【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、対象物体を検査するための非接触法が提供され、この方法は、任意の適当な順序で、i)第1の透視位置から撮った、光学的パターンが投影される対象物体の少なくとも1つの第1の画像を得ることと、ii)第1の透視位置と異なる第2の透視位置から撮った、光学的パターンが投影される対象物体の少なくとも1つの第2の画像を得ることと、iii)少なくとも1つの第1および第2の画像内に画像化されているような光学的パターンの不規則性に基づき少なくとも1つの第1および第2の画像のそれぞれの中の少なくとも1つの共通の対象物体特徴を識別することとを含む。
【0010】
本発明の利点は、対象物体上に置かれているか、または投影されるマーカーを使用せずに、ターゲット特徴を識別できることである。むしろ、これらは、対象物体と光学的パターンとの間の界面によって形成され、対象物体が撮像された光学的パターンを変形させて光学的パターン内に不規則性をもたらす。これにより、対象物体の高精度な測定を迅速に実行することが可能になる。また、高密度の点群をターゲットとし、測定することも可能になる。本発明の方法では、複雑な形状の対象物体上の点を識別するのに必要な処理資源が他の知られている画像処理技術に比べて少なくて済むことも判明している。
【0011】
ステップi)における光学的パターンの対象物体およびプロジェクタの相対的位置および相対的方向のうちの少なくとも一方は、ステップii)における光学的パターンの対象物体およびプロジェクタとは異なることがある。理解されるように、ステップi)における光学的パターンの対象物体およびプロジェクタの相対的位置および/または方向は、ステップii)における光学的パターンの対象物体およびプロジェクタの相対的位置および/または方向と異なることがあるので、光学的パターンの対象物体およびプロジェクタの間の相対的透視位置は、ステップ間で異なりうる。したがって、この結果、対象物体上の光学的パターンの位置は第1の画像を得るステップと少なくとも第2の画像を得るステップとの間で変化している可能性がある。そのため、対象物体上の光学的パターンの位置は、画像毎に異なりうる。対象物体上の光学的パターンの位置を変えることは、光学的パターンに影が入ったり、遮ったりすることで引き起こされる問題を回避できるため有利であると考えられる。
【0012】
光学的パターンは、二次元に広がるものとすることができる。投影される光学的パターンにより、対象物体上の光学的パターンの単一像から二次元内の対象物体の表面のトポロジーを決定することができる。光学的パターンは、実質的に全視野である光学的パターンとすることができる。実質的に全視野の光学的パターンは、基準面で第1および第2の画像のうちの少なくとも1つを得るために(以下でさらに詳しく説明される)、パターンが画像センサの視野の少なくとも50%に広がっている、より好ましくは少なくとも75%に広がっている、特に好ましくは少なくとも95%に広がっている、例えば、基準面における画像センサの実質的に視野全体に広がっているパターンとすることができる。基準面は、画像センサから知られている距離だけ離れている平面とすることができる。適宜、基準面は、光学的パターンプロジェクタおよび画像センサの光軸が交わる点を含む平面としてよい。基準面は、画像センサの光軸に対し垂直に伸びるものとしてよい。
【0013】
好ましくは、少なくとも1つの第1の画像および少なくとも1つの第2の画像内に画像化されるようなパターンが、対象物体の一領域上に投影される。好ましくは、パターンは対象物体のある領域上に広がり、これにより、本発明の方法を使用して少なくとも1つの第1の画像および少なくとも1つの第2の画像からその領域上にある対象物体の複数の点の測定を容易に行える。パターンは、繰り返しパターンでなくてもよい。しかし、好ましくは、パターンは実質的には繰り返しのパターンである。特に好ましい光学的パターンは、実質的に周期的な光学パターンを含む。理解されるように、周期的光学的パターンは、一定の有限な距離の後に繰り返すパターンとすることができる。繰り返しの間の最小距離をパターンの周期とすることができる。好ましくは、光学的パターンは、少なくとも一次元方向に周期的である。適宜、光学的パターンは、少なくとも2つの垂直次元方向に周期的であるものとしてよい。
【0014】
本発明とともに使用するのに適している光学的パターンとしては、同心円のパターン、様々な色の直線のパターン、陰影、および/または色調が挙げられる。色、陰影、および/または色調は、2つまたはそれ以上の異なる値を交互に取るものとすることも可能であろう。適宜、色、陰影、および/または色調は、複数の離散値の範囲内の値を取るものとすることも可能であろう。好ましくは、色、陰影、および/または色調は、光学的パターン全体にわたって連続的に変化する。好ましくは、光学的パターンは、干渉縞パターンである。例えば、光学的パターンは、一組の正弦波縞模様とすることができる。光学的パターンは、赤外線から紫外線までの範囲内としてよい。好ましくは、光学的パターンは、可視の光学的パターンである。理解されるように、本発明などの方法で使用するための光学的パターンは、通常、構造化光パターンとも称される。
