特許第5943746号(P5943746)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5943746
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】脱穀装置
(51)【国際特許分類】
   A01F 12/32 20060101AFI20160621BHJP
【FI】
   A01F12/32 A
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-154772(P2012-154772)
(22)【出願日】2012年7月10日
(65)【公開番号】特開2014-14332(P2014-14332A)
(43)【公開日】2014年1月30日
【審査請求日】2014年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100137590
【弁理士】
【氏名又は名称】音野 太陽
(72)【発明者】
【氏名】三井 孝文
【審査官】 柴田 和雄
(56)【参考文献】
【文献】 英国特許出願公開第02487193(GB,A)
【文献】 特開2009−201431(JP,A)
【文献】 特開2008−043264(JP,A)
【文献】 特開昭63−207321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01F 12/32
A01F 12/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱胴と、
前記扱胴による脱穀処理物を漏下させる受網と、
前記受網から漏下した脱穀処理物を選別する選別部と、
前記受網の搬送終端側から漏下した脱穀処理物を前記選別部の搬送始端側に案内する案内体と、を備え、
前記選別部は、揺動可能に構成されたシーブケースと、前記受網の搬送始端側の下方において前記シーブケースの前側上部に設けられたグレンパンと、前記グレンパンの後側に位置する状態で前記シーブケースに設けられた篩い線と、を備え、
前記案内体は、前記受網の下方における前記篩い線の上方位置から前記受網の搬送終端側の下方位置に亘って設けられ、
前記受網の搬送始端側から漏下した脱穀処理物は前記グレンパンまたは前記篩い線に直接漏下し、前記受網の搬送終端側から漏下した脱穀処理物は前記案内体によって前記篩い線の上方に流下案内される脱穀装置。
【請求項2】
前記シーブケースの上端縁が水平状に形成され、
前記案内体は、側面視において搬送終端側上がりに傾斜している請求項1に記載の脱穀装置。
【請求項3】
前記案内体の後端が前記シーブケースの後端よりも前方に位置している請求項2に記載の脱穀装置。
【請求項4】
前記扱胴及び前記受網は、側面視において前記案内体の傾斜角と同一の傾斜角度で搬送終端側上がりに傾斜している請求項2又は3に記載の脱穀装置。
【請求項5】
前記案内体は、前記シーブケースに固定されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の脱穀装置。
【請求項6】
側面視において、前記案内体は、脱穀処理物に対して前方向への搬送作用を付与する波形状に形成されている請求項5に記載の脱穀装置。
【請求項7】
前記扱胴の搬送終端部には、脱穀処理物を切断する切断装置が設けられ、
前記選別部の搬送終端部には、前記切断装置を介さずに脱穀処理物を機外に排出する排出通路が形成されている請求項4に記載の脱穀装置。
【請求項8】
前記シーブケースは、前記切断装置の下側まで延出している請求項7に記載の脱穀装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀装置に関する。より詳細には、扱胴と、前記扱胴による脱穀処理物を漏下させる受網と、前記受網から漏下した脱穀処理物を選別する選別部と、を備える脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、上記のような脱穀装置は、公知となっている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の脱穀装置においては、受網から漏下した脱穀処理物が選別部に供給される。具体的には、受網から漏下した脱穀処理物のうち、受網の搬送始端側から漏下したものは、選別部の搬送始端側に供給される。そして、受網の搬送終端側から漏下したものは、選別部の搬送終端側に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−200671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の脱穀装置においては、受網の搬送始端側から漏下した脱穀処理物は、選別部の搬送始端側に供給される一方、受網の搬送終端側から漏下した脱穀処理物は、選別部の搬送終端側に供給される。このため、受網の搬送終端側から漏下した脱穀処理物は、受網の搬送始端側から漏下した脱穀処理物よりも、選別部における選別時間が短くなる。したがって、特に、大量の脱穀処理物が選別部に供給される場合等、受網の搬送終端側から漏下した脱穀処理物が、選別部で十分な選別処理が施されないままで、機外に排出されてしまうことがあり、穀粒の損失が増加する要因となっていた。
