特許第5943599号(P5943599)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5943599
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】繊維用消臭剤及び消臭性繊維製品
(51)【国際特許分類】
   D06M 11/79 20060101AFI20160621BHJP
   D06M 11/44 20060101ALI20160621BHJP
   D06M 13/328 20060101ALI20160621BHJP
   D06M 15/53 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   D06M11/79
   D06M11/44
   D06M13/328
   D06M15/53
【請求項の数】4
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2011-284004(P2011-284004)
(22)【出願日】2011年12月26日
(65)【公開番号】特開2013-133552(P2013-133552A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226161
【氏名又は名称】日華化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100086276
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 維夫
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(72)【発明者】
【氏名】竹内 斉久
(72)【発明者】
【氏名】米元 篤史
【審査官】 斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−107144(JP,A)
【文献】 特開2005−076131(JP,A)
【文献】 特開2005−207002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 10/00 − 16/00
D06M 19/00 − 23/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)二酸化ケイ素又は二酸化ケイ素と酸化亜鉛との複合物の微粒子と、(B)下記一般式(1)で表される化合物であって、平均分子量が400〜50,000でありかつ化合物の分子量に対して40質量%以上のエチレンオキシ基を含む化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種と、を含有してなる繊維製品付与用消臭剤。
【化1】
(上式中、R、R、Rは、同一であっても相異なっていてもよく、それぞれ、水素、炭素数1〜22のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基又は−(AO)Hを表し、Rは炭素数2〜10のアルキレン基を表し、mは0、1又は2を表し、mが2のとき複数のRは同一であっても相異なっていてもよく、また複数のRは同一であっても相異なっていてもよく、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、nは(AO)で表されるアルキレンオキシ基の平均付加モル数であって2〜550を表し、複数のAは同一であっても相異なっていてもよい
【請求項2】
該(B)/該(A)の質量比が5/2000〜10/20である、請求項1に記載の繊維製品付与用消臭剤。
【請求項3】
一般式(1)で表される化合物においてR、Rの少なくとも一方が−(AO)Hであり、Rが−(AO)H又は水素であり、Rが炭素数2〜4のアルキレン基であり、mが0又は1であることを特徴とする請求項1または2に記載の繊維製品付与用消臭剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載した繊維製品付与用消臭剤を含む処理液で処理してなる消臭性繊維製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維用消臭剤及び消臭性繊維製品に関する。本発明は、特に、製品安定性に優れ、各種機能加工薬剤との相溶性に優れる繊維用消臭剤、及び該消臭剤で処理して得られる消臭性繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、消臭性能を有する成分として、特許文献1に記載されているような金属酸化物と二酸化ケイ素との複合物が知られている。その中でも消臭性能、価格、安全性の観点から、酸化亜鉛と二酸化ケイ素との複合物が広く使用されており、この複合物を含む繊維用消臭剤が上市されている。
【0003】
しかし、この複合物は水溶液中での分散性が悪いため、この複合物を含む繊維用消臭剤は製品安定性に問題があり、このような製品安定性の悪い繊維用消臭剤を繊維製品に処理した場合、繊維製品に白化や処理斑が生じるという問題もある。また、経済活動のグローバル化の中で繊維用消臭剤の海外への輸出や長距離輸送の頻度が高くなっており、ますます長期間の製品安定性が必要になっている。
【0004】
特許文献2では、酸化亜鉛と二酸化ケイ素との複合物の分散性を向上させるためにポリカルボン酸又はその塩といったアニオン性の分散剤を用いた繊維用消臭剤が提案されている。
【0005】
近年、繊維製品に対する高機能化のニーズの高まりから、繊維処理時に各種の繊維機能加工剤を併用するケースが増えてきているが、特許文献2のアニオン性の分散剤を使用した繊維用消臭剤にカチオン性の機能加工剤を併用した場合は相容性が不良となり、繊維製品に処理斑が生じる問題があり、併用することができる機能加工剤の種類が制限されるという問題がある。この問題を解消するために、酸化亜鉛と二酸化ケイ素との複合物を非イオン界面活性剤で分散させた場合、各種機能加工剤との相容性は良好となるが、製品安定性が悪く、繊維用消臭剤を長期間保存することが困難になるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平7−51486号公報
