(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
低圧側の第1過給機と、前記第1過給機の吐出空気を冷却する冷却手段と、冷却後の前記吐出空気を圧縮する高圧側の第2過給機とを備え、少なくとも2段に渡って圧縮された空気を内燃機関に供給する多段式過給システムの制御装置であって、
前記第1過給機の吸込空気温度及び吸込空気湿度並びに前記第1過給機の吸気圧力及び吐出圧力を入力情報として取得する情報取得手段と、
前記第1過給機の吸込空気温度及び吸込空気湿度並びに前記第1過給機の吸気圧力及び吐出圧力をパラメータとして用いて、前記第1過給機の吐出空気の水蒸気分圧を算出する水蒸気分圧算出手段と、
前記水蒸気分圧算出手段によって算出された水蒸気分圧が飽和水蒸気圧となる温度を目標温度として設定する目標温度設定手段と、
前記第2過給機の吸込空気温度が前記目標温度以上となるように、前記冷却手段を制御する冷却制御手段と
を具備し、
前記情報取得手段は、入力情報として前記第1過給機の回転数または空気流量を更に取得し、
前記目標温度設定手段は、前記水蒸気分圧算出手段によって算出された前記水蒸気分圧、並びに前記第1過給機の吸込空気温度、吸気圧力、吐出圧力、及び回転数または空気流量を用いて、前記第2過給機の吸込空気に含まれる凝縮水量が前記第2過給機の特性から決定される所定の許容凝縮水量となる前記第2過給機の吸込空気温度を、前記目標温度として設定する多段式過給システムの制御装置。
低圧側の第1過給機と、前記第1過給機の吐出空気を冷却する冷却手段と、冷却後の前記吐出空気を圧縮する高圧側の第2過給機とを備え、少なくとも2段に渡って圧縮された空気を内燃機関に供給する多段式過給システムの制御方法であって、
前記第1過給機の吸込空気温度及び吸込空気湿度並びに前記第1過給機の吸気圧力及び吐出圧力を入力情報として取得する情報取得過程と、
前記第1過給機の吸込空気温度及び吸込空気湿度並びに前記第1過給機の吸気圧力及び吐出圧力をパラメータとして用いて、前記第1過給機の吐出空気の水蒸気分圧を算出する水蒸気分圧算出過程と、
前記水蒸気分圧算出過程によって算出された水蒸気分圧が飽和水蒸気圧となる温度を目標温度として設定する目標温度設定過程と、
前記第2過給機の吸込空気温度が前記目標温度以上となるように、前記冷却手段を制御する冷却制御過程と
を具備し、
前記情報取得過程では、入力情報として前記第1過給機の回転数または空気流量を更に取得し、
前記目標温度設定過程は、前記水蒸気分圧算出過程において算出された前記水蒸気分圧、並びに前記第1過給機の吸込空気温度、吸気圧力、吐出圧力、及び回転数または空気流量を用いて、前記第2過給機の吸込空気に含まれる凝縮水量が前記第2過給機の特性から決定される所定の許容凝縮水量となる前記第2過給機の吸込空気温度を、前記目標温度として設定する多段式過給システムの制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した二段式の過給システムでは、上記冷却器によって吸気が冷却される際、圧縮空気中の水分が凝縮して水ミストが発生し、この水ミストが後段の過給機のインペラに衝突して、インペラを破損させる可能性があった。インペラが破損すると、過給機の効率が低下するとともに、仮に、破片が内燃機関のシリンダに混入した場合には、摺動部不良や焼きつき等の原因になる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、圧縮空気の冷却時における水ミストの発生を抑制することのできる多段式過給システム及びその制御装置並びにその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、低圧側の第1過給機と、前記第1過給機の吐出空気を冷却する冷却手段と、冷却後の前記吐出空気を圧縮する高圧側の第2過給機とを備え、少なくとも2段に渡って圧縮された空気を内燃機関に供給する多段式過給システムの制御装置であって、前記第1過給機の吸込空気温度及び吸込空気湿度並びに前記第1過給機の吸気圧力及び吐出圧力を入力情報として取得する情報取得手段と、前記第1過給機の吸込空気温度及び吸込空気湿度並びに前記第1過給機の吸気圧力及び吐出圧力をパラメータとして用いて、前記第1過給機の吐出空気の水蒸気分圧を算出する水蒸気分圧算出手段と、前記水蒸気分圧算出手段によって算出された水蒸気分圧が飽和水蒸気圧となる温度を目標温度として設定する目標温度設定手段と、前記第2過給機の吸込空気温度が前記目標温度以上となるように、前記冷却手段を制御する冷却制御手段とを具備
