特許第5943712号(P5943712)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本メッシュ工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5943712-金属フィルタの製造方法 図000002
  • 特許5943712-金属フィルタの製造方法 図000003
  • 特許5943712-金属フィルタの製造方法 図000004
  • 特許5943712-金属フィルタの製造方法 図000005
  • 特許5943712-金属フィルタの製造方法 図000006
  • 特許5943712-金属フィルタの製造方法 図000007
  • 特許5943712-金属フィルタの製造方法 図000008
  • 特許5943712-金属フィルタの製造方法 図000009
  • 特許5943712-金属フィルタの製造方法 図000010
  • 特許5943712-金属フィルタの製造方法 図000011
  • 特許5943712-金属フィルタの製造方法 図000012
  • 特許5943712-金属フィルタの製造方法 図000013
  • 特許5943712-金属フィルタの製造方法 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5943712
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】金属フィルタの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22C 9/08 20060101AFI20160621BHJP
   B01D 39/12 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   B22C9/08 A
   B01D39/12
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-122836(P2012-122836)
(22)【出願日】2012年5月30日
(65)【公開番号】特開2013-248623(P2013-248623A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2015年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】591166307
【氏名又は名称】日本メッシュ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】後藤 英一
(72)【発明者】
【氏名】宮村 昇
【審査官】 酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−200733(JP,A)
【文献】 特開2010−274324(JP,A)
【文献】 特開2001−179397(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3127116(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 9/08,
B22D 18/04,43/00,
B01D 39/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
小間隔毎に並設している多数本の経網線と緯網線とを交差させて平織りしてなる金網をダイ上に載置したのち、ポンチを降下させてポンチの凸成形面とダイの凹成形面とにより金属フィルタにおける円形の底部とこの底部の外周縁から上方に向かって斜め外方に傾斜した一定高さの円形の傾斜周壁部とを成形したのち、これらのダイとポンチから外部にはみ出している金網部分をポンチとダイとの外周面に沿って移動する刃物枠により切断することにより皿形状の金属フィルタを製造し、この金属フィルタをダイから取り出したのち、周壁部の口縁における四方上端縁部において、底部の外周縁から周壁部の高さ方向に屈曲している経網線と緯網線との両端部にそれぞれ交差した