特許第5943619号(P5943619)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5943619
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】積層型熱交換器及び熱交換システム
(51)【国際特許分類】
   F28D 9/02 20060101AFI20160621BHJP
   B23K 20/00 20060101ALI20160621BHJP
   F28F 3/00 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   F28D9/02
   B23K20/00 310L
   F28F3/00 301Z
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-18128(P2012-18128)
(22)【出願日】2012年1月31日
(65)【公開番号】特開2013-155971(P2013-155971A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2014年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100061745
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】野一色 公二
(72)【発明者】
【氏名】三輪 泰健
(72)【発明者】
【氏名】伴 浩之
【審査官】 河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−171177(JP,A)
【文献】 特開2005−241049(JP,A)
【文献】 特開2009−030872(JP,A)
【文献】 特開2006−322692(JP,A)
【文献】 特表2007−506928(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/139425(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 9/00−9/04
F25B 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の機械から送出された流体の熱交換を行う複数の熱交換ユニットが積層されてなる積層型熱交換器であって、
前記熱交換ユニットは、前記流体の流路が形成された複数の流路板と、冷却用の媒体の流路が形成された複数の流路板とがあって、前記流体の流路が形成された流路板と前記冷却用の媒体の流路が形成された流路板とが交互に積層されたものが1つまたは複数積層された構造を有し、
前記流体の流路が形成された複数の流路板のそれぞれは、表面に形成された凹状の溝を前記流体の流路として有すると共に、前記冷却用の媒体の流路が形成された複数の流路板のそれぞれは、表面に形成された凹状の溝を前記冷却用の流体の流路として有しており、
前記流体の流路が形成された複数の流路板、及び前記冷却用の媒体の流路が形成された複数の流路板には、最上層の熱交換ユニットから最下層の熱交換ユニットまでを貫通し、前記冷却用の媒体の流路が形成されたそれぞれの流路板に前記冷却用の媒体を供給するINの貫通孔と、前記最上層の熱交換ユニットから最下層の熱交換ユニットまでを貫通し、前記冷却用の媒体の流路が形成されたそれぞれの流路板から前記冷却用の媒体を排出するOUTの貫通孔と、が形成されている
ことを特徴とする積層型熱交換器。
【請求項2】
前記複数の熱交換ユニットの各々が前記複数の機械の各々と対になっていることを特徴とする請求項1に記載の積層型熱交換器。
【請求項3】
前記複数の熱交換ユニットのそれぞれには、熱交換ユニットに流体を供給する供給孔と、前記供給された流体を排出する排出孔とが設けられており、
各熱交換ユニットに設けられた供給孔及び排出孔は、熱交換ユニットの積層方向に沿って直接外部に連通する長さに形成されていて、平面視での配置位置が互いに重ならないように形成されていることを特徴とする請求項2に記載の積層型熱交換器。
【請求項4】
流体に対して熱量の変化を起こさせる複数の機械と、前記複数の機械によって熱量が変化した流体の熱交換を行う熱交換ユニットが積層されてなる積層型熱交換器と、を有する熱交換システムにおいて、
前記積層型熱交換器が、請求項1〜のいずれかに記載された積層型熱交換器であることを特徴とする熱交換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路板を積層して形成された積層型熱交換器及びこの積層型熱交換器を用いた熱交換システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
加圧及び圧縮によって気体(ガス)を高圧ガス又は液化ガスに変化させて、タンクやボンベなどに充填するシステムは、ガスの製造プラントや供給ステーションなどで広く採用されている。近年では、例えば水素ガスの需要拡大が続いており、水素ガスの製造プラントや供給ステーションにおいて、効率よく水素ガスを充填するシステムの開発が望まれている。
【0003】
ガス供給ステーションなどでガスを充填する場合には、当該ガスをコンプレッサで高圧に圧縮してその体積を小さくし、タンクやボンベに充填する。しかし、ガスは高圧に圧縮されると発熱するので、圧縮されたガスを充填する前に冷却する必要がある。そこで、ガスの供給ステーションなどでは、コンプレッサで圧縮されて高温になったガスを熱交換器へ導いて冷却し、冷却された高圧ガスをタンクやボンベに充填している。
【0004】
このとき用いられる熱交換器には、フィン型やプレート型と呼ばれる熱交換器があり、例えば、特許文献1に開示されている。
特許文献1に開示のプレート型熱交換器は、隔壁により内部を複数のユニットに区分された一体構造を有するプレート式熱交換器において、前記区分された複数のユニットには、少なくとも一つのユニットが複数の流体の入口又は出口を有すると共に、該複数のユニットは、前記入口と出口に接続する少なくとも一方が複数の異なった加熱流路又は被加熱流路を形成することを特徴とするものである。
【0005】
