(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
融点の異なる2種類のポリエステルにより構成され、前記ポリエステルのうち高融点であるポリエステルが芯部に、前記ポリエステルのうち低融点であるポリエステルが鞘部に配された芯鞘型複合繊維からなる糸条により編成されてなる経編地であって、
前記経編地が、前記芯鞘型複合繊維からなる糸条が1コースごとに1ウェール以上4ウェール以下の筬振り幅で左右交互に編成されてなる編組織からなり、
前記経編地のコース密度(コース数/2.54cm)及びウェール密度(ウェール数/2.54cm)の積で表される経編地密度(/(2.54cm)2)が1200(/(2.54cm)2)以上であり、
前記経編地の厚みが1mm以下であり、
前記経編地のコース方向及びウェール方向の剛軟度がいずれも7cm以上であることを特徴とする経編地。
融点の異なる2種類のポリエステルにより構成され、前記ポリエステルのうち高融点であるポリエステルが芯部に、前記ポリエステルのうち低融点であるポリエステルが鞘部に配された芯鞘型複合繊維からなる糸条と、単糸繊度が2.0dtex以上であり、かつ、融点が前記低融点であるポリエステルより30℃以上高い非熱融着性ポリエステル繊維からなる糸条とにより編成されてなる経編地であって、
前記経編地が、前記芯鞘型複合繊維からなる糸条が1コースごとに2ウェール以上4ウェール以下の筬振り幅で左右交互に編成されてなる編組織及び前記ポリエステル繊維からなる糸条が1コースごとに1ウェール以上であって前記芯鞘型複合繊維の筬振り幅よりも1ウェール以上少ない筬振り幅で左右交互に編成されてなる編組織からなり、
前記経編地のコース密度(コース数/2.54cm)及びウェール密度(ウェール数/2.54cm)の積で表される経編地密度(/(2.54cm)2)が1200(/(2.54cm)2)以上であり、
前記経編地の厚みが1mm以下であり、
前記経編地のウェール方向及びコース方向の剛軟度がいずれも7cm以上であることを特徴とする経編地。
前記高融点であるポリエステルが、アルキレンテレフタレート単位を主体とする融点が220℃以上のポリエステルであり、前記低融点であるポリエステルが、融点が前記高融点であるポリエステルより30℃以上低いポリエステルであって、
前記芯鞘型複合繊維からなる糸条を経編地全体に対し40質量%以上含むことを特徴とする請求項1または2に記載の経編地。
前記低融点であるポリエステルが、テレフタル酸成分及びエチレングリコール成分からなり、1,4−ブタンジオール成分、脂肪族ラクトン成分及びアジピン酸成分の少なくとも一成分を含む共重合ポリエステルであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の経編地。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0017】
本発明の経編地は、融点の異なる2種類のポリエステルにより構成され、該ポリエステルのうち高融点であるポリエステル(以下、ポリエステルAと略することがある。)が芯部に、前記ポリエステルのうち低融点であるポリエステル(以下、ポリエステルBと略することがある。)が鞘部に配された芯鞘型複合繊維からなる糸条(以下、複合繊維糸条と略することがある。)により編成される。
【0018】
本発明において、ポリエステルとは、分子鎖中にエステル結合を有するポリマーであって、ポリエチレンテレフタレートに代表されるホモポリマーのほか、コポリマーまたはブレンドポリマー等も包含する。
【0019】
複合繊維糸条により編成された経編地をポリエステルBの融点以上前記ポリエステルAの融点以下の温度で熱処理したとき、ポリエステルBのみが融解し、該経編地を構成する複合繊維糸条同士、または該経編地を構成する複合繊維糸条及び複合繊維糸条とともに交編された他の繊維が熱融着されるので、本発明の経編地は剛性に優れたものとなる。
【0020】
本発明において、ポリエステルAはアルキレンテレフタレート単位を主体とする融点が220℃以上のポリエステルであることが好ましい。
【0021】
ポリエステルAの融点を220℃以上とすることにより、複合繊維糸条を安定して製糸することが容易となり、本発明の経編地は熱処理したときの寸法変化が小さいものとなるので好ましい。
【0022】
アルキレンテレフタレート単位を主体とするポリエステルとして、例えばエチレンテレフタレート単位、ブチレンテレフタレート単位またはトリメチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステルが挙げられる。ポリエステルAとして、アルキレンテレフタレート単位を主体とするポリエステルを単独成分とすることのほか、他の成分をブレンドまたは共重合することができる。ポリエステルAをエチレンテレフタレート単位が全繰り返し単位中95モル%以上であるポリエチレンテレフタレートとした場合は、本発明の経編地が熱安定性に優れたものとなるので好ましい。
【0023】
前記アルキレンテレフタレート単位を主体とするポリエステルにブレンドまたは共重合することのできる他の成分として、例えばイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、無水フタル酸、ナフタレンギカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン2酸、4−ヒドロキシ安息香酸、e−カプロラクトン、燐酸等の酸成分、グリセリン、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリメチルプロパン、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトール、2,2−ビス{4−(β−ヒドロキシ)フェニル}プロパンのエチレンオキシド付加体等が挙げられる。