【0005】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、受網の搬送終端側から漏下した脱穀処理物について、選別部による選別処理を十分に施すことができる脱穀装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る脱穀装置の特徴構成は、扱胴と、前記扱胴による脱穀処理物を漏下させる受網と、前記受網から漏下した脱穀処理物を選別する選別部と、前記受網の搬送終端側から漏下した脱穀処理物を前記選別部の搬送始端側に案内する案内体と、を備え、
前記選別部は、揺動可能に構成されたシーブケースと、前記受網の搬送始端側の下方において前記シーブケースの前側上部に設けられたグレンパンと、前記グレンパンの後側に位置する状態で前記シーブケースに設けられた篩い線と、を備え、
前記案内体は、前記受網の下方における前記篩い線の上方位置から前記受網の搬送終端側の下方位置に亘って設けられ、
前記受網の搬送始端側から漏下した脱穀処理物は前記グレンパンまたは前記篩い線に直接漏下し、前記受網の搬送終端側から漏下した脱穀処理物は前記案内体によって前記篩い線の上方に流下案内される
【0007】
本特徴構成によれば、受網の搬送終端側から漏下した脱穀処理物が、案内体によって選別部の搬送始端側に案内されることにより、選別部の搬送始端側に供給される。したがって、受網の搬送終端側から漏下した脱穀処理物について、選別部による選別処理を十分に施すことができる。
【0008】
発明に係る脱穀装置の更なる特徴構成は、前記シーブケースの上端縁が水平状に形成され、前記案内体は、側面視において搬送終端側上がりに傾斜している、ことにある。
【0009】
本特徴構成によれば、受網の搬送終端側から漏下した脱穀処理物が、案内体の傾斜に沿って、搬送始端側に流れ落ちる。したがって、受網の搬送終端側から漏下した脱穀処理物を、選別部の搬送始端側に、円滑かつ確実に供給することができる。
本発明に係る脱穀装置の更なる特徴構成は、前記案内体の後端が前記シーブケースの後端よりも前方に位置している、ことにある。
【0010】
本発明に係る脱穀装置の更なる特徴構成は、前記案内体は、前記シーブケースに固定されている、ことにある。
【0011】
本特徴構成によれば、揺動可能に構成されたシーブケースに、案内体が固定されていることにより、案内体がシーブケースと共に揺動する。したがって、案内体上の脱穀処理物を揺動選別することができる。
【0012】
本発明に係る脱穀装置の更なる特徴構成は、前記扱胴及び前記受網は、側面視において前記案内体の傾斜角と同一の傾斜角度で搬送終端側上がりに傾斜している、ことにある。
【0013】
本特徴構成によれば、扱胴による脱穀処理物が、受網の傾斜に沿って、搬送始端側に流れ落ちる。したがって、扱胴による脱穀処理物を、受網の主に搬送始端側から漏下させて、選別部の搬送始端側に、重点的に供給することができる。
【0014】
本発明に係る脱穀装置の更なる特徴構成は、側面視において、前記案内体は、脱穀処理物に対して前方向への搬送作用を付与する波形状に形成されている、ことにある。
【0015】
【0016】
本発明に係る脱穀装置の更なる特徴構成は、前記扱胴の搬送終端部には、脱穀処理物を切断する切断装置が設けられ、前記選別部の搬送終端部には、前記切断装置を介さずに脱穀処理物を機外に排出する排出通路が形成されている、ことにある。
【0017】
本特徴構成によれば、選別部からの脱穀処理物が、排出通路によって切断装置を介さずに機外に排出される。したがって、選別部からの脱穀処理物が切断装置に投入されることによる馬力ロスを防止することができる。
【0018】
本発明に係る脱穀装置の更なる特徴構成は、前記シーブケースは、前記切断装置の下側まで延出している、ことにある。
【0019】
本特徴構成によれば、シーブケースが搬送方向に長くなる。したがって、選別部の選別能力、特に、大量の脱穀処理物に対する処理能力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】脱穀装置を示す側面断面図。
