(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5943648
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】点火プラグ
(51)【国際特許分類】
H01T 13/39 20060101AFI20160621BHJP
F02P 3/01 20060101ALI20160621BHJP
F02P 13/00 20060101ALI20160621BHJP
F02P 23/04 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
H01T13/39
F02P3/01 A
F02P13/00 301J
F02P23/04 B
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-44403(P2012-44403)
(22)【出願日】2012年2月29日
(65)【公開番号】特開2013-182718(P2013-182718A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2015年2月13日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 「マイクロ波プラズマ燃焼エンジンの研究開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(74)【代理人】
【識別番号】100148910
【弁理士】
【氏名又は名称】宮澤 岳志
(72)【発明者】
【氏名】森 順平
(72)【発明者】
【氏名】尾井 宏朗
【審査官】
出野 智之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−159477(JP,A)
【文献】
特開昭60−035486(JP,A)
【文献】
特開昭61−230283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 13/39
F02P 3/01
F02P 13/00
F02P 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気筒の燃焼室内に臨むアンテナを介して燃焼室内に生成される電界と、点火プラグの中心電極と接地電極との間に発生する火花放電とを相互作用させて燃焼室内にプラズマを生成し、混合気に着火する火花点火式内燃機関用の点火プラグであって、
中心電極と接地電極とのうち火花放電の際に電位が低くなる方の電極に、燃焼室内に生成されるプラズマに曝されることで酸化する金属と、その金属により電極本体にろう付けされている電極本体とは別種の金属体とを備えており、
金属体の電極本体へのろう付けに用いられた金属が当該金属体の周囲に金属体を取り巻くように設けられ、当該金属体の一部がその金属に埋没している点火プラグ。
【請求項2】
気筒の燃焼室内に臨むアンテナを介して燃焼室内に生成される電界と、点火プラグの中心電極と接地電極との間に発生する火花放電とを相互作用させて燃焼室内にプラズマを生成し、混合気に着火する火花点火式内燃機関用の点火プラグであって、
中心電極と接地電極とのうち火花放電の際に電位が低くなる方の電極に、燃焼室内に生成されるプラズマに曝されることで酸化する金属と、その金属により電極本体にろう付けされている電極本体とは別種の金属体とを備えており、
金属体の電極本体へのろう付けに用いられた金属の体積が当該金属体の体積を上回る点火プラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気筒の燃焼室内に臨むアンテナを介して燃焼室内に生成される電界と、点火プラグの中心電極と接地電極との間に発生する火花放電とを相互作用させて燃焼室内にプラズマを生成し、混合気に着火する態様の火花点火式内燃機関に用いられる点火プラグに関する。
【背景技術】
【0002】
火花点火式内燃機関に実装されている点火装置では、イグナイタが消弧した際に点火コイルに発生する高電圧を点火プラグの中心電極に印加することで、点火プラグの中心電極と接地電極との間で火花放電を惹起、点火する。
【0003】
