(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3には、濃度分布を取得することについては何ら開示されていない。また、特許文献3に開示されている装置を用いて濃度分布を取得する場合には、濃度測定位置に応じて二重管ノズルの位置を調節する必要があり、制御が煩雑となる上、相当な時間を要するという問題があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、測定対象物質が含まれるガスまたは液体を採取することなく、測定対象物質の濃度分布を取得することのできる濃度測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明に係る濃度測定装置は、測定対象とする物質が含まれるガスにレーザ光を照射し、ガスを透過したレーザ光を検出することで前記物質の濃度を測定する濃度測定装置において、機器の内部空間を囲む第1壁部に設けられた第1透明板と、前記内部空間を囲み前記第1壁部と異なる第2壁部に設けられた第2透明板と、前記内部空間内に設けられ、一端が前記第1透明板であり他端が前記第2透明板であって、レーザ光が前記第1透明板から前記第2透明板にわたって軸線方向に対して平行に通過する筒状部材とを備え、前記筒状部材は、透明な少なくとも一つの隔壁と前記第1透明板と前記第2透明板とによって、複数のセルに仕切られており、前記セルは、外部の吸引装置
及び逆洗部に接続される第1開口部と、前記吸引装置によって前記セル内に吸入される前記内部空間のガスが通過する第2開口部とを有
し、前記吸引装置によって前記複数のセルのうち少なくとも一つの前記セル内に吸引された前記内部空間のガスに含まれる前記物質の濃度を測定するとき、前記複数のセルのうち他の前記セル内には、前記逆洗部によってパージガスが充満される。
【0010】
この発明によれば、機器の内部空間に筒状部材が設けられ、筒状部材の一端は第1壁部に設けられた第1透明板であり、筒状部材の他端は第2壁部に設けられた第2透明板である。そして、筒状部材は複数のセルに分けられる。各セルは、筒状部材が透明な少なくとも一つの隔壁と第1透明板と第2透明板のうちの二つによって仕切られることによって形成される。
筒状部材の軸線方向に配置される部材、すなわち、第1透明板と第2透明板と隔壁は、透明部材であることから、レーザ光が筒状部材内部を通過する。
各セルには、機器の内部空間のガスが吸入される。セルごとに内部空間のガスを順次吸入した場合、セルに吸入されたガスに含まれる物質の濃度をセル単位で測定できる。セルは、筒状部材の軸方向に配置されることから、筒状部材の軸方向に沿って内部空間の物質の濃度分布を測定できる。なお、一のセル内の濃度を測定するとき、他のセル内には、内部空間のガスは含まれず、例えばパージガスで充満しておく。
【0011】
また、本発明に係る濃度測定装置は、測定対象とする物質が含まれるガスにレーザ光を照射し、ガスを透過したレーザ光を検出することで前記物質の濃度を測定する濃度測定装置において、機器の内部空間内に設けられ、前記内部空間を囲む第1壁部と、前記内部空間を囲み前記第1壁部と異なる第2壁部の少なくともいずれか一方によって支持される筒状部材を備え、前記筒状部材は、外周面に形成された前記内部空間のガスが出入する開口部と、互いに対向する二つの透明な隔壁の間に形成された前記開口部を含む測定空間とを有し、レーザ光が、前記測定空間において、一の前記隔壁から他の前記隔壁にわたって前記筒状部材の軸線方向に対して平行に通過する。
【0012】
この発明によれば、機器の内部空間に筒状部材が設けられ、筒状部材は第1壁部と第2壁部の少なくともいずれか一方によって支持される。そして、筒状部材の外周面には、開口部が形成されており、筒状部材は、互いに対向する二つの透明な隔壁の間に挟まれた開口部を含む測定空間と、それ以外の空間に分けられる。
開口部を含む測定空間は、内部空間のガスが存在し、それ以外の空間は、隔壁によって仕切られていることから、内部空間のガスが存在しない。したがって、測定空間において、レーザ光が筒状部材の軸線方向に対して平行に通過することによって、測定空間におけるガスに含まれる物質の濃度を測定できる。
【0013】
また、本発明に係る濃度測定装置は、測定対象とする物質が含まれるガスにレーザ光を照射し、ガスを透過したレーザ光を検出することで前記物質の濃度を測定する濃度測定装置において、機器の内部空間内に設けられ、前記内部空間を囲む第1壁部と、前記内部空間を囲み前記第1壁部と異なる第2壁部の少なくともいずれか一方によって支持される筒状部材と、前記筒状部材と接続され、レーザ光が一端部から他端部にわたって軸線方向に対して平行に通過する測定管とを備え、前記筒状部材は、前記内部空間のガスが通過する開口部を有し、前記測定管は、前記筒状部材から前記内部空間のガスが導入される。
【0014】
この発明によれば、機器の内部空間に筒状部材が設けられ、筒状部材は第1壁部と第2壁部の少なくともいずれか一方によって支持される。そして、筒状部材の外周面には、開口部が形成されており、開口部を介して内部空間のガスが筒状部材内に導かれる。筒状部材は、測定管と接続されており、測定管は、筒状部材内部から内部空間のガスが導入される。測定管において、レーザ光が測定管の軸線方向に対して平行に通過することによって、測定管におけるガスに含まれる物質の濃度を測定できる。
【0015】
上記発明において、前記筒状部材が複数設けられ、前記筒状部材それぞれの前記開口部は、前記筒状部材の軸線方向において位置が異なるようにしてもよい。
【0016】
この発明によれば、複数の筒状部材が設けられ、それぞれの筒状部材に形成される開口部は、筒状部材の軸線方向において位置が異なることから、異なる。したがって、それぞれの測定空間について濃度を測定することによって、筒状部材の軸方向に沿って内部空間の物質の濃度分布を測定できる。
