(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
記録媒体にインクを吐出する複数のノズルを備える記録ヘッドと、該記録ヘッドを搭載して前記記録媒体の搬送方向に対して交差する方向に往復移動するキャリッジと、前記キャリッジの移動方向に沿って配置されたスケールと、前記スケールの目盛を検出するリニアエンコーダと、前記記録媒体に記録する画像データを記憶するバンドメモリーと、前記リニアエンコーダの出力に基づいて前記キャリッジの位置を検出し、前記キャリッジの位置と前記バンドメモリーに記憶されている前記画像データに基づいて前記記録媒体の所望の位置に前記記録ヘッドから前記インクを吐出する制御を行う制御手段と、前記ノズルのうち不吐出にするもののノズル位置情報を記憶する不良ノズルメモリーと、を備え、前記制御手段は前記不良ノズルメモリーに記憶されている前記ノズル位置情報によって指定される前記ノズルを不吐出状態にし、前記画像データを前記記録媒体に記録する記録装置において、
前記制御手段は、前記ノズルを複数のブロックに分割し、前記ブロック毎の前記ノズルの一方側から他方側まで1ノズルずつ順番に複数のドットからなる第1のラインを記録する第1テストパターンと、前記ノズルを奇数番目の奇数ノズル群と偶数番目の偶数ノズル群とに分割し、前記奇数ノズル群と前記偶数ノズル群とを片方ずつ属する全ての前記ノズルから前記インクを同時に吐出させ、複数のドットからなる第2のラインを記録する第2テストパターンと、前記ノズルを奇数番目の奇数ノズル群と偶数番目の偶数ノズル群とに分割し、前記奇数ノズル群と前記偶数ノズル群とを片方ずつ属する全ての前記ノズルから前記不良ノズルメモリーに記憶されている前記ノズル位置情報によって指定される不吐出とする前記ノズルを除いた前記ノズルから前記インクを同時に吐出させ、複数のドットからなる第3のラインを記録する第3テストパターンと、を前記画像データとして生成し、該生成された前記画像データを前記バンドメモリーに格納し、
前記バンドメモリーに記憶された前記第1テストパターン、前記第2テストパターン、前記第3テストパターンを前記記録媒体に1回の走査の内に記録することを特徴とする記録装置。
予め記憶手段に前記記録ヘッドの記録条件と該記録条件に関連付けて少なくとも前記第1のラインと前記第2のラインと前記第3のラインの何れか一つを記録するための前記ノズルから吐出する1ドット分のインク量を記憶しておき、前記記憶手段から前記記録条件に応じて前記ノズルから吐出するインク量を選択することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
前記記録条件は、前記記録ヘッドの駆動電圧、前記記録ヘッドの駆動波形、前記記録ヘッドと前記記録媒体間の距離、前記記録媒体の種類のうち少なくとも何れか一つを含むこと、を特徴とする請求項2に記載の記録装置。
前記制御手段は、前記記録媒体に形成される前記第1のラインの隣に、前記ブロックおよび前記ブロック毎の前記ノズルの先頭からの位置を示す目盛を記録するためのパターンを生成し、該パターンを前記画像データとして前記バンドメモリーに記憶し、
前記第1テストパターン、前記第2テストパターン、前記第3テストパターンを記録する走査以外の走査によって、前記記録媒体に前記目盛を記録することを特徴とする請求項3に記載の記録装置。
前記第1のテストパターンには、前記記録ヘッドの終端の前記ノズルによって記録されたことを示すエンドマークを前記終端の前記ノズルによって記録された前記第1のラインの隣に記録するパターンが含まれることを特徴とする請求項4に記載の記録装置。
前記第3のテストパターンには、前記不吐出とする前記ノズルによって前記第3のラインが記録されないことを示す不良ノズルマークを該記録されない位置の隣に記録するパターンが含まれることを特徴とする請求項5に記載の記録装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本発明の実施形態を、インクジェットプリンターを用いて説明する。
図7は、記録装置のブロック図である。また
図8は、記録装置に搭載されているキャリッジ機構の概略図である。