【0015】
光学的パターンに適したプロジェクタは、プロセッサデバイスから入力された画像を投影するように構成されているデジタル光プロジェクタを含む。このようなプロジェクタを使用することで、投影されるパターンを変更することができる。好適なプロジェクタは、光源および光学的パターンを生成するように配列された1つまたは複数の回折格子を備えることが可能である。(複数の)回折格子は、プロジェクタによって投影されるパターンを変更できるように移動可能であるものとすることも可能である。例えば、(複数の)回折格子を圧電変換器上に取り付けることもできる。適宜、回折格子は、プロジェクタによって投影されるパターンを変更できないように固定することも可能である。適宜、プロジェクタは、光源およびホログラムを備えることが可能である。さらに、プロジェクタは、光源およびパターン形成スライドを備えることが可能である。さらに、プロジェクタは、2つの相互に位相が揃っているコヒーレント光源を備えることが可能である。コヒーレント光源は、プロジェクタによって投影されるパターンを変更できるように移動可能であるものとすることも可能である。例えば、コヒーレント光源を圧電変換器上に取り付けることもできる。適宜、コヒーレント光源は、プロジェクタによって投影されるパターンを変更できないように固定することも可能である。
【0016】
理解されるように、透視位置は、対象物体の特定の視点であってよい。透視位置は、第1のおよび第2の画像を得る少なくとも1つの撮像デバイスおよび撮像される対象物体の相対的位置および/または方向によって定められうる。好ましくは、第1および第2の透視位置は、互いに関して知られている。特に、好ましくは、互いに関するその位置および方向が知られている。例えば、透視位置同士の間の関係を記述する知られているオフセットベクトルおよび回転行列がありうる。適宜、透視位置を決定するために使用できる位置センサを備えることも可能である。適宜、透視位置を固定することも可能である。さらに、透視位置は、例えば、知られている基準特徴および/または対象物体を探索することによって画像から決定することも可能である。
【0017】
理解されるように、好ましくは、第1および第2の画像は、対象物体の少なくとも部分的に重なり合うビューを含む。このため、少なくとも1つの共通の対象物体特徴が両方の画像内に存在する。理解されるように、共通の対象物体特徴は、第1および第2の画像内に取り込まれている対象物体上の任意の特徴としてもよい。共通の対象物体特徴は、対象物体上の単一点、例えば、コーナー特徴とすることも可能である。適宜、共通の対象物体特徴は、対象物体上の複数の点とすることも可能である。例えば、共通の対象物体特徴は、対象物体の長いエッジなどの線とすることも可能である。線は、直線でも曲線でもよい。以下でさらに詳しく説明するように、共通の対象物体特徴は、ターゲット特徴として使用することが可能である。特に、共通の対象物体特徴は、写真測量法による測定プロセスにおけるターゲット特徴として使用することが可能である。
【0018】
理解されるように、対象物体に関して異なる位置および/または方向を有する少なくとも第1および第2の光学的パターンプロジェクタを備えることができる。したがって、第1の画像内に画像化された光学的パターンは、第1の光学的パターンプロジェクタによって投影され、第2の画像内に画像化された光学的パターンは、第2の光学的パターンプロジェクタによって投影されうる。
【0019】
好ましくは、ステップi)で画像化された光学的パターンのプロジェクタおよびステップii)で画像化された光学的パターンのプロジェクタは、少なくとも1つの光学的パターンプロジェクタを含む共通の光学的パターンプロジェクタユニットによって実現される。したがって、この方法は、ステップi)とii)との間で対象物体と光学的パターンプロジェクタユニットを相対的に移動することを含むことができる。特に、これは、対象物体に相対的に光学的パターンプロジェクタユニットを移動することを含むことができる。光学的パターンプロジェクタユニットは、複数の光学的パターンプロジェクタを備えることが可能である。複数の光学的パターンプロジェクタは、互いに関して固定された空間的関係にあるものとすることが可能である。
【0020】
