特許第5943825号(P5943825)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5943825バルク液体と泡およびバルク液体の残渣とを識別する方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5943825
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】バルク液体と泡およびバルク液体の残渣とを識別する方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/10 20060101AFI20160621BHJP
【FI】
   G01N35/10 C
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-277053(P2012-277053)
(22)【出願日】2012年12月19日
(65)【公開番号】特開2013-134254(P2013-134254A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2015年1月14日
(31)【優先権主張番号】11195460.8
(32)【優先日】2011年12月23日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501205108
【氏名又は名称】エフ ホフマン−ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100098464
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 洌
(74)【代理人】
【識別番号】100149630
【弁理士】
【氏名又は名称】藤森 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100179257
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 勝利
(72)【発明者】
【氏名】アデルリッヒ ツピガー
【審査官】 長谷 潮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−338117(JP,A)
【文献】 特開2011−013005(JP,A)
【文献】 特開2008−026220(JP,A)
【文献】 特表2001−500620(JP,A)
【文献】 米国特許第05365783(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルク液体(10)を、試料容器(7)に含まれている試料(30)の泡(21)および/または前記バルク液体(10)から離れて前記試料容器内に存在する前記バルク液体(10)の痕跡から識別する方法であって、
周囲環境との容量結合により電気的容量を有するプローブ(2)を準備することと、
前記プローブを前記試料内(30)に移動することと、
放電電流を発生させるために、前記プローブ(2)を充電することおよび少なくとも部分的に放電することという一組の連続する工程を繰り返し行うことと、
前記プローブ(2)を充電することおよび少なくとも部分的に放電することという連続する工程のそれぞれの組の前記放電電流を示す量を測定することと、
前記プローブ(2)を介して前記試料(30)の電気抵抗(Rmess)を決定するために前記量を分析することと、
前記プローブ(2)が前記バルク液体(10)に接触するときに生じる前記試料(30)の前記電気抵抗(Rmess)の変化に基づいて、前記泡(21)および/または前記バルク液体(10)の前記痕跡から前記バルク液体(10)を識別することと
を含んでおり、
前記一組の連続する工程を繰り返すことは、前記試料を介して周囲環境と前記容量結合している前記プローブから、前記プローブと電気的グランドとの間に電気的に接続されている抵抗器を介して前記放電電流を流すことを含み、
前記放電電流を示す量を分析することは、前記放電中の前記プローブの電圧の変化に基づいて前記電気抵抗(Rmess)を決定することを含んでいる方法。
【請求項2】
前記プローブ(2)を充電することおよび少なくとも部分的に放電することという前記一組の連続する工程が、1kHz〜100kHzの範囲で繰り返す周波数で、周期的に繰り返される請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記プローブ(2)の前記放電電流を示す前記量が、前記プローブ(2)を放電するときに得られる電圧信号および/またはその時間微分である請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記電圧信号が、前記プローブ(2)の放電と同時にサンプリングされる請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記電圧信号が、前記プローブ(2)の放電開始時の電圧の降下に関して分析される請求項3または4記載の方法。
【請求項6】
前記放電電流を示す前記量が、前記プローブ(2)を完全に放電するために必要な時間である請求項1または2記載の方法。
【請求項7】
前記バルク液体(10)の液面(11)が、前記試料(30)の前記電気抵抗(Rmess)の前記変化に基づいて決定される請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記プローブ(2)の電気的容量(Cmess)が、前記プローブ(2)を充電することおよび少なくとも部分的に放電することという連続する工程のそれぞれの組について決定される請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
試料に対してピペット作業を行うために電気的容量を有するプローブ(2)を配置する方法であって、
周囲環境との容量結合により電気的容量を有するプローブ(2)を準備することと、
前記プローブを前記試料内(30)に移動することと、
放電電流を発生させるために、前記プローブ(2)を充電することおよび少なくとも部分的に放電することという一組の連続する工程を繰り返し行うことと、
前記プローブ(2)を充電することおよび少なくとも部分的に放電することという連続する工程のそれぞれの組の前記放電電流を示す量を測定し、前記試料(30)の電気抵抗(Rmess)を決定するために前記量を分析することと、
前記プローブ(2)が前記バルク液体(10)に接触するときに生じる前記試料(30)の前記電気抵抗(Rmess)の変化に基づいて、泡(21)および/または、前記試料を含んでいる試料容器内に前記バルク液体(10)から離れて存在する前記バルク液体(10)の痕跡から前記バルク液体(10)を識別することと、
前記試料(30)の前記電気抵抗(Rmess)の前記変化に基づいて、前記バルク液体(10)の中に前記プローブ(2)を配置することと
を含んでおり、
前記一組の連続する工程を繰り返すことは、前記試料を介して周囲環境と前記容量結合している前記プローブから、前記プローブと電気的グランドとの間に電気的に接続されている抵抗器を介して前記放電電流を流すことを含み、
前記放電電流を示す量を分析することは、前記放電中の前記プローブの電圧の変化に基づいて前記電気抵抗(Rmess)を決定することを含んでいる方法。
【請求項10】
前記バルク液体(10)を吸引しているときに、前記プローブ(2)がさらに前記バルク液体(10)内へ移動される請求項9記載の方法。
【請求項11】
バルク液体(10)を、試料容器(7)に含まれている試料(30)の泡(21)および/または前記バルク液体(10)から離れて前記試料容器内に存在する前記バルク液体(10)の痕跡から識別する自動システム(1)であって、
周囲環境との容量結合により電気的容量を有する少なくとも1つのプローブ(2)と、
前記プローブ(2)を前記試料(30)に対して移動させるように適合された配置機構(9)と、
前記プローブ(2)を充電するための、定電圧の電圧源(13)と、
放電電流を発生させるために前記プローブ(2)を放電する電気的なドレイン(19)と、