【0012】
インクジェットプリンターは、装置全体の動作を制御する制御手段100を有する。制御手段100は、処理動作を統括して制御するCPUを備える。また、制御手段100は、印刷動作を司る印刷制御部101を含む。また、制御手段100は、印刷する画像データの制御を司るバンドメモリー制御部102を含む。制御手段100はメモリー103に記憶されているプログラムに従って動作する。メモリー103は、印刷する画像データを記憶するバンドメモリー104、記録ヘッドの不良ノズルの位置データを記憶する不良ノズルメモリー105、制御手段100のプログラムを記憶するプログラムメモリー106、各種データの一時的な保存、制御手段100のワークメモリー、その他のデータを保存するRAM107を含む。また、メモリー103は電源がOFFになっても必要なデータが消えないように不揮発性メモリーを一部に用いて構成されている。
【0013】
操作パネル108はインクジェットプリンターの各種設定値の入力、状態の表示を行う。インターフェース109は、外部の機器との接続をおこなう。インターフェース109は、例えば外部に設置されたホストコンピュータ110と通信を行う。ホストコンピュータ110は、インクジェットプリンターの各種設定値の入力、状態の表示を行うことができ、また印刷する画像のデータをインクジェットプリンターに供給する。
【0014】
記録ヘッド駆動部114は黒色ヘッド120、シアン色ヘッド121、マゼンタ色ヘッド122、イエロー色ヘッド123を駆動し、記録ヘッドからインクの吐出を行う。キャリッジ115はこれらの記録ヘッドを搭載している。キャリッジ115はキャリッジ搬送部113によって、記録媒体118の上空を移動方向117に沿って移動する。また、キャリッジ115はリニアエンコーダ111も搭載している。リニアエンコーダ111は、キャリッジ115の移動方向117に沿って延設されているリニアスケール116の目盛を読み取りそのデータを印刷制御部101に出力する。印刷制御部101では、その目盛のデータを演算し、そこからキャリッジ115の位置を取得する。印刷制御部101は、バンドメモリー104に格納されている画像データを取得し、キャリッジ115の位置に基づいて、記録ヘッド駆動部114を制御し記録ヘッドを動作させ、記録媒体118の所望の位置にインクを吐出する。吐出したインクは記録媒体118上でドットとなって画像を形成する。記録媒体118は、紙、布、プラスチックフィルムなどである。
【0015】
記録媒体搬送部112は印刷制御部101によって制御され、印刷中は記録媒体118を搬送方向119の方向に間歇搬送する。例えば記録ヘッドを搬送方向119の方向に4等分に分割し、分割された幅毎に記録媒体118を搬送し、記録媒体118の同じ領域に4回異なるノズルによってドットを形成して画像を完成させる。いわゆるマルチパス方式の印刷も可能である。通常、記録ヘッドは搬送方向119に沿ってノズルが列をなして配置されている。このノズルのピッチは例えば180dpiである。このピッチは高画質化に伴い細かくなる傾向にある。このノズルに欠陥があると、インクが吐出されない、インクが曲がって飛翔するその他の不良の原因となる。この不良の原因となる不良ノズルの位置を特定することで、その周辺のノズルまたは、この不良ノズルによって形成するドット位置に他の正常なノズルによって代替してインクを吐出することができる。
【0016】
図1は、本発明の実施形態の印字物を説明する図である。インクジェットプリンターによって印刷されるテストパターンを示している。この印刷されたテストパターンを観察することによって、記録ヘッドの不良ノズルの有無の確認と、不良ノズルの位置の特定ができる。
ここで、まず不良ノズルとその不良ノズルによって形成されるドットについて説明する。
【0017】
図2は、ノズル不良の第一の例を説明する図である。説明を簡単にするため、記録ヘッド23はノズルの数を10個とした。記録ヘッド23は1つの不良ノズル25を含む。この不良ノズル25以外は正常ノズル24である。不良ノズル25はごみなどで詰まってしまい、インクを吐出することができない場合を示している。印刷結果26は全ノズルからインクの吐出を試みた結果である。白抜きの円28はドットが形成されていない場合を、色付の円27はドットが形成されている場合を示している。正常ノズル24は記録媒体上にドットが形成され、不良ノズル25は記録媒体上にドットが形成されない。記録媒体に画像を記録した場合に、このような不良ノズル25が存在した場合に白線が発生し、品質が悪くなる。
