特許第5943811号(P5943811)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5943811
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】エレベータのかご上手摺装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20160621BHJP
   B66B 11/02 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   B66B5/00 D
   B66B11/02 C
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-245134(P2012-245134)
(22)【出願日】2012年11月7日
(65)【公開番号】特開2014-91628(P2014-91628A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100094695
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 憲七
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161115
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 智史
(72)【発明者】
【氏名】吉川 和弘
(72)【発明者】
【氏名】宮原 英樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 一浩
(72)【発明者】
【氏名】高橋 良直
【審査官】 三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】 再公表特許第2003/074410(JP,A1)
【文献】 特開2004−359446(JP,A)
【文献】 特開2007−197103(JP,A)
【文献】 特開2011−026023(JP,A)
【文献】 特開2000−238664(JP,A)
【文献】 特開2002−070415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00− 5/28
B66B 11/00−11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
かご上に設けられ、上記かご上での保守点検作業のための作業領域を囲むエレベータのかご上手摺装置であって、
手摺プレートを有する手摺装置本体、及び
上記手摺装置本体に対して案内機構部に案内されながら前進位置と後退位置との間で変位される可動パネルを有し、上記手摺プレートに上記可動パネルを対向させた状態で上記手摺装置本体に変位可能に設けられた延長手摺
を備え、
上記手摺装置本体及び上記延長手摺により囲まれる包囲範囲は、上記可動パネルが上記後退位置から上記前進位置へ変位されることにより拡張され、
上記可動パネルは、縁部が曲げられている板であり、
上記案内機構部は、上記可動パネルが変位される方向に沿って上記可動パネルに設けられた長穴と、上記手摺プレートに取り付けられ、上記長穴にそれぞれ通された複数の突出部材とを有しているエレベータのかご上手摺装置。
【請求項2】
かご上に設けられ、上記かご上での保守点検作業のための作業領域を囲むエレベータのかご上手摺装置であって、
手摺装置本体、及び
上記手摺装置本体に対して案内機構部に案内されながら前進位置と後退位置との間で変位される可動パネルを有し、上記手摺装置本体に変位可能に設けられた延長手摺
を備え、
上記手摺装置本体及び上記延長手摺により囲まれる包囲範囲は、上記可動パネルが上記後退位置から上記前進位置へ変位されることにより拡張され、
上記案内機構部は、上記可動パネルが変位される方向に沿って上記可動パネルに設けられた長穴と、上記手摺装置本体に設けられ、上記長穴にそれぞれ通された複数の突出部材とを有しており、
上記延長手摺は、上記手摺装置本体の高さ方向について互いに離して配置され上記手摺装置本体に対して独立して変位可能な複数の上記可動パネルを有しているエレベータのかご上手摺装置。
【請求項3】
かご上に設けられ、上記かご上での保守点検作業のための作業領域を囲むエレベータのかご上手摺装置であって、
手摺装置本体、及び
上記手摺装置本体に対して案内機構部に案内されながら前進位置と後退位置との間で変位される可動パネルを有し、上記手摺装置本体に変位可能に設けられた延長手摺
を備え、
