(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5943668
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】クランプ一体型組付用ワイヤーハーネス保護部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20160621BHJP
H02G 3/32 20060101ALI20160621BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20160621BHJP
F16B 19/00 20060101ALI20160621BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20160621BHJP
F16L 3/12 20060101ALN20160621BHJP
【FI】
H02G3/04 037
H02G3/04 068
H02G3/32
B60R16/02 623V
F16B19/00 Q
H01B7/00 301
F16B19/00 E
!F16L3/12 F
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-67120(P2012-67120)
(22)【出願日】2012年3月23日
(65)【公開番号】特開2013-201802(P2013-201802A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2015年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100060690
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 秀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100070002
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100110733
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥野 正司
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【弁理士】
【氏名又は名称】朴 志恩
(72)【発明者】
【氏名】杉本 昌久
(72)【発明者】
【氏名】勝亦 信
(72)【発明者】
【氏名】小田 恭平
【審査官】
石坂 知樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−035540(JP,A)
【文献】
特開2009−027856(JP,A)
【文献】
特開昭61−121924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
B60R 16/02
F16B 19/00
H01B 7/00
H02G 3/32
F16L 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂シートを原材料とし、これを、成形金型を用いて熱成形することでシート状部とクランプ部とを一体に形成するクランプ一体型組付用ワイヤーハーネス保護部材の製造方法であって、
前記成形金型の型部が、前記クランプ一体型組付用ワイヤーハーネス保護部材により保持されるワイヤーハーネスの長さ方向に分割され、互いに組み合わされて前記成形金型を構成する複数の部分金型から構成され、かつ、
前記複数の部分金型のうちの少なくとも1つの部分金型が前記クランプ部形成部を有していることを特徴とするクランプ一体型組付用ワイヤーハーネス保護部材の製造方法。
【請求項2】
前記部分金型の少なくとも1つがコルゲート状部形成用の部分金型であることを特徴とする請求項1に記載のクランプ一体型組付用ワイヤーハーネス保護部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーハーネスを自動車の車体に組み付ける際に用いるクランプを一体に有するクランプ一体型組付用ワイヤーハーネス保護部材
の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多本の電線から構成されたワイヤーハーネスを収束された形状に保つとともに、車体などとの摩擦から保護し、折り曲げによる断線等を防止するために、従来、コルゲートゲートチューブなどが用いられてきた。