より好ましくは、ステップii)で画像化される光学的パターンのプロジェクタは、ステップi)で画像化される光学的パターンのプロジェクタである。したがって、この方法は、単一の光学的パターンプロジェクタのみを使用して実行することができる。したがって、光学的パターンプロジェクタユニットは、単一の光学的パターンプロジェクタのみを備えることができる。これは、複数の光学的パターンプロジェクタを備えることに比べて単純であるといえる。したがって、この方法は、ステップi)とii)との間で対象物体と光学的パターンのプロジェクタとを相対的に移動することをさらに含むことができる。特に、この方法は、対象物体に相対的に光学的パターンのプロジェクタを移動することを含むことができる。
【0021】
理解されるように、ステップi)で対象物体上に投影される光学的パターンの種類は、ステップii)で投影される光学的パターンの種類と異なる可能性がある。例えば、ステップi)で投影される光学的パターンは、複数の同心円とすることができ、ステップii)で投影される光学的パターンは、複数の直線とすることができる。好ましくは、ステップi)とステップii)で対象物体上に投影される光学的パターンは、同じである。
【0022】
少なくとも1つの第1の画像および少なくとも1つの第2の画像は、少なくとも1つの好適な撮像デバイスによって得ることができる。好適な撮像デバイスは、少なくとも1つの画像センサを備えることができる。例えば、好適な撮像デバイスは、CCD(電荷結合素子)、CMOS(相補形金属酸化膜半導体)などの光学的EMR(電磁放射線)高感度検出器を備えることができる。好適な撮像デバイスは、像面に集光するように適宜構成されうる。理解されるように、像面は、画像センサによって定められうる。例えば、好適な撮像デバイスは、光学的EMRを像面に集束するように構成された少なくとも1つの光学コンポーネントを備えることができる。適宜、少なくとも1つの光学コンポーネントはレンズを備える。
【0023】
好適な撮像デバイスは、撮像デバイスの透視中心とも称されうる、ピンホールからなるピンホールカメラモデルに基づくものとしてよく、EMR光線はこのピンホールを通過してから像面と交わると想定される。理解されるように、ピンホールを備えずに、代わりにEMR光線を集束させるレンズを備える撮像デバイスも透視中心を有し、これは、像面と交わるすべてのEMR光線が通過すると想定される点とすることができる。
【0024】
理解されるように、透視中心は、非特許文献1および非特許文献2で説明されているような較正手順を使用して画像センサに関して見つけることができる。レンズ収差を補正するパラメータなどの補正パラメータを与えることができ、このようなパラメータはよく知られており、例えば、これら2つの文献において説明されている。
【0025】
好ましくは、少なくとも1つの第1の画像および少なくとも1つの第2の画像は、少なくとも1つの撮像デバイスを備える共通の撮像デバイスユニットによって得られる。したがって、この方法は、第1の透視位置から第2の透視位置へ撮像デバイスユニットと対象物体とを相対的に移動することをさらに含むことができる。対象物体および/または撮像デバイスユニットの移動は、手動でも、自動でも可能である。撮像デバイスユニットは、複数の撮像デバイスを備えることができる。
【0026】
少なくとも1つの第1の画像および少なくとも1つの第2の画像は、単一の撮像デバイスによって得ることができる。単一の撮像デバイスは、単一の画像センサを備えることができる。したがって、少なくとも1つの第1の画像および少なくとも第2の画像は、単一の画像センサによって得ることができる。したがって、対象物体は、第1および第2の透視位置を得るために少なくとも1つの第1の画像および少なくとも1つの第2の画像を得るステップの間で移動することが可能である。適宜、撮像デバイスは、第1および第2の透視位置を得るために少なくとも1つの第1の画像および少なくとも1つの第2の画像を得るステップの間で移動することが可能である。したがって、この方法は、第1の知られている透視位置から第2の知られている透視位置へ撮像デバイスを移動することを含むことができる。
【0027】
好ましくは、光学的パターンプロジェクタユニットおよび撮像デバイスユニットは、座標位置決め装置上に取り付けられる。好ましくは、光学的パターンプロジェクタユニットおよび撮像デバイスユニットは、少なくとも直線自由度1で、より好ましくは少なくとも直線自由度2で、特に好ましくは少なくとも直線自由度3で移動できるように座標位置決め装置上に取り付けられる。好ましくは、直線自由度は、互いに垂直である。好ましくは、光学的パターンプロジェクタユニットおよび撮像デバイスユニットは、少なくとも回転自由度1で、より好ましくは少なくとも回転自由度2で、例えば少なくとも回転自由度3で回転できるように座標位置決め装置上に取り付けられる。好ましくは、これら少なくとも回転自由度2および少なくとも回転自由度3は、2本の実質的に垂直な軸を中心とする。回転自由度は、光学的パターンプロジェクタユニットおよび撮像デバイスユニットが取り付けられている関節ヘッドによって与えることができる。自由度3および回転自由度2で移動可能な測定デバイスは、計測業界では「5軸」測定デバイスと一般に称される。しかし、理解されるように、本発明は、このようなシステムに限定されず、それよりもさらに多い自由度で、例えば、3、4、またはそれ以上の回転自由度での移動を容易にするシステムとともに使用することができる。