【0024】
本発明において、ポリエステルBは融点がポリエステルAより30℃以上低いポリエステルであることが好ましい。
【0025】
ポリエステルBとポリエステルAとの融点の差を30℃以上とすることにより、経編地の熱処理温度を低くすることができ、熱処理による経編地の強度低下及び熱収縮が起こりにくくなる。
【0026】
本発明において、ポリエステルBは、テレフタル酸成分及びエチレングリコール成分からなり、1,4−ブタンジオール成分、脂肪族ラクトン成分及びアジピン酸成分の少なくとも一成分を含む共重合ポリエステルであることが好ましい。
【0027】
ポリエステルBが上記成分であると、芯鞘型複合繊維の結晶性が高くなり、結晶化速度が速くなる。これにより、経編地を構成する複合繊維糸条同士、または、経編地を構成する複合繊維糸条及び複合繊維糸条とともに交編された他の繊維が均一に接着され、経編地の剛性がより優れたものとなるので好ましい。
【0028】
ポリエステルBにおいて1,4−ブタンジオール成分を共重合する場合、1,4−ブタンジオール成分の共重合量は全グリコール成分に対して40〜60モル%とすることが好ましい。該共重合量が40モル%未満または60モル%を超えると、ポリエステルBの融点が高いものとなりやすい。
【0029】
ポリエステルBにおいて脂肪族ラクトン成分を共重合する場合、脂肪族ラクトン成分の共重合量は全酸成分に対して20モル%以下とすることが好ましく、10〜20モル%とするのがより好ましい。該共重合量を10モル%以上とすることにより、ポリエステルBの融点を後述する熱融着性繊維として好ましい温度(130〜200℃)とすることが容易となる。一方、該共重合量を20モル%以下とすることにより、ポリエステルBの結晶性が高くなり、複合繊維糸条は紡糸時に単糸密着が発生しにくくなる。
【0030】
前記脂肪族ラクトン成分としては、ポリエステルBの結晶性を良好なものとしつつ、ポリエステルBの融点を後述する熱融着性繊維として好ましい温度(130〜200℃)とする観点から、炭素数4〜11のラクトンが好ましく、特に好ましいラクトンとしては、ε−カプロラクトン(ε−CL)が挙げられる。
【0031】
前記ポリエステルBにおいて、アジピン酸成分を共重合する場合、アジピン酸成分の共重合量は全酸成分に対して20モル%以下とすることが好ましく、10〜20モル%とするのがより好ましい。該共重合量を10モル%以上とすることにより、ポリエステルBの融点を後述する熱融着性繊維として好ましい温度(130〜200℃)とすることが容易となる。一方、該共重合量を20モル%以下とすることにより、ポリエステルBの結晶性が高くなり、複合繊維糸条は紡糸時に単糸密着が発生しにくくなる。
【0032】
前記ポリエステルBが、融点130〜200℃、ガラス転移点20〜80℃、結晶開始温度90〜130℃のポリエステルであると、複合繊維糸条は熱融着性繊維としての機能性において好ましいものとなりやすい。
【0033】
ポリエステルBの融点が130℃以上であることにより、本発明の経編地は高温雰囲気下での耐熱性に優れたものとなる。一方、該融点が200℃以下であることにより、熱処理温度を比較的低温とすることができ経済的に好ましく、また、熱処理による経編地の強度低下及び熱収縮が生じにくくなる。
【0034】
ポリエステルBのガラス転移点が20℃以上であることにより、複合繊維糸条は溶融紡糸時に単糸間密着が発生しにくくなる。一方、該ガラス転移点が80℃以下であることにより、複合繊維糸条は、比較的低温で延伸熱処理することができ、繊維構造にムラが生じにくくなり延伸性が優れたものとなる。
【0035】
ポリエステルBの結晶化開始温度が90℃以上であることにより、複合繊維糸条は延伸斑が生じにくく、熱処理時に安定な結晶構造を再構築しやすくなり、十分な強度を有する経編地を得やすくなる。一方、該温度が130℃以下であることにより、ポリエステルBの融点が比較的低いものとなり、複合繊維糸条は熱融着性繊維として好適なものとなる。
【0036】
複合繊維糸条を構成する芯鞘型複合繊維の芯鞘質量比率(芯部/鞘部)は、4/6〜8/2の範囲であることが好ましい。該質量比率が4/6以上であることにより、経編地は熱処理後の強度が優れたものとなりやすい。また、後述する該複合繊維糸条の乾熱寸法変化率が低いものとなりやすく、熱処理後の経編地の厚みを薄いものとしやすくなる。また、該質量比率が8/2以下であることにより、複合繊維糸条は熱融着性に優れたものとなりやすく、熱処理を施した経編地は十分な剛性を得やすくなる。
【0037】
本発明において、芯鞘型複合繊維の複合形状は、本発明の効果を阻害しなければ特に限定されるものではなく、同心型、偏心型のいずれであってもよい
【0038】
本発明において、ポリエステルA及びポリエステルBは、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、艶消し剤、着色剤、滑剤、結晶核剤等の添加剤を含有してもよい。
【0039】
本発明において、複合繊維糸条とは、1本の連続した芯鞘型複合繊維からなるモノフィラメント糸、複数の連続した芯鞘型複合繊維からなるマルチフィラメント糸、短繊維化された芯鞘型複合繊維からなる紡績糸等が挙げられる。複合繊維糸条がマルチフィラメント糸または紡績糸である場合は、経編地に熱処理を施した際、該経編地を構成するマルチフィラメント糸または紡績糸を構成する芯鞘型複合繊維同士が熱融着され、該マルチフィラメント糸または該紡績糸自体が剛性を有することも相まって経編地の剛性が優れたものとなるので好ましい。
【0040】
複合繊維糸条の総繊度は、経編地の厚みが所望の値になるように編成できるものであれば特に限定されるものではないが、熱処理した際の経編地の剛性を十分に得るために200dtex以下とすることが好ましく、30〜150dtexとすることがより好ましく、50〜150dtexとすることがさらに好ましい。芯鞘型複合繊維の繊度(単糸繊度)も経編地の厚みが所望の値になるように編成できるものであれば特に限定されるものではない。複合繊維糸条は仮撚り加工や実撚等が施された加工糸としてもよい。
【0041】
複合繊維糸条は、熱処理後の寸法安定性が良好なものが好ましく、具体的には、以下に示す乾熱寸法変化率が20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましい。複合繊維糸条の乾熱寸法変化率が20%以下であることにより、熱処理によって複合繊維糸条が収縮しにくく、経編地の厚みが増加しにくくなる。
【0042】
乾熱寸法変化率:JIS L 1013:2010 8.13 B法の乾熱寸法変化率の測定方法に準じ、乾熱温度をポリエステルBの融点+10℃に設定し、本発明の複合繊維糸条を無荷重にて15分間、乾熱処理を行い、処理前後で50mg/dtexの荷重下で各糸長を測定し、下記式(I)にて算出するものである。
S:乾熱寸法変化率(%)={(MS−GS)/MS}×100 ・・・(I)
GS:乾熱処理後の長さ(cm)、MS:乾熱処理前の長さ(cm)
【0043】
複合繊維糸条の熱処理後の強度保持率が高いものであると、経編地の強度が高いものとなるので好ましい。具体的には、以下に示す強度保持率が60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。
【0044】
強度保持率:乾熱温度をポリエステルBの融点+10℃に設定し、複合繊維糸条を無荷重にて15分間、乾熱処理を行い、処理前後で乾熱処理前後の強度をJIS L−1013:2010 引張強さ 定速伸長形に準じて測定し、下記式(II)にて算出するものである。
K:強度保持率(%)=(G/M)×100 ・・・(II)
G:乾熱処理後の強度(cN/dtex)、M:乾熱処理前の強度(cN/dtex)
【0045】
前記強度保持率が60%以上の場合、得られた経編地は絶対的な強度が優れたものとなり、特に産業資材用途や副資材用用途、フィルター等の用途へ用いる場合、耐久性に優れたものとなりやすい。
【0046】
本発明の経編地は、複合繊維糸条とともに、単糸繊度が2.0dtex以上であり、かつ、融点が前記ポリエステルBより30℃以上高い非熱融着性ポリエステル繊維からなる糸条(以下、非熱融着性ポリエステル繊維糸条と略することがある。)により編成されたものとすることができる。
【0047】
複合繊維糸条と非熱融着性ポリエステル繊維糸条とを交編した場合、複合繊維糸条のみで編成した場合と比較してコスト面で有利となる。非熱融着性ポリエステル繊維糸条の単糸繊度が2dtex未満であると、該非熱融着性ポリエステル繊維糸条と複合繊維糸条とを交編し熱処理した経編地は、所望の剛性を得ることが困難となる場合がある。また、該単糸繊度が50dtex以下であれば、経編地の厚みを薄いものとしやすく好ましい。
【0048】
本発明において、非熱融着性ポリエステル繊維は、好ましくは上記単糸繊度が2dtex以上であることに加え、融点が複合繊維糸条を構成する芯鞘型複合繊維のポリエステルBの融点より好ましくは30℃以上高いものであれば特に限定されるものではない。非熱融着性ポリエステル繊維の断面形状も特に限定されるものではない。非熱融着性ポリエステル繊維が、断面形状が芯鞘型やサイドバイサイド型となる場合等、2種類以上のポリエステル成分からなる場合は、2種類以上あるポリエステル成分のうち最も融点の低い成分の融点が、複合繊維糸条を構成する芯鞘型複合繊維のポリエステルBの融点より30℃以上高いものであればよい。
【0049】
非熱融着性ポリエステル繊維糸条を構成するポリエステルとしては特に限定されず、ホモポリマー、コポリマー及びブレンドポリマーとしてもよい。エチレンテレフタレート単位が全繰り返し単位中95モル%以上であるPETとした場合は、経編地が熱安定性に優れたものとなるので好ましい。
【0050】
非熱融着性ポリエステル繊維糸条の形態としては、マルチフィラメント、モノフィラメント、紡績糸等特に限定されるものではない。また、仮撚加工、他の糸条とのインタレース混繊等任意の加工をすることができる。
【0051】
本発明の経編地は、複合繊維糸条が1コースごとに1ウェール以上4ウェール以下の筬振り幅で左右交互に編成されてなる編組織(以下、複合繊維糸条からなる編組織(1)と略することがある。)からなる。
【0052】
本発明の経編地は、複合繊維糸条を上記編組織に編成し熱処理することにより、経編地のコース方向及びウェール方向のいずれにおいても剛性に優れたものとなる。
【0053】
本発明において、前記編組織が1コースごとに0ウェールの筬振り幅で編成された編組織、すなわち鎖編組織等である場合、経編地はウェール方向の剛性に劣るものとなる。また、前記編組織が1コースごとに4ウェールを超える筬振り幅で編成された編組織である場合、経編地は厚みを所望の値とすることが困難となる。
【0054】
また、前記編組織が1コースごとに左右交互に編成されたものでない場合、例えばシングルアトラス編組織等の場合、経編地はコース方向の剛性に劣るものとなる。