特許文献1は、このプレート式熱交換器によって、配管が容易となって小型軽量化が可能になるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−283668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、コンプレッサで高圧に圧縮されて温度が上昇したガスは、タンクやボンベへ充填する前に熱交換器で冷却される。しかし、ガスの圧縮は、1台のコンプレッサで1度だけ圧縮されるという、いわゆる一段式の圧縮だけに限らず、ガスを複数台のコンプレッサに順に通過させることで、コンプレッサで一旦圧縮されたガスを次段のコンプレッサでさらに圧縮する多段式の圧縮が行われることがある。
【0008】
多段式の圧縮の場合、コンプレッサで圧縮するたびにガスの温度が上昇するので、圧縮されたガスは、次段のコンプレッサに供給される前に熱交換器に通されて冷却される。つまり、コンプレッサの台数と同じ台数の熱交換器を用意して、複数台のコンプレッサと同じく複数台の熱交換器とを交互に直列に接続した多段式の圧縮システムを構築する必要がある。
【0009】
特許文献1に開示されるような従来の熱交換器をこのような多段式の圧縮システムに用いた場合、複数台のコンプレッサと熱交換器を配置するために広大な設置面積が必要になるという問題や、コンプレッサ及び熱交換器の台数が増えれば配管が複雑になってさらに広大な設置面積が必要になるという問題が生じる。
さらに、従来の熱交換器は耐圧性が低いので、多段式の圧縮によって非常に高圧となったガスを扱うには不向きであり、耐圧性の高い熱交換器の開発も重要な課題である。
【0010】
そこで、本発明は、上述した問題及び課題に鑑み、耐圧性が高くコンパクトな積層型熱交換器、及びその積層型熱交換器を用いた熱交換システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
本発明に係る積層型熱交換器は、複数の機械から送出された流体の熱交換を行う複数の熱交換ユニットが積層されてなる積層型熱交換器であって、前記熱交換ユニットは、前記流体の流路が形成された複数の流路板と、冷却用の媒体の流路が形成された複数の流路板とがあって、前記流体の流路が形成された流路板と前記冷却用の媒体の流路が形成された流路板とが交互に積層されたものが1つまたは複数積層された構造を有し、前記流体の流路が形成された複数の流路板のそれぞれは、表面に形成された凹状の溝を前記流体の流路として有すると共に、前記冷却用の媒体の流路が形成された複数の流路板のそれぞれは、表面に形成された凹状の溝を前記冷却用の流体の流路として有しており、前記流体の流路が形成された複数の流路板、及び前記冷却用の媒体の流路が形成された複数の流路板には、最上層の熱交換ユニットから最下層の熱交換ユニットまでを貫通し、前記冷却用の媒体の流路が形成されたそれぞれの流路板に前記冷却用の媒体を供給するINの貫通孔と、前記最上層の熱交換ユニットから最下層の熱交換ユニットまでを貫通し、前記冷却用の媒体の流路が形成されたそれぞれの流路板から前記冷却用の媒体を排出するOUTの貫通孔と、が形成されていることを特徴とする。
【0012】
ここで、前記複数の熱交換ユニットの各々が前記複数の機械の各々と対になっているとよい。言い換えれば、前記複数の熱交換ユニットの各々が前記複数の機械の各々と一対一に対応しているとよい。
さらに、前記複数の熱交換ユニットのそれぞれには、熱交換ユニットに流体を供給する供給孔と、前記供給された流体を排出する排出孔とが設けられており、各熱交換ユニットに設けられた供給孔及び排出孔は、熱交換ユニットの積層方向に沿って直接外部に連通する長さに形成されていて、平面視での配置位置が互いに重ならないように形成されていると好ましい。
【0013】
こで、本発明に係る熱交換システムは、流体に対して熱量の変化を起こさせる複数の機械と、前記複数の機械によって熱量が変化した流体の熱交換を行う熱交換ユニットが積層されてなる積層型熱交換器と、を有する熱交換システムにおいて、前記積層型熱交換器が、上述の積層型熱交換器であることを特徴とする
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、耐圧性が高くコンパクトな熱交換器及び熱交換システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】多段式の熱交換システムの構成を示す概念図であり、(a)は従来の熱交換システムの構成を示す概念図、(b)は本発明の第1実施形態による熱交換システムの構成を示す概念図である。
図2】第1実施形態による積層型熱交換器の断面構造を示す図である。
図3】第1実施形態による積層型熱交換器の断面構造を示す図である。
図4】第1実施形態による積層型熱交換器を構成する全てのプレートの構成を示す平面概念図である。
図5】第1実施形態による積層型熱交換器を構成するプレートの構成を示す平面図であり、(a)は流路プレートの構成を示す平面図、(b)は冷却用プレートの構成を示す平面図である。
図6】第1実施形態による積層型熱交換器の各熱交換ユニットに供給される流体の差圧について説明する図である。
図7】本発明の第2実施形態による積層型熱交換器で用いられる冷却用プレートの構成を示す平面図である。
図8】第2実施形態による積層型熱交換器の断面構造を示す図である。
図9】第2実施形態による積層型熱交換器の断面構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の各実施形態を、図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
(熱交換システムの概略)
図を参照しながら、本発明の第1実施形態による熱交換システムを説明する。
図1は、複数台の機械であるコンプレッサと複数台の熱交換器を用いた多段式の熱交換システムの構成を示す概念図である。図1(a)は、従来の熱交換器を用いた熱交換システムの構成を示す概念図であり、図1(b)は、本実施形態による積層型熱交換器2aを用いた熱交換システム1aの構成を示す概念図である。
【0017】
本実施形態で説明する熱交換システム1aは、複数台のコンプレッサを直列に接続する
ことで気体(ガス)を順次加圧及び圧縮して高圧ガスに変化させる多段式の圧縮工程において、各コンプレッサの後段に熱交換器を備えたものである。
(従来の熱交換システム)
図1(a)に示す熱交換システムは、従来の熱交換器を用いた場合の構成を示している。図1(a)の熱交換システムは、1st-comp〜4th-compとして示される第1コンプレッサ〜第4コンプレッサの4台のコンプレッサと、1st-ex〜4th-exとして示される第1熱交換器〜第4熱交換器の4台の熱交換器とによって構成されている。
【0018】