上記手摺装置本体及び上記延長手摺により囲まれる包囲範囲は、上記可動パネルが上記後退位置から上記前進位置へ変位されることにより拡張され、
上記案内機構部は、上記可動パネルが変位される方向に沿って上記可動パネルに設けられた長穴と、上記手摺装置本体に設けられ、上記長穴にそれぞれ通された複数の突出部材とを有しており、
上記延長手摺は、上記手摺装置本体の高さ方向について互いに離して配置された複数の上記可動パネルと、複数の上記可動パネル間を繋ぐ繋ぎ部材とを有しているエレベータのかご上手摺装置。
【請求項4】
上記突出部材には、上記突出部材が上記長穴から抜けることを防止する外れ止め部が設けられ、
上記外れ止め部と上記可動パネルとの間には、樹脂製のワッシャが介在している請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のエレベータのかご上手摺装置。
【請求項5】
上記手摺装置本体には、位置決め穴が設けられ、
上記可動パネルには、上記可動パネルが上記前進位置にあるときに上記位置決め穴の位置に重なる前進位置保持用穴と、上記可動パネルが上記後退位置にあるときに上記位置決め穴の位置に重なる後退位置保持用穴とが設けられ、
上記可動パネルは、上記前進位置保持用穴及び上記位置決め穴に共通の通し部材が通されることにより上記前進位置に保持され、上記後退位置保持用穴及び上記位置決め穴に上記共通の通し部材が通されることにより上記後退位置に保持される請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のエレベータのかご上手摺装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、かご上に設けられ、かご上での保守点検作業のための作業領域を囲むエレベータのかご上手摺装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ドアマシンの据付作業を行うスペースを確保し、かつかご上での保守点検作業のための作業領域を広くするために、かご上に固定された固定手摺に延長手摺を接続し、延長手摺を固定手摺に対して変位させることにより、固定手摺及び延長手摺で囲まれる範囲の広さを変化させるようにしたエレベータのかご上手摺装置が提案されている。固定手摺は、パイプで構成されている。延長手摺は、一部を固定手摺のパイプに挿入させた状態で固定手摺に対してスライド移動される(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4161072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のエレベータのかご上手摺装置では、固定手摺のパイプに挿入された延長手摺の部分が固定手摺のパイプ内の突起(例えば溶接部等)に引っ掛かることを避けるために、固定手摺のパイプ内の突起を削る必要があり、かご上手摺装置の製造に手間がかかってしまう。
【0005】
また、固定手摺に対して延長手摺をスライド移動させているときに、延長手摺が固定手摺のパイプ内から抜けてしまうおそれもある。延長手摺が固定手摺から外れた場合、延長手摺を固定手摺のパイプ内に挿入し直さなければならないので、かご上手摺装置を取り扱うときの作業効率が低下してしまう。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、容易に製造することができ、取り扱いを容易にすることができるエレベータのかご上手摺装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るエレベータのかご上手摺装置は、かご上に設けられ、かご上での保守点検作業のための作業領域を囲むエレベータのかご上手摺装置であって、手摺装置本体、及び手摺装置本体に対して案内機構部に案内されながら前進位置と後退位置との間で変位される可動パネルを有し、手摺装置本体に変位可能に設けられた延長手摺を備え、手摺装置本体及び延長手摺により囲まれる包囲範囲は、可動パネルが後退位置から前進位置へ変位されることにより拡張され、案内機構部は、可動パネルが変位される方向に沿って可動パネルに設けられた長穴と、手摺装置本体に設けられ、長穴にそれぞれ通された複数の突出部材とを有している。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係るエレベータのかご上手摺装置によれば、可動パネルが案内機構部に案内されながら手摺装置本体に対して変位されるので、従来のような例えばパイプ内の突起を削る作業等をなくすことができ、従来のパイプに比べて可動パネルを容易に作製することができる。これにより、かご上手摺装置を容易に製造することができる。また、案内機構部は、可動パネルに設けられた長穴と、長穴にそれぞれ通された複数のガイド用ボルトとを有しているので、可動パネルが変位される範囲を長穴によって制限することができ、可動パネルが変位される方向について可動パネルが手摺装置本体から外れることを防止することができる。これにより、かご上手摺装置の取り扱いを容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】この発明の実施の形態1によるエレベータのかご上手摺装置を示す平面図である。