し、前記情報取得手段は、入力情報として前記第1過給機の回転数または空気流量を更に取得し、前記目標温度設定手段は、前記水蒸気分圧算出手段によって算出された前記水蒸気分圧、並びに前記第1過給機の吸込空気温度、吸気圧力、吐出圧力、及び回転数または空気流量を用いて、前記第2過給機の吸込空気に含まれる凝縮水量が前記第2過給機の特性から決定される所定の許容凝縮水量となる前記第2過給機の吸込空気温度を、前記目標温度として設定する多段式過給システムの制御装置を提供する。
【0007】
例えば、第2過給機の吸込空気に水ミストが発生しないようにするためには、単純に第2過給機の吸込空気温度を上昇させればよい。しかし、吸込空気の温度上昇は過給機の効率低下を招くため、効率の観点からは温度上昇は避けた方が好ましい。このように、第2過給機の吸込空気においては、水ミストの発生の観点と、過給機の効率の観点とから最適な温度に制御することが重要となる。
本発明によれば、第1過給機の吐出空気における水蒸気分圧を算出し、この水蒸気分圧が飽和水蒸気分圧となる温度を求め、この温度を第2過給機の吸込空気の目標温度として設定する。この目標温度は、第2過給機の吸込空気において、水ミストが発生しない最低温度を意味するので、水ミストの発生を回避することができるとともに、過給機の効率低下を可能な限り抑制することが可能となる。このように、本発明によれば、第2過給機の吸込温度を水ミストの発生の観点と過給機の効率の観点とから適正な範囲に制御することができる。
また、本発明によれば、第2過給機の吸込空気に含まれる凝縮水量を予め設定されている許容凝縮水量に一致させる温度が目標温度として設定される。例えば、第2過給機のインペラに比較的強度があり、多少の凝縮水を許容するような構造である場合には、その許容範囲内での凝縮水の混入を許容し、その分、第2過給機の吸込空気の目標温度を下げる。これにより、水ミストの混入を確実に排除する場合と比べて、第2過給機の効率を向上させることができる。
【0010】
本発明は、低圧側の第1過給機と、前記第1過給機の吐出空気を冷却する冷却手段と、冷却後の前記吐出空気を圧縮する高圧側の第2過給機とを備え、少なくとも2段に渡って圧縮された空気を内燃機関に供給する多段式過給システムの制御装置であって、前記第1過給機の吸込空気温度及び吸込空気湿度並びに前記第1過給機の吸気圧力及び吐出圧力を入力情報として取得する情報取得手段と、前記第1過給機の吸込空気温度及び吸込空気湿度並びに前記第1過給機の吸気圧力及び吐出圧力をパラメータとして用いて、前記第1過給機の吐出空気の水蒸気分圧を算出する水蒸気分圧算出手段と、前記水蒸気分圧算出手段によって算出された水蒸気分圧が飽和水蒸気圧となる温度を目標温度として設定する目標温度設定手段と、前記第2過給機の吸込空気温度が前記目標温度以上となるように、前記冷却手段を制御する冷却制御手段とを具備し、前記目標温度設定手段は
、前記第2過給機の吸込空気における水蒸気分圧を未知数として用いて、前記第2過給機の吸込空気に含まれる凝縮水量を表わす式を設定し、該式と許容凝縮水量とを等式としたときの前記水蒸気分圧を取得し、該水蒸気分圧が飽和水蒸気圧となる温度を前記目標温度として設定する
多段式過給システムの制御装置を提供する。
【0011】
本発明は、低圧側の第1過給機と、前記第1過給機の吐出空気を冷却する冷却手段と、冷却後の前記吐出空気を圧縮する高圧側の第2過給機と、上記の多段式過給システムの制御装置とを備え、少なくとも2段に渡って圧縮された空気を内燃機関に供給する多段式過給システムを提供する。
【0012】
