【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、患者に医薬品を投与するための医療デバイスを提供する。医療デバイスは、中に埋め込まれた添加剤を有する材料を含む少なくとも一つの構成部材(component)を含む。添加剤は、好ましくは少なくとも一つの構成部材のバルク中に埋め込まれる。前記添加剤は、更に、電磁波に曝露したとき可視的に認識可能な信号を提供するように適合される。好ましくは、添加剤は、構成部材の周辺材料に比較して、異なった仕方で電磁波の事前に定義されたスペクトルに応答する。少なくとも構成部材を電磁波の個々のスペクトルに曝露することにより、前記構成部材の内側に埋め込まれた添加剤は、多様な異なった方法で、そして個々の目的のために使用できる可視的に認識可能な信号を提供するであろう。
【0011】
医療デバイスの少なくとも一つの構成部材のバルク中に添加剤を埋め込むことにより、個々の構成部材は追加の表面処理を必要としない。また、構成部材はその可視的性質、及びそれが長時間使用された場合、摩耗又は摩擦を受けることになっても電磁波に対するその応答を維持する。
【0012】
添加剤が少なくとも一つの構成部材のバルク中に埋め込まれることは、本発明にとって特別に有用である。個々の製造プロセスにおいて補助的な工程を必要とする添加剤含有のコーティングを備えた構成部材を提供する代わりに、本発明は、都合よく、可視的に認識可能な添加剤は、構成部材のバルク中に、実質的に均一に分布していることを特徴とする。
【0013】
一方では、構成部材が作られる原材料のみが、適切に改質される必要がある。例えば、前記構成部材のアセンブリ又は後処理の後続の工程は、それ故、大量生産の既存のプロセスにおいて変化しないままであり得る。
【0014】
他方で、添加剤を少なくとも一つの構成部材中に埋め込むことにより、前記構成部材は、構成部材が摩擦又は摩耗を受けることになったときでも、むしろ一定で可視的に認識可能な信号を常に提供する。また、そして、コーティングとの比較において、材料の選択された電磁波に対する可視的で、認識可能な応答は、前記構成部材の固有の性質となる。
【0015】
第一の好ましい実施態様によると、少なくとも一つの構成部材の材料は、射出成形された熱可塑性材料を含み、ここで、添加剤は、例えば、材料中に実質的に均一に分布される顔料の形体での少なくとも一つの染料を含む。好ましくは、個々の染料は、例えば、粒形体で提供され得る熱可塑性原材料と混合される。
【0016】
熱可塑性原材料を少なくとも一つの染料と一緒に混合することは、出発材料としての組成物を提供し、それは熱可塑性射出成形プロセスの完了の後、実質的に均一にその中に埋め込まれ、分布した少なくとも一つの個別の染料を有する医療デバイスの熱可塑性構成部材となる。
【0017】
更なる好ましい実施態様によると、添加剤は、個々の構成部材の色が、全自動生産の中でそのような構成部材の画像収集及び画像処理が十分に実施できるような方法で改変される着色顔料を含んでもよい。それ故、埋め込まれた染料は、少なくとも、個々の構成部材の存在、位置、及び/又は、配向を決定することを可能にするのに十分なコントラストを提供する。
【0018】
更なる好ましい実施態様によると、添加剤は、特定範囲の電磁波に対してのみ感度がある。また、添加剤は、特定波長の電磁波に曝露されるとき、異なった方法で反応するかも知れない。例えば、添加剤は、電磁波の第一のスペクトル範囲に対応して蛍光性であってもよい。一般的に、添加剤は、UVスペクトル範囲における電磁波により提供される励起に対する蛍光応答を提供し得る。
【0019】
蛍光性で以って、個々の添加剤又は染料は、紫外スペクトル範囲において、光子を吸収するように適合され得て、そして可視スペクトル領域で光子を放出するように適合され得る。この方法において、少なくとも構成部材の可視化は、UVスペクトル範囲における電磁波のような非可視放射に前記構成部材を曝露することにより効率的に実施でき、一方、カメラ又は画像収集システムは、構成部材の位置、及び/又は、配向を、個々の可視スペクトル範囲の光を検出することにより監視するように適合される。
【0020】
適切な添加剤としては、例えば、2,2’−(2,5−チオフェンジイル)−ビス[5−tert−ブチルベンゾオキサゾール]が含まれる。この種の添加剤は、直ちに、重合体及び接着剤に使用でき、そして、患者に対する健康リスクを示さない。
【0021】