【特許文献2】特開2006−336176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、製品安定性に優れ、各種機能加工剤との相溶性にも優れる繊維用消臭剤及びこれを用いて得られる消臭性繊維製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、二酸化ケイ素または二酸化ケイ素と酸化亜鉛との複合物の微粒子を、特定の化合物を用いて分散を行うことで、製品安定性に優れ、各種機能加工剤との相溶性にも優れる繊維用消臭剤が得られることを見いだし、本発明を完成するに至ったものである。
【0009】
すなわち、本発明は、(A)二酸化ケイ素又は二酸化ケイ素と酸化亜鉛との複合物の微粒子と、(B)下記一般式(1)及び一般式(2)で表される化合物であって、平均分子量が400〜50,000でありかつ化合物の分子量に対して40質量%以上のエチレンオキシ基を含む化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種と、を含有してなる繊維用消臭剤を提供する。
【0010】
【化1】
【0011】
(上式中、R、R、Rは、同一であっても相異なっていてもよく、それぞれ、水素、炭素数1〜22のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基又は−(AO)Hを表し、Rは炭素数2〜10のアルキレン基を表し、mは0、1又は2を表し、mが2のとき複数のRは同一であっても相異なっていてもよく、また複数のRは同一であっても相異なっていてもよく、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、nは(AO)で表されるアルキレンオキシ基の平均付加モル数であって2〜550を表し、複数のAは同一であっても相異なっていてもよい)
【0012】
【化2】
【0013】
(上式中、Rは炭素数1〜21のアルキル基又は炭素数2〜21のアルケニル基を表し、Rは水素、炭素数1〜3のアルキル基又は−(AO)Hを表し、Rは水素、炭素数1〜22のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基又は−(AO)Hを表し、Rは炭素数2〜10のアルキレン基を表し、oは0、1又は2を表し、oが2のとき複数のRは同一であっても相異なっていてもよく、また複数のRは同一であっても相異なっていてもよく、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、pは(AO)で表されるアルキレンオキシ基の平均付加モル数であって2〜550を表し、複数のAは同一であっても相異なっていてもよい)
【0014】
本発明においては、一般式(1)で表される化合物のうちではR、Rの少なくとも一方が−(AO)Hであり、Rが−(AO)H又は水素であり、Rが炭素数2〜4のアルキレン基であり、mが0又は1である化合物が好ましく、一般式(2)で表される化合物のうちではRが−(AO)Hであり、Rが炭素数2〜4のアルキレン基であり、oが0又は1である化合物が好ましい。
【0015】
本発明は、また、前記繊維用消臭剤を含む処理液で処理してなる消臭性繊維製品を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、製品安定性に優れ、各種機能加工剤との相溶性にも優れる、良好な消臭性能を持った、繊維用消臭剤が得られる。この繊維用消臭剤は、長期間の保存が可能であるため、海外への輸出にも対応することが可能である。
【0017】
また、上記本発明の繊維用消臭剤を含む処理液によれば、用いる機能加工剤のイオン性に関わらずそれらと併用処理することが可能となり、一浴処理によって高機能性繊維製品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0019】
本発明に用いる(A)成分中の二酸化ケイ素と酸化亜鉛との複合物としては、特許文献2の段落0016に挙げられているような、二酸化ケイ素と酸化亜鉛との質量比が二酸化ケイ素:酸化亜鉛=1:10〜10:1で、無定形の化合物(複合物)になったものであり、例えば、ケイ酸ナトリウムの水溶液と亜鉛の水溶性塩の水溶液とを混合し、反応させることによって得られたゲルを乾燥させることにより得ることができる。あるいは、例えば、特許文献1に記載の製造方法に従って、ケイ酸ナトリウムの水溶液と亜鉛の水溶性塩の水溶液とを反応系内の水分含有量が85%以上となるように混合し、反応させて、ゲル状の二酸化ケイ素と酸化亜鉛の無定形複合物スラリーを調製し、このスラリーを母液として、そのpHを6.5〜8.0に保ちながら、新たにケイ酸ナトリウムの水溶液と亜鉛の水溶性塩の水溶液とを同時に別々に徐々に添加し、生成するゲルを乾燥することによって得ることができる。
【0020】
ケイ酸ナトリウムとしては、例えば、オルトケイ酸ソーダ、メタケイ酸ソーダ、水ガラスなどを挙げることができる。あるいは、二酸化ケイ素を炭酸ナトリウムまたは水酸化ナトリウムと加熱溶融することにより得ることができる。
【0021】
亜鉛の水溶性塩としては、例えば、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、塩化亜鉛などを挙げることができる。
【0022】
また、二酸化ケイ素と酸化亜鉛の複合物としては市販品を使用することができ、例えば、シュークレンズシリーズ(ラサ工業(株)製)などを挙げることができる。
【0023】
このような(A)成分中の二酸化ケイ素と酸化亜鉛との複合物は、それらのうちの1種を使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
本発明において、(A)成分の配合量は、特に制限されないが、繊維用消臭剤中に0.5〜60質量%であることが好ましい。(A)成分が0.5質量%未満では、繊維用消臭剤としての輸送の際に効率が低く、また得られる消臭性繊維製品の消臭性能が不十分になる傾向にある。一方、60質量%を超えると、繊維用消臭剤の製品安定性が低下する傾向にある。
【0025】
本発明に用いる(B)成分は、一般式(1)及び一般式(2)で表される化合物であって、平均分子量が400〜50,000でありかつ化合物の分子量に対して40質量%以上のエチレンオキシ基を含む化合物のうちの少なくとも1種からなる。
【0026】
一般式(1)で表される化合物において、R、R、Rで表される炭素数1〜22のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基は直鎖であっても分岐鎖であってもよい。
【0027】