この各4台ずつのコンプレッサ及び熱交換器において、まず第1コンプレッサの吐出口と第1熱交換器の吸込口がパイプで接続され、第1熱交換器の吐出口と第2コンプレッサの吸込口がパイプで接続される。このように、従来の熱交換システムは、コンプレッサの吐出口と熱交換器の吸込口を接続しつつ、図1(a)に示すように構成されている。
(本願の熱交換システム)
これに対し、図1(b)に示す熱交換システム1aは、1st-comp〜4th-compとして示される第1コンプレッサC1〜第4コンプレッサC4の4台の機械であるコンプレッサと、1st-unit〜4th-unitとして示される第1熱交換ユニットU1〜第4熱交換ユニットU4の4つの熱交換ユニットが積層されて一体化された積層型熱交換器2aとによって構成されている。
【0019】
図1(b)に示す積層型熱交換器2aの第1熱交換ユニットU1〜第4熱交換ユニットU4は、図1(a)に示す従来の第1熱交換器〜第4熱交換器に対応した働きをなすものであって、第1熱交換ユニットU1は第1コンプレッサC1から吐出されて高温となった流体の熱交換(冷却)を行い、第2熱交換ユニットU2は第2コンプレッサC2から吐出されて高温となった流体の熱交換(冷却)を行う。第3熱交換ユニットU3は第3コンプレッサC3から吐出されて高温となった流体の熱交換を(冷却)を行い、第4熱交換ユニットU4は第4コンプレッサC4から吐出されて高温となった流体の熱交換(冷却)を行う。
【0020】
このように本実施形態による熱交換システム1aは、流体(例えば、水素ガス)に対して熱量の変化を起こさせる複数の機械(例えば、第1コンプレッサC1〜第4コンプレッサC4)と、これら複数の機械によって熱量が変化した流体の熱交換を行う熱交換ユニット(例えば、第1熱交換ユニットU1〜第4熱交換ユニットU4)が積層されてなる積層型熱交換器2aと、を有するものである。
【0021】
本実施形態では、流体に熱量の変化を生じさせる複数の機械が直列に接続されていて1本の流路を形成している状態を、複数の機械が多段に接続されている状態と呼ぶ。本実施形態のように、複数のコンプレッサC1〜C4が多段に接続されていれば、流体である水素ガスは、この多段のコンプレッサC1〜C4によって形成された1本の流路を、第1コンプレッサC1、第2コンプレッサC2、第3コンプレッサC3、第4コンプレッサC4の順に流れる。しかし、水素ガスは、コンプレッサC1〜C4を通過するたびに熱量が変化して温度が上昇するので、第1コンプレッサC1〜第4コンプレッサC4から吐出された水素ガスは、コンプレッサC1〜C4を通過するたびに対応する第1熱交換ユニットU1〜第4熱交換ユニットU4に流入して熱交換が行われ、次段のコンプレッサに吸入される。
【0022】
つまり、第1コンプレッサC1で圧縮(加圧)されて高温となった水素ガスは、積層型熱交換器2aの第1熱交換ユニットU1に流入して冷却され、次段の第2コンプレッサC2に吸入される。吸入された水素ガスは、第2コンプレッサC2でさらに圧縮されて高温となり、積層型熱交換器2aに戻されて第2熱交換ユニットU2に流入し冷却される。このような循環を、水素ガスが第4コンプレッサC4〜第4熱交換ユニットU4を通過するまで繰り返すことで、水素ガスは非常に高圧なガスとなる。
【0023】
このように、第1コンプレッサC1から吐出された流体は第1熱交換ユニットU1に流入し、第2コンプレッサC2から吐出された流体は第2熱交換ユニットU2に流入しているので、第1コンプレッサC1と第1熱交換ユニットU1とは、互いに対になっており、第2コンプレッサC2と第2熱交換ユニットU2とも、互いに対になっているといえる。
同様に、第3コンプレッサC3は第3熱交換ユニットU3と対に、第4コンプレッサC4は第4熱交換ユニットU4と対になっているといえる。
このとき、冷却水は、積層方法によって各ユニットごとに流量管理し冷却することや、全ユニットを一括し冷却することも可能である。
【0024】
本実施形態による積層型熱交換器2aは、従来の熱交換システムにおける複数の熱交換器の機能を、一体化された流路構造体によって実現するものである。本実施形態による積層型熱交換器2aは、従来の熱交換器よりも小型にすることができるとともに、コンプレッサとの配管を簡素かつ容易にすることができる。さらに、コンプレッサも含んだ熱交換システムの設置に必要な設置場所の面積を減らすことができる。
【0025】
(積層型熱交換器の構成)
図2及び図3を参照して、本実施形態による積層型熱交換器2aの構成を説明する。
図2は、積層型熱交換器2aの構造を示す図であって、積層型熱交換器2aのAA断面とCC断面を示している。図3は、積層型熱交換器2aのBB断面を示す図である。
積層型熱交換器2aは、1st〜4thで示される第1熱交換ユニットU1〜第4熱交換ユニットU4を積層し、その積層体の上面に上面板(上エンドプレート)3を積層し、下面に下面板(下エンドプレート)4を積層することで構成されたものである。第1熱交換ユニットU1〜第4熱交換ユニットU4のそれぞれは、流体である水素ガスの流路が形成された平板状の流路板(流路プレート)と冷却用の媒体である冷却水の流路が形成された平板状の流路板(冷却用プレート)を交互に複数枚積層して構成されたものである。
【0026】
このとき、求められる熱交換器性能によっては、水素側の流路プレートの両面側を冷却用プレートで挟むように配置して積層しても良い。
従って、第1熱交換ユニットU1〜第4熱交換ユニットU4のそれぞれの外観は、平板状の流体用プレートと冷却用プレートを積層した直方体形状となる。このような直方体形状の第1熱交換ユニットU1〜第4熱交換ユニットU4を積層するので、積層型熱交換器2aは、第1熱交換ユニットU1〜第4熱交換ユニットU4の積層方向に高い直方体形状となる。
【0027】
図4及び図5を参照しながら、積層型熱交換器2a内における流体及び冷却水の流れを説明する前に、第1熱交換ユニットU1〜第4熱交換ユニットU4に用いられる第1流路プレートP1〜第4流路プレートP4と、冷却用プレートCP1の構成を説明し、積層型熱交換器2aの構成を詳細に説明する。
図4は、積層型熱交換器2aを構成する全てのプレートを示す図である。図4の上段左には第1熱交換ユニットU1を構成する第1流路プレート(1st用プレート)P1が示されており、右に向かって順に、第3流路プレート(3rd用プレート)P3、第4流路プレート(4th用プレート)P4、第2流路プレート(2nd用プレート)P2が示されている。流路プレートP1〜P4を、左から順に1st用、3rd用、4th用、2nd用の順序で図示しているのは、図2及び図3において、第1熱交換ユニットU1〜第4熱交換ユニットU4が、上から順に第1、第3、第4、第2の順で積層されていることに基づいている。
