特許第5943777号(P5943777)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5943777繊維材料を含む複合成形品の成形装置および成形方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5943777
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】繊維材料を含む複合成形品の成形装置および成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/70 20060101AFI20160621BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20160621BHJP
   B29C 45/78 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   B29C45/70
   B29C45/14
   B29C45/78
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-185296(P2012-185296)
(22)【出願日】2012年8月24日
(62)【分割の表示】特願2012-90140(P2012-90140)の分割
【原出願日】2012年4月11日
(65)【公開番号】特開2013-216078(P2013-216078A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2015年3月12日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000155159
【氏名又は名称】株式会社名機製作所
(72)【発明者】
【氏名】川内 健
(72)【発明者】
【氏名】永田 幹男
【審査官】 田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】 特開平5−185466(JP,A)
【文献】 特開2003−89129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/70
B29C 45/14
B29C 45/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形または半固形のプリプレグからなる材料を下型に供給し、上型と下型の間でプリプレグからなる材料を圧縮成形した後、更に射出成形または射出圧縮成形して複合成形品を成形する繊維材料を含む複合成形品の圧縮成形装置において、
少なくとも金型加熱を行う圧縮成形と射出後の冷却工程を備えた射出圧縮成形を連続して行う際に加圧を行う縦型のプレス装置と、
前記プレス装置に取付けられ加熱から冷却に切換えが可能な上型および下型と、
圧縮成形後に型部材移動装置の後退作動によりコアバック成形用の2次キャビティを形成する金型内の型部材と、
前記プレス装置の加圧位置とプレス装置外部の材料供給位置の間で下型を移動させる移動装置と、
前記材料供給位置で前記下型に固形または半固形のプリプレグからなる材料を供給する材料供給装置と、
型部材が後退して形成された上型または下型のキャビティ面と圧縮成形されたプリプレグからなる材料から形成された1次成形品との間に形成される完全に型開されていない前記2次キャビティに溶融材料を射出する射出装置と、
が設けられたことを特徴とする繊維材料を含む複合成形品の圧縮成形装置。
【請求項2】
固形または半固形のプリプレグからなる材料を下型に供給し、上型と下型の間でプリプレグからなる材料を圧縮成形した後、更に射出成形または射出圧縮成形して複合成形品を成形する繊維材料を含む複合成形品の圧縮成形装置において、
少なくとも金型加熱を行う圧縮成形と射出後の冷却工程を備えた射出成形を連続して行う際に加圧を行う縦型のプレス装置と、
前記プレス装置に取付けられ加熱から冷却に切換えが可能な上型および下型と、
圧縮成形後に型部材移動装置の後退作動によりコアバック成形用の2次キャビティを形成する金型内の型部材と、
前記材料供給位置で前記下型に固形または半固形のプリプレグからなる材料を供給する材料供給装置と、
型部材が後退して形成された上型または下型のキャビティ面と圧縮成形された固形または半固形のプリプレグからなる材料から形成された1次成形品との間の完全に型開されていない2次キャビティに溶融材料を射出する射出装置と、
が設けられたことを特徴とする繊維材料を含む複合成形品の圧縮成形装置。
【請求項3】
固形または半固形のプリプレグからなる材料を下型に供給し、上型と下型の間でプリプレグからなる材料を圧縮成形した後、更に射出成形または射出圧縮成形して複合成形品を成形する繊維材料を含む複合成形品の圧縮成形方法において、
前記上型と下型は加熱から冷却に切換え可能な金型であって、
材料供給装置から下型に固形または半固形のプリプレグからなる材料を供給し、
プレス成形装置を作動させ上型を下降させてプリプレグからなる材料を少なくとも当初加熱された上型および下型の間で圧縮成形を行い、
その後に所定時間が経過すると型部材移動装置の後退作動によりコアバック成形用の2次キャビティを形成する金型内の型部材を移動させて上型または下型のキャビティ面と圧縮成形された固形または半固形のプリプレグからなる材料から形成された1次成形品との間に完全に型開されていない2次キャビティを形成し、
前記2次キャビティに射出装置から溶融樹脂を射出し、
