特許第5943609号(P5943609)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5943609有機エレクトロルミネッセンス用樹脂フィルム基板、および有機エレクトロルミネッセンスデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5943609
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネッセンス用樹脂フィルム基板、および有機エレクトロルミネッセンスデバイス
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/02 20060101AFI20160621BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20160621BHJP
   G02B 1/10 20150101ALI20160621BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20160621BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   H05B33/02
   B32B7/02 103
   G02B1/10
   G02B5/02 B
   H05B33/14 A
【請求項の数】2
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2012-754(P2012-754)
(22)【出願日】2012年1月5日
(62)【分割の表示】特願2007-507058(P2007-507058)の分割
【原出願日】2006年3月1日
(65)【公開番号】特開2012-109255(P2012-109255A)
(43)【公開日】2012年6月7日
【審査請求日】2012年1月5日
【審判番号】不服2015-2755(P2015-2755/J1)
【審判請求日】2015年2月12日
(31)【優先権主張番号】特願2005-66871(P2005-66871)
(32)【優先日】2005年3月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 彰
(72)【発明者】
【氏名】中山 知是
(72)【発明者】
【氏名】北 弘志
(72)【発明者】
【氏名】福田 和浩
(72)【発明者】
【氏名】高畑 寿広
(72)【発明者】
【氏名】平林 茂人
【合議体】
【審判長】 西村 仁志
【審判官】 清水 康司
【審判官】 道祖土 新吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−296437(JP,A)
【文献】 特開2004−299230(JP,A)
【文献】 特開2004−82598(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/089620(WO,A2)
【文献】 特開2003−231198(JP,A)
【文献】 特開2004−345278(JP,A)
【文献】 特開2004−258267(JP,A)
【文献】 特開2003−344603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B33/00-33/28
B32B7/02
G02B1/10,5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルム上に少なくとも一つのガスバリア層を有する有機エレクトロルミネッセンス用樹脂フィルム基板において、前記樹脂フィルム上に前記ガスバリア層が形成され、該ガスバリア層を有する側の最表面を構成する層が、光を拡散させる層であり、前記ガスバリア層のJIS K7129 B法に従って測定した水蒸気透過度が0.1g/m2/day以下であり、前記ガスバリア層を有する側の最表面を構成する層は、前記ガスバリア層とは別の層で構成され、前記ガスバリア層の上に形成され、樹脂材料中に光を拡散させる微粒子及び中空微粒子を含んで成り、屈折率が1.50以下、1.25以上の低屈折率層であり、かつ厚みが0.3μm以上であって、前記ガスバリア層が、金属硫化物から選択されるセラミック膜であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス用樹脂フィルム基板。
【請求項2】
請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス用樹脂フィルム基板の上に、透明電極、有機エレクトロルミネッセンス層及び金属電極を、この順で積層して形成されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス用樹脂フィルム基板、および該樹脂フィルム基板を用いた有機エレクトロルミネッセンスデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
フィルム基板を用いる有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELともいう)発光デバイスにおいては、光取り出し効率が低いことが課題となっている。発光体の屈折率の影響により、例えば、発光層の屈折率を1.6〜1.7程度とすると、発光量全体の20%程度しか取り出すことができず、多くは、例えば、基板との間に形成される界面において全反射され、層内に閉じ込められてしまう。
【0003】
光取りだし効率を向上させる手段としては、全反射する界面に、光を回折する構造を設ける方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、基板、または基板上に透明な中間層を設けてランダムな凹凸を形成し、その上に透明電極、有機層、更に電極等を形成する方法が提案されている(特許文献2、3参照)。
【0005】
また、光を拡散させるシートを用いることが提案されている(特許文献4参照)。更に、低屈折率体の一方の表面に接して、透明導電膜を有する構成とすることで、光取りだしを向上させる方法(特許文献5参照)、あるいは、ITOを含む発光層と基板との間に光拡散のための凹凸構造を有するハードコート層および低屈折率の層を設けることで取り出し効率が向上させる方法(特許文献6参照)等が知られている。
【0006】
一方で、有機ELデバイスは、湿気や酸素等のガスに敏感で、有機ELデバイスの寿命に大きな影響を及ぼす。樹脂フィルム基板は、これらの湿気や酸素に対するガスバリア性が低いため、湿気や酸素等のガスによる影響を防止するため、フィルム基板を用いる際にはガスバリア層を形成する必要がある。
【0007】
ガスバリア層に加えて、光取り出しの効率を向上させる層を設けることはコストが向上する、あるいは工程が増えるために品質が低下するという課題を抱えていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−81860号公報
【特許文献2】特開平1−186588号公報
【特許文献3】特許第3496492号公報
【特許文献4】特許第2931211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、少なくとも一層のガスバリア層を備えた有機エレクトロルミネッセンス用樹脂フィルム基板において、該ガスバリア層またはガスバリア層に隣接する層を光取り出し機能を兼ねる構成とすることで、機能向上と同時に低コスト化を達成した有機エレクトロルミネッセンス用樹脂フィルム基板および有機エレクトロルミネッセンスデバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、下記構成により達成された。
【0011】
1.樹脂フィルム上に少なくとも一つのガスバリア層を有する有機エレクトロルミネッセンス用樹脂フィルム基板において、前記樹脂フィルム上に前記ガスバリア層が形成され、該ガスバリア層を有する側の最表面を構成する層が、光を拡散させる層であり、前記ガスバリア層のJIS K7129 B法に従って測定した水蒸気透過度が0.1g/m2/day以下であり、前記ガスバリア層を有する側の最表面を構成する層は、前記ガスバリア層とは別の層で構成され、前記ガスバリア層の上に形成され、樹脂材料中に光を拡散させる微粒子及び中空微粒子を含んで成り、屈折率が1.50以下、1.25以上の低屈折率層であり、かつ厚みが0.3μm以上であって、前記ガスバリア層が、金属硫化物から選択されるセラミック膜であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス用樹脂フィルム基板。
【0017】
2.前記1に記載の有機エレクトロルミネッセンス用樹脂フィルム基板の上に、透明電極、有機エレクトロルミネッセンス層及び金属電極を、この順で積層して形成されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスデバイス。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、高いガスバリア性を有するガスバリア層を備えると共に光取り出し機能が向上した低コストの有機エレクトロルミネッセンス用樹脂フィルム基板と、該有機エレクトロルミネッセンス用樹脂フィルム基板を用いた有機エレクトロルミネッセンスデバイスを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】ガスバリア層と応力緩和層とを組み合わせ、積層構成とした有機エレクトロルミネッセンス用樹脂フィルム基板の断面構成の一例を示す図である。
