(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱可塑性樹脂がニトリル系単量体を含有する単量体成分を重合することによって得られる共重合体から構成され、前記単量体成分に占めるニトリル系単量体の重量割合が80重量%以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の熱膨張性微小球。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔熱膨張性微小球およびその製造方法〕
本発明の熱膨張性微小球(1)は、たとえば
図1に示すように、熱可塑性樹脂からなる外殻(2)と、それに内包され且つ加熱することによって気化する発泡剤(3)とから構成される熱膨張性微小球である。
熱膨張性微小球の平均粒子径は特に限定されないが、好ましくは1〜100μm、より好ましくは2〜80μm、さらに好ましくは3〜60μm、特に好ましくは5〜50μmである。
【0017】
熱膨張性微小球の粒度分布の変動係数CVは特に限定されないが、好ましくは35%以下、さらに好ましくは30%以下、特に好ましくは25%以下である。変動係数CVは、以下に示す計算式(1)および(2)で算出される。
【0019】
(式中、sは粒子径の標準偏差、<x>は平均粒子径、x
iはi番目の粒子径、nは粒子の数である。)
熱膨張性微小球に封入された発泡剤の内包率については特に限定されないが、熱膨張性微小球の重量に対して、好ましくは2〜60重量%、好ましくは5〜50重量%、さらに好ましくは8〜45重量%、特に好ましくは10〜40重量%である。
【0020】
熱膨張性微小球の最大膨張倍率は、特に限定されないが、好ましくは20倍以上、より好ましくは25倍以上、さらに好ましくは30倍以上、特に好ましくは35倍以上、最も好ましくは40倍以上である。熱膨張性微小球の最大膨張倍率の上限値は、200倍である。
熱膨張性微小球の最大膨張温度は、特に限定されないが、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは120℃以上、特に好ましくは130℃以上、最も好ましくは140℃以上である。熱膨張性微小球の最大膨張温度の上限値は350℃である。
【0021】
熱膨張性微小球は、炭素数13以上の直鎖炭化水素(A)および下記一般式(1)で表されるエステル(B)を含有し、これらの2成分の合計(A+B)が前記熱膨張性微小球に占める重量割合が0.05〜3重量%である。
R
1COOR
2 (1)
(但し、R
1およびR
2は直鎖炭化水素基であり、同一であってもよく異なっていてもよい。)
【0022】
直鎖炭化水素(A)は、炭素−炭素間の結合が分枝や環状構造を有しない一本鎖を形成する炭化水素であればよい。直鎖炭化水素(A)は、炭素−炭素の二重結合や三重結合等を有したn−アルケン、n−アルカジエン、n−アルキン等でもよいが、炭素−炭素の一重結合のみから構成されたn−アルカンがよい。
直鎖炭化水素(A)の炭素数は、通常13以上、好ましくは14以上、さらに好ましくは好ましくは15以上、特に最も好ましくは16以上、最も好ましくは20以上である。直鎖炭化水素(A)の炭素数の上限値は50である。
【0023】
直鎖炭化水素(A)としては、具体的には下記一般式(2)で表されるn−アルカンを挙げることができる。
n−C
2XH
4X+2 (2)
(但し、Xは7〜18の数である。)
【0024】
ここで、Xは、通常7〜18であり、好ましくは8〜17、さらに好ましくは10〜16、特に好ましくは11〜15である。Xが7未満であると、外殻を構成する熱可塑性樹脂(以下では、外殻樹脂ということがある。)が柔軟性に欠け、動的耐久性が不足することがある。また、Xが18超であると、外殻樹脂が可塑化され、外殻に内包される発泡剤の保持性が不十分になり、動的耐久性が不足することがある。
次に、エステル(B)のR
1およびR
2は、直鎖炭化水素基であり、炭素−炭素間の結合が分枝や環状構造を有しない一本鎖を形成する炭化水素基であればよい。また、R
1およびR
2は、炭素−炭素の二重結合や三重結合等を有したn−アルケニル、n−アルカジエニル、n−アルキニル等でもよいが、炭素−炭素の一重結合のみから構成されたn−アルキルがよい。
【0025】
エステル(B)の炭素数については、特に限定はないが、好ましくは10以上、さらに好ましくは12以上、特に好ましくは18以上、最も好ましくは20以上である。エステル(B)の炭素数の上限値は101である。なお、エステル(B)の炭素数とは、エステル(B)中に含まれる全炭素の数を意味する。
エステル(B)としては、直鎖飽和脂肪酸と直鎖飽和アルコールとのエステルが好ましく、たとえば、下記一般式(3)で表される化合物を挙げることができる。
【0026】
n−C
YH
2Y+1COO(n−C
ZH
2Z+1) (3)
(但し、Yは6〜18の数であり、Zは6〜18の数である。)
ここで、Yは、通常6〜18であり、好ましくは7〜17、さらに好ましくは10〜16、特に好ましくは11〜15である。Yが6未満であると、外殻樹脂が柔軟性に欠け、動的耐久性が不足することがある。一方、Yが18超であると、外殻樹脂が可塑化され、外殻に内包される発泡剤の保持性が不十分になり、動的耐久性が不足することがある。
【0027】
Zは、通常6〜18であり、好ましくは7〜17、さらに好ましくは10〜16、特に好ましくは11〜15である。Zが6未満であると、外殻樹脂が柔軟性に欠け、動的耐久性が不足することがある。一方、Zが18超であると、外殻樹脂が可塑化され、外殻に内包される発泡剤の保持性が不十分になり、動的耐久性が不足することがある。
一般式(1)および一般式(3)の対応関係から、R
1=n−C
YH
2Y+1およびR
2=n−C
ZH
2Z+1の関係がある。
【0028】
上記X、YおよびZの相互の関係については、特に限定はないが、XおよびYの差の絶対値|X−Y|、YおよびZの差の絶対値|Y−Z|、および、ZおよびXの差の絶対値|Z−X|が、いずれも3以下であると好ましく、さらに好ましくは2以下、特に好ましくは1以下、最も好ましくは0である。その絶対値が3を超えると、エステル(B)の作用で直鎖炭化水素(A)の外殻樹脂中へ分散性が不均一になることによって、外殻樹脂の柔軟性が不均一になると推測され、動的耐久性が不足することがある。
また、X、YおよびZが、いずれも、7〜17の範囲にあると好ましく、さらに好ましくは10〜16、特に好ましくは11〜15である。
【0029】
直鎖炭化水素(A)およびエステル(B)の2成分の合計(A+B)が熱膨張性微小球に占める重量割合は、通常、0.05〜3重量%、好ましくは0.075〜2重量%、より好ましくは0.10〜1.5重量%、特に好ましくは0.12以上1重量%未満である。2成分の合計の重量割合が0.05重量%未満であると、外殻樹脂が柔軟性に欠け、動的耐久性が不足する。一方、2成分の合計の重量割合が3重量%超であると、外殻樹脂が可塑化され、発泡剤の保持性が不十分になり、動的耐久性が不足する。
直鎖炭化水素(A)とエステル(B)との重量比率(A/B)については、特に限定はないが、好ましくは35/65〜80/20、さらに好ましくは40/60〜70/30、特に好ましくは50/50〜65/35である。A/Bが35/65よりも小さいと、外殻樹脂が可塑化され発泡剤の保持性が不十分になり、動的耐久性が不足することがある。一方、A/Bが80/20よりも大きいと、外殻樹脂の柔軟性が不均一になり、動的耐久性が不足することがある。
【0030】