【0028】
図4の下段左には積層型熱交換器の上面に積層される上面板(上エンドプレート)3が示されており、右に向かって順に、各流路プレート間に積層される冷却用プレートCP1、積層型熱交換器の下面に積層される下面板(下エンドプレート)4が示されている。
図4に示す各プレートは、積層型熱交換器2aを上面側から見た、つまり上エンドプレート3の上方から下エンドプレート4に向かう方向に沿って見たときの構成を示している。
【0029】
(第1熱交換ユニット)
まず、積層型熱交換器2aにおける第1熱交換ユニット(1st熱交換ユニット)U1は、第1流路プレート(1st用プレート)P1と冷却用プレートCP1を交互に積層することで構成されている。
(第1流路プレート)
図4に示すように、第1流路プレートP1は、例えばステンレスやアルミなどの金属からなる厚さ数ミリメートルの長方形の平板である。図4に示す第1流路プレートP1の長
手方向の両端部において、図面に向かって上端部の左側には、第1コンプレッサC1から供給された水素ガスが第1流路プレートP1に流れ込むための流体供給孔1INが穿たれて貫通孔が形成されている。また、下端部の右側には、水素ガスが第1流路プレートP1から流れ出すための流体排出孔1OUTが穿たれて貫通孔が形成されている。つまり、流体供給孔1INと流体排出孔1OUTは、第1流路プレートP1の対角方向に形成されている。
【0030】
流体供給孔1INと流体排出孔1OUTが形成された第1流路プレートP1の一方の面であって図4に描かれる上面には、水素ガスの流路が、流体供給孔1INと流体排出孔1OUTをつなぐように形成されている。この流路によって、流体供給孔1INから流入した水素ガスは、形成された流路に沿って流れ、流体排出孔1OUTから第1流路プレート外へ流出する。
【0031】
図5(a)は、図4に示した第1流路プレートP1の構成を詳細に示した図である。第1流路プレートP1に形成された流路は、第1流路プレートP1の幅方向に蛇行するように複数本形成されて、流体供給孔1INと流体排出孔1OUTをつないでいる。この複数本の流路は、互いにほぼ平行となるように形成されており、互いに交わることはない。従って、流体供給孔1INから流入した水素ガスは、流入した1本の流路だけを通って流体排出孔1OUTに達する。
【0032】
第1流路プレートP1の流路が第1流路プレートP1の幅方向に蛇行しているのは、第1流路プレートP1の限られた面積内で可能な限り流路を長くとるためであり、その目的のためには、流路は、図4及び図5に示した蛇行以外の軌跡を辿っても構わない。
このような流路は、本発明の技術分野においてマイクロチャネルと呼ばれるものであり、幅1ミリ前後の細い流路である。このマイクロチャネルと呼ばれる流路は、例えばケミカルエッチングなどのエッチング技術を用いて形成されるものである。エッチングは等方加工であるため流路の深さは流路幅の0.5倍に近づくが、本実施形態では、その深さを、流路幅の0.4〜0.6倍程度とする。
【0033】
加えて、第1流路プレートP1の長手方向の両端部において、図面に向かって上端部の右側には、第3コンプレッサC3から供給された水素ガスが後述する第3流路プレートP3に流れ込むための貫通孔である流体供給孔3INが穿たれている。また、下端部の左側には、水素ガスが第3流路プレートP3から流れ出すための貫通孔である流体排出孔3OUTが穿たれている。これら流体供給孔3INと流体排出孔3OUTは、第1流路プレートP1の流路にはつながっていない。
【0034】
また、流体排出孔1OUTと流体排出孔3OUTに通じる貫通孔との間には、後述する冷却用プレートCP1に冷却水が流れ込むための貫通孔である冷却水INが穿たれ、流体供給孔1INと流体供給孔3INに通じる貫通孔との間には、後述する冷却用プレートCP1から冷却水が流れ出すための貫通孔である冷却水OUTが穿たれている。これら流体供給孔3INと流体排出孔3OUTは、第1流路プレートP1の流路にはつながっていない。
【0035】
このような第1流路プレートP1の他方の面、つまり流路が形成されておらず図面に示されていない下面は、平滑な面となっている。
(冷却用プレート)
冷却用プレートCP1は、第1流路プレートP1とほぼ同様の構成を有しており、第1流路プレートP1と同じ材質で、長手方向の両端部において、上端部には、第1流路プレートP1と同じ位置に、流体供給孔1IN、冷却水OUT,流体供給孔3INが形成されており、下端部には、同じく第1流路プレートP1と同じ位置に、流体排出孔1OUT、冷却水IN,流体排出孔3OUTが形成されている。
【0036】
図5(b)は、図4に示した冷却用プレートCP1の構成を詳細に示した図である。冷却用プレートCP1に形成された流路も、第1流路プレートP1と同様に幅方向に蛇行するように複数本形成されて冷却水INと冷却水OUTをつないでいる。この複数の流路も、第1流路プレートP1と同様に互いにほぼ平行となるように形成されており、互いに交わることはない。従って、冷却水INから流入した冷却水は、流入した1本の流路だけを通って冷却水OUTに達する。
【0037】
このような冷却用プレートCP1の他方の面、つまり流路が形成されておらず図面に示されていない下面は、平滑な面となっている。
第1熱交換ユニットU1は、以上に説明した第1流路プレートP1と冷却用プレートCP1を交互に積層することで構成される。まず、第1熱交換ユニットU1の最下層として冷却用プレートCP1を用い、その上に第1流路プレートP1を積層して、さらにその上に冷却用プレートCP1を積層するというように、最下層の冷却用プレートCP1の上に、第1流路プレートP1と冷却用プレートCP1を交互に何層にも積層し最上層を冷却プレートCP1とする。
【0038】
ここで、積層する第1流路プレートP1の枚数は任意であるが、第1流路プレートP1の枚数を変更することによって、第1熱交換ユニットU1の容量を変更することができる。このことは、後述する第2熱交換ユニットU2〜第4熱交換ユニットU4にもあてはまるが、本実施形態では、第1熱交換ユニットU1〜第4熱交換ユニットU4の各容量が同じとなるように構成される。
【0039】
このように何層にも積層した第1流路プレートP1と冷却用プレートCP1を所定温度下で加圧して、第1流路プレートP1と冷却用プレートCP1の接合面を互いに拡散接合させると、複数のプレートが一体となった第1熱交換ユニットU1が得られる。つまり、冷却用プレートCP1の上に拡散接合された第1流路プレートP1の平滑な下面は、冷却用プレートCP1の流路の蓋となり、第1流路プレートP1の上に拡散接合された冷却用プレートCP1の平滑な下面は、第1流路プレートP1の流路の蓋となる。