射出開始と同時または射出後にプレス装置または型部材移動装置を作動させて前記2次キャビティ内に射出された溶融樹脂を圧縮し射出後の冷却工程を経て複合成形品を成形することを特徴とする繊維材料を含む複合成形品の圧縮成形方法。
【請求項4】
固形または半固形のプリプレグからなる材料を下型に供給し、上型と下型の間でプリプレグからなる材料を圧縮成形した後、更に射出成形または射出圧縮成形して複合成形品を成形する繊維材料を含む複合成形品の圧縮成形方法において、
前記上型と下型は加熱から冷却に切換え可能な金型であって、
材料供給装置から下型に固形または半固形のプリプレグからなる材料を供給し、
プレス成形装置を作動させ上型を下降させてプリプレグからなる材料を少なくとも当初加熱された上型および下型の間で圧縮成形を行い、
その後に所定時間が経過すると金型内の型部材を移動させて上型または下型のキャビティ面と圧縮成形された固形または半固形のプリプレグからなる材料から形成された1次成形品との間に完全に型開されていないコアバック成形用の2次キャビティを形成し、
前記2次キャビティに射出装置から溶融樹脂を射出し射出後の冷却工程を経て複合成形品を成形することを特徴とする繊維材料を含む複合成形品の圧縮成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形または半固形のプリプレグからなる材料を下型に供給し、上型と下型の間で前記固形または半固形のプリプレグからなる材料を圧縮成形した後、更に射出成形または射出圧縮成形して複合成形品を成形する繊維材料を含む複合成形品の成形装置および成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固形または半固形のプリプレグからなる材料を下型に供給し、上型と下型の間でプリプレグからなる材料を圧縮成形した後、更に射出圧縮成形して複合成形品を成形する繊維材料を含む複合成形品の成形装置としては、特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1では、繊維強化熱可塑性プラスチックをスタンピング成形して、骨格層を形成した後、同一の型枠を用いて射出圧縮成形により繊維を含まない熱可塑性のプラスチックの表皮層を繊維強化熱可塑性プラスチックの骨格層の表面に一体的に構成することが記載されている。ところが特許文献1の場合、加熱されたブランクシートをどのようにして成形用金型の間に供給するか等については記載されていない。
【0003】
また繊維材料を含む成形品に関するものではないが、フロースタンピング成形と射出圧縮成形を行う合成樹脂の複合成形装置としては、特許文献2に記載されたものが知られている。特許文献2については、フロースタンピング成形を行うための材料供給機構と、型締ユニットと、射出圧縮成形用の成形ユニットの関係が図示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−185466号公報(請求項1、図1図2
【特許文献2】特開平5−24128号公報(0005ないし0014、図1図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1にてプレス装置の間にブランクシートを挿入する場合については、挿入するための装置の侵入スペースが必要となり、プレス装置を大きく型開できるようにプレス装置の高さを高くする必要がある。しかしながら高さを高くしたプレス装置は、次工程で水平方向に設けられた射出装置のノズルが型枠にノズルタッチされ、横方向からの力を受けた際に強度的に不利である。そして高さの高いプレス装置の横方向に対する強度を確保しようとするとタイバを太くするなどコストアップに繋がるものであった。
【0006】
特許文献2については、下型をプレス外部に引き出してフロースタンピング成形のための材料供給を行うので、プレス装置間に直接材料を供給する際の型開間隔の問題は発生しない。しかし特許文献2は、キャビティ面の形状の異なる2個の下型を使用する必要があり、金型コストが高くなるものであった。また2個の下型が移動するので、下型の移動装置がコストアップする上に下型の移動スペースが両側に広く必要になるという問題もある。また更にはフロースタンピング成形を行うための材料供給機構が設けられる側と反対側も下型の移動スペースとなるので、反対側に射出装置を設けることは現実的には難しい。そのため装置全体の設置スペースがL字状となり工場設置上の制約が多くなるという問題もあった。また特許文献2の材料供給方法では溶融樹脂の供給からプレス装置まで移動させるための時間がかかる場合があるという問題もあった。
【0007】
そこで本発明の圧縮成形装置および圧縮成形方法は、固形または半固形のプリプレグからなる材料を下型に供給し、上型と下型の間でプリプレグからなる材料を圧縮成形した後、更に射出圧縮成形して複合成形品を成形する場合において、装置全体のコストを抑えることが可能な圧縮成形装置および圧縮成形方法を提供することを目的とする。