図2】脱穀部の後部側を示す側面断面図。
図3】脱穀部の後部を示す正面断面図。
図4】選別部の前部側を示す側面断面図。
図5】選別部の前部を示す正面断面図。
図6】選別部の前部側の左側部を示す側面断面図。
図7】選別部の前部側の右側部を示す側面断面図。
図8】動力伝達軸の動力伝達経路を示す線図。
図9】第一篩い線及び第二篩い線を示す平面図。
図10】第一篩い線及び第二篩い線を示す斜視断面図。
図11】選別部の後部側を示す側面断面図。
図12】第一ストローラック、第二ストローラック及び第三ストローラックを示す平面図。
図13】第一ストローラック、第二ストローラック及び第三ストローラックを示す斜視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について図面に基づき説明する。
【0022】
先ず、脱穀装置の全体構成について、図1により説明する。なお、以下の説明では、脱穀装置において、脱穀処理物の搬送方向を前後方向とし、搬送始端側方向を前方向とし、搬送終端側方向を後方向とする。
【0023】
図1に示すように、脱穀装置は、穀稈を脱穀して選別する。そして、脱穀装置は、脱穀部1と、選別部2と、を備えている。ちなみに、脱穀装置は、本実施形態では、普通型コンバインに備えられるものであるが、自脱型コンバインに備えられるものでもよい。
【0024】
脱穀部1は、穀稈を脱穀する。そして、脱穀部1は、穀稈脱穀用の扱胴3を備えている。この扱胴3は、前後方向の回転軸3aを介して、扱室4に回転可能に支持されている。
また、脱穀部1には、扱胴3による脱穀処理物を漏下させる受網5が備えられている。
【0025】
扱胴3及び受網5は、側面視において後端側上がりに傾斜している。この扱胴3及び受網5の傾斜は、鋭角な角度を成している。そして、扱胴3の後端部には、切断装置34が設けられている。なお、受網5の下方には、詳しくは後述する案内板35が設けられている。
【0026】
切断装置34は、脱穀処理物を切断する。つまり、切断装置34は、回転刃と固定刃とによって脱穀処理物を切断する。そして、切断装置34には、扱胴3の後端部からの排藁等の脱穀処理物が投入される。その後、切断装置34に投入された脱穀処理物は、切断装置34で切断されてから、切断装置34の排出口34aから機外に排出される。
【0027】
選別部2は、脱穀処理物(受網5から漏下した脱穀処理物)を選別する。そして、選別部2は、揺動選別装置6と、唐箕7と、一番回収部8と、二番回収部9と、を備えている。なお、唐箕7については、詳しくは後述する。
【0028】
揺動選別装置6は、脱穀処理物(受網5から漏下した脱穀処理物)を揺動選別する。そして、揺動選別装置6は、シーブケース10と、第一グレンパン11と、第一篩い線12及び第二篩い線13と、第二グレンパン14と、チャフシーブ15と、第一ストローラック16、第二ストローラック17及び第三ストローラック18と、グレンシーブ19と、を備えている。なお、第一篩い線12及び第二篩い線13、並びに第一ストローラック16、第二ストローラック17及び第三ストローラック18については、詳しくは後述する。
【0029】
シーブケース10は、揺動可能に構成されている。つまり、シーブケース10は、偏心カム式の揺動機構20で前後方向に揺動される。そして、シーブケース10には、第一グレンパン11と、第一篩い線12及び第二篩い線13と、第二グレンパン14と、チャフシーブ15と、第一ストローラック16、第二ストローラック17及び第三ストローラック18と、並びにグレンシーブ19と、が設けられている。したがって、第一グレンパン11、第一篩い線12及び第二篩い線13、第二グレンパン14、チャフシーブ15、第一ストローラック16、第二ストローラック17及び第三ストローラック18、並びにグレンシーブ19は、シーブケース10とともに前後方向に揺動する。なお、シーブケース10を切断装置34の下側(図1及び図2に示す二点鎖線位置)まで延出するように構成することもできる。これにより、穀粒の損失を低減することができる。
【0030】
第一グレンパン11は、脱穀処理物を比重差選別する。つまり、第一グレンパン11は、シーブケース10とともに前後方向に揺動することで、脱穀処理物を後方向に搬送しながら、比重の小さい藁屑等と比重の大きい穀粒等とに上下に層分けする。そして、第一グレンパン11は、側面視において略波形状に形成されている。この第一グレンパン11における波形部のうち、最も後端側に位置する波形部には、第一篩い線12が固定されている。また、第一グレンパン11は、シーブケース10の前端側(シーブケース10の前端部のみ)に設けられている。つまり、第一グレンパン11は、側面視において第二グレンパン14よりも短く形成されている。
【0031】