【0040】
この拡散接合によって第1流路プレートP1と冷却用プレートCP1は強固に接合されるので、第1熱交換ユニットU1は、供給される流体に対して非常に高い耐圧性を備えることとなる。
直上層の下面が蓋となるように拡散接合された第1熱交換ユニットU1において、流体供給孔1INから水素ガスが供給されると、流体供給孔1INは、第1流路プレートP1の流路につながっているので水素ガスが流入するが、冷却用プレートCP1の流路とは冷却用プレートの上面と第1流路プレートの下面との接合によって隔絶されるので、水素ガスが冷却用プレートCP1の流路に流入することはない。
【0041】
同じく冷却水INから冷却水が供給されると、冷却水INは、冷却用プレートCP1の流路につながっているので冷却水が流入するが、第1流路プレートP1の流路とは第1流路プレートP1の上面と冷却用プレートCP1の下面との接合によって隔絶されるので、冷却水が第1流路プレートP1の流路に流入することはない。
(第3熱交換ユニット)
第3熱交換ユニットU3は、第1熱交換ユニットU1の直下に配置される熱交換ユニットである。第3熱交換ユニットU3に用いられる第3流路プレートP3は、第1流路プレートP1とほぼ同じ材質で大きさの部材であって、第1流路プレートP1と同様の流路が形成されている。
【0042】
(第3流路プレート)
第3流路プレートP3では、第1流路プレートP1に形成されていた流体供給孔1INと流体排出孔1OUTがなく、流体供給孔3INと流体排出孔3OUT、及び冷却水INと冷却水OUTが形成されている。第3流路プレートP3の一方の面であって図4に描かれる上面にはマイクロチャネルである流路が形成されており、この流路によって流体供給孔3INと流体排出孔3OUTがつながれる。
【0043】
この第3流路プレートP3と冷却用プレートCP1を、第1熱交換ユニットU1と同様に積層して各プレート間を拡散接合すると、第3熱交換ユニットU3が得られる。第3熱交換ユニットU3において、流体供給孔3INから水素ガスが供給されると、流体供給孔3INは、第3流路プレートP3の流路につながっているので水素ガスが流入するが、冷却用プレートCP1の流路とは冷却用プレートCP1の上面と第3流路プレートP3の下面との接合によって隔絶されるので、水素ガスが冷却用プレートCP1の流路に流入することはない。
【0044】
同じく冷却水INから冷却水が供給されると、冷却水INは、冷却用プレートCP1の流路につながっているので冷却水が流入するが、第3流路プレートP3の流路とは第3流路プレートP3の上面と冷却用プレートCP1の下面との接合によって隔絶されるので、冷却水が第3流路プレートP3の流路に流入することはない。
(第4熱交換ユニット)
第4熱交換ユニットU4は、第3熱交換ユニットU2の直下に配置される熱交換ユニットである。第4熱交換ユニットU4に用いられる第4流路プレートP4は、第1流路プレートP1及び第3流路プレートP3とほぼ同じ材質で大きさの部材であって、第1流路プレートP1及び第3流路プレートP3と同様の流路が形成されている。
【0045】
(第4流路プレート)
図4に示すように、第4流路プレートP4は、第3流路プレートP4の構成を左右反転させた構成を有しており、対角線上に形成された貫通孔は流体供給孔4INと流体排出孔4OUTである。第4流路プレートP4には、冷却水INと冷却水OUTも形成されている。第4流路プレートP4の一方の面であって図4に描かれる上面にはマイクロチャネルである流路が形成されており、この流路によって、流体供給孔4INと流体排出孔4OUTがつながれる。
【0046】
この第4流路プレートP4と冷却用プレートCP1を、第1熱交換ユニットU1及び第3熱交換ユニットU3と同様に積層して各プレート間を拡散接合すると、第4熱交換ユニットU4が得られる。第4熱交換ユニットU4において、流体供給孔4INから水素ガスが供給されると、流体供給孔4INは、第4流路プレートP4の流路につながっているので水素ガスが流入するが、冷却用プレートCP1の流路とは冷却用プレートCP1の上面と第4流路プレートP4の下面との接合によって隔絶されるので、水素ガスが冷却用プレートCP1の流路に流入することはない。
【0047】
同じく冷却水INから冷却水が供給されると、第1熱交換ユニットU1及び第3熱交換ユニットU3と同様の理由によって、冷却水が第4流路プレートP4の流路に流入することはない。
(第2熱交換ユニット)
第2熱交換ユニットU2は、第4熱交換ユニットU4の直下に配置される熱交換ユニットである。第2熱交換ユニットU2に用いられる第2流路プレートP2は、第1流路プレートP1、第3流路プレートP3、及び第4流路プレートP4とほぼ同じ材質で大きさの部材であって、それら流路プレートと同様の流路が形成されている。
【0048】
(第2流路プレート)
図4に示すように、第2流路プレートP2は、第1流路プレートP1の構成を左右反転させた構成を有しており、流体供給孔4INと流体排出孔4OUTを結ぶ対角線とは別のもう一方の対角線上に形成された貫通孔は、流体供給孔2INと流体排出孔2OUTである。第2流路プレートP2には、冷却水INと冷却水OUTも形成されている。第2流路プレートP2の一方の面であって図4に描かれる上面にはマイクロチャネルである流路が形成されており、この流路によって流体供給孔2INと流体排出孔2OUTがつながれる。
【0049】
この第2流路プレートP2と冷却用プレートCP1を、第1熱交換ユニットU1、第3熱交換ユニットU3、及び第4熱交換ユニットU4と同様に積層して各プレート間を拡散接合すると、第2熱交換ユニットU2が得られる。第2熱交換ユニットU2において、流体供給孔2INから水素ガスが供給されると、流体供給孔2INは、第2流路プレートP2の流路につながっているので水素ガスが流入するが、冷却用プレートCP1の流路とは冷却用プレートCP1の上面と第2流路プレートP2の下面との接合によって隔絶されるので、水素ガスが冷却用プレートCP1の流路に流入することはない。
【0050】
同じく冷却水INから冷却水が供給されると、第1熱交換ユニットU1、第3熱交換ユニットU3、及び第4熱交換ユニットU4と同様の理由によって、冷却水が第2流路プレートP2に流入することはない。
上述のように得られた熱交換ユニットU1〜U4を、上から順に第1熱交換ユニットU
1、第3熱交換ユニットU3、第4熱交換ユニットU4、第2熱交換ユニットU2の順となるように積層し、さらに、第1熱交換ユニットU1の上面に上エンドプレート3を重ね、第2熱交換ユニットU2の下面に下エンドプレート4を重ねて、熱交換ユニットU1〜U4及び上下エンドプレート3,4を拡散接合によって接合する。
【0051】
これによって、本実施形態による積層型熱交換器2aが形成される。上エンドプレート3には第1流路プレートP1と同じく、流体供給孔1INと流体排出孔1OUT、流体供給孔3INと流体排出孔3OUT、及び冷却水INと冷却水OUTが開口している。下エンドプレート4には、流体供給孔2INと流体排出孔2OUT、及び流体供給孔4INと流体排出孔4OUTが開口している。
【0052】
ここで、図2に戻って、積層型熱交換器2aのAA断面及びCC断面を参照する。
AA断面は、上エンドプレート3における流体供給孔1IN及び流体排出孔3OUTと、下エンドプレート4における流体供給孔4IN及び流体排出孔2OUTとを含む面で、積層型熱交換器2aを積層方向に切断したときの断面図である。
また、CC断面は、上エンドプレート3における流体供給孔3IN及び流体排出孔1OUTと、下エンドプレート4における流体供給孔2IN及び流体排出孔4OUTとを含む面で、積層型熱交換器2aを積層方向に切断したときの断面図である。
【0053】
上エンドプレート3において、流体供給孔1IN及び流体排出孔1OUTは一方の対角線上に形成されており、流体供給孔3IN及び流体排出孔3OUTは他方の対角線上に形成されている。したがって、AA断面で示された流体供給孔1IN、及び流体供給孔1INに対応するCC断面で示された流体排出孔1OUTは、各断面において第1熱交換ユニットU1内を各熱交換ユニットの積層方向に沿って直接外部に連通させるように形成される。また、CC断面で示された流体供給孔3IN、及び流体供給孔3INに対応するAA断面で示された流体排出孔3OUTは、各断面において第1熱交換ユニットU1を貫いて第3熱交換ユニットU3内を各熱交換ユニットの積層方向に沿って直接外部に連通させるように形成される。
【0054】
また、下エンドプレート4において、流体供給孔4INと流体排出孔4OUTとは一方の対角線上に形成されており、流体供給孔2INと流体排出孔2OUTとは他方の対角線上に形成されている。したがって、AA断面で示された流体供給孔4IN、及び流体供給孔4INに対応するCC断面で示された流体排出孔4OUTは、各断面において第2熱交換ユニットU2を貫いて第4熱交換ユニットU4内を各熱交換ユニットの積層方向に沿って直接外部に連通させるように形成される。さらに、CC断面で示された流体供給孔2IN、及び流体供給孔2INに対応するAA断面で示された流体排出孔2OUTは、各断面において第2熱交換ユニットU2内を各熱交換ユニットの積層方向に沿って直接外部に連通させるように形成される。
【0055】
ここで、図3に示す、積層型熱交換器2aのBB断面を参照する。BB断面は、上エンドプレート3における冷却水INと冷却水OUTとを含む面で、積層型熱交換器2aを積層方向に切断したときの断面図である。上エンドプレート3において冷却水INと冷却水OUTとは、上エンドプレート3の長手方向に沿ったBB線上に形成されている。したがって、冷却水INと冷却水OUTとは、ともにBB断面において積層型熱交換器2aの全ての熱交換ユニットU1〜U4内に形成されるように現れる。
【0056】
このように、本実施形態による積層型熱交換器2aでは、複数の熱交換ユニットU1〜U4のそれぞれには、各熱交換ユニットに流体を供給する流体供給孔(供給孔)と、供給された流体を排出する流体排出孔(排出孔)とが設けられている。各熱交換ユニットに設けられた供給孔及び排出孔は、熱交換ユニットU1〜U4の積層方向に沿って直接外部に連通する長さに形成されていて、上エンドプレート3及び下エンドプレート4から見た平面視での配置位置が互いに重ならないように形成されているといえる。このような構造を採用することによって、各熱交換器ユニット間で圧力を保持するための隔壁などは必要としない。
【0057】
(熱交換システムの動作)
次に、図2及び図3を参照しながら、このように流体供給孔及び流体排出孔が形成され
た積層型熱交換器2aの熱交換ユニットU1〜U4のそれぞれに対して、一対一に対応する各コンプレッサを接続する。つまり、第1コンプレッサC1の吐出口を上エンドプレート3の流体供給孔1INに接続し、上エンドプレート3の流体供給孔1OUTを第2コンプレッサC2の吸入口に接続する。次に、第2コンプレッサC2の吐出口を下エンドプレート4の流体供給孔2INに接続し、下エンドプレート4の流体供給孔2OUTを第3コンプレッサC3の吸入口に接続する。続いて、第3コンプレッサC3の吐出口を上エンドプレート3の流体供給孔3INに接続し、上エンドプレート3の流体供給孔3OUTを第4コンプレッサC4の吸入口に接続する。最後に、第4コンプレッサC4の吐出口を下エンドプレート4の流体供給孔4INに接続し、下エンドプレート4の流体供給孔4OUTをタンク又はボンベの充填口に接続する。
【0058】
さらに、冷却水供給ポンプの冷却水吐出口を、上エンドプレート3の冷却水INに接続し、冷却水OUTに排水管を接続する。この接続によって、第1コンプレッサC1の吸入口からタンク又はボンベの充填口まで、水素ガスを多段に圧縮しつつ圧縮された水素ガスの熱交換を行う熱交換システム1aが構成される。
図3に示すように、まず、冷却水供給ポンプを作動させて積層型熱交換器2aの上エンドプレート3の冷却水INから冷却水を連続的に供給する。供給された冷却水は、最上層の第1熱交換ユニットU1から最下層の第2熱交換ユニットU2まで貫通する冷却水INから、各熱交換ユニットの冷却プレートの流路に流れ込み、流路を満たしつつ最上層の第1熱交換ユニットU1から最下層の第2熱交換ユニットU2まで貫通する冷却水OUTに排出される。冷却水供給ポンプによって冷却水が次々と供給されるので、冷却プレートCP1の流路を流れて冷却水OUTに排出された冷却水は、上エンドプレート3の冷却水OUTから出て排水管へと排出される。こうして、熱交換ユニットU1〜U4の全ての冷却プレートCP1における冷却水の流れが確保される。
【0059】
そのうえで、第一段目の機械である第1コンプレッサC1は水素ガスを圧縮し、圧力が高まるとともに温度も上昇した水素ガスが、第1コンプレッサC1の吐出口から上エンドプレート3の流体供給孔1INへ送出される。
図2のAA断面に示されるように、流体供給孔1INへ供給された水素ガスは、水素ガス流(1)として第1熱交換ユニットU1の第1流路プレートP1の流路に流入する。第1流路プレートP1に流入した高温の水素ガスは、第1流路プレートP1の流路を流れる間に、その上下に積層された冷却用プレートCP1を流れる冷却水と熱交換をして冷却される。