前記プローブ(2)を、前記プローブ(2)に接続された抵抗器を介して前記電圧源(13)または前記ドレイン(19)に交互に接続するように適合された制御可能なスイッチ(15)と、
前記プローブ(2)に接続され、前記放電電流を示す量を測定するように適合される電気回路(20)と、
前記プローブ(2)を前記試料(30)内へ移動させるように、
前記プローブ(2)を充電することおよび少なくとも部分的に放電することという連続する工程を繰り返し行うために前記スイッチ(15)を制御するように、ならびに、
前記試料(30)の電気抵抗(Rmess)を決定するために前記プローブ(2)を充電することおよび少なくとも部分的に放電することという連続する工程のそれぞれの組の前記放電電流を示す量を測定する目的で前記電気回路(20)を制御するように
構成されている制御装置(34)と、を含
前記連続する工程において、前記試料を介して周囲環境と前記容量結合している前記プローブから前記放電電流を流し、前記放電中の前記プローブの電圧の変化に基づいて前記電気抵抗(Rmess)を決定するように構成されてなり、
前記バルク液体(10)が、前記プローブ(2)が前記バルク液体(10)に接触するときに生じる前記試料(30)の前記電気抵抗(Rmess)の変化に基づいて、泡(21)および/または前記バルク液体(10)の前記痕跡から識別される自動システム(1)。
【請求項12】
前記電気回路(20)が、前記プローブ(2)を放電しているときに得られる電圧信号および/またはその時間微分をサンプリングするサンプルアンドホールド装置(22)を含んでいる請求項11記載のシステム。
【請求項13】
前記プローブ(2)が、液体のピペッティングのためにピペット作業を行うように構成される請求項11または12記載のシステム。
【請求項14】
前記試料容器(7)が、導電性材料で作製される容器部分(43)を含み、該導電性の容器部分(43)がそこに電気的に接続される導電性の支持体(8)により支持されている請求項11〜13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
前記試料容器(7)が、絶縁性材料で作製され、導電性材料で作製された容器のエンベロープ(50)に収容されており、該導電性の容器のエンベロープ(50)が、そこに電気的に接続される導電性の支持体(8)により支持されている請求項11〜13のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析試料処理の分野に属し、試料容器に含まれる試料のバルク液体上に存在し得る泡と、ならびに/または、試料容器および/もしくは試料容器を閉鎖するキャップの内側に存在し得るバルク液体の残渣と、バルク液体とを識別する方法および自動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動の臨床分析機器において、体液などの液体試料は、様々な臨床化学的方法および免疫科学的方法により検査され得る。実際の使用においては、充分な分析精度を維持するために、多くの分析方法が正確なピペット操作を要求する。通常、ポンプで制御されたプローブが液体の吸引および排出に用いられている。クロスコンタミネーションの危険性を最小限に抑え、プローブの清浄を容易にするために、プローブ端を液面のすぐ下に配置することが望ましい。液体は、プローブを静止させたまま吸引されてもよいし、多量の場合には、プローブ端が液体内に維持されるように、プローブを容器中へとさらに降下させながら吸引されてもよい。
【0003】
多くの場合において、液面は液体容器によって大きく変わり得るので、プローブ端はピペット作業を開始する前に液体内に確実に配置されていなければならない。ゆえに、プローブを配置する前に液面を検出することが慣習となっている。従来技術において、液面検出は、液面から反射する光の検出や、液体と接触させたときのプローブの電気的特性の測定など、様々な物理的な原理に基づくことが知られている。
【0004】
しかしながら、いくつかの場合、とりわけ泡を形成しやすい液体の場合には、従来の液面検出技術によって得られる結果の信頼性は受け入れ難いほどに低い。例えば、プローブの電気的な容量の変化に基づく技術を用いる場合、プローブは低周波の電圧信号を用いて繰り返し充電および放電される。しかしながら、バルク液体上に泡が存在する場合には、その泡がバルク液体と同様の容量変化を引き起こす可能性があるので、バルク液体と泡との間には明確な区別がない。それゆえ、プローブがバルク液体ではなく泡の中に配置されるリスクが大きく、結果的にピペッティングエラー(pipetting error)を生じる。特許文献においては、容量変化に基づく液面検出は例えば、特許文献1および2に記載されている。
【0005】
とりわけ特許文献2は、泡に起因するピペッティングエラーの問題を扱っており、液面の最上部を容量的に決定する方法が開示されている。この方法においては、所定の電圧値に到達するまでに必要な時間が、1つの試料に対して繰り返し測定される。泡を見分けるために、平均充電時間は所定値を越えることを要求される。
【0006】
上述のように従来の容量測定は通常、電気的インピーダンスの発生を避けるために、典型的には1kHzよりも低い低周波の電圧信号に基づいている。そうでない場合、すなわち、例えば1MHz〜1GHzの範囲にある高周波の電圧信号を印加する場合には、電気的インピーダンスが発生し得る。基本的に、プローブの電気的インピーダンスの変化は、泡とバルク液体とを識別するために用いられ得る。しかしながら、高周波のインピーダンス測定に基づく液面検出は、高度な技術的装置を必要とし、コストもかなり高い。さらに、この技術に基づく分析機器は、低い電磁環境適合性をもたらす電気的な干渉の影響の原因となるおそれがあるので、法規に関する問題が起こるおそれがある。さらに、複数のプローブを用いる場合には、プローブ同士が互いに妨害しあう。高周波のインピーダンス測定に基づく液面検出は、例えば、特許文献3〜6に記載されている。
【0007】
液面検出に対する別のアプローチは、プローブ端がバルク液体に達したときに起こるプローブのオーミック抵抗の変化を測定することにより与えられる。この技術を用いて、泡をバルク液体から確実に識別することができるが、液体は電気的なグランドとガルバニック接触していなければならず、通常は当てはまらない。オーミック抵抗測定に基づく液面検出は、例えば、特許文献7に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願公開第89115464号明細書
【特許文献2】米国特許第7,150,190号明細書
【特許文献3】国際公開第00/19211号
【特許文献4】米国特許第5,049,826号明細書
【特許文献5】米国特許第5,365,783号明細書
【特許文献6】米国特許第4,818,492号明細書
【特許文献7】米国特許第5,843,378号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記に鑑みて、本発明は、泡を形成しやすい試料の場合でも確実に用いられ得る、バルク液体と泡とを識別するための改良された方法を提供することを目的としている。これらおよびさらなる目的は、独立請求項に記載のシステムおよび方法により達成され、本発明の好適な実施形態は、従属請求項により与えられる。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、バルク液体と、試料容器に含まれる試料のバルク液体上に存在し得る泡とを識別する方法、ならびに/またはバルク液体と、試料容器および/または試料容器を閉鎖するキャップの内側に存在し得るバルク液体の残渣とを識別する方法が提案される。
【0011】
