ましくは300℃〜500℃の温度に維持される。
【0047】
一方、基板の加熱は、とりわけ、表面に近い基板領域中の水の除去をもたらす。他方、基板の加熱によってより均質な層成長が実現され得る:
【0048】
本発明は、600℃超、又は実際のところ700℃超の永久使用温度を有するガラス板又はガラスセラミック板を提供することができる。それゆえ、このような板も耐火ガラスとして好適である。
【0049】
図面の
図1〜
図4を参照して本発明を以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】ガラス板又はガラスセラミック板の実施形態の例を概略的に示す図である。
【
図2】例として、本発明によるガラス及び既知の比較用ガラスのスペクトル反射率曲線を示す図である。
【
図3】例として、本発明によるガラス及び既知の比較用ガラスのスペクトル反射率曲線を示す図である。
【
図4】ガラス板又はガラスセラミック板を製造する方法の必須の方法工程をより詳細に説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1は、セラミック基板2を備えるガラス板又はガラスセラミック板1を概略的に示す。セラミック基板2はゼロ膨張材料として形成される。酸化アンチモンを含有する酸化スズ層3が、基板2上に堆積される。本発明のこの実施形態におけるスズに対するアンチモンの比率は、約6%である。
【0052】
図2は、本発明の種々の実施形態の例のスペクトル反射率を示す。波長をnm単位でx軸にプロットし、スペクトル反射率の要素をy軸に示す。したがって、1という値は各波長の完全反射を表す。
【0053】
曲線は全て、セラミック化プロセス後、それゆえ、700℃を超える温度処理後のスペクトル反射率を示す。
【0054】
曲線10は、800nm厚のアンチモンをドープした酸化スズ層を備える実施形態の例を示す。層11の厚さは550nmであり、層12の厚さは500nmである。スペクトル反射率は、2000nmを上回る波長では厚い層よりも薄い層の場合に本質的により良好であることを認識されたい。これはプロセス技術への可能性を示す。
【0055】
さらに、3つの材料全てのプラズマエッジが3000nm未満に位置し、且つ可視領域におけるスペクトル反射率が3つの層全てに関して0.2未満であることを認識されたい。約2500nmの波長についてさえ、曲線11及び曲線12で示される2つの薄い層のスペクトル反射率は0.3超に達する。3000nm以降、スペクトル反射率は実際のところ、曲線11及び曲線12による層において0.4を超える。
【0056】
図2に対応させて、種々のガラスセラミック板のスペクトル反射率値を
図3にプロットする。ここで、従来技術から既知のガラスセラミック板も調査した。
【0057】
曲線17は、フッ素をドープした酸化スズに基づくIR反射コーティングのスペクトル反射率を示す。この材料のプラズマエッジが2000nm〜3000nmの間に位置し、且つ該コーティングが2500nm以降でさえ高い反射率をもたらすことを認識されたい。
【0058】
曲線13は、100時間の500℃の負荷後におけるこのコーティングのスペクトル反射率を示す。2000nm〜5500nmの波長についての反射率は著しく低下し、且つ前板に関連する2000nm〜4000nmの波長領域では0.25未満に位置することが認識できる。したがって、このガラスは、500℃の永久負荷に適さない。
【0059】
曲線14は、100時間にわたる500℃の温度処理後も赤外線を反射するコーティングを備えた別のガラスを示す。このガラスも十分な反射率値に達しない。
【0060】
曲線15及び曲線16は、アンチモンをドープした酸化スズ層をセラミック化プロセス後に備えるガラスセラミック板の2つの異なる実施形態の例のスペクトル反射率を示す。赤外線を反射する略同じ良好な効果が、温度負荷を受けていない曲線17によるガラスと同様に達成されることが認識できる。とりわけ、曲線15及び曲線16によるガラスセラミック板のプラズマエッジは、3000nm未満に位置する。
【0061】
図4を参照して、本発明の実施形態の例に従って、必須の方法工程をより詳細に説明する。この方法では、暖炉用の前板として特に使用することができるガラスセラミック板が製造される。
【0062】
いわゆるグリーンガラス、すなわち、セラミック化プロセス用の初期材料が、本目的のためにスパッタリングユニットに初めに導入される。
【0063】
グリーンガラスは好ましくは、マグネトロンスパッタリング法によって酸化アンチモンを含有する酸化スズ層でコーティングされる。
【0064】
グリーンガラスは続いて、ガラスセラミックを製造するためのセラミック化プロセスに付され、この際900℃まで加熱される。
【0065】
所望の最終形状を得るために、セラミック化プロセス中又はその直後に、加熱した板を成形する。
【0066】
板を冷却した後、板は、赤外線反射効果を有する非常に耐熱性のガラスとして使用することができる。とりわけ、700℃の永久使用温度を保証することができる。
【0067】
本発明は、実施形態の例における上記の特徴の組合せに限定されるものではなく、むしろ当業者は、記載の特徴又は方法工程の全てを技術的に意味がある何らかの方法で組み合わせるであろうと理解される。