【0060】
図2のCC断面に示されるように、第1熱交換ユニットU1で冷却された水素ガス流(1)は、第1流路プレートP1の流路から流体排出孔1OUTへ排出され、上エンドプレート3の流体排出孔1OUTから、第二段目の機械である第2コンプレッサC2の吸入口に流入する。第2コンプレッサC2は水素ガスを圧縮し、圧力と温度の上昇した水素ガスが、第2コンプレッサC2の吐出口から下エンドプレート4の流体供給孔2INへ送出される。
【0061】
図2のCC断面に示されるように、流体供給孔2INへ供給された水素ガスは、水素ガス流(2)として第2熱交換ユニットU2の第2流路プレートP2の流路に流入する。第2流路プレートP2に流入した高温の水素ガスは、第2流路プレートP2の流路を流れる間に、その上下に積層された冷却用プレートCP1を流れる冷却水と熱交換をして冷却される。
【0062】
図2のAA断面に示されるように、第2熱交換ユニットU2で冷却された水素ガス流(2)は、第2流路プレートP2の流路から流体排出孔2OUTへ排出され、下エンドプレート4の流体排出孔2OUTから、第三段目の機械である第3コンプレッサC3の吸入口に流入する。第3コンプレッサC3は、第1コンプレッサC1及び第2コンプレッサC2で圧縮された水素ガスをさらに圧縮し、圧力と温度の上昇した水素ガスが、第3コンプレッサC3の吐出口から上エンドプレート3の流体供給孔3INへ送出される。
【0063】
図2のCC断面に示されるように、流体供給孔3INへ供給された水素ガスは、水素ガス流(3)として第3熱交換ユニットU3の第3流路プレートP3の流路に流入する。第
3流路プレートP3に流入した高温の水素ガスは、第3流路プレートP3の流路を流れる間に、その上下に積層された冷却用プレートCP1を流れる冷却水と熱交換をして冷却される。
【0064】
図2のAA断面に示されるように、第3熱交換ユニットU3で冷却された水素ガス流(3)は、第3流路プレートP3の流路から流体排出孔3OUTへ排出され、上エンドプレート3の流体排出孔3OUTから、最終段である第4段目の機械である第4コンプレッサC4の吸入口に流入する。第4コンプレッサC4は、第3コンプレッサC3までで圧縮された水素ガスをさらに目的の圧力にまで圧縮し、圧力と温度の上昇した水素ガスが、第4コンプレッサC4の吐出口から下エンドプレート4の流体供給孔4INへ送出される。
【0065】
図2のCC断面に示されるように、流体供給孔4INへ供給された水素ガスは、水素ガス流(4)として第4熱交換ユニットU4の第4流路プレートP4の流路に流入する。第4流路プレートP4に流入した高温の水素ガスは、第4流路プレートP4の流路を流れる間に、その上下に積層された冷却用プレートCP1を流れる冷却水と熱交換をして冷却される。
【0066】
図2のAA断面に示されるように、第4熱交換ユニットU4で冷却された水素ガス流(4)は、第4流路プレートP4の流路から流体排出孔4OUTへ排出され、下エンドプレート4の流体排出孔4OUTからタンク又はボンベの充填口に供給されて充填される。
このように、本実施形態による熱交換システム1aは、複数の熱交換ユニットU1〜U4が積層されて一体となった積層型熱交換器2aを用いるものであって、複数のコンプレッサC1〜C4によって多段に圧縮された流体を、各段のコンプレッサで圧縮されるたびに対応する熱交換ユニットにおいて熱交換を行うものである。
【0067】
図6のAA断面図には、本実施形態における、上エンドプレート3と第1熱交換ユニットU1との差圧、隣接する熱交換ユニット間の差圧、第2熱交換ユニットU2と下エンドプレート4との差圧(ΔP)が示されている。上エンドプレート3と第1熱交換ユニットU1との差圧は5MPa、第1熱交換ユニットU1と第3熱交換ユニットU3との差圧は20MPa、第3熱交換ユニットU3と第4熱交換ユニットU4との差圧は30MPa、第4熱交換ユニットU4と第2熱交換ユニットU2との差圧は40MPa、第2熱交換ユニットU2と下エンドプレート4との差圧は10MPaである。
【0068】
熱交換システム1aの構成にあたっては、積層型熱交換器2aの運転変動による機器の損傷の予防を目的として、積層型熱交換器2aの各差圧の合計が最小となるように各段のコンプレッサと各熱交換ユニットとの対応関係を決めることが望ましい。本実施形態において、第1熱交換ユニットU1は、第1コンプレッサC1と一対一に対応していたが、第1コンプレッサC1以外の第2コンプレッサC2〜第4コンプレッサC4のいずれかと対応していても構わない。
【0069】
例えば、第1熱交換ユニットU1を第3コンプレッサC3と対応させ、第2熱交換ユニットU2を第1コンプレッサC1と対応させ、第3熱交換ユニットU3を第4コンプレッサC4と対応させ、第4熱交換ユニットU4を第2コンプレッサC2と対応させた場合を考える。その場合、水素ガスは、第1コンプレッサC1、第2熱交換ユニットU2、第2コンプレッサC2、第4熱交換ユニットU4、第3コンプレッサC3、第1熱交換ユニットU1、第4コンプレッサC4、第3熱交換ユニットU3の順で通過してタンク又はボンベの充填口に供給されて充填される。
【0070】
[第2実施形態]
図7図9を参照しながら、本発明の第2実施形態による熱交換システム1bを説明する。
本実施形態による熱交換システム1bは、6台のコンプレッサC1〜C6と6つの熱交換ユニットU1〜U6を直列に接続した6段の圧縮を行う。つまり、6つの熱交換ユニットU1〜U6を積層した積層型熱交換器2bの構成が、第1実施形態による積層型熱交換器2aの構成とは異なるので、以下に詳しく説明する。
【0071】
本実施形態による積層型熱交換器2bが、第1実施形態による積層型熱交換器2aと異なる点は、冷却プレートCP2の構成が第1実施形態による積層型熱交換器2aの冷却プ
レートCP1とは異なることと、第5熱交換ユニットU5と第6熱交換ユニットU6が加わることとにある。第1流路プレートP1〜第4流路プレートP4、及び上下エンドプレート3,4の構成は、第1実施形態と同様である。
【0072】
図7は、本実施形態による積層型熱交換器2bで用いる冷却用プレートCP2の構成を示している。図7に示す冷却用プレートCP2は、冷却用プレートCP2の長手方向に沿った一方の長辺側において冷却水INとして流路が開放され、他方の長辺側において冷却水OUTとして流路が開放されたプレートである。冷却水INと冷却水OUTは、冷却プレートCP2の対角方向にほぼ沿った位置に形成されている。冷却プレートCP2に形成された流路は、冷却プレートCP2の幅方向に蛇行するように複数本形成されて冷却水INと冷却水OUTをつないでいる。