近時では、気筒の燃焼室内にある混合気に確実に着火させ、安定した火炎を得ることができるようにするために、電界発生回路、換言すればマグネトロンが出力するマイクロ波若しくは高周波発振器が出力する高周波を燃焼室内に放射する「アクティブ着火」法が試みられている(例えば、下記特許文献を参照)。アクティブ着火法によれば、中心電極と接地電極との間の空間に高周波またはマイクロ波電界が形成され、この電界中で発生したプラズマが成長して、火炎伝搬燃焼の始まりとなる大きな火炎核を生成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−159477号公報
【特許文献2】特開2011−064162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、アクティブ着火法を採用した火花点火式内燃機関において、混合気の着火性をより一層高めることを所期の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
点火プラグの電極は、主としてニッケルからなっていることが多い。ニッケル材料は必ずしも耐熱性、耐久性に秀でておらず、酸化による劣化や高熱による溶損を招く。とりわけ、アクティブ着火法の実施のために使用される点火プラグの電極は、消耗が早くなるきらいがある。
【0007】
そこで、現状、耐久性の高い金属体、例えば白金やイリジウム、モリブデン等の貴金属類からなる金属体を電極本体にろう付けし、この金属体を介して火花が飛ぶようにして、ニッケル材料を主体とした電極本体の保護を図っている。
【0008】
本発明の発明者は、鋭意研究の結果、点火時に火花放電の火花が前記金属体を経由せず、ろう付け部分に飛ぶことがあること、そして、ろう付けに用いている金属が酸化または燃焼して少しずつ損傷してゆく代わりに燃焼室内に大熱量が発生することを初めて発見した。
【0009】
上記に鑑み、本発明では、気筒の燃焼室内に臨むアンテナを介して燃焼室内に生成される電界と、点火プラグの中心電極と接地電極との間に発生する火花放電とを相互作用させて燃焼室内にプラズマを生成し、混合気に着火する火花点火式内燃機関用の点火プラグであって、
中心電極と接地電極とのうち火花放電の際に電位が低くなる方の電極に、燃焼室内に生成されるプラズマに曝されることで酸化する金属と、その金属により電極本体にろう付けされている電極本体とは別種の金属体とを備えており、金属体の電極本体へのろう付けに用いられた金属が当該金属体の周囲に金属体を取り巻くように設けられ、当該金属体の一部がその金属に埋没している点火プラグを構成した。
【0010】
並びに、本発明では、気筒の燃焼室内に臨むアンテナを介して燃焼室内に生成される電界と、点火プラグの中心電極と接地電極との間に発生する火花放電とを相互作用させて燃焼室内にプラズマを生成し、混合気に着火する火花点火式内燃機関用の点火プラグであって、中心電極と接地電極とのうち火花放電の際に電位が低くなる方の電極に、燃焼室内に生成されるプラズマに曝されることで酸化する金属と、その金属により電極本体にろう付けされている電極本体とは別種の金属体とを備えており、金属体の電極本体へのろう付けに用いられた金属の体積が当該金属体の体積を上回る点火プラグを構成した。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アクティブ着火法を採用した火花点火式内燃機関において、混合気の着火性をより一層高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態における車両用内燃機関の全体構成を示す図。
【
図3】同実施形態における電界発生装置の構成を示す図。
【
図4】同実施形態における電界発生装置の要素であるHブリッジの回路図。
【
図5】同実施形態の点火プラグの電極部分を示す、一部を破断した拡大側面図。
【
図6】同実施形態の点火プラグの電極部分を示す、一部を破断した拡大側面図。
【
図7】本発明の一変形例に係る点火プラグの電極部分を示す、一部を破断した拡大側面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1に、本実施形態における車両用内燃機関の概要を示す。
【0014】
本実施形態における内燃機関は、火花点火式ガソリンエンジンであり、複数の気筒1(
図1には、そのうち一つを図示している)を具備している。各気筒1の吸気ポート近傍には、燃料を噴射するインジェクタ11を設けている。また、各気筒1の燃焼室の天井部に、点火プラグ12を取り付けてある。