【0055】
複合繊維糸条からなる編組織(1)は、該編組織を編成する複合繊維糸条によってループが作られる編組織のほか、該編組織を編成する複合繊維糸条をインレイとする編組織、又はこれらを組み合わせた編組織とすることができる。ループが作られる編組織とすれば、経編地は剛性がより優れたものとなる。該ループが閉じ目であると、経編地は剛性が特に優れたものとなる。
【0056】
上記ループが作られる編組織として、例えばシングルデンビ編、シングルコード編、シングルサテン編、シングルベルベット編が挙げられる。
【0057】
本発明の経編地は、上記ループが作られる編組織を複数組み合わせたものとしてもよく、上記ループが作られる編組織に鎖編組織、シングルアトラス編組織、インレイ等、他の編組織を組み合わせたものとしてもよい。組み合わせることにより得られる編組織としては、例えばダブルデンビ編、ダブルコード編、ハーフトリコット編、逆ハーフ、クイーンズコード編、サテントリコット編、ベルベット編等が挙げられる。
【0058】
また、複合繊維糸条からなる編組織(1)を編成するに際し、該編組織を編成する複合繊維糸条を、例えば編針に対し1本おきに経糸通しをおこなうハーフセットとすることもできる。経編地の剛性の観点からは、該複合繊維糸条を、編針の数と見合う経糸通しをおこなうフルセットとすることが好ましい。
【0059】
本発明の経編地は、本発明の目的の範囲内において、複合繊維糸条以外の他の繊維と交編してもよい。該他の繊維として特に限定されないが、前述した非熱融着性ポリエステル繊維糸条であることが好ましい。
【0060】
他の繊維と交編する場合、本発明の経編地は、複合繊維糸条を経編地全体に対し40質量%以上含むことが好ましく、50質量%以上であるとより好ましい。複合繊維糸条の混用率が40質量%以上の場合、経編地は剛性が優れたものとなりやすい。
【0061】
本発明の経編地は、複合繊維糸条が1コースごとに2ウェール以上4ウェール以下の筬振り幅で左右交互に編成されてなる編組織(以下、複合繊維糸条からなる編組織(2)と略することがある。)及び前記非熱融着性ポリエステル繊維糸条が1コースごとに1ウェール以上であって前記複合繊維糸条の筬振り幅よりも1ウェール以上少ない筬振り幅で左右交互に編成されてなる編組織(以下、非熱融着性ポリエステル繊維糸条からなる編組織と略することがある。)からなるものとすることができる。
【0062】
上記編組織とすることにより、経編地は薄い厚みとしつつ所望の剛性を得ることができると同時に、コスト面でも有利となる。
【0063】
非熱融着性ポリエステル繊維糸条からなる編組織が、1コースごとに0ウェールの筬振り幅で編成された編組織、すなわち鎖編組織等である場合、経編地は剛性に劣るものとなりやすい。また、非熱融着性ポリエステル繊維糸条からなる編組織における筬振り幅が、複合繊維糸条からなる編組織(2)における筬振り幅よりも1ウェール以上少ないものとすることにより、経編地は剛性が優れたものとしつつ、厚みを薄いものとすることができる。
【0064】
従って、複合繊維糸条からなる編組織(2)は、上記非熱融着性ポリエステル繊維糸条からなる編組織と組み合わせる場合、1コースごとに少なくとも2ウェール以上の筬振り幅で左右交互に編成されてなる編組織とすることが好ましい。また、前述のように、複合繊維糸条からなる編組織(2)が、1コースごとに4コースを超える筬振り幅で編成された編組織の場合、経編地の厚みを薄いものとすることが困難となる。
【0065】
非熱融着性ポリエステル繊維糸条からなる編組織は、該編組織を編成する非熱融着性ポリエステル繊維糸条によってループが作られる編組織のほか、該編組織を編成するポリエステル繊維糸条をインレイとする編組織、又はこれらを組み合わせた編組織とすることができる。また、該編組織はハーフセットとすることもできる。
【0066】
本発明の経編地は、該経編地を編成する際の筬枚数については、2枚から4枚筬とすることが好ましい。該筬枚数が増えれば増えるほど、得られる経編地は剛性が増し強固のものとなるが、一方で該経編地の厚みも増加する。本発明では厚みが薄いものでありながら、十分な剛性を有する経編地を得ることを目的としており、厚みが薄い経編地を得るためには、2枚筬から3枚筬が最も好ましい範囲である。
【0067】
本発明の経編地は、前記経編地のコース密度(コース数/2.54cm)及びウェール密度(ウェール数/2.54cm)の積で表される経編地密度(/(2.54cm)
2)が1200(/(2.54cm)
2)以上であることが必要であり、1500(/(2.54cm)
2)以上であることが好ましい。該経編地密度が、1200(/(2.54cm)
2)未満であると、熱処理後の経編地の剛性が低くなり、少しの力で折れ曲がってしまう。
【0068】
ただし、本発明において、上記コース密度及びウェール密度は、JIS L 1096:2010 8.6.2 編物の密度に従って、2.54cmの区間において算出するものである。
【0069】
本発明の経編地は、該経編地の厚みが1mm以下である必要があり、0.7mm以下であることが好ましく、0.5mm以下であることがより好ましい。該厚みを1mm以下とすることにより、フィルター、衣料等薄い厚みの経編地が要求される用途に用いることができる。厚みを所望の値とすることは、所望の剛性を得ることのできる範囲内で、複合繊維糸条の乾熱寸法変化率、複合繊維糸条及び/又は非熱融着性ポリエステル繊維糸条の繊度、複合繊維糸条及び/又は非熱融着性ポリエステル繊維糸条の筬振り幅、筬枚数、編組織、経編地密度、熱処理条件等を適切なものとすることにより可能となる。
【0070】