【0003】
しかし一般にワイヤーハーネスは長尺であるためにチューブへの電線束の挿入作業は簡単ではなく、このために、
図5に示すようなチューブを開環したシート状体をハーネスプロテクタとしてワイヤーハーネスに巻き付けて用いる技術が提案されている(特開平11−187536号公報(特許文献1))。
【0004】
図1に示されたハーネスプロテクタは、熱可塑性樹脂の押出成形によって形成されたものであって、シート状のプロテクタ本体部10の一方の端部付近に、断面が三角形状の係止歯21が複数、その長手方向に設けられた2本のバンド10と、シート状のプロテクタ本体部10の他方の端部付近の前記2つのバンド10のそれぞれに対応する部分に係止爪31、切欠部31a、及び、支持枠32から形成されたバンドクランク30が、それぞれ一体に設けられている。
【0005】
このようなハーネスプロテクタはシート状のプロテクタ本体部10がワイヤーハーネスに巻き付けられ、次いでバンド10がバンドクランク30の支持枠32に挿入され、その係止歯30が係止爪31によって係止されることで、ワイヤーハーネスに固定されて用いられる。
【0006】
さらに、上記のようなチューブや巻き付けシートに自動車の車体などに設けた係止穴に挿入され係止されるクランプを有するものが提案されており(特開平11−270750号公報(特許文献2)、特開2006−254576公報(特許文献3)、このようなクランプにより所定の位置に固定されるために、保護機能及び障害発生防止機能が向上する。
【0007】
しかしながらこのようなクランプでは、成形コスト(金型コストを含む)が高く、さらに、組み立ての手間が必要で、問題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−187536号公報
【特許文献2】特開平11−270750号公報
【特許文献3】特開2006−254576公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記した従来の問題点を改善する、すなわち、組み立ての手間が不要で、ワイヤーハーネス組付時の作業性が良好であるとともに組付後はワイヤーハーネスを保護でき、かつ、低コストで製造可能なクランプ一体型組付用ワイヤーハーネス保護部材
の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のクランプ一体型組付用ワイヤーハーネス保護部材の製造方法は、上記課題を解決するため、
請求項1に記載の通り、熱可塑性樹脂シートを原材料とし、これを、成形金型を用いて
熱成形することでシート状部とクランプ部とを一体に形成するクランプ一体型組付用ワイヤーハーネス保護部材の製造方法であって、前記成形金型の型部が、前記クランプ一体型組付用ワイヤーハーネス保護部材により保持されるワイヤーハーネスの長さ方向に分割され、互いに組み合わされて前記成形金型を構成する複数の部分金型から構成され、かつ、前記複数の部分金型のうちの少なくとも1つの部分金型が前記クランプ部形成部を有していることを特徴とするクランプ一体型組付用ワイヤーハーネス保護部材の製造方法である。
【0014】
本発明のクランプ一体型組付用ワイヤーハーネス保護部材の製造方法は請求項
2に記載の通り、請求項
1に記載のクランプ一体型組付用ワイヤーハーネス保護部材の製造方法において、前記部分金型の少なくとも1つがコルゲート状部形成用の部分金型であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の
製造方法によるクランプ一体型組付用ワイヤーハーネス保護部材によれば、ベルト付きクランプ等の別部材を使用しないために、ワイヤーハーネスへの組付時の作業性が向上される。また、クランプの一体型により、振動等の位置ずれ発生要因の大きい車両組付時の位置ずれの発生を抑制でき、装着性の向上効果及び車輌への組付後の製品(ワイヤーハーネス)特性の低下防止効果を同時に得ることができる。
【0018】
さらに、本発
明に係るクランプ一体型組付用ワイヤーハーネス保護部材の製造方法によれば、部分金型の組み合わせ方により、例えばクランプ部の位置や数が異なるなどの多種類のクランプ一体型組付用ワイヤーハーネス保護部材の成形が可能となり、このとき金型の作製コストが相対的に安価となる。
【0019】
請求項
2に係るクランプ一体型組付用ワイヤーハーネス保護部材の製造方法によれば、自在に曲げられるコルゲート状部を所望の位置に、さらに、コルゲート状部形成用の部分金型を増やすことで所望の数ないし所望の長さのコルゲート状部を有するクランプ一体型組付用ワイヤーハーネス保護部材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明に係るクランプ一体型組付用ワイヤーハーネス保護部材の一例を示すモデル図である。