【0017】
上記発明において、前記筒状部材は、軸線方向に対して平行に移動可能であってもよい。
【0018】
この発明によれば、筒状部材が軸線方向に対して平行に移動することによって、筒状部材に形成される開口部は、筒状部材の軸線方向において位置が変化する。そして、測定空間についても、筒状部材の軸線方向において位置が変化する。したがって、異なる位置において測定空間の濃度を測定することによって、筒状部材の軸方向に沿って内部空間の物質の濃度分布を測定できる。
【0019】
本発明は、測定対象が含まれるガスが流通する機器の内部空間に仮想的に設定された複数の測定点における前記測定対象の濃度を測定して濃度分布を得る濃度測定装置であって、先端部に開口部を有し、前記機器の壁面を貫通して該開口部が前記測定点にそれぞれ位置するように配置された複数の筒状部材と、前記筒状部材の他端に一端が接続され、他端が分岐管に接続される測定管と、前記分岐管に設けられた吸引手段と、前記機器の外部において前記筒状部材に設けられた流量調整弁とをし、前記測定管は、管内に導入された前記ガスに対してレーザ光を照射する送光手段と、該レーザ光を受光する受光手段とを有し、前記レーザ光の強度情報に基づいて前記管内に導入された前記ガスに含まれる前記測定対象の濃度を測定する濃度測定装置を提供する。
【0020】
上記濃度測定装置において、複数の前記筒状部材のうちの一部の筒状部材の前記他端は、前記流量調整弁よりもガス流れ下流側において共通の接続管に接続され、前記測定管の一端が前記接続管に接続されていてもよい。
【0021】
上記濃度測定装置において、前記測定管が備える各送光手段には、共通のレーザ光源からレーザ光が供給されることとしてもよい。
【0022】
上記濃度測定装置において、前記測定管が備える各受光手段は共通の光検出手段と接続され、前記光検出手段によってレーザ光の受光強度が検出されることとしてもよい。
【0023】
本発明は、排ガス中の窒素酸化物を除去する脱硝装置であって、還元剤主系統に設けた総流量制御弁の下流から分岐させた複数の還元剤供給系統が各々少なくとも1個の注入ノズルと該注入ノズルの上流側に位置する流量制御元弁とを備え、前記排ガスを流す流路内に設置されて前記注入ノズルから前記排ガス中に前記還元剤を注入する還元剤注入装置と、前記還元剤と前記排ガスとを混合させる流体混合装置と、前記窒素酸化物と前記還元剤とを反応させた後に主として水と窒素とに分解する脱硝触媒と、前記脱硝触媒下流側の前記流路断面内における前記還元剤濃度分布を測定する上記いずれかの濃度測定装置と、窒素酸化物濃度を計測する窒素酸化物濃度計と、前記還元剤濃度分布及び前記窒素酸化物濃度の計測値が入力され、前記窒素酸化物濃度に基づいて前記総流量制御弁の開度の設定を行うとともに、前記還元剤濃度分布に基づいて複数個所の前記流量制御元弁毎の開度の設定を行う開度設定部とを具備する脱硝装置を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、測定対象物質が含まれるガスまたは液体を採取することなく、測定対象物質の濃度分布を取得することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明に係る実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態に係る濃度分布測定装置1について図面を参照して説明する。
図4を参照して、本実施形態に係る濃度分布測定領域について説明する。
図4に示すように、機器10の内部空間5には測定対象を含むガスが流通している。機器10の一例としては、事業用ボイラ、産業用ボイラ、工業炉などの排ガス口に接続された排気ダクトなどのガス配管、ガスが充填された容器等が挙げられる。
【0027】
内部空間5には、濃度測定領域Sが仮想的に設定されている。濃度測定領域Sは内部空間5内に任意に設定される領域である。
図4では、濃度測定領域Sは2次元的に設定されているが、3次元的に設定されてもよい。
【0028】
図1は、本実施形態に係る濃度分布測定装置1の全体構成を概略的に示したブロック図である。
図1に示すように、濃度分布測定装置1は、濃度測定領域Sに向けてレーザ光を照射する複数の送光部6と、各送光部6に対応して設けられるとともに、対応する送光部6から照射され、濃度測定領域Sを通過したレーザ光を受光する複数の受光部7とを有している。
【0029】
図3には、一対の送光部6及び受光部7の配置関係を概略的に示している。送光部6及び受光部7は、
図3に示すように、フランジ9によって機器10の外壁面にそれぞれ固定されている。送光部6から射出されたレーザ光は、機器10の壁面に形成された透明板21を介して筒20内部に向けて照射される。レーザ光は、筒20内に存在する測定対象のガスの影響を受けながら伝搬し、透明板22を介して対応する受光部7により受光される。
【0030】
図1に示すように、各送光部6には共通のレーザ光源17から送光側光セレクタ18を介してレーザ光が供給される。送光側光セレクタ18は、送光部6の設置数以上のチャネルを有しており、各チャネルと各送光部6とが光ファイバ8を介して接続されている。同様に、レーザ光源17と送光側光セレクタ18とは光ファイバ8を介して接続されている。レーザ光源17はレーザ制御部16によって制御される。レーザ光源17としては、測定対象の吸光度の特性に応じた適切な波長を出力する光源が採用される。
【0031】
このような送光系においては、測定制御部15によってレーザ制御部16に起動・停止の信号が出力されることにより、レーザ制御部16によるレーザ光源17の起動・停止が制御される。更に、測定制御部15によって送光側光セレクタ18のチャネルが走査されることにより、レーザ光源17から射出されたレーザ光が選択されたチャネルの送信部6に供給され、筒20に向けて照射される。また、レーザ光源17から照射されるレーザ光の照射強度が、例えば、光検出部(図示略)によって検出され、後述する濃度測定部35に通知される。