また第2の課題としては、プレス装置外で固形または半固形のプリプレグからなる材料を供給することによってプレス装置の高さを低くすることの可能な圧縮成形装置および圧縮成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に記載の繊維材料を含む複合成形品の圧縮成形装置は、固形または半固形のプリプレグからなる材料を下型に供給し、上型と下型の間でプリプレグからなる材料を圧縮成形した後、更に射出成形または射出圧縮成形して複合成形品を成形する繊維材料を含む複合成形品の圧縮成形装置において、少なくとも金型加熱を行う圧縮成形と射出後の冷却工程を備えた射出圧縮成形を連続して行う際に加圧を行う縦型のプレス装置と、前記プレス装置に取付けられ加熱から冷却に切換えが可能な上型および下型と、圧縮成形後に型部材移動装置の後退作動によりコアバック成形用の2次キャビティを形成する金型内の型部材と、前記プレス装置の加圧位置とプレス装置外部の材料供給位置の間で下型を移動させる移動装置と、前記材料供給位置で前記下型に固形または半固形のプリプレグからなる材料を供給する材料供給装置と、型部材が後退して形成された上型または下型のキャビティ面と圧縮成形されたプリプレグからなる材料から形成された1次成形品との間に形成される完全に型開されていない前記2次キャビティに溶融材料を射出する射出装置と、が設けられたことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項2に記載の繊維材料を含む複合成形品の圧縮成形装置は、固形または半固形のプリプレグからなる材料を下型に供給し、上型と下型の間でプリプレグからなる材料を圧縮成形した後、更に射出成形または射出圧縮成形して複合成形品を成形する繊維材料を含む複合成形品の圧縮成形装置において、少なくとも金型加熱を行う圧縮成形と射出後の冷却工程を備えた射出成形を連続して行う際に加圧を行う縦型のプレス装置と、前記プレス装置に取付けられ加熱から冷却に切換えが可能な上型および下型と、圧縮成形後に型部材移動装置の後退作動によりコアバック成形用の2次キャビティを形成する金型内の型部材と、前記材料供給位置で前記下型に固形または半固形のプリプレグからなる材料を供給する材料供給装置と、型部材が後退して形成された上型または下型のキャビティ面と圧縮成形された固形または半固形のプリプレグからなる材料から形成された1次成形品との間の完全に型開されていない2次キャビティに溶融材料を射出する射出装置と、が設けられたことを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項3に記載の繊維材料を含む複合成形品の圧縮成形方法は、固形または半固形のプリプレグからなる材料を下型に供給し、上型と下型の間でプリプレグからなる材料を圧縮成形した後、更に射出成形または射出圧縮成形して複合成形品を成形する繊維材料を含む複合成形品の圧縮成形方法において、前記上型と下型は加熱から冷却に切換え可能な金型であって、材料供給装置から下型に固形または半固形のプリプレグからなる材料を供給し、
プレス成形装置を作動させ上型を下降させてプリプレグからなる材料を少なくとも当初加熱された上型および下型の間で圧縮成形を行い、その後に所定時間が経過すると型部材移動装置の後退作動によりコアバック成形用の2次キャビティを形成する金型内の型部材を移動させて上型または下型のキャビティ面と圧縮成形された固形または半固形のプリプレグからなる材料から形成された1次成形品との間に完全に型開されていない2次キャビティを形成し、
前記2次キャビティに射出装置から溶融樹脂を射出し、射出開始と同時または射出後にプレス装置または型部材移動装置を作動させて前記2次キャビティ内に射出された溶融樹脂を圧縮し射出後の冷却工程を経て複合成形品を成形することを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項4に記載の繊維材料を含む複合成形品の圧縮成形方法は、固形または半固形のプリプレグからなる材料を下型に供給し、上型と下型の間でプリプレグからなる材料を圧縮成形した後、更に射出成形または射出圧縮成形して複合成形品を成形する繊維材料を含む複合成形品の圧縮成形方法において、前記上型と下型は加熱から冷却に切換え可能な金型であって、材料供給装置から下型に固形または半固形のプリプレグからなる材料を供給し、プレス成形装置を作動させ上型を下降させてプリプレグからなる材料を少なくとも当初加熱された上型および下型の間で圧縮成形を行い、その後に所定時間が経過すると金型内の型部材を移動させて上型または下型のキャビティ面と圧縮成形された固形または半固形のプリプレグからなる材料から形成された1次成形品との間に完全に型開されていないコアバック成形用の2次キャビティを形成し、前記2次キャビティに射出装置から溶融樹脂を射出し射出後の冷却工程を経て複合成形品を成形することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の繊維材料を含む複合成形品の圧縮成形装置は、固形または半固形のプリプレグからなる材料を下型に供給し、上型と下型の間でプリプレグからなる材料を圧縮成形した後、更に射出成形または射出圧縮成形して複合成形品を成形する繊維材料を含む複合成形品の圧縮成形装置において、少なくとも金型加熱を行う圧縮成形と射出後の冷却工程を備えた射出圧縮成形を連続して行う際に加圧を行う縦型のプレス装置と、前記プレス装置に取付けられ加熱から冷却に切換えが可能な上型および下型と、圧縮成形後に型部材移動装置の後退作動によりコアバック成形用の2次キャビティを形成する金型内の型部材と、前記プレス装置の加圧位置とプレス装置外部の材料供給位置の間で下型を移動させる移動装置と、前記材料供給位置で前記下型に固形または半固形のプリプレグからなる材料を供給する材料供給装置と、型部材が後退して形成された上型または下型のキャビティ面と圧縮成形されたプリプレグからなる材料から形成された1次成形品との間に形成される完全に型開されていない前記2次キャビティに溶融材料を射出する射出装置と、が設けられているので繊維材料を含む複合成形品が構造を簡略化した圧縮成形装置で成形できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の繊維材料を含む複合成形品の圧縮成形装置の平面図である。
図2】本実施形態の繊維材料を含む複合成形品の圧縮成形装置の正面図である。