図1(a)は全体の斜視図、
図1(b)は
図1(a)の前方の部分拡大斜視図、
図1(c)は
図1(b)の破線で囲まれた部分付近の断面図である。
【
図2】
図2は、本発明に係るクランプ一体型組付用ワイヤーハーネス保護部材の他の一例を示すモデル図である。
図2(a)は全体の斜視図、
図2(b)は
図2(a)の前方の部分拡大斜視図、
図1(c)は2つの半円筒体を熱融着する際のモデル断面図である。
【
図3】
図3は、本発明に係るクランプ一体型組付用ワイヤーハーネス保護部材のさらに他の一例(平面部を設けずに側面同士で有着した例)を示すモデル斜視図である。
【
図4】
図4(a)クランプ部の形状の例4aを示すモデル図である。
図4(b)クランプ部の形状の例4bを示すモデル図である。
図4(c)クランプ部の形状の例4cを示すモデル図である。
【
図5】本発明に係るクランプ一体型組付用ワイヤーハーネス保護部材を成形するための金型の一例を示す図である。
【
図6】従来技術に係るハーネスプロテクタの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のクランプ一体型組付用ワイヤーハーネス保護部材について、図面を用いて説明する。
【0022】
図1は、本発明に係るクランプ一体型組付用ワイヤーハーネス保護部材の一例1を示すモデル図である。
図1(a)は全体の斜視図、
図1(b)は
図1(a)の前方の部分拡大斜視図、
図1(c)は
図1(b)の破線で囲まれた部分付近の断面図である。
【0023】
図中符号1dは自動車の車体などに設けた係止穴(図示しない)に挿入され係止されるクランプ部であり、円筒状に曲げられたシート状のクランプ一体型組付用ワイヤーハーネス保護部材1に一体に形成されている。このクランプ一体型組付用ワイヤーハーネス保護部材1では、クランプ部1d付近は直管状(直管部1b)となるようにシート状部が曲げられて開いた円筒状に形成されており、その両側はともに複数の畝部を有するコルゲート管状(コルゲート管状部1a)に形成されている。
【0024】
このクランプ一体型組付用ワイヤーハーネス保護部材1は樹脂シートを圧空成形法で成形したものであり、図示しないワイヤーハーネスに巻き付けたときにワイヤーハーネスを確実に保持するようにその円周方向両端部分の互いに重ね合わされる部分に粘着剤層が積層された粘着部1cが設けられている。この例では2箇所に粘着部1cが設けられているが1箇所のみでも良い。また、上記では粘着剤層同士による粘着力によって円筒形の維持を行っているが、粘着剤を用いずに熱融着によっても良い。
【0025】
図2は、本発明に係るクランプ一体型組付用ワイヤーハーネス保護部材の他の一例を示すモデル図である。
図2(a)は全体の斜視図、
図2(b)は
図2(a)の前方の部分拡大斜視図、
図1(c)は2つの半円筒体を熱融着する際のモデル断面図である。
【0026】
図中符号2dはクランプ部であり、半円筒状部材2aに一体に熱成形により形成されている。また、符号2bで示されているのはクランプ部を有しない半円筒状部材であり、これら半円筒状部材2a、及び、2bによりクランプ一体型組付用ワイヤーハーネス保護部材が形成される。なお、このクランプ一体型組付用ワイヤーハーネス保護部材でもクランプ部2b付近は直管となっているが両端に近い部分2cはコルゲート管状に形成されている。
【0027】
これら半円筒状部材2a、及び、2bの円周方向両端部には平面部2cが形成されており、この平面部2cに粘着剤層を設けて貼り合わせることで、
図1に示したクランプ一体型組付用ワイヤーハーネス保護部材同様に用いることができるが、
図2(c)に示したように(ワイヤーハーネスは図示しない)これら半円筒状部材2a、及び、2bの平面部2cを合わせた後、加熱された融着機3によりこれら平面部2cを融着することで、ワイヤーハーネスを確実に保持するようにできる。
【0028】
図2により示した例では平面部2cを設けたことによりコルゲート管状を有しながらも図中横方向に可撓性が少なくなるが、
図3では平面部2cを設けず、半円筒状部材の下部と上部とをそれらの側面同士で互いに熱融着させることで、可撓性が制限されないクランプ一体型組付用ワイヤーハーネス保護部材とした例を示す。
【0029】
図4(a)〜
図4(c)には熱可塑性樹脂シートを熱成形することでシート部と一体に形成できるクランプ部の形状の例4a、4b、及び、4cを示す。
