特許第5943809号(P5943809)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大同信号株式会社の特許一覧

特許5943809電磁接触器およびレール絶縁短絡器ならびに軌道回路切替システム
<>
  • 特許5943809-電磁接触器およびレール絶縁短絡器ならびに軌道回路切替システム 図000002
  • 特許5943809-電磁接触器およびレール絶縁短絡器ならびに軌道回路切替システム 図000003
  • 特許5943809-電磁接触器およびレール絶縁短絡器ならびに軌道回路切替システム 図000004
  • 特許5943809-電磁接触器およびレール絶縁短絡器ならびに軌道回路切替システム 図000005
  • 特許5943809-電磁接触器およびレール絶縁短絡器ならびに軌道回路切替システム 図000006
  • 特許5943809-電磁接触器およびレール絶縁短絡器ならびに軌道回路切替システム 図000007
  • 特許5943809-電磁接触器およびレール絶縁短絡器ならびに軌道回路切替システム 図000008
  • 特許5943809-電磁接触器およびレール絶縁短絡器ならびに軌道回路切替システム 図000009
  • 特許5943809-電磁接触器およびレール絶縁短絡器ならびに軌道回路切替システム 図000010
  • 特許5943809-電磁接触器およびレール絶縁短絡器ならびに軌道回路切替システム 図000011
  • 特許5943809-電磁接触器およびレール絶縁短絡器ならびに軌道回路切替システム 図000012
  • 特許5943809-電磁接触器およびレール絶縁短絡器ならびに軌道回路切替システム 図000013
  • 特許5943809-電磁接触器およびレール絶縁短絡器ならびに軌道回路切替システム 図000014
  • 特許5943809-電磁接触器およびレール絶縁短絡器ならびに軌道回路切替システム 図000015
  • 特許5943809-電磁接触器およびレール絶縁短絡器ならびに軌道回路切替システム 図000016
  • 特許5943809-電磁接触器およびレール絶縁短絡器ならびに軌道回路切替システム 図000017
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5943809
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】電磁接触器およびレール絶縁短絡器ならびに軌道回路切替システム
(51)【国際特許分類】
   H01H 51/20 20060101AFI20160621BHJP
   B61L 3/08 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   H01H51/20 Z
   B61L3/08 A
【請求項の数】6
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2012-236321(P2012-236321)
(22)【出願日】2012年10月26日
(65)【公開番号】特開2014-86366(P2014-86366A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207470
【氏名又は名称】大同信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106345
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 香
(72)【発明者】
【氏名】田本 成充
(72)【発明者】
【氏名】豊田 光昭
(72)【発明者】
【氏名】前 友章
【審査官】 段 吉享
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−008505(JP,A)
【文献】 特開2005−262895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 51/20
B61L 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主接点駆動部材と遊びを持って係合している可動鉄心の電磁駆動に応動して前記主接点駆動部材が双方向に揺動することにより二つの主接点が交互に開閉するとともに何れの揺動限界でも接点保持弾性部材の弾撥力によって主接点駆動部材の姿勢が維持される双投双刃形の電磁接触器において、前記主接点駆動部材と前記可動鉄心との係合部に両者の何れよりも柔らかい非磁性の間隙保持部材を配設したことを特徴とする電磁接触器。
【請求項2】
主接点駆動部材と遊びを持って係合している可動鉄心の電磁駆動に応動して前記主接点駆動部材が双方向に揺動することにより二つの主接点が交互に開閉するとともに何れの揺動限界でも前記接点保持弾性部材の弾撥力によって前記主接点駆動部材の姿勢が維持される双投双刃形の接点機構部を有しており、新幹線のき電区分の切替セクションの所でレールに接続されて該レールのレール絶縁を短絡解放する双投双刃形の電磁接触器において、
前記接点保持弾性部材の軽量化と前記接点保持弾性部材の弾撥力の強化とにより前記主接点の接触抵抗が電気車電流の通電時にも軌道回路信号電流の通電時にも通電に適う抵抗値にまで小さくなっており、
前記主接点駆動部材と前記可動鉄心との係合部に両者の何れよりも柔らかい非磁性の間隙保持部材が配設されたことにより、前記主接点駆動部材と前記可動鉄心との間隙が前記間隙保持部材の厚み以上に維持されるとともに、前記主接点駆動部材および前記可動鉄心と前記間隙保持部材との摩擦面で擦れ合う部材に硬度差が確保されている
ことを特徴とする電磁接触器。
【請求項3】
主接点の開閉にて共通接続端子を第1開閉端子および第2開閉端子の何れかと択一的に短絡させる電磁接触器を一対具備していて新幹線のき電区分の切替セクションの所でレール絶縁を短絡解放するレール絶縁短絡器であって、
前記電磁接触器は、それぞれの共通接続端子が前記レール絶縁の両側に分かれてレールに接続されており、互いの第1開閉端子同士が短絡接続されており、それぞれの第2開閉端子が帰線電流吸上用リアクトルを介して帰線に接続されており、更に、主接点駆動部材と遊びを持って係合している可動鉄心の電磁駆動に応動して前記主接点駆動部材が双方向に揺動することにより二つの主接点が交互に開閉するとともに何れの揺動限界でも前記接点保持弾性部材の弾撥力によって前記主接点駆動部材の姿勢が維持される双投双刃形の接点機構部を有したものであり、
前記主接点駆動部材と前記可動鉄心との係合部に両者の何れよりも柔らかい非磁性の間隙保持部材が配設されたことにより、前記主接点駆動部材と前記可動鉄心との間隙が前記間隙保持部材の厚み以上に維持されるとともに、前記主接点駆動部材および前記可動鉄心と前記間隙保持部材との摩擦面で擦れ合う部材に硬度差が確保されている
ことを特徴とするレール絶縁短絡器。
【請求項4】
在来線の複条軌道をなす一対の既設レールと、その一方のレールを共用することで新幹線の複条軌道をなす新設レールと、前記既設レールに設置された既設レール絶縁と、前記既設レール絶縁の上方の電車線に設けられた新幹線のき電区分の切替セクションと、前記既設レール絶縁の両側で前記既設レール及び前記新設レールに介挿設置された新設レール絶縁と、前記既設レールそれぞれに設けられて前記既設レール絶縁のうち対応するものの短絡解放を切り替えるレール絶縁短絡器と、前記既設レール及び前記新設レールそれぞれに設けられて前記新設レール絶縁のうち対応するものの短絡解放を切り替えるレール絶縁短絡器とを備えた軌道回路切替システムであって、
前記既設レール絶縁に係る前記レール絶縁短絡器と前記新設レール絶縁に係る前記レール絶縁短絡器とが短絡と解放とを逆に行うようになっており、
前記レール絶縁短絡器が、何れも、二つの主接点の開閉にて共通接続端子を第1開閉端子および第2開閉端子の何れかと択一的に短絡させる一対の電磁接触器を具備したものであり、対をなす前記電磁接触器は、それぞれの共通接続端子が前記既設レール絶縁と前記新設レール絶縁とのうち何れか対応するレール絶縁の両側に分かれて前記既設レールと前記新設レールとのうち何れか対応するレールに接続されており、互いの第1開閉端子同士が短絡接続されており、それぞれの第2開閉端子が帰線電流吸上用リアクトルを介して帰線に接続されており、
前記電磁接触器は、何れも、主接点駆動部材と遊びを持って係合している可動鉄心の電磁駆動に応動して前記主接点駆動部材が双方向に揺動することにより前記主接点が交互に開閉するとともに何れの揺動限界でも前記接点保持弾性部材の弾撥力によって前記主接点駆動部材の姿勢が維持される双投双刃形の接点機構部を有したものであり、
前記主接点駆動部材と前記可動鉄心との係合部に両者の何れよりも柔らかい非磁性の間隙保持部材が配設されたことにより、前記主接点駆動部材と前記可動鉄心との間隙が前記間隙保持部材の厚み以上に維持されるとともに、前記主接点駆動部材および前記可動鉄心と前記間隙保持部材との摩擦面で擦れ合う部材に硬度差が確保されている
ことを特徴とする軌道回路切替システム。
【請求項5】
前記電磁接触器がそれの主接点に随伴して開閉する補助接点を具備したものであり、前記電磁接触器のうち何れかがその補助接点にて他の電磁接触器の電磁駆動用電力投入ラインを開閉することにより前記電磁接触器のうち複数のものが連動するようになっていることを特徴とする請求項4記載の軌道回路切替システム。
【請求項6】
前記電磁接触器がそれの主接点に随伴して開閉する補助接点を具備したものであり、対をなす前記電磁接触器のうち何れか一方がその補助接点にて他方の電磁接触器の電磁駆動用電力投入ラインを開閉することにより前記電磁接触器の対が連動するようになっていることを特徴とする請求項3記載のレール絶縁短絡器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄道の走行レールに設けられたレール絶縁を短絡・解放するレール絶縁短絡器に関する。また、その短絡・解放に係る切替を担うのに好適な電磁接触器に関する。さらに、レール絶縁短絡器を使用して複軌条軌道回路の区間割を切り替える軌道回路切替システムにも関する。