図2】回折格子として作用する凹凸構造の例を示す図である。
図3】ガスバリア層上の応力緩和層表面に光の回折構造を設けた有機エレクトロルミネッセンス用樹脂フィルム基板の一例を示す断面構成図である。
図4】ガスバリア層上の応力緩和層表面を、光を拡散する拡散構造とした有機エレクトロルミネッセンス用樹脂フィルム基板の一例を示す断面構成図である。
図5】応力緩和層を兼ねた拡散層を最表面に設けた、有機エレクトロルミネッセンス用樹脂フィルム基板の一例を示す断面構成図である。
図6】回折構造の上、最表面に屈折率の高い材料で形成したガスバリア層を有する有機エレクトロルミネッセンス用樹脂フィルム基板の一例を示す断面構成図である。
図7】光の拡散層を、応力緩和層を兼ね最表面のガスバリア層の直下に設けた有機エレクトロルミネッセンス用樹脂フィルム基板の一例を示す断面構成図である。
図8】本発明の有機エレクトロルミネッセンス用樹脂フィルム基板上に有機エレクトロルミネッセンス素子を形成し封止した有機エレクトロルミネッセンスデバイスの断面構造の例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0021】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス用樹脂フィルム基板は、プラスチックフィルム(樹脂フィルム)を基板としており、従来のガラス等の基板に比べ、軽量で、可撓性を有し、フレキシブルであるため好ましい。しかしながら、樹脂フィルムは、ガラス等に比較すると、水蒸気、酸素等に対するガスバリア性が劣るため、ガラスに匹敵するガスバリア性を備えたガラスに代わる樹脂フィルム基板の開発が行われている。本発明の有機EL用樹脂フィルム基板では、ガスバリア性に優れると共に、やはり有機EL素子の大きな課題である光取り出し効率の向上を同時に果たすべく、なされたものである。
【0022】
本発明は、ガスバリア性層および光を回折もしくは拡散する構造の両者を導入し、ガスバリア性と光取り出し効率の向上を同時に達成した有機EL用樹脂フィルム基板に関するものである。
【0023】
本発明において、ガスバリア層とは、水蒸気透過係数が1×10-6g・m/m2/day〜1×10-1g・m/m2/day、酸素透過係数が1×10-4ml・m/m2/day〜1×10-1ml・m/m2/day程度の材料からなる層であり、これにより、該ガスバリア層を形成することにより作製された樹脂フィルム基板において、JIS K7129 B法に従って測定した水蒸気透過率が、0.1g/m2/day以下、好ましくは0.01g/m2/day以下であり、酸素透過率が0.1ml/m2/day以下、好ましくは0.01ml/m2/day以下であるガスバリア性に優れたガスバリアフィルムが得られる。
【0024】
本発明に係るガスバリア層は、酸素及び水蒸気の透過を阻止する膜であれば、その組成等は特に限定されるものではないが、本発明に係るガスバリア層(膜)を構成する材料としては、金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物、金属炭化物等のセラミック膜であることが好ましく、具体的には、無機酸化物であることが更に好ましく、酸化珪素、酸化アルミニウム、窒化珪素、酸窒化珪素、酸窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ等を挙げることができ、特に酸化珪素、窒化珪素、酸窒化珪素、酸化アルミニウム、酸窒化アルミニウム等のセラミック膜が好ましい。
【0025】
本発明において、セラミック膜の製造方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、金属化合物原料として珪素、チタン等のアルコキシド等を用いて、ゾルゲル法等、湿式法を用いて形成されたものであってもよいが、また、スパッタリング法、イオンアシスト法、あるいは後述するプラズマCVD法や大気圧または大気圧近傍の圧力下でのプラズマCVD法等を適用して形成されたものでもよい。
【0026】
スプレー法やスピンコ−ト法を用いるゾルゲル法等、湿式法は、分子レベル(nmレベル)の平滑性を得ることが難しく、また溶剤を使用するため、基材が有機材料である場合など、使用可能な基材または溶剤が限定される、という欠点があり、後述するプラズマCVD法や大気圧または大気圧近傍の圧力下でのプラズマCVD法を用いる方法が好ましい。その中でも、特に、大気圧プラズマCVDによる方法は、減圧チャンバー等が不要で、高速製膜ができ、生産性の高い製膜方法であり好ましい。
【0027】
ガスバリア層として作用するためには、セラミック膜の厚みは5〜2000nmの範囲であることが好ましい。厚みが5nm未満であると膜欠陥が多く、充分な防湿効果が得られない。厚みが2000nmを超えた場合、理論的には防湿効果は高いが、余り大きいと、内部応力が大きく割れやすくなり、所望の防湿効果が得られないと共に、樹脂フィルム基板にフレキシビリティを保持させることが困難となり、成膜後の折り曲げや引っ張り等の外的要因により、ガスバリア層に亀裂が生じる等のおそれがある。
【0028】
大気圧プラズマCVDによる膜形成方法の詳細は、例えば、特開2004−52028号、特開2004−198902号等に記載されており、原料化合物として有機金属化合物を用いるが、原料化合物は常温常圧下で気体、液体、固体のいずれの状態であっても構わない。気体の場合にはそのまま放電空間に導入できるが、液体、固体の場合は、一度加熱、バブリング、減圧、超音波照射等の手段により気化させてから使用する。その様な状況から、有機金属化合物としては、例えば、沸点が200℃以下の金属アルコキシドが好適である。
【0029】
このような金属アルコキシドとして、ケイ素化合物としては、例えば、シラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラn−プロポキシシラン等が、チタン化合物としては、例えば、チタンメトキシド、チタンエトキシド、チタンイソプロポキシド、チタンテトライソポロポキシド等が、ジルコニウム化合物としては、例えば、ジルコニウムn−プロポキシド等が、アルミニウム化合物としては、例えば、アルミニウムエトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムイソプロポキシド等が、また、その他に、アンチモンエトキシド、ヒ素トリエトキシド、亜鉛アセチルアセトナート、ジエチル亜鉛等が挙げられる。
【0030】
また、これらの有機金属化合物を含む原料ガスと共に、これらを分解して無機化合物を得るため、分解ガスを併用し、反応性ガスを構成する。この分解ガスとしては、水素ガス、水蒸気などが挙げられる。
【0031】
プラズマCVD法においては、これらの反応性ガスに対して、主にプラズマ状態になりやすい放電ガスを混合する。放電ガスとしては、窒素ガス、周期表の第18属原子、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン等が用いられる。特に、窒素がコストも安く好ましい。
【0032】
上記放電ガスと反応性ガスを混合し、混合ガスとしてプラズマ放電発生装置(プラズマ発生装置)に供給することで膜形成を行う。放電ガスと反応性ガスの割合は、目的とする膜の性質によって異なるが、混合ガス全体に対し、放電ガスの割合を50%以上として反応性ガスを供給する。
【0033】
例えば、沸点が200℃以下の金属アルコキシド、珪素アルコキシド(テトラアルコキシシラン(TEOS))を原料化合物として用い、分解ガスに酸素を用い、放電ガスとして希ガス、或いは窒素等の不活性ガスを用いて、プラズマ放電させれば、本発明に係るガスバリア性膜として好ましい酸化珪素膜を生成することができる。
【0034】
また、本発明においては、上記ガスバリア層は透明であることが好ましい。これにより有機EL素子の透明基板等の用途(即ち、光取りだし側の基板)にも使用することが可能となるからである。ガスバリアフィルムの光透過率としては、例えば、測定波長を550nmとしたときの透過率が80%以上のものが好ましく、90%以上が更に好ましい。
【0035】
セラミック膜は緻密で、所定の硬度を有しているため、所望のガスバリア性能を達成するには、ガスバリア層の厚みを前記の範囲とし、いわゆる応力緩和層と組み合わせ、複数の層から構成した積層構成とすることが好ましい。図1は、このガスバリア層と応力緩和層から構成される積層構造の断面構成を示す図である。例えば、酸化珪素等の緻密な硬いセラミック膜からなるガスバリア層3と、応力緩和層4として、より柔軟性を有し応力を緩和できる、例えば、アクリル系樹脂等を用いたポリマー層を用いる。図1には、樹脂フィルム基材1上に2つのガスバリア層3の間に、応力緩和層4が設けられた積層構成を示している。応力緩和層は、ガスバリア層よりも柔軟性を有する層であればよく、例えば、酸化珪素でも、膜組成を変化(例えば膜中の炭素濃度等)させ、より柔軟な膜を形成すればよい。
【0036】
この様な応力緩和層に用いる樹脂材料としては、アクリル系、メタクリル系樹脂材料、エチレン、ポリプロピレン、ブテン等の単独重合体または共重合体または共重合体等のポリオレフィン(PO)樹脂、また、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂材料が好ましく、ガスバリア層を保持することができる有機材料で形成された膜であれば特に限定されるものではない。