【0073】
冷却用プレートCP2は、長手方向における両端側に、流体供給孔1IN〜4IN、流体排出孔1OUT〜4OUT、後述する流体供給孔5IN,6IN、及び流体5OUT,6OUTに対応可能な貫通孔を有している。
このような冷却プレートCP2を用いて、第1実施形態と同様に第1流路プレートP1を積層して第1熱交換ユニットU1を構成し、第2流路プレートP2を積層して第2熱交換ユニットU2を構成する。さらに、第3流路プレートP3を積層して第3熱交換ユニットU3を構成し、第4流路プレートP4を積層して第4熱交換ユニットU4を構成する。
【0074】
第5流路プレートP5及び第6流路プレートP6は、第1実施形態による冷却用プレートCP1とほぼ同様の構成であり、第1実施形態による冷却用プレートCP1における冷却水OUTは、第5流路プレートP5において5INとして働き、冷却水INは5OUTとして働く。同様に第6流路プレートP6は、貫通孔6INと貫通孔6OUTを備えている。
【0075】
したがって、図8及び図9に示すように、上エンドプレート3において、第6流路プレートP6の6IN,6OUTに対応する位置には、貫通孔6IN,6OUTが形成され、下エンドプレート4において、第5流路プレートP5の5IN,5OUTに対応する位置には、貫通孔5IN,5OUTが形成されている。
第1熱交換ユニットU1〜第4熱交換ユニットU4と同様に、冷却用プレートCP2と第5流路プレートP5を用いて第5熱交換ユニットU5を構成し、冷却用プレートCP2と第6流路プレートP6を用いて第6熱交換ユニットU6を構成する。
【0076】
上述のように得られた熱交換ユニットU1〜U6を、上から順に第1熱交換ユニットU1、第3熱交換ユニットU3、第6熱交換ユニットU6、第4熱交換ユニットU4、第5熱交換ユニットU5、第2熱交換ユニットU2の順となるように積層し、さらに、第1熱交換ユニットU1の上面に上エンドプレート3を重ね、第2熱交換ユニットU2の下面に下エンドプレート4を重ねて、熱交換ユニットU1〜U6及び上下エンドプレート3,4を拡散接合によって接合する。
【0077】
これによって、本実施形態による積層型熱交換器2bが形成される。上エンドプレート3には第1流路プレートP1と同じく、流体供給孔1INと流体排出孔1OUT、流体供給孔3INと流体排出孔3OUT、及び6INと6OUTが開口している。下エンドプレート4には、流体供給孔2INと流体排出孔2OUT、流体供給孔4INと流体排出孔4OUT、及び5INと5OUTが開口している。ここで、第4流路プレートP4において、流体供給孔5IN,6IN、及び流体5OUT,6OUTに対応する貫通孔はなくてもよい。
【0078】
第1熱交換ユニットU1〜第6熱交換ユニットU6を積層することで、積層型熱交換器2bの側方に積層型熱交換器2bの上下の高さ方向に沿って冷却用プレートCP2の冷却水INと冷却水OUTが開口するようになる。これら冷却水INと冷却水OUTには、積層型熱交換器2bの上下の高さ方向に沿って冷却水INと冷却水OUTのそれぞれに共通の流路を形成するヘッダ5を取り付ける。従って、冷却水IN側のヘッダ5に供給された冷却水は、積層された各冷却用プレートCP2の冷却水INから流路に流入し、各冷却用プレートCP2の冷却水INから流出した冷却水は、冷却水IN側のヘッダ5を通って排出される。このヘッダ5の取り付けによって、本実施形態による積層型熱交換器2bが完
成する。
【0079】
本実施形態においても、積層型熱交換器2bの複数の熱交換ユニットU1〜U6のそれぞれには、各熱交換ユニットに流体を供給する流体供給孔(供給孔)と、供給された流体を排出する流体排出孔(排出孔)とが設けられている。各熱交換ユニットに設けられた供給孔及び排出孔は、熱交換ユニットU1〜U6の積層方向に沿って直接外部に連通する長さに形成されていて、上エンドプレート3及び下エンドプレート4から見た平面視での配置位置が互いに重ならないように形成されているといえる。
【0080】
本実施形態では、上述の積層型熱交換器2bと6台のコンプレッサC1〜C6を用いて、水素ガスを6段に圧縮する。第1熱交換ユニットU1と第1コンプレッサC1、第2熱交換ユニットU2と第2コンプレッサC2、・・・、第5熱交換ユニットU5と第5コンプレッサC5、及び第6熱交換ユニットU6と第6コンプレッサC6というように順に対応付け、6台のコンプレッサC1〜C6が積層型熱交換器2bを介して直列に接続された6段の熱交換システム1bを構成する。
【0081】
図8及び図9に示すように、水素ガスがこの熱交換システム1bを水素ガス流(1)〜水素ガス流(6)として通過すると、水素ガスは6段に圧縮を受けながら目的の圧力にまで加圧される。そのとき熱交換システム1bは、隣り合う熱交換ユニットの差圧の合計が最も小さくなるように構成されるのが好ましい。
ところで、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、動作条件や測定条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
【0082】
例えば、第1実施形態では、4台のコンプレッサC1〜C4と4つの熱交換ユニットU1〜U4を直列に接続して構成した4段の圧縮を説明したが、2台のコンプレッサと2つの熱交換ユニットを直列に接続して構成した2段の圧縮を2つ並列に並べた構成としてもよい。いうまでもなく、1段の圧縮と3段の圧縮を並列に並べた構成も可能である。
第2実施形態では、6台のコンプレッサC1〜C6と6つの熱交換ユニットU1〜U6を直列に接続して構成した6段の圧縮を説明したが、1段の圧縮と5段の圧縮を並列に、2段の圧縮と4段の圧縮を並列に、3段の圧縮と3段の圧縮を並列に並べた構成も可能である。
【0083】
また、熱交換システム1a,1bの流体として水素ガスを例示したが、流体として、水素ガスに限らず他の気体や液体を採用することができる。その場合、冷却用プレートCP1,CP2に供給される冷却媒体は、供給される流体の種類に応じて適宜変更可能である。また、本発明は熱交換システムでもあるので、加熱媒体を流すことで冷却用プレートを加熱用プレートとして用いて、流体を加熱してもよい。
【符号の説明】
【0084】
1a,1b 熱交換システム
2a,2b 積層型熱交換器
3 上エンドプレート
4 下エンドプレート
5 ヘッダ
C1〜C6 第1コンプレッサ〜第6コンプレッサ
P1〜P6 第1流路プレート〜第6流路プレート
U1〜U6 第1熱交換ユニット〜第6熱交換ユニット
CP1,CP2 冷却用プレート
図1
図3
図4
図5
図7
図9
図2
図6
図8