【背景技術】
【0002】
図10は、在来線の電化区間を模式的に表したものであり、(a)が簡略図示の記号図、(b)が変電所16から在来線電車6に供給される電気車電流のイメージを矢付き波線で記号図に重畳図示した電気車電流経路図、(c)が在来線軌道11,12の軌道回路区間1T〜4Tに流れる軌道回路信号電流のイメージを矢付き点線で記号図に重畳図示した軌道回路信号電流経路図である。
【0003】
在来線の多くに狭軌の複軌条軌道が採用されており、そのような在来線軌道11,12には走行レールとして2本の既設レール11,12が並列に敷設されている(図10(a)参照)。また、電化された在来線軌道11,12の上方には、電線やトロリ線などからなる電車線10が軌道に沿って敷設されていて、在来線軌道11,12を走行する在来線電車6のモータMには、変電所16から電車線10を介して電気車電流が供給されるとともに(図10(b)矢付き波線を参照)、在来線電車6で使用された電気車電流が帰線電流となって在来線軌道11,12や帰線15を介して変電所16に戻るようになっている(例えば特許文献1,非特許文献1,2参照)。
【0004】
さらに(図10(a)参照)、在来線軌道11,12は、列車検知や列車制御のために、既設レール11にも既設レール12にも適宜な間隔でレール絶縁14が設けられて、多数の軌道回路区間1T〜4Tに区間割されている。各軌道回路区間1T〜4Tには、図示したTD送信器21とTD受信器22との組や,図示しない軌道回路電源と軌道リレーとの組,やはり図示しないATC地上装置などのうち適宜な一組か複数組が分散して付設されていて、TD波やAF信号といった列車検知信号やATC信号のうち適宜な一種以上の信号を含んだ軌道回路信号が送受信されるようになっているが、軌道回路信号電流は各々の軌道回路区間1T〜4Tの中で循環する(図10(c)矢付き点線を参照)。
【0005】
このように軌道回路信号電流が各々の軌道回路区間1T〜4Tの中にとどまるのに対し(図10(c)矢付き点線を参照)、電気車電流の帰線電流は一つの軌道回路区間内にとどまる訳でなく複数の軌道回路区間1T〜3Tを通過してから帰線15に吸い上げられるが(図10(b)矢付き波線を参照)、それを可能とするために、既設レール絶縁14の所には、軌道回路境界設備23か軌道回路境界設備25が付設されている(図10(a)参照)。軌道回路境界設備23も軌道回路境界設備25も二個のインピーダンスボンドZBを主体とするものであり、二個のインピーダンスボンドZBは既設レール絶縁14の両側に一つずつ分かれて一次巻線が在来線軌道11,12に接続されるが、何れも一次巻線の一端が既設レール11に接続され他端が既設レール12に接続されている。
【0006】
インピーダンスボンドZBでは一次巻線の中点にも接続端子が設けられているので、上述のように接続されたインピーダンスボンドZBは、並列な既設レール11,12を同じ向きに流れる電流は一次巻線の中点から流出させるが、並列な既設レール11,12を逆向きに流れる電流は一次巻線の中点から流出させることなく一次巻線を通過させるものとなっている。なお、インピーダンスボンドZBや軌道回路信号の送受信器の図示に際して(図10(a)参照)、整合変成器を用いて軌道回路信号の送受信を行う軌道回路については図示を割愛し、軌道回路信号の送受信ケーブルを既設レール11,12に接続するタイプの既設TD送信器21や既設TD受信器22だけを図示した。
【0007】
上述した軌道回路境界設備のうち軌道回路境界設備25では、既設レール絶縁14を挟んで隣り合う二個のインピーダンスボンドZBの一次巻線の中点同士が短絡接続されるとともに、その短絡接続部に帰線15が接続されていて、その帰線接続部26から帰線15へ帰線電流が吸い上げられるようになっている。これに対し、軌道回路境界設備23では、インピーダンスボンドZBの一次巻線同士が短絡接続されるだけか(図示せず)、その短絡接続部に既設レール絶縁短絡器24が介挿接続されるが(図10(a)参照)、帰線15は接続されない。なお、既設レール絶縁短絡器24は、大電流を流せるうえ耐電圧が高いサイリスタを逆向き並列接続する等のことで構成されており、故障検出まで行うものでは、図示のように複数のサイリスタを直列接続するとともに複数の抵抗も直列接続して並設し、両者の中間電圧を比較するようになっている。
【0008】
図11は、新幹線用のき電区分の切替セクションを模式的に表したものであり、(a)が簡略図示の記号図、(b)〜(d)が新幹線電車8の通過に伴う電気車電流の経路の切り替わり状態を実線と破線とで示した記号図であり、電車線10のうち新幹線電車8への電力供給に寄与している部分は実線で示し、電車線10のうち新幹線電車8への電力供給に寄与していない部分は破線で示している。
【0009】
き電区分の切替セクションでは(図11(a)参照)、電車線10が、Aセクション側変電所16aに接続されたAセクション側電車線10aと、Bセクション側変電所16bに接続されたBセクション側電車線10bと、切替セクションの中央で両電車線10a,10bの中間に位置するセクション中間電車線10cとに分かれている。Aセクション側電車線10aとセクション中間電車線10cとの境界部は、両電車線10a,10cが接触しないで並走するAセクション31(エアセクション)になっており、Bセクション側電車線10bとセクション中間電車線10cとの境界部は、両電車線10b,10cが接触しないで並走するBセクション32(エアセクション)になっている。
【0010】
また、き電区分の切替セクションには、電源の切り替えを担う切替開閉器30が設けられている。切替開閉器30は、図示しない制御装置から受けた切替信号に従う電磁駆動によって交互に開閉される二つの主接点と、それに接続された三つの主端子であるAセクション側端子30aとBセクション側端子30bとセクション中間端子30cとを具備したものであり、Aセクション側端子30aとセクション中間端子30cとを短絡させて両端子30a,30cからBセクション側端子30bを解放する切替状態Aと、Bセクション側端子30bとセクション中間端子30cとを短絡させて両端子30b,30cからAセクション側端子30aを解放する切替状態Bとのうち、何れかの切替状態を択一的に採るようになっている。
【0011】
このようなき電区分の切替セクションに向かってAセクション側(図では左側)から新幹線電車8が進行したときには(図11(b)参照)、切替開閉器30が切替状態Aに制御されていて、電気車電流がAセクション側変電所16aからAセクション側電車線10aとセクション中間電車線10cとを介して新幹線電車8に供給されるので、新幹線電車8は切替セクションの中央まで進むことができる。
そして(図11(c)参照)、新幹線電車8がAセクション側電車線10aから離れてセクション中間電車線10c経由だけで電力を受給するところまで進むと、そのことがき電源区分制御軌道回路33や適宜な列車検知手段にて検知され、更にその検知に応じて切替信号の指示が変更され、それに従って切替開閉器30が切替状態Bに切り替わる。
【0012】
そのため、電気車電流がBセクション側変電所16bからBセクション側電車線10bとセクション中間電車線10cとを介して新幹線電車8に供給されるので、新幹線電車8は切替セクションを中央より先まで進むことができる。
そして(図11(d)参照)、新幹線電車8がセクション中間電車線10cから離れてBセクション側電車線10b経由だけで電力を受給するところまで進むと、そのことがき電源区分制御軌道回路33等で検知され、更にその検知に応じて切替信号の指示が変更され、それに従って切替開閉器30が元の切替状態Aに切り替わる。
こうして、電源切替が迅速に行われるので、新幹線電車8が高速走行を維持できる。
【0013】
図12は、切替開閉器30と同様の大電流経路切替機能を電磁駆動にて具現化した電磁接触器40の部分の構造を示し、(a)が電磁接触器40の要部機構41〜54に係る正面図であり、一部の部材42,43,44は断面で図示している。また、同図(b)は、電磁接触器40の回路図である。
【0014】
電気回路の開閉機能・接触解放機能を発揮するものとしては電磁リレーが一般的であるが、電磁接触器40は、数百A以上になることもある大電流を流せるように大きな部材で作られている主接点を備えている点と、電磁リレーと同様に制御用の小電流を流すよう相対的に小さな部材で作られている補助接点も備えている点で、電気車電流のような大電流には適用できない電磁リレーと相違するものである。
【0015】
電磁接触器40は(図12参照)、双投双刃形のものであり、交互に開閉される二つの主接点と、軸支部41に横架された揺動軸51にてシーソーの様に揺動可能に支持されていて揺動にて主接点の開閉状態を切り替える主接点駆動部材52と、主接点駆動部材52が中立位置から二つの揺動限界のうち何れか一方に片寄るとその片寄りが増すように付勢して主接点駆動部材52を揺動限界まで揺動させることにより主接点の交互開閉状態を安定させる接点保持弾性部材54と、主接点駆動部材52の下方の枠部44に収容保持された電磁コイル42の通電励磁によって止め部材43に向けて進行する可動鉄心47とを具備している。主接点駆動部材52の従動側伝動部53と可動鉄心47の駆動側伝動部48とが適度な遊びを持って係合していて、可動鉄心47の直線運動が主接点駆動部材52の揺動運動を引き起こすとともに、バネ等からなる接点保持弾性部材54の弾撥力によって主接点駆動部材52が二つの揺動限界の何れかに姿勢保持されるようになっている。
【0016】
主接点駆動部材52は鋳鉄等からなり一個で二つの主接点に関わるが、主接点交互開閉状態安定保持用の接点保持弾性部材54や主接点開閉状態切替駆動用の電磁コイル42及び可動鉄心47は主接点毎に設けられて二組装備されているので、各組を呼び分ける場合は、二つの主接点のうち一方の主接点に関わる電磁コイル42を第1電磁コイル42aと呼び、二つの主接点のうち他方の主接点に関わる電磁コイル42を第2電磁コイル42bと呼ぶ。切替信号によって第1切替信号入力端子55aから第1電磁コイル42aに通電がなされると、そこの可動鉄心47が電磁駆動されて止め部材43に当接するまで移動し、それに牽引されて主接点駆動部材52が揺動し、それに応じて一方の主接点が閉じ他方の主接点が開き、共通接続端子40cと第1開閉端子40aとが短絡状態(導通状態)になる一方、共通接続端子40cと第2開閉端子40bとが解放状態(遮断状態)になる。
【0017】
これに対し、切替信号によって第2切替信号入力端子55bから第1電磁コイル42aに通電がなされると、そこの可動鉄心47が電磁駆動されて止め部材43に当接するまで移動し、それに牽引されて主接点駆動部材52が揺動し、それに応じて他方の主接点が閉じ一方の主接点が開き、共通接続端子40cと第2開閉端子40bとが短絡状態になる一方、共通接続端子40cと第1開閉端子40aとが解放状態になる。なお、弱い補助バネ45で姿勢を維持しつつ主接点駆動部材52の揺動に追随して直線運動する補助接点駆動部材46によって、幾つかの補助接点A1A2,A3A4,A5A6,A7A8,B1B2,B3B4,B5B6,B7B8が主接点に同期して開閉されるとともに、第1駆動停止スイッチ46aと第2駆動停止スイッチ46bも開閉されるので、電磁コイル42への通電は、主接点駆動部材52の揺動開始から揺動完了までの間だけに限定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2005−262896号公報
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】鉄道電気技術者のための信号概論「鉄道信号一般」、社団法人日本鉄道電気技術協会発行、平成17年3月18日、改訂版136頁
【非特許文献2】鉄道電気技術者のための信号概論「軌道回路」、社団法人日本鉄道電気技術協会発行、平成14年4月10日、改訂版53頁,75頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
図13は、上述した狭軌の在来線軌道11,12に新設レール13を追加して新幹線軌道11,13を敷設することにより、在来線と新幹線とを併用できるようになった電化区間に係るき電区分の切替セクションを模式的に表したものであり、(a)が簡略図示の記号図、(b)が在来線運行時に在来線軌道11,12の軌道回路区間2T〜5Tに流れる軌道回路信号電流のイメージを矢付き点線で記号図に重畳図示した軌道回路信号電流経路図、(c),(d)が在来線運行時に在来線電車6から在来線軌道11,12を経て帰線15に至る帰線電流(電気車電流のうち帰電流の部分)のイメージを矢付き波線で記号図に重畳図示した電気車電流経路図である。
【0021】
また、図14図13と同じ併用電化区間に係るものであるが、図14は、新幹線運行時の状態を表しており、(a)が新幹線運行時に新幹線軌道11,13の軌道回路区間23T,34T,45Tに流れる軌道回路信号電流のイメージを矢付き点線で記号図に重畳図示した軌道回路信号電流経路図、(b),(c)が新幹線運行時に新幹線電車8から新幹線軌道11,13を経て帰線15に至る帰線電流(電気車電流のうち帰電流の部分)のイメージを矢付き波線で記号図に重畳図示した電気車電流経路図である。
【0022】
さらに、図15は、上述した図13図14と同じく在来線と新幹線とを併用可能な電化区間に係るものであるが、図15は、在来線軌道11,12と新幹線軌道11,13との併用軌道11〜13のうちき電区分境界部分を拡大した簡略図示の記号図であって(図14(a)の二点鎖線部分を参照)、在来線と新幹線との併用化に伴ってき電区分の切替セクションの所に導入される軌道回路切替システム60に必要な機能を表しており、(a)が在来線運行時の帰線電流(矢付き波線)と軌道回路信号電流(矢付き点線)との経路を示し、(b)が新幹線運行時の帰線電流(矢付き波線)と軌道回路信号電流(矢付き点線)との経路を示している。
【0023】
先ず軌道の併用化がなされるが(図13(a)参照)、新幹線軌道11,13には軌間が在来線軌道11,12より広い標準軌が採用されるため、両軌道に併用される併用軌道11〜13には、在来線と新幹線とに共用される既設レール11と、在来線専用の既設レール12とに加えて、新幹線専用の新設レール13も敷設されので、3本の走行レール11,12,13が並列になっている。次に、き電区分の切替セクションには性能の良い新幹線用のものが採用される。そして、帰線15の接続された軌道回路境界設備25が在来線軌道11,12に付設されている軌道回路区間境界たとえば軌道回路区間3T,4Tの間の既設レール絶縁14の上方に、き電区分の切替セクションが配置される。
【0024】
この場合、在来線軌道11,12の軌道回路区間2T〜5Tではそれぞれの区間の中で軌道回路信号電流が循環し(図13(b)参照)、Aセクション側電車線10aから電気車電流を受けた在来線電車6の帰線電流は在来線軌道11,12のAセクション側部分(2T,3T)とそこの軌道回路境界設備23と中央の軌道回路境界設備25とを経由して帰線15へ吸い上げられ(図13(c)参照)、Bセクション側電車線10bから電気車電流を受けた在来線電車6の帰線電流は在来線軌道11,12のBセクション側部分(5T,4T)とそこの軌道回路境界設備23と中央の軌道回路境界設備25とを経由して帰線15へ吸い上げられる(図13(d)参照)。
【0025】
これに対し、新設された新幹線軌道11,13については(図14(a)参照)、既設レール11に対しても新設レール13に対しても軌道回路区間3Tの中間位置の所と軌道回路区間4Tの中間位置の所とに新設レール絶縁17が介挿設置されるとともに、中央の既設レール絶縁14が短絡されて、中央の軌道回路区間34Tと、それよりAセクション側の軌道回路区間23Tと、軌道回路区間34TよりBセクション側の軌道回路区間45Tとに、区間割りされる。また、新設レール絶縁17の所には、軌道回路区間23T,34Tの境界でも、軌道回路区間34T,45Tの境界でも、帰線15の接続された後ほど詳述する軌道回路境界設備27が付設され、軌道回路境界設備25のインピーダンスボンドZBの一次巻線の両端が既設レール11と新設レール13とに分かれて接続される。
【0026】
この場合、新幹線軌道11,13の軌道回路区間23T,34T,45Tではそれぞれの区間の中で軌道回路信号電流が流れ(図14(a)の矢付き点線を参照)、Aセクション側電車線10aから電気車電流を受けた新幹線電車8の帰線電流は新幹線軌道11,13のAセクション側部分(23T)と軌道回路区間23T,34Tの境界の軌道回路境界設備27とを経由して帰線15へ吸い上げられ(図14(b)の矢付き波線を参照)、Bセクション側電車線10bから電気車電流を受けた新幹線電車8の帰線電流は新幹線軌道11,13のBセクション側部分(45T)と軌道回路区間34T,45Tの境界の軌道回路境界設備27とを経由して帰線15へ吸い上げられる(図14(c)の矢付き波線を参照)。
【0027】
在来線と新幹線とを併用するといっても、昼間は既存の在来線で営業運転が行われ、営業運転の無い夜間に新幹線で試験運転が行われるので、何れの運転も休止しているときに区間割が切替変更される。具体的には、在来線の営業運転が終わると新幹線の試験運転に備えて在来線用の軌道回路区間2T〜5Tから新幹線用の軌道回路区間23T,34T,45Tへ区間割が変更され、在来線の営業運転が始まる前に新幹線の試験運転を終えて新幹線用の軌道回路区間23T,34T,45Tから在来線用の軌道回路区間2T〜5Tへ区間割が戻される。そして、このような区間割の切替が可能な軌道回路切替システム60を実現するには(図15参照)、既設レール絶縁14や新設レール絶縁17の所に、高電圧大電流の電気車電流と低電圧小電流の軌道回路信号電流との双方を低損失で安定に流すことができるレール絶縁短絡器を付設することが求められる。
【0028】
詳述すると、新設レール絶縁17の所に付設する軌道回路境界設備61は、在来線運行時には在来線軌道11,12の両レールについて新設レール絶縁17の所を短絡させ(図15(a)参照)、新幹線運行時には新幹線軌道11,13の両レールについて新設レール絶縁17の所を解放させるとともに後述の軌道回路境界設備27として機能することが求められる(図15(b)参照)。また、中央の既設レール絶縁14の所に付設する軌道回路境界設備62は、新幹線運行時には新幹線軌道11,13の両レールについて既設レール絶縁14の所を短絡させ(図15(b)参照)、在来線運行時には在来線軌道11,12の両レールについて既設レール絶縁14の所を解放させるとともに上述の軌道回路境界設備25として機能することが求められる(図15(a)参照)。
【0029】
帰線電流を吸い上げる帰線15は、絶縁分離を要するAセクション側電車線10aやBセクション側電車線10bと異なり、帰線電流をAセクション側変電所16aへ戻すものと帰線電流をBセクション側変電所16bへ戻すものとが短絡接続されていても良いので、共振素子とリレー接点とで小電流の軌道回路信号電流の経路を切り替えにとどめ、大電流の帰線電流の経路は切り替えないで済ませれば、比較的簡便に所望の軌道回路境界設備61,62を実現できるが、この切替方式は各電流の周波数が弁別可能に離れていないと使えないところ、在来線向けと新幹線向けとで個別に設定された幾つもの信号が混在する併用軌道11〜13には、共振素子利用の上記切替方式が使用できない。そのため、大電流の帰線電流と小電流の軌道回路信号電流とを共に切り替えることが求められる。
【0030】
大電流の電路を開閉(短絡解放)できるものとしては、電気車電流を流す電車線10を開閉する切替開閉器30と、同様に大電流の経路を切り替えられる電磁接触器40と、帰線電流の経路を短絡解放する既設レール絶縁短絡器24とを上述したが、そのうち、切替素子にサイリスタを用いている既設レール絶縁短絡器24は、軌道回路信号電流を流そうとすると、電圧降下が2V〜4V程度あるため例えば10V程度で駆動される軌道回路信号に比べて電圧損失が無視できないうえ、流すことができる電流の最小値である保持電流が100mA以上であるため例えば数十mAの軌道回路信号電流では安定駆動が難しい。そのため、既設レール絶縁短絡器24を改良することで所望の軌道回路境界設備61,62を実現するのは期待できない。
【0031】
これに対し、機械式接点を開閉させる切替開閉器30や電磁接触器40は、主接点の接触抵抗が軌道回路信号の小電流でも十分に小さくなるよう、主接点の接触導通状態を良好に保つことができれば、所望の軌道回路境界設備61,62に適う切替素子となりうる。また、軌道回路境界設備61,62での切替が列車運行の無い時に実施されるので、軌道回路境界設備61,62切替素子には、切替速度が要求される訳でなく、過負荷継電器や消弧回路も不要なので、そのような観点からは簡素で安価な電磁接触器40を採用することができる。そこで、大電流による接点酸化膜や汚れの破壊が加わらなくても、機械的当接だけで接点酸化膜等が十分に破壊されて、大電流の帰線電流ばかりか小電流の軌道回路信号電流についても主接点の接触抵抗が十分に小さくなるよう、接点保持弾性部材54の弾撥力の強化や可動鉄心47の質量の軽量化の少なくとも一方を望ましくは双方を行って、主接点を閉じたときの衝突速度やその後の押圧力を高めるのが良いと思われる。
【0032】
しかしながら、そのような電磁接触器40を試作して性能や動作を確認したところ、接触抵抗等の性能については満足する結果が得られたが、動作については不安定な場合もあったので、試作した電磁接触器40の動作状態を再検討した。
図16は、電磁接触器40の正常な切替動作を示し、(a)〜(c)が、何れも、要部機構41〜54の右半分に係る一部断面の正面図と、その要部機構41〜54に係る一部断面の右側面図である。
【0033】
二つの主接点のうち開いている方を対象にして切替動作をみると、対象側では、主接点駆動部材52の揺動部が上がっており、その従動側伝動部53に駆動側伝動部48が係合している可動鉄心47も随伴して上がっている(図16(a)参照)。このとき、主接点駆動部材52の揺動端部が接点保持弾性部材54によって上向き付勢されるので、対象の主接点は開状態を維持する。その状態で、対象側の電磁コイル42に駆動電流が投入されると、電磁力によって可動鉄心47が下げられ、それに引かれて主接点駆動部材52の揺動部も下降する(図16(b)参照)。このとき、電磁力が接点保持弾性部材54の上向き付勢力を十分に上回っていれば、主接点駆動部材52が揺動し、その揺動が進んで主接点駆動部材52の対象側が上向きから下向きに転じると、接点保持弾性部材54の付勢力も上向きから下向きに転じ、この付勢力が主接点駆動部材52の揺動を加速する。
【0034】
対象側の主接点が閉じる前に可動鉄心47が止め部材43に当接するので(図16(b)参照)、主接点駆動部材52の揺動部が下がりきる前に可動鉄心47が下がりきって止まるが、従動側伝動部53と駆動側伝動部48との係合には揺動方向の遊びがあるので、具体的には従動側伝動部53が丸棒状軸体で縦方向長穴の駆動側伝動部48に遊挿されているので、主接点駆動部材52は慣性で揺動運動を続ける。そして、主接点駆動部材52の揺動部が下降するほど、接点保持弾性部材54の下向き付勢力が増すので、主接点駆動部材52の揺動が更に加速され、主接点駆動部材52の揺動部が下がりきったときには対象側の主接点が強く当接して閉じる(図16(c)参照)。それから、接点保持弾性部材54の下向き付勢力によって主接点の接触圧力・押圧力が維持される。
【0035】
このように主接点駆動部材52の揺動によって主接点が開閉し、閉じたときには、衝突速度が速いほど主接点の接触面の酸化膜や汚れ等が破壊され、酸化膜等が除去されるほど接触面状態が良くなって、接触抵抗が下がる傾向がある。とは言っても、その関係は単純でなく、印加電圧や通電流量の影響も強く受ける。例えば電流密度が高ければ通電によって酸化膜等が破壊され接触抵抗が下がる傾向もあるが、電流密度が低ければそれは期待できない。さらに、接触抵抗は接触圧力の影響も強く受け、接触圧力・押圧力が強いほど接触抵抗が下がる傾向もある。
【0036】
それらの傾向を考慮して、上述したように、大電流による酸化膜等の破壊が加わらなくても機械的当接だけでも主接点の接触抵抗が十分に小さくなるよう、閉時の主接点の衝突速度や押圧力を高めるために、接点保持弾性部材54の弾撥力強化や可動鉄心47の軽量化を電磁接触器40に施したのである。そして、閉じるべき主接点が閉じれば接触抵抗等の性能については大電流ばかりか小電流についても満足する結果が得られたのであるが、良いことばかりでなく、閉じるべき主接点が閉じきらないという不所望な事も時には起こるようにもなり、動作の安定性が損なわれてしまった。
【0037】
そこで、弾撥力強化や鉄心軽量化を施した電磁接触器40の切替動作の不安定化の原因を探るために、主接点駆動部材52の揺動状態を観察したところ、主接点が閉じきらなかったときでも可動鉄心47は止め部材43に当接していることと(図16(b)参照)、可動鉄心47の頭部が従動側伝動部53の軸方向へ片寄って主接点駆動部材52と擦れていることが判明した。可動鉄心47の頭部が片寄って主接点駆動部材52と擦れるのは、弾撥力強化や鉄心軽量化を施していない電磁接触器40についても観察されるが、この改造前の電磁接触器40では切替動作が安定している。
【0038】
このような弾撥力強化や鉄心軽量化の前後の比較から、接点保持弾性部材54の弾撥力強化や可動鉄心47の軽量化によって、主接点駆動部材52の揺動時の慣性力が弱まるとともに、加勢に転じる前には抑止力である接点保持弾性部材54の弾撥力が強まったため、慣性力と抑止力との差が縮まって、その差が可動鉄心47と主接点駆動部材52との間に働く摩擦力と大差なくなったので、擦れ具合によっては主接点駆動部材52が係合部の遊びを慣性力で乗り切って揺動し続けることが難しくなったものと推察される。
【0039】
詳述すると、主接点駆動部材52の揺動運動の進行状態が従動側伝動部53と駆動側伝動部48との係合部の遊びに入ってからも、主接点駆動部材52は慣性力で揺動を継続しようとするが、その慣性力による揺動運動が接点保持弾性部材54の加勢を得るときまで持たないと、主接点が閉じる前に主接点駆動部材52の揺動が止まってしまうが、その要因として、可動鉄心47と主接点駆動部材52との摩擦力が無視できなくなったと考えられるところ、切替動作が不安定になった電磁接触器40の可動鉄心47と主接点駆動部材52との当接面には強い摩擦力によるものと思われる擦過痕が見つかったためである。
【0040】
そこで、大電流の帰線電流ばかりか小電流の軌道回路信号電流についても通電時の主接点の接触抵抗が小さくなるよう接点保持弾性部材54の弾撥力強化や可動鉄心47の軽量化を施したうえで、可動鉄心47と主接点駆動部材52との摩擦力が弱まるようにも改良を重ねることにより、安定して動作する電磁接触器を実現することが技術課題となる。
また、そのような電磁接触器を用いることにより併用軌道の軌道回路の区間割を切り替えるレール絶縁短絡器や軌道回路切替システムを実現することも重要な課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0041】
本発明の電磁接触器は(解決手段1)、このような課題を解決するために創案されたものであり、主接点駆動部材と遊びを持って係合している可動鉄心の電磁駆動に応動して前記主接点駆動部材が双方向に揺動することにより二つの主接点が交互に開閉するとともに何れの揺動限界でも接点保持弾性部材の弾撥力によって主接点駆動部材の姿勢が維持される双投双刃形の電磁接触器において、前記主接点駆動部材と前記可動鉄心との係合部に両者の何れよりも柔らかい非磁性の間隙保持部材を配設したことを特徴とする。
【0042】
また、本発明の電磁接触器は(解決手段2)、主接点駆動部材と遊びを持って係合している可動鉄心の電磁駆動に応動して前記主接点駆動部材が双方向に揺動することにより二つの主接点が交互に開閉するとともに何れの揺動限界でも前記接点保持弾性部材の弾撥力によって前記主接点駆動部材の姿勢が維持される双投双刃形の接点機構部を有しており、新幹線のき電区分の切替セクションの所でレールに接続されて該レールのレール絶縁を短絡解放する双投双刃形の電磁接触器において、
前記接点保持弾性部材の軽量化と前記接点保持弾性部材の弾撥力の強化とにより前記主接点の接触抵抗が電気車電流の通電時にも軌道回路信号電流の通電時にも通電に適う抵抗値にまで小さくなっており、
前記主接点駆動部材と前記可動鉄心との係合部に両者の何れよりも柔らかい非磁性の間隙保持部材が配設されたことにより、前記主接点駆動部材と前記可動鉄心との間隙が前記間隙保持部材の厚み以上に維持されるとともに、前記主接点駆動部材および前記可動鉄心と前記間隙保持部材との摩擦面で擦れ合う部材に硬度差が確保されている
ことを特徴とする。
【0043】
さらに、本発明のレール絶縁短絡器は(解決手段3)、上記解決手段1,2の電磁接触器の対からなりレール絶縁の両側に接続されてレール絶縁の短絡・解放を行うものであり、具体的には、
主接点の開閉にて共通接続端子を第1開閉端子および第2開閉端子の何れかと択一的に短絡させる電磁接触器を一対具備していて新幹線のき電区分の切替セクションの所でレール絶縁を短絡解放するレール絶縁短絡器であって、
前記電磁接触器は、それぞれの共通接続端子が前記レール絶縁の両側に分かれてレールに接続されており、互いの第1開閉端子同士が短絡接続されており、それぞれの第2開閉端子が帰線電流吸上用リアクトルを介して帰線に接続されており、更に、主接点駆動部材と遊びを持って係合している可動鉄心の電磁駆動に応動して前記主接点駆動部材が双方向に揺動することにより二つの主接点が交互に開閉するとともに何れの揺動限界でも前記接点保持弾性部材の弾撥力によって前記主接点駆動部材の姿勢が維持される双投双刃形の接点機構部を有したものであり、
前記主接点駆動部材と前記可動鉄心との係合部に両者の何れよりも柔らかい非磁性の間隙保持部材が配設されたことにより、前記主接点駆動部材と前記可動鉄心との間隙が前記間隙保持部材の厚み以上に維持されるとともに、前記主接点駆動部材および前記可動鉄心と前記間隙保持部材との摩擦面で擦れ合う部材に硬度差が確保されている
ことを特徴とする。
【0044】
また、本発明の軌道回路切替システムは(解決手段4)、上記解決手段3のレール絶縁短絡器を複数使用して在来線と新幹線との併用軌道における軌道回路の区間割と帰線電流の吸い上げ経路とを切り替えるものであり、具体的には、
在来線の複条軌道をなす一対の既設レールと、その一方のレールを共用することで新幹線の複条軌道をなす新設レールと、前記既設レールに設置された既設レール絶縁と、前記既設レール絶縁の上方の電車線に設けられた新幹線のき電区分の切替セクションと、前記既設レール絶縁の両側で前記既設レール及び前記新設レールに介挿設置された新設レール絶縁と、前記既設レールそれぞれに設けられて前記既設レール絶縁のうち対応するものの短絡解放を切り替えるレール絶縁短絡器と、前記既設レール及び前記新設レールそれぞれに設けられて前記新設レール絶縁のうち対応するものの短絡解放を切り替えるレール絶縁短絡器とを備えた軌道回路切替システムであって、
前記既設レール絶縁に係る前記レール絶縁短絡器と前記新設レール絶縁に係る前記レール絶縁短絡器とが短絡と解放とを逆に行うようになっており、
前記レール絶縁短絡器が、何れも、二つの主接点の開閉にて共通接続端子を第1開閉端子および第2開閉端子の何れかと択一的に短絡させる一対の電磁接触器を具備したものであり、対をなす前記電磁接触器は、それぞれの共通接続端子が前記既設レール絶縁と前記新設レール絶縁とのうち何れか対応するレール絶縁の両側に分かれて前記既設レールと前記新設レールとのうち何れか対応するレールに接続されており、互いの第1開閉端子同士が短絡接続されており、それぞれの第2開閉端子が帰線電流吸上用リアクトルを介して帰線に接続されており、
前記電磁接触器は、何れも、主接点駆動部材と遊びを持って係合している可動鉄心の電磁駆動に応動して前記主接点駆動部材が双方向に揺動することにより前記主接点が交互に開閉するとともに何れの揺動限界でも前記接点保持弾性部材の弾撥力によって前記主接点駆動部材の姿勢が維持される双投双刃形の接点機構部を有したものであり、
前記主接点駆動部材と前記可動鉄心との係合部に両者の何れよりも柔らかい非磁性の間隙保持部材が配設されたことにより、前記主接点駆動部材と前記可動鉄心との間隙が前記間隙保持部材の厚み以上に維持されるとともに、前記主接点駆動部材および前記可動鉄心と前記間隙保持部材との摩擦面で擦れ合う部材に硬度差が確保されている
ことを特徴とする。
【0045】
また、本発明の軌道回路切替システムは(解決手段5)、上記解決手段4の軌道回路切替システムであって更に、前記電磁接触器がそれの主接点に随伴して開閉する補助接点を具備したものであり、前記電磁接触器のうち何れかがその補助接点にて他の電磁接触器の電磁駆動用電力投入ラインを開閉することにより前記電磁接触器のうち複数のものが連動するようになっていることを特徴とする。
【0046】
また、本発明のレール絶縁短絡器は(解決手段6)、上記解決手段3のレール絶縁短絡器であって更に、前記電磁接触器がそれの主接点に随伴して開閉する補助接点を具備したものであり、対をなす前記電磁接触器のうち何れか一方がその補助接点にて他方の電磁接触器の電磁駆動用電力投入ラインを開閉することにより前記電磁接触器の対が連動するようになっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0047】
このような本発明の電磁接触器にあっては(解決手段1,2)、柔らかい非磁性の間隙保持部材の配設により、主接点駆動部材と可動鉄心との間隙が間隙保持部材の厚み以上に維持されるため、例え可動鉄心の頭部が片寄っても主接点駆動部材との離隔距離が一定以上に保たれることから、その離隔距離を磁気ギャップとする残留磁気等による引付け力の上限が下がるので、係合部の摩擦力が不所望に大きくなるのを回避することができる。また、係合部において擦れ合う両部材の摩擦面に硬度差まで確保されるので、同質材や同硬度材のときよりも更に摩擦力が低減される。そのため、電磁接触器が双投双刃形であり主接点駆動部材と可動鉄心との係合部に遊びのあるものであっても、主接点駆動部材の慣性力を損ねる要因が減じられて、主接点駆動部材が安定して円滑に揺動することとなる。
【0048】
このように主接点駆動部材の揺動に不都合な影響を緩和低減したことにより、大電流の電気車電流ばかりか小電流の軌道回路信号電流についても通電時の主接点の接触抵抗が小さくなるよう延いては電圧損失が小さくなるよう接点保持弾性部材の弾撥力強化や可動鉄心の軽量化を施しても、主接点駆動部材が安定して円滑に揺動するので、本発明の電磁接触器はレール絶縁の短絡解放を切り替えるのに適うものとなる。
したがって、この発明によれば、レール絶縁短絡器に使用可能であって安定動作する電磁接触器を実現すことができる。
【0049】
また、本発明のレール絶縁短絡器にあっては(解決手段3)、一本のレールにおける一カ所のレール絶縁について、短絡状態と解放状態とが切り替えられ、短絡時には軌道回路が合併されるとともに帰線電流の経路が帰線から切り離されてレール沿いに延伸される一方、解放時には軌道回路が分割されるとともに帰線電流の経路が帰線側へ繋ぎ直される。これにより、軌道回路の区間割と同時に帰線電流の経路も切り替えられる。しかも、その切替には大電流でも小電流でも低損失で安定動作する電磁接触器が使用される。
したがって、この発明によれば、軌道回路の区間割に加えて帰線電流の吸い上げ経路をも安定かつ的確に切り替えるレール絶縁短絡器を実現することができる。
【0050】
さらに、本発明の軌道回路切替システムにあっては(解決手段4)、在来線の既設レール絶縁の上方の電車線に対して新幹線のき電区分の切替セクションを設けて在来線と新幹線とで併用可能とした軌道について、既設レール絶縁の両側に新設レール絶縁を追加するとともに、既設レール絶縁が短絡されているときには新設レール絶縁が解放され既設レール絶縁が解放されているときには新設レール絶縁が短絡されるようにしたことにより、在来線の運行時と新幹線の運行時とで軌道回路の区間割と帰線電流の経路とが異なるものとなるようレール絶縁状態が切り替えられる。そのため、在来線と新幹線とで運行を切り替える際に軌道回路の区間割と同時に帰線電流の経路も切り替えられる。しかも、その切替には大電流でも小電流でも低損失で安定動作する電磁接触器が使用される。
したがって、本発明によれば、併用軌道の軌道回路の区間割に加えて帰線電流の吸い上げ経路をも安定かつ的確に切り替える軌道回路切替システムを実現することができる。
【0051】
また、本発明の軌道回路切替システム(解決手段5)及びレール絶縁短絡器(解決手段6)は、主接点に随伴して開閉する補助接点を利用して複数の又は一対の電磁接触器が連動するようにしたことにより、切替制御を担う切替信号は、一個の又は少数の電磁接触器の電磁駆動用電力投入ラインを開閉できれば良く、電磁接触器の個数が多くなってもそれほど大きな駆動力を要求されないので、切替信号を出力する制御装置側の負担が軽くて済む。また、電磁接触器の電磁駆動用電力投入タイミングが少しずつずれるので、電磁接触器の個数が多くなっても電磁駆動用電力のピークはそれほど大きくならないので、電磁駆動用電力を供給する電源側の負担も軽くて済むこととなる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】本発明の実施例1について、レール絶縁短絡器用の電磁接触器の構造を示し、(a)が要部機構に係る一部断面の正面図、(b)が伝動部等の正面図とその一部の断面図、(c)が伝動部等の右側面図とその一部の断面図である。
図2】レール絶縁短絡器用の電磁接触器の切替動作を示し、(a)〜(c)、何れも、要部機構の右半分に係る一部断面の正面図と、その要部機構に係る一部断面の右側面図である。
図3】本発明の実施例2について、電磁接触器を用いたレール絶縁短絡器および軌道回路切替システムの構造を示す記号図である。
図4】複数の電磁接触器に係る切替信号の結線図である。
図5】在来線運行時の電気車電流と軌道回路信号電流との経路を示す記号図である。
図6】在来線運行時の電気車電流と軌道回路信号電流との経路を示す記号図である。
図7】新幹線運行時の電気車電流と軌道回路信号電流との経路を示す記号図である。
図8】新幹線運行時の電気車電流と軌道回路信号電流との経路を示す記号図である。
図9】新幹線運行時の電気車電流と軌道回路信号電流との経路を示す記号図である。
図10】在来線の電化区間を示し、(a)が記号図、(b)が電気車電流の経路図、(c)が軌道回路信号電流の経路図である。
図11】新幹線用のき電区分の切替セクションについて、(a)が記号図、(b)〜(d)が新幹線電車の通過に伴う電気車電流の経路の切り替わりを示している。
図12】大電流経路切替用の電磁接触器の部分の構造を示し、(a)が要部機構に係る一部断面の正面図、(b)が回路図である。
図13】在来線にレールを追加して新幹線と併用可能になった電化区間に係るき電区分の切替セクションについて、(a)が記号図、(b)が在来線運行時の軌道回路信号電流の経路を示し、(c),(d)が在来線運行時の電気車電流の経路を示している。
図14】在来線にレールを追加して新幹線と併用可能になった電化区間に係るき電区分の切替セクションについて、(a)が新幹線運行時の軌道回路信号電流の経路を示し、(b),(c)が新幹線運行時の電気車電流の経路を示している。
図15】在来線と新幹線との併用化に伴ってき電区分の切替セクションの所に導入される軌道回路切替システムに必要な機能を示す記号図であり、(a)が在来線運行時の帰線電流と軌道回路信号電流との経路を示し、(b)が新幹線運行時の帰線電流と軌道回路信号電流との経路を示している。
図16】大電流経路切替用の電磁接触器の切替動作を示し、(a)〜(c)、何れも、要部機構の右半分に係る一部断面の正面図と、その要部機構に係る一部断面の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
このような本発明のレール絶縁短絡器,レール絶縁短絡器用の電磁接触器,及びレール絶縁短絡器使用の軌道回路切替システムについて、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1〜2により説明する。
図1〜2に示した実施例1は、レール絶縁短絡器用の電磁接触器に係る上述の解決手段1〜2(出願当初の請求項1〜2)を具現化したものであり、図3〜9に示した実施例2は、電磁接触器を用いたレール絶縁短絡器と軌道回路切替システムとに係る上述の解決手段3〜6(出願当初の請求項3〜6)を具現化したものである。
【0054】
なお、それらの図示に際しては、簡明化等のため、ボルト等の締結具や,電気回路・電子回路の詳細などは図示を割愛し、記号図や模式図を多用して発明の説明に必要なものや関連するものを中心に図示した。また、それらの図示に際し従来と同様の構成要素には同一の符号を付して示したので、さらに、それらについて背景技術の欄で述べたことは以下の各実施例についても共通するので、重複する再度の説明は割愛し、以下、従来との相違点を中心に説明する。
【実施例1】
【0055】
本発明のレール絶縁短絡器用の電磁接触器に係る実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図1は、(a)が電磁接触器70の要部機構41〜54,71に係る一部42〜44,47だけ断面の正面図、(b)が電磁接触器70の要部機構41〜54,71における伝動部48,53等の正面図とそのうちの二点鎖線楕円内部分の断面図、(c)が伝動部48,53等の右側面図とそのうちの二点鎖線楕円内部分の断面図である。
【0056】
この電磁接触器70が既述した電磁接触器40と相違するのは、可動鉄心47の頭部と主接点駆動部材52の従動側伝動部53植設部との間隙が少し広げられてそこに間隙保持部材71が追加された点である。
また、電磁接触器70では、既述した一般的な電磁接触器40に比べて、可動鉄心47の質量が軽量化されるとともに、接点保持弾性部材54の弾撥力が強化されている。
【0057】
間隙保持部材71は、例えば平ワッシャ状の板体で中央に穴が開いており、その穴に遊挿された従動側伝動部53によって可動鉄心47と主接点駆動部材52との間に保持されるが、両部材47,52の間隙が可動鉄心47の両側に存在するので、両間隙に一つずつ配設されている。間隙保持部材71が両部材47,52と強く擦れないよう、両部材47,52の間隙より間隙保持部材71は少し薄く形成されており、数値例を挙げると間隙が2mmで間隙保持部材71の厚みが1.5mmである。また、間隙保持部材71は、安価な真鍮や加工容易な快削黄銅といった非鉄材から作られて、非磁性であるとともに、鉄が主材の可動鉄心47や主接点駆動部材52より柔らかい低硬度のものとなっている。
【0058】
この実施例1のレール絶縁短絡器用の電磁接触器70について、その動作等を、図面を引用して説明する。図2(a)〜(c)は、何れも、左側が電磁接触器70の要部機構41〜54,71の右半分に係る一部42〜44,47だけ断面の正面図であり、右側が電磁接触器70の要部機構41〜54,71に係る一部42〜44,47だけ断面の右側面図である。
【0059】
ここでも、二つの主接点のうち開いている方を対象にして切替動作をみると、対象側では、主接点駆動部材52の揺動部も、その従動側伝動部53に駆動側伝動部48が係合している可動鉄心47も、上がっていて(図2(a)参照)、主接点駆動部材52の揺動端部が接点保持弾性部材54によって上向き付勢されるので、対象の主接点は開状態を維持する。その状態で、対象側の電磁コイル42に駆動電流が投入されると、電磁力によって可動鉄心47が下げられ、それに引かれて主接点駆動部材52の揺動部も下降し始める。接点保持弾性部材54の上向き付勢力が強化されているが、間隙保持部材71の導入によって可動鉄心47と主接点駆動部材52との摩擦力が低減されていて、電磁力の減殺要因の総和はさほど増えないので、電磁力によって可動鉄心47が下降し続け、随伴して主接点駆動部材52も揺動し続ける。
【0060】
揺動が継続されると、やがて主接点駆動部材52の対象側が上向きから下向きに転じるとともに、接点保持弾性部材54の付勢力も上向きから下向きに転じ、この付勢力が今度は主接点駆動部材52の揺動を加速するが、付勢力が強化されるとともに可動鉄心47が軽量化されたうえ摩擦力が低減されているので、主接点駆動部材52の揺動は急加速される。そして、可動鉄心47の駆動側伝動部48と主接点駆動部材52の従動側伝動部53との係合には遊びがあるため、対象側の主接点が閉じる前に可動鉄心47が止め部材43に当接し(図2(b)参照)、主接点駆動部材52の揺動部が下がりきる前に可動鉄心47が下がりきって止まる。
【0061】
主接点駆動部材52の軽量化によって主接点駆動部材52の慣性力は低下するが、その一方で軽量化により主接点駆動部材52の揺動が高速になることと、接点保持弾性部材54の強化や摩擦力の低減によって接点駆動部材52の揺動が更に高速になることとが相まって、慣性力の低下が抑制されるとともに慣性力の対向力が低減されるので、主接点駆動部材52は安定して確実に慣性で揺動運動を続ける。そして、主接点駆動部材52の揺動部が下降するほど、強化された接点保持弾性部材54の下向き付勢力が増すので、主接点駆動部材52の揺動部が下がりきったときには対象側の主接点が強く当接して閉じる(図2(c)参照)。それから、強化された接点保持弾性部材54の下向き付勢力によって主接点の接触圧力・押圧力が強く維持されるので、大電流による酸化膜等の破壊が加わるまでもなく機械的当接だけで主接点の接触抵抗ひいては電圧損失が十分に小さくなる。
【0062】
大電流切替用の一般的な電磁接触器が元になっているが接点保持弾性部材54を強化し可動鉄心47を軽量化した電磁接触器40の場合、切替動作不良の発生頻度は1回/1万6千回であった。
これに対し、本発明の電磁接触器70の場合、切替動作不良の発生頻度は0回/ 5万回であった。
このように、電磁接触器70は、安定して切り替わる。しかも、主接点の接触抵抗が電気車電流の通電に適うとともに軌道回路信号電流の通電にも適う抵抗値にまで小さくなっている。
【実施例2】
【0063】
本発明のレール絶縁短絡器と軌道回路切替システムに係る実施例2について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図3は、上述の電磁接触器70を一対用いたレール絶縁短絡器70,70と、そのレール絶縁短絡器70,70を複数用いた軌道回路切替システム80とに係る記号図であり、図4は、複数の電磁接触器70に係る切替信号の結線図である。
【0064】
この軌道回路切替システム80は(図3参照)、在来線と新幹線とを併用可能にしたものであり、既存の在来線の設備から引き継いだものとして、在来線の複条軌道11,12をなす一対の既設レール11及び既設レール12と、在来線の既設レール11,12に対して介挿設置され図示の例では軌道回路区間2T,3Tの境界と軌道回路区間3T,4Tの境界と軌道回路区間4T,5Tの境界との三カ所に設置された既設レール絶縁14,14と、三カ所のうち中央すなわち軌道回路区間3T,4Tの間の既設レール絶縁14,14の所で既設レール11,12に接続された軌道回路境界設備25と、三カ所のうち両側二カ所すなわち軌道回路区間2T,3Tの間と軌道回路区間4T,5Tの間の既設レール絶縁14,14の所で既設レール11,12に接続された軌道回路境界設備23,23と、各軌道回路区間2T〜5Tにおいて既設レール11,12に接続されて軌道回路信号を送受信する複数・多数の既設TD送信器21及び既設TD受信器22とを具備している。
【0065】
また、軌道回路切替システム80は、新幹線用に追加設置された設備として、上述した三カ所のうち中央すなわち軌道回路区間3T,4Tの間の既設レール絶縁14,14の上方の電車線10(10a,10b,10c)に設けられた新幹線のき電区分の切替セクションと、この切替セクションで電車線10に接続されて電気車電流の電源を切り替える切替開閉器30と、在来線軌道11,12の一方の既設レール11を共用することで新幹線の複条軌道11,13をなす新設レール13と、上述した中央の既設レール絶縁14,14の両側で具体的には軌道回路区間23T,34Tの境界と軌道回路区間34T,45Tの境界との二カ所で既設レール11,12及び新設レール13に介挿設置された新設レール絶縁17,17,17とを具備している。
【0066】
さらに、軌道回路切替システム80は、昼間などには在来線で営業運行が行われるが夜間などには新幹線で試験運行が行われるのに対応して、何れの運行も行われない運行休止時に、在来線用の軌道回路区間2T〜5Tの区間割と新幹線用の軌道回路区間23T,34T,45Tの区間割とを切り替えることと、帰線15による帰線電流を吸い上げ箇所を在来線の軌道回路区間3T,4Tの境界一カ所と新幹線の軌道回路区間23T,34Tの境界および軌道回路区間34T,45Tの境界二カ所とを切り替えることも行うために、軌道回路区間23T,34Tの境界の新設レール絶縁17,17,17の所には軌道回路境界設備81が付設され、軌道回路区間3T,4Tの境界の既設レール絶縁14,14の所には軌道回路境界設備82が付設され、軌道回路区間34T,45Tの境界の新設レール絶縁17,17,17の所には軌道回路境界設備83が付設されている。
【0067】
軌道回路境界設備82は、在来線から引き継いだ上述の軌道回路境界設備25に加え、新設された二組のレール絶縁短絡器を具備していて、中央の既設レール絶縁14,14すなわち軌道回路区間3T,4Tの境界の既設レール絶縁14,14の短絡解放を切り替えるようになっている。上記二組のレール絶縁短絡器のうち、既設レール11の既設レール絶縁14に対応したレール絶縁短絡器70,70は、一対の電磁接触器70,70を具備しており、そのうち一方の電磁接触器70は、共通接続端子40cが既設レール絶縁14の軌道回路区間3T側で既設レール11に接続され、常閉の第1開閉端子40aが軌道回路境界設備25の軌道回路区間3T側のインピーダンスボンドZBの一次巻線の一端に接続されており、他方の電磁接触器70は、共通接続端子40cが既設レール絶縁14の軌道回路区間4T側で既設レール11に接続され、常閉の第1開閉端子40aが軌道回路境界設備25の軌道回路区間4T側のインピーダンスボンドZBの一次巻線の一端に接続されており、何れの電磁接触器70も、常開の第2開閉端子40bが相方の第2開閉端子40bと互いに短絡接続されている。このようなレール絶縁短絡器の電磁接触器70,70は、何れも、それぞれの常閉の第1開閉端子40aがインピーダンスボンドZBの一次巻線の半分に相当する巻線(帰線電流吸上用リアクトル)を介して帰線15に接続されたものとなっている。
【0068】
また、軌道回路境界設備82における上記二組のレール絶縁短絡器のうち、既設レール12の既設レール絶縁14に対応したレール絶縁短絡器70,70も、やはり一対の電磁接触器70,70を具備しており、そのうち一方の電磁接触器70は、共通接続端子40cが既設レール絶縁14の軌道回路区間3T側で既設レール12に接続され、常閉の第1開閉端子40aが軌道回路境界設備25の軌道回路区間3T側のインピーダンスボンドZBの一次巻線の他端に接続されており、他方の電磁接触器70は、共通接続端子40cが既設レール絶縁14の軌道回路区間4T側で既設レール12に接続され、常閉の第1開閉端子40aが軌道回路境界設備25の軌道回路区間4T側のインピーダンスボンドZBの一次巻線の他端に接続されており、何れの電磁接触器70も、常開の第2開閉端子40bが相方の第2開閉端子40bと互いに短絡接続されている。このようなレール絶縁短絡器の電磁接触器70,70も、常閉の第1開閉端子40aがインピーダンスボンドZBの一次巻線の半分に相当する巻線(帰線電流吸上用リアクトル)を介して帰線15に接続されたものとなっている。
【0069】
軌道回路境界設備81,83は設置箇所が異なるだけで同一構造・同一機能のものなので、一方の設備81だけ詳述するが、軌道回路境界設備81は、新設された三組のレール絶縁短絡器と六個の帰線電流吸上用リアクトルL(前述の軌道回路境界設備27に相当)とを具備していて、左方の新設レール絶縁17,17,17すなわち軌道回路区間23T,34Tの境界の新設レール絶縁17,17,17の短絡解放を切り替えるようになっている。なお、帰線電流吸上用リアクトルLは、何れも、インピーダンスボンドZBの一部ではないがインダクタンス値が既述したインピーダンスボンドZBの一巻線の半分のインダクタンスに相当するリアクトル(コイル,インダクタンス部材)であり、一端が帰線15に接続されている。インピーダンスボンドZBでは不平衡を生じるためである。
【0070】
軌道回路境界設備81における上記三組のレール絶縁短絡器のうち、既設レール11の新設レール絶縁17に対応したレール絶縁短絡器70,70も、一対の電磁接触器70,70を具備しているが、そのうち一方の電磁接触器70は、共通接続端子40cが新設レール絶縁17の軌道回路区間23T側で既設レール11に接続され、常開の第1開閉端子40aが一つの帰線電流吸上用リアクトルLの他端に接続されており、他方の電磁接触器70は、共通接続端子40cが新設レール絶縁17の軌道回路区間34T側で既設レール11に接続され、常開の第1開閉端子40aが他の帰線電流吸上用リアクトルLの他端に接続されており、何れの電磁接触器70も、常閉の第2開閉端子40bが相方の第2開閉端子40bと互いに短絡接続されている。
【0071】
軌道回路境界設備81における上記三組のレール絶縁短絡器のうち、既設レール12の新設レール絶縁17に対応したレール絶縁短絡器70,70も、やはり一対の電磁接触器70,70を具備しており、そのうち一方の電磁接触器70は、共通接続端子40cが新設レール絶縁17の軌道回路区間23T側で既設レール12に接続され、常開の第1開閉端子40aが一つの帰線電流吸上用リアクトルLの他端に接続されており、他方の電磁接触器70は、共通接続端子40cが新設レール絶縁17の軌道回路区間34T側で既設レール12に接続され、常開の第1開閉端子40aが他の帰線電流吸上用リアクトルLの他端に接続されており、何れの電磁接触器70も、常閉の第2開閉端子40bが相方の第2開閉端子40bと互いに短絡接続されている。
【0072】
軌道回路境界設備81における上記三組のレール絶縁短絡器のうち、新設レール13の新設レール絶縁17に対応したレール絶縁短絡器70,70も、やはり一対の電磁接触器70,70を具備しており、そのうち一方の電磁接触器70は、共通接続端子40cが新設レール絶縁17の軌道回路区間23T側で新設レール13に接続され、常開の第1開閉端子40aが一つの帰線電流吸上用リアクトルLの他端に接続されており、他方の電磁接触器70は、共通接続端子40cが新設レール絶縁17の軌道回路区間34T側で新設レール13に接続され、常開の第1開閉端子40aが他の帰線電流吸上用リアクトルLの他端に接続されており、何れの電磁接触器70も、常閉の第2開閉端子40bが相方の第2開閉端子40bと互いに短絡接続されている。
【0073】
このように軌道回路境界設備81,83のレール絶縁短絡器の電磁接触器70,70は解放用の第1開閉端子40aが常開すなわち定常営業時に開状態になっているとともに短絡用の第2開閉端子40bが常閉すなわち定常営業時に閉状態になっているのに対し、軌道回路境界設備82のレール絶縁短絡器の電磁接触器70,70は解放用の第1開閉端子40aが常閉で短絡用の第2開閉端子40bが常開になっているので、既設レール絶縁14,14に係る軌道回路境界設備82のレール絶縁短絡器と新設レール絶縁17,17,17に係る軌道回路境界設備81,83のレール絶縁短絡器とは短絡と解放とを逆に行う。具体的には、図示しない制御装置から与えられる切替信号に応じて、定常営業の在来線運行時には新設レール絶縁17,17,17を短絡するとともに既設レール絶縁14,14を解放し、定常営業でなく試験である新幹線運行時には新設レール絶縁17,17,17を解放して既設レール絶縁14,14を短絡するようになっている。また、短絡箇所ではそこのレールを帰線15から切り離し、解放箇所ではそこのレールを帰線電流吸上用リアクトルL経由で帰線15に繋ぐようにもなっている。
【0074】
さらに、何れの電磁接触器70も、既述の一般的な電磁接触器40と同じく主接点駆動部材52と遊びを持って係合している可動鉄心47の電磁駆動に応動して主接点駆動部材52が双方向に揺動することにより主接点が交互に開閉するとともに何れの揺動限界でも接点保持弾性部材54の弾撥力によって主接点駆動部材52の姿勢が維持される双投双刃形の接点機構部を有したものであることや、可動鉄心47は電磁接触器40の可動鉄心と同様であるが主接点駆動部材52が電磁接触器40の主接点駆動部材より軽量化されていること、接点保持弾性部材54の弾撥力が電磁接触器40の接点保持弾性部材より強化されていること、その軽量化と弾撥力強化とによって主接点の接触抵抗が電気車電流の通電時にも軌道回路信号電流の通電時にも十分に小さくなっていること、主接点駆動部材52と可動鉄心47との係合部に両者の何れよりも柔らかい非磁性の間隙保持部材71,71が配設されたことにより主接点駆動部材52と可動鉄心47との間隙が間隙保持部材71の厚み以上に維持されるとともに主接点駆動部材52および可動鉄心47と間隙保持部材71との摩擦面で擦れ合う部材に硬度差が確保されていることは、上述の通りである。
【0075】
また(図4参照)、この軌道回路切替システム80では、多数の電磁接触器70が、何れも、それぞれの主接点に随伴して交互に開閉する補助接点56,57(図12(b)で示した補助接点A1A2,A3A4,A5A6,A7A8,B1B2,B3B4,B5B6,B7B8のうち何れか二つに相当)を具備したものであり、さらに電磁駆動用電力として交流AC100Vが投入されるが、第1電磁コイル42aへの電磁駆動用電力投入ラインは第1切替信号入力端子55a経由の信号によって開閉され、第2電磁コイル42bへの電磁駆動用電力投入ラインは第1切替信号入力端子55a経由の信号によって開閉されるようになっている。
【0076】
そのような多数の電磁接触器70のうち少なくとも一つは(図4では左側の電磁接触器70)、それの第1切替信号入力端子55a及び第2切替信号入力端子55bに、図示しない制御装置から送られてきた切替信号を入力することで、電磁駆動用電力投入ラインが直接的に切替信号に従って開閉される。また、他の電磁接触器70は(図4では右側の電磁接触器70)、それの第1切替信号入力端子55a及び第2切替信号入力端子55bに、上記の電磁接触器70(図4では左側の電磁接触器70)の補助接点57及び補助接点56の開閉状態に対応した信号を入力することで、電磁駆動用電力投入ラインが間接的に切替信号に従って開閉される。これにより、軌道回路切替システム80における多数の電磁接触器70も、軌道回路切替システム80に含まれる幾つかのレール絶縁短絡器において対をなす電磁接触器70も、連動して開閉するものとなっている。
【0077】
この実施例2の軌道回路切替システム80について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。図5図6は在来線運行時の電気車電流(矢付き波線)と軌道回路信号電流(矢付き点線)との経路を示す記号図であり、図7図8図9は、新幹線運行時の電気車電流(矢付き波線)と軌道回路信号電流(矢付き点線)との経路を示す記号図である。各図の軌道回路境界設備81,82,83については、電磁接触器70の切替状態による電流経路の変化を明示するため、帰線電流(電気車電流)や軌道回路信号電流を流せる経路は実線で示し、帰線電流や軌道回路信号電流を流せない経路は点線で示した。
【0078】
在来線の営業運行時は(図5図6参照)、切替信号の指示に応じてそれを直接的に受ける電磁接触器70が軌道回路境界設備81,83では新設レール絶縁17を短絡するように切り替わり軌道回路境界設備82では既設レール絶縁14を解放し且つその両側の既設レール11,12を軌道回路境界設備25のインピーダンスボンドZBの一次巻線に接続するように切り替わる。そして、その電磁接触器70の補助接点56,57を介して切替信号の指示を間接的に受ける他の電磁接触器70も、順次、同様に切り替わる。電磁接触器70の切替は実施例1で述べたように安定して行われ、切替後は大電流の帰線電流も小電流の軌道回路信号電流も低損失で安定に流せる状態になる。
【0079】
総ての電磁接触器70が在来線運行側に切り替わると、既設レール11でも既設レール12でも新設レール13でも新設レール絶縁17が軌道回路境界設備81,83のレール絶縁短絡器70,70によって短絡される一方、既設レール11,12の既設レール絶縁14,14が軌道回路境界設備82のレール絶縁短絡器70,70によって解放されるとともに、既設レール絶縁14,14の所では両側(軌道回路区間3T側と軌道回路区間4T側)で既設レール11,12が軌道回路境界設備25のインピーダンスボンドZBの一次巻線の両端に分かれて接続された状態になる。
【0080】
この状態は、既設レール11,12からなる在来線軌道11,12について見ると、既述した在来線だけの状態と同じである(図10参照)。すなわち(図5図6参照)、中央の既設レール絶縁14,14と左方の既設レール絶縁14,14とその間の既設レール11,12とその両端のインピーダンスボンドZBとで軌道回路区間3Tが画成されて、そこの在来線軌道11,12に接続された既設TD送信器21と既設TD受信器22等で送受信される軌道回路信号電流が軌道回路区間3Tを循環するとともに、中央の既設レール絶縁14,14と右方の既設レール絶縁14,14とその間の既設レール11,12とその両端のインピーダンスボンドZBとで軌道回路区間4Tが画成されて、そこに接続された既設TD送信器21と既設TD受信器22等で送受信される軌道回路信号電流が軌道回路区間4Tを循環する。
【0081】
そして(図5参照)、在来線電車6がAセクション側からき電区分の切替セクションに向かって(図では左から右向きで)在来線軌道11,12を走行して来ると、き電区分の切替セクションの切替開閉器30が既述の切替状態Aになってセクション中間電車線10cがAセクション側電車線10aに接続されるので、電気車電流がAセクション側電車線10aから在来線電車6に流れ、その帰線電流が軌道回路区間3Tの既設レール11,12と軌道回路境界設備82のレール絶縁短絡器70,70と軌道回路境界設備25の軌道回路区間3T側のインピーダンスボンドZBとを経由して帰線15に吸い上げられる。
【0082】
それから(図6参照)、在来線電車6が軌道回路区間3Tを過ぎて軌道回路区間4Tに進むと、き電区分の切替セクションの切替開閉器30が既述の切替状態Bになってセクション中間電車線10cがBセクション側電車線10bに接続されるので、電気車電流がBセクション側電車線10bから在来線電車6に流れ、その帰線電流が軌道回路区間4Tの既設レール11,12と軌道回路境界設備82のレール絶縁短絡器70,70と軌道回路境界設備25の軌道回路区間4T側のインピーダンスボンドZBとを経由して帰線15に吸い上げられる。そのため、在来線電車6は併用軌道11〜13のうち在来線軌道11,12を使用して在来線単独敷設時と同様に走行することができ、その列車検知も在来線単独敷設時と同じく軌道回路区間2T〜5T毎に行われる。
【0083】
こうして併用軌道11〜13でも在来線の営業運行が不都合なく従来通り行われ、その日の営業が終了すると、併用軌道11〜13での新幹線試験運行に先立って切替信号の指示が変更され、それを直接的に受ける電磁接触器70が軌道回路境界設備82では既設レール絶縁14を短絡するように切り替わり軌道回路境界設備81,83では新設レール絶縁17を解放し且つその両側の既設レール11,12及び新設レール13を対応する帰線電流吸上用リアクトルLの他端に接続するように切り替わる。そして、その電磁接触器70の補助接点56,57を介して切替信号の指示を間接的に受ける他の電磁接触器70も、順次、同様に切り替わる。電磁接触器70の切替は実施例1や在来線運行時の説明で述べたように安定して行われ、切替後は大電流の帰線電流も小電流の軌道回路信号電流も低損失で安定に流せる状態になる。
【0084】
総ての電磁接触器70が新幹線運行側に切り替わると(図7図9参照)、既設レール11でも既設レール12でも既設レール絶縁14が軌道回路境界設備82のレール絶縁短絡器70,70によって短絡される一方、既設レール11でも既設レール12でも新設レール13でも新設レール絶縁17が軌道回路境界設備81,83のレール絶縁短絡器70,70によって解放されるとともに、軌道回路境界設備81側の新設レール絶縁17,17,17の両側でも(軌道回路区間23T側と軌道回路区間34T側)、軌道回路境界設備83側の新設レール絶縁17,17,17の両側でも(軌道回路区間34T側と軌道回路区間45T側)、既設レール11,12及び新設レール13がそれぞれ対応する帰線電流吸上用リアクトルLの他端に接続された状態になる。
【0085】
この状態は、既設レール11と新設レール13とからなる新幹線軌道11,13について見ると、既述した所望の新幹線運行状態と同じである(図14参照)。すなわち(図7図9参照)、中央の既設レール絶縁14の所は短絡されて軌道回路区間の境界でなくなる一方、左方の新設レール絶縁17,17,17の所と右方の新設レール絶縁17,17,17の所が何れも軌道回路区間の境界になって、左方の新設レール絶縁17,17,17と右方の新設レール絶縁17,17,17とその間の既設レール11及び新設レール13とその両端の帰線電流吸上用リアクトルL,L,L,L(軌道回路境界設備27)とで軌道回路区間34Tが画成されて、そこの新幹線軌道11,13に接続された新設TD送信器63と新設TD受信器64等で送受信される軌道回路信号電流が軌道回路区間34Tを循環する。
【0086】
また、左方の新設レール絶縁17,17,17とそれより左方の既設レール11及び新設レール13とそこで両レールに接続された帰線電流吸上用リアクトルL,L(軌道回路境界設備27)とで軌道回路区間23Tが画成されて、そこの新幹線軌道11,13に接続された新設TD送信器63と新設TD受信器64等で送受信される軌道回路信号電流が軌道回路区間23Tを循環する。さらに、右方の新設レール絶縁17,17,17とそれより右方の既設レール11及び新設レール13とそこで両レールに接続された帰線電流吸上用リアクトルL,L(軌道回路境界設備27)とで軌道回路区間45Tが画成されて、そこの新幹線軌道11,13に接続された新設TD送信器63と新設TD受信器64等で送受信される軌道回路信号電流が軌道回路区間45Tを循環する。
【0087】
そして(図7参照)、新幹線電車8がAセクション側からき電区分の切替セクションに向かって(図では左から右向きで)新幹線軌道11,13を走行して来ると、き電区分の切替セクションの切替開閉器30が切替状態Aになってセクション中間電車線10cがAセクション側電車線10aに接続されるので、電気車電流がAセクション側電車線10aから新幹線電車8に流れ、その帰線電流が軌道回路区間23Tの既設レール11及び新設レール13と軌道回路境界設備81のレール絶縁短絡器70,70及びその接続先の帰線電流吸上用リアクトルL,Lとを経由して帰線15に吸い上げられる。
【0088】
それから(図8参照)、新幹線電車8が軌道回路区間23Tを過ぎて軌道回路区間34Tに進むと、き電区分の切替セクションの切替開閉器30が切替状態Bになってセクション中間電車線10cがBセクション側電車線10bに接続されるので、電気車電流がBセクション側電車線10bから新幹線電車8に流れ、その帰線電流が軌道回路区間34Tの既設レール11及び新設レール13と軌道回路境界設備81,83のレール絶縁短絡器70,70及びその接続先の帰線電流吸上用リアクトルL,L,L,Lとを経由して帰線15に吸い上げられる。
【0089】
さらに(図9参照)、新幹線電車8が軌道回路区間34Tも過ぎて軌道回路区間45Tに進むと、新幹線電車8からの帰線電流が軌道回路区間45Tの既設レール11及び新設レール13と軌道回路境界設備83のレール絶縁短絡器70,70及びその接続先の帰線電流吸上用リアクトルL,Lとを経由して帰線15に吸い上げられる。
そのため、新幹線電車8は併用軌道11〜13のうち新幹線軌道11,13を使用して新幹線新設時と同様に走行することができ、その列車検知も在来線の区間割とは異なる新幹線独自の区間割の軌道回路区間23T,34T,45T毎に行われる。
【0090】
こうして、この軌道回路切替システム80を導入した併用軌道11〜13にあっては、在来線の営業運転と新幹線の試験運転とを切り替える際、軌道回路区間の区間割を切替信号にて簡便かつ適切に変更することができるうえ、その区間割変更に対応した帰線電流の引き上げ経路の変更も随伴して迅速かつ的確に行うことができる。
【符号の説明】
【0091】
6…在来線電車、8…新幹線電車、
10…電車線(き電線,トロリ線)、10a…Aセクション側電車線、
10b…Bセクション側電車線、10c…セクション中間電車線、
11…既設レール(在来線・新幹線共用走行レール)、
12…既設レール(在来線専用走行レール)、
13…新設レール(新幹線専用走行レール)、
14…既設レール絶縁、15…帰線(負き電線)、16…変電所、
16a…Aセクション側変電所、16b…Bセクション側変電所、
17…新設レール絶縁、21…既設TD送信器(在来線用列車検知信号送信機)、
22…既設TD受信器(在来線用列車検知信号受信機)、
23…軌道回路境界設備(帰線電流中継用)、24…既設レール絶縁短絡器、
25…軌道回路境界設備(帰線電流吸上用)、26…帰線接続部、
27…軌道回路境界設備(新幹線帰線電流吸上用)、
30…切替開閉器(電磁開閉器)、30a…Aセクション側端子、
30b…Bセクション側端子、30c…セクション中間端子、
31…Aセクション(エアセクション)、32…Bセクション(エアセクション)、
40…電磁接触器、40a…第1開閉端子(一方の主接点の端子)、
40b…第2開閉端子(他方の主接点の端子)、40c…共通接続端子(コモン)、
41…軸支部、42…電磁コイル、42a…第1電磁コイル、
42b…第2電磁コイル、43…止め部材、44…枠部、
45…補助バネ、46…補助接点駆動部材(往復動部材)、
46a…第1駆動停止スイッチ、46b…第2駆動停止スイッチ、
47…可動鉄心、48…駆動側伝動部、
51…揺動軸、52…主接点駆動部材(揺動部材)、53…従動側伝動部、
54…接点保持弾性部材、55a…第1切替信号入力端子、
55b…第2切替信号入力端子、56,57…補助接点、
60…軌道回路切替システム、
61…軌道回路境界設備(レール絶縁の短絡と帰線電流の吸上とを切替)、
62…軌道回路境界設備(帰線電流の吸上とレール絶縁の短絡とを切替)、
63…新設TD送信器(新幹線用列車検知信号送信機)、
64…新設TD受信器(新幹線用列車検知信号受信機)、
70…電磁接触器(レール絶縁短絡器)、
71…間隙保持部材(非磁性体スペーサ)、
80…軌道回路切替システム、
81…軌道回路境界設備(レール絶縁の短絡と帰線電流の吸上とを切替)、
82…軌道回路境界設備(帰線電流の吸上とレール絶縁の短絡とを切替)、
83…軌道回路境界設備(レール絶縁の短絡と帰線電流の吸上とを切替)、
ZB…インピーダンスボンド、L…帰線電流吸上用リアクトル、
1T〜5T,23T,34T,45T…軌道回路区間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16