チャフシーブ15は、脱穀処理物を漏下選別する。つまり、チャフシーブ15は、前後方向に所定間隔をあけて整列される角度調整可能な複数のチャフリップ板15aを備えている。そして、チャフシーブ15は、シーブケース10とともに前後方向に揺動することで、チャフリップ板15aの間から穀粒等を漏下させながら、漏下しなかった藁屑等を後方向に搬送する。なお、チャフリップ板15aの角度は、図示しない角度調整部によって調整される。
【0032】
また、チャフシーブ15は、側面視において後端側上がりに傾斜している。そして、チャフシーブ15は、第二グレンパン14の後方に設けられている。つまり、チャフシーブ15は、第一篩い線12及び第二篩い線13の下方に設けられている。換言すると、チャフシーブ15は、シーブケース10において唐箕7の後方に設けられている。
【0033】
第二グレンパン14は、脱穀処理物を比重差選別する。つまり、第二グレンパン14は、シーブケース10とともに前後方向に揺動することで、脱穀処理物を後方向に搬送しながら、比重の小さい藁屑等と比重の大きい穀粒等とに上下に層分けする。また、第二グレンパン14は、側面視において略波形状に形成されている。そして、第二グレンパン14の前端側には、第二グレンパン14における他の波形部よりも深い波形部14aが形成されている。つまり、波形部14aは、第二グレンパン14の前端部(最前端部)に形成されている。
【0034】
また、第二グレンパン14は、第一グレンパン11の下方に設けられている。つまり、第二グレンパン14の上方には、第二グレンパン14とは別の第一グレンパン11が設けられている。また、第二グレンパン14とチャフシーブ15とが、略同じ高さに配置されている。そして、第二グレンパン14の後端部とチャフシーブ15の前端部(最も前端側に位置するチャフリップ板15a)とが、平面視において重複している。
【0035】
グレンシーブ19は、脱穀処理物を漏下選別する。つまり、グレンシーブ19は、単粒化穀粒を一番物として漏下させながら、漏下しなかった枝梗付き穀粒等を二番物として藁屑等とともに後方向に搬送する。また、グレンシーブ19は、唐箕7の後方であってチャフシーブ15の下方に設けられている。そして、グレンシーブ19の前端側には、上方に凸する凸部19aが設けられている。例えば、凸部19aは、上方に凸するよう(略山型)に折り曲げられた板状部材によって構成されている。
【0036】
一番回収部8は、単粒化穀粒を一番物として回収する。一番回収部8は、シーブケース10の前部下方に設けられている。
【0037】
二番回収部9は、枝梗付き穀粒等を二番物として回収する。二番回収部9は、シーブケース10の後部下方に設けられている。
【0038】
次に、案内板35について、図1から図3により説明する。
【0039】
図1から図3に示すように、案内板35は、受網5の後端側から漏下した脱穀処理物を選別部2の前端側に案内する。そして、案内板35は、側面視において略波形状に形成されている。つまり、案内板35は、脱穀処理物に対して前方向への搬送作用を付与するように形成されている。
【0040】
また、案内板35は、側面視において後端側上がりに傾斜している。この案内板35の傾斜は、鋭角な角度を成している。つまり、案内板35の傾斜角度と、扱胴3及び受網5の傾斜角度とは、同一の角度である。そして、案内板35は、受網5の後端側の下方に配置されている。この案内板35の前後端部のうち、案内板35の前端部は、受網5の前部下方に位置している。そして、案内板35の後端部は、受網5の後端部よりも後方に位置している。
【0041】
また、案内板35は、ステー36を介してシーブケース10に固定されている。これにより、案内板35は、シーブケース10とともに前後方向に揺動する。なお、案内板35をシーブケース10に固定するのに代えて、案内板35を脱穀部1側(例えば、受網5、脱穀部1の側壁等)に固定してもよい。
【0042】
以上のような構成によれば、受網5の後端側から漏下した脱穀処理物が、案内板35の傾斜に沿って、前端側に流れ落ちる。合わせて、案内板35が、側面視において略波形状に形成されていることにより、脱穀処理物に対して前方向への搬送作用が付与されるため、脱穀処理物が前方向に搬送される。したがって、受網5の後端側から漏下した脱穀処理物について、選別部2による選別処理を十分に施すことができる。
【0043】
次に、唐箕7について、図4から図8により説明する。
【0044】
図4から図7に示すように、唐箕7は、羽根部材21と、ファンケース22と、第一風路23と、第二風路24と、を備えている。
【0045】