本発明は、低圧側の第1過給機と、前記第1過給機の吐出空気を冷却する冷却手段と、冷却後の前記吐出空気を圧縮する高圧側の第2過給機とを備え、少なくとも2段に渡って圧縮された空気を内燃機関に供給する多段式過給システムの制御方法であって、前記第1過給機の吸込空気温度及び吸込空気湿度並びに前記第1過給機の吸気圧力及び吐出圧力を入力情報として取得する情報取得過程と、前記第1過給機の吸込空気温度及び吸込空気湿度並びに前記第1過給機の吸気圧力及び吐出圧力をパラメータとして用いて、前記第1過給機の吐出空気の水蒸気分圧を算出する水蒸気分圧算出過程と、前記水蒸気分圧算出過程によって算出された水蒸気分圧が飽和水蒸気圧となる温度を目標温度として設定する目標温度設定過程と、前記第2過給機の吸込空気温度が前記目標温度以上となるように、前記冷却手段を制御する冷却制御過程とを具備
し、前記情報取得過程では、入力情報として前記第1過給機の回転数または空気流量を更に取得し、前記目標温度設定過程は、前記水蒸気分圧算出過程において算出された前記水蒸気分圧、並びに前記第1過給機の吸込空気温度、吸気圧力、吐出圧力、及び回転数または空気流量を用いて、前記第2過給機の吸込空気に含まれる凝縮水量が前記第2過給機の特性から決定される所定の許容凝縮水量となる前記第2過給機の吸込空気温度を、前記目標温度として設定する多段式過給システムの制御方法を提供する。
【0014】
本発明は、
低圧側の第1過給機と、前記第1過給機の吐出空気を冷却する冷却手段と、冷却後の前記吐出空気を圧縮する高圧側の第2過給機とを備え、少なくとも2段に渡って圧縮された空気を内燃機関に供給する多段式過給システムの制御方法であって、前記第1過給機の吸込空気温度及び吸込空気湿度並びに前記第1過給機の吸気圧力及び吐出圧力を入力情報として取得する情報取得過程と、前記第1過給機の吸込空気温度及び吸込空気湿度並びに前記第1過給機の吸気圧力及び吐出圧力をパラメータとして用いて、前記第1過給機の吐出空気の水蒸気分圧を算出する水蒸気分圧算出過程と、前記水蒸気分圧算出過程によって算出された水蒸気分圧が飽和水蒸気圧となる温度を目標温度として設定する目標温度設定過程と、前記第2過給機の吸込空気温度が前記目標温度以上となるように、前記冷却手段を制御する冷却制御過程とを具備し、前記目標温度設定過程は、前記第2過給機の吸込空気における水蒸気分圧を未知数として用いて、前記第2過給機の吸込空気に含まれる凝縮水量を表わす式を設定し、該式と許容凝縮水量とを等式としたときの前記水蒸気分圧を取得し、該水蒸気分圧が飽和水蒸気圧となる温度を前記目標温度として設定する
多段式過給システムの制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、圧縮空気の冷却時における水ミストの発生を抑制するので、後段の過給機における水ミストの問題を解消でき、インペラ等の破損を回避することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔第1実施形態〕
以下に、本発明の第1実施形態に係る多段式過給システム及びその制御装置並びにその方法について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る多段式過給システムの一例として、二段式の過給システムの一構成例を概略的に示した図である。
図1に示すように、多段式過給システム1は、低圧側の第1過給機2と、第1過給機2の吐出空気を冷却するインタークーラ(冷却手段)3と、冷却後の吐出空気を圧縮する高圧側の第2過給機4と、制御装置5とを主な構成として備えている。
【0018】
第2過給機4から吐出された圧縮空気は、インタークーラ6によって冷却された後に、内燃機関7に供給される。内燃機関7の排気ガスが排出される排ガス配管8には、高圧側の第2タービン10、低圧側の第1タービン11が設けられ、これらが排ガスによって回転する。
【0019】
第2タービン10が第2過給機4と、第1タービン11が第1過給機2とそれぞれ一軸で接続されることにより、第2タービン10、第1タービン11の回転力が第2過給機4、第1過給機2にそれぞれ伝達され、第2過給機4、第1過給機2が駆動する。
このような多段式過給システム1において、第1過給機2の吸込空気温度T
1[℃]、吸込空気湿度H
1[%]、吸気圧力P
1[kPa]、吐出圧力P
2[kPa]、及び第2過給機4の吸込空気温度T
2[℃]がそれぞれセンサ(図示略)により検出され、制御装置5に出力される。
