(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
原燃料を改質して燃料ガスを生成する改質器と、前記改質器で生成された前記燃料ガスが供給されるアノード、及び、酸素ガスが供給されるカソードを有する燃料電池と、発電反応で用いられた後に前記アノードから排出される排出燃料ガス中の燃料成分と発電反応に用いられた後に前記カソードから排出される排出酸素ガスとを燃焼させ、その燃焼熱によって前記改質器を加熱する燃焼部と、前記燃料電池の出力電流を調節する出力調節手段と、前記改質器から前記アノードへの前記燃料ガスの供給量を調節する燃料ガス供給量調節手段と、前記出力調節手段及び前記燃料ガス供給量調節手段の動作を制御する運転制御手段とを備え、前記運転制御手段が、前記アノードに供給される前記燃料ガスの量に対する、前記アノードで発電反応に用いられる前記燃料ガスの量の比率である燃料利用率の目標値を前記出力電流の関数として定めている特性曲線に従って、前記出力調節手段の動作を制御して前記出力電流を調節し及び前記燃料ガス供給量調節手段の動作を制御して前記改質器から前記アノードへの前記燃料ガスの供給量を調節するように構成されている燃料電池システムにおいて用いられる前記特性曲線における前記燃料利用率を設定する方法であって、
前記出力電流及び当該出力電流の関数として前記特性曲線で定められる前記燃料利用率に基づいて、前記アノードで発電反応に用いられずに前記燃焼部へ供給される前記排出燃料ガス中の燃料成分の量を、前記出力電流の関数として導出する導出工程と、
前記導出工程で導出される前記燃焼部へ供給される前記排出燃料ガス中の燃料成分の量が基準下限値未満になるときの前記出力電流を特定し、前記特性曲線において当該出力電流に対応する前記燃料利用率を不適当と判定する判定工程と、を有する燃料利用率の設定方法。
前記出力電流に関する電流域として、前記アノードに供給される前記燃料ガスの量が一定とされる低電流域と、前記低電流域より高い電流域で、前記出力電流の増大に対応して前記アノードに供給される前記燃料ガスの量が増加される高電流域が設定されており、
前記判定工程において前記排出燃料ガス中の燃料成分の量が前記基準下限値未満と判定された場合に、前記低電流域において設定される一定の燃料ガスの量を増大側に設定変更すること、及び、前記低電流域から前記高電流域に移行する移行電流値を低電流側に設定変更することの少なくとも何れか一方を行う請求項1に記載の燃料利用率の設定方法。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、原燃料を改質して水素ガスを主成分とする燃料ガスを生成する改質器と、改質器で生成された燃料ガスが供給されるアノード、及び、酸素ガスが供給されるカソードを有する燃料電池と、発電反応で用いられた後にアノードから排出される排出燃料ガス中の燃料成分と発電反応に用いられた後にカソードから排出される排出酸素ガスとをそれらの混合状態で燃焼させ、その燃焼熱によって改質器を加熱する燃焼部とを備える燃料電池システムが記載されている。
【0003】
更に、特許文献1に記載の燃料電池システムでは、燃料電池の運転制御において、アノードに供給される燃料ガスの量に対する、アノードで発電反応に用いられる燃料ガスの量の比率である燃料利用率の目標値を、出力電流の関数として定めている特性曲線に従って、出力調節手段の動作を制御して出力電流を調節し及び燃料ガス供給量調節手段の動作を制御して改質器からアノードへの燃料ガスの供給量を調節している。つまり、特許文献1に記載の燃料電池システムでは、燃料電池の出力電流に応じて、燃料利用率を調節している。そして、燃焼部において、燃料電池の発電反応で消費されずに排出される排出燃料ガス中の燃料成分を燃焼させ、改質器の加熱に利用している。
特に、特許文献1に記載の燃料電池システムでは、燃料利用率が、低出力電流域では高出力電流域より低くなるようにすることで、発電反応に使用されなかった排出燃料ガス中の燃料成分(H
2など)の熱量が低出力電流域で増大し、燃焼部における燃料の熱量はほぼ一定に維持できるという効果を狙っている。
【0004】