羽根部材21は、左右方向の回転軸21aを介して、ファンケース22に回転可能に支持されている。つまり、羽根部材21は、左右方向の軸心X周りに回転可能に構成されている。なお、羽根部材21の回転方向は、側面視において反時計回り(図4に示す回転方向A)である。そして、羽根部材21は、側面視においてその回転方向上手側(回転方向Aとは反対方向側)に凹する略円弧形状に形成されている。つまり、羽根部材21は、側面視においてその回転方向上手側(回転方向Aとは反対方向側)に膨らむ略弓形状に形成されている。本実施形態では、複数枚(例えば、四枚)の羽根部材21が、側面視において左右方向の軸心X周りに等角度(例えば、90度)間隔で配置されている。また、羽根部材21は、側面視において略円形状に形成された複数(例えば、二つ)のフランジ部21bを介して回転軸21aに固定されている。
【0046】
ファンケース22は、羽根部材21を覆うように構成されている。そして、ファンケース22の左右両側部には、外気を吸入する吸入口22aが設けられている。
【0047】
吸入口22aは、その開度を調節可能に調節板25によって覆われている。そして、左側の調節板25と、右側の調節板25とは、単一のリンク棒26で連結されている。つまり、左右両側の調節板25は、リンク棒26を揺動支点にして揺動可能に構成されている。そして、左側の調節板25には、左右両側の調節板25を揺動操作するための揺動操作部27が設けられている。
【0048】
揺動操作部27は、左側の調節板25に形成されるガイド孔28と、ガイド孔28に差し込まれるガイド軸29と、ガイド軸29に螺挿されるナット30と、を備えている。こうして、左側の調節板25が、ガイド孔28を介してガイド軸29に沿って揺動すると、リンク棒26を介して右側の調節板25も揺動する。これにより、左右両側の吸入口22aの開度が変更される。つまり、リンク棒26を介して左右両側の調節板25が揺動することにより、左右両側の吸入口22aの開度が変更される。なお、ナット30を締め付けることにより、左側の調節板25を任意の揺動位置に固定することができる。
【0049】
第一風路23は、シーブケース10の下部に供給する選別風が流れる。そして、第一風路23は、唐箕7の下部で、かつ、シーブケース10の下方に配置されている。つまり、第一風路23は、ファンケース22の後端側下部と連通されている。また、チャフシーブ15の前側下方には、第一風路23の選別風を後側上方に案内する案内板33が設けられている。
【0050】
案内板33は、側面視において後端側上がりに傾斜している。そして、案内板33は、その傾斜角度α1が、複数のチャフリップ板15aのうち最も前端側に位置するチャフリップ板(以下「最前端側のチャフリップ板」という。)15aの角度調整範囲βにおける中央角度α2と略一致する。つまり、案内板33の傾斜角度α1と、最前端側のチャフリップ板15aの角度調整範囲βにおける中央角度α2とは、略同一角度である。なお、案内板33の傾斜角度α1と、最前端側のチャフリップ板15aの角度調整範囲βにおける中央角度α2とが、完全に一致する(同一角度である)ことが好ましい。
【0051】
第二風路24は、シーブケース10の上部に供給する選別風が流れる。そして、第二風路24は、唐箕7の上部で、かつ、シーブケース10の前方に配置されている。つまり、第二風路24は、ファンケース22の前端側上部と連通されている。そして、第二風路24は、前方向に延びて後方向にUターンするように形成され、かつ、シーブケース10の前端側に選別風を供給する。そして、第二風路24の上部は、後端側上がりに傾斜する上向き傾斜風路24aで形成されている。なお、シーブケース10には、第二風路24からの選別風が流れる詳しくは後述する第三風路32が形成されている。
【0052】
また、第二風路24の上方には、エンジンEからの動力が伝達される動力伝達軸31が配置されている(図8参照)。つまり、動力伝達軸31は、第二風路24の上向き傾斜風路24aの前端側上部に配置されている。なお、動力伝達軸31の動力は、扱胴3、唐箕7等に伝達される。
【0053】
第三風路32は、第一グレンパン11と第二グレンパン14との間に形成されている。
そして、第三風路32は、後端側下がりに傾斜する下向き傾斜風路32aと、後端側上がりに傾斜する上向き傾斜風路32bと、によって、側面視において略V字状に形成されている。
【0054】
そして、第三風路32(下向き傾斜風路32a)の入口部は、シーブケース10の前端側縦壁(前壁)と前端側下壁とに亘って設けられている。なお、第三風路32(下向き傾斜風路32a)の入口部は、シーブケース10の前端側縦壁(前壁)のみに設けられていてもよいし、あるいは、シーブケース10の前端側下壁のみに設けられていてもよい。
【0055】