発泡剤は、加熱することによって気化する物質であって、炭素数3〜12の炭化水素であれば特に限定はなく、炭化水素の炭素数は、好ましくは4〜10、さらに好ましくは5〜8である。発泡剤としては、たとえば、プロパン、(イソ)ブタン、(イソ)ペンタン、(イソ)ヘキサン、(イソ)ヘプタン、(イソ)オクタン、(イソ)ノナン、(イソ)デカン、(イソ)ドデカン等を挙げることができる。これらの発泡剤は、1種または2種以上を併用してもよい。上記発泡剤は、直鎖状、分岐状、脂環状のいずれでもよく、脂肪族であるものが好ましい。
熱膨張性微小球を加熱によって膨張させるために、上記発泡剤とともに、炭素数3〜12のハロゲン化物;ハイドロフルオロエーテル等の含弗素化合物;テトラアルキルシラン;加熱により熱分解してガスを生成する化合物等を併用してもよい。
【0031】
熱膨張性微小球の外殻を形成する熱可塑性樹脂は、重合性成分を(好ましくは重合開始剤存在下で)重合することによって得られる。重合性成分は、単量体成分を必須とし架橋剤を含むことがある成分である。
単量体成分は、一般には、重合性二重結合を1個有する(ラジカル)重合性単量体と呼ばれている成分を含む。
【0032】
単量体成分としては、特に限定はないが、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル等のニトリル系単量体;塩化ビニル等のハロゲン化ビニル系単量体;塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、クロロマレイン酸等のカルボキシル基含有単量体;カルボキシル基含有単量体の無水物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル系単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;(メタ)アクリルアミド、置換(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系単量体;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のエチレン不飽和モノオレフイン系単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;ビニルメチルケトン等のビニルケトン系単量体;N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル系単量体;ビニルナフタリン塩等を挙げることができる。なお、(メタ)アクリルは、アクリルまたはメタクリルを意味する。
単量体成分は、ニトリル系単量体、カルボキシル基含有単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、スチレン系単量体、ビニルエステル系単量体、(メタ)アクリルアミド系単量体およびハロゲン化ビニリデン系単量体から選ばれる少なくとも1種を含むと好ましい。
【0033】
熱可塑性樹脂がニトリル系単量体を含有する単量体成分を重合することによって得られる共重合体から構成され、単量体成分に占めるニトリル系単量体の重量割合が、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上、特に好ましくは98重量%以上であると、外殻を構成する熱可塑性樹脂のガスバリア性が向上するために好ましい。ニトリル系単量体の重量割合の上限は100重量%である。
重合性成分は、上記単量体成分以外に、重合性二重結合を2個以上有する重合性単量体(架橋剤)を含んでいてもよい。架橋剤を用いて重合させることにより、熱膨張時の内包された発泡剤の保持率(内包保持率)の低下が抑制され、効果的に熱膨張させることができる。
【0034】
架橋剤としては、特に限定はないが、たとえば、ジビニルベンゼン等の芳香族ジビニル化合物;メタクリル酸アリル、トリアクリルホルマール、トリアリルイソシアネート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、PEG#200ジ(メタ)アクリレート、PEG#600ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールヘキサ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート化合物等を挙げることができる。これらの架橋剤は、1種または2種以上を併用してもよい。なお、(メタ)アクリレートは、アクリレートまたはメタクリレートを意味する。
架橋剤の量については、特に限定はないが、単量体成分100重量部に対して、好ましくは0.01〜5重量部、さらに好ましくは0.1〜1重量部、特に好ましくは0.15〜0.8重量部である。
【0035】
本発明の熱膨張性微小球の製造方法としては、たとえば、上記で説明した重合性成分、発泡剤、直鎖炭化水素(A)およびエステル(B)を含有する油性混合物を分散させた水性分散媒中で、重合性成分を重合させる方法を挙げることができる。熱膨張性微小球の製造方法は、この製造方法以外であってもなんら差し支えない。熱膨張性微小球の製造方法は、たとえば、直鎖炭化水素(A)およびエステル(B)を油性混合物に含有させることなく重合を行い、その重合中において直鎖炭化水素(A)およびエステル(B)が何らかの反応で生成するものでもよい。
熱膨張性微小球は、その外殻に微粒子充填剤が付着していてもよい。熱膨張性微小球において、その外殻の外表面に微粒子充填剤が付着していると、使用時における分散性の向上や流動性が改善する。また、外殻の外表面に微粒子充填剤が付着した熱膨張性微小球(以下、微粒子付着熱膨張性微小球ということがある。)を加熱膨張させた中空微粒子を軽量充填剤として使用した場合にも、分散性の向上が図られる。
【0036】
微粒子充填剤は、有機系及び無機系充填剤のいずれでもよく、その種類および量は、使用目的に応じて適宜選定される。
有機系充填剤としては、たとえば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸リチウム等の金属セッケン類;ポリエチレンワックス、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、硬化ひまし油等の合成ワックス類;ポリアクリルアミド、ポリイミド、ナイロン、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂粉体類等が挙げられる。
【0037】
無機系充填剤としては、たとえば、タルク、マイカ、ベントナイト、セリサイト、カーボンブラック、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、弗化黒鉛、弗化カルシウム、窒化ホウ素等;その他、シリカ、アルミナ、雲母、コロイダル炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、リン酸カルシウム、水酸化マグネシウム、リン酸マグネシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、セラミックビーズ、ガラスビーズ、水晶ビーズ等が挙げられる。無機系充填剤は、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、シランカップリング剤、ワックスなどで表面処理されていてもよい。
これらの微粒子充填剤は、1種または2種以上を併用してもよい。微粒子付着熱膨張性微小球を、弾性接着剤、シーリング材、ボディーシーラー、塗料等の伸び物性が重要な用途に使用する場合は、伸び物性を損ない難く好ましい。