このような燃料電池システムにおいて、燃焼部での燃焼が失火すると、改質器での熱量の不足や、燃焼排気ガス中の可燃性・毒性ガス(H
2、CO)の増加が生じるので、燃焼部での失火を極力避けることが望ましい。尚、排出燃料ガス中に含まれる燃料成分、即ち、燃料電池のアノードで発電反応に利用されなかった燃料成分は、燃料利用率が高くなるほど少なくなる。そのため、燃料利用率が高くなると、燃焼部に供給される燃料成分の絶対量の減少による発熱量(燃焼負荷)の低下、燃料成分の濃度減少により、安定した燃焼が行われ難くなる。これに対して、燃料利用率が低くなると、燃焼部に供給される燃料成分の絶対量が増加するため、燃焼部での燃焼性が向上して失火が抑制されるという効果を得ることができるものの、発電反応に用いられない燃料成分が増加するという点で発電効率の低下になる。尚、現在の燃料電池の開発動向は、燃料電池本来の目的である発電量を増加させる、即ち、燃料利用率をできるだけ高くする方向で進んでいる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の燃料電池システムでは、出力電流と燃料利用率との関係が規定された特性曲線を使用して燃料電池の出力電流と燃料利用率を制御しているが、使用している特性曲線が適当であるか否か、特に上述した失火の問題を解決したものであるか否かを検証していない。
更に、現状では、出力電流と燃料利用率との関係が規定された特性曲線を使用して実際に燃料電池を運転し、その際の失火挙動を確認することで、燃料利用率を再設定するという手間のかかる対処が為されている。つまり、現在のところ、出力電流と燃料利用率との関係が規定された特性曲線を、燃料電池を実際に運転させずに定量的に評価することは行われていないし、定量的に評価し及び設定変更する手法も提案されていない。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、定量的な評価に基づいて行うことができる燃料利用率の設定方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る燃料利用率の設定方法の特徴構成は、原燃料を改質して燃料ガスを生成する改質器と、前記改質器で生成された前記燃料ガスが供給されるアノード、及び、酸素ガスが供給されるカソードを有する燃料電池と、発電反応で用いられた後に前記アノードから排出される排出燃料ガス中の燃料成分と発電反応に用いられた後に前記カソードから排出される排出酸素ガスとを燃焼させ、その燃焼熱によって前記改質器を加熱する燃焼部と、前記燃料電池の出力電流を調節する出力調節手段と、前記改質器から前記アノードへの前記燃料ガスの供給量を調節する燃料ガス供給量調節手段と、前記出力調節手段及び前記燃料ガス供給量調節手段の動作を制御する運転制御手段とを備え、前記運転制御手段が、前記アノードに供給される前記燃料ガスの量に対する、前記アノードで発電反応に用いられる前記燃料ガスの量の比率である燃料利用率の目標値を前記出力電流の関数として定めている特性曲線に従って、前記出力調節手段の動作を制御して前記出力電流を調節し及び前記燃料ガス供給量調節手段の動作を制御して前記改質器から前記アノードへの前記燃料ガスの供給量を調節するように構成されている燃料電池システムにおいて用いられる前記特性曲線における前記燃料利用率を設定する方法であって、
前記出力電流及び当該出力電流の関数として前記特性曲線で定められる前記燃料利用率に基づいて、前記アノードで発電反応に用いられずに前記燃焼部へ供給される前記排出燃料ガス中の燃料成分の量を、前記出力電流の関数として導出する導出工程と、
前記導出工程で導出される前記燃焼部へ供給される前記排出燃料ガス中の燃料成分の量が基準下限値未満になるときの前記出力電流を特定し、前記特性曲線において当該出力電流に対応する前記燃料利用率を不適当と判定する判定工程と、を有する点にある。
【0009】