図2図1のエレベータのかご上手摺装置を示す側面図である。
図3図1の延長手摺が縮小位置にあるときのかご上手摺装置を示す平面図である。
図4図3のかご上手摺装置を示す側面図である。
図5図4の案内機構部を示す拡大図である。
図6図5のVI-VI線に沿った断面図である。
図7】折りたたみ状態となっている図3のかご上手摺装置を示す平面図である。
図8図7のかご上手摺装置を示す側面図である。
図9】この発明の実施の形態2によるエレベータのかご上手摺装置を示す側面図である。
図10】この発明の実施の形態3によるエレベータのかご上手摺装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1によるエレベータのかご上手摺装置を示す平面図である。また、図2は、図1のエレベータのかご上手摺装置を示す側面図である。図において、かご1は、図2に示すように、かご室2と、かご室2を囲みかご室2を支持するかご枠3とを有している。かご枠3は、かご室2を下から支持する下枠(図示せず)と、かご室2の上方に位置する上枠4と、かご室2の幅方向両側で下枠及び上枠4間を繋ぐ一対の縦柱5とを有している。
【0011】
かご室2の前面には、かご出入口が設けられている。かご出入口の上方には、支持梁6(図2)を介して縦柱5に支持されたドア支持装置7が配置されている。ドア支持装置7には、かご出入口を開閉するかごの戸8が吊り下げられている。ドア支持装置7上には、かごの戸8を移動させる駆動力を発生するドア駆動装置9が支持されている。ドア駆動装置9の上端部の位置は、上枠4の位置よりも高い位置となっている。かご出入口は、ドア駆動装置9の駆動力によってかごの戸8がかご出入口の間口方向へ移動されることにより開閉される。かごドア装置は、ドア支持装置7、各かごの戸8及びドア駆動装置9を有している。ドア駆動装置9の上方の空間は、かごドア装置を設置する作業を行うためのドア装置作業用空間とされている。
【0012】
上枠4には、かご1上での保守点検作業のための作業領域を囲むかご上手摺装置11が設けられている。かご上手摺装置11は、手摺装置本体12と、手摺装置本体12に設けられ、手摺装置本体12に対して縮小位置と拡張位置との間で変位可能な延長手摺13とを有している。かご1上での保守点検作業のための作業領域は、手摺装置本体12及び延長手摺13により囲まれている。図1及び図2では、延長手摺13が拡張位置にあるときのかご上手摺装置11が示されている。
【0013】
図3は、図1の延長手摺13が縮小位置にあるときのかご上手摺装置11を示す平面図である。また、図4は、図3のかご上手摺装置11を示す側面図である。手摺装置本体12及び延長手摺13により囲まれる包囲範囲は、延長手摺13が縮小位置(図3及び図4)から拡張位置(図1及び図2)へ変位されることにより拡張される。具体的には、手摺装置本体12及び延長手摺13により囲まれる包囲範囲は、延長手摺13が縮小位置にあるときに、図3及び図4に示すようにドア装置作業用空間から外れており、延長手摺13が縮小位置から拡張位置へ変位されることにより、図1及び図2に示すようにドア装置作業用空間を含む範囲にまで拡張される。
【0014】
かごドア装置を設置する作業は、延長手摺13を縮小位置に変位させてドア装置作業用空間を確保した状態で行われる。かごドア装置が設置された後には、延長手摺13を拡張位置に変位させることにより、かご上手摺装置11による包囲範囲を広くすることができる。
【0015】
手摺装置本体12は、かご1の幅方向(かご出入口の間口方向)について互いに対向する一対の横手摺14と、各横手摺14にそれぞれ設けられ、互いに締結可能な一対の後手摺15とを有している。この例では、各横手摺14及び各後手摺15が角パイプにより構成されている。
【0016】
各横手摺14は、かご1の奥行き方向に沿って配置されている。また、各横手摺14は、上枠4に設けられた横手摺回動軸を中心として回動可能になっている。横手摺回動軸は、かご1の奥行き方向に沿って配置されている。
【0017】
各後手摺15は、かご1の奥行き方向についての横手摺14の後端部に設けられている。また、各後手摺15は、横手摺14に設けられた後手摺回動軸を中心として回動可能になっている。後手摺回動軸は、横手摺14の高さ方向に沿って配置されている。