【0032】
各受光部7は受光側光セレクタ37を介して光検出部36と接続されている。受光側光セレクタ37は受光部7の設置数以上のチャネルを有しており、各チャネルと各受光部7とが光ファイバ8を介して接続されている。このとき、各受光部12と受光側光セレクタ18との接続チャネルは、その受光部12に対応する送光部11と送光側光セレクタ17との接続チャネルと同じチャネルにされることが好ましい。換言すると、一対の送光部11と受光部12とは同じチャネルにそれぞれ接続されることが好ましい。
受光側セレクタ37と光検出部36とは光ファイバ8を介して接続されている。
【0033】
このような受光系においては、測定制御部15が、送光側光セレクタ18のチャネル走査と同期して、受光側光セレクタ37のチャネルを走査することにより、送光部6から照射されたレーザ光が対応する受光部7によって受光され、受光された光の情報が受光側光セレクタ37を介して光検出部36に出力される。光検出部36は、入力された光の情報を電気信号に変換して濃度測定部35に出力する。
濃度測定部35では、上述のように光検出部36から各受光部7によって受光された光の情報が電気信号として入力されるとともに、測定制御部15から受光側光セレクタ37の受光タイミング信号が入力される。これにより、光検出部16からの電気信号と各受光部7とが対応付けられる。
【0034】
上記のように、送光側光セレクタ18を設けることで、レーザ光源17を共有化でき、また、受光側光セレクタ37を設けることで、光検出部36を共有化できる。これにより、装置の更なる小型化及び低コスト化を図ることが可能となる。
なお、送光側光セレクタ18に代えて、各送光部6に対応してそれぞれレーザ光源17を設けてもよく、同様に、受光側光セレクタ37に代えて、各受光部37に対応して光検出部36をそれぞれ設けることとしてもよい。
【0035】
測定制御部15及び濃度測定部35は、例えば、コンピュータであり、CPU、CPUが実行するプログラム等を記憶するためのROM(Read Only Memory)、各プログラム実行時のワーク領域として機能するRAM(Random Access Memory)、大容量記憶装置としてのハードディスクドライブ(HDD)、通信ネットワークに接続するための通信インターフェース、及び外部記憶装置が装着されるアクセス部を備えている。これら各部は、バスを介して接続されている。更に、測定制御部15及び濃度測定部35は、キーボードやマウス等からなる入力部およびデータを表示する液晶表示装置等からなる表示部などと接続されていてもよい。
【0036】
上記CPUが実行するプログラム等を記憶するための記憶媒体は、ROMに限られない。例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ等の他の補助記憶装置であってもよい。また、測定制御部15と濃度測定部35とを個別のハードウェアによって実現してもよいし、これらを一体化し、一つのコンピュータによって実現する構成としてもよい。
【0037】
次に、本実施形態に係る濃度分布測定装置1の濃度測定装置2について説明する。濃度測定装置2は、上述した機器10内の濃度測定領域Sに存在する予め対象として決められた特定物質(以下「測定物質」ともいう。)の濃度を測定する。濃度分布測定装置1は、複数の濃度測定装置2を備える。
【0038】
濃度測定領域Sが、
図2に示すように、第1壁部11又は第2壁部12の面内方向に対して平行方向に13列に分割され(A列〜M列)、第1壁部11から第2壁部12にわたって3行に分割される場合、39個の分割領域が形成される。
【0039】
機器10は、
図4に示すように、例えば角筒状の空間であって、断面が四角形の場合、互いに対向する第1壁部11と第2壁部12を有する。第1壁部11と第2壁部12は、板状部材であって、互いに平行に配置される。機器10の内部には、ガスが一側から他側に流れる。濃度測定領域Sは、機器10のガス流れに対して垂直方向に切断して形成される機器10内の2次元面又は3次元空間である。
【0040】
濃度測定装置2は、
図3に示すように筒20を備えており、濃度測定装置2の筒20は、
図2及び
図4に示すように複数本が平行に配置される。筒20は、例えば金属製であって、中空の円筒形状である。
図3に示すように、筒20の一端には送光部6が設置され、他端には受光部7が設置される。送光部6から照射されるレーザ光の光路は、筒20の軸線方向に対して平行である。
【0041】
図3に示すように、第1壁部11には開口部13が形成され、第2壁部12には開口部14が形成される。開口部13は第1壁部11を貫通しており、開口部14は第2壁部12を貫通している。開口部13,14の大きさは、送光部6から照射されるレーザ光が遮断されない大きさであればよい。
【0042】
開口部13,14それぞれに透明板21,22が設置される。透明板21,22は、レーザ光を透過させる。また、透明板21,22は、機器10の外部から筒20内部へ外部空気が流入することを防止する。
【0043】
筒20は、一端部が機器10の第1壁部11の開口部13に固定され、他端部が機器10の第2壁部12の開口部14に固定される。したがって、筒20の一端部には、透明板21が配置され、他端部には、透明板22が配置される。
【0044】
また、筒20は、内部において、複数の隔壁23によって仕切られる。
図3に示す例では、隔壁23は、筒20の軸線方向に二つ設置される。隔壁23は、レーザ光を透過させる透明の板状部材である。隔壁23は、濃度測定領域Sから筒20内部に充填されたガスが隣接するセルCEに漏れることを防止する。
【0045】