で表される炭素数2〜10のアルキレン基の例としては、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基などを挙げることができる。この中でも、繊維用消臭剤の製品安定性の観点から、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基であることが好ましい。
【0028】
で表される炭素数2〜4のアルキレン基の例としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などを挙げることができる。この中でも、繊維用消臭剤の製品安定性の観点から、エチレン基、ピロピレン基が好ましく、エチレン基であることがより好ましい。
【0029】
mは0、1又は2であるが、原料の入手しやすさの観点から、mは0又は1であるのが好ましい。
【0030】
一般式(1)で表される化合物において、mが0の場合、繊維用消臭剤の製品安定性の観点から、R、Rのうちの少なくとも一方が−(AO)Hであることが好ましく、R、Rのうちの一方が−(AO)Hであり、他方が炭素数1〜22のアルキル基又は炭素数2〜22のアルケニル基であることがより好ましい。−(AO)Hにおいては、nは8〜220であることが好ましく、8〜110であることがより好ましい。R、Rが炭素数1〜22のアルキル基又は炭素数2〜22のアルケニル基である場合は、繊維用消臭剤の製品安定性の観点から炭素数が12〜18であることが好ましい。
【0031】
一般式(1)で表される化合物において、mが1又は2の場合、繊維用消臭剤の製品安定性の観点から、R、Rの少なくとも一方が−(AO)Hであり、Rが−(AO)H又は水素であることが好ましく、R、R、Rのすべてが−(AO)Hであることがより好ましい。−(AO)Hにおいては、nは5〜110であることが好ましく、5〜55であることがより好ましい。R、Rが炭素数1〜22のアルキル基又は炭素数2〜22のアルケニル基である場合は、繊維用消臭剤の製品安定性の観点から炭素数が12〜18であることが好ましい。
【0032】
一般式(1)で表される化合物は、例えば、常法に従って、下記一般式(3)で表される脂肪族アミンにエチレンオキサイドを含むアルキレンオキサイドを反応させるか又はエチレンオキシ基を含むポリオキシアルキレングリコールを反応させることにより得ることができる。
【0033】
【化3】
【0034】
(上式中、R、R10、R11は、同一であっても相異なっていてもよく、それぞれ、水素、炭素数1〜22のアルキル基又は炭素数2〜22のアルケニル基を表し、R12は水素を表し、R、mは一般式(1)に規定したものと同一のものを表す)
【0035】
一般式(1)で表される化合物としては、市販品を使用することも可能であり、例えば、エソミンシリーズ、エソデュオミンシリーズ(以上ライオン(株)製));テトロニックシリーズ((株)ADEKA製);アミートシリーズ(花王(株)製)などを使用することができる。
【0036】
一般式(2)で表される化合物において、Rで表される炭素数1〜21のアルキル基、炭素数2〜21のアルケニル基は直鎖であっても分岐鎖であってもよい。この中でも、繊維用消臭剤の製品安定性の観点から炭素数が11〜17であることが好ましい。
【0037】
は水素、炭素数1〜3のアルキル基又は−(AO)Hであるが、繊維用消臭剤の製品安定性の観点から水素又は−(AO)Hであることが好ましい。
【0038】
は水素、炭素数1〜22のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基又は−(AO)Hであるが、炭素数1〜22のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基は直鎖であっても分岐鎖であってもよい。
【0039】
で表される炭素数2〜10のアルキレン基の例としては、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基などを挙げることができる。この中でも、繊維用消臭剤の製品安定性の観点からエチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基であることが好ましい。
【0040】
で表される炭素数2〜4のアルキレン基の例としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などを挙げることができる。この中でも、繊維用消臭剤の製品安定性の観点からエチレン基、ピロピレン基が好ましく、エチレン基であることがより好ましい。
【0041】
oは0、1又は2であるが、原料の入手しやすさの観点から、oは0又は1であることが好ましい。
【0042】
一般式(2)で表される化合物において、繊維用消臭剤の製品安定性の観点から、Rは−(AO)Hであることが好ましい。oが0の場合は、pは8〜220であることが好ましく、8〜110であることがより好ましい。oが1又は2の場合には、pは5〜220であることが好ましく、5〜110であることがより好ましい。Rが炭素数1〜22のアルキル基又は炭素数2〜22のアルケニル基である場合は、繊維用消臭剤の製品安定性の観点から炭素数が12〜18であることが好ましい。
【0043】
一般式(2)で表される化合物は、例えば、常法に従って、下記一般式(4)で表される脂肪酸と下記一般式(5)又は一般式(6)で表されるアミンとを反応させるか又は下記一般式(4)で表される脂肪酸と下記一般式(7)又は一般式(8)で表されるアミンとを反応させて得られるアミド化合物に、エチレンオキサイドを含むアルキレンオキサイドを反応させるか又はエチレンオキシ基を含むポリオキシアルキレングリコールを反応させることにより得ることができる。
【0044】
13COOH (4)
【0045】
(上式中、R13は炭素数1〜21のアルキル基又は炭素数2〜21のアルケニル基を表す)
【0046】
【化4】
【0047】
(上式中、R14は水素、炭素数1〜3のアルキル基又は−(AO)Hを表し、A、pは一般式(2)に規定したものと同一のものを表す)
【0048】
【化5】
【0049】
(上式中、R15は水素、炭素数1〜3のアルキル基又は−(AO)Hを表し、R16は水素、炭素数1〜22のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基又は−(AO)Hを表し、R17は−(AO)Hを表し、R、A、o、pは一般式(2)に規定したものと同一のものを表す)