【0037】
また、応力緩和層の厚みは、概ね5〜2000nmの範囲内であり、必要とされる折り曲げ強度や柔軟性、あるいはガスバリア性に応じて、本発明に係るガスバリア層と共に選択される。
【0038】
本発明の有機EL用樹脂フィルム基材において用いられる樹脂フィルム基材としては、上述したバリア性を有するガスバリア層を保持することができる有機材料からなるフィルム基材であれば、特に限定されるものではない。
【0039】
具体的には、ポリオレフィン(PO)樹脂、環状ポリオレフィン等の非晶質ポリオレフィン樹脂(APO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン2,6−ナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、ポリサルホン(PS)樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、等を用いることができる。また、これらの樹脂の1または2種以上をラミネート、コーティング等の手段によって積層させたものを樹脂フィルム基材として用いることも可能である。
【0040】
本発明に係る樹脂フィルム基材においては、ガスバリア膜との接着性を向上させるため、コロナ処理などの表面処理を行ってもよいし、接着層、アンカーコート剤層を形成してもよい。
【0041】
また、本発明に係る樹脂フィルム基材は、フィルム形状である場合、膜厚としては10〜1000μmが好ましく、より好ましくは50〜500μmである。
【0042】
次に、有機EL素子からの光取りだし効率を向上させ、光を回折もしくは拡散させる凹凸構造について説明する。
【0043】
本発明に係る光を回折もしくは拡散させる凹凸構造は、基板中あるいは基板上の全反射する面に設けられる。例えば、基板最表面にこれらの光を回折もしくは拡散させる凹凸構造を設けることにより、該表面上に、例えば、透明電極(陽極)、発光層を含む有機EL素子各層、陰極等が形成され有機EL素子を作製した場合、発光層から放射される光のうち、通常は界面で全反射され取り出されない光の一部が取り出されるようになり、発光効率が向上する。
【0044】
本発明において、光を回折させる凹凸構造とは、具体的には、全反射が発生する界面に設けられ、一定のピッチ(周期)を有する凹凸状の構造からなるものである。
【0045】
可視光の取り出し効率を向上させるためには、可視光の媒質中での光の波長400nm〜750nmの範囲の光を回折させるための回折格子であることが必要である。回折格子への光の入射角と出射角、回折格子間隔(前記凹凸配列の周期)、光の波長、媒体の屈折率、回折次数等の間には一定の関係があり、前記可視光およびその近傍の波長領域の光を回折させるため、本発明においては、前記凹凸配列のピッチ(周期)は、取り出し効率が向上する波長に対応して、150nm〜3000nmの範囲にある一定値をもつ必要がある。
【0046】
回折格子として作用する凹凸状の構造は、例えば、特開11−283751号、特開2003−115377号等に記載されている。ストライプ状の回折格子は、ストライプに平行な方向に対しては回折効果がないため、2次元的にどの方向からも均一に回折格子としての作用するものが好ましい。基板表面あるいは表示面の法線方向からみた断面形状が、所定の形状を有する凹部、凸部が規則的に所定の間隔で平面上に形成されているものが好ましい。
【0047】
この凹凸形状は、例えば、凹部を構成する孔の形状としては、円形でも、三角形でも、四角形でも、また多角形でもよい。その孔の内径は(同面積の円を想定して)75nm〜1500nmの範囲が好ましい。また、凹部(窪み)の平面方向からみた断面形状としては、半球状、矩形、あるいはピラミッド形状のものでもよい。この凹部の深さは、50nm〜1600nm、更には50nm〜1200nmの範囲にあることが好ましい。凹部の深さがこれより小さい場合には、回折或いは散乱を起こす効果が小さく、また大きすぎると表示素子としての平面性が損なわれ好ましくない。また、回折格子とするために、これらの凹部の配列は、正方形のラチス状(正方格子状)、ハニカムラチス状など2次元的に規則的に配列が繰り返されることが好ましい。
【0048】
また、突起である場合(凸型)、突起の形状は前記と同様であり、例えば、凸部が柱状突起である場合、表面の法線方向からみた形態は円形、三角形、四角形、多角形のいずれであってもよい。突起の高さ、またそのピッチ(周期)は、上述の孔を形成した場合と同様である。これらの凹凸は、全く逆に、凸部が前記の値を有するように形成されてよい。
【0049】
この様にして形成される回折格子として作用する凹凸構造の一例を図2に示す。凹部が円形と方形の凹部(孔)を基材表面に形成した例を示している。
【0050】
この様な凹凸を、例えば、基板表面に形成することで、該基板に透明電極を形成して、有機EL素子各層を順次形成し、対電極を形成し、有機EL素子を形成して、基板側から発光を取り出す。これにより、凹凸構造のピッチ(周期)に対応した波長の光の取りだし効率が向上する。
【0051】
これらの回折格子を樹脂材料膜上に形成しようとする場合には、インプリント手法等があり、例えば、ポリマー膜としてポリメチルメタクリレート(以下、PMMAと略記する)等の熱可塑性樹脂を成膜した後、凹凸が設けられた金型で加熱、加圧することで、金型の凹凸形状を転写するインプリント手法を用いることができる。また、紫外線硬化樹脂を塗布した後、凹凸が設けられた金型を密着させて紫外線を照射し、光重合により硬化して金型の凹凸を転写する手法を用いることができる。
【0052】
また、ガスバリア層である酸化珪素等の金属酸化物をエッチングして形成する場合には、反応性イオンエッチング等を用いることができる。
【0053】
また、ガスバリア層である酸化珪素等の金属酸化物の膜については、ゾルゲル手法を用いてゲル状の膜を作成した後、ゲル状膜に凹凸が設けられた金型を押し当てたまま加熱することで、凹凸形状を形成することができる。
【0054】
本発明に係る光を拡散させる凹凸構造とは、光の回折や屈折、反射により光を拡散させる構造であり、例えば、平均ピッチ(周期)が0.3μm〜20μmの範囲にあり、平均高さが該ピッチの1/5〜1/3程度である100nm〜7000nmの範囲にあるような波形形状等がある。全反射、また陰極である金属電極による反射によって発光層内部を伝播する光を拡散して取り出す光量が、直接外部に出射される光量に比べ充分な量とするには、凹凸は少なくとも100nm以上の高さであることが好ましく、また、波形形状のピッチ(周期)は長すぎると散乱現象が生じる前に発光層で光が吸収される。また、平均高さが余り大きくなると、発光層の成膜が困難になるので望ましくない。
【0055】
このような拡散構造を樹脂材料膜上に形成しようとする場合には、インプリント手法等があり、例えば、ポリマー膜としてPMMA等の熱可塑性樹脂を成膜した後、波形形状が設けられた金型で加熱、加圧することで、金型の波形形状を転写するインプリント手法を用いることができる。また紫外線硬化樹脂を塗布した後に、波形形状が設けられた金型を密着させて紫外線を照射し、光重合により硬化して金型の波形形状を転写する手法を用いることができる。
【0056】
また、ガスバリア層である酸化珪素等の金属酸化物をエッチングして形成する場合には、反応性イオンエッチング等を用いることができる。また、ガスバリア層である酸化珪素等の金属酸化物の膜については、ゾルゲル手法を用いてゲル状の膜を作成した後、ゲル状膜に波形形状が設けられた金型を押し当てたまま加熱することで、波形形状を形成することができる。
【0057】
次に、本発明において、光を回折もしくは拡散させる層(拡散層)とする場合について説明する。
【0058】
光を回折もしくは拡散させる層とは、光取り出し効率向上の別の構造であり、例えば、基板の最表面の層、即ち有機EL素子と接する層に、これを形成する場合、層を形成する例えば樹脂材料(バインダー)との屈折率差がある程度あり、少なくとも屈折率差で0.03以上、好ましくは0.1以上である球形粒子を含有する層とする。
【0059】
これは層媒体と粒子との屈折率の違いにより光を拡散させる層であり、含有される粒子の粒子径は光の波長よりも大きく(平均粒子径300nm〜30μm)、透明な粒子が好ましい。平均粒子径が30μm以下であれば光の拡散性が均一となる。
【0060】
従って、この様な粒子としては、ガラスやシリカ、チタニア等の無機材料、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂等の有機材料が挙げられる。
【0061】
これらの粒子は、層を形成する媒体、例えば樹脂材料に対する体積比で、10〜90%であることが好ましい。これらの範囲を超えると充分な光拡散機能を付与することができない。また、これらの層の厚さは300nm〜50μmの範囲が好ましい。
【0062】
従って、これらの層を形成するには、層媒体が例えば樹脂材料の場合、媒体となる樹脂材料(ポリマー)溶液(溶媒としては、粒子の溶解しないものを用いる)に前記の粒子を分散し、塗布基材上に塗布することで形成する。
【0063】
これらの粒子は、実際には、多分散粒子であること、規則的に配置するのは難しいことから、局部的には、回折効果を有するものの、多くは拡散により光の方向を変化させ光取りだしを向上させる層である。
【0064】
また、後述の実施態様におけるように、この層の媒体は、低屈折率であることが好ましい。例えば、フッ素系樹脂を媒体として用いることが好ましい。