上記特徴構成によれば、導出工程において、出力電流及びその出力電流の関数として特性曲線で定められる燃料利用率に基づいて、アノードで発電反応に用いられずに燃焼部へ供給される排出燃料ガス中の燃料成分の量を出力電流の関数として導出し、判定工程において、導出工程で導出される燃焼部へ供給される排出燃料ガス中の燃料成分の量が基準下限値未満になるときの出力電流を特定し、特性曲線においてその出力電流に対応する燃料利用率を不適当と判定する。ここで、導出工程で導出される燃焼部へ供給される排出燃料ガス中の燃料成分の量が少ないほど、燃焼部での燃焼状態が不安定になる可能性が高いと言える。つまり、この判定工程を行うことで、出力電流及びその出力電流の関数として特性曲線で定められる燃料利用率について、その燃料利用率の特性曲線を用いて燃料電池を運転した場合に燃焼部での燃焼状態が不安定になる可能性の高低が理論上定量的に判定される。その結果、出力電流と燃料利用率との関係が規定された特性曲線を使用して実際に燃料電池システムを運転しなくても、燃焼部での燃焼状態が不安定になる可能性を検証して、その特性曲線の中で燃焼部での燃焼状態が不安定になる可能性が高い電流範囲を特定できる。
従って、定量的な評価に基づいて行うことができる燃料利用率の設定方法を提供できる。
【0010】
本発明に係る燃料利用率の設定方法の別の特徴構成は、前記出力電流に関する電流域として、前記アノードに供給される前記燃料ガスの量が一定とされる低電流域と、前記低電流域より高い電流域で、前記出力電流の増大に対応して前記アノードに供給される前記燃料ガスの量が増加される高電流域が設定されており、
前記判定工程において前記排出燃料ガス中の燃料成分の量が前記基準下限値未満と判定された場合に、前記低電流域において設定される一定の燃料ガスの量を増大側に設定変更すること、及び、前記低電流域から前記高電流域に移行する移行電流値を低電流側に設定変更することの少なくとも何れか一方を行う点にある。
【0011】
上記特徴構成によれば、アノードに供給される燃料ガスに関して上記低電流域において設定される一定の燃料ガスの量を増大側に設定変更すると、それに伴って、排出燃料ガス中の燃料成分の量が上記低電流域において相対的に増大する。その結果、燃焼部での燃焼状態が安定する方向に変化させることができる。また、上記移行電流値を低電流側に設定変更すると、出力電流の増大に対応してアノードに供給される燃料ガスの量が増加される高電流域が低電流側に拡大するので、その高電流域が拡大された範囲では、出力電流の増大に対応してアノードに供給される燃料ガスの量が増加されるという関係に従って、アノードに供給される燃料ガスの量が相対的に増大される。その結果、燃焼部での燃焼状態が安定する方向に変化させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、燃料電池システムの構成を示す図である。本発明に係る燃料電池システムは、原燃料を改質して水素ガスを主成分とする燃料ガスを生成する改質器3と、改質器3で生成された燃料ガスが供給されるアノード24、及び、酸素ガスが供給されるカソード25を有する燃料電池21と、発電反応で用いられた後にアノード24から排出される排出燃料ガス中の燃料成分と発電反応に用いられた後にカソード25から排出される排出酸素ガスとをそれらの混合状態で燃焼させ、その燃焼熱によって改質器3を加熱する燃焼部22とを備える。本実施形態では、これら改質器3と燃料電池21と燃焼部22とは装置筐体1の内部に収容されている。更に、装置筐体1の内部には、蒸発器2も収容されている。
【0014】
燃料電池21は、改質器3で生成された水素ガスを主成分とする燃料ガスが供給されるアノード24と酸素ガス(空気)が供給されるカソード25とを備えた固体酸化物形のセル26を複数個電気的に直列接続した状態で備えたセルスタックにて構成されている。図示は省略するが、セル26は、アノード24とカソード25との間に固体電解質層を備えた固体酸化物形に構成される。アノード24には燃料ガスが通流するように構成され、カソード25には空気が通流するように構成される。燃料電池21は、複数のセル26がアノード24の燃料ガス排出口24e及びカソード25の空気排出口25eが上向きになる姿勢で横方向に並ぶ状態で、装置筐体1の内部に設置されている。尚、セル26の形状や構造は
図1に例示したものに限定されない。
【0015】