また、第三風路32(上向き傾斜風路32b)の出口部は、第一グレンパン11の後端側下方に配置されている。そして、第三風路32(上向き傾斜風路32b)の出口部の下部には、第二グレンパン14が設けられている。特に、本実施形態では、第二グレンパン14の前端部が、第三風路32の一部(上向き傾斜風路32aの底面)を成している。
【0056】
そして、第三風路32の上向き傾斜風路32bの傾斜角度と、第一篩い線12又は/及び第二篩い線13の傾斜角度と、は略同じである。さらに、第三風路32の上向き傾斜風路32bの傾斜角度と、第二風路24の上向き傾斜風路24aの傾斜角度と、は略同じである。
【0057】
以上のような構成によれば、選別風を第一風路23及び第二風路24によってシーブケース10の下部と上部とに振り分けて供給することにより、選別風をシーブケース10の下部から上部まで行き渡らせることができる。そして、第二風路24によって選別風をシーブケース10の前端側に供給することにより、選別風をシーブケース10の前端側から後端側まで行き渡らせることができる。そして、第二風路24がUターンするように形成されている結果、第二風路24の風路長が長くなることから、選別風の流れが層流になり易い。したがって、流れが安定した選別風を供給することができる。
【0058】
次に、第一篩い線12及び第二篩い線13について、図9及び図10により説明する。
【0059】
図9及び図10に示すように、第一篩い線12及び第二篩い線13は、第一グレンパン11の後端部に前後方向に並設されている。そして、第一篩い線12及び第二篩い線13は、第二グレンパン14の上方で、かつ、チャフシーブ15の上方に配置されている。つまり、第一篩い線12及び第二篩い線13のうち、第二篩い線13は、チャフシーブ15の上方に配置され、かつ、平面視においてチャフシーブ15と重複している。また、第一篩い線12の後端部と第二篩い線13の前端部との間には、所定の隙間Oが形成されている。
【0060】
隙間Oは、平面視においてチャフシーブ15の前端側と重複している。つまり、隙間Oは、平面視において第二グレンパン14の後端部と重複している。
【0061】
なお、第一篩い線12及び第二篩い線13に代えて、例えば、ストローラック、板金打ち抜き型のチャフシーブ、網状又は板金打ち抜き型のグレンシーブ等の篩い線以外の漏下選別部を採用することもできる。ただし、漏下選別部からの漏下量を多くする観点からは、篩い線を採用することが好ましい。
【0062】
第一篩い線12は、側面視において略波形状に形成されている。例えば、第一篩い線12は、ピアノ線で構成されている。そして、第一篩い線12は、側面視において後端側上がりに傾斜している。この第一篩い線12の後端側は、第二篩い線13の前端側よりも高い位置に設けられている。また、第一篩い線12は、第一グレンパン11の後端部に設けられている。つまり、第一篩い線12は、第一グレンパン11の後端部(最も後端側に位置する波形部)に固定されている。
【0063】
第二篩い線13は、側面視において略波形状に形成されている。例えば、第二篩い線13は、ピアノ線で構成されている。そして、第二篩い線13は、側面視において後端側上がりに傾斜している。この第二篩い線13の傾斜角度は、第一篩い線12の傾斜角度よりも大きい。また、第二篩い線13は、第一篩い線12よりも高い位置に設けられている。
そして、第二篩い線13は、少なくともその一部がシーブケース10の上辺部よりも上方に突出している。また、第二篩い線13は、チャフシーブ15の前端側上方に配置され、かつ、少なくともその一部が、平面視においてチャフシーブ15の前端側と重複している。さらに、第二篩い線13は、一番回収部8の上方に配置され、かつ、少なくともその一部が、平面視において一番回収部8と重複している。
【0064】
以上のような構成によれば、第一篩い線12及び第二篩い線13が略波形状に形成されていることにより、第一篩い線12及び第二篩い線13によって脱穀処理物に送り作用を付与することができる。したがって、第一篩い線12及び第二篩い線13によって第一グレンパン11からの脱穀処理物を円滑に搬送しつつ選別することができる。
【0065】
また、第一篩い線12及び第二篩い線13がチャフシーブ15の上方まで延びていることにより、チャフシーブ15には、第一篩い線12及び第二篩い線13で粗選別された脱穀処理物が供給される。したがって、チャフシーブ15にかかる選別負荷を軽減することができる。なお、チャフシーブ15にかかる選別負荷を軽減することができれば、チャフシーブ15ひいては脱穀装置を大型化せずに、大量の作物を選別することができる。
【0066】
次に、第一ストローラック16、第二ストローラック17及び第三ストローラック18ついて、図11から図13により説明する。
【0067】