【0050】
【化6】
【0051】
(上式中、R18は水素、炭素数1〜3のアルキル基を表す)
【0052】
【化7】
【0053】
(上式中、R19は水素又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、R20は水素、炭素数1〜22のアルキル基又は炭素数2〜22のアルケニル基を表し、R、oは一般式(2)に規定したものと同一のものを表す)
【0054】
一般式(2)で表される化合物としては、市販品を使用することも可能であり、例えば、エソマイドシリーズ(ライオン(株)製))などを使用することができる。
【0055】
本発明に用いる(B)成分の平均分子量は400〜50,000であるが、1,000〜20,000であることが好ましく、1,000〜10,000であることがより好ましい。分子量が400未満の場合には繊維用消臭剤の製品安定性が不良になり、50,000より大きい場合には繊維用消臭剤の製品安定性が不良になることに加え、繊維用消臭剤の粘度が高くなって使用しにくくなる。この平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。
【0056】
また、本発明に用いる(B)成分は、化合物の分子量に対して40質量%以上のエチレンオキシ基を含有するが、70質量%以上含有するのが好ましく、80質量%以上含有するのがより好ましい。エチレンオキシ基の含有量が前述の範囲外である場合は、繊維用消臭剤の製品安定性が不良になる。
【0057】
このような(B)成分は、1種を使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
本発明において、(B)成分の配合量は、特に制限されないが、繊維用消臭剤中に0.05〜10質量%であることが好ましい。(B)成分が0.05質量%未満では、繊維用消臭剤の製品安定性が不十分になる傾向にある。一方、10質量%を超えると、繊維製品の洗濯耐久性が不十分となる傾向にある。
【0059】
また、本発明の繊維用消臭剤には、繊維用消臭剤の製品安定性を向上させる目的でアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤を併用してもよい。
【0060】
併用することができるアニオン界面活性剤としては、特に制限はなく、例えば、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8〜24のアルコール又はアルケノールのアニオン化物、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8〜24のアルコール又はアルケノールのアルキレンオキサイド付加物のアニオン化物、多環フェノール類のアルキレンオキサイド付加物のアニオン化物、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8〜44の脂肪族アミンのアルキレンオキサイド付加物のアニオン化物、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8〜44の脂肪酸アミドのアルキレンオキサイド付加物のアニオン化物、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8〜24の脂肪酸のアルキレンオキサイド付加物のアニオン化物、油脂類のスルホン化物などが挙げられる。これらのアニオン界面活性剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
併用することができるカチオン界面活性剤としては、特に制限はなく、例えば、炭素数8〜24のモノアルキルトリメチルアンモニウム塩、炭素数8〜24のジアルキルジメチルアンモニウム塩、炭素数8〜24のモノアルキルアミン酢酸塩、炭素数8〜24のジアルキルアミン酢酸塩、炭素数8〜24のアルキルイミダゾリン4級塩などが挙げられる。これらのカチオン界面活性剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
(B)成分とアニオン界面活性剤との配合比率(質量基準)は、(B)成分:アニオン界面活性剤=75:25〜100:0の範囲であるのがよく、より好ましくは100:0である。アニオン界面活性剤が25質量%を超える場合、カチオン系機能加工剤との相溶性が低下する傾向がある。
【0063】
(B)成分とカチオン界面活性剤との配合比率(質量基準)は、(B)成分:カチオン界面活性剤=75:25〜100:0の範囲であるのがよく、より好ましくは100:0である。カチオン界面活性剤が25質量%を超える場合、アニオン系機能加工剤との相溶性が低下する傾向がある。
【0064】
本発明の繊維用消臭剤は、例えば、(A)成分を(B)成分を用いて水性媒体に分散させることにより、あるいは(A)成分と(B)成分と水性媒体とを連続的に分散処理を行うことにより得ることができる。
【0065】
水性媒体としては、水又は水と水に混和する親水性溶剤との混合溶媒であることが好ましい。親水性溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、へキシレングリコール、グリセリン、ブチルグリコール、ソルフィットなどが挙げられる。
【0066】
(A)成分を水性媒体に分散させるために、従来公知の分散機を使用してもよい。従来公知の分散機としては、特に制限はなく、例えば、マイルダー、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、ホモミキサー、ビーズミル、パールミル、ダイノーミル、アスペックミル、バスケットミル、ボールミル、ナノマイザー、アルチマイザー、スターバーストなどの分散機を挙げることができる。これらの分散機は、1種を使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0067】
得られる繊維用消臭剤の粒子の平均粒径は、0.05〜10μmであることが好ましく、0.1〜3μmがより好ましく、0.1〜2μmがさらにより好ましい。平均粒径が10μmを超える場合、繊維用消臭剤の製品安定性が低下する傾向がある。一方、平均粒径が0.05μmより小さい場合、繊維用消臭剤の製品安定性が低下する傾向があることに加え、消臭性能が低下する傾向がある。この平均粒径は、レーザー回折/散乱法により測定することができる。
【0068】