【0028】
好ましくは、座標位置決め装置は、コンピュータ制御座標位置決め装置、例えば、コンピュータ数値制御(CNC)座標位置決め装置である。好適な座標位置決め装置は、CMM(三次元座標測定機)および工作機械を含む。
【0029】
好ましくは、ステップi)およびii)における光学的パターンの少なくとも1つのプロジェクタならびに第1の画像および第2の画像を得るための少なくとも1つの撮像デバイスは、互いに関して固定された空間関係にある。したがって、これらは、単一のユニットとして構成できる。特に、これらは、共通のプローブデバイスとして構成できる。共通プローブデバイスは、座標位置決め装置上に取り付けることができる。これにより、操作および位置判定が簡単に行えるようになる。特に、光学的パターンプロジェクタユニットおよび/または画像センサユニットの複数の知られている位置および方向を素早く定めることができ、したがって、対象物体を測定する精度および速度が向上する。
【0030】
好ましくは、この方法は、画像解析装置が共通の特徴を測定するため少なくとも1つの第1の画像および第2の画像を使用することをさらに含む。好ましくは、共通の特徴を測定することは、第1の透視位置と第2の透視位置に関して共通の対象物体特徴の位置を決定することを含む。特に、共通の特徴を測定することは、測定容積内の共通の対象物体特徴の位置を決定することを含む。
【0031】
理解されるように、光学的パターン内の不規則性は、光学的パターン内の不連続と称することもできる。
【0032】
光学的パターン内の不規則性は、対象物体の不連続の特徴によって引き起こされる光学的パターンの変形とすることができる。光学的パターンのこのような変形は、例えば、対象物体の2つの連続するセクションの間の境界において発生しうる。例えば、境界は、立方体の2つの面が交わる立方体の稜線とすることが可能である。したがって、対象物体上の不連続な特徴は、対象物体の表面の勾配が著しく変化する場所であるとしてよい。光学的パターンプロジェクタに関する表面の勾配が大きければ大きいほど、表面上のその点における光学的パターンの変形度合いは大きくなる。したがって、不規則性は、光学的パターンが所定の閾値を超えて変形される対象物体上の点を識別することによって識別することが可能である。この所定の閾値は、測定される対象物体のサイズおよび形状を含む、多くの因子に依存する。適宜、所定の閾値は、測定される対象物体に関する情報に基づきユーザが操作前に決定し設定できる。
【0033】
不規則性は、光学的パターンの変化率が所定の閾値変化率より大きい対象物体上の点を画像上で識別することによって識別されうる。例えば、光学的パターンが周期的光学的パターンである実施形態では、不規則性は、周期的光学的パターンの位相の変化率が所定の閾値変化率より大きい対象物体上の点を画像上で識別することによって識別されうる。特に、光学的パターンが干渉縞パターンである実施形態では、不規則性は、干渉縞パターンの位相の変化率が所定の閾値変化率より大きい対象物体上の点を画像上で識別することによって識別されうる。
【0034】
対象物体上に投影されたときに画像化される光学的パターンの位相の変化率は、画像から位相マップを作成し、次いで、所定の閾値より高い位相マップ内の隣接点の間の位相内の跳躍部を探すことによって識別されうる。理解されるように、位相マップは、画像内の複数のピクセルについて対象物体の表面上に投影される周期的パターンの位相を含むマップである。位相マップは、ラップ位相マップとすることが可能である。位相マップは、アンラップ位相マップとすることが可能である。知られている技術を使用することで、ラップ位相マップをアンラップ処理して、アンラップ位相マップを得ることができる。
【0035】
位相マップは、光学的パターン対象物体の単一画像から作成することができる。例えば、フーリエ変換技術を使用することで、位相マップを作成することが可能である。
【0036】
好ましくは、位相マップは、対象物体上の光学的パターンの位置が画像毎に異なる、実質的に同じ透視位置から得られた対象物体の一組の画像から作成される。したがって、位相マップは、位相ステッピング法を使用して作成されうる。これにより、さらに正確な位相マップが得られる。位相ステッピングアルゴリズムが、知られており、例えば、非特許文献3で説明されている。したがって、ステップi)は、第1の知られている透視位置から対象物体上の光学的パターンの一組の第1の画像を得ることを含みうる。ステップii)は、第2の知られている透視位置から対象物体上の光学的パターンの一組の第2の画像を得ることを含みうる。したがって、一組の画像は、与えられた透視位置からの対象物体の複数の画像を含むことができる。好ましくは、一組の画像は、少なくとも2つの画像、より好ましくは少なくとも3つの画像、特に好ましくは少なくとも4つの画像を含む。対象物体上の光学的パターンの位置は、一組の画像に含まれる画像毎に異なりうる。