【0018】
手摺装置本体12の状態は、上枠4に対する各横手摺14の回動及び横手摺14に対する後手摺15の回動によって、折りたたみ状態と展開状態との間で変化する。
【0019】
手摺装置本体12の状態が展開状態となっているときには、図1図4に示すように、各横手摺14が上枠4に対して立った状態で、かつ一対の後手摺15の端部同士が合わさった状態となっている。一対の後手摺15の端部同士は、図1及び図3に示すように、蝶ねじ(締結具)16によって着脱可能に締結されている。手摺装置本体12の展開状態は、一対の後手摺15の端部同士が締結されることにより保たれている。
【0020】
延長手摺13は、各横手摺14の前端部にそれぞれ設けられた一対の可動パネル17と、一対の可動パネル17間に連結された棒状(長板状)の前手摺18とを有している。
【0021】
可動パネル17は、横手摺14の高さ方向に幅方向を一致させて横手摺14の長さ方向に沿って配置されている。また、この例では、金属製の一枚の板の4つの縁部のうち、後縁部を除く3つの縁部(上縁部、下縁部及び前縁部)を曲げることにより可動パネル17が形成されている。
【0022】
可動パネル17は、横手摺14に対して案内機構部21に案内されながら前進位置(図1及び図2)と後退位置(図3及び図4)との間で変位可能になっている。可動パネル17の前進位置は、かご1の奥行き方向について、可動パネル17の後退位置よりもかご1の前面に近い位置となっている。延長手摺13は、前進位置への可動パネル17の変位により拡張位置へ変位され、後退位置への可動パネル17の変位により縮小位置へ変位される。この例では、横手摺14に対して2つの可動パネル17の上部及び下部をそれぞれ案内する4つの案内機構部21がかご上手摺装置11に設けられている。
【0023】
前手摺18の両端部は、各可動パネル17に蝶ねじ(締結具)19によって個別に取り付けられている。これにより、前手摺18は、各可動パネル17に対して着脱可能になっている。また、前手摺18は、可動パネル17に取り付けられた状態で可動パネル17と一体になって変位される。前手摺18は、可動パネル17が前進位置と後退位置との間で変位されることにより、ドア駆動装置9の上方でドア装置作業用空間を通る経路を変位される。
【0024】
ここで、図5は、図4の案内機構部21を示す拡大図である。また、図6は、図5のVI-VI線に沿った断面図である。各案内機構部21は、延長手摺13が変位される方向に沿って可動パネル17に設けられた長穴22と、横手摺14に設けられ、長穴22にそれぞれ通された複数(この例では、2つ)のガイド用ボルト(突出部材)23とを有している。
【0025】
長穴22の両端部は、いずれも開放されておらず閉じている。従って、横手摺14に対して可動パネル17が変位される範囲は、長穴22の長さによって制限されている。
【0026】
各横手摺14には、かご1の幅方向について可動パネル17に対向する手摺プレート24が横手摺14の高さ方向に沿って固定されている。なお、手摺装置本体12は、横手摺14及び後手摺15に加えて、手摺プレート24も有している。
【0027】
手摺プレート24には、手摺プレート24を貫通する複数(この例では、2つ)の取付用穴(図示せず)が、かご1の奥行き方向について互いに離して設けられている。各ガイド用ボルト23は、長穴22及び取付用穴に通された棒状のねじ部と、ねじ部の端部に設けられ、ガイド用ボルト23が長穴22から抜けることを防止する頭部(外れ止め部)とを有している。ガイド用ボルト23の頭部の外径は、長穴22の幅寸法よりも大きくなっている。各ガイド用ボルト23は、長穴22及び取付用穴に通されたねじ部に締結ナット25が螺合された状態で、手摺プレート24に取り付けられている。
【0028】
各ガイド用ボルト23の頭部と可動パネル17との間、及び手摺プレート24と可動パネル17との間のそれぞれには、図6に示すように、各ガイド用ボルト23のねじ部が通された複数の樹脂製のワッシャ26が介在している。この例では、ワッシャ26がナイロン(登録商標)製のワッシャとされている。
【0029】
手摺プレート24には、手摺プレート24を貫通する位置決め穴が取付用穴とは別に設けられている。可動パネル17には、可動パネル17が前進位置にあるときに位置決め穴の位置に重なる前進位置保持用穴31と、可動パネル17が後退位置にあるときに位置決め穴の位置に重なる後退位置保持用穴32とが設けられている。前進位置保持用穴31及び後退位置保持用穴32のそれぞれは、可動パネル17を貫通している。また、前進位置保持用穴31及び後退位置保持用穴32は、可動パネル17が変位される方向について互いに離して設けられている。
【0030】
可動パネル17は、前進位置保持用穴31及び位置決め穴に共通の蝶ねじ(通し部材)33が通されて可動パネル17と蝶ねじ33とが互いに係合されることにより図1及び図2に示すように前進位置に保持され、後退位置保持用穴32及び位置決め穴に共通の蝶ねじ(通し部材)33が通されて可動パネル17と蝶ねじ33とが互いに係合されることにより図3図6に示すように後退位置に保持される。可動パネル17には、図6に示すように、蝶ねじ33が螺合された固定ナット34が位置決め穴の位置に合わせて例えば溶接等により固定されている。前進位置保持用穴31又は後退位置保持用穴32に対する蝶ねじ33の抜き差しは、蝶ねじ33を回して固定ナット34に対する蝶ねじ33の螺合量を変えることにより行われる。
【0031】
図7は、折りたたみ状態となっている図3のかご上手摺装置11を示す平面図である。また、図8は、図7のかご上手摺装置11を示す側面図である。かご上手摺装置11の状態が折りたたみ状態となっているときには、前手摺18が各可動パネル17から外された状態で各可動パネル17の位置が後退位置となっている。また、かご上手摺装置11の状態が折りたたみ状態となっているときには、各後手摺15が各横手摺14に沿って配置された状態で各後手摺15が上枠4上に倒されている。かご上手摺装置11の折りたたみ状態は、横手摺14に対して後手摺15が蝶ねじで留められ、横手摺14に対して可動パネル17が蝶ねじ33で留められることにより保持されている。
【0032】
かご上手摺装置11の状態を、図1及び図2に示すような展開状態から、図7及び図8に示すような折りたたみ状態にするときには、まず、蝶ねじ33を前進位置保持用穴31から外して各可動パネル17を後退位置に変位させる。このとき、前手摺18を各可動パネル17から外しておく。この後、蝶ねじ33を後退位置保持用穴32に挿入して各可動パネル17を後退位置に保持する。
【0033】
この後、蝶ねじ16を外して各後手摺15を各横手摺14に対して個別に回動させ、後手摺15を横手摺14に沿って配置させて蝶ねじで留める。この後、各横手摺14を上枠4に対して個別に回動させ、各横手摺14を上枠4上に倒す。このようにして、かご上手摺装置11の状態を折りたたみ状態にする。かご上手摺装置11の状態を折りたたみ状態から展開状態にするときには、上記と逆の手順を行う。
【0034】
このようなかご上手摺装置11では、可動パネル17が案内機構部21に案内されながら手摺装置本体12に対して変位されるので、従来のような例えばパイプ内の突起を削る作業等をなくすことができ、従来のパイプに比べて可動パネル17を容易に作製することができる。これにより、かご上手摺装置11を容易に製造することができ、かご上手摺装置11の製造コストの低減化を図ることができる。また、案内機構部21が、可動パネル17に設けられた長穴22と、長穴22にそれぞれ通された複数のガイド用ボルト23とを有しているので、可動パネル17が変位される範囲を長穴22によって制限することができ、可動パネル17が変位される方向について可動パネル17が手摺装置本体12から外れることを防止することができる。これにより、かご上手摺装置11の取り扱いを容易にすることができ、作業効率の向上を図ることができる。
【0035】
また、ガイド用ボルト23の頭部と可動パネル17との間には、樹脂製のワッシャ26が介在しているので、ガイド用ボルト23と可動パネル17との間の摩擦力を小さくすることができ、手摺装置本体12に対して可動パネル17を円滑に変位させることができる。また、ガイド用ボルト23に対する可動パネル17のがたつきにより例えばかご1の走行時等に発生する可動パネル17の振動をワッシャ26の弾性力で吸収することができ、可動パネル17の振動による騒音を低減させることができる。
【0036】
また、可動パネル17には、可動パネル17が前進位置にあるときに手摺プレート24の位置決め穴の位置に重なる前進位置保持用穴31と、可動パネル17が後退位置にあるときに手摺プレート24の位置決め穴の位置に重なる後退位置保持用穴32とが設けられ、前進位置保持用穴31及び位置決め穴に共通の蝶ねじ33が通されることにより可動パネル17が前進位置に保持され、後退位置保持用穴32及び位置決め穴に共通の蝶ねじ33が通されることにより可動パネル17が後退位置に保持されるので、可動パネル17が手摺装置本体12に対して変位しないように前進位置及び後退位置のそれぞれの位置で可動パネル17を保持することができる。
【0037】
なお、上記の例では、一枚の板の縁部を曲げて可動パネル17が作製されているが、縁部を曲げない単なる板を可動パネル17としてもよい。
【0038】
実施の形態2.
図9は、この発明の実施の形態2によるエレベータのかご上手摺装置11を示す側面図である。各横手摺14の前端部には、横手摺14の高さ方向について互いに離して配置された上段可動パネル41及び下段可動パネル42(複数の可動パネル41,42)がそれぞれ設けられている。この例では、金属製の一枚の板の4つの縁部のうち、上縁部及び前縁部を曲げることにより上段可動パネル41が形成されている。また、この例では、金属製の一枚の板の4つの縁部のうち、下縁部及び前縁部を曲げることにより下段可動パネル42が形成されている。
【0039】
かご上手摺装置11には、上段可動パネル41及び下段可動パネル42を個別に案内する複数(この例では、2つ)の案内機構部21が設けられている。これにより、上段可動パネル41及び下段可動パネル42のそれぞれには長穴22が設けられ、手摺プレート24には各長穴22に複数本ずつ(この例では、2本ずつ)通されたガイド用ボルト23が設けられている。上段可動パネル41及び下段可動パネル42は、各案内機構部21によって個別に案内されることにより、横手摺14に対して前進位置と後退位置との間で独立して変位可能になっている。前手摺18は、上段可動パネル41及び下段可動パネル42のうち、上段可動パネル41にのみ取り付けられている。延長手摺13は、一対の上段可動パネル41、一対の下段可動パネル42及び前手摺18を有している。
【0040】
手摺プレート24には、上段可動パネル41及び下段可動パネル42のそれぞれに対応する複数(この例では、2つ)の位置決め穴(図示せず)が設けられている。上段可動パネル41に対応する一方の位置決め穴には一方の蝶ねじ33が通され、下段可動パネル42に対応する他方の位置決め穴には他方の蝶ねじ33が通されている。
【0041】
上段可動パネル41及び下段可動パネル42のそれぞれには、前進位置保持用穴31及び後退位置保持用穴32が設けられている。上段可動パネル41は、上段可動パネル41に設けられた前進位置保持用穴31及び後退位置保持用穴32のうち、前進位置保持用穴31に一方の蝶ねじ33が通されることにより前進位置に保持され、後退位置保持用穴32に一方の蝶ねじ33が通されることにより後退位置に保持される。下段可動パネル42は、下段可動パネル42に設けられた前進位置保持用穴31及び後退位置保持用穴32のうち、前進位置保持用穴31に他方の蝶ねじ33が通されることにより前進位置に保持され、後退位置保持用穴32に他方の蝶ねじ33が通されることにより後退位置に保持される。他の構成は実施の形態1と同様である。
【0042】
このようなかご上手摺装置11では、横手摺14の高さ方向について互いに離して配置された上段可動パネル41及び下段可動パネル42が、手摺装置本体12に対して独立して変位可能になっているので、実施の形態1での一体の可動パネル17に比べて、上段可動パネル41と下段可動パネル42との間の部分を除去することができ、延長手摺13の軽量化を図ることができる。また、上段可動パネル41及び下段可動パネル42のそれぞれについて、実施の形態1での可動パネル17よりも、大きさ及び重量を小さくすることができるので、上段可動パネル41及び下段可動パネル42のそれぞれを変位させやすくすることができ、かご上手摺装置11の取り扱いをさらに容易にすることができる。さらに、手摺装置本体12の状態を折りたたみ状態とするときに、上段可動パネル41及び下段可動パネル42のうち、かごドア装置と干渉するもののみを後退位置に変位させておけば、手摺装置本体12を折りたたむことができるので、手摺装置本体12の状態を折りたたみ状態とするときの手間を軽減させることができる。例えば、上段可動パネル41及び下段可動パネル42のうち、手摺装置本体12の状態を折りたたみ状態とするときにドア駆動装置9と干渉する上段可動パネル41のみを後退位置に変位させておけば、下段可動パネル42を前進位置に残しておいても、手摺装置本体12を折りたたむことができる。
【0043】
なお、上記の例では、2つの可動パネル41,42が横手摺14の高さ方向について互いに離して配置されているが、3つ以上の可動パネルを横手摺14の高さ方向について互いに離して配置してもよい。この場合、各可動パネルは、複数の案内機構部21に個別に案内されながら独立して変位可能とされる。また、各可動パネルには、前進位置保持用穴31及び後退位置保持用穴32がそれぞれ設けられ、蝶ねじ33が前進位置保持用穴31又は後退位置保持用穴32に通されることにより、前進位置又は後退位置に各可動パネルが個別に保持される。
【0044】
実施の形態3.
実施の形態2では、上段可動パネル41及び下段可動パネル42が独立して変位可能になっているが、上段可動パネル及び下段可動パネルを連結して上段可動パネル及び下段可動パネルが一体に変位されるようにしてもよい。
【0045】
即ち、図10は、この発明の実施の形態3によるエレベータのかご上手摺装置11を示す側面図である。各横手摺14の前端部には、横手摺14の高さ方向について互いに離して配置された上段可動パネル51及び下段可動パネル52(複数の可動パネル51,52)がそれぞれ設けられている。上段可動パネル51の構成は実施の形態2での上段可動パネル41の構成と同様であり、下段可動パネル52の構成は実施の形態2での下段可動パネル42の構成と同様である。
【0046】
上段可動パネル51及び下段可動パネル52は、板状の繋ぎ部材53により互いに繋がれている。繋ぎ部材53は、上段可動パネル51及び下段可動パネル52のそれぞれに複数のボルト54で固定されている。これにより、上段可動パネル51及び下段可動パネル52は、繋ぎ部材53とともに、横手摺14に対して前進位置と後退位置との間で一体に変位される。延長手摺13は、一対の上段可動パネル51、一対の下段可動パネル52、一対の繋ぎ部材53及び前手摺18を有している。他の構成は実施の形態2と同様である。
【0047】
このようなかご上手摺装置11では、横手摺14の高さ方向について互いに離して配置された上段可動パネル51及び下段可動パネル52が繋ぎ部材53により繋がっているので、上段可動パネル51及び下段可動パネル52を一体に変位させることができる。これにより、上段可動パネル51及び下段可動パネル52を変位させる手間を軽減させることができる。また、上段可動パネル41と下段可動パネル42との間の部分を除去することができ、延長手摺13の軽量化を図ることもできる。
【0048】
なお、上記の例では、2つの可動パネル51,52が横手摺14の高さ方向について互いに離して配置されているが、3つ以上の可動パネルを横手摺14の高さ方向について互いに離して配置してもよい。この場合、各可動パネルは、繋ぎ部材53によって互いに繋げられる。
【0049】
また、実施の形態2及び3では、一枚の板の縁部を曲げて上段可動パネル41,51及び下段可動パネル42,52が作製されているが、縁部を曲げない単なる板を上段可動パネル41,51及び下段可動パネル42,52としてもよい。
【0050】
また、各上記実施の形態では、案内機構部21の長穴22にガイド用ボルト23が通されているが、これに限定されることはなく、ピン(突出部材)を長穴22に通してもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 かご、11 かご上手摺装置、12 手摺装置本体、13 延長手摺、17 可動パネル、21 案内機構部、22 長穴、23 ガイド用ボルト(突出部材)、31 前進位置保持用穴、32 後退位置保持用穴、33 蝶ねじ(通し部材)、41,51 上段可動パネル(可動パネル)、42,52 下段可動パネル(可動パネル)、53 繋ぎ部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10