また、本発明の繊維用消臭剤には、必要に応じて、(A)成分以外の従来公知の消臭剤、(B)成分以外の非イオン界面活性剤、抗菌剤、柔軟剤、吸水剤、撥水撥油剤、平滑剤、浸透剤、分散均染剤、制電剤、キレート剤、酸化防止剤、消泡剤、溶剤、合成樹脂(アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、グリオキザール樹脂、メラミン樹脂など)、架橋剤、難燃防炎剤、凍結安定剤、艶消し剤、顔料、染料、フィックス剤、湿潤剤、光安定剤、紫外線吸収剤、増粘剤(PEG、ポリアクリルアミド、ザンタンガム、ポリアクリル酸ソーダ、CMC、PVAなど)、製膜助剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、黄変防止剤などを、本発明の効果を阻害しない範囲で配合してもよい。また、本発明の繊維用消臭剤を繊維製品に加工する前後にあるいは同時に、これらの薬剤で処理を行ってもよい。
【0069】
本発明によれば、前記(A)成分と前記(B)成分とを含有する繊維用消臭剤を含む処理液を繊維製品に付与することによって消臭性繊維製品を得ることができる。本発明の繊維用消臭剤を含む処理液を繊維製品に付与する方法としては、特に制限されないが、浸漬法、パディング法、コーティング法、スプレー法等の公知の方法を適宜用いることができる。
【0070】
浸漬処理で付与する場合は、処理液中の(A)成分の濃度が、例えば、0.01〜10%o.w.f.の範囲であることが好ましい。パディング処理の場合は、処理液中の(A)成分の濃度が、例えば、0.01〜10質量%の範囲であることが好ましい。
【0071】
繊維製品に浸漬法、パディング法で付与する場合、繊維製品に(A)成分の担持量が0.01〜10%o.w.f.となるように付与して使用することができる。(A)成分の担持量が0.01%o.w.f.未満では、得られる消臭性繊維製品の消臭性能が不十分となる傾向にあり、他方10%o.w.f.を超えると、消臭性能の向上が少なく、得られる消臭性繊維製品が白化し外観が損なわれる傾向にある。
【0072】
浸漬法の場合、通常一般に使用される染色機械、即ちウインス、液流染色機、ジッカー、チーズ染色機、かせ染色機等を用いて、所定の温度で所定の時間処理を行ったのち、脱水し、乾燥することで、消臭性繊維製品を得ることができる。パディング法の場合、繊維製品を処理液に浸漬し、マングルなどを用いて所定のピクアップ量に調整したのち、乾燥することで、消臭性繊維製品を得ることができる。
【0073】
コーティングの場合、例えば、本発明の(A)成分と(B)成分を含む処理液をバインダーに混合したものを使用することができる。この場合、バインダーに対して(A)成分が、例えば、0.1〜10質量%の範囲であることが好ましい。スプレーの場合は、(A)成分の濃度が、例えば、10〜90質量%の範囲の溶液を使用してスプレー処理することが好ましい。
【0074】
繊維製品にコーティング、スプレーにて塗布する場合、例えば、(A)成分が0.1〜20g/mとなるように付与して使用することができる。0.1g/m未満では十分な消臭性能が発揮され難い傾向があり、20g/mを超えて使用しても消臭性能の向上効果は少なく、経済的ではない傾向がある。
【0075】
コーティングの場合、刷毛塗り、ローラー塗装、フロー・コーター塗装、電着塗装などで塗装し、乾燥することで消臭性繊維製品を得ることができる。
【0076】
乾燥条件に特に制限はなく、例えば、0〜300℃で5秒〜数日間程度乾燥させればよい。必要に応じて、乾燥後に100℃以上の温度で10秒〜10分間程度加熱処理(キュアリング)することもかまわない。
【0077】
本発明の繊維用消臭剤を含む処理液を付与することができる繊維製品の素材としては、特に制限されないが、例えば、綿、絹、ウール等の天然繊維、ポリアミド系繊維、ポリウレタン系繊維、ポリエステル系繊維、ポリエチレン系繊維、ポリプロピレン系繊維、アクリル系繊維等の合成繊維、アセテート系繊維等の半合成繊維、レーヨン等の再生繊維、これらの複合繊維、混紡繊維などからなる繊維製品を挙げることができる。
【0078】
また、繊維製品の形態に特に制限はなく、例えば、短繊維、長繊維、糸、織物、編物、わた、スライバー、トップ、不織布などを挙げることができる。
【実施例】
【0079】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
【0080】
調製例1 (A)成分(二酸化ケイ素/酸化亜鉛複合物)の調製
まず、硫酸亜鉛7水和物19.8g(0.069mol)を水50mlに溶解した。一方、3号珪酸ソーダ(モル比:NaO/SiO=1/3、NaO含有量:7.0質量%、SiO含有量:21.0質量%)50g(NaO:0.056mol、SiO:0.175mol)を水170mlに溶解した。これらの溶液を混合し、20〜30℃で90分間反応させてゲルのスラリーを得た。得られたゲルのスラリーのpHは6.8であった。
【0081】
得られたゲルのスラリー200mlを3Lの容器にとり、40℃で攪拌しながら、硫酸亜鉛水溶液(0.67mol/L)1Lと、3号珪酸ソーダ水溶液(NaO:0.7mol/L、SiO:2.1mol/L)1Lとを、それぞれ5.5ml/分の速さで同時に滴下した後、40℃で60分間反応させた。反応中のスラリーのpHは7.5であった。その後、このスラリー200mlをブフナー漏斗で吸引濾過し、水100mlで5回洗浄し、110℃で乾燥した後に粉砕して白色粉末状の(A)成分を得た。得られた(A)成分を蛍光X線分析計にて測定した結果、二酸化ケイ素63質量%、酸化亜鉛22質量%、及び含水率が15質量%であった。
【0082】
合成例1
オートクレーブにステアリルアミン269質量部(1.0モル)を仕込み、窒素ガス雰囲気下、温度150〜160℃、圧力0.39MPa以下にてエチレンオキサイド88質量部(2.0モル)を付加させ、ステアリルジエタノールアミンを得た。
【0083】
得られたステアリルジエタノールアミン357質量部(1.0モル)、水酸化ナトリウム0.5質量部をオートクレーブ仕込み、窒素ガス雰囲気下120℃まで加熱昇温した。次いで、エチレンオキサイド92.4質量部(2.1モル)を温度150〜160℃、圧力0.39MPa以下にて反応させた。反応終了後冷却し、氷酢酸にてpH7に中和してステアリルアミンのエチレンオキサイド4.1モル付加物を得た。