【0037】
ステップiii)は、a)一組の第1の画像から少なくとも1つの第1の位相マップを計算することを含むことができる。ステップiii)は、b)一組の第2の画像から少なくとも1つの第2の位相マップを計算することをさらに含むことができる。少なくとも1つの第1の位相マップおよび少なくとも1つの第2の位相マップは、ラップ位相マップとすることができる。適宜、少なくとも1つの第1の位相マップおよび少なくとも1つの第2の位相マップは、アンラップ位相マップとすることができる。ステップiii)は、c)少なくとも1つの第1の位相マップおよび第2の位相マップ内の少なくとも1つの共通の不規則性をターゲット特徴として識別することをさらに含むことができる。
【0038】
対応する不規則性は、知られているマッチング技術により、また例えば、エピポーラ幾何学を使用することによって決定できる。
【0039】
ステップa)は、一組の第1の画像から一組の第1の位相マップを計算することを含むことができる。一組の第1の位相マップに含まれるそれぞれの位相マップは、一組の第1の画像の一意的順序を使用して計算することができる。ステップb)は、一組の第2の画像から一組の第2の位相マップを計算することを含むことができる。一組の第2の位相マップに含まれるそれぞれの位相マップは、一組の第2の画像の一意的順序を使用して計算することができる。ステップc)は、少なくとも1つの第1の位相マップからなる一組の位相マップおよび少なくとも第2の位相マップからなる一組の位相マップのそれぞれにおける少なくとも1つの対応する不規則性をターゲット特徴として識別することをさらに含むことができる。
【0040】
一組の位相マップに含まれるそれぞれの位相マップが対応する一組の画像の一意的順序を使用して計算される複数の組の位相マップを計算する方法は、これにより位相マップ内の実不規則性および偽不規則性を識別できるため有利である。好ましくは、それぞれの組の位相マップは、少なくとも2つの位相マップ、より好ましくは少なくとも3つの位相マップ、特に好ましくは少なくとも4つの位相マップを含む。
【0041】
ステップc)は、一組の位相マップ内の少なくとも1つの実不規則性を識別することを含むことができる。位相マップが、ラップ位相マップである場合、ラップ位相データのせいで不規則性は誤って識別される。したがって、少なくとも1つの実不規則性を識別することは、一組のマップ内のラップ位相マップのそれぞれを比較して少なくとも2つのラップ位相マップ内で共通に識別されている不規則点を識別することを含むことができる。ラップ位相マップのそれぞれの間の共通でない形で識別されている任意の不規則点は、偽不規則性であるとして破棄することができる。
【0042】
理解されるように、不規則性は、他の理由により、また例えば、対象物体によって引き起こされる光学的パターン内の影のせいで、誤って識別されることもある。このような偽不規則性は、異なる透視位置から撮られた画像を比較することによって判定され、破棄されうる。特に、このような偽不規則性は、異なる透視位置から撮られた画像の位相マップを比較することによって判定され、破棄されうる。理解されるように、ラップ位相マップが得られる画像(または一組の画像)内にある影によって引き起こされる位相マップ内の不規則性は、異なる透視位置から撮られた異なる画像(または一組の画像)に対してはラップ位相マップ内に存在することはない。したがって、このような不規則性は、偽不規則性であるとして破棄されうる。
【0043】
上述のように、対象物体上の光学的パターンの位置がラップ位相マップ計算に対するそれぞれの画像内で異なる、与えられた透視位置における対象物体の一組の画像を得ることは有利であると言える。対象物体上の光学的パターンの位置は、光学的パターンプロジェクタによって放出される、光学的パターンを変更することによって変えることが可能である。例えば、光学的パターンプロジェクタによって放出される、干渉縞パターンなどの光学的パターンの位相は、与えられた透視位置について一組の画像内のそれぞれの画像を得る間に変えることが可能である。
【0044】
適宜、対象物体上の光学的パターンの位置は、対象物体と光学的パターンを投影する光学的パターンプロジェクタとを相対的に移動することによって変えることが可能である。例えば、この方法は、一組の画像内のそれぞれの画像を得る間に対象物体と光学的パターンプロジェクタとを相対的に移動することを含むことが可能である。光学的パターンプロジェクタおよび画像センサが、互いに関して固定されたとき、例えば、単一ユニットとして備えられた場合、画像センサは、対象物体上の光学的パターンの位置の変化を取得した結果として対象物体に相対的に移動する。この場合、一組の画像内の画像のそれぞれによって覆われる共通画像領域を識別することが必要になることがある。そこで、共通画像領域のみを使用して、ラップ位相マップを作成することができる。共通画像領域を識別することは、対象物体と画像センサとの間の相対的移動を補正するように画像座標を調節することを含むことができる。