本発明の経編地は、前記経編地のウェール方向及びコース方向の剛軟度がいずれも7cm以上であることが必要であり、10cm以上であることが好ましい。
【0071】
本発明において、剛軟度はJIS L 1096:2010 A法(45°カンチレバー法)に従って測定するものであり、ウェール方向及びコース方向の剛軟度を別個に算出するものである。
【0072】
経編地のウェール方向及びコース方向の少なくともいずれかの剛軟度が7cm未満である場合、該経編地は保形性に劣ったものとなり、少しの外力によりすぐに型崩れを起こす。
【0073】
本発明の経編地は、複合繊維糸条により編成された経編地をポリエステルBの融点以上の温度で熱処理することにより得ることができる。熱処理の方法は、ポリエステルBが融解され、経編地を構成する複合繊維糸条同士、または複合繊維糸条及び該複合繊維糸条とともに交編された他の繊維が熱融着されれば特に限定されるものではなく、処理機として、例えば、テンターを用いておこなうことができる。熱処理条件も特に限定されるものではないが、例えば、ポリエステルBの融点+10℃で30秒間以上熱処理を行えば、経編地は、強度が高いものとなりやすく、熱収縮が抑えられ厚みの増大を抑制でき、かつ、経編地は複合繊維糸条により十分に熱融着されるので好ましい。
【0074】
熱融着されているかどうかは、具体的に経編地表面から光学顕微鏡などを用い、経編地表面写真を撮影し本発明における複合繊維糸条の融解状態を確認すればよく、経編地表面から確認できる複合繊維糸条の少なくとも70%以上が融着されていることが好ましい。
【実施例】
【0075】
次に、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、実施例中の各種の値の測定及び評価は以下のように行った。
【0076】
ポリエステルA及びポリエステルBの融点(℃):パーキンエルマー社製DSC−2型(示差走査熱量計)を用いて、昇温速度20℃/分で測定した。
【0077】
複合繊維糸条の乾熱寸法変化率(%):前記した方法に従って測定、算出した。
【0078】
経編地密度(/(2.54cm)
2):JIS L 1096:2010 8.6.2 編物の密度に従い2.54cmの区間におけるコース密度及びウェール密度を算出し、該コース密度(コース数/2.54cm)及び該ウェール密度(ウェール数/2.54cm)を乗ずることにより算出した。
【0079】
経編地の厚み:JIS L 1096:2010 8.4 厚さのA法に従い測定、算出した。本発明においては、1mm以下のものを合格とした。
【0080】
経編地の剛軟度:JIS L 1096:2010 A法(45°カンチレバー法)に従って測定し、ウェール方向及びコース方向の剛軟度を別個に算出した。本発明においては、ウェール方向及びコース方向の剛軟度がいずれも7cm以上のものを合格とした。
【0081】
実施例1
芯鞘型複合繊維を構成するポリエステルのうち、ポリエステルAとしてエチレンテレフタレート単位が全繰り返し単位中95モル%である融点が257℃のPETを用い、ポリエステルBとしてエチレンテレフタレート単位を主体とし、全グリコール成分に対して1,4−ブタンジオールを50モル%共重合した融点が181℃のポリエステルを用いた。該ポリエステルAを芯部に、該ポリエステルBを鞘部に配し、芯鞘質量比率(芯部/鞘部)を7/3となるようにして、通常の複合紡糸装置より紡糸温度270℃で溶融紡糸・延伸を行い、56dtex24フィラメントの複合繊維糸条を得た。ポリエステルA及びポリエステルBの融点、複合繊維糸条の乾熱寸法変化率の測定は、該糸条を用いておこなった。
【0082】
次に、編機としてカールマイヤー製トリコット編機KS 28Gを用い、筬枚数は2枚筬とし、フロント筬及びバック筬に前記複合繊維糸条をフルセットで通した。そして、
図1に示すように、該フロント筬に通した複合繊維糸条により1コースごとに2ウェールの筬振り幅で左右交互に編成される編組織を編成し、該バック筬に通した複合繊維糸条により鎖編組織を編成し、経編地を得た。
【0083】
得られた経編地を、日阪製液流染色機を用い、界面活性剤“サンモールFL:1g/l”で精練処理をおこなった後に、市金工業製VIC−TEX を用い200℃で30m/minの速度にて1分間熱セットをおこない、コース密度40.0コース/2.54cm、ウェール密度38.0ウェール/2.54cm、経編地密度1520(/(2.54cm)
2)の本発明の経編地を得た。前記経編地の経編地密度、厚み及び剛軟度の測定は、該経編地を用いておこなった。
【0084】
実施例2
芯鞘型複合繊維を構成するポリエステルのうち、ポリエステルAとしてエチレンテレフタレート単位が全繰り返し単位中95モル%である融点が257℃のPETを用い、ポリエステルBとしてエチレンテレフタレート単位を主体とし、全グリコール成分に対して1,4−ブタンジオールを50モル%共重合した融点が181℃のポリエステルを用いた。該ポリエステルAを芯部に、該ポリエステルBを鞘部に配し、芯鞘質量比率(芯部/鞘部)を7/3となるようにして、通常の複合紡糸装置より紡糸温度270℃で溶融紡糸・延伸を行い、110dtex24フィラメントの複合繊維糸条を得た。ポリエステルA及びポリエステルBの融点、複合繊維糸条の乾熱寸法変化率の測定は、該糸条を用いておこなった。非熱融着性ポリエステル繊維糸条として、融点が256℃、単糸繊度が2.3dtexであるポリエステル繊維糸条(ユニチカトレーディング社製、エチレンテレフタレート単位が全繰り返し単位中95モル%であるPET)84dtex36フィラメントを用いた。
【0085】