長さが短い網線片をこれらの経網線と緯網線との両端部に沿って周壁部の上端縁から抜き取ることにより除去することを特徴とする金属フィルタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウムなどの溶湯を鋳型に注入して鋳物を鋳造する際に、溶湯通路に装着して溶湯中に含まれる酸化物等の不純物を除去するための金属フィルタとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳造金型によってアルミニウム製品を製造する場合、溶湯中に含まれる酸化物等の不純物が製品に混入するのを防止するために、従来から、例えば、特許文献1及び特許文献2に記載されているように、キャビティに臨ませている溶湯注入通路の注入口に金属フィルタを装着している。この金属フィルタは、小間隔毎に並設している金属線からなる複数本の経網線と緯網線とを交差させて平織りしてなる金網をプレス成形してなり、円形の底部とこの底部の外周縁から上方に向かって斜め外方に傾斜している一定高さの周壁部とを有する皿形状又はカップ形状に形成されている。
【0003】
このように、複数本の経網線と緯網線とによって平織りしてなる金網をプレス成形によって皿形状又はカップ形状に打ち抜くと、円形の底部の中心部において直交している経網線と緯網線との長さが最も長くなる一方、これらの底部の中心部を通る経網線及び緯網線をそれぞれ挟むようにして小間隔毎に順次並設している経網線と緯網線の長さが漸次短くなり、周壁部の口縁において、上記長さが最も長い経網線及び緯網線のそれぞれの両端部に交差する長さが最も短い緯網線と経網線とが「チビ」と俗称されている網線片として金属フィルタの周壁部の口縁における四方上端縁部にそれぞれ設けられることになる。
【0004】
従って、金属フィルタの底部から周壁部の高さ方向に屈曲して上記網線片に交差する網線の本数が少なくなっていると共に、網線片から突出する網線の両端部の突出長が短くなっている。
【0005】
なお、特許文献2には、上記のように構成した金属フィルタにおいて、周壁部を形成している経網線と緯網線との交差部を圧潰して交差部における経網線と緯網線との係止力を増大させている金属フィルタが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−207437号公報
【特許文献2】特開2010−274324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように構成した金属フィルタによれば、金属フィルタの底部から周壁部の高さ方向に屈曲している経網線と緯網線との両端部と、これらの両端部にそれぞれ交差する上記網線片との交点の数が少なくて、必然的に経網線と緯網線との両端部に対する網線片の係止力が弱くなっていると共に、網線片から上方に突出する経、緯網線の突出端部の長さが極めて短いため、磁石付き押し込み工具によって金属フィルタをキャビィ側に向かって開口している溶湯注入通路の注入口に装着する際に、注入口と金属フィルタの口縁との摺接摩擦力によって金属フィルタ口縁における四方上端縁部に存在する上記網線片が、これらの網線片に交差している上記経、緯網線の両端部との係止力に打ち勝ってこれらの経、緯網線の両端部に沿って金属フィルタの口縁上端に向かって移動し、金属フィルタの口縁から簡単に抜け出してしまう事態が発生する。
【0008】
その上、溶湯注入通路の注入口は開口端から下方に向かって漸次小径に形成されていてこの注入口に金属フィルタを装着する際には、上記のように押し込み工具によって金属フィルタを注入口に自動的に押し込んだのち、人手によって金属フィルタを注入口の所定位置まで押し込んで金属フィルタをさらに弾性的に縮径させることにより、注入口の内周面に対する金属フィルタの圧着力を増大させて、より確実に装着する作業も行われているため、押し込み工具による装着時に金属フィルタの口縁から網線片が抜け出さなかった場合でも、この人手による装着作業によって金属フィルタの口縁から網線片が容易に抜け出してしまうことになる。
【0009】
