【文献】
S.FUNAI et al.,Recovery of useful lighter fuels from petroleum residual oil by oxidative cracking with steam using,Chemical Engineering Science,Elsevier Ltd.,2010年 1月 1日,Vol.65, No.1,p.60-65
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、水素化分解法には、分解反応に大量の高圧水素ガスを使用するため、大規模な水素ガス製造設備が必要であり、コストが増大するという問題があった。また、熱分解法には、大量のコークスが発生すると共に、芳香環の開裂が殆ど起こらないために軽質炭化水素油の製造効率が悪く、重質炭化水素油を十分に分解し得ないという問題があった。更に、流動接触分解法には、装置の運転コストが高いという問題があった。
【0006】
また、水素化分解法では、水素化触媒の劣化(被毒)を防止するために重質炭化水素油を予め脱硫および脱窒素しておく必要があった。更に、熱分解法および流動接触分解法では、炭化水素油の脱硫反応および脱窒素反応が殆ど起こらないため、水素化分解法と同様に重質炭化水素油を予め脱硫および脱窒素しておく必要があった。即ち、水素化分解法、熱分解法および流動接触分解法には、重質炭化水素油の前処理が必要であるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明者らは、炭化水素油を予め脱硫および脱窒素することなく、且つ、高圧水素ガスを使用することなく、低コストで効率的に炭化水素油を軽質化することができる方法を提供することを目的として鋭意研究を行った。そして、本発明者らは、所定の複合金属酸化物を炭化水素油分解用触媒として用いることにより、反応系外から水素を供給することなく、水の存在下で炭化水素油を分解して軽質化し得ることを新たに見出した。
【0008】
ここで、上記炭化水素油分解用触媒を用いて水の存在下で炭化水素油を軽質化した場合、炭化水素油を予め脱硫および脱窒素することなく、且つ、高圧水素ガスを使用することなく、低コストで効率的に軽質炭化水素油を得ることはできる。しかし、本発明者らが更に研究を重ねたところ、上記炭化水素油分解用触媒を用いて水の存在下で炭化水素油を軽質化した場合、得られた軽質炭化水素油のオレフィン含有量が比較的高くなるということが明らかとなった。即ち、上記炭化水素油分解用触媒を用いて炭化水素油を軽質化して得た軽質炭化水素油には、オレフィン含有量を低減して酸化安定性を向上させるという点において改善の余地があった。
【0009】
そこで、本発明は、原料となる炭化水素油を予め脱硫および脱窒素することなく、且つ、高圧水素ガスを使用することなく、炭化水素油からオレフィン含有量の少ない軽質炭化水素油を低コストで効率的に製造することができる方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の軽質炭化水素油の製造方法は、炭化水素油を分解して軽質炭化水素油を製造する軽質炭化水素油の製造方法であって、水の存在下で、炭化水素油と、
所定の複合金属酸化物からなる炭化水素油分解用触媒とを接触させて炭化水素油を分解し、軽質炭化水素油を含む反応混合物を得る分解工程と、前記分解工程で得た前記反応混合物と、
所定の金属酸化物からなる水素化用触媒とを接触させて反応混合物中の軽質炭化水素油を水素化する水素化工程とを含むことを特徴とする。
【0011】
ここで、本発明の軽質炭化水素油の製造方法は、前記水素化用触媒が、アナターゼ型の二酸化チタンを含む
必要がある。
【0012】
そして、本発明の軽質炭化水素油の製造方法は、前記炭化水素油分解用触媒が、(A)ペロブスカイト型構造を有する複合金属酸化物と、(B)擬ブルッカイト型構造を有する複合金属酸化物と、(C)IVA族元素から選択される1種の元素Xと、IIIA族元素、VIA族元素およびVIIA族元素、並びに、第4〜6周期のIVA族元素および第4周期のVIII族元素からなる群より選択され、且つ、前記元素Xとは異なる1種の元素Y
1と、IIIA族元素、VIA族元素およびVIIA族元素、並びに、第4〜6周期のIVA族元素および第4周期のVIII族元素からなる群より選択され、且つ、前記元素Xおよび前記元素Y
1とは異なる1種の元素Y
2とを含有し、元素Y
1の存在量(y
1)と元素Y
2の存在量(y
2)との合計(y
1+y
2)に対する元素Xの存在量(x)の比(x/(y
1+y
2))が、0.5以上2.0以下であり、元素Y
1の存在量(y
1)に対する元素Y
2の存在量(y
2)の比(y
2/y
1)が、0.02以上0.25以下である複合金属酸化物とからなる群より選択される少なくとも一つからなる
必要がある。