本明細書において用いられる「試料」という用語は、対象となるあらゆる液体を意味し、これは例えば泡の形成を起こしやすい液体である。とりわけ、この用語の意味において試料は、これらに限定されるわけではないが、試薬、希釈液、緩衝液および磁性粒子の懸濁液など、例えば核酸精製目的で使用され得る生体液以外の液体を含む。また試料は、これらに限定されるわけではないが、例えば血液、血清、尿、母乳、唾液および脳脊髄液などの生体液の成分でもよいし、少なくともこれらを含むものでもよい。とりわけ、この語の意味において試料は、医学研究および薬学研究、ならびに臨床化学分析および/または免疫化学的および/または生化学的な分析項目を含む診断において、解析および分析の対象となり得る。試料は例えば、ポリメラーゼ連鎖反応や他のあらゆる核酸増幅型の反応に基づく試験管内での(in-vitro)増幅技術を受けてもよい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
試料は(肉眼で見える)気泡のないバルク液体を含み、場合によってはバルク液体の液面上に存在し得る泡、および/または試料容器、および存在する場合には試料容器を閉鎖するキャップの内側に存在するバルク液体の残渣を含み得る。バルク液体とは異なり、泡は1つまたは2つ以上の気泡を含む。より厳密な意味では、泡は複数の小さな気泡を含み、その直径は試料容器の(水平の)断面の大きさよりも小さい。代替的または付加的に、泡はいわゆる「セグメント領域(segment region)」を含んでいてもよく、これは試料容器の(水平の)断面の大きさと同じほどもある大きな直径を有する気泡を少数(例えば、1桁の数字で示される)含む。このようなセグメント領域は、典型的には、試料容器が傾けられ、その後直立位置に持ち込まれるときに起こる。本明細書において用いられるバルク液体の「残渣」という語は、これに限定されるわけではないが、試料容器の内側に存在し得る、濡れている層のような、および/または、これに限定されるわけではないが、試料容器を閉鎖するキャップの内側に存在し得る1つまたは2つ以上のしずくのような、バルク液体の一部または痕跡に関する。
【0013】
本発明によれば、バルク液体と、泡および/またはバルク液体の残渣とを識別する方法は、プローブがバルク液体の内外に移動され得るように、試料に対して配置可能に適合されるプローブを準備する工程を含んでいる。とりわけ、プローブは周囲環境に容量的に結合されているので静電容量を有し、それゆえそこに電位を印加することによって充電され得る。典型的には、プローブは、これらに限定されるわけではないが、金属材料、導電性のプラスティック材料および導電材料と組み合わされる絶縁材料などの、導電性の材料から作製される。
【0014】
この方法はさらに、プローブを試料内に移動させる工程を含む。
【0015】
この方法はさらに、電圧(電位)を印加することによってプローブを充電することと、放電電流を発生させるためにより小さい電圧(電位)を印加するか、またはプローブを電気的なグランドに接触させることによって、少なくとも部分的に、とりわけ完全にプローブを放電させることという、一組の連続する工程を繰り返し行う工程を含んでいる。
【0016】
この方法はさらに、プローブの充電および少なくとも部分的な放電という連続する工程のそれぞれの組の放電電流を示す(すなわち、放電電流に関する)量を、プローブの放電と同時に測定する工程を含んでいる。一実施形態において、放電電流を示す量は、電圧信号および/またはその時間微分である。電気信号は例えば、サンプリング期間にサンプリングされ得る。1つの代替的な実施形態では、プローブの放電電流を示す量は、プローブを完全に放電するために必要な時間であり、プローブを放電するために必要な時間がプローブの放電と同時に測定される。
【0017】
この方法はさらに、プローブを介して、バルク液体、ならびに/または、泡および/もしくはバルク液体の残渣により与えられる試料の電気抵抗を決定する方法で、上述の量を分析する工程を含んでいる。本明細書において用いられる「試料の電気抵抗」という語は、プローブが試料の液面に接触する前にプローブを介して測定される電気抵抗の意味も含んでいる。
【0018】
この方法はさらに、プローブ端がバルク液体に接触するときに生じる試料の電気抵抗の変化に基づいて、泡および/またはバルク液体の残渣とバルク液体とを識別する工程を含んでいる。
【0019】
実際のところ、バルク液体と、泡およびバルク液体の残渣とは、通常、電気抵抗が互いに大きく異なるので、本発明の方法は、バルク液体と泡との間、およびバルク液体とバルク液体の残渣との間の、完全で明確な識別を可能にする。それにより、プローブはバルク液体内に確実に配置され得る。結果として、取り出される液量の精度を合理的に可能な高さと同じくらいにできるプローブによって、試料容器に含まれている液体が確実に吸引される。
【0020】
試料の電気抵抗を繰り返し測定するための上述の工程は、好適には、プローブを試料に対して配置するためにプローブを試料中へ移動することと同時に行われる。
【0021】
詳細には、一実施形態において、プローブの電気抵抗の測定は、1kHz〜100kHzの範囲で繰り返す周波数で周期的に繰り返される。この周波数範囲は、インダクタンスが無視され得るという点で有利である。一方で、電圧信号の急峻さが特に高い精度をもたらすので、プローブを放電するときに得られる電圧信号の分析が容易になる。
【0022】
上記のように、一実施形態において、放電電流を示す量は、電圧信号および/またはその時間微分である。その場合、電圧信号は、プローブの放電で始まる時間において分析されることが好ましく、電圧信号はプローブを放電し始めたときの電圧の降下について分析される。したがって、プローブがバルク液体、泡またはバルク液体の残渣とガルバニック結合されるときの試料の電気抵抗は、泡およびバルク液体の残渣からバルク液体を識別するために、確実な方法で決定され得る。
【0023】
上記のように、本発明の方法は、バルク液体とバルク液体の液面上に存在し得る泡との間、および、バルク液体と試料容器の内壁および/または試料容器を閉鎖するキャップの内側に存在し得るバルク液体の残渣との間の、明確な区別を可能にする。試料の電気抵抗の変化はプローブがバルク液体に接触するときに観察され得るので、試料の液面も確実に決定される。
【0024】
一実施形態において、この方法はさらに、試料中へ降下するときのプローブの電気的容量の変化を測定することも含んでいる。これはいくつかの場合、特に液体容量が少ない場合に有用であり得る。
【0025】
本発明は、さらに、試料に対してピペット作業を行うために、電気的容量を有するプローブを配置する方法に関している。この方法は、以下の工程、すなわち、プローブを備えること、プローブを試料内に移動させること、放電電流を発生させるために、プローブを充電することと少なくとも部分的にプローブを放電することという連続する一組の工程を繰り返し行うこと、プローブを充電することと少なくとも部分的にプローブを放電することという連続する工程の組のそれぞれの放電電流を示す量を測定し、試料の電気抵抗を決定するためにその量を分析すること、プローブ端がバルク液体に接触するときに生じる試料の電気抵抗の変化に基づいて泡および/またはバルク液体の残渣とバルク液体とを識別すること、および、試料の電気抵抗の変化に基づいてプローブをバルク液体内に配置することを含んでいる。
【0026】
一実施形態において、プローブはバルク液体内へと降下され、その後液体を吸引または放出するためにポンプで制御されたピペット作業を行う。プローブは、ピペット作業を行う間静止したまま維持されてもよいし、および/またはプローブをバルク液体内に維持するために、ピペット作業に伴って、試料容器内へさらに移動されてもよい。
【0027】
本発明の第2の態様によれば、試料容器に含まれる試料の泡および/またはバルク液体の残渣とバルク液体とを識別するための新規な自動システムが提案される。このシステムは、ユーザの特定の要求にしたがって様々な方法で構成することができ、例えば、これらに限定されるわけではないが、臨床化学的分析項目、生化学的分析項目、免疫化学的分析項目などの、様々な分析項目に関する自動分析機器の一部であってもよい。
【0028】
本発明によれば、このシステムは、試料に対して配置可能に適合された少なくとも1つのプローブを含む。プローブは、周囲環境への容量結合により電気的容量を有する。
【0029】
システムはさらに、例えばプローブをバルク液体の内外に移動させるために、プローブを試料に対して配置するように適合された配置機構を含む。プローブは、導電性材料で作製されるのが好ましく、少なくとも導電性材料を含んでいる。