制御装置5は、例えば、第2過給機4の健全性及び効率の両観点から、第2過給機4の吸込空気温度T
2が適切な温度となるように、インタークーラ3の制御を行う。
【0020】
図2は、制御装置5の機能ブロック図である。
図2に示すように、制御装置5は、情報取得部21と、水蒸気分圧算出部22と、目標温度設定部23と、バルブ開度制御部(冷却制御手段)24とを備えている。
情報取得部21は、上述した各センサによって検出された第1過給機2の吸込空気温度T
1[℃]、吸込空気湿度H
1[%]、吸気圧力P
1[kPa]、吐出圧力P
2[kPa]、及び第2過給機4の吸込空気温度T
2[℃]をそれぞれ取得する。
【0021】
水蒸気分圧算出部22は、第1過給機2の吸込空気温度T
1[℃]、吸込空気湿度H
1[%]、吸気圧力P
1[kPa]及び吐出圧力P
2[kPa]をパラメータとして用いて、第1過給機2の吐出空気の水蒸気分圧P
W2[kPa]を算出する。
以下、水蒸気分圧算出部22による第1過給機2の吐出空気の水蒸気分圧P
W2[kPa]の一算出手法について説明する。
【0022】
まず、第1過給機2の吸込空気の水蒸気分圧P
W1[kPa]は、吸込空気温度T
1[℃]と吸込空気湿度H
1[%]とをパラメータとする関数により、以下の(1)式で表わされる。
【0023】
P
W1=Fx
1 (T
1,H
1) (1)
【0024】
具体的には、第1過給機2の吸込空気の水蒸気分圧P
W1[kPa]は、吸込空気温度T
1[℃]での飽和水蒸気圧P
W1_SAT[kPa]に吸込空気湿度H
1[%]を乗じることにより得ることができる。吸込空気温度T
1[℃]での飽和水蒸気圧P
W1_SAT[kPa]は、例えば、
図3に示すような飽和水蒸気圧P
W_SAT[kPa]と温度T[℃]との関係が示されたテーブルやこれらを計算する近似式から得ることができる。
【0025】
次に、第1過給機2による圧縮前後において、それぞれの空気圧に対する水蒸気分圧の比は保存されるので、以下の(2)式が成り立つ。
【0027】
上記(2)式を、第1過給機2の吐出空気の水蒸気分圧P
W2[kPa]について解くと、以下の(3)式となる。
【0028】
P
W2=(P
2/P
1)P
W1 (3)
【0029】
このように、第1過給機2の吐出空気の水蒸気分圧P
W2[kPa]は、上記(1)式及び(3)式を用いて得ることができる。
従って、水蒸気分圧算出部22は、例えば、上記(1)式及び(3)式を保有しており、これらの演算式に、情報取得部21によって取得された所定のパラメータを代入することで、第1過給機2の吐出空気の水蒸気分圧P
W2[kPa]を容易に得ることができる。
【0030】
目標温度設定部23は、水蒸気分圧算出部22によって算出された吐出空気の水蒸気分圧P
W2[kPa]が、飽和水蒸気圧P
W2_SAT[kPa]となるような温度T
3[℃]、すなわち、水蒸気分圧P
W2[kPa]において湿度が100[%]となる温度T
3[℃]を求め、この温度T
3[℃]を目標温度T
tg[℃]として設定する。これは、例えば、
図3に示したテーブルを用いて得ることができる。
【0031】
バルブ開度制御部24は、第2過給機4の吸込空気温度T
2[℃]が目標温度設定部23によって設定された目標温度T
tg[℃]となるように、例えば、インタークーラ3に設けられた流量調節弁15の弁開度を制御する。なお、吸込空気温度T
2[℃]を目標温度T
tg[℃]に一致させるための制御手法については、フォードバック、フィードフォワード等の公知の制御を適宜用いればよい。なお、流量調節弁15による冷却強度の調整は一例であり、例えば、他の手法を用いて冷却強度を調整することとしてもよい。
【0032】
このような構成を備える多段式過給システム1によれば、第1過給機2、第2過給機4によって2段階に圧縮された圧縮空気が内燃機関7に供給される。内燃機関7において働きを終えた空気は、排ガス配管8に排出され、排ガス配管8に設けられた第2タービン10及び第1タービン11を駆動する。これにより、第2タービン10、第1タービン11の回転力を動力として、第2過給機4、第1過給機2がそれぞれ回転することとなる。
また、第1過給機2の吸込空気温度T
1、吸込空気湿度H
1、吸気圧力P
1、及び吐出圧力P