【0015】
図2に、火花点火用の電気回路を示している。点火プラグ12は、点火コイル14にて発生した誘導電圧の印加を受けて、中心電極121と接地電極122との間で火花放電を惹起するものである。点火コイル14は、半導体スイッチング素子であるイグナイタ13とともに、コイルケースに一体的に内蔵される。
【0016】
本実施形態の内燃機関には、気筒1の燃焼室内に電界を発生させる電界発生装置を付帯させている。この電界発生装置は、燃焼室内でプラズマを生成する目的のものである。電界発生装置の例としては、高周波の交流電圧を印加する交流電圧発生回路や、高周波の脈流電圧を印加する脈流電圧発生回路等を挙げることができる。
【0017】
図3及び
図4に示すように、高周波を発生させる電界発生装置は、車載バッテリを電源とし、低圧直流を高圧交流に変換する回路を含む。具体的には、バッテリが提供する約12Vの直流電圧を100V〜500Vに昇圧するDC−DCコンバータ61と、DC−DCコンバータ61が出力する直流を交流に変換するHブリッジ回路62と、Hブリッジ回路62が出力する交流をさらに高い電圧に昇圧する昇圧トランス63とを構成要素とする。
【0018】
電界発生装置の出力端には、第一ダイオード64及び第二ダイオード65を介設することが好ましい。第一ダイオード64は、カソードが昇圧トランス63の二次側巻線の信号ラインに接続し、アノードが点火コイル14との結節点であるミキサ66に接続している。第二ダイオード65は、アノードが昇圧トランス63の二次側巻線のグランドラインに接続し、カソードが接地している。これら第一ダイオード64及び第二ダイオード65は、点火タイミングにおいて点火コイル14の二次側から流れ込む負の高圧パルス電流を遮る役割を担う。
【0019】
電界発生装置が発振する高周波電圧は、通常、火花放電開始と略同時、火花放電開始直前または火花放電開始直後に、点火プラグ12の中心電極121に印加する。つまり、気筒1の燃焼室内に臨む点火プラグ12の中心電極121を、電界を放射するアンテナとする。これにより、燃焼室内における、点火プラグ12の中心電極121と接地電極122との間の空間に、高周波電界が形成される。そして、高周波電界中で火花放電を行うことによりプラズマが発生し、このプラズマが火炎伝搬燃焼の始まりとなる大きなラジカルプラズマ火炎核を生成する。
【0020】
上記は、火花放電による電子の流れ及び火花放電によって生じたイオンやラジカルが、電界の影響を受け振動、蛇行することで行路長が長くなり、周囲の水分子や窒素分子と衝突する回数が飛躍的に増加することによるものである。イオンやラジカルの衝突を受けた水分子や窒素分子は、OHラジカルやNラジカルになるとともに、イオンやラジカルの衝突を受けた周囲の気体も電離した状態、即ちプラズマ状態となることで、飛躍的に混合気への着火領域が大きくなり、火炎核も大きくなるのである。この結果、火花放電のみによる二次元的な着火から三次元的な着火に増幅され、燃焼が燃焼室内に急速に伝播、高い燃焼速度で拡大することとなる。
【0021】
因みに、電界発生装置として脈流電圧発生回路を採用する場合、当該脈流電圧発生回路は周期的に電圧が変化する直流電圧を発生させるものであればよく、その波形も任意であってよい。脈流電圧は、基準電圧(0Vであることがある)から一定周期で一定電圧まで変動するパルス電圧、交流電圧を半波整流した電圧、交流電圧に直流バイアスを加味した電圧等をおしなべて含む。電界発生装置が発振する高周波電圧は、周波数が200kHz〜3000kHz程度、振幅が3kVp−p〜10kVp−p程度であることが好ましい。
【0022】
内燃機関の気筒1に吸気を供給するための吸気通路3は、外部から空気を取り入れて各気筒1の吸気ポートへと導く。吸気通路3上には、エアクリーナ31、電子スロットルバルブ32、サージタンク33、吸気マニホルド34を、上流からこの順序に配置している。
【0023】
気筒1から排気を排出するための排気通路4は、気筒1内で燃料を燃焼させた結果発生した排気を各気筒1の排気ポートから外部へと導く。この排気通路4上には、排気マニホルド42及び排気浄化用の三元触媒41を配置している。
【0024】
内燃機関の運転制御を司るECU(Electronic Control Unit)0は、プロセッサ、メモリ、入力インタフェース、出力インタフェース等を有したマイクロコンピュータシステムである。