【0084】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー(株)製高速GPC「HLC−8220型」、標準物質:ポリエチレングリコール、溶媒:THF、流速:0.25ml/min、カラム:TSK−GEL SuperHZ(東ソー(株)製)、注入量:5μl、カラム温度:40℃、検出器:RI、UV(254nm))にて重量平均分子量を測定したところ450であった。エチレンオキシ基の割合は40質量%であった。
【0085】
合成例2
ステアリルジエタノールアミン357質量部(1.0モル)に対して水酸化ナトリウム0.9質量部、エチレンオキサイド572質量部(13.0モル)とした以外は合成例1と同様に操作して、ステアリルアミンのエチレンオキサイド15モル付加物を得た。
この付加物の重量平均分子量は928であり、エチレンオキシ基の割合は71質量%であった。
【0086】
合成例3
ステアリルジエタノールアミン357質量部(1.0モル)に対して水酸化ナトリウム2.5質量部、エチレンオキサイド2112質量部(48.0モル)とした以外は合成例1と同様に操作して、ステアリルアミンのエチレンオキサイド50モル付加物を得た。
この付加物の重量平均分子量は2,468であり、エチレンオキシ基の割合は89質量%であった。
【0087】
合成例4
ステアリルジエタノールアミン357質量部(1.0モル)に対して水酸化ナトリウム2.6質量部、エチレンオキサイド1980質量部(45.0モル)とプロピレンオキサイド232質量部(4.0モル)の混合物とした以外は合成例1と同様に操作して、ステアリルアミンのエチレンオキサイド47モルプロピレンオキサイド4モル付加物を得た。
この付加物の重量平均分子量は2,500であり、エチレンオキシ基の割合は80質量%であった。
【0088】
合成例5
ステアリルジエタノールアミン357質量部(1.0モル)に対して水酸化ナトリウム2.5質量部、エチレンオキサイド1672質量部(38.0モル)とプロピレンオキサイド464質量部(8.0モル)の混合物とした以外は合成例1と同様に操作して、ステアリルアミンのエチレンオキサイド40モルプロピレンオキサイド8モル付加物を得た。
この付加物の重量平均分子量は2,450であり、エチレンオキシ基の割合は70質量%であった。
【0089】
合成例6
ステアリルジエタノールアミン357質量部(1.0モル)に対して水酸化ナトリウム2.6質量部、エチレンオキサイド924質量部(21.0モル)とプロピレンオキサイド1242.9質量部(21.4モル)の混合物とした以外は合成例1と同様に操作して、ステアリルアミンのエチレンオキサイド25モルプロピレンオキサイド21.4モル付加物を得た。
この付加物の重量平均分子量は2,520であり、エチレンオキシ基の割合は40質量%であった。
【0090】
合成例7
ステアリルジエタノールアミン357質量部(1.0モル)に対して水酸化ナトリウム10.0質量部、エチレンオキサイド9531.1質量部(216.6モル)とした以外は合成例1と同様に操作して、ステアリルアミンのエチレンオキサイド218.6モル付加物を得た。
この付加物の重量平均分子量は9,800であり、エチレンオキシ基の割合は97質量%であった。
【0091】
合成例8
ステアリルジエタノールアミン357質量部(1.0モル)に対して水酸化ナトリウム19.3質量部、エチレンオキサイド18931質量部(430.3モル)とした以外は合成例1と同様に操作して、ステアリルアミンのエチレンオキサイド432.3モル付加物を得た。
この付加物の重量平均分子量は19,200であり、エチレンオキシ基の割合は99質量%であった。
【0092】
合成例9
ステアリルアミンに代えてドデシルアミン185質量部(1.0モル)を使用してドデシルジエタノールアミンを合成し、ドデシルジエタノールアミン273質量部(1.0モル)に対して水酸化ナトリウム2.4質量部、エチレンオキサイド2112質量部(48.0モル)とした以外は合成例1と同様に操作して、ドデシルアミンのエチレンオキサイド50モル付加物を得た。
この付加物の重量平均分子量は2,385であり、エチレンオキシ基の割合は92質量%であった。
【0093】
合成例10
ステアリルアミンに代えてデシルアミン157質量部(1.0モル)を使用してデシルジエタノールアミンを合成し、デシルジエタノールアミン245質量部(1.0モル)に対して水酸化ナトリウム2.6質量部、エチレンオキサイド2323.1質量部(52.8モル)とした以外は合成例1と同様に操作して、デシルアミンのエチレンオキサイド54.8モル付加物を得た。
この付加物の重量平均分子量は2,568であり、エチレンオキシ基の割合は94質量%であった。
【0094】
合成例11
ステアリルアミンに代えてアミノエチルエタノールアミン104質量部(1.0モル)を使用してテトラエタノールエチレンジアミンを合成し、テトラエタノールエチレンジアミン236質量部(1.0モル)に対して水酸化ナトリウム3質量部、エチレンオキサイド1936.0質量部(44.0モル)とプロピレンオキサイド841質量部(14.5モル)の混合物とした以外は合成例1と同様に操作して、エチレンジアミンのエチレンオキサイド48モルプロピレンオキサイド14.5モル付加物を得た。
この付加物の重量平均分子量は3,000であり、エチレンオキシ基の割合は70質量%であった。
【0095】
合成例12
テトラエタノールエチレンジアミン236質量部(1.0モル)に対して水酸化ナトリウム3質量部、エチレンオキサイド2224.0質量部(50.5モル)とプロピレンオキサイド540質量部(9.3モル)の混合物とした以外は合成例11と同様に操作して、エチレンジアミンのエチレンオキサイド54.5モルプロピレンオキサイド9.3モル付加物を得た。
この付加物の重量平均分子量は3,000であり、エチレンオキシ基の割合は70質量%であった。
【0096】
合成例13
ステアリルアミンに代えてアミノエチルエタノールアミン104質量部(1.0モル)を使用してテトラエタノールエチレンジアミンを合成し、テトラエタノールエチレンジアミン236質量部(1.0モル)に対して水酸化ナトリウム9質量部、エチレンオキサイド7964.0質量部(181.0モル)とプロピレンオキサイド870質量部(15.0モル)の混合物とした以外は合成例1と同様に操作して、エチレンジアミンのエチレンオキサイド185モルプロピレンオキサイド15モル付加物を得た。
この付加物の重量平均分子量は9000であり、エチレンオキシ基の割合は90質量%であった。
【0097】
合成例14