2、第2過給機4の吸込空気温度T
2[℃]がそれぞれセンサ(図示略)により検出され、制御装置5に出力される。
【0033】
これらのセンサ検出値は、制御装置5の情報取得部21によって取得され、水蒸気分圧算出部22に出力される。水蒸気分圧算出部22では、情報取得部21から入力されたこれら情報を上記(1)、(3)式に代入することにより、第1過給機2の吐出空気の水蒸気分圧P
W2[kPa]が算出される。この水蒸気分圧P
W2[kPa]は、目標温度設定部23に出力される。
【0034】
目標温度設定部23では、水蒸気分圧算出部22によって算出された吐出空気の水蒸気分圧P
W2[kPa]を飽和水蒸気圧P
W2_SAT[kPa]とする温度T
3[℃]が
図3に示すテーブルを用いて取得され、この温度T
3[℃]が目標温度T
tg[℃]として設定される。
【0035】
設定された目標温度T
tg[℃]は、バルブ開度制御部24に出力され、この目標温度T
tg[℃]に基づいて流量調節弁15の弁開度が制御される。これにより、第2過給機4の吸込空気に含まれる水ミストを理論的にはゼロとすることが可能となる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態に係る多段式過給システム1及びその制御装置5並びにその制御方法によれば、第1過給機2の吐出空気における水蒸気分圧P
W2[kPa]を算出し、この水蒸気分圧P
W2[kPa]が飽和水蒸気分圧P
W2_SAT[kPa]となる温度T
3[℃]を求め、この温度T
3[℃]を第2過給機4の吸込空気の目標温度T
tg[℃]として設定する。この目標温度T
tg[℃]は、第2過給機4の吸込空気において、水ミストが発生しない最低温度を意味するので、水ミストの発生と過給機の効率との両観点から最適な温度に目標温度T
tg[℃]を設定することができる。
【0037】
なお、バルブ開度制御部24は、必ずしも目標温度T
tg[℃]に第2過給機4の吸込空気温度T
2を一致させる必要はなく、第2過給機4の吸込空気温度T
2[℃]が目標温度T
tg[℃]以上となるように制御することとしてもよい。例えば、バルブ開度制御部24において、目標温度T
tg[℃]に予め設定された所定量のマージンを加えることにより、新たな目標温度を設定し、第2過給機4の吸込空気温度T
2[℃]がこの新たな目標温度となるように、バルブ開度を制御することとしてもよい。このような制御は、過給機の効率を多少低下させるが、水ミストの発生をより確実に回避することができるという点で優れている。
【0038】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係る多段式過給システム及びその制御装置並びにその制御方法について説明する。
上述した第1実施形態では、第1過給機2の吐出空気の水蒸気分圧P
W2[kPa]に基づいて目標温度T
tg[℃]を設定していた。これに対し、本実施形態では、第2過給機4の吸込空気に含まれる凝縮水量が、第2過給機4の特性等に基づいて予め設定された所定の許容凝縮水量以下となるように、インタークーラ3を制御する。
【0039】
以下、第1実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点について主に説明する。
図4は、本実施形態に係る制御装置5´の機能ブロック図である。
図4に示すように、本実施形態に係る制御装置5´は、情報取得部21´、水蒸気分圧算出部22、目標値設定部23´、及びバルブ開度制御部24を備えている。
情報取得部21´は、第1過給機2の吸込空気温度T
1[℃]、吸込空気湿度H
1[%]、吸気圧力P
1[kPa]、吐出圧力P
2[kPa]、及び第2過給機4の吸込空気温度T
2[℃]に加えて、第1過給機2の回転数N
1[rpm]を取得する。すなわち、本実施形態においては、第1過給機2の回転数N
1[rpm]を検出する回転数センサまたは空気流量センサが必要とされる。
【0040】
水蒸気分圧算出部22は、上述の第1実施形態と同様の手法により、第1過給機2の吐出空気の水蒸気分圧P
W2[kPa]を算出する。
【0041】
目標温度設定部23´は、第2過給機4の吸込空気に含まれる凝縮水量が、所定の許容凝縮水量Gw