【0018】
図3は、ノズル不良の第二の例を説明する図である。説明を簡単にするため、記録ヘッド23はノズルの数を10個とした。記録ヘッド23は1つの不良ノズル29を含む。この不良ノズル29以外は正常ノズル24である。不良ノズル29はごみ詰まり、製造不良などが原因で、インクの飛翔曲がりが生じる場合を示している。印刷結果30は全ノズルからインクの吐出を試みた結果である。色付の円31は正常ノズル24によってドットが形成されている場合を示している。不良ノズル29によって形成された位置ずれドット32は、正常な位置に形成されたドットに重なるように形成される。または、目標にしている位置からずれてドットが形成される。記録媒体に画像を記録した場合に、このような不良ノズル29が存在した場合に白線や濃い線が発生し、品質が悪くなる。
【0019】
図4は、ノズル不良の第三の例を説明する図である。ノズルピッチが狭い場合のヘッドの例である。説明を簡単にするため、記録ヘッド23はノズルの数を20個とした。記録ヘッド23は1つの不良ノズル33を含む。この不良ノズル33以外は正常ノズル24である。不良ノズル33はごみ詰まり、製造不良などが原因で、インクの飛翔曲がりが生じる場合を示している。印刷結果34は全ノズルからインクの吐出を試みた結果である。色付の円35、36は正常ノズル24によってドットが形成されている場合を示している。不良ノズル33によって形成された位置ずれドット37は、正常な位置に形成されたドットに重なるように形成される。または、目標にしている位置からずれてドットが形成される。記録媒体に画像を記録した場合に、このような不良ノズル33が存在した場合に白線や濃い線が発生し、品質が悪くなる。ノズルのピッチが狭くなると、形成するドットを判別しやすいようにノズル1個おきにドットの形成開始位置を変えている。すなわち、奇数番目のノズルによって予め決められた個数、ここでは5個のドットを形成し、偶数番目のノズルは、奇数番目のノズルによる吐出が終了した後から予め決められた個数のドットを形成する。このようにすることで、ノズルピッチが狭くなったとしても、正常ノズルによって形成されたドット同士が重ならないようにできるので、不良ノズルの判別が容易となる。また、ここでは1個置きの場合を紹介したが、更にノズルピッチが狭い場合は3個、4個置きと増やしてもよい。
【0020】
図5は、ヘッドの設定条件に応じたドット形成の第一の例を説明する図である。一つのドットを形成するために一つのノズルから吐出するインク量を可変した場合のドット形成の例を示している。すなわちドットの大きさ違いの場合の形成されたドットの例を示している。
【0021】
説明を簡単にするため、記録ヘッド23はノズルの数を10個とした。記録ヘッド23は1つの不良ノズル38を含む。この不良ノズル38以外は正常ノズル24である。不良ノズル38はごみ詰まり、製造不良などが原因で、インクの飛翔曲がりが生じる場合を示している。
【0022】
印刷結果39は全ノズルからインクの吐出を試みた結果である。第1サイズドット40は標準サイズのドットの大きさであり、正常ノズル24によって形成されたドットである。第1サイズ不良ドット43は不良ノズル38によって形成されたドットである。これは正常な位置に形成されたドットに重なるように形成される。または、目標にしている位置からずれてドットが形成される。記録媒体に画像を記録した場合に、このような不良ノズル38が存在した場合に白線や濃い線が発生し、画像の品質が悪くなる。
【0023】
第2サイズドット41は標準サイズのドットより小さいドットである。これも正常ノズル24によって形成されたドットである。ドットを形成するインクの量を標準より少なく、例えば半分に、した場合を示している。第2サイズ不良ドット44は不良ノズル38によって形成された標準サイズのドットより小さいドットである。ドットを形成するインクの量を標準より少なくした場合を示している。これは正常な位置に形成されたドットに重なるように形成される。または、目標にしている位置からずれてドットが形成される。記録媒体に画像を記録した場合に、このような不良ノズル38が存在した場合に白線や濃い線が発生し、品質が悪くなる。