筒20の内部は、透明板21,22と、2枚の隔壁23によって、三つのセルCE1,CE2,CE3(以下、総称して「セルCE」ともいう。)が形成される。セルCE1は、一端が透明板21であり、他端が隔壁23であって、レーザ光の測定光路長は、透明板21と隔壁23間の内寸距離L0である。セルCE2は、2枚の隔壁23によって挟まれた空間であり、セルCE2におけるレーザ光の測定光路長は、2枚の隔壁23間の内寸距離L0である。セルCE3は、一端が隔壁23であり、他端が透明板22であって、レーザ光の測定光路長は、隔壁23と透明板22間の内寸距離L0である。
【0046】
各セルCEには、セルCEの一端側に開口部24と、他端側に開口部27が形成される。開口部24は、濃度測定領域S内のガスが通過する。これにより、セルCE内部に測定ガスが充満されたり、測定ガスが排出されたりする。開口部27は、パージエアーが通過する。これにより、セルCE内部にパージエアーが充満されたり、セルCE内部からパージエアーが排出されたりする。開口部24がセルCEの一端側に設けられ、開口部27が他端側に設けられることにより、セルCEの軸線長さ方向にわたって、吸入されたガスを充満させることができる。
【0047】
開口部24には、配管25の一端部が接続され、配管25の他端部は開口部26が形成される。開口部26は、例えば分割領域A1,A2,A3……(
図2及び
図3参照)の中間に配置される。これにより、セルCE内部には、分割領域A1,A2,A3……の中間に存在するガスが吸入される。
【0048】
開口部27は、配管28の一端部が接続される。配管28には、開閉弁29が設置される。開閉弁29は、配管28内にガスを流通させたり、配管28内のガスの流れを遮断したりする。
図3に示す例では、セルCE1に対応して開閉弁29Aが設置され、セルCE2に対応して開閉弁29Bが設置され、セルCE3に対応して開閉弁29Cが設置される。
【0049】
3本の配管28は、配管30と合流する。配管28側に対して配管30の反対側は、吸引装置(図示せず。)と接続される。配管30には、開閉弁31が設置される。開閉弁31は、配管30内にガスを流通させたり、配管30内のガスの流れを遮断したりする。吸引装置が駆動し、開閉弁31が開状態になったとき、セルCE内の空気が配管28及び配管30を介して外部へ流れる。また、濃度測定領域S内のガスが開口部24からセルCE内部に流入する。
【0050】
配管30には、開閉弁31よりも配管29側にて、逆洗管32が接続される。配管30側に対して逆洗管32の反対側からパージエアーが供給される。パージエアーは、測定物質が含まれない空気又は窒素などである。逆洗管32には、開閉弁33が設置される。開閉弁33は、逆洗管32内にエアーを流通させたり、逆洗管32内のパージエアーの流れを遮断したりする。機器10内の圧力は、機器10の外部に比べて負圧であることから、開閉弁31が閉状態で、開閉弁33が開状態になったとき、パージエアーが逆洗管32、配管30及び配管28を介してセルCE内部へ流れる。また、セルCE内のガスが開口部24から機器10内部へ流出する。
【0051】
給気口34は、筒20の内周面にて、透明板21,22と、隔壁23のそれぞれの近傍かつセルCE側に設けられる。給気口34からシールエアーが吹き出すことによって、透明板21,22表面と隔壁23表面への物質の付着を防止できる。シールエアーは、例えば、筒20の外部に設置された流通路(図示せず。)を通過して、機器10の外部から透明板21,22表面と隔壁23の表面へ供給される。
【0052】
次に、本実施形態に係る濃度測定装置2の動作について説明する。
濃度測定装置2は、筒20の各セルCE内部に測定物質を含むガス(以下「測定ガス」ともいう。)が充満され、各セルCEをレーザ光が通過することによって、測定物質の濃度が測定される。測定時、測定ガスが充満されるセルCEは1本の筒20について一つのセルCEであり、他のセルCEはパージエアーが充満される。
【0053】
まず、セルCE1内部に測定ガスを吸引するため、吸引装置を駆動し、開閉弁29Aと開閉弁31を開状態、開閉弁29Bと開閉弁29Cと開閉弁33を閉状態にする。これにより、セルCE1内の空気が配管28及び配管30を介して外部へ流れる。また、濃度測定領域S内のガスが開口部26を介して開口部24からセルCE1内部に流入する。
【0054】
そして、送光側セレクタ18を調整して、測定ガスが導入されたセルCE1を有する筒20にレーザ光を照射する。このとき、その他のセルCE2,CE3は、パージエアーが充満されている。筒20にレーザ光が照射されることによって、光検出部36で光の強度が検出される。光の強度は、測定物質の濃度に応じて変化することから、濃度測定装置2は、セルCE1内の対象物質の濃度を測定できる。
【0055】
濃度測定が終了したとき、開閉弁31を閉状態、開閉弁29A,29B,29Cと開閉弁33を開状態にする。その結果、機器10内は外部に比べて負圧であることから、セルCE1,CE2,CE3内は、パージエアーで充満される。また、パージエアーの流通によって、配管28やセルCE1,CE2,CE3において測定ガスに含まれるダストによる詰まりを防止できる。
【0056】
次に、セルCE2によって濃度を測定する場合は、吸引装置を駆動し、開閉弁29Bと開閉弁31を開状態、開閉弁29Aと開閉弁29Cと開閉弁33を閉状態にして、セルCE2内部に測定ガスを吸引する。測定が終了したとき、同様に、セルCE1,CE2,CE3をパージエアーで充満させる。そして、セルCE3によって濃度を測定する場合も上述と同様の手順で行う。
【0057】
以上、本実施形態によれば、1本の筒20で3箇所の分割領域の濃度を測定できる。そして、全ての筒20で同様に測定を行うことで、濃度測定領域S全体の濃度分布を得ることができる。また、筒20が機器10に対して固定されており、レーザ光の測定光路長L0も一定であることから、測定光路長L0の設定するための時間が不要である。その結果、測定全体にかかる時間を短縮化できる。