【0045】
第1および第2の知られている透視位置は、この方法を運用する前に決定することができる。この場合、少なくとも1つの第1の画像および少なくとも1つの第2の画像を所定の位置および方向で配置されている静止撮像デバイスから取得し、それらの透視位置を求めることができる。適宜、少なくとも1つの撮像デバイスを所定の位置および方向に移動することで、所定の透視位置における画像を得ることが可能である。少なくとも1つの撮像デバイスを、少なくとも1つの撮像デバイスが取り付けられている位置決め装置を操作するユーザが所定の位置および方向に移動させることが可能である。これは、ユーザが少なくとも1つの撮像デバイスを所定の位置および方向に物理的に引っ張ることを伴いうる。適宜、これには、ユーザが少なくとも1つの画像センサを移動するために入力デバイスを介して位置決め装置を制御することが必要になる可能性がある。位置決め装置は、少なくとも1つの撮像デバイスの位置および方向をとるように事前構成され、また少なくとも1つの撮像デバイスを所定の位置および方向に自動的に移動するように構成されうる。
【0046】
適宜、この方法は、画像の取り出し元の位置および方向を判定することを含むことが可能である。少なくとも1つの撮像デバイスが座標位置決め装置上に取り付けられる実施形態では、位置および方向は、座標位置決め機の位置報告機能から取得することが可能である。例えば、座標位置決め機は、座標位置決め機の相対的に移動可能な部分の位置を判定するためのエンコーダを備えることが可能である。この場合、撮像デバイスの位置および方向は、エンコーダの出力から決定することが可能である。
【0047】
この方法は、画像解析装置が少なくとも1つの第1の画像および少なくとも1つの第2の画像のそれぞれにおいて複数の共通の対象物体特徴として対象物体上に形成される光学的パターン内の複数の不規則性を識別することを含むことができる。複数の共通の対象物体特徴は、複数のターゲット特徴とすることも可能である。この方法は、少なくとも1つの第1の画像および少なくとも1つの第2の画像から測定空間内の対象物体上の複数のターゲット特徴のうちのそれぞれの特徴の三次元座標を決定することをさらに含むことが可能である。
【0048】
この方法は、光学的パターンが投影される対象物体の表面に関する凹凸形状データを画像解析装置が決定することをさらに含むことができる。これは、三角測量を介して、および/または例えば、位相解析を介して実行されうる。これは、第1の画像および第2の画像のうちの少なくとも一方によって画像化されている光学的パターンの変形を画像解析装置が処理することによって実行されうる。特に、光学的パターンが周期的光学的パターンである実施形態では、画像解析装置は、表面上の周期的光学的パターンの位相を解析することが可能である。対象物体上に投影される周期的光学的パターンの位相を解析することによって凹凸形状データを決定するための多くの方法が知られている。このような技術は、位相ステッピング使用アルゴリズムを含む。例えば、好適な位相ステッピングアルゴリズムは、非特許文献3で説明されている。理解されるように、このような位相ステッピングアルゴリズムは、対象物体上の周期的光学的パターンの位置がそれぞれの画像内で異なる、実質的に共通の透視位置からの対象物体の複数の画像を必要とする。
【0049】
このような方法は、位相マップ、特にラップ位相マップを生成するために使用することができ、このマップを処理して凹凸形状高さ情報を得ることができる。
【0050】
対象物体上の周期的光学的パターンの位置は、プロジェクタによって放出される周期的光学的パターンを変更することによって画像のそれぞれを取得する間で変えることが可能である。例えば、プロジェクタは、レンズ上に入射するレーザビームを備えることができ、このレンズは液晶システム上にビームを発散させて測定される表面上に少なくとも1つの干渉縞パターンを生成する。液晶システムによって生成される干渉縞パターンのピッチおよび位相を制御するために、コンピュータを使用することができる。コンピュータおよび液晶システムは、位相シフト法を用いて、構造化された光パターンの位相を変化させることができる。
【0051】