【0024】
第3サイズドット42は標準サイズのドットより大きいドットである。これも正常ノズル24によって形成されたドットである。ドットを形成するインクの量を標準より多く、例えば2倍に、した場合を示している。第3サイズ不良ドット45は不良ノズル38によって形成された標準サイズのドットより大きいドットである。ドットを形成するインクの量を標準より多くした場合を示している。これは正常な位置に形成されたドットに重なるように形成される。しかし、ドットサイズが大きいため、塗りつぶされてしまい、不良ノズルと正常ノズルによって形成されたドットの判別ができない。記録媒体に画像を記録した場合に、このような不良ノズル38によってドットサイズを大きくした場合に、白線や濃い線は発生しないかまたは薄くなる場合もあるが、飛翔曲がりが大きい場合は、濃い線などが発生する場合があり、品質が悪くなる。
【0025】
また、吐出不良の別の例として、印字途中に異なるドット径に切り替えたときに生じるものがある。このような吐出不良を生じるノズルも発見する必要がある。
図10は、ノズル不良の第四の例を説明する図である。
【0026】
記録ヘッド23には複数のノズル24が形成されている。このノズルからは、記録媒体上に異なるサイズのドットを形成するようにインク量を変えて吐出する。記録途中でドットサイズを変えた場合に、ノズルにはインクの飛翔曲、不吐出などの不良が生じるものがある。記録ヘッド23は10個のノズルがあり、1つの不良ノズル54を含む。この不良ノズル54以外は正常ノズル24である。印刷結果57は全ノズルからインクの吐出を試みた結果である。
【0027】
第1サイズドットと第2サイズドットを交互に形成した例と、第1サイズドットを複数、ここでは3ドット形成しその後に第2サイズドットを形成した例である。第1サイズドットは標準サイズのドットの大きさであり、第2サイズドットは標準より小さいサイズのドットである。交互に形成した場合に、第2サイズドットを形成直後に第1サイズドットを形成すると、飛翔曲りが発生し、第1位置不良ドット55が形成されてしまうことを示している。また、第1サイズドットを複数ドット形成後、第2サイズドットを形成すると飛翔曲りが発生し、第2位置不良ドット56が形成されてしまうことを示している。
【0028】
ノズルに何かしらの不具合があり、形成するドットサイズを切り替えたときに正常に吐出できない場合がある。このような不良ノズル56が存在した場合に白線や濃い線が発生し、形成せる画像の品質が悪くなる。
【0029】
図6は、ヘッドの設定条件に応じたドット形成の第二の例を説明する図である。記録ヘッド23と記録媒体の距離を可変した場合のドット形成の例を示している。すなわち記録ヘッド23と記録媒体の距離が近い場合はインクの飛翔曲がりの影響が小さく、遠い場合は影響が大きいことを示す例である。説明を簡単にするため、記録ヘッド23はノズルの数を10個とした。記録ヘッド23は1つの不良ノズル46を含む。この不良ノズル46以外は正常ノズル24である。不良ノズル46はごみ詰まり、製造不良などが原因で、インクの飛翔曲がりが生じる場合を示している。
【0030】
印刷結果47は全ノズルからインクの吐出を試みた結果である。第1位置ドット49は、記録ヘッド23から記録媒体までの距離が標準距離の場合に正常ノズル24によって形成されたドットである。第1位置不良ドット52は不良ノズル46によって形成されたドットである。これは正常な位置に形成されたドットに重なるように形成される。または、目標にしている位置からずれてドットが形成される。記録媒体に画像を記録した場合に、このような不良ノズル46が存在した場合に白線や濃い線が発生し、品質が悪くなる。
【0031】
第2位置ドット48は、記録ヘッド23から記録媒体までの距離が標準距離より近い場合に正常ノズル24によって形成されたドットである。第2位置不良ドット51は不良ノズル46によって形成されたドットである。これは正常な位置に形成されたドットに重なるように形成される。または、目標にしている位置からずれてドットが形成される。これは第1位置不良ドット52より隣接するドットとの重なりが少なくなる。すなわち、飛翔曲がりの影響が少なくなる。極端な場合は、正常ノズル24によって形成されたドットと見比べても分からなくなる。記録媒体に画像を記録した場合に、このような不良ノズル46が存在した場合に白線や濃い線が発生し、品質が悪くなる可能性がある。
【0032】
第3位置ドット50は、記録ヘッド23から記録媒体までの距離が標準距離より遠い場合に正常ノズル24によって形成されたドットである。第3位置不良ドット53は不良ノズル46によって形成されたドットである。目標にしている位置からずれてドットが形成される。また、この例では正常な位置に形成されたドットにほぼ全体が重なるように形成される。これは、インク吐出がされない場合と見誤る可能性がある。記録媒体に画像を記録した場合に、このような不良ノズル46が存在した場合に白線や濃い線が発生し、品質が悪くなる。
【0033】
上述のことからも、ドットを形成させるためのインク量、記録媒体から記録ヘッドまでの距離を適正なものとする必要がある。また、記録媒体の種類によっては、インクが記録媒体に着弾した後の広がり方が異なり、すなわち、同量のインクを吐出しても、大きなドットとなる記録媒体もあれば、小さなドットとなる記録媒体もある。不良ノズルを特定するためのテストパターンを印刷する場合は、記録媒体の種類によっても、記録媒体から記録ヘッドまでの距離、ドットを形成するためのインク量を適正なものとしなければならない。また同様に周囲の環境温度によってもドットサイズが可変することがあるので、これも適正なものとする必要がある。例えば、これら適正な条件を予めメモリー103に記憶しておき、使用する記録媒体、温度などを自動取得あるは操作パネル108から入力するし、適正な条件を制御手段100が取得し、それに応じてドットサイズ等を可変してテストパターンを印刷する。このようにすることで、視認性に優れ、誤認を防止できるテストパターンを印字することができる。または、様々な条件の組みあわせにおけるテストパターンを印刷することである。例えば、記録ヘッドと記録媒体の距離を変えた場合のテストパターンの印刷を行い、さらに、ドットサイズを変えた場合のテストパターンの印刷を行う。複数のテストパターンを印刷することで不良ノズルの特定を正確なものとすることができる。
【0034】
図9は、記録装置の動作を説明するフローチャートである。テストパターンを印刷する動作を示している。
テストパターンの内のノズルの状態を示すライン群を印刷する前に、目盛を印刷する。目盛はテストパターンを印刷する前の走査で印刷することができる。また目盛は以下に述べるステップS5とステップS6の間に印刷しても良いし、ライン群の印刷後に印刷しても良い。
【0035】
ステップS1は、テストパターンのうちノズルの状態を示すライン群を印刷する動作がスタートすると、記録媒体の種類を入力し、メモリー103の特定のエリアに格納する。こうすることで制御手段100に記録媒体の種類を取得させることが可能となる。記録媒体の入力の方法は、センサによって搬送された記録媒体を検出し、その値によって記録媒体を特定し、そのデータを格納させる方法でもよい。または、操作パネル108から、ユーザーによって種類を入力することができる。
【0036】
ステップS2は、記録媒体から記録ヘッドまでの距離を入力し、メモリー103の特定のエリアに格納する。こうすることで制御手段100に記録媒体から記録ヘッドまでの距離を取得させることが可能となる。記録媒体の種類の入力の方法は、センサによって距離を検出し、その値をメモリー103に格納する方法であってもよい。または、操作パネル108から、ユーザーによって距離を入力することができる。
【0037】
ステップS3は、記録媒体上に形成するドットのサイズを入力し、メモリー103の特定のエリアに格納する。こうすることで、制御手段100にドットの大きさを取得させることが可能となる。ドットの大きさは、例えば標準サイズ、標準サイズより小さなサイズ、標準サイズより大きなサイズを、吐出するインク量を可変することで実現できる。記録媒体の種類、記録媒体から記録ヘッドまでの距離に応じて予めドットのサイズを夫々の条件に対応させて記憶させておいても良い。また、操作パネル108から、ユーザーによって入力しても良い。
【0038】
ステップS4は、不良ノズルの位置を入力し、メモリー103の特定のエリアに格納する。こうすることで、制御手段100に不良ノズルの位置を取得させることができる。不良ノズルの位置の入力の方法は、センサによって不良ノズルを登録してもよいし、テストパターンによって判読した位置を操作パネル108から、ユーザーによって入力してもよい。
【0039】
ステップS5は、記録媒体上のどの位置に印字するか印字位置の入力をし、メモリー103の特定のエリアに格納する。こうすることで、制御手段100に印字位置を取得させることができる。印字位置は、予め記憶してある位置であってもよいし、操作パネル108から、ユーザーによって入力してもよい。印字位置は、記憶媒体のどの位置に印字するかを定める。例えば、記録媒体のサイズによっても位置が異なり、記録媒体のサイズに応じて予め印字する位置を格納させこともできる。
【0040】
ステップS6は、テストパターンデータを作成する。テストパターンデータは各ノズルの状態を示すライン群の印刷データである。記録媒体の種類、記録媒体から記録ヘッドまでの距離、形成するドットサイズ、記録位置その他の記録条件に基づいて適正なテストパターンデータを作成する。入力されない条件が有る場合には、予めメモリーに格納されている適性条件から検索して適正な条件を定めても良い。
【0041】
ステップS7は、印字のために生成されたテストパターンを画像データとしてメモリーに格納する。すなわち、テストパターンデータをバンドメモリーに格納する。
ステップS8は、バンドメモリーに格納されているテストパターンデータを印刷する。1回の走査でノズルの状態を示すライン群が印刷される。
仮に目盛が印刷されていない場合は、その後、テストパターンの目盛の画像データをバンドメモリーに格納し、対応するライン群の隣に記録する。
【0042】
このように、ドットサイズ、記録媒体から記録ヘッドまでの距離などの記録ヘッドの駆動条件を入力し、それに応じてテストパターンが印刷される。この記録ヘッドの駆動条件はこの他にも、温度、ヘッドの駆動電圧、駆動波形などもある。これらの条件も予めメモリー103に記憶させて、必要に応じて使用することもできる。
【0043】
また、ステップS7とステップS8の間に予備吐出ステップを設けることができる。この予備吐出ステップでは、所定のドットサイズの印字をするための吐出を、画像を印字するための印字領域以外の場所にする。例えば、所定のサイズのドットを所定のドット数だけ印字する。例を挙げると、吐出可能な最大サイズのドットを形成するための吐出を、予め決められたドット数、例えば200ドット、の吐出をする。この最大サイズ印字直後に最小サイズの印字を行うと吐出不良になりやすいからである。予備吐出ステップ直後に最少サイズの印字を含むテストパターンが印字されることで、印字されたテストパターンの最初の部分によってドットサイズの可変に基づく吐出不良検出が可能となる。
【0044】
予備吐出ステップでは、走査毎に予備吐出のドットサイズを変えることで、各ドットサイズ直後のその予備吐出とは異なるドットサイズの印字がされたときの不良検出が可能となる。例えば、印字領域以外は、記録媒体上の端の部分に予備吐出をする特別の場所を設けることができる。例えば、印字領域以外は、記録ヘッドのメンテナンス用のキャップ内とすることもできる。
【0045】
図1は、本発明の実施形態の印字物を説明する図である。インクジェットプリンターによって印刷されるテストパターンを示している。この印刷されたテストパターン22を観察することによって、記録ヘッドの不良ノズルの有無と、不良ノズルの位置、不良ノズルを使用しない場合の状態を確認できる。テストパターン22は、254個のノズルを備える記録ヘッドを例として説明する。テストパターン22は3つのパターンから構成されている。また、各ノズルの状態を示すライン群と目盛から構成される。
【0046】
第1テストパターン1は、インクが吐出されないドットの有無を容易に判断するためのテストパターンである。少なくとも全ノズルからインクを吐出する動作を行い、ラインを描く。第2テストパターン2は、インクの飛翔曲がりによるドットの有無を容易に判断するためのテストパターンである。少なくとも全ノズルからインクを吐出する動作を行い、ラインを描く。第3テストパターン3は、不良ノズルを強制的に吐出しない状態にしたときの状態を容易に確認するためのテストパターンである。少なくとも不良ノズルメモリー105に登録されている不吐出とするノズルを除く全ノズルからインクを吐出する動作を行い、ラインを描く。3種類のテストパターンは夫々、記録媒体の幅方向の第1エリア4、第2エリア5、第3エリア6に割り振られて印字される。夫々のエリアに異なるパターンのテスト印刷がされる。色マーク7は「K」を表示し、これは黒色のインクを吐出することを示している。色マーク7は、色毎に異なるマークあるいは語を用いる。各テストパターンはライン群のみの構成でもよい。不良ノズルが何番目であるか判別するのに多少の苦労がかかるが、ラインが描かれていれば分かるからである。不良ノズルが何番目であるか判別しやすいように配置されたラインを描いている。また、各テストパターンには目盛が付される。
【0047】
図1の例では、158番目のノズルに飛翔曲がりの不良が有る場合を示している。この様な場合には、第1テストパターン1での158番目のノズルによる作画はライン18によって示される。作画されたラインは、飛翔曲がりが発生しているか判別が困難である。例えば、インクが吐出されない不良の場合にはこのラインが作画されないので分かりやすい。
【0048】
第1テストパターン1は、ノズルからインクが吐出しない場合の不良を容易に判断できるように構成されている。ノズルを所定数、ここでは10個ずつのブロックに分け、各ブロックの先頭のノズルから順に所定数のドットでライン8を形成させる。最後のブロックは10個未満の場合がある。254個のノズルは、25ブロックに分けられ、最後のブロックのノズルは4個である。どのライン8が何番目のノズルを示しているかは、目盛13によって容易に判断できるようにしてある。また、10個に分けられた夫々のライン8の上側には目盛14が1から10まで印刷されている。25組に分けられている縦方向のライン8は5ブロックおきに先頭のライン8を長くし、夫々のラインに対して1、51、101、・・・と印刷し、対応するノズルの各ブロックの先頭が何番目であるかを示している。最後のノズル、すなわち記録ヘッドの終端のノズルであり、先頭から254番目のノズルによって形成するラインの隣には、エンドマーク17を印刷する。最後のノズルがインクを吐出してラインを形成したか否かはこのマークによって判断できる。
【0049】
第2テストパターン2は、ノズルからインクが飛翔曲がりするか否かを容易に判断できる。254個のノズルを奇数番目のノズル列のライン9と偶数番目のノズル列のライン10に分けて印刷する。ライン同士が近く密集して印刷がされるので、飛翔曲がりがあると、ライン同士が重なり、濃いラインが形成されるので判別することができる。飛翔曲がりライン19は158番目のノズルによって隣のラインと重なり濃いラインとなったものである。目盛15は所定個数、ここでは10個毎にラインを延長してさらに、20個毎に対応するノズルが何番目であるか数字を印刷したものである。
【0050】
第3テストパターン3は、登録された不良ノズルに対して強制的に印刷させない場合のテストパターンである。白筋20は、158番目のノズルが飛翔曲がりの不良を持っているので、印刷をさせていない。すなわち不良ノズルメモリー105に登録し、不吐出とする制御を行っている。第2テストパターン2と第3テストパターン3によって、不良ノズルを印刷する場合としない場合とを比較することができる。254個のノズルを奇数番目のノズル列のライン11と偶数番目のノズル列のライン12に分けて印刷する。ライン同士が近く密集して印刷がされるが、不良ノズルを印刷しない場所は白筋となる。目盛16は所定個数、ここでは10個毎にラインを延長してさらに、20個毎に対応するノズルが何番目であるか数字を印刷したものである。不良ノズルマーク21は、吐出させない不良ノズルを示すマークである。