さらに、金属フィルタを形成している経網線及び緯網線としては、従来は、0.7mm 径のものが使用されていたが、近年、0.5mm 径の小径の線材を使用されるようになってきたため、この小径の経網線と緯網線とで平織してなる金網から上記のようにして製造された金属フィルタにおいては、四方口縁部に設けている上記網線片が口縁からより外れやすくなっている。
【0010】
金属フィルタの底部から周壁部の高さ方向に屈曲している経網線と緯網線との両端部から周壁部の口縁における四方上端縁部に存在する網線片が上記のように抜け出したり外れたりすると、網線片がキャビティ側に臨ませている金属フィルタの内底部上に落下して、溶湯を注入通路を通じてキャビティ内に注入する時に、溶湯と共に網線片がキャビティ内に入り込み、製品に混入して不良品が発生するといった問題点がある。
【0011】
上記特許文献2に記載されているように、周壁部を形成している経網線と緯網線との交差部を圧潰しておくと、交差部における経網線と緯網線との係止力が多少増大するが、金属フィルタを上記溶湯注入口に押し込むと、金属フィルタの口縁部が弾性的に縮径変形して金属フィルタの底部から周壁部の高さ方向に屈曲している経網線と緯網線との両端部が金属フィルタの周方向及び内径方向に変動し、経網線と緯網線との係止力が弱くなって上記同様に金属フィルタ口縁の四方上端縁部に存在する上記網線片が周壁部の口縁から外れてしまう虞れがあった。
【0012】
また、金属フィルタの口縁部における四方上端縁部に設けられた上記網線片に対して、これらの網線片から上方に向かって突出している上記経、緯網線の突出長が極めて短いために、網線片を支点としてのこれらの網線の突出端部の撓み抵抗が大きくなる上に、金属フィルタが縮径しようとする方向に対する抵抗力も大きいため、金属フィルタを溶湯注入通路の注入口に押し込んで装着する際に、大きな押し込み力を必要として作業能率が低下するばかりでなく、網線片から突出している網線の先端が注入口の孔壁面に強い摺接力でもって圧接して注入口の孔壁面に擦り傷を生じさせる虞れがあると共に注入口から取り外し難くなるといった問題点があった。
【0013】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、溶湯注入通路の注入口への装着が注入口の孔壁面を傷つけることなく簡単且つ確実に行えると共に注入口からの取り外しも容易に行うことができ、さらに、溶湯内には網線片が混入する虞れのない金属フィルタと、この金属フィルタの製造方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の金属フィルタは、請求項1に記載したように、小間隔毎に並設している多数本の経網線と緯網線とを交差させて平織状に織成している金網からなる金属フィルタであって、円形の底部とこの底部の外周縁から上方に向かって斜め外方に傾斜している一定高さの円形の周壁部とからなる皿形状又はカップ形状に形成されてあり、上記周壁部の円形口縁における四方上端縁部において、底部から周壁部の高さ方向に屈曲している経網線と緯網線との両端部にそれぞれ交差している長さが短い網線片が除去されていて、これらの四方網線片の下方に隣接する網線片を最上端の四方網線片とし、この最上端の四方網線片から上記周壁部の高さ方向に屈曲している経網線と緯網線との
【0015】
請求項2に係る発明は、上記金属フィルタの製造方法であって、小間隔毎に並設している多数本の経網線と緯網線とを交差させて平織りしてなる金網をダイ上に載置したのち、ポンチを降下させてポンチの凸成形面とダイの凹成形面とにより金属フィルタにおける円形の底部とこの底部の外周縁から上方に向かって斜め外方に傾斜した一定高さの円形の傾斜周壁部とを成形したのち、これらのダイとポンチから外部にはみ出している金網部分をボンチとダイとの外周面に沿って移動する刃物枠により切断することにより皿形状の金属フィルタを製造し、この金属フィルタをダイから取り出したのち、周壁部の口縁における四方上端縁部において、底部の外周縁から周壁部の高さ方向に屈曲している経網線と緯網線との両端部にそれぞれ交差している長さが短い網線片をこれらの経網線と緯網線との両端部に沿って周壁部の上端縁から抜き取ることにより除去することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明によれば、小間隔毎に並設している多数本の経網線と緯網線とを交差させて平織状に織成している金網からなる金属フィルタであって、円形の底部とこの底部の外周縁から上方に向かって斜め外方に傾斜している一定高さの円形の周壁部とからなる皿形状又はカップ形状に形成されてあり、底部から周壁部の高さ方向に屈曲している経網線と緯網線との両端部にそれぞれ交差して、周壁部の四方上端縁部に存在する長さの短い網線片を除去しているので、この金属フィルタを溶湯注入通路の注入口に押し込むことによって装着する際に、注入口に摺接する金属フィルタの周壁部の口縁における四方上端縁部には、上記長さが短い網線片は存在しないから、当然のことながら金属フィルタの口縁から抜け出る虞れもなく、そのため、溶湯内へのこれらの網線片の混入による不良品の発生をなくすることができると共に、上記網線片は金属フィルタにおける溶湯の濾過作用を行わない上端縁部に設けられているものであるから、この網線片はなくても、溶湯内に含まれる酸化物等の不純物の除去を確実に行うことができる。
【0017】
さらに、金属フィルタの口縁における四方上端縁部に存在する上記網線片を除去することによって、これらの四方網線片の下方に隣接する網線片を最上端の四方網線片としているので、金属フィルタの底部から周壁部の高さ方向に屈曲してこれらの四方網線片に交差する経、緯網線の本数が比較的多くなっており、従って、その交点における網線片と経、緯網線との係止力が増大しているため、注入口に金属フィルタを装着する際に上記最上端の四方網線片が注入口の孔壁面に摺接してもその摺接摩擦力に上記係止力が打ち勝って口縁から抜け出ることなく、金属フィルタを注入口の所定位置に装着することができる。
【0018】
その上、上記最上端の四方網線片に交差してこれらの四方網線片から金属フィルタの口縁端に向かって突出している経、緯網線の両端部の突出長が長いので、金属フィルタを注入口に装着する際に、四方網線片から突出している経、緯網線の両端部を、これらの四方網線片を支点として金属フィルタの内径方向にそれぞれ弾性的に容易に湾曲させることができると共に、四方網線片から突出している複数本の経、緯網線における隣接する網線間の間隔を容易に狭まらせながら金属フィルタの周壁部を注入口の径に応じて弾性的に円滑に縮径させることができ、従って、四方網線片から突出している網線の先端によって注入口の孔壁面を傷つけることなく金属フィルタを注入口に簡単且つ正確に装着することができると共に、注入口からの金属フィルタの取り外しも容易に行うことができる。
【0019】
また、上記金属フィルタの製造方法によれば、請求項2に記載したように、多数本の経網線と緯網線とを交差させて平織りしてなる金網を、ポンチとダイ及び刃物枠を有する成形装置によって打ち抜き成形して円形の底部とこの底部の外周縁から上方に向かって斜め外方に傾斜した一定高さの円形の傾斜周壁部とを有する皿形状の金属フィルタを製造したのち、この金属フィルタの周壁部の口縁における四方上端縁部において、金属フィルタの底部の外周縁から周壁部の高さ方向に屈曲している経網線と緯網線との両端部にそれぞれ交差した長さが短い網線片をこれらの経網線と緯網線との両端部に沿って周壁部の上端縁から抜き取ることにより除去するので、金属フィルタの周壁部の四方上端縁部からの上記網線片の抜取り除去が簡単に行えると共に、溶湯注入通路の注入口に装着して溶湯中に含まれる酸化物等の不純物を除去する際に、上記網線片が溶湯に混入する虞れのない金属フィルタを製造することができる。
【0020】
さらに、金属フィルタの周壁部の口縁における四方上端縁部に存在する上記網線片の除去によって、これらの網線片の下方に隣接する網線片が最上端の網線片となり、従って、金属フィルタの底部から周壁部の高さ方向に屈曲してこれらの最上端の網線片に交差する網線の本数が上記口縁から除去した網線片に交差する網線片の本数よりも増大し、且つ、この最上端の四方網線片から突出する網線の長さが上記口縁から除去した網線片から突出している時の長さよりも長くなるから、最上端の網線片を支点とするこの網線片から突出した網線の弾性的撓み性が良好となり、且つ、金属フィルタの周壁部の口縁を弾性的に容易に縮径させることができて溶湯注入口に対する装着作業が円滑且つ正確に行え、注入口の孔壁面を傷つける虞れのない金属フィルタを提供することができる。
