(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5943877
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】目地装置
(51)【国際特許分類】
E04B 1/68 20060101AFI20160621BHJP
【FI】
E04B1/68 100A
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-109530(P2013-109530)
(22)【出願日】2013年5月24日
(65)【公開番号】特開2014-227753(P2014-227753A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2015年2月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110365
【氏名又は名称】ドーエイ外装有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080838
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 光康
(72)【発明者】
【氏名】後藤 英夫
【審査官】
湊 和也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−155124(JP,A)
【文献】
特開2001−342687(JP,A)
【文献】
特開2010−242311(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/68
B66B 13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトの外周部に目地部を介して設けられた建物において、前記シャフトの開口部の下部位置の前壁に水平方向に配置された左右方向のガイドレールと、この左右方向のガイドレールに後端部がスライド移動可能で、先端部が前記シャフトの前部の目地部を覆うように床面に前後方向にだけスライド移動可能に支持された床目地プレートと、前記シャフトの両側壁および、該両側壁と対向する建物の側壁の上下部位に水平方向に取付けられた4対の前後方向のガイドレールと、この4対の前後方向のガイドレールによってそれぞれ前後方向にスライド移動可能に支持された2対の可動側壁プレートと、この2対の可動側壁プレートの先端部に両端部が取付けられた前記シャフトの両側壁と、該両側壁と対応する建物の側壁との間の目地部を覆う1対の伸縮可能あるいは1対のスライド移動可能な目地カバー装置と、この1対の伸縮可能あるいはスライド移動可能な目地カバー装置を常時後方へ付勢し、該1対の目地カバー装置の両端部あるいは一端部を常時前記シャフトの前壁あるいは前記建物の側壁の前端部に当接させる一対の付勢機構とで構成されていることを特徴とする目地装置。
【請求項2】
2対の可動側壁プレートはそれぞれ一体となって前後方向にスライド移動できるように中央部にヒンジ部材が取付けられた板状のアームが用いられ、取付ヒンジ部材で該可動側壁プレートに取付けられる1対の位置保持リンクが設けられていることを特徴とする請求項1記載の目地装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエレベーターシャフトや階段シャフト等のシャフトの外周部に目地部を介して設けられた建物の目地装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の目地装置はエレベーターシャフトの前面の床目地部を覆う床目地装置と、エレベーターシャフトの両側壁と建物の壁面との間の壁面間の目地部を覆う伸縮可能な壁面用目地装置の設置が必要となるとともに、地震でエレベーターシャフトと建物とが異なる方向に揺れ動くと、壁面用目地装置と床目地装置との間に隙間が生じるので、その対策を施さなければならず、構造に制約があり複雑で、コスト高になるという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3603010号公報
【特許文献2】特許第3603009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、地震によってシャフトと建物が異なる方向に揺れ動いても、床面や壁面間に隙間が生じることなく、床面と壁面との間にも隙間が生じることなく、安全に使用することができるとともに、構造が簡単で、地震の揺れ動きを楽に吸収することができる目地装置を提供することを目的としている。
【0005】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は次の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。