【0051】
テストパターン22は、各ノズルの状態を表示するためのライン群と目盛によって構成される。このライン群は1度の走査によって印刷する。テストパターン22を印刷するにあたり、少なくとも目盛部分を印刷する走査とライン群を印刷する走査の2回の走査が必要となる。また、一部の目盛を省略することで1回の走査でテストパターン22を印刷することも可能である。
【0052】
等間隔に形成された縞状パターンの中に抜け(ノズル詰まりによるインクの不吐出)や間隔の偏り(インクの飛翔曲がり)が存在した場合、それは人間の目で容易に検出可能なことを利用している。
【0053】
その際、ノズルの間隔に比べて記録媒体上でのドット径が大きくなる記録ヘッドでは、適度に使用するノズルを間引いて、例えば1、2、3ノズルおきに、パターンを形成することで検出を容易にする。間引いたノズルの分は、主走査方向に噴射位置を変えてパターン形成させる。また何番目のノズルに不良があるのかを人間の目で数えやすいよう、定規の目盛線のように一定のノズルおきに線の長さを変え、何番目のノズルかを示す番号を印刷する。飛翔曲がりが起きた不良ノズルを、目視により容易に特定することができる。また飛翔曲がりが起きた不良ノズルは、別の健全なノズルで代替してやることで、画質の劣化を防ぐことができる。また、そうすることで、若干の不良がある記録ヘッドでも、良好な画質を得ることが出来るようになるため、記録ヘッドの使用寿命を延ばすことが可能となる。
【0054】
飛翔曲がりが起きるようなノズルはインクの噴射に問題があるため、印刷の途上で当該ノズルだけでなく、周辺の健全なノズルに悪影響を与える可能性が高い。そのような不良ノズルを特定しやすくなるため、印刷安定性を向上させることができる。
また、このテストパターンを使えば、問題の起きているノズルの数や場所を一目で把握することができる。
【0055】
ノズルを代替して印刷する際、不良の発生したノズルを間違えずに指定する必要がある。不良ノズルとその不良ノズルからインクを吐出させない場合のパターンを2つ横に並べ、すなわち片方は全ノズルで形成したパターン、もう片方は指定された不良ノズルを使わずに形成したパターン、とすることで間違いなく指定できたかを確認しやすくできる。
【0056】
さらに、後者のパターンでは、指定した不良ノズルの位置を特定しやすいマークを挿入することで、インクが吐出されない不良ノズルによるのか、それとも不良ノズルの指定がされているためにインクが噴射されていないのかを容易に判別できるようにできる。
【0057】
不良ノズルは常に不良なわけではないので、記録ヘッドの駆動条件、例えば駆動電圧、駆動波形、を適切な値からわざとズラして駆動しつつパターン形成させることで、条件別の不良ノズルを特定できる。こうすると、クリーニングなどによって一時的に健全になったように見えるノズル、例えば印刷している途中から不良になるノズル、を検出しやすくなり、印刷途中での画質劣化を予防することができる。
【0058】
また、ドットサイズを可変した場合のテストパターンを用いることで、ドットサイズを可変した時の吐出不良も検出できる。その場合、検出したいドットサイズの可変パターンを第1テストパターン1、第2テストパターン2の夫々に含ませて印字する。第3テストパターン3には、不良ノズルを強制的に吐出させない処理をする。例えば、テストパターンのドット位置に異なるサイズのドットを交互に印字させる。また連続するドットを含む複数の領域に分け、各領域異なるサイズのドットを形成するようにする。このよに、所望のドットサイズの可変パターンを夫々のテストパターンに含ませて印字する。
【0059】
例えば、第1テストパターン1で、交互にドットサイズを可変して吐出させた場合に、不良ノズルがある場合に、その不良ノズルで形成した線は他より薄く描かれることになる。また、複数ドット毎にドットサイズが異なるように線を描いた場合に、不良ノズルがあれば、その線は破線のように描かれる。このように不良ノズルによって、異常に描画されることになる。第2テストパターン2でも同様に、ドットサイズを可変したテストパターンを用いることで、不良ノズルは異常に描画するので、容易に不良ノズルを特定できる。