【0021】
なお、本発明においては、金属フィルタの周壁部の口縁における四方上端縁部から除去される網線片としては、周壁部の最上端に存在する長さが最も短い網線片に限らず、この網線片の下方に隣接する網線片も除去してもよく、要するに、溶湯注入口に金属フィルタを装着する際に抜け出る虞れのあり、且つ、濾過作用を行わないる網線片を除去すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明金属フィルタの斜視図。
図2】金属フィルタの側面図。
図3】その平面図。
図4】溶湯注入口に金属フィルタを装着する直前の状態を示す断面図。
図5】装着中の状態を示す断面図。
図6】装着後の断面図。
図7】金網の一部の平面図。
図8】プレス成形前の簡略断面図。
図9】プレス成形を行っている状態の簡略断面図。
図10】成形が完了した状態の簡略断面図。
図11】型開きした状態の簡略断面図。
図12】成形された金属フィルタの側面図。
図13】この金属フィルタの四方上端縁に存在する網線片を除去した金属フィルタの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の具体的な実施例を図面について説明すると、金属フィルタAは、径が0.5mm 〜0.7mm 程度の亜鉛引きの鉄線又は鋼線等からなる金属線を多数本、経網線1と緯網線2としてこれらの経網線1と緯網線2とを小間隔毎に直交状に交差させながら平織状に織成してなる金網A'(図7に示す)をプレス成形してなり、平面円形の底部A1と、この底部A1の外周縁から上方に向かって斜め外方に傾斜した一定高さの周壁部A2とからなる皿形状又はカップ形状に形成されていて、周壁部A2の円形口縁は上方に向かって全面的に開口している。
【0024】
この金属フィルタAを形成している複数本の経網線1と緯網線2とにおいて、底部A1の中心部で互いに直交して底部A1から周壁部A2の高さ方向に屈曲している経網線1aと緯網線2aとの長さが最も長く、これらの経網線1aと緯網線2aとをそれぞれ挟むようにして小間隔毎に順次並設している経網線1b、1c・・・と緯網線2b、2c・・・の長さが漸次短くなり、底部A1に設けられることなく周壁部A2を形成している経網線と緯網線との長さがさらに短くなっていると共に、周壁部A2の上端部の口縁A2' において、底部A1から周壁部A2の高さ方向に屈曲している上記長さの長い経網線1a、1b、1c・・の両端部と、これらの経網線1a、1b、1c・・に直交して底部A1から周壁部A2の高さ方向に屈曲している上記長さの長い緯網線2a、2b、2c・・の両端部とにそれぞれ交差してその長さ方向を周壁部A2の周方向に向けている緯網線と経網線とが長さが最も短い網線片1n、2nとして存在している。
【0025】
上記金属フィルタAは、金網A'をプレス成形してダイから取り出した時には、その底部A1から周壁部A2の高さ方向に屈曲している複数本の経網線1(1a、1b、1c・・)と緯網線2(2a、2b、2c・・)との両端部の最先端に、上記網線片1n、2nの上方に隣接してこれらの網線片1n、2nよりも長さが短い経網線と緯網線とが「チビ」と俗称されている網線片1o、2oとして図12図13に示すように存在しているが、本発明の上記金属フィルタAにおいては、製造された直後において周壁部A2の口縁A2' の四方上端縁部に存在するこの長さが最も短い網線片1o、2oを除去して、これらの網線片1o、2oの下方に隣接している上記網線片1n、2nを最上端の四方網線片としている。
【0026】
従って、金属フィルタAの底部A1から周壁部A2の高さ方向に屈曲している上記経網線1(1a、1b、1c・・)と緯網線2(2a、2b、2c・・)との両端部に交差する上記網線片1n、2nの交点の数が、経網線1(1a、1b、1c・・)と緯網線2(2a、2b、2c・・)との両端部の最先端に交差していた上記網線片1o、2oの交点の数よりも多くなっていると共に、これらの網線片1n、2nから上方に突出する経網線1(1a、1b、1c・・)と緯網線2(2a、2b、2c・・)との両端部の突出長が、上記網線片1o、2oから突出する経網線1(1a、1b、1c・・)と緯網線2(2a、2b、2c・・)との両端部の突出長よりも長くなっている。なお、金属フィルタAの底部A1の中央部分は上方に向かって断面凸円弧状に湾曲した膨出部A1' に形成されている。