別の実施態様において、添加剤は電磁波の第二のスペクトル範囲に関しては、ホトクロミック性である。それ故、添加剤は、事前に定義された放射スペクトル内で、電磁波に曝露されるとき、可逆的、又は非可逆的な光化学反応を受ける。ホトクロミック添加剤に固有な光化学反応に起因して、前記材料の電磁スペクトルの可視部分における吸収帯は、強度及び/又は波長において変化する。添加剤は、ペリ環化反応、シス−トランスの異性化、分子内水素転移、分子内基転移、解離プロセス及び電子転移を受けることになるかもしれない。従って、添加剤は、トリアリールメタン、スチルベン、アザスチルベン、ニトロン、フルギド、スピロピラン、ナフトピラン、スピロ−オキサジン、キノン、及びその他の様々な異なったクラスに分けられる。
【0022】
ホトクロミック添加剤を医療デバイスの周辺部品のバルク中に埋め込むことは、多くの態様で有益である。ホトクロミック添加剤は、例えば、デバイスが有害な放射に曝露された場合、構成部材に固有の標識化を提供する。更に、ホトクロミック添加剤は、一般に、個々の構成部材の光学的透過性及び吸収性の性質を改変する。例えば、少なくとも部分的に透明なカートリッジホルダにホトクロミック添加剤を備えることにより、電磁波曝露が、その後、個々の放射吸収の上昇をもたらした。この方法において、医薬品を含むカートリッジは、継続した放射曝露に対して効果的に保護できる。
【0023】
別の実施態様において、少なくとも一つの構成部材に埋め込まれた添加剤は、電磁波の第三のスペクトル範囲に対して、実質的に吸収性か又は反射性である。例えば、添加剤は、X線などの高エネルギ電磁波に対して、実質的に非透過性(opaque)であり得る。この方法では、X線に曝露したとき、医療デバイスの少なくとも一つの構成部材を可視化するために、X線非透過性の添加剤を使用することが考えられる。例えば、X線検査のため、適切な試験条件下でのみ、可視化すべき必要なX線非透過パターンを提供する、効果的な偽造防止手段を実施できる。
【0024】
X線スペクトル範囲において、電磁波を使用することにより、少なくとも一つの構成部材は、更に、外周のほとんどいずれの場所にも、又は医療デバイスの内側にも配置できる。そのようなデバイスの残りの構成部材は、最適の電磁波に対して、実質的に透過し、それは従来の熱可塑性材料に対して普通は成り立つが、前記X線非透過性の構成部材の存在、位置、及び/又は、配向は、その場で検査できる。
【0025】
本発明の別の好ましい実施態様によると、第一、第二、及び/又は、第三のスペクトル範囲(半値全幅(FWHM))は、100nmより小さく、好ましくは50nmより小さく、最も好ましくは10nmより小さく、又は5nmより小さいスペクトル幅も含む。添加剤は個々の電磁刺激に対する応答を提供する帯域幅を縮小することにより、効果的な偽造防止手段は実質的に改良される。 添加剤が可視的に認識可能な、又は、少なくとも、検出可能な電磁信号を提供する最適の秘密の波長を、特に、維持することにより、そのようなデバイスの偽造手段はより困難になる。何故ならば、オリジナルの部分が、特定の、及び秘密が保持される雰囲気条件下でのみ特別に可視的な、又は光学的に検出可能な応答を提供することを、偽造が気付かないことがあり得るからである。
【0026】
別の実施態様において、第一、第二、及び/又は、第三のスペクトル範囲は、赤外、可視、UV、又はX線スペクトル範囲にある。可視的に認識可能な信号は、偽造防止手段として使用されるか、又はデバイスのアセンブリを支援する手段に、例えば、自動大量生産に使用されるか否かに依存して、検査波長及び対応する添加剤は、それに応じて、選択できる。
【0027】
更に、多数の異なった添加剤を使用することは本発明に対して想定でき、ここで、例えば、第一の添加剤は、UV曝露に対する可視的応答を提供し、一方、第二の添加剤はX線に対して非透過で、吸収する。第一の添加剤が自動的なデバイスのアセンブリに対して有用であるならば、第二の添加剤は、偽造防止機能を提供するように適合し得る。
【0028】
別の実施態様において、添加剤は、所定のスペクトル範囲の事前に決定された放射量を曝露されたとき、非可逆的に、少なくとも一つのその可視的に認識可能な性質を変化させる。例えば、添加剤は非可逆的なホトクロミックタイプであってもよく、そして光化学反応は、特定のスペクトル範囲内の放射で析出したエネルギが事前に定義された閾値を越えると直ちに始まるかもしれない。
【0029】
添加剤の可視的に認識可能な性質における非可逆的変化を用いて、医療デバイス、及び/又は、そのようなデバイスにより送達される薬剤は、その有効期限を超えたとき、標識化できる。この方法において、使用者又は患者は、そのような医療機器又は薬剤は、健康に対するリスクを含むかもしれない重要な情報を提供され得る。
【0030】