燃料電池21には、改質器3から燃料ガス供給路23を通して供給される燃料ガスを受け入れるガスマニホールド27が設けられる。複数のセル26は、ガスマニホールド27の上方側に上述のように並ぶ状態で配置され、ガスマニホールド27と複数のセル26におけるアノード24の下端のガス導入口(図示せず)とが連通接続されている。そして、ガスマニホールド27に供給された燃料ガスが、複数のセル26夫々のアノード24に対して下端のガス導入口から供給され、各アノード24に対して下方側から上方側に通流して発電反応に供される。発電反応に供された後の燃料ガスは、上端の燃料ガス排出口24eから排出燃料ガスとして排出される。
【0016】
装置筐体1には、空気導入口28が設けられ、その空気導入口28には空気供給路29が接続される。ブロア30の作動により、空気が空気供給路29を通して装置筐体1内に供給される。複数のセル26夫々におけるカソード25の下端部近傍には、装置筐体1内とカソード25とを連通する空気供給孔(図示せず)が設けられている。複数のセル26夫々のカソード25には装置筐体1内の空気がこの空気供給孔を通して供給され、各カソード25に対して下方側から上方側に通流して発電反応に供される。発電反応に供された後の空気は、上端の空気排出口25eから排出酸素ガスとして排出される。
【0017】
燃料電池21の上方には、各セル26のアノード24の燃料ガス排出口24eから排出される排出燃料ガスとカソード25の空気排出口25eから排出される排出酸素ガスとを燃焼させる燃焼空間が形成される。つまり、燃料電池21により、燃焼部22が実現される。加えて、後述するように、一体で構成された蒸発器2と改質器3とが、燃焼部22として機能する燃料電池21の上方の燃焼空間に隣接して設けられている。
【0018】
装置筐体1には、燃焼部22にて発生した燃焼排ガスを外部に排出させる排出部31が下面部等に形成されている。そして、装置筐体1内には、排出部31から外部に排出される燃焼排ガス中の一酸化炭素ガスを除去する燃焼触媒部32(例えば、白金系触媒)が設けられている。
【0019】
本実施形態において、燃料電池21のアノード24に供給される燃料ガスを生成する燃料改質装置Rは、改質器3と、蒸発器2と、燃料電池21により実現される燃焼部22とで構成される。
燃焼部22は、可燃性ガスを燃焼して燃焼熱を発生させる。具体的には、上述したように、燃焼部22は、各セル26のアノード24の燃料ガス排出口24eから排出される排出燃料ガス中の燃料成分(主に水素ガス)とカソード25の空気排出口25eから排出される排出酸素ガスとを燃焼させて燃焼熱を発生させる。
【0020】
蒸発器2の内部空間には、原燃料ガスが供給される原燃料ガス供給管7と、改質水が供給される改質水供給管6とが、蒸発器2の外部から引き込まれる。そして、蒸発器2の内部に、原燃料ガス及び改質水が供給される。蒸発器2に対する原燃料ガスの供給量は、原燃料ガス供給管7の途中に設けられる原燃料流量調節弁4によって調節可能である。蒸発器2に対する改質水の供給量は、改質水供給管6の途中に設けられる改質水ポンプ9によって調節可能である。
【0021】
そして、蒸発器2は、供給される改質水を、燃焼部22から伝えられる燃焼熱を用いて加熱して蒸発させる。更に、蒸発器2では、改質水の蒸発によって生成された水蒸気と、原燃料ガスとが混合される。
改質器3は、供給される原燃料ガスを蒸発器2にて生成された水蒸気を用いて改質処理する。具体的には、改質器3の内部には改質触媒が充填されており、この改質触媒の触媒作用によって原燃料ガスが改質処理される。
【0022】
本発明に係る燃料電池システムは、燃料電池21の出力電流を調節する出力調節手段Lと、改質器3からアノード24への燃料ガスの供給量を調節する燃料ガス供給量調節手段Fと、出力調節手段L及び燃料ガス供給量調節手段Fの動作を制御する運転制御手段Cとを備える。燃料ガス供給量調節手段Fは、上述した原燃料流量調節弁4及び改質水ポンプ9によって実現できる。つまり、改質器3に供給される原燃料ガスの量及び水蒸気の量を調節することで、改質器3での燃料ガスの生成量、即ち、改質器3からアノード24への燃料ガスの供給量が調節される。燃料電池21の出力電流を調節する出力調節手段Lは、例えばインバータ装置などの電力変換装置である。そして、この出力調節手段Lを介して、燃料電池21の発電電力が様々な電力消費装置に供給される。
【0023】
運転制御手段Cは、燃料電池21が出力すべき電流(出力電流)を決定し、その出力電流を出力調節手段Lに伝達する。そして、出力調節手段Lが、燃料電池21の出力電流を調節することで、燃料電池21ではその出力電流に応じた発電反応(即ち、出力電流に応じた燃料ガスの消費)が行われることとなる。尚、燃料電池21の出力電流が所望の値になるためには、燃料電池21のアノード24に対して適切な量の燃料ガスが供給されていること及びカソード25に対して適切な量の酸素ガスが供給されていることが必要である。そのため、運転制御手段Cは、原燃料流量調節弁4及び改質水ポンプ9の動作を制御して改質器3へ供給される原燃料の量及び水蒸気の量を調節することで、改質器3で生成される燃料ガスの量、即ち、改質器3から燃料電池21のアノード24に供給される燃料ガスの量を調節する。また、運転制御手段Cは、ブロア30の動作を制御して、燃料電池21のカソード25に供給される酸素ガスの量を調節する。
【0024】
図2は、燃料電池の出力電流Iと、燃料利用率Uf及びアノードへの燃料ガスの供給量Qf及びアノードからの燃料成分の排出量Qfuの夫々との関係を示すグラフである。具体的には、燃料利用率Ufを実線(太線)で示し、燃料ガスの供給量Qfを破線(太線)で示し、燃料成分の排出量Qfuを一点鎖線(太線)で示す。
【0025】
燃料利用率Uf(I)は、アノード24に供給される燃料ガスの量(即ち、改質器3で生成される燃料ガスの量に相当)に対する、アノード24で発電反応に用いられる燃料ガスの量の比率である。そして、運転制御手段Cは、燃料利用率の目標値を出力電流の関数として定めている
図2の特性曲線に従って、出力調節手段Lの動作を制御して出力電流を調節し及び燃料ガス供給量調節手段Fの動作を制御して改質器3での燃料ガスの生成量、即ち、改質器3からアノード24への燃料ガスの供給量を調節するように構成されている。
【0026】
図2の特性曲線では、出力電流Iが決まると、その出力電流Iを燃料電池21で発生させるのに要する燃料ガスの量が決まる。つまり、燃料電池21のアノード24で発電反応に用いられる燃料ガスの量が決まる。また、出力電流Iが決まると、そのときの燃料利用率Uf(I)が決まる。その結果、燃料電池21のアノード24で発電反応に用いられる燃料ガスの量と、燃料利用率とから、燃料電池21のアノード24で発電反応に用いられずに排出される排出燃料ガス中の燃料成分の量Qfu(I)も決まる。従って、出力電流Iに対して、
図2の特性曲線で決定される燃料利用率Uf(I)を満たすための、燃料電池21のアノード24に供給する必要がある燃料ガスの量Qf(I)(発電反応に用いられる燃料ガスの量、及び、発電反応に用いられずに排出される排出燃料ガス中の燃料成分の量)が決まる。そして、その燃料電池21のアノード24に供給する必要がある燃料ガスの量は、改質器3で生成するべき燃料ガスの量であるので、その燃料ガスを生成するために必要な原燃料ガスの量及び水蒸気の量が決まる。その結果、運転制御手段Cは、燃料ガス供給量調節手段Fとしての原燃料流量調節弁4及び改質水ポンプ9に対して、改質器3へ供給する原燃料ガスの量及び水蒸気の量を調節するように指令する。
【0027】
以上のように、出力電流Iの関数としての燃料利用率Uf(I)を
図2の実線(太線)のように設定すると、
図2の鎖線(太線)のような燃料電池21のアノード24に供給する燃料ガスの量Qf(I)、及び、
図2の一点鎖線(太線)のような燃料電池21のアノード24で発電反応に用いられずに排出される燃料成分の量Qfu(I)が決まる。ここで、
図2の一点鎖線(太線)で示す、燃料電池21のアノード24で発電反応に用いられない燃料成分の量Qfu(I)は、燃焼部22で燃焼される燃料成分の量に対応する。
【0028】
図3は、後述する設定変更の前後での、燃料電池21の出力電流と、アノード24への燃料ガスの供給量Qf及びアノード24からの燃料成分の排出量Qfuの夫々との関係を示すグラフである。尚、設定変更前での、燃料電池21の出力電流と、アノード24への燃料ガスの供給量Qf及びアノード24からの燃料成分の排出量Qfuの夫々との関係を示すグラフは、
図2に太線で示したグラフと同じである。燃料電池21のアノード24に供給する燃料ガスの量Qfについて、設定変更前の曲線は鎖線(太線)で示し、設定変更後の曲線は鎖線(細線)で示す。燃料電池21のアノード24で発電反応に用いられない燃料成分の量Qfuについて、設定変更前の曲線は一点鎖線(太線)で示し、設定変更後の曲線は一点鎖線(細線)で示す。
【0029】
図3に鎖線で示す燃料電池21のアノード24に供給する燃料ガスの量Qfについて補足説明すると、本実施形態では、出力電流Iに関する電流域として、燃料ガスの量Qf(I)が出力電流に関わらずに一定とされる低電流域と、低電流域より高い電流域で、出力電流Iの増大に対応してアノード24に供給される燃料ガスの量Qf(I)が増加される高電流域が設定されている。
【0030】
上述したように、アノード24からの燃料成分の排出量Qfuが少なくなると、即ち、燃焼部22への燃料成分の供給量が少なくなると、燃焼部22での燃焼負荷(即ち、燃焼部22に供給されて燃焼される燃料成分の量)が小さくなって燃焼状態が不安定になり得る。そこで、燃焼部22での燃焼状態が不安定にならない程度の燃料成分の排出量Qfuを規定する基準値として、基準下限値を設けている。つまり、燃料成分の排出量Qfuが基準下限値未満になると、燃焼部22での燃焼状態が不安定になる可能性が高くなる。
図3に示した例では、一点鎖線(太線)で示す燃料成分の排出量Qfu(変更前)は、出力電流I1の近傍で基準下限値未満になっている。
【0031】
そして、燃料成分の排出量Qfu(変更前)が基準下限値未満になっている場合、その燃料成分の排出量Qfuが基準下限値以上になるように上記燃料利用率Ufを設定変更する必要がある。そこで、本発明に係る燃料利用率の設定方法では、出力電流及びその出力電流の関数として特性曲線で定められる燃料利用率Uf(I)に基づいて、アノード24で発電反応に用いられずに燃焼部22へ供給される排出燃料ガス中の燃料成分の量Qfu(I)を出力電流の関数として導出する導出工程と、その導出工程で導出される燃焼部22へ供給される排出燃料ガス中の燃料成分の量が基準下限値未満になるときの出力電流を特定し、特性曲線においてその出力電流に対応する燃料利用率を不適当と判定する判定工程とを行う。
【0032】
つまり、この判定工程を行うことで、出力電流及びその出力電流の関数として特性曲線で定められる燃料利用率について、その燃料利用率の特性曲線を用いて燃料電池21を運転した場合に燃焼部22での燃焼状態が不安定になる可能性の高低が理論上定量的に判定される。その結果、出力電流と燃料利用率との関係が規定された特性曲線を使用して実際に燃料電池システムを運転しなくても、燃焼部22での燃焼状態が不安定になる可能性を検証して、その特性曲線の中で燃焼部22での燃焼状態が不安定になる可能性が高い電流範囲を特定できる。
【0033】
そして、判定工程において排出燃料ガス中の燃料成分の量Qfu(変更前)が基準下限値未満と判定された場合に、アノード24に供給される燃料ガスの量の曲線Qf(I)の低電流域において設定される一定の燃料ガスの量を増大側に設定変更すること、及び、低電流域から高電流域に移行する移行電流値I1を低電流側に設定変更することの少なくとも何れか一方を行う。
以下、
図3を参照して、アノード24に供給される燃料ガスの量の曲線Qf(I)の低電流域において設定される一定の燃料ガスの量を増大側に設定変更することについて説明し、
図4を参照して、アノード24に供給される燃料ガスの量の曲線Qf(I)の低電流域から高電流域に移行する移行電流値を低電流側に設定変更することについて各別に説明するが、両方の設定変更を併せて行ってもよい。
【0034】
図3では、アノード24に供給される燃料ガスの量の曲線Qf(I)の低電流域において設定される一定の燃料ガスの量Qfの曲線(鎖線(太線))を増大側(鎖線(細線))に設定変更している、即ち、低電流域の曲線を増大側に平行移動している。また、この設定変更を行うと、低電流域の曲線と高電流域の曲線との接続点の電流値、即ち、低電流域から高電流域に移行する移行電流値I1は、高電流側の電流I2に変更される。つまり、
図3に示す例では、低電流域において設定される一定の燃料ガスの量を増大側に設定変更し、その結果として、低電流域から高電流域に移行する移行電流値I1を高電流側の電流I2に変化させている。このような設定変更を行うことで、