ただし、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明はシャフトの外周部に目地部を介して設けられた建物において、前記シャフトの開口部の下部位置の前壁に水平方向に配置された左右方向のガイドレールと、この左右方向のガイドレールに後端部がスライド移動可能で、先端部が前記シャフトの前部の目地部を覆うように床面に前後方向にだけスライド移動可能に支持された床目地プレートと、前記シャフトの両側壁および、該両側壁と対向する建物の側壁の上下部位に水平方向に取付けられた4対の前後方向のガイドレールと、この4対の前後方向のガイドレールによってそれぞれ前後方向にスライド移動可能に支持された2対の可動側壁プレートと、この2対の可動側壁プレートの先端部に両端部が取付けられた前記シャフトの両側壁と、該両側壁と対応する建物の側壁との間の目地部を覆う1対の伸縮可能あるいは1対のスライド移動可能な目地カバー装置と、この1対の伸縮可能あるいはスライド移動可能な目地カバー装置を常時後方へ付勢し、該1対の目地カバー装置の両端部あるいは一端部を常時前記シャフトの前壁あるいは前記建物の側壁の前端部に当接させる一対の付勢機構とで目地装置を構成している。
【発明の効果】
【0007】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)請求項1により、前後方向にスライド移動する2対の可動側壁プレートの先端部に伸縮可能な1対の目地カバー装置の両端部を取付けているので、地震で揺れ動いても、2対の可動側壁プレートと1対の目地カバー装置によって、隙間が生じることなく覆うことができる。
したがって、安全に使用することができる。
(2)前記(1)によって、1対の目地カバー装置を常時後方へ付勢し、該1対の目地カバー装置の両端部あるいは一端部を常時シャフトの前壁あるいは建物の側壁に当接させる1対の付勢機構によって、1対の目地カバー装置の両端部あるいは一端部を常時壁面に当接させることができ、見苦しくなったりするのを確実に防止できるとともに、揺れ動きが停止すると、自動的に元の状態へ戻すことができる。
(3)前記(1)によって、床目地プレートは左右方向へスライド移動するが、前後方向にはシャフトと一体状態で移動するため、1対の目地カバーと床目地プレートとの間に隙間が生じることがなく、安全に使用できるとともに、床目地プレートの設置作業を楽に行なうことができる。
(4)請求項2も前記(1)〜(3)と同様な効果が得られるとともに、2対の可動側壁プレートを一体状態で前後方向に移動でき、かつ該2対の可動側壁プレート間の寸法が地震の揺れ動きに応じて変化し、損傷させたりするのを効率よく阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明を実施するための第1の形態の平面図。
【
図5】本発明を実施するための第1の形態の伸縮可能な目地カバー装置の説明図。
【
図6】本発明を実施するための第1の形態の位置保持リンクの説明図。
【
図7】本発明を実施するための第1の形態の床目地プレートの目地部が狭くなった動作説明図。
【
図8】本発明を実施するための第1の形態の床目地プレートの目地部が広くなった動作説明図。
【
図9】本発明を実施するための第1の形態のシャフトが左右方向に揺れ動いた動作説明図。
【
図10】本発明を実施するための第2の形態の平面図。
【
図13】本発明を実施するための第3の形態の平面図。
【
図16】本発明を実施するための第4の形態の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。
【0010】
図1ないし
図9に示す本発明を実施するための第1の形態において、1はエレベーターシャフトや階段シャフト等のシャフト2の外周部に目地部3を介して設けられた建物4の目地装置で、この目地装置1は前記シャフト2の前壁2aの前方の床目地部3aを介して設けられた床躯体5の上面よりもわずかに低い位置で、両側壁2b、2bより突出しないようにほぼ水平状態で固定された左右方向のガイドレール6と、このガイドレール6に左右方向にスライド移動可能に後端部が支持され、先端部が前記床躯体5に形成したスライド凹部5aに前後方向にだけスライド移動可能に取付けられた前記床目地部3aを覆う床目地プレート7と、前記シャフト2の両側壁2b、2bおよび、該両側壁2b、2bと対向する、前記建物4の側壁4a、4aの上下部位に水平方向に取付けられた4対の前後方向のガイドレール8、8、8、8、8、8、8、8と、この4対の前後方向のガイドレール8、8、8、8、8、8、8、8によって、それぞれ前後方向にスライド移動可能に支持された板状あるいは格子状の2対の可動側壁プレート9、9、9、9と、この2対の可動側壁プレート9、9、9、9の先端部に両端部が取付けられた、前記シャフト2の両側壁2b、2bと、該両側壁2b、2bと対応する建物4の側壁4a、4aとの間の側壁間目地部10、10を覆う1対の伸縮可能な目地カバー装置11、11と、この1対の伸縮可能な目地カバー装置11、11を常時後方へ付勢し、該1対の伸縮可能な目地カバー装置11、11の両端部あるいは一端部を、常時前記シャフト2の前壁2aあるいは前記建物4の側壁4a、4aの前端部である前壁4b、4bに当接させる1対の付勢機構12、12と、前記2対の可動側壁プレート9、9、9、9をそれぞれ一体となって前後方向にスライド移動できるように取付けられた1対の位置保持リンク13、13とで構成されている。