【0030】
図5には2つの半円筒状部材から構成されるクランプ一体型組付用ワイヤーハーネス保護部材の成形用金型の一例を示す。
【0031】
金型5aは、成形金型の型部、すなわち、熱成形で熱可塑性シートに形状が付与される部分(図中の凹部)が、この金型によりクランプ一体型組付用ワイヤーハーネス保護部材により保持されるワイヤーハーネスの長さ方向、すなわち、図の横方向に分割され、互いに組み合わされて前記成形金型を構成する複数、この例では8個の部分金型により構成されている。
【0032】
部分金型5
a1によりクランプ一体型組付用ワイヤーハーネス保護部材の一方の端部を有するコルゲート管状部(クランプ部のない)が形成され、部分金型5
a2によりクランプ部を有するコルゲート管状部が、部分金型5
a3により直管部(クランプ部のない)が、部分金型5
a4によりクランプ部を有する直管部が、部分金型5
a5によりコルゲート管状部(クランプ部のない)が、そして、部分金型5
a6により直管部により形成される他方の端部(クランプ部のない)が、それぞれ形成される。これらは順番、使用個数を変化させることで様々な形状のクランプ一体型組付用ワイヤーハーネス保護部材を構成する
クランプを有する半円筒状部材を形成することができる。この例ではクランプを有する半円筒状部材のクランプ部の数が2つであっても良く、必要に応じて1つにすることも、また、最大6個とすることもできる。
【0033】
金型5bは、部分金型5a1により成形されるクランプ部が一体に形成された半円筒状部材とともに本発明のクランプ一体型組付用ワイヤーハーネス保護部材を形成する、クランプ部のない半円筒状部材を熱成形で製造するための金型であり、
図5で示された金型5a形成時に用いられた部分金型のうち、部分金型5
a1、部分金型5
a3、部分金型5
a5、及び、部分金型5
a6を組み合わせて形成されている。
【0034】
金型5bは金型5aでの部分金型の組み合わせに従い、金型5aにより成形されるクランプを有する半円筒状部材の直管部及びコルゲート管状部にそれぞれ対応する直管部及びコルゲート管状部を有する半円筒状部材(いずれもクランプ部のない)が成形されるように各部分金型の組み合わせを変更することができる。なお、これら金型には吸気用の孔(真空成形時)及び排気用の孔(圧空成形時)は省略してある。
【0035】
このように、数種類の部分金型を組み合わせて成形用金型を形成することで様々なタイプのクランプ一体型組付用ワイヤーハーネス保護部材を成形することができる。なお、上記では、2つの半円筒体から構成されるクランプ一体型組付用ワイヤーハーネス保護部材成形用の金型について説明したが、
図1に示した一部材からなるクランプ一体型組付用ワイヤーハーネス保護部材を成形する際にも同様に数種類の部分金型を組み合わせて成形用金型を構成することができ、その場合も本発明に含まれる。
【0036】
さらに、上記のような金型を用いることにより直管部とコルゲート管状部とを一体に、かつ、同時に形成することができるために、従来のワイヤーハーネス保護部材では行われていた直管とコルゲート管状との接続作業が不要となる。
【0037】
このようなクランプ一体型組付用ワイヤーハーネス保護部材を製造するために用いる樹脂からなるシートを構成する熱可塑性樹脂としては、熱成形(真空成形、圧空成形、プレス成形等)により成形できるものであればよく、例えば、塩化ビニル樹脂(真空成形温度:170℃程度)、ポリプロピレン樹脂(真空成形温度:160〜170℃程度)、ポリエチレン樹脂(真空成形温度:100〜110℃程度)等が挙げられ、これらのうちから所望の成形性、経済性、耐熱性、耐光性、耐薬品性、機械的特性等を勘案して選択する。ここで例えば10000時間での耐熱寿命温度はポリプロピレンの場合95℃であり、塩化ビニル樹脂は80℃である。
【0038】
用いる樹脂シートの厚さとしては、上記要求特性を勘案して決定するが、通常0.1mm以上3mm以下である。
【0039】
熱成形を行う際は、真空成形、圧空成形、プレス成形等から適宜選択し、その一般的な成形条件で行う。これら熱成形法のうち、特に真空成形方法によると、本発明のような構造を有するクランプ一体型組付用ワイヤーハーネス保護部材の原料のシート材からの成形に適しており、好ましい。
【符号の説明】
【0040】
1 本発明に係るクランプ一体型組付用ワイヤーハーネス保護部材の一例
1a コルゲート管状部
1b 直管部
1c 粘着部
1d クランプ部
2a、2b 半円筒状部材
2c 平面部
4a、4b、4c クランプ部の形状の例
5a、5b 金型
5c1、5c2、5c3、5c4、5c5、5c6 部分金型