【0058】
[第2実施形態]
次に、
図5〜
図8を参照して、本発明の第2実施形態に係る濃度分布測定装置1の濃度測定装置3について説明する。
濃度測定装置3では、濃度測定領域Sが、N個に分割されるとき、N本の筒42が設置される。濃度測定領域Sが、
図5に示すように、第1壁部11又は第2壁部12の面内方向に対して平行方向に13列に分割され(A列〜M列)、第1壁部11から第2壁部12にわたって3行に分割される場合、39個の分割領域が形成される。各分割領域の濃度を測定する場合、各列(A列、B列……)には、3本の筒42が設置され、合計39本の筒42が同一面内に平行に設置される。
【0059】
筒42は、例えば金属製であって、円筒形状である。機器10の外部かつ各筒42の一端側には送光部がそれぞれ設置され、他端側には受光部がそれぞれ設置される。各送光部から照射されるレーザ光の光路は、各筒42の軸線方向に対して平行である。筒42は、
図6に示すように、第1壁部11及び第2壁部12を貫通して設けられ、機器10に対して固定されている。
【0060】
筒42の外周面には、
図6に示すように、開口部45が形成される。開口部45は、平面視したときの形状が
図6に示す例では長方形である。なお、開口部45の形状は、長円形、楕円形等でもよく、長方形に限定されない。
【0061】
開口部45は、例えば
図7及び
図8に示すように、互いに対向して2箇所に形成される。一の開口部45は、ガス流れ上流に位置し、他の開口部45はガス流れ下流側に位置する。
【0062】
開口部45の一端部には、隔壁46が配置され、他端部には隔壁47が配置される。隔壁46,47は、レーザ光を透過させる透明の板状部材である。
【0063】
筒42は、隔壁46,47との間に、測定空間48が形成される。測定空間48は、一端が隔壁46であり、他端が隔壁47であって、レーザ光の測定光路長は、隔壁46と隔壁47間の内寸距離L0である。測定空間48には、濃度測定領域S内のガスが存在する。複数の筒42の各測定空間48は、例えば分割領域A1,A2,A3……の中間に配置される。これにより、各測定空間48内部には、分割領域A1,A2,A3……の中間のガスがそれぞれ存在する。
【0064】
分割領域の各列(A列、B列……)に配置された3本の筒42のそれぞれの測定空間48は、筒42の軸線方向において位置が異なる。これにより、各列の3本の筒42は、それぞれ異なる分割領域の濃度を測定できる。
【0065】
給気口34は、筒42の内周面にて、隔壁46と隔壁47のそれぞれの近傍かつ測定空間48側に設けられる。給気口34からシールエアーが吹き出すことによって、隔壁46,7表面への物質の付着を防止できる。シールエアーは、例えば、
図8に示すように、筒42の壁部内部に形成された流通路を通過して、機器10の外部から隔壁46,47の表面へ供給される。
【0066】
次に、本実施形態に係る濃度測定装置3の動作について説明する。
濃度測定装置3の測定空間48は、濃度測定領域Sに対して開口している。したがって、測定空間48には、測定ガスが常に存在した状態となる。そこで、まず、送光側セレクタ18を調整して、レーザ光を照射する筒42を選択する。筒42にレーザ光が照射されることによって、光検出部36で光の強度が検出される。光の強度は、測定物質の濃度に応じて変化することから、濃度測定装置3は、測定空間48内の対象物質の濃度を測定できる。
そして、順次、送光側セレクタ18を切り替えていくことによって、全ての筒42での濃度測定が完了する。
【0067】
以上、本実施形態によれば、筒42それぞれによって、各分割領域の濃度を測定できる。そして、全ての筒42で同様に測定を行うことで、濃度測定領域S全体の濃度分布を得ることができる。また、筒42が機器10に対して固定されており、レーザ光の測定光路長L0も一定であることから、測定光路長L0の設定するための時間が不要である。その結果、測定全体にかかる時間を短縮化できる。
また、測定の際、測定ガスの吸引が不要であることから、濃度測定装置における構成部材の点数を低減したり、測定にかかる時間を短縮化したりすることができる。
【0068】
次に、
図9及び
図10を参照して、濃度測定装置3の第1変形例について説明する。
図6〜
図8に示した濃度測定装置3は、開口部45が、筒42の外周面に、それぞれ2箇所ずつ互いに対向して形成される場合について説明したが、本発明はこの例に限定されない。
【0069】
図9及び
図10に示す濃度測定装置3の第1変形例は、開口部45が、筒42の外周面に、それぞれ1箇所ずつ形成される。開口部45の開口方向は、例えばガス流れの下流側である。これにより、開口部45内部に位置する各部材、例えば隔壁46,47への測定ガスに含まれるダストの付着を防止できる。
【0070】
開口部45の内部には、筒42の軸線方向に対して平行に壁部49が設置される。壁部49の一端部には、隔壁46が配置され、他端部には隔壁47が配置される。壁部49は、隔壁46,47と共に、機器10の外部に存在するガスが、筒42内部に流入し、機器10内部へ流入することを防止する。
【0071】
筒42は、隔壁46,47及び壁部49との間に、測定空間50が形成される。測定空間50は、一端が隔壁46であり、他端が隔壁47であって、レーザ光の測定光路長は、隔壁46と隔壁47間の内寸距離L0である。測定空間50には、濃度測定領域S内のガスが存在する。測定空間50は、測定空間48と同様に、例えば分割領域A1,A2,A3……の中間に配置される。これにより、測定空間50内部には、分割領域A1,A2,A3……の中間のガスが存在する。
【0072】