【0030】
システムはさらに、プローブを充電するための定電圧の電圧源と、プローブを放電するための電気的なドレイン(drain)とを含んでいる。
【0031】
システムはさらに、これに限定されない、トランジスタなどの、制御可能なスイッチを含み、これは、プローブを充電するために電圧源に、または、放電電流を発生させるためにプローブを少なくとも部分的に(例えば完全に)放電するために、これに限定されない、電気的なグランドなどの電気的なドレインに、プローブを交互に接続するように適合されている。
【0032】
このシステムはさらに、プローブに接続された電気回路を含み、これは放電電流を示す(に関する)量を決定するように適合されている。一実施形態において電気回路は、プローブの電圧信号をサンプリングするサンプルアンドホールド(sample-and-hold)装置、および/またはプローブの電圧信号を微分する微分装置を含んでいる。
【0033】
このシステムはさらに制御装置を含み、これは、プローブを試料内へ移動させるように、プローブを充電することと少なくとも部分的に放電することという連続する工程を繰り返し行うためにスイッチを制御するように、および、試料の電気抵抗を決定するために、プローブを充電することと少なくとも部分的にプローブを放電することという連続する工程のそれぞれの組の放電電流を示す量を測定するために電気回路を制御するように構成されている。ここでバルク液体は、プローブがバルク液体に接触するときに生じる試料の電気抵抗の変化に基づいて、泡および/またはバルク液体の残渣から識別される。基本的に制御装置は、本発明の方法に関して上述されたような方法の工程を行うように構成され得る。
【0034】
本発明のシステムは、ゆえに、プローブを介して試料の電気抵抗を検出することによって、バルク液体と、泡および/またはバルク液体の残渣との確固たる識別を可能にする。またこのシステムは、液体の表面、すなわち液位の検出も可能にする。
【0035】
本発明の主な利点は、従来技術とは対照的に、泡がバルク液体の液面上に存在する場合、および/またはバルク液体の残渣が試料容器および/または試料容器を閉鎖するキャップの内側に存在する場合であっても、試料の電気抵抗が、バルク液体を検出するために信頼して用いられ得るという事実にある。ゆえに、例えば泡の形成を起こしやすい試料などの、あらゆる試料のバルク液体が確実に検出され得る。
【0036】
システムの一実施形態において、プローブは、その中に陰圧または陽圧を発生させるときに液体を引き込むまたは排出するように、ピペットと同様のピペット作業を行うために構成される。プローブはゆえに、バルク液体と泡との間および/またはバルク液体とバルク液体の残渣との間の識別と、液体のピペッティング(pipetting)との二重の機能を有する。それゆえ、ピペット作業は、バルク液体内へのプローブの正確な配置と組み合わされ得る。とりわけプローブは、所定の液量を引き込むまたは分注するために、バルク液体内へ降下され得る。液体のピペッティングのためのプローブは、例えば、これに限定されないスチール針などの、金属材料で作製された針として具体化され得る。
【0037】
一実施形態において、試料を含有する試料容器は、導電性材料で作製される容器部分を含んでおり、ここで導電性の容器部分は、これに限定されない導電性の作業板などの、導電性の支持体によって、その支持体との電気接点において支持されている。結果として、プローブと、例えば試料容器の支持体などの周囲環境との容量結合が向上され得る。
【0038】
一実施形態において、試料を含有する容器は絶縁性材料で作製され、導電性材料で作製される容器のエンベロープ(envelope)に収容される。ここで導電性の容器のエンベロープは、これに限定されない導電性の作業板などの導電性の支持体によって、その支持体との電気接点において支持されている。結果として、プローブと、例えば容器の支持体などの周囲環境との容量結合が向上され得る。
【0039】
上述した本発明のシステムおよび方法の様々な実施形態は、単独で用いられてもよいし、本発明の範囲を逸脱することなく、あらゆる組み合わせで用いられ得る。
【0040】
本発明の他のおよびさらなる目的、特徴および利点は、以下の記載により、より完全に明らかになるだろう。本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明の好適な実施形態を示し、上述の一般的な説明および以下の詳細な説明と共に、本発明の原理の説明に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】バルク液体と、試料容器に含まれた試料の泡および/またはバルク液体の残渣とを識別するプローブを備える、本発明のシステムの概略を示す図である。
図2】試料を含有する試料容器を例示する図である。
図3図1のシステムの実施形態を例示する図である。
図4図1のシステムの実施形態の他の例を示す図である。
図5図1のシステムを用いて、バルク液体と、泡および/またはバルク液体の残渣とを識別する方法の概略を示す図である。
図6図1のシステムのプローブを充電および放電するときの電圧信号を示す図である。
図7図1のシステムのプローブの抵抗および容量の変動を例示する図である。
図8図1のシステムの試料容器のさらなる実施形態を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
実例として、本発明が実施され得る特定の例示的な実施形態を記載する。まず図1を参照すると、概略図により、バルク液体10と、試料容器7に含まれている液体試料30の泡21および/またはバルク液体10の残渣48とを識別する自動システムの例示的な実施形態が説明される。
【0043】
概して参照符号1で示される自動システムは、例えばピペット作業を行うため、すなわち液体を吸引および分注するためにピペットとして構成されるプローブ2を含んでいる。とりわけ、プローブ2は、プローブ端4で周囲環境に開放する内部(液体)チャネル3を備える。プローブ2はその反対側で、液体がユーザの特定の要求にしたがって吸引または排出されるように、チャネル3において陰圧または陽圧を発生させるポンプ5に、ポンプ導管6によって流通可能に接続されている。ピペットを作動させるポンプは、例えば市販の分析機器などから当業者に周知であるので、ポンプ5はここではこれ以上説明しない。
【0044】
プローブ2は、例えば、これに限定されるわけではないが、ステンレス鋼などの金属材料で作製される針として構成でき、上面が閉鎖された試料容器7の場合にキャップ(図示せず)の貫通を容易にする鋭いプローブ端4を有し得る。例示のために1つのプローブ2のみが示されているが、当業者であれば、ユーザの特定の要望にしたがって2つ以上のプローブ2も考えられ得ることを認識するだろう。
【0045】
さらに図1を参照すると、システム1において、プローブ2は水平な作業板8上に置かれた試料容器7に含まれる液体を吸引するために用いられ得る。したがって、試料容器7は、例えば血液や尿といった体液などの対象となる試料30を受け容れるように適合されている。試料容器7は例えば、個々の管または瓶として構成されてもよいし、マルチウェルプレート(multi-well plate)の1つのウェルとして構成されてもよい。
【0046】
図1に示されるように、泡21は試料30のバルク液体10の液面11上に存在し得るので、プローブ端4は、泡を吸引することによって起こるピペッティングエラーを回避するために、バルク液体10内に位置されなければならない。
【0047】
プローブ2は、これに限定されるわけではないがステンレス鋼のような金属材料などの、導電性の材料で作製される。導電性の材料で作製されているので、プローブ2は、例えば同じく導電性の材料で作製され得る、例えば作業板8などの周囲環境に容量結合されることにより、固有の静電容量Cmessを有する。したがって、プローブ2は、周囲環境との容量結合に応じて充電または放電され得る。
【0048】
さらに図1を参照すると、システム1はさらに、プローブ2を試料容器7に含まれている試料30に対して配置する自動の配置機構9を含んでいる。とりわけ、配置機構9は、例えば両方向の矢印で示されるように、試料容器7を作業板8に対して固定したまま、プローブ2を試料30に向かう、および試料30から遠ざかる垂直移動をさせるように適合され得る。このような配置機構9は、例えば市販の分析機器などから当業者に周知であるので、ここではこれ以上説明しない。
【0049】
配置機構9を動作させると、プローブ2は、ピペット作業を行うために降下され、プローブ端4がバルク液体10内に浸る位置に到達する。とりわけ、試料30とプローブ2との間の接触を最小限にするために、プローブ端4は、液面11の下にわずかな距離をおいて位置付けられ得る。プローブ端4をバルク液体10内に配置することにより、ピペット作業は確実に行われる。
【0050】
プローブ4が試料30中へ降下される場合には、プローブ2の電気的容量Cmessの変化が観察され得る。より詳述すると、プローブ2が試料30内に浸ると、プローブ2の容量Cmessは、バルク液体10および泡21のそれぞれの電気的容量によって変えられる。
【0051】
プローブ端4が試料30内へ降下される場合には、試料30の電気抵抗Rmessの変化も観察され得る。より詳述すると、プローブ2が試料30内に浸ると、試料30の電気抵抗Rmessは、プローブ2とバルク液体10との、およびプローブ2と泡21とのそれぞれの電気的接続(ガルバニック結合)によって変化する。
【0052】
図1を続いて参照すると、システム1において、プローブ2は、概して参照符号12で示される識別装置に電気的に接続されており、識別装置は、バルク液体10と泡21とを、およびバルク液体10と試料容器7に含まれている試料30のバルク液体10の残渣48(図2に示される)とを識別するように適合されている。
【0053】
とりわけ図2を参照すると、試料容器7は、例えば、固定のために管44に圧入されるキャップ45を備えた、上部が閉鎖した管44として構成され得る。上述のように、試料30はバルク液体10を含んでおり、泡21はそのバルク液体の液面上に存在し得る。図2から分かるように、いくつかの場合において、泡21は、直径が管44の直径よりも小さい小さな気泡47(この語は実際に泡を意味する)を多く有する第1(下側)泡領域46と、しばしば管44の直径全域にわたって広がる1つまたは2つ以上の非常に大きな気泡47で構成される第2(上側)泡領域49(導入部分ではセグメント領域と示した)とを含んでいる。第1泡領域46は、典型的には試料30の振とうまたは攪拌の結果であるのに対し、第2泡領域49は、上部が閉鎖した管44が傾けられ、その後再び直立位置に持ち込まれる場合に生じやすい。さらに、バルク液体10の残渣48は、例えば管44の内側の濡れている層およびキャップ45の内側の滴などとして、管44および/またはキャップ45の内側に存在し得る。このような残渣48は、管44を傾け、その後直立位置に配置した結果であり得る。ゆえに、ここで用いられる「試料」という語は、バルク液体10(試料30の泡状でない部分)と、バルク液体10の液面11上の泡21(試料30の泡状の部分)およびバルク液体10の残渣48との両方を含んでいる。
【0054】
とりわけ図3を参照すると、システム1の1つの例示的な実施形態において、識別装置12は、第1電線141内で互いに対して連続して配置される、電気抵抗R1を有する第1抵抗器31および電気抵抗R2を有する第2抵抗器32を介して、第1電線141によりプローブ2に電気的に接続される定電圧(V+)の電圧源13を含んでいる。電圧源13は例えば、24ボルトの定電圧(例えば、正電位)を供給するように構成され得る。示される実施形態において、第1抵抗器31は第2抵抗器32よりもはるかに大きな電気抵抗を有し、第1の抵抗R1は例えば1MΩと同じ大きさであって、第2の抵抗R2は例えば10kΩである。
【0055】
図3に示されるように、識別装置12はさらに電子スイッチを含んでおり、これに限定されるわけではないが、例えば、バイポーラトランジスタなどのトランジスタ15として構成される。詳細には、トランジスタ15のコレクタ接点16は、第1および第2抵抗器31、32の間の位置で第1電線141に接続され、そのエミッタ接点17は、電気的なグランド19に接続されている。さらに、トランジスタ15のベース接点18は、例えば1kΩという小さな電気抵抗R3を有する第3抵抗器33を介して第2電線142によって、マイクロプロセッサベース(microprocessor-based)の制御装置34に電気的に接続される。
【0056】
制御装置34は、これに限定されるわけではないが、図3に示されるような周期的な矩形波の(電圧)パルスなどの、周期的に繰り返されるスイッチングパルスを有する電気的クロック信号35を、ベース接点18に提供するように構成されている。電気的クロック信号35の電圧パルスをベース接点18に印加すると、トランジスタ15は、周期的にオンまたはオフに切り替えられ得る。より詳述すれば、トランジスタのオン状態において、コレクタ接点16とエミッタ接点17との間の経路は電気的に導通しているので、第1電線141から、矢印により示されるエミッタ接点17に接続された電気的なグランド19に電流が流れ得る。一方で、トランジスタのオフ状態において、コレクタ接点16とエミッタ接点17との間の電気的経路は高抵抗性であるので、第1電線141は電気的なグランド19から電気的に分離される。したがって、トランジスタ15をオン状態またはオフ状態に切り替えることにより、プローブ2は電圧源13または電気的なグランド19のいずれかに接続され得る。
【0057】
図3にさらに示されるように、識別装置12は、概して参照符号20で示される電気回路を含み、これは試料30の電気抵抗(Rmess)およびプローブ2の電気的容量(Cmess)を決定するように適合されている。プローブ端4が試料30の外にある場合には、バルク液体10および泡21またはバルク液体10の残渣48がいずれもプローブ2とガルバニック結合されていないことから、測定される電気抵抗(Rmess)はプローブ2の固有の電気抵抗に対応し、これはプローブ2が、通常無視されてもよい気体雰囲気中に位置しているという事実による。一方で、プローブ端4が試料30に浸される場合には、測定される電気抵抗(Rmess)はプローブ2と試料30とのガルバニック結合により変化する。
【0058】
図3に例示されるような一実施形態においては、電気回路20はサンプルアンドホールド装置として構成されるサンプリング装置22を含んでおり、これはプローブ2がトランジスタのオンまたはオフ状態によって充電または放電されるときに、プローブ2の電圧(電位)をサンプリングするように適合される。それに応じて、サンプリング装置の第1入力25は第3電線143により、第1電線141を介してプローブ2に電気的に接続される。具体的には、サンプリング装置の接点24が、コレクタ接点16とプローブ2との間の位置で第1電線141と接触する。さらに、サンプリング装置の出力27は、アナログ信号をデジタル信号に変換するように構成されるアナログ・デジタル変換器23を介して、制御装置34に電気接続される。
【0059】
サンプリング装置の第2入力26は、第4電線144によって第2電線142に接続されているので、サンプリング装置22は(わずかに変化した)クロック信号35を受信する。ゆえにサンプリング装置22は、第4電線144に含まれる遅延回路28によって電圧パルスに賦課される所定の短時間の遅延を除いて、トランジスタ15と同期して作動する。遅延回路28は、例えば、トランジスタ15のゼロではないスイッチングタイム(switching times)を補うように、約10ナノセカンドの時間をずらすことによって電圧パルスを遅延させるように構成される。さらに、サンプリング周期は切り替え周期に選択的に適合され得る。
【0060】
結果としてサンプリング装置22は、プローブ2の電圧信号をサンプリングし、その値を一定のレベルで特定の時間の間保持するように作動され得る。このため、サンプルアンドホールド回路は、典型的には、プローブ2に接続されたキャパシタ(図示せず)を含んでおり、ここでキャパシタは、キャパシタを充電または放電するためのスイッチ(図示せず)を介してバッファアンプ(buffer amplifier)(図示せず)に接続されている。アナログ・デジタル変換器23は、制御装置34によるさらなる処理のために、アナログ信号をデジタル信号に変換するために用いられている。