【0038】
熱膨張性微小球の製造方法においては、重合開始剤を含有する油性混合物を用いて、重合性成分を重合開始剤の存在下で重合させることが好ましい。以下に示す製造方法の説明では、重複を避けるために断りのない限り、上記熱膨張性微小球に関する種々の説明をそのまま適用してもよい。
重合開始剤としては、特に限定はないが、過酸化物やアゾ化合物等を挙げることができる。
【0039】
過酸化物としては、たとえば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−オクチルパーオキシジカーボネート、ジベンジルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート;t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート等のパーオキシエステル;イソブチリルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、カプロイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド等を挙げることができる。
アゾ化合物としては、たとえば、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等を挙げることができる。上記重合開始剤のなかでも、パーオキシジカーボネートが好ましい。
【0040】
これらの重合開始剤は、1種または2種以上を併用してもよい。重合開始剤としては、単量体成分に対して可溶な油溶性の重合開始剤が好ましい。
重合開始剤の量については、特に限定はないが、前記単量体成分100重量部に対して0.3〜8.0重量部であると好ましい。
【0041】
油性混合物は連鎖移動剤等をさらに含有していてもよい。
水性分散媒は油性混合物を分散させるイオン交換水等の水を主成分とする媒体であり、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコールや、アセトン等の親水性有機性の溶媒をさらに含有してもよい。本発明における親水性とは、水に任意に混和できる状態であることを意味する。水性分散媒の使用量については、特に限定はないが、重合性成分100重量部に対して、100〜1000重量部の水性分散媒を使用するのが好ましい。
【0042】
水性分散媒は、電解質をさらに含有してもよい。電解質としては、たとえば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アンモニウム、炭酸ナトリウム等を挙げることができる。これらの電解質は、1種または2種以上を併用してもよい。電解質の含有量については、特に限定はないが、水性分散媒100重量部に対して0.1〜50重量部含有するのが好ましい。
水性分散媒は、水酸基、カルボン酸(塩)基およびホスホン酸(塩)基から選ばれる親水性官能基とヘテロ原子とが同一の炭素原子に結合した構造を有する水溶性1,1−置換化合物類、重クロム酸カリウム、亜硝酸アルカリ金属塩、金属(III)ハロゲン化物、ホウ酸、水溶性アスコルビン酸類、水溶性ポリフェノール類、水溶性ビタミンB類および水溶性ホスホン酸(塩)類から選ばれる少なくとも1種の水溶性化合物を含有してもよい。なお、本発明における水溶性とは、水100gあたり1g以上溶解する状態であることを意味する。
【0043】
水性分散媒中に含まれる水溶性化合物の量については、特に限定はないが、重合性成分100重量部に対して、好ましくは0.0001〜1.0重量部、さらに好ましくは0.0003〜0.1重量部、特に好ましくは0.001〜0.05重量部である。水溶性化合物の量が少なすぎると、水溶性化合物による効果が十分に得られないことがある。また、水溶性化合物の量が多すぎると、重合速度が低下したり、原料である重合性成分の残存量が増加することがある。
水性分散媒は、電解質や水溶性化合物以外に、分散安定剤や分散安定補助剤を含有していてもよい。
【0044】
分散安定剤としては、特に限定はないが、たとえば、コロイダルシリカ、コロイダル炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化第二鉄、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、蓚酸カルシウム、メタケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛等のリン酸塩、ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸アルミニウム、ピロリン酸亜鉛等のピロリン酸塩、アルミナゾル等の難水溶性無機化合物の分散安定剤を挙げることができる。これらの分散安定剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
分散安定剤の配合量は、重合性成分100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部、さらに好ましくは0.5〜10重量部である。
【0045】
分散安定補助剤としては、特に限定はないが、たとえば、高分子タイプの分散安定補助剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等の界面活性剤を挙げることができる。これらの分散安定補助剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
水性分散媒は、たとえば、水(イオン交換水)に、水溶性化合物とともに、必要に応じて分散安定剤および/または分散安定補助剤等を配合して調製される。重合時の水性分散媒のpHは、水溶性化合物、分散安定剤、分散安定補助剤の種類によって適宜決められる。
【0046】
油性混合物は、通常、所定粒子径の球状油滴が調製されるように水性分散媒中に乳化分散させる。油性混合物を乳化分散させる方法としては、たとえば、ホモミキサー(たとえば、特殊機化工業株式会社製)等により攪拌する方法や、スタティックミキサー(たとえば、株式会社ノリタケエンジニアリング社製)等の静止型分散装置を用いる方法、膜乳化法、超音波分散法等の一般的な分散方法を挙げることができる。
次いで、油性混合物が球状油滴として水性分散媒に分散された分散液を加熱することにより、懸濁重合を開始する。重合反応中は、分散液を攪拌するのが好ましく、その攪拌は、たとえば、単量体の浮上や重合後の熱膨張性微小球の沈降を防止できる程度に緩く行えばよい。
【0047】
重合温度は、重合開始剤の種類によって自由に設定されるが、好ましくは30〜100℃、さらに好ましくは40〜90℃の範囲で制御される。反応温度を保持する時間は、0.1〜20時間程度が好ましい。重合初期圧力については特に限定はないが、ゲージ圧で0〜5.0MPa、さらに好ましくは0.1〜3.0MPaの範囲である。
微粒子付着熱膨張性微小球の製造方法では、微粒子充填剤の付着は、付着前の熱膨張性微小球と微粒子充填剤とを混合することによって行うことができる。混合については、特に限定はなく、容器と攪拌羽根といった極めて簡単な機構を備えた装置を用いて行うことができる。また、一般的な揺動または攪拌を行える粉体混合機を用いてもよい。粉体混合機としては、たとえば、リボン型混合機、垂直スクリュー型混合機等の揺動攪拌または攪拌を行える粉体混合機を挙げることができる。また、近年、攪拌装置を組み合わせたことにより効率のよい多機能な粉体混合機であるスーパーミキサー(株式会社カワタ製)およびハイスピードミキサー(株式会社深江製)、ニューグラマシン(株式会社セイシン企業製)、SVミキサー(株式会社神鋼環境ソリューション社製)等を用いてもよい。