図3中に一点鎖線(細線)で示すように、排出燃料ガス中の燃料成分の量Qfu(変更後)が電流I2以下の低電流域において相対的に増大する。具体的には、
図3に示す例では、アノード24に供給される燃料ガスの量の曲線Qf(I)の低電流域において設定される一定の燃料ガスの量を増大側に設定変更すること行った結果として得られるガス排出量Qfu(変更後)の曲線は、出力電流I2の近傍で極小値をとるが、その極小値は基準下限値以上となっている。その結果、燃焼部22での燃焼状態が安定する方向に変化させることができる。
【0035】
図4は、アノード24に供給される燃料ガスの量の曲線Qf(I)の低電流域から高電流域に移行する移行電流値I1を低電流側の電流I3に設定変更した場合の例である。つまり、アノード24に供給される燃料ガスの量Qfの曲線に関して、高電流域の曲線(鎖線(太線))を低電流側(鎖線(細線))に平行移動している。このような設定変更を行うことで、出力電流の増大に対応してアノード24に供給される燃料ガスの量Qfが増加される高電流域が低電流側に拡大するので、その高電流域が拡大された範囲(
図4では電流I3と電流I1との間の範囲)では、出力電流の増大に対応してアノード24に供給される燃料ガスの量が増加されるという関係に従って、アノード24に供給される燃料ガスが相対的に増大される。つまり、
図4に示す例では、低電流域から高電流域に移行する移行電流値I1を低電流側の電流I3に設定変更し、その結果として、高電流域において設定される燃料ガスの量の曲線を増大側に変化させている。尚、
図4では排出燃料ガス中の燃料成分の量Qfuの曲線について示していないが、高電流域が拡大された範囲(
図4では電流I3と電流I1との間の範囲)でアノード24に供給される燃料ガスが相対的に増大されると、それに伴って、排出燃料ガス中の燃料成分の量Qfuも増大し、その結果、燃焼部22での燃焼状態が安定する方向に変化する。
【0036】
図5は、
図3で示した設定変更を行う前後での、出力電流と燃料利用率との関係を示すグラフである。
図5に示す変更後の特性曲線、即ち、出力電流とその出力電流の関数としての燃料利用率との関係を規定する特性曲線は、
図3に示した変更後の、燃料電池21のアノード24に供給する燃料ガスの量Qf、又は、燃料電池21のアノード24からの排出燃料ガス中の燃料成分の量Qfuから逆算して導出したものである。従って、運転制御手段Cが、
図5に示す変更後の特性曲線に従って、出力調節手段Lの動作を制御して出力電流を調節し及び燃料ガス供給量調節手段Fの動作を制御して改質器3での燃料ガスの生成量、即ち、改質器3からアノード24への燃料ガスの供給量を調節した場合、燃料電池21のアノード24からの排出燃料ガス中の燃料成分の量は
図3の一点鎖線(細線)に示す曲線となる。その結果、排出燃料ガス中の燃料成分の量が基準下限値以上となるため、燃焼部での燃焼状態が安定することとなる。
【0037】
以上のように、出力電流と燃料利用率との関係が規定された特性曲線を使用して実際に燃料電池21を運転し、その際の失火挙動を確認するといった手順を経なくても、燃料利用率に関する特性曲線を再設定することができる。
【0038】
<別実施形態>
<1>
上記実施形態では、燃料電池システムの構成について具体例を挙げて説明したが、その構成は適宜変更可能である。例えば、原燃料ガス供給管7の途中に、原燃料ガス(例えば、都市ガス等)に含まれる硫黄化合物を取り除くための脱硫器等を設けてもよい。
また、燃料電池21及び燃料改質装置Rが装置筐体1の内部に収容し、その装置筐体1の内部にガスや水などを取り込む構成について図示したが、それらの構成は例示目的で記載したものであり適宜変更可能である。
【0039】
<2>
上記実施形態では、出力電流の関数として定められる燃料利用率の曲線を
図2及び
図5に例示したが、その曲線の特性は適宜変更可能である。例えば、
図2及び
図5では、出力電流に対して燃料利用率が線形に変化する曲線を例示しているが、燃料利用率が出力電流に対して非線形に変化するように(例えば、燃料利用率が出力電流の二次関数等で変化するように)改変してもよい。