【0061】
図3を続けて参照すると、上述のように、試料容器7に含まれている試料30にプローブ端4を浸すと、電気回路20により測定される試料30の電気抵抗(Rmess)は、プローブ2の固有の電気抵抗(これは無視され得る)から、バルク液体10、泡21および残渣48それぞれの電気抵抗により与えられる試料30の電気抵抗へと変化する。多くの場合において泡21の電気抵抗はバルク液体10の電気抵抗よりもはるかに大きいという事実により、バルク液体10と泡21とは、試料30の電気抵抗(Rmess)を決定することによって確実に識別され得る。さらに、多くの場合においてバルク液体10の残渣48の電気抵抗はバルク液体10の電気抵抗よりもはるかに大きいという事実により、バルク液体10とバルク液体10の残渣48とは、試料30の電気抵抗(Rmess)を決定することによって確実に識別され得る。
【0062】
また、試料容器7に含まれている試料30にプローブ端4を浸すと、電気回路20により測定される電気的容量は、プローブ2の固有の電気的容量(Cmess)から、試料30の容量によって変えられた容量へと変化する。特定の試料に応じて、バルク液体10の容量は、泡21および/または残渣48の容量と異なり得るが、むしろこれらに類似することもあり得るので、バルク液体10と、泡21および/または残渣48とは、プローブ端4が試料30内に浸ったときに観察される容量変化によって、常に確実に識別されるとは限らない。
【0063】
特に図4を参照すると、システム1の別の実施形態において、プローブ2および第1電線141それぞれにサンプリング装置22を接続する第3電線143は、プローブ2の電圧の時間微分を決定するように適合される微分装置29を含んでいる。当業者には公知であるように、微分装置29は通常、演算増幅器36、第4抵抗器37およびキャパシタ38を含み、増幅器の第1入力39は、第3電線143およびキャパシタ38を介してプローブ2に接続され、増幅器の第2入力40は、電気的なグランド19に接続されている。さらに、増幅器の出力41は第4抵抗器37を介して増幅器の第1入力39に接続される。したがって、キャパシタ38を流れる電流は、キャパシタ38をわたる電圧の時間微分に比例する。また、第4抵抗器37をわたる電圧は、キャパシタ38をわたる電圧の時間微分に比例する。ゆえに、図3の実施形態とは対照的に、プローブ2の電圧の時間微分は、サンプリング装置22によってサンプリングされ得る。システム1の他の構成要素は、図3のものと同様である。
【0064】
特に図5Aおよび5Bを参照して、容器7に含まれる試料30のバルク液体10と、泡21および/またはバルク液体10の残渣48とを識別する工程が説明される。この工程において、プローブ端4を試料30中に浸すためにプローブ2を降下させるときに、さらに後で記載される2つの連続する工程IおよびIIの組が複合的に繰り返される。
【0065】
図5Aには、第1工程Iが示されており、ここで、トランジスタ15はそのオフ状態(開放状態)にされ、これは例えば、ベース接点18に印加されるクロック信号35の、隣接する2つの電圧パルスの間の時間と対応している。ゆえに、電圧源13の電位がプローブ2に印加され、これはプローブ2の電気的容量によって与えられる程度までプローブ2を充電する。クロック信号35の隣接する2つの電圧パルスの間の時間に応じて、プローブ2は例えば、飽和状態に到達するまで充電される。
【0066】
図5Bには、第2工程IIが示されており、ここで、トランジスタ15はそのオン状態(閉鎖状態)にされ、これは例えば、クロック信号35の電圧パルスをベース接点18に印加する時間に対応しており、その結果第1工程Iで充電されたプローブ2がグランド19に電気的に接続され、これはプローブ2から電気的なグランド19に放電電流を流す。プローブ2の放電中、放電電流および/またはその時間微分により引き起こされる電圧信号は、サンプリング装置22によってサンプリングされるので、試料30の電気抵抗Rmessが決定され得る。試料30の電気抵抗Rmessは、プローブ端4がバルク液体10にある場合、または泡21および残渣48にある場合で大きく異なるという事実から、それぞれ、バルク液体10は、泡21およびバルク液体10の残渣48から確実に識別され得る。とりわけ、試料30の電気抵抗Rmessの特徴的な変化は、プローブ端4が泡21からバルク液体10内へと降下されたとき、すなわち、プローブ端4が液面11に当たったときに観察され得る。
【0067】
プローブ端4をバルク液体10内に配置するために、上記の第1および第2の工程I、IIの組は、トランジスタ15および電気回路20の両方に印加されるクロック信号35の電圧パルスの周期的反復によって規定されるように、周期的に繰り返される。クロック信号35は、電気的な寄生インダクタンスがかなりの程度まで無効とされ得るように、好ましくは、1kHz〜100kHzまでの周波数を有する。
【0068】
上述の工程は、プローブ端4がバルク液体10の液面11に当たった実際のプローブ端4の位置、すなわち、試料30の電気抵抗Rmessの特性変化起こったときを検出することによって、バルク液体10の液面11を検出することにも用いられ得る。
【0069】
図6は、上述の第1および第2の工程I、IIを周期的に行うことによってプローブ2を充電および放電するときに、電気回路20により測定される、時間に応じた例示的な電圧信号の、連続する2つのサイクルを示す。時間はtで、電圧信号はVで示される。各サイクルは、プローブ2を充電する第1工程Iと、プローブ2を放電する第2工程IIとを含んでいる。しかしながら、サイクルは1kHz〜100kHzの範囲の周波数を有するクロック信号35に基づいて、幾つかの方法で周期的に繰り返されることを理解されたい。
【0070】
詳細には、プローブ端4がバルク液体10内に浸っている状況では、完全に放電されたプローブ2(V=0)から開始し、プローブ2を第1工程(I)で充電すると、プローブ2の電圧Vは指数関数的に増加し、とりわけプローブ2と周囲環境との間の容量結合により決定される固定電圧値に漸近的に近づく。電圧信号の各サイクルにおいて、「I」で示される電圧信号の増加部分(第1工程Iに対応)は、下記の式Aにより表され得る。
【数1】
ここで、tは時間、Uは測定される電圧、Rは第1および第2抵抗器31、32の抵抗R1およびR2、ならびに、プローブ端4が浸かっているのが、泡21の場合とバルク液体10の場合とで、それぞれ大きく異なる試料30の抵抗Rmessの合計(R=R1+R2+Rmess)、U0はシステム1の設計に依存する定電圧値、およびCmessはプローブ2の容量である。また、電気的インダクタンスは非常に少ないので無視され得る。
【0071】
その後、第2工程IIにおいて、充電されたプローブ2を放電するときには、「II」で示される電圧信号の減少部分(第2工程IIに対応)の2つの特徴のある領域が観察され、それらは、垂直な第1領域IIaおよび垂直でない第2領域IIbである。
【0072】
電圧信号の減少部分IIの第1領域IIaは、試料30の電気抵抗Rmessの寄与を表しており、以下の式Bにより表され得る。
【数2】
ここで、Uは測定される電圧、U0は定電圧値、R2は第2抵抗器32の抵抗、およびRmessは試料30の測定される電気抵抗である。
【0073】
それに続く電圧信号の減少部分IIの第2領域IIbは、以下の式Cにより表され得る。
【数3】
ここで、tは時間、Rは第2抵抗器32の電気抵抗R2と試料30の測定される電気抵抗Rmessとの合計、およびCmessはプローブ2の容量である。さらに、Ustartは式Dにより得られる。
【数4】
ここで、記号は上述のものと同一のものを意味する。
【0074】
図6は、電圧信号の減少部分II(「B」と示す)の拡大図も含んでいる。比較のために、この拡大図はプローブ端4が試料30の外にあるときに起こるであろう減少部分II(「A」と示す)と、プローブ端4が泡21中にあるときに得られ得る電圧信号の減少部分II(「C」と示す)も含んでいる。