【0048】
熱膨張性微小球への微粒子充填剤の付着量は、特に限定はないが、微粒子充填剤による機能を十分に発揮でき、熱膨張性微小球の真比重の大きさ等を考慮すると、付着前の熱膨張性微小球100重量部に対して、好ましくは0.1〜95重量部、さらに好ましくは0.5〜60重量部、特に好ましくは5〜50重量部、最も好ましくは8〜30重量部である。
【0049】
〔熱膨張性微小球の用途〕
本発明の中空微粒子は、上記熱膨張性微小球を加熱膨張させて得られる。加熱膨張の方法については、熱膨張性微小球が膨張する温度以上に加熱する工程を含むものであれば特に限定はなく、乾式加熱膨張法、湿式加熱膨張法のいずれでもよい。
加熱膨張させる温度としては、熱膨張性微小球が膨張開始温度以上で最大膨張温度未満であれば特に限定はない。その温度は、好ましくは80〜350℃、より好ましくは100〜300℃、特に好ましくは120〜250℃である。
【0050】
乾式加熱膨張法としては、特開2006−213930号公報に記載されている方法、特に内部噴射方法(特に第0057段落〜第0080段落)を挙げることができる。また、別の乾式加熱膨張法としては、特開平3−273037号公報や特開2006−96963号公報に記載の方法等がある。湿式加熱膨張法としては、特開昭62−201231号公報に記載の方法等がある。
上記背景技術で詳しく説明したとおり、特許文献6で測定されている繰り返し圧縮耐久性は、緩やかな速度で加圧および除圧が繰り返される「静的な圧力変化」に対する中空微粒子の耐久性を意味する。しかし、中空微粒子が実際に種々使用される場面では、このような「静的な圧力変化」のみを受けることは稀であり、速い速度で加圧と除圧が短時間に繰り返し行われる「動的な圧力変化」を受けることが多い。本発明の中空微粒子は、動的な圧力変化に対して優れた耐久性(優れた動的耐久性)を有する。また、中空微粒子を混合、配管移送、充填等した場合に、想定した比重よりも大きくなりにくい。
【0051】
中空微粒子の動的耐久性(D
dyn)は、実施例で詳しく説明する方法によって測定される。動的耐久性は、好ましくは0.06以下、より好ましくは0.05以下、さらに好ましくは0.04以下、特に好ましくは、0.03以下、最も好ましくは0.02以下である。動的耐久性の好ましい下限は0である。動的耐久性が0.06超の場合、動的な圧力変化に対して耐久性が小さく、動的耐久性の測定後に完全に除圧した場合でも、球状には復元しにくい。また、中空微粒子の動的耐久性が低いと、中空微粒子を混合、配管移送、充填等した場合に、想定した比重よりも大きくなることがある。
中空微粒子の平均粒子径については特に限定はないが、好ましくは1〜1000μm、さらに好ましくは5〜800μm、特に好ましくは10〜500μmである。また、中空微粒子の粒度分布の変動係数CVについても、特に限定はないが、30%以下が好ましく、さらに好ましくは27%以下、特に好ましくは25%以下である。
【0052】
中空微粒子において熱可塑性樹脂からなる外殻の膜厚については、特に限定はないが、好ましくは0.05〜1.0μm、さらに好ましくは0.1〜0.7μm、特に好ましくは0.15〜0.5μmである。外殻の膜厚は、電子顕微鏡による中空微粒子の断面観察により測定することができる。
中空微粒子の真比重については特に限定はないが、好ましくは0.010〜0.5、さらに好ましくは0.015〜0.3、特に好ましくは0.020〜0.2である。
【0053】
本発明の中空微粒子は、
図2に示すように、その外殻の外表面に付着した微粒子充填剤からさらに構成されていてもよく、以下では、微粒子付着中空微粒子ということがある。
ここでいう付着とは、単に微粒子付着中空微粒子(4)の外殻(5)の外表面に微粒子充填剤(6および7)が、吸着された状態(6)であってもよく、外表面近傍の外殻を構成する熱可塑性樹脂が加熱によって融解し、微粒子付着中空微粒子の外殻の外表面に微粒子充填剤がめり込み、固定された状態(7)であってもよいという意味である。微粒子充填剤の粒子形状は不定形であっても球状であってもよい。微粒子付着中空微粒子では、微粒子付着熱膨張性微小球と同様に、使用時における分散性の向上や流動性が改善する。また、この製造方法で得られる微粒子付着中空微粒子を弾性接着剤、シーリング材、ボディーシーラー、塗料等の軽量化充填剤として使用した場合、基材成分の伸び物性を損ない難い。
【0054】
微粒子付着中空微粒子は、微粒子付着熱膨張性微小球を加熱膨張させることによって得ることができる。微粒子付着中空微粒子としては、熱膨張性微小球と微粒子充填剤とを混合する工程(混合工程)と、前記混合工程で得られた混合物を前記軟化点超の温度に加熱して、前記熱膨張性微小球を膨張させるとともに、得られる中空微粒子の外表面に微粒子充填剤を付着させる工程(付着工程)を含む、以下の製造方法が好ましい。
【0055】
(混合工程)
混合工程は、熱膨張性微小球と微粒子充填剤とを混合する工程である。
混合工程における微粒子充填剤と熱膨張性微小球との重量比率(微粒子充填剤/熱膨張性微小球)については、特に限定はないが、好ましくは90/10〜60/40、さらに好ましくは85/15〜65/35、特に好ましくは80/20〜70/30である。微粒子充填剤/熱膨張性微小球(重量比率)が90/10より大きい場合は、微粒子付着中空微粒子の真比重が大きくなり、低比重化効果が小さくなることがある。一方、微粒子充填剤/熱膨張性微小球(重量比率)が60/40より小さい場合は、微粒子付着中空微粒子の真比重が低くなり、粉立ち等のハンドリングが悪化することがある。
【0056】
混合工程に用いられる装置としては、微粒子付着熱膨張性微小球の製造方法で用いた製造装置をそのまま使用することができる。
【0057】
(付着工程)
付着工程は、前記混合工程で得られた、熱膨張性微小球と微粒子充填剤とを含む混合物を、熱膨張性微小球の外殻を構成する熱可塑性樹脂の軟化点超の温度に加熱する工程である。付着工程では、熱膨張性微小球を膨張させるとともに、外殻の外表面に微粒子充填剤を付着させる。
加熱は、一般的な接触伝熱型または直接加熱型の混合式乾燥装置を用いて行えばよい。混合式乾燥装置の機能については、特に限定はないが、温度調節可能で原料を分散混合する能力や、場合により乾燥を早めるための減圧装置や冷却装置を備えたものが好ましい。加熱に使用する装置としては、特に限定はないが、たとえば、レーディゲミキサー(株式会社マツボー製)、ソリッドエアー(株式会社ホソカワミクロン製)等を挙げることができる。
【0058】
加熱の温度条件については、熱膨張性微小球の種類にもよるが最適膨張温度とするのが良く、好ましくは60〜250℃、より好ましくは70〜230℃、さらに好ましくは80〜220℃である。
微粒子付着中空微粒子の平均粒子径については特に限定はないが、好ましくは1〜1000μm、さらに好ましくは5〜800μm、特に好ましくは10〜500μmである。また、中空微粒子の粒度分布の変動係数CVについても、特に限定はないが、30%以下が好ましく、さらに好ましくは27%以下、特に好ましくは25%以下である。
【0059】
微粒子付着中空微粒子において熱可塑性樹脂からなる外殻の膜厚については、特に限定はないが、好ましくは0.05〜1.0μm、さらに好ましくは0.1〜0.7μm、特に好ましくは0.15〜0.5μmである。外殻の膜厚は、電子顕微鏡による中空微粒子の断面観察により測定することができる。