【0065】
フッ素樹脂としては硬化性のフッ素樹脂が好ましく、パーフルオロアルキル基含有シラン化合物(例えば(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラデシル)トリエトキシシラン)等の他、含フッ素モノマーと架橋性基付与のためのモノマーを構成単位とする含フッ素共重合体が挙げられる。
【0066】
含フッ素モノマー単位の具体例としては、例えば、フルオロオレフィン類(例えば、フルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等)、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えば、ビスコート6FM(商品名、大阪有機化学製)やM−2020(商品名、ダイキン製)等)、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類等であり、これらのなかでも低屈折率、モノマーの扱いやすさの観点で特にヘキサフルオロプロピレンが好ましい。
【0067】
架橋性基付与のためのモノマーとしてはグリシジルメタクリレートのように分子内にあらかじめ架橋性官能基を有する(メタ)アクリレートモノマーの他、カルボキシル基やヒドロキシル基、アミノ基、スルホン酸基等を有する(メタ)アクリレートモノマー(例えば、(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート等)が挙げられる。後者は共重合の後、架橋構造を導入でき好ましい。
【0068】
また、上記含フッ素モノマーを構成単位とするポリマーだけでなく、オレフィン類、アクリル酸エステル類等、フッ素原子を含有しないモノマーとの共重合体を用いてもよい。
【0069】
これら硬化性のフッ素樹脂を用いて、熱硬化あるいは光(好ましくは紫外線、電子ビーム等)の照射により架橋する。
【0070】
例えば、熱架橋性フッ素樹脂としては、JSR(株)製、商品名JN−7228等がある。
【0071】
また、低屈折率とするには、中空微粒子を媒体と混合し、平均として、媒体の屈折率を低下させる方法がある。
【0072】
これらの中空微粒子とは、粒子壁を有しその内部が空洞であるような粒子をいい、例えば、前述の微粒子内部にミクロボイドを有するSiO2粒子を更に有機珪素化合物(テトラエトキシシラン等のアルコキシシラン類)で表面を被覆しその細孔入り口を閉塞して形成された粒子である。或いは前記粒子壁内部の空洞が溶媒または気体で満たされていてもよく、例えば、空気の場合は中空微粒子の屈折率は、通常のシリカ(屈折率=1.46)と比較して著しく低くすることができる(屈折率=1.44〜1.25)。上記無機微粒子内にミクロボイドを有する粒子を中空にする調製方法は、特開2001−167637号公報、2001−233611号公報に記載されている方法に準じればよく、また本発明では市販の中空SiO2微粒子を用いることができる。市販の粒子の具体例としては、触媒化成工業社製P−4等が挙げられる。
【0073】
本発明は、樹脂フィルム基材上に、前記バリア層、および前記光を回折もしくは拡散させる凹凸構造、或いは光を回折もしくは拡散する層とを積層、或いは組み合わせ、ガスバリア性が高く、かつ有機EL素子を形成したときに、発光層からの光取り出し効率が高い有機EL用樹脂フィルム基板を得るものである。光取りだし側の基板としてこれら樹脂フィルム基板を用い、この上に、例えば、陽極となる透明電極、有機EL素子各層(後述する)、更に陰極である金属電極と順に積層し、外気、特に水蒸気や酸素等による有機EL素子の劣化原因となるガスから封止された本発明の有機ELデバイスが得られる。有機EL素子を形成後、陰極上に更にもう一つのガスバリア性フィルムを重ねて、少なくとも周囲を密着、封止すれば、より一層、外気特に水蒸気や酸素等による有機EL素子の劣化原因となるガスから有機EL素子を隔離、保護することができる。
【0074】
この様なガスバリア層を有する本発明の有機EL用樹脂フィルム基板について、幾つかの実施の態様を以下に説明する。
【0075】
図3に本発明の実施態様の1つを示す。図3は、フィルム基板1上に応力緩和層4、ガスバリア層3、更に応力緩和層4を積層した構成であり、ガスバリア層上の応力緩和層表面、即ち、樹脂フィルム基板最表面に回折構造を設けたものである。
【0076】
ガスバリア層の最表面に光を回折する凹凸構造を設け、その上にITO/有機EL層/電極を構成することで、基板、ガスバリア層,ITO、有機EL層のいずれかの界面で全反射して、外部に取り出せなかった光を回折することで外部に取り出すことができる。
【0077】
フィルム基板としては、前記の樹脂フィルム中、例えば、PES(ポリエーテルスルホン)フィルム(厚み200μm)を用い、この上に先ず、応力緩和層ないし接着層として、PMMA膜を形成する。PMMA膜は、WO00/36665号パンフレットに記載された方法に従って真空蒸着装置内に導入ノズルからポリメチルメタクリレートオリゴマーを導入し、PESフィルム基板上に蒸着し、PMMA蒸着フィルムを真空蒸着装置から取り出した後、乾燥窒素気流下、紫外線を照射、重合させて、PMMAの重合膜を形成する(膜厚は、例えば、200nm)。
【0078】
この上に、ガスバリア層として、テトラエトキシシランを主体とする薄膜形成ガスと、放電ガスとしては窒素を用いて、大気圧プラズマCVD法により酸化珪素の膜を形成する(例えば膜厚200nm)。
【0079】
次いで、表面に光を回折する構造である凹凸が正方格子状に配列された応力緩和層の役割も有する樹脂層を形成する。樹脂層として、前記の方法で400nmの厚みでPMMA膜を形成し、表面にインプリント成型を行って凹凸構造を形成する。
【0080】
即ち、予め形成した型付けのためのエンボスを有するステンレスロールに加熱、押圧することで、インプリント成型を行う。凹凸は、例えば、直径150nm、深さ、120nmで正方格子状にピッチ300nmで形成する。光の回折作用により530〜580nmのいわゆる緑領域の光取り出し効率が高まる。
【0081】
また、UV硬化性樹脂を型押しすることでも形成できる。
【0082】
また、表面を、光を拡散する拡散構造とした例を図4に示す。図4において、1は基板フィルム、3がガスバリア層、4が応力緩和層である。拡散構造とするには、表面に形成したPMMA膜を、数μmの厚みで形成しておき、例えば、平均ピッチ(ピッチL)が3μm平均高さ(高さH)が500nmとなるようにランダムな波形形状を有するようにインプリント手法で成型する。
【0083】
また、最上層に応力緩和層を形成せず、直接ガスバリア層表面に光の回折もしくは拡散させる表面を形成することもできる(図示していない)。規則的な回折構造を形成する場合、ガスバリア層(例えば酸化珪素の場合)表面はフォトレジスト、例えば、商品名マイクロポジット1400−27(シプレイ社)等を用い、反応性イオンエッチング(RIE)、即ちCF4とH2の混合ガスを反応ガスとして反応性イオンエッチングすることによりパターニング加工する。
【0084】
また、特に、レジストを用いずに、条件を選んで、反応性イオンエッチング(RIE)することで、前記の大きな周期での拡散面を有する拡散構造も表面に作製できる。
【0085】
また、ゾルゲル手法を用いてゲル状の膜を形成した後、金型に押し当て加熱して形成してもよい。
【0086】
この回折構造、或いは拡散構造を有する面上に陽極である透明電極、有機EL素子各層、陰極を形成することで、本発明の有機ELデバイスが得られる。
【0087】
次に、本発明の第2の実施態様を図5に示す。
【0088】
これは、応力緩和層を兼ねた前記光を回折もしくは拡散させる層(拡散層)を最表面に設けた、ガスバリア層を有する樹脂フィルム基板の一例である。
【0089】
実施態様1と同じく、樹脂フィルム基板1として、PES(厚み200μm)上に、前記応力緩和層4を接着層を兼ねて設ける。即ち、真空蒸着装置を用いて、ポリメチルメタクリレートオリゴマーを導入蒸着し、同様に紫外線を照射し、重合させPMMAの重合膜を形成した(厚み200μm)。次いで、この上にガスバリア層3として、同じく酸化珪素膜をプラズマCVD法により200μm厚で形成し、更にこれを繰り返し、酸化珪素膜の上に同じく応力緩和層4であるPMMA層(200nm)を、更に、ガスバリア層(酸化珪素層)3を例えば、200nm厚で設ける。
【0090】
この実施態様においては、酸化珪素層上に最表面層として、更に応力緩和層を兼ねた拡散層(光を回折もしくは拡散させる層)5を設けている。この拡散層を光を回折もしくは拡散させる層とすることで、その上にITO/有機EL層/電極を構成して有機EL素子を形成すると、基板、ガスバリア層、ITO、有機EL層のいずれかの界面で全反射して外部に取り出せなかった光を回折、拡散することで外部に取り出すことができるようになる。
【0091】
最表層の光を回折もしくは拡散させる層としては、透明な、例えばTiO2等の光を拡散させる微粒子を分散させた層であり、媒体としてはフッ素系樹脂、例えば、熱架橋性フッ素樹脂(6%メチルエチルケトン溶液;商品名JN−7228、JSR(株)製)を用い、この中に、合成酸化チタン粒子(平均粒子径2.1μm、屈折率2.5)を固形分濃度で10%含有させて塗布した後、120℃で乾燥、紫外線照射、更に120℃で熱硬化させ光を回折もしくは拡散させる層を形成する(厚み800nm〜5μm)。
【0092】
次に、本発明の第3の実施態様について説明する。
【0093】