適宜、対象物体上の光学的パターンの位置は、対象物体と光学的パターンプロジェクタとを相対的に移動することによって一組の画像内のそれぞれの画像を取得する間に変えることが可能である。このため、さらに、位相マップを位相ステッピングプロセスによって得ることができる。対象物体上の光学的パターンの位置が、対象物体の複数の画像のうちのそれぞれの画像を取得する間に変更され、これらの画像を解析することによって凹凸形状データが得られる方法および装置の詳細は、出願人の参照番号742/WO/0を有し、特許文献2、特許文献3、および特許文献4からの優先権を主張する、「PHASE ANALYSIS MEASUREMENT APPARATUS AND METHOD」という表題を持つ、本出願と同日に出願された同時係属PCT出願において開示されている。
【0052】
他の知られている技術としては、周期的光学的パターンの画像をフーリエ変換して、位相マップ、特にラップ位相マップを生成し、次いでこれを処理して凹凸形状高さ情報を取得することが挙げられる。
【0053】
いずれの方法でも、画像解析装置は、ラップ位相マップをアンラップし、そのアンラップされた位相マップから凹凸形状データを決定するように構成されうる。
【0054】
画像解析装置は、画像全体にわたる凹凸形状データを決定するように構成できる。適宜、画像解析装置は、画像の一部のみにわたる凹凸形状データを決定するように構成できる。特に、画像解析装置は、光学的パターンが投影される対象物体の連続セクションに関する凹凸形状データを決定するように構成することができる。対象物体の連続セクションは、複数のすでに識別されている不規則性によって囲まれている対象物体の一部としてもよい。
【0055】
理解されるように、凹凸形状データは、対象物体の表面の少なくとも一部の凹凸形状を示すデータとすることができる。凹凸形状データは、対象物体上の少なくとも1つの点、および好ましくは対象物体上の複数の点における、画像センサに相対的な対象物体の表面の高さを示すデータとすることができる。凹凸形状データは、対象物体上の少なくとも1つの点、および好ましくは対象物体上の複数の点における、対象物体の表面の勾配を示すデータとすることができる。
【0056】
位相解析によって対象物体の表面の凹凸形状データを決定し、さらに対象物体上の共通の特徴の位置を識別し決定するための方法および装置の詳細は、出願人の参照番号743/WO/0を有し、特許文献2、特許文献3、特許文献4からの優先権を主張する、「NON-CONTACT PROBE」という表題を持つ、本出願と同日に出願された同時係属PCT出願において開示されている。その出願において開示されている発明主題は、参照により本出願の明細書に組み込まれている。
【0057】
この方法は、画像解析装置が複数のターゲット特徴の三次元座標を凹凸形状データと組み合わせて対象物体の三次元モデルデータを取得することをさらに含むことができる。
【0058】
理解されるように、ターゲット特徴の三次元座標は、三角法によって決定できる。例えば、ターゲット特徴の三次元座標は、写真測量法によって決定できる。したがって、この方法は、画像解析装置が写真測量法を使用して測定空間内の対象物体上のターゲット特徴の三次元座標を決定することを含むことができる。
【0059】
この方法は、第1および第2の知られている透視位置と異なる少なくとも第3の知られている透視位置から対象物体上の光学的パターンの少なくとも1つの第3の画像を得ることを含むことができる。この場合、この方法は、共通の対象物体特徴として少なくとも1つの第1の画像、第2の画像、および第3の画像のうちのそれぞれの画像内の光学的パターンに含まれる不規則性を識別することを含むことができる。不規則性は、ターゲット特徴として識別することも可能である。この方法は、測定空間内の対象物体上のターゲット特徴の三次元座標を決定することをさらに含むことが可能である。当然のことながら、他の知られている透視位置からの対象物体上の光学的パターンのさらに多くの画像を取得することができる。取得する画像の数を増やすことで、光学的パターン内の不規則性をターゲット特徴として識別し、測定空間内の対象物体上のターゲット特徴の三次元座標を決定するプロセスの精度および信頼度を改善することができる。
【0060】
本発明の第2の態様によれば、対象物体を検査するための装置が提供され、この装置は、少なくとも第1のプロジェクタ透視位置および第2のプロジェクタ透視位置から光学的パターンを測定される対象物体上に投影するように構成された少なくとも1つのプロジェクタと、第1の画像透視位置から、第1のプロジェクタ透視位置から光学的パターンが投影される対象物体の少なくとも1つの第1の画像を取得するように構成され、第2の画像透視位置から、第2のプロジェクタ透視位置から光学的パターンが投影される対象物体の少なくとも1つの第2の画像を取得するように構成されている少なくとも1つの撮像デバイスと、共通の対象物体特徴として少なくとも1つの第1の画像および第2の画像のうちのそれぞれの画像内の光学的パターンに含まれる不規則性を識別するように構成されている画像解析装置とを備える。
【0061】
理解されるように、プロジェクタ透視位置は、プロジェクタおよび対象物体の相対的位置を含みうる。プロジェクタ透視位置は、プロジェクタおよび対象物体の相対的方向を含みうる。