分割領域の各列(A列、B列……)に配置された3本の筒42のそれぞれの測定空間50は、筒42の軸線方向において位置が異なる。これにより、各列の3本の筒42は、それぞれ異なる分割領域の濃度を測定できる。
【0073】
給気口34は、筒42の内周面にて、隔壁46と隔壁47のそれぞれの近傍かつ測定空間50側に設けられる。給気口34からシールエアーが吹き出すことによって、隔壁46,47表面への物質の付着を防止できる。シールエアーは、例えば、
図10〜
図12に示すように、筒42の内部に配置された流通路56を通過して、機器10の外部から隔壁46,47の表面へ供給される。
【0074】
また、
図6〜
図8に示した濃度測定装置3は、機器10の外部に送光部と受光部がそれぞれ設置される場合について説明したが、本発明はこの例に限定されない。
【0075】
図9及び
図10に示す濃度測定装置3の第1変形例は、送光部6が筒42の内部にそれぞれ設置され、受光部7が筒42の内部にそれぞれ設置されてもよい。また、受光部7は、
図9に示すように、レンズ54を介してレーザ光を受光してもよい。
【0076】
次に、
図13を参照して、第2実施形態に係る濃度測定装置3の第2変形例について説明する。
図6〜
図8に示した濃度測定装置3は、筒42が第1壁部11及び第2壁部12を貫通して設けられ、両端で機器10に対して固定されている場合について説明したが、本発明はこの例に限定されない。
【0077】
図13に示す濃度測定装置3の第2変形例は、筒42が第1壁部11及び第2壁部12のいずれか一方を貫通して設けられ、片持ち状態で機器10に対して固定されている。これにより、
図6〜
図8に示した濃度測定装置3の筒42よりも筒42の軸線方向長さを短縮でき、機器10の幅が広いときなどにおいて有利である。
【0078】
第2変形例では、筒42は、第1変形例と同様に、隔壁46,47及び壁部49との間に、測定空間50が形成される。測定空間50は、一端が隔壁46であり、他端が隔壁47であって、レーザ光の測定光路長は、隔壁46と隔壁47間の内寸距離L0である。測定空間50には、濃度測定領域S内のガスが存在する。測定空間50は、測定空間48と同様に、例えば分割領域A1,A2,A3……の中間に配置される。これにより、測定空間50内部には、分割領域A1,A2,A3……の中間のガスが存在する。
【0079】
分割領域の各列(A列、B列……)に配置された3本の筒42のそれぞれの測定空間50は、筒42の軸線方向において位置が異なる。これにより、各列の3本の筒42は、それぞれ異なる分割領域の濃度を測定できる。
【0080】
また、
図13に示した濃度測定装置3の第2変形例は、送光部6が筒42の内部にそれぞれ設置され、機器10の外部に受光部がそれぞれ設置される。
【0081】
なお、濃度測定装置3の第2変形例において、筒42を軸線方向に移動可能に設置するとしてもよい。分割領域の各列で筒42が3本ずつ設置されるのではなく、各列において1本の筒42のみが設置されればよい。これにより、筒42の測定空間50が筒42の軸線方向において位置を変化させることができる。その結果、スライドする筒42を用いて、濃度測定装置3は、それぞれ異なる分割領域の濃度を測定できる。
【0082】
[第3実施形態]
次に、
図14及び
図15を参照して、本発明の第3実施形態に係る濃度分布測定装置1の濃度測定装置4について説明する。
上述した第1、第2実施形態では、濃度測定領域S内にレーザ光を通過させるとしたが、第3実施形態では、各分割領域から機器10外に測定ガスを吸引して、測定ガスが蓄積された筒内の濃度を測定する。
【0083】
濃度測定装置4では、濃度測定領域Sが、N個に分割されるとき、合計N本の筒60,61,62が設置される。濃度測定領域Sが、第1壁部11又は第2壁部12の面内方向に対して平行方向に13列に分割され(A列〜M列)、第1壁部11から第2壁部12にわたって3行に分割される場合、39個の分割領域が形成される(
図5参照)。各分割領域の濃度を測定する場合、各列(A列、B列……)には、筒60,61,62が1本ずつ設置され、合計39本の筒60,61,62が同一面内に平行に設置される。
【0084】
筒60,61,62は、例えば金属製であって、円筒形状である。筒60,61,62は、例えば第1壁部11を貫通して設けられ、機器10に対して固定されている。
【0085】
筒60,61,62の先端部には、
図14に示すように、開口部63が形成される。筒60,61,62には、機器10の外部で流量調整弁68が設置される。流量調整弁68は、筒60,61,62内に測定ガスを流通させたり、筒60,61,62の測定ガスの流れを遮断したりする。
【0086】
測定管64は、例えば金属製であって、円筒形状である。測定管64は、機器10の外部に設置される。測定管64は、一端側にて、筒60,61,62のいずれか1本と接続され、他端側にて、分岐管65と接続される。複数の分岐管65は、吸引管66と合流する。吸引管66には、吸引ポンプ67と開閉弁69が設置される。
【0087】
吸引ポンプ67は、濃度測定領域S内の測定ガスを筒60,61,62の先端部の開口部63から吸入して、測定管64内に測定ガスを導入する。どの分割領域の測定ガスを吸入し測定するかによって、流量調整弁68の開閉が制御される。吸引管66は、吸引ポンプ67よりも下流側にて、機器10の第1壁部11に接続される。そして、測定管64にて測定が終了した測定ガスは、機器10内部に戻される。開閉弁69は、機器10内の測定ガスの逆流を防止する。
【0088】
図15に示すように、複数の測定管64の一端側には送光部6がそれぞれ設置され、他端側には受光部7がそれぞれ設置される。各送光部6から照射されるレーザ光の光路は、各測定管64の軸線方向に対して平行である。測定管64は、機器10の外部に設けられるため、測定管64に設置される送光部6及び受光部7のメンテナンスが容易である。
【0089】