バック筬に前記ポリエステル繊維糸条をフルセットで通し、フロント筬に前記複合繊維糸条をフルセットで通し、
図1に示すように、該フロント筬に通した複合繊維糸条により1コースごとに2ウェールの筬振り幅で左右交互に編成される編組織を編成し、該バック筬に通したポリエステル繊維糸条により鎖編組織を編成し、経編地を得た。
【0086】
得られた経編地を、日阪製液流染色機を用い、界面活性剤“サンモールFL:1g/l”で精練処理をおこなった後に、市金工業製VIC−TEX を用い200℃で30m/minの速度にて1分間熱セットをおこない、コース密度40.0コース/2.54cm、ウェール密度38.0ウェール/2.54cm、経編地密度1520(/(2.54cm)
2)の本発明の経編地を得た。前記経編地の経編地密度、厚み及び剛軟度の測定は、該経編地を用いておこなった。
【0087】
実施例3
実施例1で用いた複合繊維糸条を用い、編機としてカールマイヤー製トリコット編機KS 28Gを用い、筬枚数は4枚筬とし、第1〜第4の筬に該複合繊維糸条をフルセットで通し、
図2に示すように、第1及び第2の筬に通した複合繊維糸条により、1コースごとに2ウェールの筬振り幅で左右交互に編成され、該第1及び該第2の筬に通した複合繊維糸条が互いに反対方向となる編組織(ダブルコード編組織)を編成し、第3及び第4の筬に通した複合繊維糸条により、1コースごとに1ウェールの筬振り幅で左右交互に編成され、該第3及び該第4の筬に通した複合繊維糸条が互いに反対方向となる編組織(ダブルデンビ編組織)を編成し、経編地を得た。
【0088】
得られた経編地を、日阪製液流染色機を用い、界面活性剤“サンモールFL:1g/l”で精練処理をおこなった後に、市金工業製VIC−TEX を用い200℃で30m/minの速度にて1分間熱セットをおこない、コース密度36.9コース/2.54cm、ウェール密度33.0ウェール/2.54cm、経編地密度1218(/(2.54cm)
2)の本発明の経編地を得た。前記経編地の経編地密度、厚み及び剛軟度の測定は、該経編地を用いておこなった。
【0089】
実施例4
複合繊維糸条として実施例2で用いた複合繊維糸条を用い、非熱融着性ポリエステル繊維糸条として繊度が22dtexであるポリエステルモノフィラメント(エチレンテレフタレート単位が全繰り返し単位中95モル%であるPET)を用いた。編機としてカールマイヤー製トリコット編機KS 28Gを用い、筬枚数は4枚筬とし、第1及び第2の筬に該複合繊維糸条をフルセットで通し、第3及び第4の筬に該ポリエステルモノフィラメントをフルセットで通した。
図2に示すように、該第1及び第2の筬に通した複合繊維糸条により、1コースごとに2ウェールの筬振り幅で左右交互に編成され、該第1及び該第2の筬に通した複合繊維糸条が互いに反対方向となる編組織(ダブルコード編組織)を編成し、該第3及び第4の筬に通したポリエステルモノフィラメントにより、1コースごとに1ウェールの筬振り幅で左右交互に編成され、該第3及び該第4の筬に通したポリエステルモノフィラメントが互いに反対方向となる編組織(ダブルデンビ編組織)を編成し、経編地を得た。
【0090】
得られた経編地を、日阪製液流染色機を用い、界面活性剤“サンモールFL:1g/l”で精練処理をおこなった後に、市金工業製VIC−TEX を用い200℃で30m/minの速度にて1分間熱セットをおこない、コース密度36.9コース/2.54cm、ウェール密度33.0ウェール/2.54cm、経編地密度1218(/(2.54cm)
2)の本発明の経編地を得た。前記経編地の経編地密度、厚み及び剛軟度の測定は、該経編地を用いておこなった。
【0091】
実施例5
複合繊維糸条として実施例1で用いた複合繊維糸条を用い、編機としてカールマイヤー製トリコット編機KS 28Gを用い、筬枚数は2枚筬とし、フロント筬及びバック筬に該複合繊維糸条をフルセットで通した。そして、
図1に示すように、該フロント筬に通した複合繊維糸条により1コースごとに2ウェールの筬振り幅で左右交互に編成される編組織を編成し、該バック筬に通した複合繊維糸条により鎖編組織を編成し、経編地を得た。
【0092】
得られた経編地を、日阪製液流染色機を用い、界面活性剤“サンモールFL:1g/l”で精練処理をおこなった後に、市金工業製VIC−TEX を用い200℃で30m/minの速度にて1分間熱セットをおこない、コース密度38.0コース/2.54cm、ウェール密度33.0ウェール/2.54cm、経編地密度1254(/(2.54cm)
2)の本発明の経編地を得た。前記経編地の経編地密度、厚み及び剛軟度の測定は、該経編地を用いておこなった。
【0093】
実施例6
複合繊維糸条として実施例2で用いた複合繊維糸条を用い、非熱融着性ポリエステル繊維糸条として実施例2で用いたポリエステル繊維糸条を用いた。バック筬に該ポリエステル繊維糸条をフルセットで通し、フロント筬に該複合繊維糸条をフルセットで通し、
図1に示すように、該フロント筬に通した複合繊維糸条により1コースごとに2ウェールの筬振り幅で左右交互に編成される編組織を編成し、該バック筬に通したポリエステル繊維糸条により鎖編組織を編成し、経編地を得た。
【0094】
得られた経編地を、日阪製液流染色機を用い、界面活性剤“サンモールFL:1g/l”で精練処理をおこなった後に、市金工業製VIC−TEX を用い200℃で30m/minの速度にて1分間熱セットをおこない、コース密度38.0コース/2.54cm、ウェール密度33.0ウェール/2.54cm、経編地密度1254(/(2.54cm)
2)の本発明の経編地を得た。前記経編地の経編地密度、厚み及び剛軟度の測定は、該経編地を用いておこなった。