微粒子付着中空微粒子の真比重については、特に限定はないが、好ましくは0.01〜0.5であり、さらに好ましくは0.03〜0.4、特に好ましくは0.05〜0.35、最も好ましくは0.07〜0.30である。微粒子付着中空微粒子の真比重が0.01より小さい場合は、耐久性が不足することがある。一方、微粒子付着中空微粒子の真比重が0.5より大きい場合は、低比重化効果が小さくなるため、微粒子付着中空微粒子を用いて組成物を調製する際、その添加量が大きくなり、非経済的であることがある。
【0060】
本発明の組成物は、上記熱膨張性微小球および/または中空微粒子と、基材成分とを含む。本発明の組成物は動的耐久性に優れる。本発明の組成物が、基材成分として中空微粒子を含む場合、軽量化が図れるために好ましい。
本発明の組成物は、1液タイプでもよい。また、本発明の組成物は、たとえば、以下で詳しく説明する接着剤組成物や成形用組成物のように、基材成分の前駆体を含有するA液、および、基材成分の前駆体を硬化させて基材成分を生成させるための硬化剤を含有するB液の組み合わせからなり、A液およびB液を混合することによって、基材成分が生成する2液タイプであってもよい。
【0061】
基材成分としては特に限定はないが、たとえば、天然ゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)等のゴム類;エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリエチレンワックス、パラフィンワックス等のワックス類;エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリル樹脂、熱可塑性ポリウレタン、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリスチレン(PS)等の熱可塑性樹脂;オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー等の熱可塑性エラストマー;ポリ乳酸(PLA)、澱粉樹脂等のバイオプラスチック;シリコーン、変性シリコーン、ポリウレタン、ポリサルファイド、アクリルゴム、ポリイソブチレン等のシーリング材料;ウレタン系、エチレン−酢酸ビニル共重合物系、塩化ビニル系、アクリル系の塗料成分等が挙げられる。
基材成分は無機物であってもよい。このような無機物としては、たとえば、普通ポルトランドセメント、早強セメント、アルミナセメント、高炉スラグセメント、フライアッシュセメント、モルタル等のセメント類;高炉スラグ、電気炉酸化スラグ、電気炉還元スラグ等のスラグ;生石灰、消石灰等の石灰類;チタニア、アルミナ、ジルコニア、シリカ、マグネシア、ジルコン、ジルコン酸バリウム、チタン酸鉛、チタン酸バリウム、ムライト、酸化亜鉛、酸化錫、炭化珪素、窒化珪素、フェライト、コージェライト等のセラミック類;石灰石(重質炭酸カルシウム)、石英、珪石(シリカ)、ウオラスナイト、石膏、アパタイト、マグネタイト、ゼオライト、クレイ(モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト、バーミキュライト、ハロイサイト、タルク、雲母、マイカ等)等の鉱物;元素の周期率表において、それぞれ1族〜16族に属する金属を有する、金属酸化物(酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化バナジウム、酸化スズ、酸化鉄(磁性酸化鉄を含む)、酸化インジウム等)、金属水酸化物(水酸化アルミニウム、水酸化金、水酸化マグネシウム等)、炭酸金属塩(炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム)、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ナトリウム(重曹)、炭酸鉄等)、硫酸金属塩(硫酸アルミニウム、硫酸コバルト、硫酸水素ナトリウム、硫酸銅、硫酸ニッケル、硫酸バリウム等)、その他の金属塩(チタン酸塩(チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カリウム等)、ホウ酸塩(ホウ酸アルミニウム、ホウ酸亜鉛等)、燐酸塩(リン酸カルシウム、燐酸ナトリウム、燐酸マグネシウム等)、硝酸塩(硝酸ナトリウム、硝酸鉄、硝酸鉛等))等の金属化合物等の無機物でもよい。これらの無機物は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0062】
本発明の中空微粒子は動的耐久性に優れるため、基材成分が、セメント類、コージェライトおよび炭化珪素から選ばれる少なくとも1種の無機物であると、常温下において中空微粒子と混合および成形されても中空微粒子が破壊されること無く、さらに水和凝結や焼成等により、基材成分が硬化することで、中空微粒子由来の空隙による多孔化および軽量化が容易であるために好ましい。
本発明の組成物は、これらの基材成分と熱膨張性微小球および/また中空微粒子とを混合することによって調製することができる。
【0063】
本発明の中空微粒子は、上記に示すとおり、動的耐久性について特に優れる。このため、中空微粒子を含有する組成物を調製する場合、混合時の動的な圧力変化による破壊が少ない。したがって、得られる組成物の実際の比重と、中空微粒子の破壊が全く発生しないと仮定した場合に混合される各成分の比重等から計算して求められる組成物の設計比重との間に差が生じ難い。中空微粒子を含有する本発明の組成物において、組成物の設計比重に対する実際に得られる組成物の比重の比率(比重比)は、1.10倍以下であると好ましく、さらに好ましく1.05倍以下、特に好ましくは1.03倍以下、最も好ましくは1.0倍である。ここで、比重比1.0倍は、中空微粒子の破壊がほとんど発生しないことを意味する。また、比重比が1.10倍より大きい場合は、軽量化効果が損なわれることがある。
本発明の組成物の用途としては、たとえば、成形用組成物、塗料組成物、粘土組成物、繊維組成物、接着剤組成物、粉体組成物等を挙げることができる。
【0064】
本発明の組成物が接着剤組成物の場合、中空微粒子とともに、上記シーリング材料を基材成分として含有すると、軽量化が図れ、伸び物性への影響が少なく好ましい。接着剤組成物において配合される基材成分と中空微粒子との重量比率(基材成分/中空微粒子)については、特に限定はないが、好ましくは99.995/0.005〜70/30、さらに好ましくは99.99/0.01〜80/20、特に好ましくは99.95/0.05〜90/10である。上記重量比率が、99.995/0.005より大きい場合、中空微粒子の添加量が少なく軽量化の効果が薄れてしまう可能性がある。一方、上記重量比率が、70/30より小さい場合、基材成分が少なく接着剤組成物としての機能が著しく低下する。ここで、接着剤組成物が2液タイプの場合は、A液に含まれる基材成分の前駆体と、B液に含まれる硬化剤の合計量を意味する。
接着剤組成物では、中空微粒子が微粒子付着中空微粒子であると、伸び物性への影響が少なくさらに好ましい。また、基材成分であるシーリング材料が、変性シリコーン、ポリウレタン、ポリサルファイド等であると好ましい。
【0065】
接着剤組成物が1液タイプで、シーリング材料がポリウレタンの場合は、中空微粒子およびイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを含む組成物において、イソシアネート基が空気中の水分と反応し、ウレタンプレポリマーが架橋・硬化し、ポリウレタンが生成することで接着性を発現する。