測定管64は、送光部6と受光部7との間に、測定空間が形成される。測定管64内の測定空間は、一端が送光部6の端面6aであり、他端が受光部7の端面7aであって、レーザ光の測定光路長は、端面6aと端面7a間の内寸距離L0である。測定管64の測定空間には、濃度測定領域Sから吸入されたガスが充填される。筒60,61,62の先端部の開口部63は、例えば分割領域A1,A2,A3……の中間に配置される。これにより、測定管64の測定空間内部には、分割領域A1,A2,A3……の中間のガスが充満する。
【0090】
分割領域の各列(A列、B列……)に配置された筒60,61,62のそれぞれの開口部63は、筒60,61,62の軸線方向において位置が異なる。これにより、各列の筒60,61,62は、それぞれ異なる分割領域の濃度を測定できる。
【0091】
給気口34は、測定管64の内周面にて、端面6aと端面7aのそれぞれの近傍かつ測定空間側に設けられる。給気口34からシールエアーが吹き出すことによって、端面6aと端面7a表面への物質の付着を防止できる。シールエアーは、例えば、測定管64の外部に配置された流通路(図示せず。)を通過して、機器10の外部から端面6aと端面7aの表面へ供給される。
【0092】
本実施形態に係る濃度測定装置4の動作について説明する。
筒60,61,62の先端部の開口部63は、濃度測定領域Sに対して開口している。まず、吸引ポンプ67を駆動して、測定したい分割領域に対応する筒60,61,62の流量調整弁68を開状態にする。そして、予め決められた一定の時間の間、先端部の開口部63から測定ガスを吸引し、測定管64内部に測定ガスを導入する。
【0093】
その後、送光側セレクタ18を調整して、測定ガスが導入された測定管64にレーザ光を照射する。測定管64にレーザ光が照射されることによって、光検出部36で光の強度が検出される。光の強度は、測定物質の濃度に応じて変化することから、濃度測定装置4は、測定管64内の対象物質の濃度を測定できる。全ての分割領域から測定ガスを吸入し、全ての測定管64で計測が行われることによって、機器10内部の濃度測定領域S全体の対象物質の濃度分布を測定できる。
なお、流量調整弁68を開状態にして測定ガスを吸入するタイミングは、分割領域毎に一つずつ行ってもよいし、全ての分割領域を同時に行ってもよい。
【0094】
以上、本実施形態によれば、機器10内のダストが高濃度であって、第1、第2実施形態のように機器10内の対象ガスに直接レーザ光を照射しても、適切な測定結果を得られない場合に有効である。
また、レーザ光の測定光路長L0が1m弱程度であれば、測定管64として既存のレーザ式濃度計測器を用いて、高ダスト濃度中の測定物質の濃度を測定できる。また、筒42が機器10に対して固定されており、測定対象とする領域の設定が不要であることから測定全体にかかる時間を短縮化できる。
【0095】
また、本実施形態では、各筒60,61,62に対応して測定管64を設けていたが、これに代えて、3本の筒60,61,62に対して1つの測定管64を設け、合計13本の測定管64としてもよい。この場合、例えば、各筒60,61,62は、流量調整弁68よりも測定ガス流れの下流側において共通の管に接続され、この管と測定管64の一端とが接続される。そして、例えば、筒60の設置位置における濃度測定を行う場合には、筒60の流量調整弁68を開くとともに、筒61,62の流量調整弁68を全閉状態とする。これにより、筒60に対応する分割領域の測定ガスのみを測定管64に流通させることができ、その分割領域における測定物質の濃度を測定することができる。そして、この操作を筒61,62についても繰り返すことにより、1つの測定管64によって3つの分割領域の濃度測定を行う。
【0096】
また、本実施形態では、それぞれの測定管64にそれぞれレーザ光源および光検出部を設けた構成としてもよく、或いは、
図1に示したように、送光側光セレクタ18および受光側光セレクタ37を設け、送光側光セレクタ18を介して1つのレーザ光源と各測定管64の送光部とを接続し、受光側光セレクタ37を介して1つの光検出部と各測定管64の受光部とを接続することとしてもよい。これにより、装置構成を簡素化することが可能となる。
【0097】
[適用例]
次に、上述した第1実施形態に係る濃度分布測定装置1を脱硝装置に適用する場合の一実施形態について説明する。
図16は、本実施形態に係る脱硝装置の概略構成を示した図である。
図16において、脱硝装置70は、たとえば石炭を燃料とするボイラ装置85に設置され、石炭を燃焼させて生成された燃焼排ガス中に含まれる窒素酸化物(NOx)を還元剤のアンモニアと反応させた後、脱硝触媒を用いて主として水と窒素とに分解して除去する装置である。この脱硝装置70は、ボイラ本体86に接続されて燃焼排ガスを煙突87に導く煙道88に設置されており、煙道88の出口には、燃焼排ガス中の排熱を回収する熱交換器の空気予熱器89が設置されている。
【0098】
脱硝装置70は、煙道89の直管部に設置されてアンモニアを注入するアンモニア注入装置71と、注入したアンモニアを燃焼排ガスと混合させる混合器(不図示)と、窒素酸化物とアンモニアとを反応させた後に水と窒素とに分解する脱硝触媒72と、アンモニア注入量等の制御を行う開度設定部73と、脱硝後のNOx濃度を監視(測定)する窒素酸化物濃度計(NOx計)74及び脱硝後のガス流路に仮想的に設けられた濃度測定領域における脱硝後のアンモニア濃度分布を測定する濃度分布測定装置1を備えている。
【0099】
アンモニア注入装置71は、たとえば
図17に示すように、アンモニア供給源に接続された流路配管のアンモニア主系統76に総流量制御弁77を備えている。このアンモニア主系統76は、総流量制御弁77の下流において、ヘッダ78から分岐させた複数本(図示の例では5本)のアンモニア供給系統80を備えている。
【0100】