【0095】
比較例1
エチレンテレフタレート単位が全繰り返し単位中95モル%であり、融点が256℃であるPETフィラメント糸(56dtex24フィラメント)を用い、編機としてカールマイヤー製トリコット編機KS 28Gを用い、筬枚数は2枚筬とし、フロント筬及びバック筬に該PETフィラメント糸をフルセットで通した。そして、
図1に示すように、該フロント筬に通したPETフィラメント糸により1コースごとに2ウェールの筬振り幅で左右交互に編成される編組織を編成し、該バック筬に通したPETフィラメント糸により鎖編組織を編成し、経編地を得た。すなわち、実施例1において、複合繊維糸条に替えて、PETフィラメント糸とした。
【0096】
得られた経編地を、日阪製液流染色機を用い、界面活性剤“サンモールFL:1g/l”で精練処理をおこなった後に、市金工業製VIC−TEX を用い200℃で30m/minの速度にて1分間熱セットをおこない、コース密度40.0コース/2.54cm、ウェール密度33.0ウェール/2.54cm、経編地密度1320(/(2.54cm)
2)の比較用の経編地を得た。前記経編地の経編地密度、厚み及び剛軟度の測定は、該経編地を用いておこなった。
【0097】
比較例2
芯鞘型複合繊維を構成するポリエステルのうち、ポリエステルAとしてエチレンテレフタレート単位が全繰り返し単位中95モル%である融点が257℃のPETを用い、ポリエステルBとしてエチレンテレフタレート単位を主体とし、全グリコール成分に対して1,4−ブタンジオールを50モル%共重合した融点が181℃のポリエステルを用いた。該ポリエステルAを芯部に、該ポリエステルBを鞘部に配し、芯鞘質量比率(芯部/鞘部)を3/7となるようにして、通常の複合紡糸装置より紡糸温度270℃で溶融紡糸・延伸を行い、56dtex24フィラメントの複合繊維糸条を得た。ポリエステルA及びポリエステルBの融点、複合繊維糸条の乾熱寸法変化率の測定は、該糸条を用いておこなった。
【0098】
次に、編機としてカールマイヤー製トリコット編機KS 28Gを用い、筬枚数は2枚筬とし、フロント筬及びバック筬に前記複合繊維糸条をフルセットで通した。そして、
図1に示すように、該フロント筬に通した複合繊維糸条により1コースごとに2ウェールの筬振り幅で左右交互に編成される編組織を編成し、該バック筬に通した複合繊維糸条により鎖編組織を編成し、経編地を得た。
【0099】
得られた経編地を、日阪製液流染色機を用い、界面活性剤“サンモールFL:1g/l”で精練処理をおこなった後に、市金工業製VIC−TEX を用い200℃で30m/minの速度にて1分間熱セットをおこない、コース密度40.0コース/2.54cm、ウェール密度34.0ウェール/2.54cm、経編地密度1360(/(2.54cm)
2)の比較用の経編地を得た。前記経編地の経編地密度、厚み及び剛軟度の測定は、該経編地を用いておこなった。
【0100】
比較例3
芯鞘型複合繊維を構成するポリエステルのうち、ポリエステルAとしてエチレンテレフタレート単位が全繰り返し単位中95モル%である融点が257℃のPETを用い、ポリエステルBとしてエチレンテレフタレート単位を主体とし、全グリコール成分に対して1,4−ブタンジオールを50モル%共重合した融点が181℃のポリエステルを用いた。該ポリエステルAを芯部に、該ポリエステルBを鞘部に配し、芯鞘質量比率(芯部/鞘部)を3/7となるようにして、通常の複合紡糸装置より紡糸温度270℃で溶融紡糸・延伸を行い、110dtex24フィラメントの複合繊維糸条を得た。ポリエステルA及びポリエステルBの融点、複合繊維糸条の乾熱寸法変化率の測定は、該糸条を用いておこなった。非熱融着性ポリエステル繊維糸条として、融点が256℃、単糸繊度が2.3dtexであるポリエステル繊維糸条(ユニチカトレーディング社製、エチレンテレフタレート単位が全繰り返し単位中95モル%であるPET)84dtex36フィラメントを用いた。
【0101】
バック筬に前記ポリエステル繊維糸条をフルセットで通し、フロント筬に前記複合繊維糸条をフルセットで通し、
図1に示すように、該フロント筬に通した複合繊維糸条により1コースごとに2ウェールの筬振り幅で左右交互に編成される編組織を編成し、該バック筬に通したポリエステル繊維糸条により鎖編組織を編成し、経編地を得た。
【0102】
得られた経編地を、日阪製液流染色機を用い、界面活性剤“サンモールFL:1g/l”で精練処理をおこなった後に、市金工業製VIC−TEX を用い200℃で30m/minの速度にて1分間熱セットをおこない、コース密度40.0コース/2.54cm、ウェール密度34.0ウェール/2.54cm、経編地密度1360(/(2.54cm)
2)の比較用の経編地を得た。前記経編地の経編地密度、厚み及び剛軟度の測定は、該経編地を用いておこなった。
【0103】
比較例4
複合繊維糸条として実施例1で用いた複合繊維糸条を用い、編機としてカールマイヤー製トリコット編機KS 24Gを用い、筬枚数は2枚筬とし、フロント筬及びバック筬に該複合繊維糸条をフルセットで通した。そして、
図1に示すように、該フロント筬に通した複合繊維糸条により1コースごとに2ウェールの筬振り幅で左右交互に編成される編組織を編成し、該バック筬に通した複合繊維糸条により鎖編組織を編成し、経編地を得た。
【0104】
得られた経編地を、日阪製液流染色機を用い、界面活性剤“サンモールFL:1g/l”で精練処理をおこなった後に、市金工業製VIC−TEX を用い200℃で30m/minの速度にて1分間熱セットをおこない、コース密度31.1コース/2.54cm、ウェール密度28.0ウェール/2.54cm、経編地密度871(/(2.54cm)
2)の比較用の経編地を得た。前記経編地の経編地密度、厚み及び剛軟度の測定は、該経編地を用いておこなった。
【0105】
比較例5
複合繊維糸条として実施例2で用いた複合繊維糸条を用い、非熱融着性ポリエステル繊維糸条として実施例2で用いたポリエステル繊維糸条を用いた。編機としてカールマイヤー製トリコット編機KS 24Gを用い、筬枚数は2枚筬とし、バック筬に該ポリエステル繊維糸条をフルセットで通し、フロント筬に該複合繊維糸条をフルセットで通し、
図1に示すように、該フロント筬に通した複合繊維糸条により1コースごとに2ウェールの筬振り幅で左右交互に編成される編組織を編成し、該バック筬に通したポリエステル繊維糸条により鎖編組織を編成し、経編地を得た。
【0106】
得られた経編地を、日阪製液流染色機を用い、界面活性剤“サンモールFL:1g/l”で精練処理をおこなった後に、市金工業製VIC−TEX を用い200℃で30m/minの速度にて1分間熱セットをおこない、コース密度31.1コース/2.54cm、ウェール密度28.0ウェール/2.54cm、経編地密度871(/(2.54cm)
2)の比較用の経編地を得た。前記経編地の経編地密度、厚み及び剛軟度の測定は、該経編地を用いておこなった。
【0107】
比較例6
実施例1で用いた複合繊維糸条を用い、編機としてカールマイヤー製トリコット編機KS 28Gを用い、筬枚数は4枚筬とし、第1〜第4の筬に該複合繊維糸条をフルセットで通し、
図3に示すように、第1及び第2の筬に通した複合繊維糸条により、1コースごとに4ウェールの筬振り幅で左右交互にインレイとして編成され、該第1及び該第2の筬に通した複合繊維糸条が互いに反対方向となる編組織を編成し、第3及び第4の筬に通した複合繊維糸条により、1コースごとに1ウェールの筬振り幅で左右交互に編成され、該第3及び該第4の筬に通した複合繊維糸条が互いに反対方向となる編組織(ダブルデンビ編組織)を編成し、経編地を得た。
【0108】
得られた経編地を、日阪製液流染色機を用い、界面活性剤“サンモールFL:1g/l”で精練処理をおこなった後に、市金工業製VIC−TEX を用い200℃で30m/minの速度にて1分間熱セットをおこない、コース密度43.2コース/2.54cm、ウェール密度40.0ウェール/2.54cm、経編地密度1728(/(2.54cm)
2)の比較用の経編地を得た。前記経編地の経編地密度、厚み及び剛軟度の測定は、該経編地を用いておこなった。
【0109】
比較例7
複合繊維糸条として実施例2で用いた複合繊維糸条を用い、非熱融着性ポリエステル繊維糸条として実施例2で用いたポリエステル繊維糸条を用いた。編機としてカールマイヤー製トリコット編機KS 28Gを用い、筬枚数は4枚筬とし、第1及び第2の筬に該複合繊維糸条をフルセットで通し、第3及び第4の筬に該ポリエステル繊維糸条をフルセットで通した。
図3に示すように、第1及び第2の筬に通した複合繊維糸条により、1コースごとに4ウェールの筬振り幅で左右交互にインレイとして編成され、該第1及び該第2の筬に通した複合繊維糸条が互いに反対方向となる編組織を編成し、第3及び第4の筬に通したポリエステル繊維糸条により、1コースごとに1ウェールの筬振り幅で左右交互に編成され、該第3及び該第4の筬に通したポリエステル繊維糸条が互いに反対方向となる編組織(ダブルデンビ編組織)を編成し、経編地を得た。
【0110】
得られた経編地を、日阪製液流染色機を用い、界面活性剤“サンモールFL:1g/l”で精練処理をおこなった後に、市金工業製VIC−TEX を用い200℃で30m/minの速度にて1分間熱セットをおこない、コース密度43.2コース/2.54cm、ウェール密度40.0ウェール/2.54cm、経編地密度1728(/(2.54cm)
2)の比較用の経編地を得た。前記経編地の経編地密度、厚み及び剛軟度の測定は、該経編地を用いておこなった。
【0111】
得られた結果を表1に示す。
【0112】
【表1】
【0113】
実施例1〜6の経編地は、厚みが1mm以下であり、経編地のコース方向及びウェール方向の剛軟度がいずれも7cm以上であった。従って、厚みが薄く、剛性に優れた経編地を得ることができた。特に、実施例1、2、5及び6の経編地は、経編地を編成する筬枚数、複合繊維糸条の乾熱寸法変化率、複合繊維糸条の繊度、非熱融着性ポリエステル繊維糸条の繊度、複合繊維糸条の含有率、編組織及び経編地密度を適切なものとしたことから、所望の剛軟度を備えつつ、厚みが0.5mm以下とすることができた。中でも、実施例1の経編地は、複合繊維糸条の含有率を100質量%とし、経編地密度を1500(/(2.54cm)
2)としたことから、厚みが0.5mm以下であって、かつ、経編地のコース方向及びウェール方向の剛軟度が10cm以上とすることができた。
【0114】
一方、比較例1の経編地は、複合繊維糸条を用いなかったため、熱融着性に乏しく、経編地のコース方向及びウェール方向の剛軟度が7cm未満となった。比較例2、3、6及び7の経編地は、厚みが1mmを超えるものとなり、本願発明の要件を満たさないものであった。厚みが1mmを超えるものとなった理由は、複合繊維糸条の繊度、芯鞘質量比、非熱融着性ポリエステル繊維糸条の繊度、複合繊維糸条及び非熱融着性ポリエステル繊維糸条の筬振り幅、経編地組織、経編地密度、筬枚数等の組合せが、厚みが1mm以下とするのに適切なものでなかったことによる。比較例4及び5の経編地は、経編地密度が1200(/(2.54cm)
2)未満であったことから、経編地のコース方向及びウェール方向の剛軟度が7cm未満となった。