接着剤組成物が2液タイプで、シーリング材料がポリウレタンの場合は、ウレタンプレポリマー等を含むA液(基材成分の前駆体)と、ポリオールや中空微粒子等を含むB液(硬化剤)との2つの組合せからなる。A液およびB液を混合することによって、ウレタンプレポリマーが架橋・硬化し、ポリウレタンが生成することで接着性を発現する。
【0066】
接着剤組成物が1液タイプで、シーリング材料が変性シリコーンの場合は、中空微粒子および架橋性シリル基含有樹脂を含む組成物において、架橋性シリル基含有樹脂が空気中の水分と反応し、架橋・硬化して、変性シリコーンが生成することで接着性を発現する。
接着剤組成物が2液タイプで、シーリング材料が変性シリコーンの場合は、シロキサンポリマーを含むA液(基材成分の前駆体)と、アミノキシシロキサンやポリオール等の硬化剤および中空微粒子等を含むB液(硬化剤)との2つの組合せからなる。A液およびB液を混合することによって、シロキサンポリマーが架橋・硬化し、変性シリコーンが生成することで接着性を発現する。
【0067】
接着剤組成物が1液タイプで、シーリング材料がポリサルファイドの場合は、中空微粒子と、液状ポリサルファイド樹脂と、BaO
2、CaO
2等のアルカリまたはアルカリ上類金属の過酸化物(潜在性硬化剤)を含む組成物において、空気中の水分と反応し、液状ポリサルファイド樹脂が架橋・硬化して、ポリサルファイドが生成することで接着性を発現する。
接着剤組成物が2液タイプで、シーリング材料がポリサルファイドの場合は、サルファイドプレポリマーを含むA液(基材成分の前駆体)と、PdO
2等の金属過酸化物硬化剤および中空微粒子等を含むB液(硬化剤)との2つの組合せからなる。A液およびB液を混合することによって、サルファイドプレポリマーが架橋・硬化し、ポリサルファイドが生成することで接着性を発現する。
【0068】
本発明の組成物が、特に、熱膨張性微小球とともに、基材成分として、熱膨張性微小球の膨張開始温度より低い融点を有する化合物および/または熱可塑性樹脂(たとえば、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス等のワックス類、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂;オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー等の熱可塑性エラストマー)を含む場合は、樹脂成形用マスターバッチとして用いることができる。
この場合、この樹脂成形用マスターバッチ組成物は、射出成形、押出成形、プレス成形等に利用され、樹脂成形時の気泡導入に好適に用いられる。樹脂成形時に用いられる樹脂としては、上記基材成分から選択されれば特に限定はないが、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリル樹脂、熱可塑性ポリウレタン、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリスチレン(PS)、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリ乳酸(PLA)、澱粉樹脂、天然ゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)等、およびそれらの混合物などが挙げられる。また、ガラス繊維やカーボンファイバーなどの補強繊維を含有していてもよい。
【0069】
本発明の成形物は、この組成物を成形して得られる。本発明の成形物としては、たとえば、成形品や塗膜等の成形物を挙げることができる。本発明の成形物では、優れた動的耐久性を有し、軽量性、多孔性、吸音性、断熱性、低熱伝導性、低誘電率化、意匠性、衝撃吸収性、強度等の諸物性が向上している。
本発明の成形物は、上記組成物を成形して得られるので、軽量で、優れた動的耐久性を有する。
基材成分として無機物を含む成形物は、さらに焼成することによって、セラミックフィルタ等が得られる。
【実施例】
【0070】
以下に、本発明の実施例について具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例および比較例において、断りのない限り、「%」とは「重量%」を意味するものとする。
実施例および比較例について、次に示す要領で各種物性および性能を測定、評価した。
【0071】
〔平均粒子径と粒度分布の測定〕
レーザー回折式粒度分布測定装置(SYMPATEC社製 HEROS&RODOS)を使用した。乾式分散ユニットの分散圧は5.0bar、真空度は5.0mbarで乾式測定法により測定し、D50値を平均粒子径とした。
【0072】
〔熱膨張性微小球の含水率の測定〕
測定装置として、カールフィッシャー水分計(MKA−510N型、京都電子工業株式会社製)を用いて測定した。
【0073】
〔熱膨張性微小球に封入された発泡剤の内包率の測定〕
熱膨張性微小球1.0gを直径80mm、深さ15mmのステンレス製蒸発皿に入れ、その重量(W
1)を測定した。アセトニトリル30ml加え均一に分散させ、30分間室温で放置した後に、120℃で2時間加熱し乾燥後の重量(W
2)を測定した。発泡剤の内包率は、下記の式により計算される。
内包率(重量%)=(W
1−W
2)(g)/1.0(g)×100−(含水率)(重量%)
(式中、含水率は、上記方法で測定される。)
【0074】
〔膨張開始温度(Ts)および最大膨張温度(Tmax)の測定〕
測定装置として、DMA(DMA Q800型、TA instruments社製)を使用した。熱膨張性微小球0.5mgを直径6.0mm(内径5.65mm)、深さ4.8mmのアルミカップに入れ、熱膨張性微小球層の上部にアルミ蓋(直径5.6mm、厚み0.1mm)をのせて試料を準備した。その試料に上から加圧子により0.01Nの力を加えた状態でサンプル高さを測定した。加圧子により0.01Nの力を加えた状態で、20℃から300℃まで10℃/minの昇温速度で加熱し、加圧子の垂直方向における変位量を測定した。正方向への変位開始温度を膨張開始温度(Ts)とし、最大変位量を示したときの温度を最大膨張温度(Tmax)とした。
【0075】
〔炭化水素(A)およびエステル(B)の含有量の測定〕
熱膨張性微小球0.5gとn−ヘキサン20mlとを混合し、30分間攪拌後、ろ過して熱膨張性微小球を取り出した。この操作を3回繰り返した後、熱膨張性微小球を乾燥して、洗浄した熱膨張性微小球を用意した。この洗浄した熱膨張性微小球0.1gおよびDMF5mlを容量20mlのバイアル瓶に添加した後、バイアル瓶をセプタムキャップで蓋をして、23℃で24時間、熱膨張性微小球をDMFで膨潤させた。次いで、アセトン5mlをバイアル瓶にさらに添加混合後、23℃で2時間静置させ、上澄み液1μlを試料としてGC−MS分析(FID法、Agilent製、7890A GC)を行い、炭化水素(A)およびエステル(B)の含有量をそれぞれ測定した。
【0076】
〔真比重の測定〕
熱膨張性微小球および中空微粒子等の粒子の真比重は、以下の測定方法で測定した。
真比重は環境温度25℃、相対湿度50%の雰囲気下においてイソプロピルアルコールを用いた液浸法(アルキメデス法)により測定した。
具体的には、容量100ccのメスフラスコを空にし、乾燥後、メスフラスコ重量(WB
1)を秤量した。秤量したメスフラスコにイソプロピルアルコールをメニスカスまで正確に満たした後、イソプロピルアルコール100ccの充満されたメスフラスコの重量(WB