【0027】
このように構成した金属フィルタAを上端開口部が鋳型のキャビティ(図示せず)に連通している溶湯の注入口Bに装着するには、例えば、図4に示すように、先端中央部に磁石片Dを取付けている直径が金属フィルタAの底部A1の径に略等しい円柱形状の押し込み工具Cを使用して行われる。まず、この押し込み工具Cの下端面を金属フィルタAの底部A1の内底面外周部に当接させて磁石片Dにより金属フィルタAを吸着し、この状態にして金属フィルタAを図5に示すように溶湯注入通路B'の上端に連通している注入口Bに押し込む。
【0028】
注入口Bは下端から上端開口部に向かって徐々に拡径してあり、金属フィルタAの装着位置の径は、上端に向かうに従って拡径した金属フィルタAの周壁部A2の高さ方向における中央部の径に等しく、例えば、4cm程度に形成されている。従って、金属フィルタAを注入口Bの開口端に対向させた状態から押し込み工具Cによって図5に示すように注入口Bに押し込むと、金属フィルタAの周壁部A2の上半部が弾性的に縮径してその外周面を注入口Bの孔壁面に圧接させながら押し込まれる。
【0029】
この際、注入口Bの孔壁面に摺接する金属フィルタAの周壁部の口縁における四方上端縁部には、製造された直後において周壁部A2の口縁A2' の四方上端縁部に存在していた長さが最も短く、且つ、金属フィルタAの底部A1から周壁部A2の高さ方向に屈曲している上記経網線1(1a、1b、1c・・)と緯網線2(2a、2b、2c・・)との両端部に交差する交点の数が最少の上記網線片1o、2oは存在しなくて、これらの網線片1o、2oの下方に隣接して長さが該網線片1o、2oよりも長く、且つ、金属フィルタAの底部A1から周壁部A2の高さ方向に屈曲している上記経網線1(1a、1b、1c・・)と緯網線2(2a、2b、2c・・)との両端部に交差する交点の数も多い網線片1n、2nが存在しているので、その交点の多さと共にこれらの網線片1n、2nから上方に向かって突出する上記経網線1(1a、1b、1c・・)と緯網線2(2a、2b、2c・・)との両端部の比較的長い突出長さによって、金属フィルタAの周壁部A2の口縁A2' からのこれらの網線片1n、2nの引き抜き抵抗が大きくなっており、注入口B内に金属フィルタAを押し込む際に発生する金属フィルタAの周壁部A2と注入口Bの孔壁面との摺接摩擦力にその引き抜き抵抗が打ち勝って、網線片1n、2nが金属フィルタA周壁部A2の口縁A2' から外れることなく金属フィルタAを注入口Bの所定位置まで押し込むことができる。
【0030】
その上、上記網線片1n、2nから上方に突出している上記経網線1(1a、1b、1c・・)と緯網線2(2a、2b、2c・・)との両端部の比較的長い突出長によって、金属フィルタを注入口に装着する際には、これらの突出部分が注入口Bの孔壁面に沿うように容易に弾性的に撓むことができて、注入口Bの孔壁面を傷つけることなく金属フィルタAを注入口Bの所定位置まで簡単且つ正確に装着することができる。
【0031】
なお、以上の実施例においては、金属フィルタAの周壁部A2の口縁A2' における四方上端縁部に存在していた長さが最も短い網線片1o、2oのみを除去しているが、この網線片1o、2oの下方に隣接する上記網線片1n、2nも、これらの網線片1n、2nと交差する経、緯網線1、2との交点が少なくて抜けやすくなっている場合には除去して、これらの網線片1n、2nの下方に隣接する網線片を最上端の四方網線片としておいてもよい。
【0032】