図3】本実施形態の繊維材料を含む複合成形品の圧縮成形方法を示す図であって、材料供給装置から溶融材料を供給開始直後の状態を示す図である。
図4】本実施形態の繊維材料を含む複合成形品の圧縮成形方法を示す図であって、材料供給装置から溶融材料を供給終了直前の状態を示す図である。
図5】本実施形態の繊維材料を含む複合成形品の圧縮成形方法を示す図であって、下型がプレス装置の加圧位置へ移動された状態を示す図である。
図6】本実施形態の繊維材料を含む複合成形品の圧縮成形方法を示す図であって、下型と上型の間で溶融材料の圧縮成形(スタンピング成形)が行われた状態を示す図である。
図7】本実施形態の繊維材料を含む複合成形品の圧縮成形方法を示す図であって、圧縮成形後にキャビティ面と圧縮成形された1次成形品との間に空間が形成された状態を示す図である。
図8】本実施形態の繊維材料を含む複合成形品の圧縮成形方法を示す図であって、射出圧縮成形(射出)が開始された状態を示す図である。
図9】本実施形態の繊維材料を含む複合成形品の圧縮成形方法を示す図であって、射出圧縮成形における射出後の圧縮工程または冷却工程の状態を示す図である。
図10】本実施形態の繊維材料を含む複合成形品の圧縮成形方法を示す図であって、射出圧縮成形が完了し、型開された状態を示す図である。
図11】本実施形態の繊維材料を含む複合成形品の圧縮成形方法を示す図であって、下型がプレス装置から搬出され、複合成形品の取出しが行われている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1図2により本実施形態の繊維材料を含む複合成形品の圧縮成形装置11について説明する。本実施形態の繊維材料を含む複合成形品の圧縮成形装置11は、繊維材料を含む溶融材料Mを上型12と下型13の間で圧縮する縦型のプレス装置14と、前記繊維材料を含む溶融材料Mの材料供給装置15と、溶融材料の射出を行う横型の射出装置16が設けられている。そしてプレス装置14と材料供給装置15による下型13への繊維材料を含む溶融材料Mの供給位置a1の間には下型13の移動装置17が設けられている。
【0015】
プレス装置14について説明すると、図2に示されるように、下盤である固定盤18の四隅近傍には4本のタイバ19が立設されており、タイバ19の上部は、上盤である受圧盤20の四隅近傍に固定されている。また固定盤18と受圧盤20の間には、可動盤21がタイバ19に挿通されて上下方向に移動可能となっている。受圧盤20には加圧機構である型締シリンダ22(加圧用シリンダ)が設けられ、型締シリンダ22のラム23は可動盤21の背面に固定されている。また受圧盤20と可動盤21の間には型開閉機構である型開閉シリンダ24が設けられている。また可動盤21にはハーフナット25が取付けられ、タイバ19に形成された図示しない係合溝に係合可能となっている。なお型締シリンダ22および型開閉シリンダ24は電動機構を用いたものでもよく、例えばトグル機構により圧縮成形を行うプレス装置であってもよい。
【0016】
プレス装置14の可動盤21の下面には上型12が取付け可能となっている。また固定盤18の上面の加圧位置a2には下型13が固定および移動可能となっている。プレス装置14の下型13は、下型取付板26に取付けられ、プレス装置14の内部の加圧位置a2とプレス装置14の外部の供給位置a1の間で、図1におけるX軸方向に移動可能なものである。そして固定盤18の一側(図1において左側)には、下型13の移動装置17が連結・固定されている。前記下型13の移動装置17の上面は、固定盤18の上面と同じ高さとなっており、下型13を移動させるための2本のガイドレール27が両方の上面に亘って設けられている。そして前記ガイドレール27に沿って下型取付板26が移動されるようになっている。図示はしないが、下型取付板26の下面側は、バネを介して転動ボールまたは車軸と車輪が設けられており、下型取付板26が下型13をプレス装置14の内部の加圧位置a2とプレス装置14の外部の供給位置a1の間で移動する場合は、固定盤18の上面や移動装置17の上面から下型取付板26の下面が浮き上がるようになっている。また固定盤18の加圧位置a2で上型12と下型13が型閉され圧縮成形(射出圧縮成形を含む)がなされる際は、前記バネが収縮されるとともに図示しないクランプによりクランプされて、固定盤18の上面と下型取付板26の下面が密着するようになっている。
【0017】
下型13の移動装置17の駆動源はサーボモータ28であって、移動装置17の供給位置a1側の側面にサーボモータ28が固定されている。そして前記ガイドレール27と平行にボールネジ29が設けられ、ボールネジ29の一方はベアリングを介して移動装置17の上面に回転自在に固定され、他方はべリングを介して固定盤18の上面に回転自在に固定されている。また前記ベアリングよりも更に一方寄りのボールネジ29の端部近傍には従動プーリ30が固定され、サーボモータ28の駆動プーリ31との間に駆動力伝達用のタイミングベルト32が掛け渡されている。更に前記下型取付板26の側面にはボールネジナット33が固定され、ボールネジナット33には前記ボールネジ29が挿通されている。そしてサーボモータ28が駆動されると、ボールネジ29が回転され、ボールネジナット33と下型取付板26と下型13がX軸方向に直線運動されるようになっている。なお下型13の移動装置17のボールネジナット33は、下型取付板26の裏面に取付けてもよく、構造についてはこれに限定されない。また下型13は、ロータリテーブルによりプレス装置14外へ引き出されるものでもよく、この場合の移動装置による下型の移動軌跡は円弧となる。
【0018】
プレス装置14に取付られ使用される金型13,14について説明すると、下型13は供給した繊維材料を含む溶融材料Mがこぼれないように凹型(キャビ型)にすることが望ましく、上型12は凸型(コア型)にすることが望ましい。更に下型13は繊維材料を含む溶融材料Mを供給してから移動するので、その間に繊維材料を含む溶融材料Mの固化が進行しないように、加熱機構を有することが望ましい。加熱機構としてはヒータや、金型内に供給される媒体を加熱媒体と冷却媒体に切換えられる機構が用いられる。また下型13の移動装置17の上方に供給した繊維材料を含む溶融材料Mの固化が進行しないように赤外線照射やヒータなどの熱源を設けてもよい。そして下型13に加熱機構が設けられる場合は、成形品の反りの発生の問題から、上型12にも加熱機構が設けられることが望ましい。
【0019】
下型13にはキャビティ面13aとノズルタッチ面75の間を連通してホットランナ76が設けられている。ホットランナ76には図示しないゲートバルブが設けられ、圧縮成形の際はゲートバルブは閉鎖されている。
【0020】
下型13にはエジェクタ装置61のエジェクタ板とエジェクタ板に複数立設された突出ピン62が内蔵されている。また移動装置17の材料供給位置a1の下方には、エジェクタ
装置61の駆動源63とエジェクタロッドが設けられている。そして複合成形品Pが下型13が材料供給位置a1に到達するとエジェクタ装置61が作動して複合成形品Pの下型13からの突出がされる。なおエジェクタ装置61が設けられる位置は、プレス装置14の固定盤18側や可動盤21側であってもよい。
【0021】
また移動装置17の材料供給位置a1の上方には、取出機64が移動可能となっている。取出機64は、図示しないサーボモータにより水平方向および垂直方向に移動可能であり、負圧吸引手段に接続され負圧吸引される吸盤65により複合成形品Pの吸引を行う。
従って、本実施形態では、材料供給位置a1は、複合成形品Pの取出位置でもあり、材料供給位置a1の上方のスペースは、取出機64と材料供給装置15が交互に侵入する形になる(図1においては取出機64は省略して記載し、図2においては取出機64は材料供給装置15の上方で待機した状態を示している。)。このようにプレス装置14外で一つの下型13へのスタンピング成形用の繊維材料を含む溶融材料Mの供給や複合成形品Pの取出を行うことにより、プレス装置14の型開間隔が小さくて済むので、プレス装置14の高さを低くすることができる。
【0022】
次に図1図2により材料供給装置15について説明する。材料供給装置15は、前後進用の移動装置35により、下型13の移動装置17および移動方向と同方向であるX軸方向に移動可能となっている。
【0023】
図2に示されるように材料供給装置15の移動装置35は、ベースまたは床面上に2本のガイドレール36が設けられ、ガイドレール36上を材料供給装置15の基台37が移動可能となっている。またベースまたは床面上には、ボールネジ38が回転可能に配置され、基台37に固定されたボールネジナット50が前記ボールネジ38に挿通されている。またボールネジ38の端部近傍には従動プーリ39が固定され、サーボモータ40の駆動プーリ41との間にはタイミングベルト42が掛け渡されている。従ってサーボモータ40の駆動により、材料供給装置15の基台37と図示しないボールネジナットとが直線運動されるようになっている。なお移動装置35は、基台37と移動装置17の側面の間に取り付けてもよく、構造については限定されない。
【0024】
材料供給装置15の基台37上に載置されているのは、射出成形機の射出装置と略同じ機能を有する可塑化機能と射出機能を有する装置である。基台37上に固定的に立設された前プレート43にはヒータが取付けられた加熱筒44が挿通されている。また前プレート43には垂直方向に成形材料の供給口45が設けられ、供給口45の下方は加熱筒44の孔を通じて加熱筒内部に連通している。また供給口45の上方には、フィードスクリュを有する成形材料フィード装置46が接続されている。加熱筒44の先端にはヒータが取付けられたノズル47が取付けられている。ノズル47の先端には、供給孔48が下方を向けられたダイ49が取付けられている。ダイ49の供給孔48は所定の幅と長さを有している。本実施形態では、下型13の矩形のキャビティ面13aのX軸方向に直交する方向の長さに対して僅かに短い長さの供給孔48を有するダイ49が取付られている。従ってキャビティ面13aのX軸方向に直交する方向の長さより僅かに短い長さの繊維材料を含む樹脂シートを連続して供給することができる。なおノズル47の先端に取付られるダイ49の部分は、下型13のキャビティ面13aの形状や面積に応じて最適なものに交換可能となっている。またダイ49は、繊維材料を含む溶融材料Mの流動性や繊維材料を含む溶融材料Mに含まれる繊維の切れ等の問題から、成形材料によっても異なるダイ49に交換される。ノズル47の先端のダイ49またはその手前のノズル47の部分には、流路を開閉するバルブ(図示せず)が設けられることが多い。
【0025】
前プレート43の後方には所定の距離を隔てて前プレートと平行に後プレート51が設けられている。前プレート43の前面側の加熱筒44の両側には、それぞれ射出用のサーボモータ52が設けられ、後プレート51の両側にもそれぞれボールネジナット53が設けられている。そして前記サーボモータ52の駆動軸に直結されるボールネジ54が前記ボールネジナット53に挿通されている。また加熱筒44の内部には逆流防止弁が取付けられた射出成形用として一般的なスクリュ(図示せず)が配置されて、スクリュの軸の後端は、スリーブやカップリング等を介して後プレート51の後面に固定された計量用のサーボモータ55の駆動軸に固定されている。
【0026】
従って加熱筒内のスクリュは、前記計量用のサーボモータ55の駆動により回転され、射出用のサーボモータ52の駆動により、前後進されるようになっている。なお材料供給装置15の構造は前記したものに限定されず、3枚のプレートを有するものでもよく、射出用のサーボモータは1個でもよい。また射出用や計量用の駆動源は油圧を用いたものでもよい。更には繊維材料を含む溶融材料Mをプランジャで押出す材料供給装置や、加熱筒内のスクリュが回転のみして溶融材料を押出す押出式の材料供給装置を材料供給装置として用いてもよい。
【0027】
また本実施形態では縦型のプレス装置14の他側(図1において右側)には横型の射出装置16が配置されている。従ってプレス装置14を挟んで一側には溶融材料の材料供給装置15が設けられ、他側にはノズル58をプレス装置14に向けた横型の射出装置16が設けられている。射出装置16の構造については、材料供給装置である材料供給装置15と類似するので、概略を記載する。射出装置16の前後進装置は、基台56にシフトシリンダ57のシリンダ筒57aが固定され、固定盤18の側面にシフトシリンダ57のロッド57bが固定されている。そしてシフトシリンダ57は、射出装置16のノズル58を下型13のノズルタッチ面75へ当接させる際のノズルタッチ力を発生させる。
【0028】
そして基台56上に固定的に立設された前プレート66にはヒータが取付けられた加熱筒67が挿通されている。また前プレート66には垂直方向に成形材料の供給口68が設けられ、供給口68の下方は加熱筒67の孔を通じて加熱筒内部に連通している。また供給口68の上方には、フィードスクリュを有する成形材料フィード装置69が接続されている。加熱筒44の先端にはヒータが取付けられたノズル58が取付けられている。
【0029】
前プレート66の後方には所定の距離を隔てて前プレート66と平行に後プレート70が設けられている。前プレート66の前面側の加熱筒67の両側には、それぞれ射出用のサーボモータ71が設けられ、後プレート70の両側にもそれぞれボールネジナット72が設けられている。そして前記射出用のサーボモータ71の駆動軸に直結されるボールネジ73が前記ボールネジナット72に挿通されている。また加熱筒67の内部には逆流防止弁が取付けられた射出成形用として一般的なスクリュ(図示せず)が配置されて、スクリュの軸の後端は、スリーブやカップリング等を介して後プレート70の後面に固定された計量用のサーボモータ74の駆動軸に固定されている。
【0030】
従って加熱筒67内のスクリュは、前記計量用のサーボモータ74の駆動により回転され、射出用のサーボモータ71の駆動により、前後進されるようになっている。なお射出装置16の構造と配置については限定されるものではないが、例えば射出装置16は、垂直方向に設けられ、固定盤または可動盤の中央などに設けられた孔を介して、ノズルが金型に当接されるものでもよい。しかしながら射出装置16のメンテナンスの容易さや工場の天井の高さとの関係からは、射出装置16は横型の射出装置であることが望ましい。
【0031】
また射出装置16のノズル58については、交換可能であって、材料供給装置15のようなダイ49を取付けてスタンピング成形用の2次成形の材料を供給することも可能である。また圧縮成形装置11の下型13を固定的に設けて、圧縮成形装置11を単独の射出成形機(射出圧縮成形機を含む)として利用したり、種々の使用方法が可能である。
【0032】
次に本実施形態の圧縮成形装置11を用いた複合成形品の圧縮成形について図3ないし図11により説明する。本実施形態では使用される材料として熱可塑性樹脂(例えばポリカーボネート)に炭素繊維材料を含む溶融材料Mを使用した例について記載する。成形材料としては、熱可塑性樹脂の場合は、ポリカーボネートの他、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ABS等の少なくとも一種類の樹脂が選ばれる。また熱硬化性樹脂の場合は、エポキシ、ポリウレタン、フェノール等の少なくとも一種類の樹脂から選ばれ、熱可塑性と熱硬化性樹脂の混合樹脂でもよい。また繊維材料としては、炭素繊維の他、ガラス繊維、植物繊維、化学繊維等の別の繊維を含有するものであってもよい。またカーボンと樹脂の混合物などの流動性の悪い材料と樹脂の混合物の成形にも本実施形態の圧縮成形装置11は適している。
【0033】
成形の手順としてはまず、プレス装置14が型開された状態で、サーボモータ28が駆動されて下型取付板26と下型13がプレス装置14の外部の供給位置a1へ移動され、一旦位置決め停止される。(複合成形品Pの取出については後述する。)下型13の供給位置a1への移動までに材料供給装置15は計量用のサーボモータ40を回転させるとともに射出用のサーボモータ52で背圧を加えて、加熱筒44内のスクリュの前方への繊維材料を含む溶融材料Mである炭素繊維含有のポリカーボネート樹脂の計量(貯留)が行われ、供給位置a1で待機している。材料供給装置15は、材料供給位置a1で複合成形品Pの取出を行うようにする場合は、取出中は後方位置にあり、取出後にX軸方向に沿って前進して供給位置に付く。材料供給装置15の停止位置は、プレス装置14とその上型12と下型13の位置関係で決められるが、プレス装置14になるべく近い位置のほうが下型13の移動距離を短縮できる関係から望ましい。
【0034】