アンモニア供給系統80は、各々が流量制御元弁79及び複数個(図示の例では5個)の注入ノズル75を備えており、排ガスを流す流路である煙道88の内部に注入ノズル75が格子状の配置となるように設置されている。注入ノズル75は、流路配管のアンモニア主系統76、ヘッダ78及びアンモニア供給系統80を通ってアンモニア供給源から供給されたアンモニアを煙道88の内部に液滴またはガスの状態で流出させ、燃焼排ガス中に還元剤のアンモニアを注入するものである。なお、液滴の状態で注入されたアンモニアは、高温の燃焼排ガスから吸熱して気化する。
【0101】
こうして煙道88の内部に注入されたアンモニアのガスは、混合器を通過することにより燃焼排ガスと撹拌混合される。この結果、アンモニアは窒素酸化物と反応して脱硝触媒72を通過するので、水と窒素とに分解されることで窒素酸化物が燃焼排ガス中から除去される。
【0102】
開度設定部73には、濃度分布測定装置1で測定したアンモニア濃度分布、及びNOx計74で測定した窒素酸化物濃度の測定値が入力される。このようなアンモニア濃度及び窒素酸化物濃度の入力を受けた開度設定部73は、窒素酸化物濃度に基づいて総流量制御弁77の開度の設定(開度制御)を行うとともに、複数個所のアンモニア濃度に基づいて各流量制御元弁79の開度の設定(開度制御)を行う。すなわち、開度設定部73は、窒素酸化物濃度に基づく総流量制御弁77や、濃度分布測定装置1で得られたアンモニア濃度分布に基づく流量制御元弁79の開度制御信号を出力する。
【0103】
この場合、開度設定部73による流量制御元弁79の開度制御は、予め定めたアンモニア濃度と流量制御元弁79毎の開度との相関関係を定めた制御マップに基づいて行われる。すなわち、脱硝装置70は、ボイラ装置85毎に諸条件(煙道8の流路系統や流路断面積、燃料の種類等)が異なるため、事前に相関関係のデータを実験等により入手して制作した制御マップを開度設定部73に記憶しておく。なお、この制御マップでは、煙道88内のアンモニア濃度を同一流路断面内で測定した複数位置のアンモニア濃度に対して、複数系統のアンモニア供給系統80毎に異なる流量制御元弁79の開度を個別に設定するものである。
【0104】
NOx計74は、煙道88において脱硝触媒72の下流側で脱硝後の窒素酸化物濃度を測定する。すなわち、NOx計74は、脱硝装置70による脱硝効果を監視するセンサであり、所望の脱硝が行われるように、開度設定部73からアンモニア供給量を増減するように総流量制御弁77の開度信号を出力する。
【0105】
濃度分布測定装置1は、上述したように、脱硝触媒72の下流側における煙道88の流路断面内に仮想的に設定した濃度測定領域のアンモニア濃度分布を作成し、このアンモニア濃度分布を開度設定部73に出力する。
【0106】
このような脱硝装置70によれば、濃度分布測定装置1によって、煙道88における脱硝触媒72の下流側におけるアンモニア濃度分布が検出されるとともに、NOx計74によって窒素酸化物濃度が検出され、この検出結果がそれぞれ開度設定部73に出力される。開度設定部73では、窒素酸化物濃度に基づいて総流量制御弁77の開度制御が行われ、かつ、濃度分布測定装置1によって得られたアンモニア濃度分布に基づいて流量制御元弁79の開度制御が行われる。これにより、脱硝装置70の運転を継続しながら、時定数の短いアンモニア濃度の測定値に応じ、複数のアンモニア供給系統80毎に分配されるアンモニア注入量を自動的に調整することができる。
【0107】
このとき、流量制御元弁79の開度制御は、予め定めたアンモニア濃度と流量制御元弁79毎の開度とのマップに基づいて行われるので、窒素酸化物濃度により総供給量が規定されたアンモニアは、流量制御元弁79の開度に応じてアンモニア供給系統80に対するアンモニア分配量が調整される。
アンモニア濃度の検出値が高いことは、すなわち、リークアンモニア(未反応アンモニア)が増大したことは、脱硝触媒72の触媒性能が劣化したことを意味するので、濃度分布測定装置1によって測定されたアンモニア濃度分布から、煙道88の流路断面位置に対応した脱硝触媒72の劣化状況を把握できる。
【0108】
このように、アンモニア濃度分布が脱硝触媒72の性能劣化と関連しているので、アンモニア濃度分布に基づいてアンモニア注入装置71によるアンモニア注入量の分布制御を実施すれば、リークアンモニアの分布をコントロールすることができる。また、リークアンモニアは、空気予熱器89を閉塞させる原因でもあるから、アンモニア濃度検出に基づいてアンモニア注入装置71によるアンモニア注入量の分布制御を実施すれば、空気予熱器89の閉塞防止も可能になる。
【0109】
本実施形態に係る脱硝装置によれば、脱硝装置の運転を継続しながら、時定数の短い還元剤濃度の測定値に応じて、複数の還元剤供給系統毎に分配される還元剤注入量を自動的に調整することが可能になる。これにより、還元剤注入の分配最適化による脱硝触媒の寿命延長や脱硝触媒更新の効率化を達成することができる。この結果、脱硝装置においては、脱硝触媒の更新に伴うコストの低減やアンモニア消費量の最適化を実現できる。
【0110】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
例えば、上述した実施形態では、複数の筒20、筒42、筒60,61,62が同一面内に設置される場合について説明したが、複数の筒20、筒42、筒60,61,62の配置面は、厳密に同一面である必要はなく、測定結果に影響を及ぼさない範囲で異なる面に配置されてもよい。
【0111】
また、上述した実施形態では、筒20、筒42、筒60,61,62が互いに平行な第1壁部11と第2壁部12との間に、一の壁部に対して直交方向に固定されるとしたが、本発明はこの例に限定されない。例えば、一の壁部に対して斜め方向に筒20、筒42、筒60,61,62が固定されてもよい。