【0062】
装置は、少なくとも1つのプロジェクタを備えるプロジェクタユニットを具備することができる。プロジェクタユニットおよび対象物体は、第1のプロジェクタ透視位置と第2のプロジェクタ透視位置との間で相対的に移動されるように構成されうる。装置は、少なくとも1つの撮像デバイスを備える撮像デバイスユニットを具備することができる。撮像デバイスユニットおよび対象物体は、第1の画像透視位置と第2の画像透視位置との間で相対的に移動されるように構成されうる。プロジェクタユニットおよび撮像デバイスユニットは、固定された空間関係を持つように構成されうる。したがって、プロジェクタユニットおよび撮像デバイスユニットは、単一のユニットとして構成できる。例えば、プロジェクタユニットおよび撮像デバイスユニットは、プローブデバイスとして構成できる。プロジェクタユニットおよび撮像デバイスユニットは、座標位置決め装置の移動可能な部分に取り付けることができる。例えば、これらは、座標位置決め装置のクイール、例えばCMMのクイールに取り付けることも可能である。したがって、例えば、プロジェクタユニットおよび撮像デバイスユニットが、単一プローブとして備えられた場合、プローブは、座標位置決め装置のクイールに取り付けることができる。
【0063】
理解されるように、装置は、上述の方法に従って構成することができ、この方法に関連して説明されている特徴は、本発明の装置にも等しく適用可能である。
【0064】
本発明の第3の態様によれば、コンピュータによって実行される方法が提供され、この方法は、第1の透視位置から撮った、光学的パターンが投影される対象物体の少なくとも1つの第1の画像を表す第1の画像データを受け取ることと、第1の透視位置と異なる第2の透視位置から撮った、光学的パターンが投影される対象物体の少なくとも1つの第2の画像を表す第2の画像データを受け取ることと、少なくとも1つの第1および第2の画像内に画像化されているような光学的パターンの不規則性に基づき少なくとも1つの共通の対象物体特徴を識別するために第1および第2の画像データを解析することとを含む。理解されるように、コンピュータによって実行される方法は、上述の方法に従って第1および第2の画像データを解析するように構成されうる。
【0065】
本発明の第4の態様によれば、プロセッサデバイスによって実行されると、プロセッサデバイスに上述の方法を実行させる命令を含むコンピュータプログラムコードが提供される。したがって、コンピュータプログラムコードは、プロセッサデバイスに上述の方法に従ってプロジェクタ、撮像デバイス、および画像解析装置を制御させることができる。さらに、コンピュータプログラムコードは、プロセッサデバイスに、上述のコンピュータによって実行される方法に従って受け取った画像を処理させることができる。
【0066】
さらなる態様によれば、上述のようなコンピュータプログラムコードを格納する、コンピュータ可読媒体が提供される。
【0067】
さらに他の態様によれば、機械コントローラが提供され、これは、プロセッサと、メモリとを備え、プロセッサおよびメモリのうちの少なくとも一方は、上述の方法を実行するように適合される。
【0068】
したがって、本出願は、対象物体を測定する非接触法を説明するものであり、この方法は、任意の適当な順序で、i)測定空間内に配置されている測定される対象物体上に構造化光パターンを投影するステップと、ii)第1の知られている透視位置から対象物体上の構造化光パターンの少なくとも1つの第1の画像を得るステップと、iii)第1の知られている透視位置と異なる少なくとも1つの第2の知られている透視位置から対象物体上の構造化光パターンの少なくとも1つの第2の画像を得るステップと、iv)少なくとも1つの第1の画像および第2の画像のうちのそれぞれの画像内の構造化光パターンに含まれる不連続性をターゲット特徴として識別するステップと、v)測定空間内の対象物体上のターゲット特徴の三次元座標を決定するステップとを含む。本出願は、測定空間内に配置されている対象物体を測定するための装置を説明するものでもあり、この装置は、構造化光パターンを測定される対象物体上に投影するように構成されているプロジェクタと、第1の知られている透視位置から対象物体上の構造化光パターンの少なくとも1つの第1の画像を、また第1の知られている透視位置と異なる少なくとも1つの第2の知られている透視位置から対象物体上の構造化光パターンの少なくとも1つの第2の画像を得るように構成されている少なくとも1つの画像センサと、少なくとも1つの第1の画像および第2の画像のうちのそれぞれの画像内の構造化光パターン内の不連続性をターゲット特徴として識別し、測定空間内の対象物体上のターゲット特徴の三次元座標を決定するように構成されている画像解析装置とを備える。
【0069】
次に、本発明の一実施形態について、付属の図を参照しつつ、例としてのみ説明する。