図11から図13に示すように、第一ストローラック16は、左右方向に所定間隔D1をあけて整列される複数の第一ラック板16aを備えている。また、第一ストローラック16は、チャフシーブ15の後端部に設けられている。この第一ストローラック16の後端部は、平面視において第二ストローラック17(第二ラック板固定部材17b)と重複するように配置されている。
【0068】
第二ストローラック17は、第一ストローラック16の後方に設けられている。そして、第二ストローラック17は、左右方向に所定間隔D2をあけて整列される複数の第二ラック板17aと、複数の第二ラック板17aの前端部が固定される第二ラック板固定部材17bと、隣り合う第二ラック板17a同士の間に第二篩い線17cと、を備えている。
この第二ストローラック17(第二ラック板17a)の後端部は、平面視において第三ストローラック18(第三ラック板固定部材18b)の前端部と重複するように配置されている。
【0069】
第二ラック板固定部材17bには、第二篩い線17cが固定されている。つまり、第二ラック板固定部材17bの下面に、第二ラック板17aが固定されているとともに、第二ラック板固定部材17bの上面に、第二篩い線17cが固定されている。
【0070】
第三ストローラック18は、第二ストローラック17の後方に設けられている。そして、第三ストローラック18は、左右方向に所定間隔D3をあけて整列される複数の第三ラック板18aと、複数の第三ラック板18aの前端部が固定される第三ラック板固定部材18bと、隣り合う第三ラック板18a同士の間に第三篩い線18cと、を備えている。
【0071】
第三ラック板固定部材18bには、第三篩い線18cが固定されている。つまり、第三ラック板固定部材18bの下面に、第三ラック板18aが固定されているとともに、第三ラック板固定部材18bの上面に、第三篩い線18cが固定されている。
【0072】
ここで、図11に示すように、第二ストローラック17及び第三ストローラック18は、第一ストローラック16よりも前後方向に長い。そして、第二ストローラック17と第三ストローラック18とは、同一部材によって構成されている。また、第二ストローラック17と第三ストローラック18とは、同じ高さに配置されている。そして、第一ストローラック16は、第二ストローラック17及び第三ストローラック18よりも上方に配置されている。つまり、第一ストローラック16、第二ストローラック17及び第三ストローラック18のうち、第一ストローラック16が最も高く配置されている。
【0073】
また、図12に示すように、第一ストローラック16と第二ストローラック17とは、平面視において互いに重複するように配置されている。そして、第二ストローラック17と第三ストローラック18とは、平面視において互いに重複するように配置されている。
また、複数の第二ラック板17aの間隔D2と複数の第三ラック板18aの間隔D3とは、同一である。そして、複数の第一ラック板16aの間隔D1は、複数の第二ラック板17aの間隔D2及び複数の第三ラック板18aの間隔D3よりも大きい。
【0074】
以上のような構成によれば、チャフシーブ15の後端部からの脱穀処理物が、第一ストローラック16から第二ストローラック17に落下し、その落下の際の衝撃によって脱穀処理物の塊がほぐれる。そして、このほぐれた脱穀処理物が、第二ストローラック17に加えて第三ストローラック18でも選別される。したがって、チャフシーブ15の後端部からの脱穀処理物について穀粒の回収率を向上させることができる。
【0075】
ここで、図1及び図2に戻って、選別部2の後端部には、排出通路37が形成されている。この排出通路37は、切断装置34を介さずに脱穀処理物を機外に排出するものである。この排出通路37は、切断装置34とシーブケース10との間に形成されている。これにより、選別部2(第一ストローラック16、第二ストローラック17及び第三ストローラック18)からの脱穀処理物が、排出通路37によって切断装置34を介さずに機外に排出される。したがって、選別部2からの脱穀処理物が切断装置34に投入されることによる馬力ロスを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、扱胴と、前記扱胴による脱穀処理物を漏下させる受網と、前記受網から漏下した脱穀処理物を選別する選別部と、を備える脱穀装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0077】
3 扱胴
5 受網
2 選別部
11 グレンパン
12 篩い線
13 篩い線
35 案内板(案内体)
10 シーブケース
34 切断装置
37 排出通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13