tgとなる吸込空気温度T
4[℃]を、目標温度T
tg[℃]として設定する。
以下、本実施形態に係る目標温度T
tg[℃]の考え方について説明する。
【0042】
まず、第1過給機2の吐出空気の状態を考えると、圧力はP
2、水蒸気分圧はP
W2[kPa]である。この状態で、温度をT
4[℃]まで下げたときに、この空気に含まれる凝縮水量Gwは、以下の(4)式で表わされる。
【0043】
Gw=(P
W_COND/P
2)×Ga (4)
【0044】
ここで、P
W_CONDは、以下の(5)式で表わされる。
P
W_COND= P
W2[kPa]−P
W4_SAT[kPa] (5)
【0045】
(5)式において、P
W4_SAT[kPa]は温度T
4のときの飽和水蒸気圧であり、未知数である。
【0046】
また、(4)式においてGaは質量流量[kg/s]であり、以下の(6)式で表わされる。
Ga=ρQ=P
1Q/RT
1 (6)
ここで、質量流量Gaは、計測値を用いることとしても良い。
【0047】
(6)式において、ρは密度[kg/m
3]、Qは体積流量[m
3/s]であり、以下の(7)式で表わされる。また、Rは気体定数[JK
-1mol
-1]である。
【0048】
Q=Fx ((P
2/P
1),N) (7)
【0049】
ここで、体積流量Qは、第1過給機2における圧縮比と回転数をパラメータとして、過給機特性マップにより一意的に決定される値である。
【0050】
上記(4)式から(7)式において、飽和水蒸気圧P
W4_SAT[kPa]以外は既知数となる。従って、上記(4)式が成立するような飽和水蒸気圧P
W4_SAT[kPa]を求め、この飽和水蒸気圧P
W4_SAT[kPa]に対応する温度T
4[℃]を
図3に示した飽和水蒸気圧と温度とのテーブルから取得することで、第2過給機4の吸込空気における凝縮水量を許容凝縮水量Gw
tgとすることができる。目標温度設定部23´は、この温度T
4[℃]を目標温度T
tg[℃]に設定する。
【0051】
以上から、例えば、(4)式と(5)式とを用いて、飽和水蒸気圧P
W4_SAT[kPa]について解くと、以下の(8)式が得られる。
【0052】
P
W4_SAT[kPa] =P
W2[kPa]−(Gw
tg×P
2/ Ga) (8)
【0053】
従って、例えば、目標温度設定部23´は、上記(8)式及び(8)式に用いられている各種パラメータを得るための付随の演算式(例えば、上記(6)、(7)式等)を予め保有しており、これらの演算式に情報取得部21´によって取得された各種検出値を代入することで、飽和水蒸気圧P
W4_SAT[kPa]を得ることができる。
そして、得た飽和水蒸気圧P
W4_SAT[kPa]に対応する温度T
4[℃]を
図3に示したテーブルから得ることで目標温度T
tg[℃]を設定することができる。
【0054】
バルブ回路制御部24は、第2過給機4の入口温度T
2が目標温度設定部23´によって設定された目標温度T
tg[℃]以上となるように、流量調節弁15の弁開度を制御する。
【0055】
このように、本実施形態によれば、第2過給機4の吸込空気に含まれる凝縮水量が予め設定されている許容凝縮水量以下となるように、インタークーラ3の流量調節弁15の弁開度が調整される。このように、第2過給機4のインペラが比較的強度があり、多少の凝縮水を許容するような構造である場合には、その許容範囲内での凝縮水の混入を許容し、その分、第2過給機4の吸込空気温度を下げる。これにより、水ミストの混入を排除する第1実施形態に比べて、第2過給機4の効率を更に向上させることができる。
【0056】
なお、本発明は、上述の実施形態のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において、例えば、上述した各実施形態を部分的または全体的に組み合わせる等して、種々変形実施が可能である。
例えば、本発明の多段式過給システムは、
図1に示した2段式の過給システムに限定されない。例えば、3段の過給システムであってもよく、この場合、1段目と2段目の間における空気温度の制御、2段目と3段目の間における空気温度の制御の少なくともいずれかに上述の制御を適用することが可能である。