【0075】
したがって、様々な電圧信号の減少部分IIの拡大図から分かるように、減少部分IIは、
プローブ端4が試料30の外にある場合(曲線A)、
プローブ端4がバルク液体10中にある場合(曲線B)、および
プローブ端4が泡21中にある場合(曲線C)
で大きく異なる。
【0076】
より詳述すると、プローブ端4が試料30の外にある場合(曲線A)、プローブ2の電気抵抗は無視され得る(Rmess=0)という事実から、各サイクルの第2部分II(減少側面)は、比較的緩やかで、垂直な領域IIaを有しておらず、言い換えれば、第2領域IIbのみを有する。また、プローブ端4がバルク液体10内にある場合(曲線B)、測定される電気抵抗(Rmess)はバルク液体10のもの(Rmess>0)と対応するので、各サイクルの第2部分II(減少側面)は垂直部分IIaを含む。さらに、プローブ端4が泡21中にある場合(曲線C)、試料30の測定される電気抵抗Rmessはバルク液体10内にある場合よりも高い(Rmess>>0)ので、各サイクルの第2部分II(減少側面)は曲線Bよりも長い垂直部分IIaを含んでいる。
【0077】
したがって、電圧信号の各サイクルの第2部分II(減少側面)を、試料30の測定される電気抵抗Rmess、とりわけその垂直部分IIaの長さに関して分析することにより、試料30の測定される電気抵抗Rmessの変化が認められ得るので、泡21はバルク液体10から確実に識別される。具体的には、泡21とバルク液体10とを識別するために、垂直部分IIaの長さが、例えば所定の基準値と比較され得る。同様に、プローブ端4がバルク液体10の残渣48と接触している場合に、プローブ端4がバルク液体10と接触している場合よりも長い垂直部分IIaの長さに基づき、バルク液体10は、その残渣48から確実に識別され得る。
【0078】
さらに、上述の第1および第2工程の組を繰り返し行うことによって減少部分IIの第1領域IIaの長さの変化によって表される試料30の電気抵抗Rmessの変化を検出することにより、液面11を検出するために、プローブ2のどの位置においてプローブ端4が液面11に当たったかが検出され得る。ゆえに、電圧信号および/またはその時間微分をサンプリングすることによって、プローブ2を介して測定された電気抵抗Rmessは液面11を検出するためにも用いられ得る。
【0079】
上述の工程は、例えばピペット作業を行うためにプローブ端4をバルク液体10内に配置する目的で、プローブ2を試料30に向かって降下させるときに行われている。しかしながら、ピペット作業を行なわずに液面11を検出することも可能である。
【0080】
次に、図2に示される上部が閉鎖した菅44に含まれる試料30(例えば、血清)に、プローブ2を降下させるときの、図1のシステムのプローブ2の電気抵抗および容量の例示的な変形例を示す図7A〜7Cを参照する。各図において、プローブ2を介して測定された電気抵抗Rmessおよびプローブ2の電気的容量Cmessの時間(t)に応じた変化が示されている。電気抵抗Rmessおよび電気的容量Cmessはそれぞれ、任意の単位で与えられる。図7A〜7Cは、プローブ2の下向きの動作のみを示す。詳細には、プローブ2はキャップ45の開口部(図2には図示せず)を通って動かされてもよいし、キャップ45を貫通するように鋭利にされてもよい。
【0081】
典型的な方法は、プローブ2が試料容器7の真上の第1位置に位置付けられている状況から開始し得る。例えば先行するピペット作業により、プローブ2が第1位置以外の位置に位置付けられている場合には、プローブ2は配置機構9を用いて第1位置へと動かされ得る。したがって、この方法は、試料容器7の真上の第1位置にプローブ2を配置する工程を含む場合もある。
【0082】
次にクロック信号35が起動され、これによりプローブ2を充電および放電する第1および第2工程が、周期的に繰り返し実行される。同時に、プローブ2に印加されたおよびプローブ2から受信した電圧信号を検出して、試料30の電気抵抗Rmessを得るために、サンプリング装置22が作動される。クロック信号35を印加し続けた状態で、試料30の電気抵抗Rmessが、プローブ端4がバルク液体10内にあることを示すまで、プローブ2は試料30内へ降下され、その後、試料30の外になるように上方へ持ち上げられる。
【0083】
具体的には、図7Aは、試料30がバルク液体10(液面11上に泡21は存在せず)および、例えばキャップ45に付着した試料30または復水による、キャップ45の下側にある滴などの残渣48のみで構成される状況に関する。この場合、プローブ2を大気から試料30内へ降下させると、「c」で示される位置において、濡れたキャップ45により、プローブ2を介して測定される電気抵抗Rmessおよびプローブ2の電気的容量Cmessの両方でわずかな変化が観察され得る。プローブ2を試料30内へさらに降下させると、プローブ端4が「b」で示される位置でバルク液体10に当たるときに、電気抵抗Rmessおよび電気的容量Cmessの両方で非常に大きな変化が観察され得る。図7Aには示していないが、プローブ2の移動方向が逆になったときも同様の反応が観察されるだろう。したがって、濡れたキャップ45は、電気抵抗Rmessおよび電気的容量Cmess両方の、比較的小さな変化を引き起こす。一方で、バルク液体10は、電気抵抗Rmessおよび電気的容量Cmess両方の、顕著な変化を引き起こす。したがって、プローブ2を介して測定される電気抵抗Rmessは、残渣48とバルク液体10とを識別するために用いられ得る。
【0084】
図7Bは、試料30がバルク液体および液面11上の、それを覆う第2泡領域49で構成される状況に関する。さらに、キャップ45の下側は、例えばそこに付着する滴によって、残渣48により濡らされている。この場合、プローブ2を大気から試料30内へ降下させると、「c」で示される位置において、湿れたキャップ45により、図7Aと同様に電気抵抗Rmessおよび電気的容量Cmessの両方でわずかな変化が観察され得る。プローブ2を試料30内へさらに降下させると、「d」で示される位置で、プローブ端4が第2泡領域49に当たるときに、(電気抵抗Rmessではなく)プローブ2の電気的容量Cmessのみに、非常に大きな変化が観察され得る。プローブ2を試料30内へさらに降下させると、「b」で示される位置で、プローブ端4がバルク液体10に当たるときに、電気抵抗Rmessおよび電気的容量Cmessの両方で非常に大きな変化が観察され得る。したがって、濡れたキャップ45が、プローブ2により測定される電気抵抗Rmessおよびプローブ2の電気的容量Cmess両方の小さな変化を引き起こす一方で、第2泡領域49は、プローブ2の電気的容量Cmessのみに大きな変化を引き起こす。これに対して、バルク液体10は、プローブ2により測定される電気抵抗Rmessおよびプローブ2の電気的容量Cmess両方の、大幅な変化を引き起こす。ゆえに、プローブ2により測定される電気抵抗Rmessは第2泡領域49に敏感でないことから、測定される電気抵抗Rmessとプローブ2の電気的容量Cmessとの間には顕著な差がある。
【0085】
図7Cは、試料30がバルク液体10、第1泡領域46および液面11上の第2泡領域49で構成され、さらに、キャップ45の下側がバルク液体10の滴などの残渣48により濡らされている状況に関する。この場合、プローブ2を大気から試料30内へ降下させると、「c」で示される位置において、濡れたキャップ45により、図7Aおよび7Bと同様に電気抵抗Rmessおよび電気的容量Cmessの両方でわずかな変化が観察され得る。プローブ2を試料30内へさらに降下させると、図7Bと同様に、「d」で示される位置で、プローブ端4が第2泡領域49に当たるときに、(プローブ2により測定される試料30の電気抵抗Rmessではなく)プローブ2の電気的容量Cmessのみに、非常に大きな変化が観察され得る。プローブ2を試料30内へさらに降下させると、「a」で示される位置で、プローブ端4が第1泡領域46に当たるときに、プローブの電気的容量Cmessは変わらないままだが試料30の電気抵抗Rmessにはわずかな変化が観察され得る。そして、「b」で示される位置で、プローブ端4がバルク液体10に当たるときに、電気抵抗Rmessの非常に大きな変化が観察され得る。したがって、濡れたキャップ45が、電気抵抗Rmessおよび電気的容量Cmess両方の小さな変化を引き起こす一方で、第2泡領域49は、プローブ2の電気的容量Cmessのみに大きな変化を引き起こす。プローブ端4が第1泡領域46およびバルク液体10にそれぞれ当たるときには、プローブ2の電気的容量Cmessの変化がないことから、第2泡領域49は、プローブ2の電気的容量Cmessを用いては、第1泡領域46からもバルク液体10からも識別され得ない。また、プローブ端4が第2泡領域49に当たるときには、プローブ2を介して測定される電気抵抗Rmessに実質的な変化はないが、プローブ端4がバルク液体10に当たるときには、プローブ2を介して測定される電気抵抗Rmessに顕著な変化がある。ゆえに、プローブ2の電気的容量Cmessとは対照的に、プローブ2を介して測定された試料30の電気抵抗Rmessは、電気抵抗Rmessが第2泡領域49に敏感でないことから、第2泡領域49と第1泡領域46とを識別するために用いられ得る。さらに、電気抵抗Rmessは、第2泡領域49とバルク液体10とを識別するために用いられ得る。そして、電気抵抗Rmessは、残渣48とバルク液体10とを識別するために用いられ得る。
【0086】
したがって、第1泡領域46および/またはバルク液体10の上の第2泡領域49の両方を有する場合には、プローブ2により測定される電気抵抗Rmessは、泡21とバルク液体10とを識別するために用いられ得る。さらにバルク液体10の残渣48を有する場合にも、プローブ2により測定される電気抵抗Rmessは、残渣48とバルク液体10とを識別するために用いられ得る。ゆえに、本発明の方法は、容量検出に基づく従来の方法よりも優れていると考えられる。
【0087】
したがって、プローブ端4は、液体を吸引するために、プローブ2を静止させて、また量が多い場合には、プローブ端4を液面11よりも下の位置に維持するためにプローブ端4をさらにバルク液体10内に位置させて、バルク液体10内に確実に位置付けられ得る。
【0088】
トランジスタ15のベース接点18および電気回路20の両方に印加されるクロック信号35は、好ましくは、1kHz〜100kHzの範囲の周波数を有する中周波(medium-frequency)の電圧信号である。結果として、プローブ2から得られた電圧信号は、試料30の電気抵抗Rmessを測定するのに理想的な勾配を有する減少側面(減少部分II)を含んでいる。1kHz未満の範囲の周波数を有する電圧パルスを含むクロック信号35を用いる場合には、泡21およびバルク液体10は単一の「導電性ユニット(conductive unit)」として考えられ得るので、泡21およびバルク液体10はそれらのコンダクタンス(非常に緩やかな側面)によっては確実に識別できない。また、100kHzを超える周波数を有する電圧パルスを含むクロック信号35を用いる場合にも、泡21とバルク液体10との間に明確な差異はない(非常に急勾配な側面)。
【0089】
システム1において、制御装置34は、試料30の電気抵抗Rmessに基づいてプローブ2の配置を制御するように設定される。制御装置34は例えば、所定の処理ルーチンに従って演算を行うための命令を備えたコンピュータが読み取り可能なプログラムを実行する、プログラミング可能な論理装置(マイクロプロセッサ)として具体化されてもよい。図1ではさらに詳しくは述べていないが、制御装置34は、プローブ2を配置する配置機構9を含む、制御を必要とし、および/または情報を提供する様々なシステム構成要素に電気的に接続されている。
【0090】
システム1において、プローブ2は、これに限定されるわけではないが、ステンレス鋼のような金属などの、好ましくは導電性材料で作製される。さらに、試料容器7および/または作業板8は、これに限定されるわけではないが、プラスティックなどの電気絶縁性の材料で作製され得る。
【0091】
当業者であれば、上述の方法は多くの点で変更され得るということを理解するだろう。
【0092】
1つの変更によれば、固定電圧に到達するまでプローブ2を第1工程Iで充電する替わりに、充電が所定の時間の間行われても良い。
【0093】
別の変更によれば、プローブ2を放電するときに電圧を検出する替わりに、プローブ2を(完全に)放電するための時間が測定され得る。
【0094】
さらに別の変更によれば、プローブ2を介する試料30の電気抵抗Rmessを決定することは、プローブ端4が試料30中に浸ったときに典型的に生じる容量変化を決定することと組み合わされ得る。これは、サンプルの量が非常に少ない場合に特に有用である。
【0095】
とりわけ図8Aを参照すると、試料容器7は、例えば、これに限定されるわけではないが、プラスティックなどの絶縁性材料で作製される電気絶縁性の部分42と、これに限定されるわけではないが、導電性プラスティックなどの導電性材料で作製される導電性の部分43とから構成されており、後者は、これに限定されるわけではないが、金属などの導電性材料で作製された、接地された作業板8の上に試料容器7を置くために用いられている。
【0096】
とりわけ図8Bを参照すると、試料容器7は、例えば、これに限定されない導電性プラスティックなどの導電性材料で作製された導電性のエンベロープ50に入れられる、これに限定されないプラスティックなどの絶縁性材料で作製された電気絶縁性の管44で、例えば構成されることができ、導電性のエンベロープ50は、これに限定されるわけではないが、金属などの導電性材料で作製された、接地された作業板8の上に試料容器7を置くために用いられている。
【0097】
図8Aおよび8Bに示されるような試料容器7は、プローブ2の電気抵抗を測定するためにプローブ2と作業板8との容量結合を高めるために用いられ得る。より詳述すると、その間の容量結合を増加させることによって、プローブ2から得られる電気信号の信号強度を向上させるように、プローブ2を充電する荷電キャリアの数が増加され得る。
【0098】
上述のようにシステム1において、試料30の泡状部分およびバルク液体10の残渣48は、一方では泡21とバルク液体10の残渣48との間、また他方では泡21とバルク液体10との間の導電性(電気抵抗)の違いによりもたらされる、プローブ2を介して測定される試料30の電気抵抗の顕著な変化により、バルク液体から確実に区別され得る。さらに、バルク液体10の液面11も、確実に検出され得る。
【0099】
上記において例示的な実施形態を提示したが、これらの実施形態は単なる例であって、範囲、適用性、または構成を制限することは全く意図されていないということを理解されたい。本発明の多くの変更および変形は、上記に照らして可能であるということは明らかである。それゆえ、添付された請求項の範囲内において、本発明は、具体的に考案されたものと異なって実施され得るということを理解されたい。
【符号の説明】
【0100】
1 システム
2 プローブ
3 チャネル
4 プローブ端
5 ポンプ
6 ポンプ導管
7 試料容器
8 作業板
9 配置機構
10 バルク液体
11 液面
12 識別装置
13 電圧源
141 電線
142 電線
143 電線
144 電線
15 トランジスタ
16 コレクタ接点
17 エミッタ接点
18 ベース接点
19 グランド
20 電気回路
21 泡
22 サンプリング装置
23 アナログ・デジタル変換器
24 サンプリング装置の接点
25 サンプリング装置の第1入力
26 サンプリング装置の第2入力
27 サンプリング装置の出力
28 遅延回路
29 微分装置
30 試料
31 第1抵抗器
32 第2抵抗器
33 第3抵抗器
34 制御装置
35 クロック信号
36 演算増幅器
37 第4抵抗器
38 キャパシタ
39 増幅器の第1入力
40 増幅器の第2入力
41 増幅器の出力
42 絶縁性の部分
43 導電性の部分
44 管
45 キャップ
46 第1泡領域
47 気泡
48 残渣
49 第2泡領域
50 エンベロープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8