前記第1,第2の実施態様(図3、4、5)において、最表面に設けた光を回折する凹凸構造を有する層、また最表面の光を回折もしくは拡散させる層(拡散層)は、なるべく低屈折率の層とすること、また更に波長よりも(充分)厚い(0.3μm以上、好ましくは1ミクロン以上)層とすることが好ましい態様である。これにより基板内部で全反射することになる光の一部を外部に取り出すことが可能となり、光取りだし効率が、より向上した基板が得られる。
【0094】
即ち、基板との界面で全反射される光は、表面の該低屈折率層の臨界角で決まる量に低減される。従って、屈折率としては低い方が好ましく、屈折率1.50以下であることが好ましい。低いほど好ましいが、低屈折率材料といっても限界があることから、前記、フッ素系樹脂を用いる、また、例えば中空シリカ微粒子等空隙を有する粒子と併用することにより層の屈折率を低下させることができる。
【0095】
この第3の実施態様においては、例えば、前記第2の実施態様における光を回折もしくは拡散させる層を構成する媒体である前記フッ素系樹脂中に、中空シリカ微粒子(触媒化成工業社製 P−4)を添加し、この層を構成する。これら中空微粒子を固形分でフッ素系樹脂と同量程混合することでて屈折率1.37程度の媒体となる。
【0096】
また、酸化珪素等からなるガスバリア層は、比較的密度が高く屈折率の高い層であるため、応力緩和等の機能を有する応力緩和層を積層して作製される多層膜の場合には、有機EL素子を形成したとき、透明電極(ITO)に接することとなる基板最表面の層を屈折率が高いガスバリア機能層とすることで、導波モード(ITOと有機EL層に閉じ込められる光)の一部をガスバリア層に取り出すことが可能となり、また、これにより光取りだしの為の回折や散乱をする機能を、比較的回折や拡散の機能を設けやすい隣接した応力緩和層に設けることが可能になる。そうすると、回折や拡散の機能を最表面ではない下の層に設けることで、最表面の平滑性を高めることが容易となり、発光層を製膜しやすくなる。
【0097】
次に、上記のような効果が期待できる図6で示される第4の実施態様について説明する。図6は、樹脂フィルム基材1上に、応力緩和層4、ガスバリア層(それぞれ200nm厚)と設けられた後に、更に応力緩和層4を設け、この表面に回折構造を設けている。更にその上に、ガスバリア層3を設け、最表面に形成されたガスバリア層3を屈折率1.45以上、2.10以下という、屈折率の高い材料で形成することで、導波モード(ITOと有機EL層に閉じ込められる光)の光の一部を高屈折率層に取り出し易くする。また、そのすぐ下に隣接する応力緩和層との界面に光を回折もしくは拡散させるような凹凸を設けることで、高屈折率の層に取り出された光を外部に効率的に取り出す、基板やガスバリア層の界面で全反射する光を効率的に取り出す、等の効果が期待できる。
【0098】
回折構造を形成するために、前記の通りに、PMMAからなる応力緩和層上に、例えば、ピッチ(周期)300nm、直径150nm、深さ120nmの孔を正方格子状に配列した表面を前記の方法で形成する。
【0099】
第4の実施態様において、最表面であるガスバリア層として、プラズマCVD法によりSiN(窒化珪素)を、例えば、200nm厚でその上に形成する。形成後、表面をMIPOX製、研磨テープ(15000番)で削り表面突起等を除去し、平滑な膜とする。
【0100】
このような基板は、表面にガスバリア層として1.8という高い屈折率を有する窒化珪素層を有しており、好ましい。
【0101】
ここにおいて、基板、応力緩和層、ガスバリア層は、前記図1または2におけるものと同様である。また回折構造、拡散構造についても同様に形成される。
【0102】
また、拡散構造とするためには、前記同様に、上記回折構造に代えて、PMMAからなる応力緩和層上に、例えば、平均ピッチが3μm、平均高さが500nmとなるようなランダムな波状の平面を形成すればよい。
【0103】
第5の態様としては、図6における光の回折を起こさせる構造を表面に有する応力緩和層に代えて、光を回折もしくは拡散させる層(拡散層)に、置き換えた態様である。此処では、前記の通り、透明のTiO2等の光を拡散させる微粒子をフッ素系樹脂中に分散させ形成した層を用いるものであり、光の拡散により光の取り出しをはかる。該層の媒体となる例えば樹脂層は、低屈折率であるほど好ましく、フッ素系樹脂や、内部にシリカ等の中空粒子を含有するものが好ましい。
【0104】
また、本発明の第6の態様としては、前記実施の態様4,5と同様に、ガスバリア層を最表面とし、最表面のすぐ下の応力緩和層表面に設けられた回折構造、または、最表面のすぐ下の応力緩和層を兼ねた光を回折もしくは拡散させる層(拡散層)を、屈折率のなるべく低い層とする実施態様である。
【0105】
このうち、光を回折もしくは拡散させる層(拡散層)を、応力緩和層を兼ね最表面のガスバリア層の直下に設けた実施態様を図7に示す。光拡散層を屈折率の充分低い、即ち、1.50以下、1.03以上である材料で構成し、更に波長よりも充分厚い(0.3μm以上、好ましくは1μm以上)層とすることで、前記同様、基板の内部で全反射することになる光の一部を外部に取り出すことが可能となる(基板の内部で全反射される光は、低屈折率の層の臨界角で決まる量に低減される)。
【0106】
この態様においては、最表面のガスバリア層3として、前記SiN(厚み100nm)からなる層、これにすぐ隣接した直下の応力緩和層4として、前記熱架橋性フッ素樹脂(6%MEK溶液;商品名JN−7228、JSR(株)製)中に、合成酸化チタン粒子(平均粒子径2.1μm、屈折率2.5)を固形分濃度で10%含有させ塗布後、120℃で乾燥、紫外線照射、更に120℃で熱硬化させ光を回折もしくは拡散させる層(拡散層)を形成するものである(厚みは、例えば、800nm〜数μm)。また、フッ素樹脂中には、中空シリカ微粒子(触媒化成工業社製 P−4)をフッ素系樹脂と同量混合することで、屈折率1.37程度の媒体とするものである。
【0107】
屈折率は低いほど好ましく、フッ素系樹脂に中空粒子を併用し1.25前後となる。
【0108】
以上のような有機EL用樹脂フィルム基板を用いることで、ガスバリア性に優れかつ光取り出し効率が向上した有機ELデバイスが得られる。
【0109】
次いで、これら有機EL用樹脂フィルム基板と共に本発明の有機ELデバイスを形成する有機EL素子について説明する。
【0110】
本発明に係る有機EL素子について説明する。
【0111】
《有機EL素子の構成層》
本発明において、有機EL素子の層構成の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。(i)陽極/発光層/電子輸送層/陰極(ii)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極(iii)陽極/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極(iV)陽極/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極(v)陽極/陽極バッファー層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
《陽極》
有機EL素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としてはAu等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In23−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。陽極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させ、例えば、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成する。陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また、陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。さらに膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の材料は光取りだし側の電極として特に好ましい。
【0112】
《陰極》
一方、陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えばマグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。これら電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法で、薄膜を形成させる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、また膜厚は通常10nm〜1000nm、好ましくは50nm〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光を透過させるため、有機EL素子の陽極または陰極のいずれか一方が、透明または半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
【0113】
次に、本発明に係る有機EL素子の構成層として用いられる、発光層、注入層、正孔輸送層、電子輸送層等について説明する。
【0114】
《注入層》:電子注入層、正孔注入層
注入層は必要に応じて設け、電子注入層と正孔注入層があり、上記のごとく陽極と発光層または正孔輸送層の間、及び、陰極と発光層または電子輸送層との間に存在させてもよい。
【0115】
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日 エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されており、正孔注入層(陽極バッファー層)と電子注入層(陰極バッファー層)とがある。
【0116】
陽極バッファー層(正孔注入層)は、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファー層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファー層、アモルファスカーボンバッファー層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子バッファー層等が挙げられる。
【0117】
陰極バッファー層(電子注入層)は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的にはストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。
【0118】
上記バッファー層(注入層)はごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるが、その膜厚は0.1nm〜100nmの範囲が好ましい。
【0119】
阻止層は、上記のごとく、有機化合物薄膜の基本構成層の他に必要に応じて設けられるものである。例えば特開平11−204258号、同11−204359号、及び「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日 エヌ・ティー・エス社発行)」の237頁等に記載されている正孔阻止(ホールブロック)層がある。
【0120】
前記のように、正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層であり、電子を輸送する機能を有しつつ、正孔を輸送する能力が著しく小さい材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
【0121】
一方、電子阻止層とは、広い意味では正孔輸送層であり、正孔を輸送する機能を有しつつ電子を輸送する能力が著しく小さい材料からなり、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
【0122】
正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。
【0123】
この注入層は、上記材料を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。注入層の膜厚については特に制限はないが、通常は5〜5000nm程度である。この注入層は、上記材料の一種または二種以上からなる一層構造であってもよい。
【0124】
製膜に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は、使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度50〜450℃、真空度10-6Pa〜10-2Pa、蒸着速度0.01nm〜50nm/秒、基板温度−50℃〜300℃、膜厚0.1nm〜5μmの範囲で適宜選ぶことが望ましい。
【0125】
《発光層》
本発明において、発光層に用いられる発光材料の種類については特に制限はなく、従来有機EL素子における発光材料として公知のものを用いることができる。このような発光材料は主に有機化合物であり、所望の色調により、例えば、Macromol.Symp.125巻17頁から26頁に記載の化合物が挙げられる。
【0126】
発光材料は発光性能の他に、正孔注入機能や電子注入機能を併せ持っていても良く、正孔注入材料や電子注入材料の殆どが発光材料としても使用できる。
【0127】
発光材料は、p−ポリフェニレンビニレンやポリフルオレンのような高分子材料でも良く、さらに前記発光材料を高分子鎖に導入した、または前記発光材料を高分子の主鎖とした高分子材料を使用しても良い。
【0128】
また、発光層には発光ホスト物質に加えて、ドーパント(ゲスト物質)を併用してもよく、有機EL素子のドーパントとして使用される公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。
【0129】
(発光ホストと発光ドーパント)
発光層中の主成分であるホスト化合物に対する発光ドーパントとの混合比は好ましくは質量で0.1質量%〜30質量%未満の範囲である。
【0130】
発光ドーパントは、大きく分けて、蛍光を発光する蛍光性ドーパントと燐光を発光する燐光性ドーパントの2種類がある。
【0131】
蛍光性ドーパントの代表例としては、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素等の有機色素、または希土類錯体系蛍光体等が挙げられる。
【0132】
燐光性ドーパントの代表例としては、好ましくは元素の周期表で8属、9属、10属の金属を含有する錯体系化合物であり、更に好ましくは、イリジウム化合物、オスミウム化合物であり、中でも最も好ましいのはイリジウム化合物である。
【0133】
本発明においては、発光ホストに加えて、発光層の少なくとも1層に、燐光性化合物(燐光性ドーパント)を用いることが好ましい。
【0134】
燐光性ドーパントの具体例としては、前記の他、以下の特許公報に記載されている化合物がある。
【0135】
国際公開第00/70655号パンフレット、特開2002−280178号公報、特開2001−181616号公報、特開2002−280179号公報、特開2001−181617号公報、特開2002−280180号公報、特開2001−247859号公報、特開2002−299060号公報、特開2001−313178号公報、特開2002−302671号公報、特開2001−345183号公報、特開2002−324679号公報、国際公開第02/15645号パンフレット、特開2002−332291号公報、特開2002−50484号公報、特開2002−332292号公報、特開2002−83684号公報、特表2002−540572号公報、特開2002−117978号公報、特開2002−338588号公報、特開2002−170684号公報、特開2002−352960号公報、国際公開第01/93642号パンフレット、特開2002−50483号公報、特開2002−100476号公報、特開2002−173674号公報、特開2002−359082号公報、特開2002−175884号公報、特開2002−363552号公報、特開2002−184582号公報、特開2003−7469号公報、特表2002−525808号公報、特開2003−7471号公報、特表2002−525833号公報、特開2003−31366号公報、特開2002−226495号公報、特開2002−234894号公報、特開2002−235076号公報、特開2002−241751号公報、特開2001−319779号公報、特開2001−319780号公報、特開2002−62824号公報、特開2002−100474号公報、特開2002−203679号公報、特開2002−343572号公報、特開2002−203678号公報等。
【0136】
その具体例の一部を下記に示す。
【0137】
【化1】
【0138】
【化2】
【0139】
【化3】
【0140】
(発光ホスト化合物)
本発明に用いられる発光ホスト化合物としては、構造的には特に制限はないが、代表的にはカルバゾール誘導体(カルバゾール誘導体としてはCBP等がよく知られている。)、トリアリールアミン誘導体、芳香族ボラン誘導体(トリアリールボラン誘導体)、含窒素複素環化合物、チオフェン誘導体、フラン誘導体、オリゴアリーレン化合物等の基本骨格を有するもの、または、カルボリン誘導体やジアザカルバゾール誘導体(ここで、ジアザカルバゾール誘導体とは、カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭化水素環の少なくとも一つの炭素原子が窒素原子で置換されているものを表す。)等が挙げられる。
【0141】
中でもカルボリン誘導体、ジアザカルバゾール誘導体等が好ましく用いられる。
【0142】
以下に、カルボリン誘導体、ジアザカルバゾール誘導体等の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0143】
【化4】
【0144】
【化5】
【0145】
また、本発明に用いられる発光ホストは低分子化合物でも、繰り返し単位をもつ高分子化合物でもよく、ビニル基やエポキシ基のような重合性基を有する低分子化合物(蒸着重合性発光ホスト)でもよい。
【0146】
発光ホストとしては、正孔輸送能、電子輸送能を有しつつ、且つ、発光の長波長化を防ぎ、高Tg(ガラス転移温度)である化合物が好ましい。
【0147】
発光ホストの具体例としては、前記のほか以下の文献に記載されている化合物が好適である。例えば、特開2001−257076号公報、同2002−308855号公報、同2001−313179号公報、同2002−319491号公報、同2001−357977号公報、同2002−334786号公報、同2002−8860号公報、同2002−334787号公報、同2002−15871号公報、同2002−334788号公報、同2002−43056号公報、同2002−334789号公報、同2002−75645号公報、同2002−338579号公報、同2002−105445号公報、同2002−343568号公報、同2002−141173号公報、同2002−352957号公報、同2002−203683号公報、同2002−363227号公報、同2002−231453号公報、同2003−3165号公報、同2002−234888号公報、同2003−27048号公報、同2002−255934号公報、同2002−260861号公報、同2002−280183号公報、同2002−299060号公報、同2002−302516号公報、同2002−305083号公報、同2002−305084号公報、同2002−308837号公報等。
【0148】
その他、公知の発光ホストとして、後述の電子輸送材料および正孔輸送材料もその相応しい一例として挙げられる。
【0149】
発光層は、上記化合物を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法などの公知の薄膜化法により製膜して形成することができる。発光層としての膜厚は、特に制限はないが、通常は5nm〜5μmの範囲で選ばれる。この発光層は、これらの発光材料一種または二種以上からなる一層構造であってもよいし、あるいは、同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0150】
《正孔輸送層》
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。正孔輸送層は単層もしくは複数層設けることができる。
【0151】
正孔輸送材料としては、特に制限はなく、従来、光導伝材料において、正孔の電荷注入輸送材料として慣用されているものやEL素子の正孔注入層、正孔輸送層に使用される公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。
【0152】
正孔輸送材料は、正孔の注入もしくは輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また、導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。
【0153】
正孔輸送材料としては、上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第三級アミン化合物を用いることが好ましい。
【0154】
芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル;N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル;N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、さらには、米国特許第5,061,569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。
【0155】
さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0156】
また、p型−Si、p型−SiC等の無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することができる。
【0157】
正孔輸送材料は、高Tgである化合物が好ましい。
【0158】
この正孔輸送層も、上記正孔輸送材料を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。正孔輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5〜5000nm程度である。この正孔輸送層は、上記材料の一種または二種以上からなる一層構造であってもよい。
【0159】
《電子輸送層》
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。電子輸送層は、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、電子輸送層は単層もしくは複数層設けることができる。
【0160】
例えば、白金錯体は、正孔阻止材料(電子輸送材料)として用いることができる。従って、正孔阻止層を構成層として有する有機EL素子において、正孔阻止材料として用いてもよく、また、電子輸送層中に正孔阻止材料として、含有されていてもよい。この場合電子輸送層が正孔阻止層を兼ねることになる。
【0161】
電子輸送材料としては、その他、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
【0162】
従来、単層の電子輸送層、及び複数層とする場合は発光層に対して陰極側に隣接する電子輸送層に用いられる電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる)としては、下記の材料が知られている。即ち、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレンなどの複素環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体などが挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。
【0163】
さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0164】
また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)など、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、GaまたはPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。その他、メタルフリー若しくはメタルフタロシアニン、またはそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基などで置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。また、発光層の材料として例示したジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることができるし、正孔注入層、正孔輸送層と同様に、n型−Si、n型−SiCなどの無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
【0165】
電子輸送層に用いられる好ましい化合物は、青色または白色の発光素子、表示装置および照明装置に適用する場合には、蛍光極大波長が415nm以下であることが好ましく、リン光の0−0バンドが450nm以下であることがさらに好ましい。
【0166】
電子輸送層に用いられる化合物は、高Tgである化合物が好ましい。
【0167】
この電子輸送層は、上記電子輸送材料を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。電子輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5〜5000nm程度である。この電子輸送層は、上記材料の一種または二種以上からなる一層構造であってもよい。
【0168】
有機化合物薄膜の薄膜化の方法として蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は、使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度50〜450℃、真空度10-6Pa〜10-2Pa、蒸着速度0.01nm〜50nm/秒、基板温度−50℃〜300℃、膜厚0.1nm〜5μmの範囲で適宜選ぶことが望ましい。
【0169】
これらの層の形成後、その上に陰極用物質からなる薄膜を、1μm以下好ましくは50nm〜200nmの範囲の膜厚になるように、例えば蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陰極を設けることにより、所望の有機EL素子が得られる。
【0170】
前記の基板上に、これらの有機材料を、前記の層構成で形成し有機ELデバイスは構成されるが、発光層に用いる発光材料として、発光ホスト、およびドーパントとして、それぞれ、青、緑、赤に発光する発光材料を選択して、3色に発光を有する有機EL素子をそれぞれ作製し、これを素子として、フルカラー表示装置を構成することができる。また、白色発光素子とするには、有機EL材料を用い異なる複数の発光色を同時に発光させて混色により白色発光を得ればよく、異なる複数の発光色を得るためには、ホスト化合物に発光ドーパントを複数組み合わせ混合する、また複数のリン光または蛍光で発光する材料を、組み合わせ複数層で構成(また、中間層を設けても良い)する等いずれでも良い。このように、本発明の有機EL素子は、フルカラーの表示デバイス、ディスプレーに加えて、白色光源として、各種発光光源、照明装置等に用いることができる。また動画像を再生する表示デバイスとして使用する場合、駆動方式は単純マトリックス(パッシブマトリックス)方式でもアクティブマトリックス方式でもどちらでもよい。
【0171】
本発明においては、有機EL素子各層を、本発明に係わる前記有機EL用樹脂基板上に形成して、周囲環境の水蒸気、または酸素等のガスに起因する、素子或いはデバイスの劣化を防止するものであるが、以下に、本発明に係わる前記基板を用いた、ガスバリア性が高く、光の取り出し効率に優れた有機ELデバイスの作製の具体的な実施の形態について説明する。
【0172】
《有機ELデバイスの作製》
本発明の有機ELデバイスの作製方法の一例として、本発明の有機EL用樹脂フィルム基板上に有機EL素子各層を形成する方法について説明する。
【0173】
まず前記の第1の実施態様で示した、図3で示されるガスバリア層の最表面に光を回折する凹凸構造を設けた有機EL用樹脂フィルム基板は、樹脂フィルム基板として、PES(ポリエーテルスルホン)フィルム(厚み200μm)基板上に、応力緩和層乃至接着層として、PMMA膜をWO00/36665に記載された方法に従って真空蒸着によりポリメチルメタクリレートオリゴマーから形成し、重合させ形成(膜厚は200nm)したのち、この上に、大気圧プラズマCVD法により酸化珪素の膜を形成し(膜厚200nm)、更に前記の方法で400nmの厚みでPMMA膜を形成し、表面にインプリント成形にて金型から凹凸を転写して凹凸を形成し作製する。即ち予め形成した型付けのためのエンボスを有するステンレスロールに加熱、押圧することで、ピッチ(周期)300nmで、直径150nm、深さ120nmの正方格子状に繰り返しパターンを形成する(光の回折作用により10〜580nmのいわゆる緑領域の光取り出し効率が高まる。)。
【0174】
また、第1の実施態様の1つである拡散構造についても、形成した最表面のPMMA膜に、波形形状をもつエンボスを有するステンレスロールを用いて加熱押圧するインプリント成形により型付けを施すことで、平均ピッチ3μm、平均高さ500nmのランダムなゆるやか波型形状を有する表面が形成される。
【0175】
同様に第2の実施態様(図5)における拡散層として、酸化珪素層上に、最表面の層として設けた光を回折もしくは拡散させる層(拡散層)としては、合成酸化チタン粒子(平均粒子径2.1μm、屈折率2.5)を固形分濃度で10%、熱架橋性フッ素樹脂(6%MEK溶液;商品名JN−7228、JSR(株)製)中に含有、分散させ、また中空シリカ微粒子(触媒化成工業社製 P−4)を固形分でフッ素系樹脂と同量混合し、塗布、120℃で乾燥、紫外線照射、更に120℃で熱硬化させ有機EL用樹脂基板を作製した(厚み3μm)。拡散層の屈折率は1.37であった。
【0176】
第4の実施態様(図6)となる基板は、回折構造として、前記の通りに、PMMAからなる応力緩和層上に、例えばピッチ(周期)300nm、直径150nm、深さ120nmの孔を正方格子状に配列した表面を前記の方法で形成し、次いで、この上にプラズマCVD法によりSiN(窒化珪素)を150nm厚形成する。形成後表面をMIPOX製、研磨テープ(15000番)で削り突起のない平滑な膜とした。この基板において、表面窒化珪素層の屈折率は1.8であった。
【0177】
また、拡散構造として、前記同様に、真空紫外エキシマランプを用いて、PMMA上に前記同様、平均ピッチが3μm、平均高さが500nmとなるようなランダムな波状の平面を形成し、同様に窒化珪素層を形成した基板を作製することができる。
【0178】
第5の実施態様となる基板は、前記第4の実施態様において、回折構造を表面に有するPMMAからなる応力緩和層にかえて、光を回折もしくは拡散させる層(拡散層)として、合成酸化チタン粒子(平均粒子径2.1μm、屈折率2.5)を固形分濃度で10%、熱架橋性フッ素樹脂(6%MEK溶液;商品名JN−7228、JSR(株)製)中に含有、分散させ、また中空シリカ微粒子(触媒化成工業社製 P−4)を固形分でフッ素系樹脂と同量混合し、塗布、120℃で乾燥、紫外線照射、更に120℃で熱硬化させた層(厚み3μm)を形成した以外は同様にして作製した。これによれば、拡散層の屈折率は1.37であった。最表面に100nm厚の窒化珪素層(屈折率1.8)を有する。
【0179】
第6の実施態様となる基板は、図7に示したように、樹脂フィルム基板上に、応力緩和層(PMMA、200nm)、ガスバリア層(酸化珪素、200nm)をそれぞれ交互に2層有するが、2層目のガスバリア層上に、光を回折もしくは拡散させる層(拡散層)として、合成酸化チタン粒子(平均粒子径2.1μm、屈折率2.5)を固形分濃度で10%、熱架橋性フッ素樹脂(6%MEK溶液;商品名JN−7228、JSR(株)製)中に含有、分散させ、また中空シリカ微粒子(触媒化成工業社製 P−4)を固形分でフッ素系樹脂と同量混合し、塗布、120℃で乾燥、紫外線照射、更に120℃で熱硬化させ有機EL用樹脂基板を作製した(厚み3μm)。拡散層の屈折率は1.37であった。
【0180】
該拡散層上に前記同様に、プラズマCVD法によりSiN(窒化珪素)を200nmの厚みで形成してガスバリア層とした。
【0181】
このようにして形成した各有機EL用樹脂フィルム基板上に、バイアススパッター法を用いてスパッタリング法によりITO膜を作製し(厚さ150nm、屈折率2.0、シート抵抗約10Ω/m2)、ITO膜形成後、研磨テープ(MIPOX製、研磨テープ(15000番))を用いて表面を10nm程度研磨して平滑化する。
【0182】
形成されたITO膜からなる陽極上に、素子材料である正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層の有機化合物薄膜を形成させる。
【0183】
即ち、上記で得られた光取りだし構造付きのITO膜付き有機EL用樹脂フィルム基板を、真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、タンタル製抵抗加熱ボートに、正孔注入/輸送層材料として、例えばα−NPDを、発光層ホスト、発光層ドーパントとして、れぞれ、例えばCBP、Ir−12を、また正孔阻止層材料BCP、電子輸送層材料Alq3を順次容れ、真空槽を4×10-4Pa程度まで減圧し、加熱し、蒸着速度0.1nm/秒〜0.2nm/秒で各材料層を基板上に順次蒸着する。発光ホストであるCBPと発光ドーパントは蒸着速度で比率を適宜調整する。次いで、陰極バッファー層を設け、次いで陰極材料として例えばアルミニウムを膜厚150nm程度の蒸着し、陰極を作製し、有機EL素子を作製した。
【0184】
【化6】
【0185】
本発明の有機EL用樹脂フィルム基板上に、この様に有機EL素子を形成し得られた有機ELデバイスは、2〜40V程度の電圧を印加すると、発光が観測できる。
【0186】
光取りだし効率向上のための、前記、回折構造や拡散構造、また拡散層等を有するものについては、これらをもたないものと比較するといずれも光の取り出し効率が向上するため、発光輝度が向上する。また、バリア層を有することで、基板を通してのガスの透過が抑えられるため、水分や、酸素等のガスの影響による、有機EL素子の劣化を防止することができる。
【0187】
本発明の樹脂フィルム基板を光取りだし側の基板として用いることで、有機EL素子を水分や、酸素等の有害ガスから封止することができる。即ち、本発明の透明基板上に、有機EL素子を形成した後、該基板と、陰極に接する側からもう一つのガスバリアフィルムを合わせて、基板の有機EL素子を形成しなかった囲の部分で接着して、封止することもできる。これにより、有機ELデバイスの寿命を更に向上させることができる。実施態様1の有機EL用樹脂フィルム基板を用い、該基板上に有機EL素子を形成し、封止した有機ELデバイスの断面構造の一例を模式的に図8に示した。
【0188】
ここにおいて、樹脂フィルム基板1上に応力緩和層4、ガスバリア層3,更に回折構造が表面に設けられた応力緩和層4と順次形成された本発明に係わる有機EL用樹脂フィルム基板上に、陽極(ITO)5、有機EL各層6、陰極7が設けられ、更に、もう一つのガスバリアフィルム8と、接着剤9により、樹脂フィルム基板周囲で、互いに接着封止され他項増構造を有する。尚、矢印は光の取り出し方向示す。
【0189】
用いられるもう一つの封止材料(ガスバリアフィルム)としては、ガスバリア層を有する別のフィルム、例えば、包装材等に使用される公知のガスバリア性フィルム、例えばプラスチックフィルム上に酸化珪素や、酸化アルミニウムを蒸着したもの、緻密なセラミック層と、柔軟性を有する衝撃緩和ポリマー層を交互に積層した構成のガスバリア性フィルム等を用いることができる。また特に、樹脂ラミネート(ポリマー膜)された金属箔は、光取りだし側のガスバリアフィルムとして用いることはできないが、低コストで更に透湿性の低い封止材料であり封止フィルムとして好ましい。本発明の有機EL用樹脂フィルム基材は透明であり、光取りだし側の基板として用いることができるため、もう一つの封止材料が、例え、光を透過しない材料であっても、ガス透過率が低い材料であればこれを用いることができる。
【0190】
他の実施態様に係わる、表面の拡散構造により、またバリア層と共に拡散層を形成した有機EL用樹脂フィルム基板を用いた場合においても、実施態様1に係る樹脂フィルム基板に代えて、これらを光取りだし側の基板として用いることで、同様に、光取りだし効率が向上し、かつ有害なガスから封止された有機ELデバイスが得られる。
【符号の説明】
【0191】
1 樹脂フィルム基板
3 ガスバリア層
4 応力緩和層
5 陽極(ITO)
6 有機EL各層
7 陰極
8 ガスバリアフィルム
9 接着剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8