更に、及び別の好ましい実施態様によると、材料は潤滑剤として構成される。それ故、医療機器の構成部材は、アセンブリ工程において潤滑剤を備えていてもよい。潤滑剤は添加剤を含んでもよく、従って、選択された放射に曝露されたとき、個々の構成部材を可視化することが可能になる。
【0031】
添加剤で強化された構成部材は、医療デバイス、特に、薬物送達デバイスの他の機能的構成部材に対する潤滑剤効果を提供するために機能する潤滑剤部材であるということも想定可能である。添加剤を潤滑剤部材のバルクの中に埋め込むことにより、潤滑剤部材の位置、及び/又は、存在は、デバイスの大量生産又は大量アセンブリ工程の間、光学的に制御できる。
【0032】
この文脈において、また、容器又は特定のデバイス構成部材の直通開口部、例えば、薬物送達デバイスの駆動機構のナンバスリーブは、少なくとも部分的に、埋め込まれた添加剤を有する潤滑剤物質で充填できる。自動生産プロセスの過程において適切に図示されるとき、個々のデバイスの構成部材、例えば、ナンバスリーブの事前に定義された位置からの正しい位置、及び/又は、偏位は、全て光学的方法で制御できる。
【0033】
更なる態様において、本発明は、また、薬物送達デバイスとして構成され医療デバイスを提供し、ここで、デバイスは、ハウジング、駆動機構、及び医薬品で充填されたカートリッジを受け入れるように適合されたカートリッジホルダを含む。前記カートリッジは、一般的に、バイアル又はカープルとして構成され、そして、その中に摺動可能に配置されたピストンを有する。医療デバイスの駆動機構は、更に、カートリッジのピストンに操作可能に係合される。一般的に、駆動機構のピストンロッドは、医薬品の用量を投与するためにカートリッジのピストンと操作可能に係合する。
【0034】
本発明によると、ハウジング、駆動機構、ピストンロッド、カートリッジホルダ、及び/又は、別に加えられる潤滑剤、又はデバイスの他の個別の構成部材は、その中に埋め込まれた添加剤を有する本発明の意味における少なくとも一つの構成部材として設計できる。この方法において、医療デバイスのいずれか一つ、又は数個の構成部材は、例えば、完全な自動生産プロセスにおける、個々の構成部材の、存在、位置、又は配向の可視化を改良することを可能にする埋め込まれた添加剤を含んでもよい。
【0035】
適切な曝露システムを使用することにより、医療デバイスの個々の構成部材及び部材は、強調されたコントラストを提供し得、そしてより良好に図示され、例えばカメラベースの検出システム又はヒトの目により検出され得る。この方法では、アセンブリプロセスの信頼性及び故障安全性(failure safety)を強化することができ、そしてそのようなアセンブリラインの生産効率を最適化することが可能である。
【0036】
一般的に、本発明に記載の医療デバイスは、患者に薬剤流動体を送達し、又は投与するように適合されるいかなる医療デバイスも参照し得る。それ故、医療デバイスは、好ましくは、薬物送達デバイスとして設計され、より好ましくは、注射器デバイスとして、又は吸入器として設計される。一般的には、本発明は、ペン形注射システム、注射器、吸入器に、バイアル、カートリッジ、管及び容器、並びに、そのようなデバイスの他の構成部材に普遍的に適用できる。
【0037】
別の態様において、本発明は、また、医薬品の用量を投与するように適合される薬物送達デバイスのアセンブリ方法に参照する。薬物送達デバイス、例えば、ペン形注射器は、少なくとも一つ、又は数個の下記の構成部材:ハウジング、駆動機構、及び/又は、医薬品で充填されたカートリッジを受け入れるよう適合され、そしてその中に摺動可能に配置されたピストンを含むカートリッジホルダを含む。駆動機構は、医薬品の単回又は複数回用量を投与するためのピストンロッドを用いてカートリッジのピストンと操作可能に係合する。本発明によるアセンブリ方法は、前記構成部材の少なくとも一つのバルク中に少なくとも一つの添加剤を埋め込む工程を含み、ここで、添加剤は、事前に定義された波長の電磁波に曝露されたとき、可視的に認識可能な信号を提供するように適合される。
【0038】
次に、構成部材は、例えば、完全に自動的な生産方法において、前記電磁波に曝露される。前記電磁波の曝露に起因して、添加剤は、可視的な又は少なくとも光学的に検出可能な応答を提供し、それはその存在、その絶対位置、相対位置、及び/又は、その配向を適宜決定するために検出される。前記構成部材の存在、相対位置又は絶対位置、及び/又は、配向の知識を有することにより、薬物送達デバイスの少なくとも一つの構成部材又は部分組立品は、薬物送達デバイスの別の構成部材又は部分組立品と組立てられる
【0039】