【0011】
前記1対の伸縮可能な目地カバー装置11、11は、
図5に示すように両端部の枢支部14、14が前記2対の可動側壁プレート9、9、9、9の前端部の上下部位に枢支ピン15、15、15、15で枢支されたパンタグラフ形状の伸縮リンク16、16、16、16と、このパンタグラフ形状の伸縮リンク16、16、16、16の中央枢支部17、17、17、17に中央部が枢支された中央カバープレート18、18と、この中央カバープレート18、18と先端部が重なり合う端部カバープレート19、19、19、19とで構成されている。
【0012】
前記1対の付勢機構12、12は一端部が2対の可動側壁プレート9、9、9、9のいずれか一方あるいは両方に取付けられ、他端部が4対の前後方向のガイドレール8、8、8、8の後端部に取付けられた付勢スプリング20、20で構成されている。
【0013】
前記1対の位置保持リンク13、13は中央部にヒンジ部材21が取付けられた板状のアーム部材22、22と、この板状のアーム部材22、22の両端部に取付けられた前記可動側壁プレート9、9に取付けるための
取付ヒンジ部材23、23とで構成されている。
【0014】
上記構成の目地装置1は、通常時には
図1および
図2に示すようにシャフト2の前方の床目地部3aは床目地プレート7で覆われるとともに、シャフト2の両側壁2b、2bと建物4の側壁4a、4aとの間の壁面間の壁面用目地部10、10は1対の伸縮可能な目地カバー装置11、11で覆われ、シャフト2の前方のエレベーターホールや通路部分は安全に使用することができる。
【0015】
地震でシャフト2が前方へ揺れ動いて、床目地プレート7の床目地部3aが狭くなると、
図7に示すように床目地プレート7がシャフト2によって、前方へ押し付けられて移動して、床目地プレート7と床躯体5との重なりが多くなって床目地部3aを床目地プレート7で覆った状態を保つとともに、1対の伸縮可能な目地カバー装置11、11はシャフト2の前壁2aと一体になって前方へ移動するため、建物4の側壁4a、4aの可動側壁プレート9、9は前後方向のガイドレール8、8によって前方向にスライド移動し、その揺れ動きを吸収するため、壁面間目地部10、10は1対の伸縮可能な目地カバー装置11、11と、前方向へスライド移動した可動側壁プレート9、9によって覆われた状態となっている。
【0016】
また、1対の伸縮可能な目地カバー装置11、11は床目地プレート7上に位置するため、床目地プレート7と1対の伸縮可能な目地カバー装置11、11との間の床面にも隙間が生じることがない。
【0017】
地震でシャフト2が後方へ揺れ動いて床目地プレート7の床目地部3aが広くなると、
図8に示すように床目地プレート7がシャフト2によって後方へ引張られて移動して、床目地プレート7と床躯体5との重なりが小さくなって床目地部3aを床目地プレート7で覆った状態を保つとともに、1対の伸縮可能な目地カバー装置11、11は建物4の側壁4a、4aの前部と一体となって前方へ移動するため、シャフト2の両側壁2b、2bの可動側壁プレート9、9は前後方向のガイドレール8、8によって前方向へスライド移動し、その揺れ動きを吸収するため、壁面間目地部10、10は1対の伸縮可能な目地カバー装置11、11と前方向へスライド移動した可動壁面プレート9、9によって覆われた状態となっている。
【0018】
また、1対の伸縮可能な目地カバー装置11、11は床目地プレート7上に位置するため、床目地プレート7と1対の伸縮可能な目地カバー装置11、11との間の床面にも隙間が生じることがない。
【0019】
地震でシャフト2が左右方向に揺れ動くと、
図9に示すように床目地プレート7は先端部が前後方向にだけスライド移動可能に床躯体5に取付けられているため、後端部のガイドレール6に支持されている部分であるシャフト2とガイドレール6だけが左右方向に移動して、その揺れ動きを吸収する。
【0020】
この時、壁面間目地部10が狭くなる部分の伸縮可能な目地カバー装置11は収縮し、壁面間目地部10が広くなる部分の伸縮可能な目地カバー装置11は伸長して、その揺れ動きを吸収する。
【0021】
この時、収縮する伸縮可能な目地カバー装置11と伸長する伸縮可能な目地カバー装置11の下部には床目地プレート7が位置し、床目地プレート7と1対の伸縮可能な目地カバー装置11、11との間の床面にも隙間が生じることがない。
【0022】