【0025】
入力インタフェースには、車両の実車速を検出する車速センサから出力される車速信号a、クランクシャフトの回転角度及びエンジン回転数を検出するエンジン回転センサから出力されるクランク角信号(N信号)b、アクセルペダルの踏込量またはスロットルバルブ32の開度をアクセル開度(いわば、要求負荷)として検出するセンサから出力されるアクセル開度信号c、ブレーキペダルの踏込量を検出するセンサから出力されるブレーキ踏量信号d、吸気通路3(特に、サージタンク33)内の吸気温及び吸気圧を検出する温度・圧力センサから出力される吸気温・吸気圧信号e、機関の冷却水温を検出する水温センサから出力される冷却水温信号f、シフトレバーのレンジを知得するためのセンサ(または、シフトポジションスイッチ)から出力されるシフトレンジ信号g、吸気カムシャフトまたは排気カムシャフトの複数のカム角にてカム角センサから出力されるカム角信号(G信号)h等が入力される。
【0026】
出力インタフェースからは、点火プラグ12のイグナイタに対して点火信号i、インジェクタ11に対して燃料噴射信号j、スロットルバルブ32に対して開度操作信号k、電界発生装置に対して電界(即ち、高周波)発生指令信号l等を出力する。
【0027】
ECU0のプロセッサは、予めメモリに格納されているプログラムを解釈、実行し、運転パラメータを演算して内燃機関の運転を制御する。ECU0は、内燃機関の運転制御に必要な各種情報a、b、c、d、e、f、g、hを入力インタフェースを介して取得し、エンジン回転数を知得するとともに気筒1に充填される吸気量を推算する。そして、それらエンジン回転数及び吸気量等に基づき、要求される燃料噴射量、燃料噴射タイミング(一度の燃焼に対する燃料噴射の回数を含む)、燃料噴射圧、点火タイミング、燃焼室内に電界を発生させるか否かやその電界発生のタイミングといった各種運転パラメータを決定する。運転パラメータの決定手法自体は、既知のものを採用することが可能である。ECU0は、運転パラメータに対応した各種制御信号i、j、k、lを出力インタフェースを介して印加する。
【0028】
以降、本実施形態の点火プラグ12に関して詳述する。一般に、点火プラグ12は、火花放電に際し、「マイナス放電」を行う場合と、「プラス放電」を行う場合とがある。
【0029】
前者は、中心電極121を接地電極122に対して低電位とする、即ち中心電極121にマイナスの電圧を印加して放電を惹起するものである。言うまでもなく、接地電極122は恒常的に零電位である。火花放電に伴い、電子は中心電極121から発し、接地電極122に向かって飛ぶ。
【0030】
翻って、後者は、接地電極122を中心電極121に対して低電位とする、即ち中心電極121にプラスの電圧を印加して放電を惹起するものである。火花放電に伴い、電子は接地電極122から発し、中心電極121に向かって飛ぶ。
【0031】
図5または
図6に示しているように、本実施形態の点火プラグ12においては、中心電極121及び接地電極122の各々に、その電極本体123とは別種の金属体124を固設している。なお、
図5がマイナス放電に用いられる点火プラグ12の例、
図6がプラス放電に用いられる点火プラグ12の例である。
【0032】
電極本体123は、主としてニッケルからなる。ニッケル材料は必ずしも耐熱性、耐久性に秀でていない。これに対し、金属体124は、耐久性の高い金属体124、例えば白金やイリジウム、モリブデン等の貴金属類からなるものとし、火花放電時にこの金属体124を介して火花を飛ばす、換言すれば火花の両端がそれぞれの金属体124に接続する(電子が金属体124を経由する、火花が金属体124を介さず直接電極本体123に接触することがない)ようにして、電極本体123の保護を図っている。典型的には、中心電極121側にイリジウム片124を、接地電極122側に白金片124を、それぞれ接着する。
【0033】
また、少なくとも、火花放電の際に電位が低くなる方の電極(つまり、マイナス放電における中心電極121、プラス放電における接地電極122)については、電極本体123に金属体124をろう付けすることとしている。ろう付けに用いる金属、即ち硬ろう125は、例えばインコネル(登録商標。ニッケル基の超合金。ニッケルに鉄、クロム、ニオブ、モリブデン等の合金元素を加えたもの)等とする。
【0034】
火花放電による火花は、常に金属体124を経由するわけではない。時には、火花がろう付けに用いた硬ろう125に向かって飛び、この硬ろう125を酸化または燃焼させてしまうことがある。硬ろう125の酸化または燃焼は、点火プラグ12の寿命を縮めるという面では不利である。一方で、硬ろう125が酸化または燃焼することで、火花点火の初期における気筒1の燃焼室内の温度が高まり、混合気への着火性が顕著に向上するという副効用が得られる。
【0035】
このことに鑑み、本実施形態では、酸化または燃焼させて火花点火時の燃焼室内温度を高める目的で、電極本体123に金属体124を接着するのに必要十分な量を上回る量の硬ろう125を、金属体124の周囲に、金属体124を取り巻くように設けている。金属体124は、その一部が硬ろう125に埋没する。硬ろう125は、所定走行距離(例えば、十万キロメートル)点火プラグ12が性能を維持できる程度の量、設けておくことが望ましい。この硬ろう125の体積は、金属体124のそれを上回ることがある。
【0036】
中心電極121及び接地電極122の双方に硬ろう125をろう付けして実験した結果、火花放電の際に電位が低くなる方の電極の硬ろう125が激しく酸化または燃焼して消耗してゆくが、電位が高くなる方の電極の硬ろう125はあまり消耗しないことが分かった。故に、火花放電の際に電位が低くなる方の電極の硬ろう125の量をより多くすることが好ましい。電位が高くなる方の電極の硬ろう125は、それと比べて少なくしてよい。
【0037】
本実施形態では、気筒1の燃焼室内に臨むアンテナ(中心電極121)を介して燃焼室内に生成される電界と、点火プラグ12の中心電極121と接地電極122との間に発生する火花放電とを相互作用させて燃焼室内にプラズマを生成し、混合気に着火する火花点火式内燃機関用の点火プラグであって、燃焼室内、特に中心電極121と接地電極122との空隙に生成されるプラズマに曝されることで酸化する金属125を中心電極121または接地電極122に設けた点火プラグ12を構成した。
【0038】
本実施形態によれば、点火時に火花放電の火花が前記金属125部分に飛び、この金属125が酸化または燃焼して少しずつ損傷してゆく代わりに気筒1の燃焼室内に大熱量のエネルギ(酸化熱)を発生させるため、混合気への着火性をより一層向上させることができる。従って、出力及び燃費の向上、及びエミッションの良化に貢献し得る。
【0039】
また、中心電極121と接地電極122とのうち、火花放電の際に電位が低くなる方の電極を形成するにあたり、その電極本体123にこれとは別種の金属体124をろう付けすることとし、そのろう付けに用いる金属125が、燃焼室内に生成されるプラズマに曝されることにより酸化するものとしているため、電極本体123に金属体124を接着する工程を通じて自然に金属125が電極121、122に設けられることとなり、点火プラグ12の生産性を高く保つことができる。
【0040】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。例えば、
図7に示すように、電極本体123に金属体124をろう付けする硬ろう125とは別に、プラズマに曝されることで酸化または燃焼する金属126を、別途中心電極121または接地電極122に設けるようにしてもよい。
図7に示す例は、マイナス放電に用いられる点火プラグ12を表しており、中心電極121側に金属126を設けている。
【0041】
また、内燃機関の気筒1の燃焼室内でプラズマを生成する目的で燃焼室内に電界を発生させる電界発生装置は、高周波の交流電圧を印加する交流電圧発生回路や、高周波の脈流電圧を印加する脈流電圧発生回路に限定されない。
【0042】
気筒1の燃焼室内に電界を放射するアンテナもまた、点火プラグ12の中心電極121には限定されない。点火プラグ12とは異なる、気筒1の燃焼室内に電界を放射するアンテナを設置した内燃機関を構成しても構わない。
【0043】
その他各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、車両等に搭載される火花点火式内燃機関に利用することができる。
【符号の説明】
【0045】
12…点火プラグ
121…中心電極
122…接地電極
123…電極本体
124…金属体
125…プラズマに曝されて酸化する金属(ろう付けに用いられる硬ろう)
126…プラズマに曝されて酸化する金属