次に、上記金属フィルタAの製造方法について説明する。金属フィルタAのプレス成形装置は、図8に示すように、可動下型としてのダイ11と、可動上型としてのポンチ12と、ダイ11の周囲に配設している固定刃物枠13とを備えてあり、ポンチ12の下面に対向したダイ11の上面には、金属フィルタAの外面の形状に対応するように彫刻された皿形状又はカップ形状の凹成形面11a が形成されている一方、ポンチ12の下面には、金属フィルタAの内面の形状に対応するように彫刻された凸成形面12a が形成されており、これらの凹凸成形面11a 、12a によって金属フィルタAをプレス成形するように構成している。
【0033】
このように構成したプレス成形装置を使用して上記金属フィルタAを製造するには、まず、図8に示すように、成形前には同一高さ位置に配設しているダイ11と固定刃物枠13との上面にわたって、亜鉛引きの鉄線又は鋼線等からなる金属線を多数本、経網線1と緯網線2としてこれらの経網線1と緯網線2とを小間隔毎に直交状に交差させながら平織状に織成してなる金網A'(図7に示す)を載置したのち、図9に示すように、ポンチ12を降下させてこのポンチ12の凸成形面12a とダイ11の凹成形面11a とにより金網A'をプレスして金属フィルタAを成形する。
【0034】
次いで、この状態から図10に示すように、さらにポンチ12を降下させてそれまで固定刃物枠13と同一高さ位置に保持していたダイ11を押し下げてポンチ12と一体的に降下させることにより、固定刃物枠13の内周面における上端角部に設けている刃部13a によって凸成形面12a と凹成形面11a との成形面から外部にはみだしている金網部分を切断する。しかるのち、ダイ11とポンチ12とを一体的に上昇させることによりダイ11を固定刃物枠13の位置まで復帰させ、さらに、図11に示すようにポンチ12のみを上昇させることにより、型開きして成形された金属フィルタAを取り出す。
【0035】
こうして、製造された金属フィルタAには、図12図13に示すように、その円形の底部A1から周壁部A2の高さ方向に屈曲している複数本の経網線1(1a、1b、1c・・)と緯網線2(2a、2b、2c・・)との両端部の先端部分に交差した長さが最も短い経網線と緯網線とが上述したように「チビ」と俗称されている網線片1o、2oとして周壁部A2の口縁A2' における四方上端縁部に存在している。
【0036】
これらの網線片1o、2oは、溶湯の濾過作用を行わないばかりでなく、注入口Bに対する装着時には、この網線片1o、2oの存在によって金属フィルタAの周壁部A2の内方への撓み抵抗や金属フィルタAの縮径抵抗が大きくなって円滑な装着の妨げとなり、その上、注入口Bの孔壁面との摺接摩擦力によって金属フィルタAの口縁A2' から外れて溶湯に混入する等の虞れがあるので、製造後にこれらの網線片1o、2oを除去してこれらの網線片1o、2oの下方に隣接する上記網線片1n、2nを金属フィルタAの口縁A2' における四方の最上端の縁部に設けた構造にして、上記網線片1o、2oの存在による問題点を解消している。
【0037】
金属フィルタAの口縁A2' から上記網線片1o、2oを除去するには、人手により網線片1o、2oを摘んで周壁部A2の高さ方向に屈曲してこれらの網線片1o、2oに交差している経、緯網線1、2の長さ方向に引き寄せるか、或いは、この網線片1o、2oと該網線片1o、2oの下方に隣接する上記網線片1n、2nとの間の網目に小径棒状物を挿入して該網線片1o、2oをこれらの網線片1o、2oに交差している経、緯網線1、2の長さ方向に沿って上方に移動させることにより口縁A2' の上端から抜き取ればよい。
【0038】
なお、金属フィルタAの周壁部A2の口縁A2' における四方上端縁部に存在していた長さが最も短い上記網線片1o、2oのみを除去しているが、この網線片1o、2oの下方に隣接する上記網線片1n、2nも、これらの網線片1n、2nと交差する経、緯網線1、2との交点が少なくて抜けやすくなっている場合には除去しておき、これらの網線片1n、2nの下方に隣接する網線片を最上端の四方網線片としておいてもよい。
【符号の説明】
【0039】
A 金属フィルタ
A' 金網
A1 底部
A2 周壁部
1 経網線
2 緯網線
1o、2o 長さが最も短い網線片
1n、2n 網線片
B 注入口
C 押し込み工具
11 ダイ
12 ポンチ
13 固定刃物枠
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13