なお、地震での揺れ動きが停止すると、1対の付勢機構12、12の付勢スプリング20、20、20、20で、2対の可動壁面プレート9、9、9、9は元の位置、すなわち1対の伸縮可能な目地カバー装置11、11の両端部がシャフト2の前壁2aの両端部と建物4の側壁4a、4aの前端部である前壁4b、4bと当接する位置へ自動的に戻る。
【0023】
[発明を実施するための異なる形態]
次に、
図10ないし
図18に示す本発明を実施するための異なる形態につき説明する。なお、これらの本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための第1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0024】
図10ないし
図12に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、一端部が一方の可動壁面プレート9、9の下部側に垂直方向に回動軸24、24を介して取付けられ、他端部が対向する他方の可動壁面プレート9、9の上部側に上下方向にスライド移動可能に案内するガイド部材25、25、25、25に取付けられたスライド軸26、26を有する板状あるいは枠状、本発明の実施の形態では枠状のアーム27を用いた1対の位置保持リンク13A、13Aを用いた点で、このような1対の位置保持リンク13A、13Aを用いて構成した目地装置1Aにしても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様な作用効果が得られる。
【0025】
図13ないし
図15に示す本発明を実施するための第3の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、2対の可動側壁プレート9、9、9、9の先端上下部に一端部側が固定され、他端部側がスライド移動可能に取付けられた7カバープレート支持部材28、28、28、28と、このカバープレート支持部材28、28、28、28に取付けられたカバープレート29、29とからなる1対のスライド移動可能な目地カバー装置30、30を用いた点で、このような1対のスライド移動可能な目地カバー装置30、30を用いて構成した目地装置1Bにしても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様な作用効果が得られる。
【0026】
図16ないし
図18に示す本発明を実施するための第4の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、4対の前後方向のガイドレール8、8、8、8、8、8、8、8をスライド移動する2対の可動側壁プレート9、9、9、9の下部にスムーズに前後方向のガイドレール8、8、8、8に沿ってスライド移動できる複数個のローラ31、31、31、31を設置するとともに、2対の可動側壁プレート9、9、9、9の先端部にシャフト2の前壁2aと係止するストッパー32、32および建物4の側壁4a、4aの前壁4b、4bと係止するストッパー33、33を形成した点で、このように構成された目地装置1Cにすると、位置保持リンクを用いなくてもスムーズに2対の可動側壁プレート9、9、9、9を前後方向にスライド移動させることができ、かつ1対の目地カバー装置がシャフト2の前壁2aや建物4の側壁4a、4aの前壁4b、4bに係止していなくても、同様な動作をさせることができる。
【0027】
なお、前記本発明の実施の形態で前記床躯体5に形成したスライド凹部5aを床目地プレート7が前後方向にスライド移動するものについて説明したが、本発明はこれに限らず、スライド凹部5aを前後方向にスライド移動する床目地プレート7をスライド凹部5a部分をカバープレートで覆っても良い。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明はエレベーターシャフトや階段シャフト等のシャフトの外周部に目地部を介して設けられた建物の目地部を覆う目地装置を製造する産業で利用される。
【符号の説明】
【0029】
1、1A、1B、1C:目地装置、
2:シャフト、 3:目地部、
4:建物、 5:床躯体、
6:ガイドレール、 7:床目地プレート、
8:前後方向のガイドレール、 9:可動側壁プレート、
10:側壁間目地部、 11:伸縮可能な目地カバー装置、
12:付勢機構、 13:位置保持リンク、
14:枢支部、 15:枢支ピン、
16:伸縮リンク、 17:中央枢支部、
18:中央カバープレート、 19:端部カバープレート、
20:付勢スプリング、 21:ヒンジ部材、
22:アーム部材、 23:
取付ヒンジ部材、
24:回動軸、 25:ガイド部材、
26:スライド軸、 27:アーム、
28:カバープレート支持部材、29:カバープレート、
30:スライド移動可能な目地カバー装置、
31:ローラ、 32:ストッパー、
33:ストッパー。