2)を秤量した。
また、容量100ccのメスフラスコを空にし、乾燥後、メスフラスコ重量(WS
1)を秤量した。秤量したメスフラスコに約50ccの粒子を充填し、粒子の充填されたメスフラスコの重量(WS
2)を秤量した。そして、粒子の充填されたメスフラスコに、イソプロピルアルコールを気泡が入らないようにメニスカスまで正確に満たした後の重量(WS
3)を秤量した。そして、得られたWB
1、WB
2、WS
1、WS
2およびWS
3を下式に導入して、粒子の真比重(d)を計算した。
d={(WS
2−WS
1)×(WB
2−WB
1)/100}/{(WB
2−WB
1)−(WS
3−WS
2)}
【0077】
〔中空微粒子の動的耐久性〕
動的耐久性の測定に用いる中空微粒子の製造方法としては、上述のとおり、日本国特開2006−213930号公報に記載されている内部噴射方法を採用した。具体的には、
図3に示す発泡工程部を備えた製造装置を用いて、以下の手順で行った。
【0078】
(発泡工程部の説明)
この発泡工程部は、出口に分散ノズル(11)を備え且つ中央部に配置された気体導入管(番号表記せず)と、分散ノズル(11)の下流部に設置された衝突板(12)と、気体導入管の周囲に間隔を空けて配置された過熱防止筒(10)と、過熱防止筒(10)の周囲に間隔を空けて配置された熱風ノズル(8)とを備える。この発泡工程部において、気体導入管内の矢印方向に熱膨張性微小球を含む気体流体(13)が流されており、気体導入管と過熱防止筒(10)との間に形成された空間には、熱膨張性微小球の分散性の向上および気体導入管と衝突板の過熱防止のための気体流(14)が矢印方向に流されており、さらに、過熱防止筒(10)と熱風ノズル(8)との間に形成された空間には、熱膨張のための熱風流が矢印方向に流されている。ここで、熱風流(15)と気体流体(13)と気体流(14)とは、通常、同一方向の流れである。過熱防止筒(10)の内部には、冷却のために、冷媒流(9)が矢印方向に流されている。
【0079】
(製造装置の操作)
噴射工程では、熱膨張性微小球を含む気体流体(13)を、出口に分散ノズル(11)を備え且つ熱風流(15)の内側に設置された気体導入管に流し、気体流体(13)を前記分散ノズル(11)から噴射させる。
分散工程では、気体流体(13)を分散ノズル(11)の下流部に設置された衝突板(12)に衝突させ、熱膨張性微小球が熱風流(15)中に万遍なく分散するように操作される。ここで、分散ノズル(11)から出た気体流体(13)は、気体流(14)とともに衝突板(12)に向かって誘導され、これと衝突する。
膨張工程では、分散した熱膨張性微小球を熱風流(15)中で膨張開始温度以上に加熱して膨張させる。その後、得られた中空微粒子を冷却部分に通過させる等して回収する。
【0080】
(中空微粒子の製造条件設定方法)
まず、原料である熱膨張性微小球の供給量、熱風流量や原料分散気体量等のパラメーターを一定に固定し、熱風流の温度(以下、「熱風温度」ということがある。)を変化させる。次に、熱風温度を段階的に変化させ、かつ、他のパラメーターを一定に固定しながら各温度で熱膨張性微小球を膨張させ、得られた微小球の真比重を測定し、熱風温度(x軸)と真比重(y軸)の関係をプロットしたグラフを作成する。
また、所望の真比重((0.030±0.002)g/cc)を有する中空微粒子を製造する場合は、上記のグラフにおける所望の真比重に対応する熱風温度に設定する。このようにして膨張条件の制御が行われ、真比重が(0.030±0.002)g/ccである中空微粒子を製造する。
得られた中空微粒子について、以下の方法で、動的耐久性を測定する。
【0081】
(動的耐久性の測定)
上記で得られた真比重が(0.030±0.002)g/ccである中空微粒子を、23℃、50%RHの環境下で24時間経過させた後、動的耐久性を測定した。
動的耐久性の測定装置として、特開2005−257600号公報に記載の粉体の粘弾性測定装置を使用する。具体的には、
図4に示すように、中空微粒子(21)を収容する容器(22)、および、容器(22)に同一線上で対面する位置にあるピストン(23)が設置されており、油圧シリンダ(24)および支持台(25)を介して、容器(22)をピストン(23)に向かって進退することができる。従って、容器(22)は、中空微粒子(21)に同一軸線上での上下方向の加振を付与することができるようになっている。ピストン(23)には温度センサー(30)および圧力センサー(31)が設置してあり、中空微粒子(21)との接触面における圧力(面圧力)を測定できるようになっている。
【0082】
容器(22)は、恒温槽内(26)に配置し、この恒温槽内(26)をヒーター(27)および不活性ガス(29)により、槽内温度センサー(28)で一定温度に制御することによって、測定環境を安定化させている。
さらに、容器(22)の底部には、油圧シリンダ(24)にて容器(22)をピストン(23)に向かって進行させて、容器(22)内の中空微粒子(21)を容器(22)の底部とピストン(23)との間で圧縮した際に、中空微粒子層に含まれる空気を容器(22)外に排除するためのフィルター(32)を有する。
【0083】
動的耐久性の測定条件を具体的に説明する。中空微粒子を容器(内径Φ40mm、深さ53mm、底部フィルターΦ30mm、ろ過精度20μm金網焼結フィルター)に66cc入れた。次いで、容器を油圧シリンダで上に移動させ、容器の底部と固定されたピストンとの間で、中空微粒子を圧縮して、中空微粒子がピストンと接する表面の圧力(面圧力)を30kPaにしたときの容器内の中空微粒子の層の厚みH
0(mm)を測定した。中空微粒子をさらに圧縮して、中空微粒子がピストンと接する面圧力を100kPaにしたときの容器内の中空微粒子の層の厚みH(mm)とした。そして、中空微粒子の層の厚み(mm)が、(H−0.05H
0)〜Hの範囲で周波数10Hzの周期で変化するように、容器を上下に振動させた。
振動開始から150秒後および500秒後において、面圧力100kPaにしたときの容器内の中空微粒子層の厚み(静変位)を、それぞれH
150(mm)およびH
500(mm)としたとき、動的耐久性D
dynを下式に従って算出した。
【0084】
D
dyn=(H
150−H
500)/H
0
なお、中空微粒子が微粒子付着中空微粒子の場合は、上記で説明した内部噴射方法では製造しにくい場合があるので、微粒子付着中空微粒子を以下のように製造した。
【0085】
熱膨張性微小球25gおよび重質炭酸カルシウム(旭鉱末製、MC−120)の75gを混合し、あらかじめマントルヒーターで90〜110℃に加熱した2Lのセパラブルフラスコに添加した。次いで、その混合物をポリテトラフルオロエチレンの攪拌羽(長さ150mm)を用いて600rpmの速度で攪拌し、約5分間で真比重が(0.12±0.03)g/ccとなるように加熱温度を設定して、微粒子付着中空微粒子を調製した。得られた微粒子付着中空微粒子の動的耐久性を上記方法に従って測定した。
中空微粒子が微粒子付着中空微粒子である場合は、その真比重が(0.12±0.03)g/ccとなるように中空微粒子を製造し、そうでない場合は、その真比重が(0.030±0.002)g/ccであるように製造するが、それぞれの膨張性の程度はほぼ同一である。
【0086】
〔実施例1〕
塩化ナトリウム120g、シリカ有効成分20重量%であるコロイダルシリカ100g、ポリビニルピロリドン1.0gおよびカルボキシメチル化ポリエチレンイミン・Na塩の5%水溶液の1.0gを、イオン交換水600gに加えた後、得られた混合物のpHを2.8〜3.2に調整し、水性分散媒を調製した。
これとは別に、アクリロニトリル130g、メタクリロニトリル107g、メチルメタクリレート3g(以上、単量体成分);エチレングリコールジメタクリレート1.0g、トリメチロールプロパントリメタクリレート0.5g(以上、架橋剤);ノルマルテトラデカン1.0g、カプリル酸ノルマルヘプチルエステル1.5g(以上、油系添加剤);イソペンタン20g(発泡剤);およびアゾビスイソブチロニトリル3g(重合開始剤)を混合して油性混合物を調製した。
水性分散媒および油性混合物を混合し、得られた混合液をホモミキサー(特殊機化工業社製、TKホモミキサー、回転数12000rpm)で2分間分散して、縣濁液を調製した。この懸濁液を容量1.5リットルの加圧反応器に移して窒素置換をしてから反応初期圧0.5MPaにし、80rpmで攪拌しつつ重合温度70℃で20時間重合した。重合後に得られた重合液を濾過、乾燥して、熱膨張性微小球を得た。得られた熱膨張性微小球の物性を表1に示す。
【0087】
〔実施例2〜8および比較例1〜4〕
実施例1で使用する水系分散媒、単量体成分、架橋剤、油系添加剤、発泡剤および重合開始剤と、反応温度とを、表1に示すものに変更する以外は実施例1と同様にして熱膨張性微小球をそれぞれ得た。その物性を表1に示す。
表1では以下の表2に示す略号が使用されている。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
〔実施例9〕
(1液タイプ接着剤組成物)
実施例3で得られた熱膨張性微小球の動的耐久性評価のために作製した微粒子付着中空微粒子(平均粒子径30μm、真比重0.13g/cc)1.7gと、1液タイプ変性シリコーンシーリング材(Sikaflex−M1、日本シーカ製、比重1.40)100gとを予備混合した。その後、得られた混合物を、コンディショニングミキサー(株式会社シンキー製のAR−360)を用いて、自転500rpmおよび公転2000rpmの回転条件下で、150秒間攪拌、脱泡して、接着剤組成物を得た。得られた接着剤組成物の物性をJIS A 1439に記載の方法で評価し、比重1.20(設計比重1.20)であり、被着体としてアルミニウム板を用いた試験体の引張接着性試験における最大荷重時の伸びは480%であった。
【0091】
〔実施例10〕
(2液タイプ接着剤組成物)
2液タイプ用ウレタンシーリング材(ボンドUPシールグレー、コニシ製)のA液(ボンドUPシールグレー基剤成分、比重1.0)500gを準備した。次に、実施例9で用いた微粒子付着中空微粒子と、硬化剤(ボンドUPシールグレー硬化剤成分、比重1.50)2000gとを混合攪拌機(ダルトン製、5DMV−r型、フック羽根)へ投入し、自転回転数288rpmおよび公転回転数135rpmの回転条件下で、1時間攪拌混合後して、B液を得た。
次いで、B液にA液を添加し、同じ回転条件下で、15分間混合して、接着剤組成物を得た。得られた接着剤組成物の物性を実施例9と同様に測定すると、比重1.02(設計比重1.00)であり、最大荷重時の伸びは430%であった。
【0092】
〔比較例5〕
実施例10において、比較例2で得られた熱膨張性微小球の動的耐久性評価のために作製した微粒子付着中空微粒子(平均粒子径38μm、真比重0.13g/cc)100gを使用する以外は、実施例10と同様にして、接着剤組成物を得た。得られた接着剤組成物の物性を実施例9と同様に測定すると、比重1.18(設計比重1.00)であり、最大荷重時の伸びは350%であった。
実施例9および10と、比較例5とを比較すると、本発明の中空微粒子(微粒子付着中空微粒子)では、動的耐久性に優れるため、接着剤組成物の製造段階においても破壊されることなく、接着剤組成物の軽量化に寄与していることが明確である。
【0093】
〔実施例11〕
(セメント組成物の製造)
下記に示すセメント1000重量部、ケイ石700重量部、ポリプロピレン繊維30重量部、古紙解砕物60重量部、セルロース系バインダー25重量部をレディゲミキサー(マツボー製M20)に添加し、5分間攪拌を加え十分に混合した。続いて、実施例3で得られた熱膨張性微小球の動的耐久性評価のために作製した中空微粒子(平均粒子径30μm、真比重0.031g/cc)6.2重量部を入れ、さらに1分間攪拌を加えた後、次いで水を2分間かけて噴霧し、混合した。得られた混合物を10Lの双腕ニーダー(本田鉄工製HBN−10D)に移しかえて1分間さらに混合を行って粘土状のセメント組成物を製造した。
セメント:普通ポルトランドセメント(住友大阪セメント製)
ケイ石:シリカフラワー#200(瑞浪シリカ製)
ポリプロピレン繊維:PZL(大和紡績製)
古紙解砕物:PS(日本製紙製)
セルロース系バインダー:マーポローズME−300000(松本油脂製薬製)
【0094】
(セメント成形物の製造方法)
上記で得られたセメント組成物を、下記の押出成形条件に設定した真空押出成形機(本田鉄工製DE−50D)を用いて押出成形し、次いで、一次養生(70℃、12時間)およびオートクレーブ養生(170℃、10時間)を行い、平板状のセメント成形物を作製した。
〔押出成形条件〕
系内温度:30℃
真空度:−0.096MPa以下
ダイスの大きさ:40mm×10mm
得られたセメント成形物を一定体積になるように裁断し、島津製作所(株)社製の上皿電子分析天秤AX200および比重測定キットSMK−301を用いて、その比重を測定したところセメント成形物の比重が1.45であった。
【0095】
〔比較例6〕
実施例11において中空微粒子を添加しない以外は実施例11と同様にしてセメント成形物を得た。得られたセメント成形物の比重は1.70であった。
【0096】
〔比較例7〕
実施例11において中空微粒子を比較例2で得られた熱膨張性微小球の動的耐久性評価のために作製した中空微粒子(平均粒子径38μm、真比重0.031g/cc)6.2重量部に変更を使用する以外は、実施例11と同様にして、セメント成形物を得た。得られたセメント成形物の比重は1.63であった。
実施例11のセメント組成物では、得られる成形物の比重が低く、中空微粒子の混合および押出成形時に発生する応力による破壊に対する耐久性が優れ、軽量化効果が発揮され、優れた性能を有することが明らかである。
【0097】
〔実施例12〕
(セラミック組成物およびセラミック成形物の製造)
無機成分でセラミック材料として用いられるコージェライト300重量部、セルロース系バインダー15重量部、実施例3で得られた熱膨張性微小球の動的耐久性評価のために作製した微粒子付着中空微粒子(平均粒子径30μm、真比重0.13g/cc)26重量部および水90重量部を混練して、セラミック組成物を調製した。
得られたセラミック組成物を押出成形法により賦形して、未焼成のセラミック成形物を成形した。
実施例11と同様にして、得られたセラミック成形物の比重を測定したところセラミック成形物の比重が1.3であった。
【0098】
〔比較例8〕
実施例12において中空微粒子を添加しない以外は実施例12と同様にしてセラミック成形物を得た。得られたセラミック成形物の比重は2.3であった。
【0099】
〔比較例9〕
実施例12において中空微粒子を比較例2で得られた熱膨張性微小球の動的耐久性評価のために作製した微粒子付着中空微粒子(平均粒子径38μm、真比重0.13g/cc)26重量部に変更を使用する以外は、実施例12と同様にして、セラミック成形物を得た。得られたセラミック成形物の比重は2.2であった。
上記結果より、本発明の中空微粒子およびセラミック材料等の無機成分を含むセラミック組成物は、優れた性能を有することが明らかである。