テトラエタノールエチレンジアミン236質量部(1.0モル)に対して水酸化ナトリウム48.1質量部、エチレンオキサイド43023.2質量部(977.8モル)とプロピレンオキサイド4802.4質量部(82.8モル)の混合物とした以外は合成例11と同様に操作して、エチレンジアミンのエチレンオキサイド981.8モルプロピレンオキサイド82.8モル付加物を得た。
この付加物の重量平均分子量は48,000であり、エチレンオキシ基の割合は90質量%であった。
【0098】
合成例15
反応容器にラウリン酸200質量部(1.0モル)、3−(2−ヒドロキシエチルアミノ)プロピルアミン118質量部(1.0モル)を仕込み、窒素気流下、160〜170℃で5時間反応させて3−ラウリルアミド−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピルアミンを得た。
【0099】
3−ラウリルアミド−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピルアミン300質量部(1.0モル)に対して水酸化ナトリウム3.0質量部、エチレンオキサイド2699.8質量部(61.4モル)とした以外は合成例1と同様に操作して、3−(ラウリルアミド)プロピルアミンのエチレンオキサイド62.4モル付加物を得た。
この付加物の重量平均分子量は3,000であり、エチレンオキシ基の割合は91質量%であった。
【0100】
比較合成例1
合成例1と同様に操作してステアリルアミン269質量部(1.0モル)のエチレンオキサイド2.0モル付加物を得た。
この付加物の重量平均分子量は357であり、エチレンオキシ基の割合は25質量%であった。
【0101】
比較合成例2
ステアリルジエタノールアミンに代えてN−メチルジエタノールアミン119質量部(1.0モル)、水酸化ナトリウム0.4質量部、エチレンオキサイド231.1質量部(5.3モル)とした以外は合成例1と同様に操作して、N−メチルアミンの7.3モル付加物を得た。
この付加物の重量平均分子量は350であり、エチレンオキシ基の割合は91質量%であった。
【0102】
比較合成例3
ステアリルジエタノールアミン357質量部(1.0モル)に対して水酸化ナトリウム55.0質量部、エチレンオキサイド54670質量部(1242.5モル)とした以外は合成例1と同様に操作して、ステアリルアミンのエチレンオキサイド1244.5モル付加物を得た。
この付加物の重量平均分子量は55,000であり、エチレンオキシ基の割合は99.5質量%であった。
【0103】
比較合成例4
ステアリルジエタノールアミン357質量部(1.0モル)に対して水酸化ナトリウム2.2質量部、エチレンオキサイド792.0質量部(18.0モル)とプロピレンオキサイド1363.0質量部(23.5モル)の混合物とした以外は合成例1と同様に操作して、ステアリルアミンのエチレンオキサイド20モルプロピレンオキサイド23.5モル付加物を得た。
この付加物の重量平均分子量は2,500であり、エチレンオキシ基の割合は35質量%であった。
【0104】
比較合成例5
テトラエタノールエチレンジアミン236質量部(1.0モル)に対して水酸化ナトリウム0.4質量部、エチレンオキサイド114g(2.6モル)とした以外は合成例11と同様に操作して、エチレンジアミンのエチレンオキサイド6.6モル付加物を得た。
この付加物の重量平均分子量は350であり、エチレンオキシ基の割合は83質量%であった。
【0105】
比較合成例6
テトラエタノールエチレンジアミン236質量部(1.0モル)に対して水酸化ナトリウム2.5質量部、エチレンオキサイド699.2質量部(15.9モル)とプロピレンオキサイド1564.8質量部(27.0モル)の混合物とした以外は合成例11と同様に操作して、エチレンジアミンのエチレンオキサイド19.9モルプロピレンオキサイド27モル付加物を得た。
この付加物の重量平均分子量は2500であり、エチレンオキシ基の割合は35質量%であった。
【0106】
比較合成例7
テトラエタノールエチレンジアミン236質量部(1.0モル)に対して水酸化ナトリウム55.2質量部、エチレンオキサイド44000質量部(1000モル)とプロピレンオキサイド10938.8質量部(188.6mol)の混合物とした以外は合成例11と同様に操作して、エチレンジアミンのエチレンオキサイド1004モルプロピレンオキサイド188.6モル付加物を得た。
この付加物の重量平均分子量は55,000であり、エチレンオキシ基の割合は80質量%であった。
【0107】
比較合成例8
フェノール94質量部(1.0モル)と硫酸0.1質量部を反応容器に仕込み、撹拌しながら窒素ガス気流下にて加熱昇温し、110〜130℃でスチレンモノマー312質量部(3.0モル)を滴下し、125〜135℃で約3時間付加反応させ、その後冷却して褐色透明粘液状のトリスチレン化フェノールを得た。
【0108】
得られたトリスチレン化フェノール403質量部(1モル)に対して水酸化ナトリウム4.5質量部、エチレンオキサイド880質量部(20モル)とした以外は合成例11と同様に操作して、トリスチレン化フェノールのエチレンオキサイド20モル付加物を得た。
この付加物の重量平均分子量は1,280であり、エチレンオキシ基の割合は69質量%であった。
【0109】
実施例1
(A)成分として調製例1の化合物200質量部、(B)成分として合成例1の化合物30質量部、水670質量部を混合し、パールミルで平均粒径が0.5μmになるまで微粒子化した。平均粒径はレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(HORIBA社製「LA−920」)を用いて、繊維用消臭剤の積算体積粒度分布を測定し、積算体積が50%となる粒径(メジアン粒径)を平均粒径(μm)とした。この微粒子化物に、ヒドロキシエチルセルロース(商品名HEC SE−850、ダイセル化学工業(株)製)の3質量%水溶液100質量部を混合し、撹拌して均一として、繊維用消臭剤を得た。
【0110】
得られた繊維用消臭剤について製品安定性試験、薬剤相容性試験、消臭性試験、白化試験の評価を行った。また、60℃×20日製品安定性試験後の繊維用消臭剤について消臭性試験、白化試験の評価を行った。60℃×20日製品安定性試験後の繊維用消臭剤については、増粘や分離が認められるものについては、撹拌均一にしたものを使用して評価を行った。その結果を表1に示す。
【0111】
実施例2〜25、28〜30、参考例26,27及び比較例1〜14