前記したようにこの際の下型13は、キャビティ面13aが加熱されている。そして下型13のキャビティ面13aの上に材料供給装置15から炭素繊維材料を含む溶融材料Mが供給される。炭素繊維材料を含む溶融材料Mの供給は、材料供給装置15のノズル47の図示しないバルブが開かれ、射出用のサーボモータ52が駆動されてスクリュが前進移動され、ダイ49の供給孔48から炭素繊維材料を含む溶融材料Mが落下されることにより行われる。本実施形態のダイ49の供給孔48の長さ(X軸に直交する方向の長さ)は、上記したように、略矩形のキャビティ面13aのX軸に直交する方向の長さよりも短くなっている。従って供給される炭素繊維材料を含む溶融材料Mは、キャビティ面13aを覆うようにシート状に供給される。
【0035】
図3に示されるように、本実施形態の材料供給装置15から下型13への炭素繊維材料を含む溶融材料Mの供給は、下型13のキャビティ面13aの前端近傍(プレス装置14に近い側)に最初に炭素繊維材料を含む溶融材料Mが落下するように行われる。それから材料供給装置15を現位置に停止した状態で、移動装置17のサーボモータ28を駆動させて下型13をプレス装置14側へ移動させることにより、下型13のキャビティ面13aの過半の部分を覆うように炭素繊維材料を含む溶融材料Mを供給することができる。なお炭素繊維材料を含む溶融材料Mの供給は、下型13および材料供給装置15を固定して行ってもよいし、材料供給装置15を移動させて行ってもよい。更には下型13をプレス装置14に向かって前進させながら材料供給装置15を後退させるなど、両者を移動させてもよい。また下型13および材料供給装置15の移動は、X軸方向に直交する方向など別の方向へ移動するものでもよい。
【0036】
次に図4に示されるように、下型13が前進してキャビティ面13aの後端近傍(プレス装置14から見て遠い側)の上方に材料供給装置15のダイ49の供給孔48が位置する状態となると、材料供給装置15からの材料供給が停止される。材料供給装置15の側から説明すれば、図4の位置に下型13が到達する際に、加熱筒44内のスクリュが所定位置まで前進され、ノズル47のバルブが閉鎖されるように制御がなされる。
【0037】
次に図5に示されるように、炭素繊維材料を含む溶融材料Mの供給が完了した下型13は、移動装置17により連続してプレス装置14の加圧位置a2に移動される。プレス装置14の加圧位置a2において下型取付板26は位置決め停止され、更に図示しない位置決めピンやクランプ等で固定される。このような材料供給方法を採用することにより、下型13に炭素繊維材料を含む溶融材料Mが供給されてから下型13がプレス装置14の加圧位置a2に到達するまでの時間を短縮することができる。またこの際に前記の供給位置a1で成形を完了した複合成形品Pを取出す場合は、取出機64の進入に備えて、材料供給装置15は後退させておく。
【0038】
次に図2図6に示されるように、プレス装置14の型開閉シリンダ24が作動して上型12が下降し、上型の凸部が下型13の凹部と嵌合されるかその直前で、ハーフナット25が作動されてハーフナット25とタイバ19の係合溝が係合される。そして次に型締シリンダ22が駆動される。その際に固定盤18に対して僅かに浮上している下型取付板26が固定盤18と密着され、加圧力が固定盤18に伝達されることは上記した通りである。そして下型13の凹部のキャビティ面13aと上型のキャビティ面の凸部が嵌合されてその間に形成されたキャビティ内で炭素繊維材料を含む溶融材料Mは加圧されて圧縮され、附形される。なお下型13と上型12とが当初加熱されている場合は、圧縮されている途中から冷却に切換えられ、炭素繊維材料を含む溶融材料Mの冷却固化が促進され、炭素繊維材料を含む1次成形品M1が成形される。なお縦型のプレス装置14の型閉の際の型の移動は下型13が上昇して上型12と型閉されるものでもよい。
【0039】
次に図7に示されるように、所定時間が経過するとプレス装置14の型締シリンダ22を型開方向に作動させて、下型13から上型12を完全に型開されない状態で僅かに上昇させる。その際には下型13に炭素繊維材料を含む1次成形品M1が残置され、前記1次成形品M1と上型12のキャビティ面12aとの間が離型されて高さHの空間C(2次キャビティ)が形成される。なおこの際上型12に1次成形品M1を貼り付けて離型し、炭素繊維材料を含む1次成形品M1と下型13のキャビティ面13aの間に空間C(2次キャビティ)が形成されるようにしてもよい。またはプレス装置14の作動ではなく、金型内の型の部材(入れ子)を型部材移動装置により後退作動させて空間C(2次キャビティ)を形成するようにしてもよい(コアバック成形)。更にまた射出装置16による射出とほぼ同時に型を僅かに開くものでもよい。
【0040】
次に図8に示されるように、下型13の他方(図1において右側)の側面に形成されたノズルタッチ面75に射出装置16のノズル58を当接させる。そして下型13のホットランナ76のゲートバルブを開放する。そして射出装置15の射出は、射出用のサーボモータ71を作動させて加熱筒67内の図示しないスクリュを前進させる。そのことによりホットランナを介して、下型13上の1次成形品M1と上型12のキャビティ面12aの間に形成された空間C(2次キャビティ)に溶融樹脂M2の射出を開始する。本実施形態では、1次成形(圧縮成形)に炭素繊維材料と共にバインダ樹脂として用いられたポリカーボネートを、2次成形にも使用する。しかし1次成形で用いられた炭素繊維材料を含む樹脂M1のバインダ樹脂と、2次成形で用いる樹脂M2を異なる樹脂としてもよい。
【0041】
この際の金型12,13の形状と射出装置16のノズル58の当接位置については上記に限定されず、種々のものが使用可能である。例えばパーティング面にノズル58を当接させるものや固定盤18、可動盤21、上型12のいずれかの側面にノズル58を当接させるものでもよい。またゲートを1次成形品M1の面と直交する方向であって中央に設けることにより溶融材料M2を均等に流すことができ、炭素繊維材料を含む樹脂M1との接着性を良好にすることができる。また金型12,13は、上型12と下型13が嵌合されるインロータイプの金型であっても、上型12と下型13が当接される平当タイプの金型であってもよい。平当金型の場合は、下型13(または上型12)のキャビティ面13a等の周囲の側壁がバネによって上下移動し、上型12(または下型13)のキャビティ面12a等の周囲の部分が前記側壁の当接面と面当接する。
【0042】
次に図9に示されるように、プレス装置14の型締シリンダ22を作動させ、上型12を再度下降させ、空間C(2次キャビティ)に射出した溶融樹脂M2を加圧して圧縮する。その際、射出と同時または射出中にスクリュ位置等により型締シリンダ22により圧縮成形(射出圧縮成形)を開始することが望ましい。最初の段階で空間C(2次キャビティ)を拡げておくことにより、溶融樹脂M2を良好に射出しやすくなる。また途中の段階からプレス装置14による圧縮成形(射出圧縮成形)を開始することにより、溶融樹脂M2を空間C(2次キャビティ)の端部まで流動促進することもできる。そして炭素繊維を含む1次成形品M1と溶融樹脂M2に圧縮を加えることにより、炭素繊維を含む1次成形品M1の面と2次射出した溶融樹脂M2の層の密着性が良好になる。そして金型12,13が加熱されていたものは、圧縮成形(射出圧縮成形)の途中から冷却に切換えられ、溶融材料Mの冷却固化が促進される。または加熱機能がない金型の場合はそのまま冷却される。従って本実施形態では、下型13と上型12との間で完全に型開されない状態で圧縮成形と射出圧縮成形とが連続して行われる(型開せずに空間Cを形成する工程を挟むものは連続して成形の範疇に含まれる)。
【0043】
なお上記のコアバック成形を行う場合は、金型内の型部材を別の型部材移動装置により前進させるかプレス装置14の型締シリンダ22を作動させることにより、型部材が後退して形成された空間C(2次キャビティ)内の溶融材料M2の射出圧縮成形を行うが、圧縮を伴わない射出成形を行ってもよい。
【0044】
図10に示されるように、所定時間が経過するとプレス装置14の型締シリンダ22および型開閉シリンダ24が型開方向に作動して、下型13から上型12が上昇し、下型13に残置された炭素繊維材料を含む複合成形品Pが取出し可能となる。
【0045】
次に図2図11に示されるように、移動装置17のサーボモータ28の駆動により、炭素繊維材料を含む複合成形品Pがキャビティ面13a上に保持された下型13が加圧位置a2から材料供給位置a2(取出位置)へ移動される。そしてエジェクタ装置61の駆動源63が駆動されエジェクタロッド、エジェクタ板を介して突出ピン62が突出され、炭素繊維材料を含む複合成形品Pがキャビティ面13aから突き出される。それと略同時に、取出機64の吸盤65が炭素繊維材料を含む複合成形品Pの上面に吸着し、炭素繊維材料を含む複合成形品Pを保持して別の工程へ搬出する。なおこの際、炭素繊維材料を含む複合成形品Pは、裏面となる炭素繊維材料を含む1次成形品M1の側が突出ピン62により突き出されるので、僅かに突出跡が残っても使用上の問題はない。
【0046】
また本実施形態では、材料供給装置15とともに取出機64がプレス装置14内に挿入されないので、縦型のプレス装置14の型開間隔は小さくて済み、その結果、縦型のプレス装置14の高さを低くすることができる。そしてプレス装置14のタイバ19の方向と直交する方向から、横型の射出装置16によるノズルタッチ力を受ける際にも、縦型のプレス装置14の高さが低いために強度を低くすることができ、コストダウンに繋げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明については、一々列挙はしないが、上記した本実施形態のものに限定されず、当業者が本発明の趣旨を踏まえて変更を加えたものについても、適用されることは言うまでもないことである。本実施形態においては、炭素繊維材料を含む樹脂Mに対して樹脂層M2を多層に重ねる例について説明したが、2回の型開を行うことにより、繊維材料を含む樹脂Mに対して両面に樹脂層M2を被覆することも可能である。また樹脂層M2については、層状に被覆せずに、一例として周囲の部分のみというように、部分的に接合して繊維を含む複合成形品Pを成形したものでもよい。更には射出圧縮成形される材料も繊維材料を含むようにしてもよい。その場合、炭素繊維の含有量は1次成形品よりも低下させることが望ましい。また射出圧縮成形用の射出装置は1本に限らず、多層や多材により繊維層を含む複合成形品を成形するようにしてもよい。
【0048】
更には本実施形態では1次成形品は材料供給装置15から溶融状態で供給されるが、固形または半固形のプリプレグ等の繊維材料を含む材料をプレス装置14の外部の供給位置a1で供給するようにしたものでもよい。その場合、供給位置a1、プレス装置14の加圧位置a2と供給位置a1の間、プレス装置14の加圧位置a2のいずれかの位置で更に、固形または半固形のプリプレグ等の繊維材料を含む材料を予熱することが望ましい。その後の圧縮成形および射出圧縮成形については上記の実施形態と同じである。
【符号の説明】
【0049】
11 圧縮成形装置
12 上型
12a,13a キャビティ面
13 下型
14 プレス装置
15 材料供給装置
16 射出装置
17 移動装置
18 固定盤
21 可動盤
26 下型取付板
47,58 ノズル
48 供給孔
M 繊維を含む溶融材料(炭素繊維を含む溶融材料)
M1 1次成形品
M2 溶融樹脂
P 繊維材料を含む複合成形品(炭素繊維材料を含む複合成形品)
X 下型の移動方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11