なお、本発明において、「元素の存在量」は、触媒を溶解して得た溶液をICP発光分光分析法で分析し、得られた測定値から触媒中の各元素の金属単体換算でのモル濃度を算出することにより求めることができる。そして、「元素の存在量の比(モル比)」は、算出した各元素のモル濃度の比を算出することにより求めることができる(以下、元素の存在量の比の算出方法を「融解/ICP−AES法」と称する場合がある。)。
【0013】
なお、本発明の軽質炭化水素油の製造方法では、前記ペロブスカイト型構造を有する複合金属酸化物が、LaAlO
3、NiTiO
3、CoTiO
3、KTiO
3、BaTiO
3、SrTiO
3、および、これらの複合金属酸化物の金属元素の一部を他の金属元素で置換した複合金属酸化物からなる群より選択されることが好ましい。
また、本発明の軽質炭化水素油の製造方法では、前記擬ブルッカイト型構造を有する複合金属酸化物が、Fe
2TiO
5であることが好ましい。
更に、本発明の軽質炭化水素油の製造方法では、前記元素Xがジルコニウムであり、前記元素Y
1がセリウムであり、前記元素Y
2がタングステン、鉄およびマンガンからなる群より選択される1種であることが好ましい。
【0014】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の軽質炭化水素油の製造装置は、炭化水素油を分解して軽質炭化水素油を製造する軽質炭化水素油の製造装置であって、反応器と、前記反応器内へ炭化水素油を供給する原料供給手段と、前記反応器内へ水を供給する水供給手段とを備え、前記反応器が、前記炭化水素油と、前記水と、
所定の複合金属酸化物からなる炭化水素油分解用触媒とを接触させて炭化水素油を分解し、軽質炭化水素油を含む反応混合物を得る分解部と、前記反応混合物と、
所定の金属酸化物からなる水素化用触媒とを接触させて反応混合物中の軽質炭化水素油を水素化する水素化部とを有することを特徴とする。
【0015】
ここで、本発明の軽質炭化水素油の製造装置は、前記水素化用触媒が、アナターゼ型の二酸化チタンを含む
必要がある。
【0016】
そして、本発明の軽質炭化水素油の製造装置は、前記炭化水素油分解用触媒が、(A)ペロブスカイト型構造を有する複合金属酸化物と、(B)擬ブルッカイト型構造を有する複合金属酸化物と、(C)IVA族元素から選択される1種の元素Xと、IIIA族元素、VIA族元素およびVIIA族元素、並びに、第4〜6周期のIVA族元素および第4周期のVIII族元素からなる群より選択され、且つ、前記元素Xとは異なる1種の元素Y
1と、IIIA族元素、VIA族元素およびVIIA族元素、並びに、第4〜6周期のIVA族元素および第4周期のVIII族元素からなる群より選択され、且つ、前記元素Xおよび前記元素Y
1とは異なる1種の元素Y
2とを含有し、元素Y
1の存在量(y
1)と元素Y
2の存在量(y
2)との合計(y
1+y
2)に対する元素Xの存在量(x)の比(x/(y
1+y
2))が、0.5以上2.0以下であり、元素Y
1の存在量(y
1)に対する元素Y
2の存在量(y
2)の比(y
2/y
1)が、0.02以上0.25以下である複合金属酸化物とからなる群より選択される少なくとも一つからなる
必要がある。
なお、本発明において、「元素の存在量」は、触媒を溶解して得た溶液をICP発光分光分析法で分析し、得られた測定値から触媒中の各元素の金属単体換算でのモル濃度を算出することにより求めることができる。そして、「元素の存在量の比(モル比)」は、算出した各元素のモル濃度の比を算出することにより求めることができる(以下、元素の存在量の比の算出方法を「融解/ICP−AES法」と称する場合がある。)。
【0017】
なお、本発明の軽質炭化水素油の製造装置では、前記ペロブスカイト型構造を有する複合金属酸化物が、LaAlO
3、NiTiO
3、CoTiO
3、KTiO
3、BaTiO
3、SrTiO
3、および、これらの複合金属酸化物の金属元素の一部を他の金属元素で置換した複合金属酸化物からなる群より選択されることが好ましい。
また、本発明の軽質炭化水素油の製造装置では、前記擬ブルッカイト型構造を有する複合金属酸化物が、Fe
2TiO
5であることが好ましい。
更に、本発明の軽質炭化水素油の製造装置では、前記元素Xがジルコニウムであり、前記元素Y
1がセリウムであり、前記元素Y
2がタングステン、鉄およびマンガンからなる群より選択される1種であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の軽質炭化水素油の製造方法および製造装置によれば、原料となる炭化水素油を予め脱硫および脱窒素することなく、且つ、高圧水素ガスを使用することなく、炭化水素油からオレフィン含有量の少ない軽質炭化水素油を低コストで効率的に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態を詳細に説明する。ここで、本発明の軽質炭化水素油の製造方法および製造装置は、炭化水素油を分解して軽質炭化水素油を製造する際に用いられる。そして、本発明の軽質炭化水素油の製造方法および製造装置では、反応系外から水素を供給することなく、オレフィン含有量の少ない軽質炭化水素油を製造することができる。
【0021】
ここで、本発明の軽質炭化水素油の製造方法や製造装置を用いて軽質炭化水素油を製造する際に原料として用いる炭化水素油としては、特に限定されることなく、石油精製時に得られる常圧蒸留残油や減圧蒸留残油などの重質炭化水素油を挙げることができる。具体的には、軽質炭化水素油の原料となる炭化水素油としては、常圧蒸留における50容量%留出温度(T50)が150℃以上550℃以下の炭化水素油や、T50が200℃以上550℃以下の炭化水素油や、T50が250℃以上550℃以下の炭化水素油を挙げることができる。
【0022】
そして、本発明の軽質炭化水素油の製造装置は、原料となる炭化水素油を分解してオレフィン含有量の少ない軽質炭化水素油にする反応器と、原料となる炭化水素油を反応器内へ供給する原料供給手段と、水を反応器内へ供給する水供給手段とを備えていることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の軽質炭化水素油の製造装置は、反応器の内部に、炭化水素油を分解し、軽質炭化水素油を含む反応混合物を得る分解部と、反応混合物中の軽質炭化水素油を水素化する水素化部とを有していることを特徴とする。なお、「反応混合物」とは、炭化水素油の分解反応を経て得られる混合物を指し、反応混合物には、軽質炭化水素油などの反応生成物のみならず、水などの未反応物も含まれる。
【0024】
ここで、分解部は、原料供給手段により供給された炭化水素油と、水供給手段により供給された水と、炭化水素油分解用触媒とを接触させて炭化水素油を分解する領域である。また、水素化部は、分解部で得た反応混合物と、水素化用触媒とを接触させて反応混合物中の軽質炭化水素油を水素化し、軽質炭化水素油のオレフィン含有量を低減する領域である。
【0025】
即ち、本発明の軽質炭化水素油の製造装置の反応器内には、炭化水素油分解用触媒および水素化用触媒の少なくとも2種類の触媒が充填されている。そして、反応器内の炭化水素油分解用触媒の近傍が分解部となり、水素化用触媒の近傍が水素化部となる。なお、水素化部では分解部で得た反応混合物中の軽質炭化水素油を水素化するので、本発明の軽質炭化水素油の製造装置の反応器では、炭化水素油分解用触媒からなる炭化水素油分解用触媒層を、水素化用触媒からなる水素化用触媒層よりも反応器の上流側(炭化水素油および水が供給される側)に配置するか、或いは、炭化水素油分解用触媒と水素化用触媒とを混在させる。
【0026】
ここで、炭化水素油分解用触媒としては、水の存在下で系外から水素を供給することなく炭化水素油を分解する際に触媒として機能する化合物、例えば、2種以上の金属酸化物が複合して生ずる酸化物である複合金属酸化物を用いることができる。具体的には、特に限定されることなく、(A)ペロブスカイト型構造(灰チタン石型構造)を有する複合金属酸化物、(B)擬ブルッカイト型構造(擬板チタン石型構造、「シュードブルッカイト型構造」と称されることもある。)を有する複合金属酸化物、(C)所定の元素X、Y
1およびY
2を含む複合金属酸化物、或いは、これらの複合金属酸化物(A)〜(C)の混合物を炭化水素油分解用触媒として用いることができる。因みに、炭化水素油分解用触媒として用いる複合金属酸化物の結晶構造は、例えばX線回折分析を用いて評価することができる。そして、例えばペロブスカイト型構造を有するNiTiO
3からなる炭化水素油分解用触媒の結晶構造を評価した場合には、
図2に示すようなX線回折スペクトルが得られ、該X線回折スペクトル中に、ペロブスカイト型構造を有するNiTiO
3に特有の回折ピーク(
図2に矢印で示す)が現れる。また、例えばペロブスカイト型構造を有するCoTiO
3からなる炭化水素油分解用触媒の結晶構造を評価した場合には、
図3に示すようなX線回折スペクトルが得られ、該X線回折スペクトル中に、ペロブスカイト型構造を有するCoTiO
3に特有の回折ピーク(
図3に矢印で示す)が現れる。
【0027】
なお、ペロブスカイト型構造を有する複合金属酸化物としては、一般式:ABO
3で表される複合金属酸化物や、該複合金属酸化物ABO
3のAサイト元素およびBサイト元素の少なくとも一方の一部を他の元素で置換してなる複合金属酸化物を挙げることができる。具体的には、ペロブスカイト型構造を有する複合金属酸化物としては、下記一般式(1):
A
1−xA’
xB
1−yB’
yO
3−δ ・・・(1)
[式中、Aは、IA族元素、IIA族元素、IIIA族元素およびVIII族元素からなる群より選択される1種の元素を示し、A’は、VA族元素およびIIIB族元素からなる群より選択される少なくとも1種の元素を示し、Bは、IIIB族元素およびIVA族元素からなる群より選択される1種の元素を示し、B’は、VA族元素およびIIIB族元素からなる群より選択される少なくとも1種の元素を示し、A、A’、B、B’は互いに異なる元素であり、xは、元素A’の原子割合であり、yは、元素B’の原子割合であり、δは、酸素欠損量を示す。]
で表される酸化物を挙げることができる。なお、酸素欠損量とは、一般式(1)で表される酸化物が電気的に中性になる数である。
因みに、上記一般式(1)においてAサイト元素やBサイト元素の一部を他の元素A’,B’で置換した複合金属酸化物とする場合には、元素A’の原子割合xは、0.4以下(0≦x≦0.4)であることが好ましく、x=0である(即ち、Aサイト元素は置換せず、Bサイト元素のみを置換する)ことが更に好ましい。また、元素B’の原子割合yは、0.4以下(0≦y≦0.4)であることが好ましく、0.35以下(0≦y≦0.35)であることがより好ましく、0.25以下(0≦y≦0.25)であることがさらに好ましい。各元素A’,B’の原子割合が増加し過ぎると、ペロブスカイト型構造を維持するのが困難になる場合があるからである。
また、Bサイト元素は、Aサイト元素がIIIA族元素の場合にはIIIB族元素からなる群より選択される1種の元素であることが好ましい。更に、Bサイト元素は、Aサイト元素がIA族元素、IIA族元素またはVIII族元素の場合にはIVA族元素からなる群より選択される1種の元素であることが好ましい。
【0028】
より具体的には、ペロブスカイト型構造を有する複合金属酸化物としては、LaAlO
3、NiTiO
3、CoTiO
3、KTiO
3、BaTiO
3、SrTiO
3、或いは、これらの複合金属酸化物の金属元素(Aサイト元素およびBサイト元素)の一部を他の金属元素で置換した複合金属酸化物を挙げることができる。
【0029】
また、擬ブルッカイト型構造を有する複合金属酸化物としては、特に限定されることなく、Fe
2TiO
5を挙げることができる。
【0030】
更に、所定の元素Xと、所定の元素Y
1と、所定の元素Y
2とを含む複合金属酸化物としては、
(a)IVA族元素から選択される1種の元素Xと、
(b)IIIA族元素、VIA族元素およびVIIA族元素、並びに、第4〜6周期のIVA族元素および第4周期のVIII族元素からなる群より選択される1種の元素Y
1(但し、元素Xとは異なる元素である。)と、
(c)IIIA族元素、VIA族元素およびVIIA族元素、並びに、第4〜6周期のIVA族元素および第4周期のVIII族元素からなる群より選択される1種の元素Y
2(但し、元素Xおよび元素Y
1とは異なる元素である。)と、
の3種の金属元素を所定の比率で含有している複合金属酸化物を挙げることができる。
ここで、上記「所定の比率」としては、融解/ICP−AES法により求めた触媒中の各元素X,Y
1,Y
2の存在量の比(モル比)が、
(d)元素Y
1の存在量y
1と元素Y
2の存在量y
2との合計(y
1+y
2)に対する元素Xの存在量xの比が、0.5以上2.0以下(0.5≦x/(y
1+y
2)≦2.0)となり、
(e)元素Y
1の存在量y
1に対する元素Y
2の存在量y
2の比が、0.02以上0.25以下(0.02≦y
2/y
1≦0.25)となる、
比率を挙げることができる。
【0031】
より具体的には、元素X、元素Y
1、元素Y
2としては、特に限定されることなく、Ti、Zr、Ce、W、Mn、Feなどを挙げることができる。そして、これらの元素を元素X、元素Y
1または元素Y
2とした複合金属酸化物としては、例えば、元素XとしてZr、元素Y
1としてCe、元素Y
2としてW、FeまたはMnを含む複合金属酸化物を挙げることができる。
【0032】
因みに、元素Xと、元素Y
1と、元素Y
2とを含む複合金属酸化物では、元素Xがジルコニウム(Zr)であることが特に好ましい。元素XをZrとすれば、高温高圧の条件下で触媒を使用した場合であっても、複合金属酸化物の構造を維持することができるからである。即ち、元素XがZrからなる複合金属酸化物(炭化水素油分解用触媒)では、炭化水素油の水素化分解に使用される、水熱合成されたゼオライトや、シリカや、γ−アルミナからなる水素化触媒のように、高温高圧の水蒸気により触媒の結晶構造が大きく変化して触媒が使用不能となることがない。また、触媒の劣化が起こりにくく、炭化水素油を前処理(脱硫および脱窒素)する必要がない。なお、複合金属酸化物の構造を確実に維持する観点からは、触媒中の全ての金属元素の存在量mに対する元素Xの存在量xのモル比(x/m)は、0.55以上であることが好ましく、0.60以上であることが更に好ましい。
【0033】
なお、上述した複合金属酸化物は、共沈法やゾル−ゲル法等の既知の手法を用いて調製することができる。具体的には、例えば共沈法を用いる場合には、特に限定されることなく例えば以下のようにして複合金属酸化物を調製することができる。
(i)まず、複合金属酸化物を構成する金属元素を含む水溶液を調製する。
(ii)次に、調製した水溶液に対し、アンモニア水や、炭酸ナトリウム水溶液などの共沈剤を、水溶液のpHがアルカリ側に偏らないように(例えばpHが5〜8の範囲となるように)調整しながら滴下し、共沈殿物を生成させる。
(iii)そして最後に、得られた沈殿をろ過および乾燥した後、乾燥した沈殿を焼成して複合金属酸化物とする。
ここで、上記(iii)において沈殿を乾燥する温度は、水分を効率的に蒸発させる観点からは100℃以上であることが好ましく、急激な乾燥を防止する観点からは160℃以下であることが好ましい。また、乾燥した沈殿を焼成する温度は、生成する複合金属酸化物(触媒)の構造安定性(即ち、触媒として使用して炭化水素油を分解した際の複合金属酸化物の構造変化の抑制)の観点からは500℃以上であることが好ましく、生成する複合金属酸化物の表面積の減少を抑制する観点からは900℃以下であることが好ましい。
【0034】
また、水素化用触媒としては、反応混合物中の軽質炭化水素油を水素化する際に触媒として機能する化合物、例えば、金属酸化物を用いることができる。具体的には、特に限定されることなく、アナターゼ型の二酸化チタン(TiO
2)、或いは、アナターゼ型の二酸化チタンを含む混合物を水素化用触媒として用いることができる。因みに、水素化用触媒として用いる金属酸化物の結晶構造は、例えばX線回折分析を用いて評価することができる。そして、例えばアナターゼ型の二酸化チタンでは、X線回折スペクトル中に、(101)面に対応した回折ピーク(2θ=25.5°)が現れる。
【0035】
ここで、水素化用触媒として用いる、アナターゼ型の二酸化チタン、或いは、アナターゼ型の二酸化チタンを含む混合物としては、特に限定されることなく、アナターゼ型の二酸化チタン、或いは、アナターゼ型の二酸化チタンを含む混合物に対し、ニッケル、コバルト、モリブデンまたはそれらの酸化物を担持したものを挙げることができる。なお、水素化用触媒の水素化能を十分に確保する観点からは、混合物中の二酸化チタンの合計量は、混合物の50質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることが更に好ましく、60質量%以上であることが特に好ましい。
【0036】
そして、本発明の軽質炭化水素油の製造装置の一例としては、
図1に示すような構成の装置を挙げることができる。ここで、
図1に示す軽質炭化水素油製造装置1は、反応器2と、原料供給手段としての原料供給ポンプ3と、水供給手段としての水供給ポンプ4とを備えている。そして、軽質炭化水素油製造装置1の反応器2は、内部に、炭化水素油分解用触媒を充填して形成した炭化水素油分解用触媒層21と、水素化用触媒を充填して形成した水素化用触媒層22とを有している。
【0037】
なお、
図1では、1層の炭化水素油分解用触媒層21が1層の水素化用触媒層22よりも上流側(重質炭化水素油および水が供給される側)に位置している場合を示しているが、本発明の軽質炭化水素油の製造装置では、複数の炭化水素油分解用触媒層と、複数の水素化用触媒層とを、交互に且つ最も上流側に位置する触媒層が炭化水素油分解用触媒層となるように反応器内に配置しても良い。また、炭化水素油分解用触媒と水素化用触媒とを混在させた混合層を反応器内に配置しても良い。更に、炭化水素油分解用触媒を充填した容器と、水素化用触媒を充填した容器とを、気密に且つ炭化水素油分解用触媒を充填した容器が水素化用触媒を充填した容器よりも上流側に位置するように連結して反応器としても良い。
【0038】
そして、このような軽質炭化水素油製造装置1では、装置外から水素を供給することなく、原料供給ポンプ3を用いて供給された炭化水素油としての重質炭化水素油が分解されると共に、重質炭化水素油の分解により生成した軽質炭化水素油が水素化される。従って、軽質炭化水素油製造装置1では、高圧水素ガス等を使用することなく、原料となる重質炭化水素油より軽質で、且つ、オレフィン含有量の少ない軽質炭化水素油が得られる。
【0039】
具体的には、軽質炭化水素油製造装置1では、まず、炭化水素油分解用触媒層21からなる分解部において、水供給ポンプ4から供給された水の存在下で、原料供給ポンプ3から供給された重質炭化水素油と、炭化水素油分解用触媒とが接触し、重質炭化水素油が分解される(分解工程)。そして、分解部では、重質炭化水素油中の高分子量の炭化水素化合物が分解されて生成した、低分子量の炭化水素化合物を含む軽質炭化水素油を含有する反応混合物が得られる。
【0040】
次に、水素化用触媒層22からなる水素化部において、軽質炭化水素油を含有する反応混合物と、水素化用触媒とが接触し、反応混合物中の軽質炭化水素油が水素化されて、軽質炭化水素油のオレフィン含有量が低減する(水素化工程)。
【0041】
ここで、分解工程において水の存在下で重質炭化水素油を分解することができる理由は、明らかではないが、前述したような複合金属酸化物、特にペロブスカイト型構造を有する複合金属酸化物や、擬ブルッカイト型構造を有する複合金属酸化物や、所定の元素X、Y
1およびY
2を含む複合金属酸化物は、格子酸素の供給速度が高く、水を分解して酸素および水素を放出する能力が高いためであると推察される。即ち、これらの複合金属酸化物は、水を水素源として利用して重質炭化水素化合物を分解する際に、炭化水素化合物の一部と水とが下記反応式に示すように反応して水素源となる水素を生成するのを促進することができるためであると推察される。
C
nH
m+2nH
2O→nCO
2+(2n+(m/2))H
2
【0042】
そして、上記分解工程においては、重質炭化水素油が分解されて軽質炭化水素油となるが、この軽質炭化水素油は、比較的多くのオレフィン分を含んでおり、酸化安定性が低い。なお、軽質炭化水素油が比較的多くのオレフィン分を含む理由は、明らかではないが、炭化水素油分解用触媒として用いている複合金属酸化物の水素化能が低いためであると推察される。即ち、炭化水素油分解用触媒が格子酸素を供給して重質炭化水素油を分解した際に、水を分解して生成した水素を用いた水素化を十分に進めることができないためであると推察される。
【0043】
そこで、水素化工程では、炭化水素油分解用触媒とは別の水素化用触媒を用いて軽質炭化水素油を水素化し、軽質炭化水素油のオレフィン含有量を低減して軽質炭化水素油の酸化安定性を高めている。なお、水素化工程における軽質炭化水素油の水素化は、明らかではないが、反応混合物中に含まれている、分解工程において生成した水素が水素源となって進行すると推察されている。
【0044】
なお、軽質炭化水素油製造装置を用いて軽質炭化水素油を製造する際に用いる水の量は、原料となる炭化水素油を軽質化させるのに十分な量であれば良く、例えば、炭化水素油100質量部に対して、水を5〜2000質量部、好ましくは10〜1000質量部、更に好ましくは10〜500質量部の割合で添加するのが望ましい。炭化水素油100質量部に対する水の添加量が5質量部未満の場合、水素源が不足して炭化水素油が十分に軽質化されない場合があるからである。一方、水の添加量が2000質量部を超えると、炭化水素油の軽質化に寄与しない水の量が増大することとなり、コストが増加したり、炭化水素油の分解効率(即ち、軽質炭化水素油の製造効率)が低下したりする場合があるからである。
【0045】
また、軽質炭化水素油製造装置の反応器内の温度は、比較的低い温度、例えば300〜600℃、好ましくは350〜550℃、更に好ましくは400〜500℃とすることができる。温度が300℃未満の場合、反応に必要な活性化エネルギーが得られず炭化水素油の分解および軽質炭化水素油の水素化が十分に進行しない場合があるからである。また、温度が600℃超の場合、不要なガス(メタン、エタン等)が大量に発生し、炭化水素油の分解効率が低下するおそれがあるからである。
更に、反応器内の圧力は、例えば0.1〜40MPa、好ましくは0.1〜35MPa、更に好ましくは0.1〜30MPaとすることができる。圧力が0.1MPa未満の場合、炭化水素油と水とを反応器へスムーズに流入させることが困難になる場合があるからである。また、圧力が40MPa超の場合、反応器の製造コストが高くなる場合があるからである。
また、反応器に炭化水素油および水を流通する際の液空間速度(LHSV)は、例えば0.01〜10h
−1、好ましくは0.05〜5h
−1、更に好ましくは0.1〜2h
−1とすることができる。液空間速度が0.01h
−1未満の場合、不要なガスの発生が支配的となり、炭化水素油の分解効率が低下する場合があるからである。また、液空間速度が10h
−1超の場合、反応時間が短すぎて炭化水素油の分解および軽質炭化水素油の水素化が十分に進行しない場合があるからである。
更に、反応器内の炭化水素油分解用触媒の量(A)に対する水素化用触媒の量(B)の体積比(B/A)は、0.1〜1.0とすることができる。炭化水素油分解用触媒の量が少ないと、炭化水素油の分解が十分に進行しない場合があるからである。また、水素化用触媒の量が多すぎると、軽質炭化水素油の水素化に寄与しない触媒の量が増加し、軽質炭化水素油の製造効率が低下するからである。
【0046】
ここで、上述したように、本発明の軽質炭化水素油の製造方法および製造装置によれば、炭化水素油の分解反応や軽質炭化水素油の水素化反応に必要な水素を系内に存在する水から供給することができる。従って、本発明の軽質炭化水素油の製造方法および製造装置では、系外から水素を添加する必要はなく、系外からの水素の添加量と、原料となる炭化水素油の供給量とのモル比(水素添加量/炭化水素油供給量)は、0.1以下、好ましくは0とすることができる。
また、本発明の軽質炭化水素油の製造方法および製造装置では、炭化水素油の分解により生成した軽質炭化水素油を水素化しているので、オレフィン含有量の少ない、酸化安定性に優れる軽質炭化水素油を得ることができる。
よって、本発明の軽質炭化水素油の製造方法および製造装置によれば、高圧水素ガスを使用することなく、炭化水素油を低コストで効率的に分解してオレフィン含有量の少ない軽質炭化水素油を得ることができる。
【0047】
なお、本発明の軽質炭化水素油の製造方法および製造装置で用いている炭化水素油分解用触媒は劣化し難いので、該触媒を用いた本発明の軽質炭化水素油の製造方法および製造装置によれば、分解する原料炭化水素油を予め脱硫および脱窒素する必要がない。
【0048】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の軽質炭化水素油の製造方法および軽質炭化水素油の製造装置は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の軽質炭化水素油の製造方法および軽質炭化水素油の製造装置には適宜変更を加えることができる。具体的には、例えば、反応混合物中の軽質炭化水素油の水素化は、炭化水素油の分解後に反応混合物中に残っている水を除去してから行っても良い。
【実施例】
【0049】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0050】
(実施例1)
擬ブルッカイト型構造を有する複合金属酸化物からなる炭化水素油分解用触媒(触媒A)を調製した。具体的には、まず、硝酸鉄と、硫酸チタンとを、Fe:Ti=2:1(モル比)となるようにイオン交換水中に溶解して水溶液を得た。次に、得られた水溶液に対し、水溶液のpHが7超とならないように調整しながら炭酸ナトリウム水溶液を滴下し、沈殿を生成させた。そして最後に、得られた沈殿を熟成(1時間静置)、ろ過および乾燥(150℃、1時間)した後、乾燥した沈殿を温度800℃で焼成して、炭化水素油分解用触媒を調製した。
なお、得られた炭化水素油分解用触媒をX線回折装置で分析したところ、
図4に示すような、擬ブルッカイト型構造を有するFe
2TiO
5に特有の回折ピーク(図中、矢印で示す)を有するX線回折スペクトルが得られた。即ち、調製した炭化水素油分解用触媒は擬ブルッカイト型構造を有するFe
2TiO
5からなることが分かった。
また、アナターゼ型の二酸化チタンからなる水素化用触媒(触媒a)を調製した。具体的には、まず、硫酸チタンをイオン交換水中に溶解し、アンモニア水を滴下して沈殿を生成させた。そして、得られた沈殿を熟成(40℃に維持した状態で一昼夜静置)、ろ過および乾燥(130℃空気雰囲気下6時間)した後、乾燥した沈殿を温度600℃で焼成して、水素化用触媒を調製した。
なお、得られた水素化用触媒をX線回折装置で分析したところ、
図5に示すような、アナターゼ型のTiO
2の(101)面に対応した回折ピーク(図中、矢印で示す)を2θ=25.5°の位置に有するX線回折スペクトルが得られた。即ち、調製した水素化用触媒はアナターゼ型の二酸化チタンからなることが分かった。
そして、超合金(インコネル625)製の反応器(内容積10mL)の上層部(上流側)に炭化水素分解用触媒を8.0mL充填し、下層部に水素化用触媒2.0mLを充填した。次いで、触媒を充填した反応器にイオン交換水を流量0.1mL/minで通水しつつ、反応器内を温度470℃、圧力15MPaまで加熱および加圧した。その後、水素を供給することなく、表1に示すような性状の重質炭化水素油と、イオン交換水とを反応器内に連続的に流通させた(イオン交換水、重質炭化水素油共に流量は0.1mL/minであり、LHSVは0.6h
−1である。)。そして、通油開始から6時間経過後に、反応器からの流出物(軽質炭化水素油)を1時間採取し、以下のようにして軽質炭化水素油の性状を評価した。結果を表2に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
<軽質炭化水素油の性状評価>
[オレフィン含有量]
原料とした重質炭化水素油と、得られた軽質炭化水素油について、13C−NMRスペクトルを測定し、得られたスペクトル中の113〜117ppmのエリアに現れるピークを“CH
2=”に帰属するとみなして、ピークの面積からオレフィンを構成する炭素の量(オレフィン帰属炭素量)を算出した。そして、原料とした重質炭化水素油のオレフィン帰属炭素量を100として指数評価した。表中、値が小さいほどオレフィン含有量が少ないことを示す。
[蒸留性状]
原料とした重質炭化水素油と、得られた軽質炭化水素油について、JIS K2254に準拠して蒸留性状を測定した。
【0053】
(実施例2)
元素Xがジルコニウムであり、元素Y
1がセリウムであり、元素Y
2が鉄である複合金属酸化物からなる炭化水素油分解用触媒(触媒B)を調製した。具体的には、硝酸ジルコニルと硝酸セリウムとを、Zr:Ce=1:1(モル比)となるようにイオン交換水中に溶解して水溶液を得た。次に、得られた水溶液に対し、硝酸鉄をCe:Fe=1:0.06(モル比)となるように加え撹拌した。そして、Zr,Ce,Feを含有する水溶液に対し、水溶液のpHが8超とならないように調整しながらアンモニア水を滴下し、沈殿を生成させた。そして最後に、得られた沈殿を熟成(室温にて一昼夜静置)、ろ過および乾燥(130℃、16時間)した後、乾燥した沈殿を温度600℃で焼成して、Zr,Ce,Feを含有する複合金属酸化物からなる炭化水素油分解用触媒を調製した。
なお、得られた炭化水素油分解用触媒中のZr,Ce,Feの存在比を融解/ICP−AES法で確認したところ、Zr:Ce:Fe=49:48:3であった。
また、実施例1と同様にしてアナターゼ型の二酸化チタンからなる水素化用触媒(触媒a)を調製した。
そして、上記触媒を用いた以外は実施例1と同様にして重質炭化水素油を分解し、得られた軽質炭化水素油の性状を評価した。結果を表2に示す。
(実施例3)
元素Xがジルコニウムであり、元素Y
1がセリウムであり、元素Y
2がタングステンである複合金属酸化物からなる炭化水素油分解用触媒(触媒C)を調製した。具体的には、硝酸ジルコニルと硝酸セリウムとを、Zr:Ce=1:1(モル比)となるようにイオン交換水中に溶解してZr,Ceを含有する水溶液を得た。次に、メタタングステン酸アンモニウムをイオン交換水中に溶解して所定の濃度のメタタングステン酸アンモニウム水溶液を得た。そして、Zr,Ceを含有する水溶液に対し、水溶液のpHが8超とならないように調整しながらメタタングステン酸アンモニウム水溶液を滴下し、沈殿を生成させた。そして最後に、得られた沈殿を熟成(室温にて一昼夜静置)、ろ過および乾燥(130℃、16時間)した後、乾燥した沈殿を温度600℃で焼成して、Zr,Ce,Wを含有する複合金属酸化物からなる炭化水素油分解用触媒を調製した。
なお、得られた炭化水素油分解用触媒中のZr,Ce,Wの存在比を実施例2と同様にして確認したところ、Zr:Ce:W=49:48:3であった。
また、実施例1と同様にしてアナターゼ型の二酸化チタンからなる水素化用触媒(触媒a)を調製した。
そして、上記触媒を用いた以外は実施例1と同様にして重質炭化水素油を分解し、得られた軽質炭化水素油の性状を評価した。結果を表2に示す。
(実施例4)
元素Y
2をマンガンとし、硝酸鉄の代わりに硝酸マンガンをCe:Mn=1:0.06(モル比)となるように加えた以外は実施例2と同様にして、Zr,Ce,Mnを含有する複合金属酸化物からなる炭化水素油分解用触媒(触媒D)を調製した。
なお、得られた触媒中のZr,Ce,Mnの存在比を実施例2と同様にして確認したところ、Zr:Ce:Mn=49:48:3であった。
また、実施例1と同様にしてアナターゼ型の二酸化チタンからなる水素化用触媒(触媒a)を調製した。
そして、上記触媒を用いた以外は実施例1と同様にして重質炭化水素油を分解し、得られた軽質炭化水素油の性状を評価した。結果を表2に示す。
【0054】
(比較例1〜4)
水素化用触媒(触媒a)を使用せず、反応器に炭化水素油分解用触媒のみを8.0mL充填した以外は、それぞれ実施例1〜4と同様にして重質炭化水素油を分解し、得られた軽質炭化水素油の性状を評価した。結果を表2に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
表2より、実施例1〜4で製造した軽質炭化水素油は、比較例1〜4で製造した軽質炭化水素油と比較してオレフィン含有量が少ないことが分かる。
【0057】
(実施例5)
重質炭化水素油を分解する際の反応器内の温度および圧力を表3に示すように変更した以外は、実施例3と同様にして重質炭化水素油を分解し、得られた軽質炭化水素油の性状を実施例1と同様にして評価した。結果を、比較例3と対比させる形で表3に示す。
【0058】
【表3】
【0059】
表3より、実施例5で製造した軽質炭化水素油は、比較例3で製造した軽質炭化水素油と比較してオレフィン含有量が少ないことが分かる。
【0060】
触媒の耐劣化性を評価するため、実施例5において、重質炭化水素油の分解を14日間以上継続した。そして、通油開始から14日間経過後に、反応器からの流出物を1時間採取し、オレフィン含有量(オレフィン帰属炭素量の指数)を実施例1と同様にして算出した。通油開始から6時間経過後のオレフィン帰属炭素量の指数と、通油開始から14日間経過後のオレフィン帰属炭素量の指数とを表4に示す。
【0061】
【表4】
【0062】
表4より、実施例5では、通油開始6時間経過後のオレフィン帰属炭素量と、通油開始14日間経過後のオレフィン帰属炭素量とが、あまり変化してことが分かる。従って、実施例5では触媒の劣化が抑制されていることが分かる。