実施例1の(A)成分、(B)成分を表1〜5に記載のものに代えた以外は実施例1と同様に操作して実施例2〜25、28〜30、参考例26,27及び比較例1〜14の繊維用消臭剤を得た。なお、実施例8、実施例9、実施例29においては、微粒子化装置としてパールミルの代わりにアスペックミルを用いた。
【0112】
得られた繊維用消臭剤について製品安定性試験、薬剤相容性試験、消臭性試験、白化試験の評価を行った。また60℃×20日製品安定性試験後の繊維用消臭剤について消臭性試験、白化試験の評価を行った。60℃×20日製品安定性試験後の繊維用消臭剤については、増粘や分離が認められるものについては、撹拌均一にしたものを使用して評価を行った。その結果を表1〜5に示す。
【0113】
実施例、参考例と比較例において、繊維用消臭剤の製品安定性試験、薬剤相容性試験、消臭性試験、白化試験は下記の方法に従って行い、評価した。
【0114】
製品安定性試験
繊維用消臭剤をガラス瓶に入れて密封し、60℃で5日後と20日後、及び20℃で2週間後と3ヶ月後の外観を目視で観察し、下記の基準に従い評価した。
7:増粘や分離がなく製品安定性試験前の状態と同じ
6:ごくわずかの分離があるが、弱い攪拌で容易に製品安定性試験前の状態に戻る
5:若干の増粘や分離があるが、攪拌すれば容易に製品安定性試験前の状態に戻る
4:増粘や分離があるが、攪拌すれば製品安定性試験前の状態に戻る
3:増粘や分離があり、攪拌しても若干の粗粒子が認められる
2:増粘や分離が大きく、攪拌しても粗粒子が認められる
1:固化や大きな分離があり、攪拌しても粗粒子が多量に認められる
【0115】
薬剤相容性試験
繊維用消臭剤5質量部(実施例17のみ2質量部)、機能加工剤2質量部、水93質量部(実施例17のみ96質量部)を均一になるまで混合して処理液を調製した。処理液調製1時間後の外観を目視で観察し、下記の3段階で評価した。
A:分離、沈降は認められない
B:やや分離、沈降が認められる
C:調液直後に分離、沈降が認められる
【0116】
なお、機能加工剤としては、イオン性の異なる以下の2種を用いた。
カチオン性機能加工剤:ネオフィックスR−800(日華化学(株)、カチオン性高分子化合物)
アニオン性機能加工剤:ナイスポールPR−99(日華化学(株)、アニオン性ポリエステル樹脂)
【0117】
消臭性試験(アンモニア消臭率)
消臭性繊維製品の調製
繊維用消臭剤5質量部(実施例17のみ2質量部)、シリコーン樹脂(信越化学工業(株)製、製品名「KM−2002−L−1」)2質量部、水93質量部(実施例17のみ96質量部)を均一になるまで混合して処理液を調製した。この処理液を用いて、ポリエステル100%編物または綿100%編物に対してパディング処理した。ピックアップは70質量%とした。次いで、120℃で3分間乾燥した後、160℃で1分間熱処理して、洗濯前の消臭性繊維製品を得た。
【0118】
洗濯前の消臭性繊維製品を10回洗濯し、洗濯10回後の消臭性繊維製品を得た。洗濯方法は、JIS L 0217−1995(103法)に従った。すなわち、JAFET標準洗剤40mlを使用し、浴比1:30として、40℃で5分間洗濯した後、脱水し、2分間のオーバーフローすすぎを2回繰り返した。この工程を洗濯1回とし、洗濯10回後さらに5分間オーバーフロー濯ぎした。
【0119】
次いで、洗濯前および洗濯10回後の消臭性繊維製品を105℃で2時間絶乾させた後、20℃、65%RHの条件下に24時間放置して調湿を行った。
【0120】
アンモニア消臭率の測定
調湿した消臭性繊維製品(10cm×10cm)1枚を5Lテドラーバックに入れ、バック内を脱気した後、アンモニア100ppmを含有する空気3Lを注入し、密封した。20℃で2時間放置した後、検知管(No.3L、GASTEC社製)にてアンモニアの残留濃度を測定した。また、空試験として、消臭性繊維製品を入れないで同様に試験を行って残留濃度を測定した。アンモニア消臭率(%)を次式により算出した。
【0121】
アンモニア消臭率(%)={1−(残留濃度)/(空試験の残留濃度)}×100
【0122】
白化試験
前述の消臭性繊維製品の調製で得られた消臭性繊維製品の外観を目視で観察し、下記の3段階で評価した。
A:白化なし
B:白化少しあり
C:白化あり
【0123】
【表1】
【0124】
【表2】
【0125】
【表3】
【0126】
【表4】
【0127】
【表5】
【0128】
実施例1〜25、28〜30より、(A)成分である二酸化ケイ素または二酸化ケイ素と酸化亜鉛との複合物の微粒子を、特定の(B)成分を用いて分散して得られる本発明の繊維用消臭剤は、製品安定性、薬剤相容性に優れていることが分かる。また、本発明の繊維用消臭剤で処理して得られる消臭性繊維製品は、優れた消臭性能を発揮することができる。
【0129】
比較例1〜10より、本発明の(B)成分以外の非イオン界面活性剤を使用した場合は製品安定性が劣っていることが分かる。
【0130】
比較例11〜13より、イオン性を持った界面活性剤を使用した場合は製品安定性は良好であるが、反対のイオン性を持った薬剤と併用した場合に薬剤相溶性が劣っていることが分かる。
【0131】
60℃×20日製品安定性試験後の繊維用消臭剤を使用して処理を行った場合、実施例1〜25、28〜30の本発明の繊維用消臭剤では処理後の白化はほとんど見られないが、比較例1〜10の本発明の(B)成分以外の非イオン界面活性剤を使用した繊維用消臭剤では処理後に白化が見られた。比較例12〜13のイオン性を持った界面活性剤を使用した繊維用消臭剤においても処理後に白化が見られた。比較例1〜10、12、13の本発明以外の繊維用消臭剤の場合、長期保存後の製品を使用して染色された繊維製品を処理した場合、色相が変化し、繊維製品の品質低下を引き起こす可能性が大きいと考えられる。
【0132】
比較例1〜10、12、13の本発明以外の繊維用消臭剤の場合、60℃×20日と20℃×3ヶ月の製品安定性試験後では、固化や分離を撹拌して均一にした後も粗粒子が認められ、翌日には分離する現象が認められた。
【0133】
比較例1〜10、12、13の本発明以外の繊維用消臭剤を長期保存後に使用する場合は、使用する前に撹拌均一にする手間が必要であるにもかかわらずすぐに分離を起こす傾向があり、同じ製品の中でも採取する場所により消臭性能に差が出るなど、取り扱いが容易ではなく、処理効率が悪くなる可能性がある。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明は、製品安定性に優れ、各種機能加工薬剤との相溶性に優れる繊維用消臭剤を提供することができるので、産業上有用である。