好ましくは、少なくとも一つの構成部材の位置又は配向は、構成部材がコントラストを強調して図示される画像処理を用いて決定される。例えば、添加剤が、UV光に曝露したとき、画像システムにおける適切なフィルタを使用することにより蛍光を発する場合、前記構成部材の存在、位置、及び/又は、配向が、適切な画像収集及び画像処理システムにより、正確に、そして容易に決定できる。
【0040】
別の独立の態様において、本発明は、更に、医療デバイスに真正なものであることの証明書をラベリングする方法を提供する。前記方法は、医療デバイスの少なくとも一つの構成部材のバルク中に添加剤を埋め込む工程を含み、ここで、添加剤は、事前に定義され、選択され、そして制限されたスペクトル範囲の電磁波に曝露したとき、可視的に認識可能な信号を提供するように適合される。医療デバイスが純正部品かどうかを調べ、又は管理するために、全デバイス又は少なくともその特定部品は、前記スペクトル範囲の電磁波に曝露される。
【0041】
前記構成部材により反射し、透過し、又は拡散した電磁波を、その後、検出し、及び/又は、分析することにより、構成部材、及び/又は、医療部品全体が偽造されたか否かを正確に決定することができる。この文脈において、添加剤が電磁スペクトルの特定の狭い帯域にのみ応答性があるときのみ、更に、有益である。好ましくは、添加剤は、100nmより小さい幅(半値全幅(FWHM))を有するスペクトル範囲に対してのみ応答性があり、より好ましくは、50nmより小さく、最も好ましくは、10又は5nmより狭い幅である。
【0042】
更にその上、添加剤が応答するスペクトル範囲を秘密に維持することにより、前記偽造防止手段を改良できる。その上、UV放射又はX線使用による非可視的なスペクトル範囲における電磁波曝露を用いるとき、特定構成部材の光学的応答は、デバイス全体のアセンブリを分解する必要なく、調べることができる。これは、前記添加剤を備えた構成部材が医療デバイスの内側に配置されるとき、特に有益である。
【0043】
別の更なる独立の態様において、本発明は、また、医療デバイスの使用不可(unusability)を視覚化する方法を参照し、ここで、第一工程において、少なくとも事前に定義された時間の間隔で、事前に定義された波長の電磁波に曝露されるとき、少なくとも一つの可視的に認識可能な性質を変化させるように適合される添加剤が選択される。その後、適切な添加剤は、医療デバイスの少なくとも一つの構成部材のバルク内に埋め込まれる。好ましくは、前記添加剤は、射出成形などの後続の成形プロセスを受ける原材料と混合される。好ましくは、前記添加剤は、事前に定義された量の放射エネルギに曝露されると、光化学反応を受けるように適合される。
【0044】
事前に定義された量の放射エネルギの蓄積は、一般的には、個々のデバイス又は個々の容器は既にその有効期限を超えたことの指標である。従って、添加剤の少なくとも一つの光学的性質の変化は、医療デバイス、及び/又は、その医薬品は、最早、患者に対して使用すべきでない、又は投与すべきでないことの指標である。一般的には、医療デバイスの構成部材は、少なくとも部分的にその色を変化させ得、それにより、使用者に対してその有効期限が超えたことを指示する。
【0045】
更にその上、本発明に記載の可視的に認識可能な信号は、ヒトの目、又は可視スペクトル範囲外のスペクトル範囲にも感受性がある検出器の手段により検出可能ないかなる電磁信号も参照することを述べる必要がある。その上、可視的に認識可能な信号は、少なくとも一つの構成部材中に埋め込まれた添加剤で提供される、吸収、反射、拡散、励起及び放出プロセスに基礎を置くことができる。
【0046】
加えて、医療デバイスの構成部材の一部のみに添加剤を埋め込まざるを得ないことを述べる。例えば、薬物送達デバイスの選択された構成部材は、2−成分系又は2K−射出成形成分系として構成してもよく、ここで、これら構成部材の一つのみが前記添加剤を備えている。
【0047】
様々な改変及び変更は、本発明の精神及び範囲から離れることなく、本発明に対して実施可能であることは関連分野の当業者には明白であろう。更に、添付の請求項で使用されるいかなる参照符号も、本発明の範囲を制限するものとして解釈すべきではないということは注意すべきである。なお、本発明は更に、数多くの医療デバイス、並びに、アセンブリ、医療デバイス、及び、特に、ペン形注射器などの薬物送達デバイスの使用不能の標識化、及び/又は、可視化に焦点を絞った異なった方法に普遍的に適用でき、実施できる。
【0048】
制限なしで、本発明は、好ましい実施態様と図面の参照を関連させて、より詳細に説明されるであろう: