特許第5943927号(P5943927)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5943927
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】アッセイデバイスにおける試薬貯蔵
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20160621BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   G01N33/543 501A
   G01N33/543 575
   G01N37/00 101
   G01N37/00 102
【請求項の数】50
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2013-533995(P2013-533995)
(86)(22)【出願日】2011年10月13日
(65)【公表番号】特表2013-539867(P2013-539867A)
(43)【公表日】2013年10月28日
(86)【国際出願番号】US2011056095
(87)【国際公開番号】WO2012051386
(87)【国際公開日】20120419
【審査請求日】2014年10月10日
(31)【優先権主張番号】61/455,112
(32)【優先日】2010年10月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505243216
【氏名又は名称】メソ スケール テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】スディープ・クマー
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ・シーガル
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ツィオンスキー
【審査官】 三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特許第2606722(JP,B2)
【文献】 特表2006−517652(JP,A)
【文献】 特開平04−273065(JP,A)
【文献】 特開平08−178926(JP,A)
【文献】 特表2009−545747(JP,A)
【文献】 特表2011−518553(JP,A)
【文献】 特表2005−530127(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0148335(US,A1)
【文献】 特開平8−178926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/543
G01N 37/00
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアッセイウェルを含むプレート本体および該プレート本体内で定義される1つ又はそれ以上の試薬スペースを含むマルチウェルアッセイプレートであって、該1つ又はそれ以上の試薬スペースが該複数のウェルの1つ又はそれ以上の周囲のウェルと流体連通しており、
(a)該1つまたはそれ以上の試薬スペースは、貯蔵表面を含む貯蔵帯域を含み、2つまたはそれ以上の表面−試薬複合体が該貯蔵表面に結合されており、それによって該貯蔵帯域に封じ込められており、該2つ又はそれ以上の表面−試薬複合体が、第一の表面−試薬複合体および第二の表面−試薬複合体を含み、
該第一の表面−試薬複合体は、
(i)第一の標的薬剤に連結された第一の試薬;及び
(ii)第二の標的薬剤に連結された第一の表面;
を含んでなり、並びに
該第二の表面−試薬複合体は、
(iii)第三の標的薬剤に連結された第二の試薬;及び
(iv)第四の標的薬剤に連結された第二の表面;
を含んでなり、
ここで該第一の試薬及び表面ならびに該第二の試薬及び表面は、それぞれ、該第一及び第二の標的薬剤と該第三及び第四の標的薬剤との間の選択的に遊離可能な結合相互作用を介して、それぞれ、第一及び第二の表面−試薬複合体において連結されており、該第一の試薬は、該第二の表面−試薬複合体から該第二の試薬を遊離させるのに使用される第二の組の条件と異なる第一の組の条件によって該第一の表面−試薬複合体から遊離され並びに
(b)該1つ又はそれ以上の周囲のウェルは、サンプル中の目的の被検体についてのアッセイにおいて該第一及び第二の試薬の少なくとも1つを使用するように構成されている、マルチウェルアッセイプレート
【請求項2】
前記1つ又はそれ以上の周囲のウェルが、前記アッセイにおいて使用されるさらなる試薬をそれぞれ含む、請求項1に記載のマルチウェルアッセイプレート
【請求項3】
前記第一及び第二の試薬の少なくとも1つが、前記1つ又はそれ以上の周囲のウェルにおいて行われる前記アッセイの成分結合る結合試薬である、請求項に記載のマルチウェルアッセイプレート
【請求項4】
前記第一及び第二の結合試薬の少なくとも1つが前記被検体に結合する、請求項3に記載のマルチウェルアッセイプレート。
【請求項5】
前記さらなる試薬が前記被検体に結合する、請求項2に記載のマルチウェルアッセイプレート。
【請求項6】
前記第一及び第二の結合試薬の少なくとも1つが前記さらなる試薬及び前記被検体の間で形成される複合体に結合する、請求項4に記載のマルチウェルアッセイプレート。
【請求項7】
前記第一及び第二の試薬の少なくとも1つが検出可能な標識を含む、請求項1に記載のマルチウェルアッセイプレート。
【請求項8】
前記検出可能な標識が電気化学発光(ECL)標識である、請求項7に記載のマルチウェルアッセイプレート。
【請求項9】
前記1つ又はそれ以上の周囲のウェルが、前記アッセイデバイス中前記サンプルを用いて行われる1つ又はそれ以上のアッセイにおいて前記第一及び第二の試薬の少なくとも1つを使用するようにそれぞれ構成されている2つ又はそれ以上のアッセイ領域をそれぞれ含む、請求項1に記載のマルチウェルアッセイプレート。
【請求項10】
前記1つ又はそれ以上の周囲のウェルの第一のアッセイ領域が、前記サンプル中の目的の第一の被検体についてのアッセイを行うように構成されており、そして該1つ又はそれ以上の周囲のウェルにおけるさらなるアッセイ領域が、該サンプル中の目的のさらなる被検体についてのアッセイを行うように構成されている、請求項9に記載のマルチウェルアッセイプレート。
【請求項11】
前記1つ又はそれ以上の周囲のウェルの第一のアッセイ領域が、前記サンプル中の目的の前記被検体についての第一のアッセイを行うように構成されており、該1つ又はそれ以上の周囲のウェルのさらなるアッセイ領域が、該サンプル中の目的の該被検体についての第二のアッセイを行うように構成されている、請求項9に記載のマルチウェルアッセイプレート。
【請求項12】
前記2つ又はそれ以上のアッセイ領域の各々が、前記アッセイにおいて使用されるさらなる試薬を含む、請求項9に記載のマルチウェルアッセイプレート。
【請求項13】
前記さらなる試薬がさらなる結合試薬である、請求項12に記載のマルチウェルアッセイプレート
【請求項14】
前記1つ又はそれ以上の周囲のウェルが、前記2つ又はそれ以上のアッセイ領域のアレイをそれぞれ含む、請求項9に記載のマルチウェルアッセイプレート。
【請求項15】
前記表面が粒子である、請求項1に記載のマルチウェルアッセイプレート。
【請求項16】
前記表面に結合することができる成分に対してアクセス可能な表面積が、平坦な表面の表面積よりも少なくとも3倍大きくなるように、該表面が粗面化されている、請求項1に記載のマルチウェルアッセイプレート。
【請求項17】
前記表面に結合することができる成分に対してアクセス可能な表面積が、平坦な表面の表面積よりも少なくとも2倍大きくなるように該表面が粗面化されている、請求項1に記載のマルチウェルアッセイプレート。
【請求項18】
前記表面が、マトリックス中に分散された露出粒子を含む複合材料を含む、請求項1に記載のマルチウェルアッセイプレート。
【請求項19】
前記複合材料が、炭素粒子、黒鉛粒子、又はカーボンナノチューブを含む、請求項18に記載のマルチウェルアッセイプレート。
【請求項20】
前記複合材料がエッチングされる、請求項18に記載のマルチウェルアッセイプレート。
【請求項21】
前記表面が1つ又はそれ以上のくぼみ及び/又は隆起した特徴を含む、請求項18に記載のマルチウェルアッセイプレート。
【請求項22】
前記表面がヒドロゲルを含む、請求項1に記載のマルチウェルアッセイプレート。
【請求項23】
前記貯蔵帯域を、温度上昇又は温度低下、pH変化、電位の適用、イオン強度の変化、競合、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される第一の組の条件に曝すことにより、前記第一の試薬が遊離され、そして前記貯蔵領域を、温度上昇又は温度低下、pH変化、電位の適用、イオン強度の変化、競合、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される第二の組の条件に曝すことにより、前記第二の試薬が遊離され、該第一及び第二の組の条件は異なる、請求項1に記載のマルチウェルアッセイプレート
【請求項24】
重測定を行うように構成されている、請求項1に記載のマルチウェルアッセイプレート
【請求項25】
プレート本体を含むマルチウェルアッセイプレートであって、該プレート本体が、(a)1つ又はそれ以上の使用帯域を含む複数のアッセイウェル;及び(b)該プレート本体内に位置する1つ又はそれ以上の貯蔵表面を含み、該1つ又はそれ以上の貯蔵表面は該1つ又はそれ以上の使用帯域と重ならず、該1つ又はそれ以上の貯蔵表面が該複数のウェルの1つ又はそれ以上のウェルと流体連通しており、
(a)該1つまたはそれ以上の貯蔵表面は、該1つ又はそれ以上の貯蔵表面に結合された2つまたはそれ以上の表面−試薬複合体を含み、該2つ又はそれ以上の表面−試薬複合体が、第一の表面−試薬複合体および第二の表面−試薬複合体を含み、
該第一の表面−試薬複合体は、
(i)第一の標的薬剤に連結された第一の試薬;及び
(ii)第二の標的薬剤に連結された第一の表面;
を含んでなり、並びに
該第二の表面−試薬複合体は、
(iii)第三の標的薬剤に連結された第二の試薬;及び
(iv)第四の標的薬剤に連結された第二の表面;
を含んでなり、
ここで該第一の試薬及び該第一の表面ならびに該第二の試薬及び該第二の表面は、該第一及び第二の標的薬剤と該第三及び第四の標的薬剤との間の選択的に遊離可能な結合相互作用を介して、それぞれ、該第一及び第二の表面−試薬複合体において連結されており、該第一の試薬は、該第二の表面−試薬複合体から該第二の試薬を遊離させるのに使用される第二の組の条件と異なる第一の組の条件によって該第一の表面−試薬複合体から遊離さ
れ;並びに
(b)該1つ又はそれ以上の使用帯域は、サンプル中の1つ又はそれ以上の目的の被検体についてのアッセイにおいて該第一及び第二の試薬の少なくとも1つを使用するようにそれぞれ構成されている、マルチウェルアッセイプレート。
【請求項26】
前記1つ又はそれ以上の使用帯域が、前記アッセイにおいて使用されるさらなる試薬をそれぞれ含む、請求項25に記載のマルチウェルアッセイプレート。
【請求項27】
前記第一及び第二の試薬の少なくとも1つが、前記使用帯域において行われる前記アッセイの成分に結合する結合試薬である、請求項25に記載のマルチウェルアッセイプレート。
【請求項28】
前記第一及び第二の結合試薬の少なくとも1つが前記被検体に結合する、請求項27に記載のマルチウェルアッセイプレート。
【請求項29】
前記さらなる試薬が前記被検体に結合する、請求項25に記載のマルチウェルアッセイプレート。
【請求項30】
前記結合試薬が前記さらなる試薬及び前記被検体の間で形成される複合体に結合する、請求項28に記載のマルチウェルアッセイプレート。
【請求項31】
前記1つ又はそれ以上の使用帯域が固体支持体をそれぞれ含み、前記さらなる試薬が該固体支持体に結合されている、請求項30に記載のマルチウェルアッセイプレート。
【請求項32】
前記第一及び第二の試薬の少なくとも1つが検出可能な標識を含む、請求項25に記載のマルチウェルアッセイプレート。
【請求項33】
前記検出可能な標識が電気化学発光(ECL)標識である、請求項32に記載のマルチウェルアッセイプレート。
【請求項34】
前記1つ又はそれ以上の使用帯域が、前記アッセイデバイス中前記サンプルを用いて行われる1つ又はそれ以上のアッセイにおいて前記第一及び第二の試薬の少なくとも1つを使用するようにそれぞれ構成されている2つ又はそれ以上のアッセイ領域をそれぞれ含む、請求項25に記載のマルチウェルアッセイプレート。
【請求項35】
前記1つ又はそれ以上の使用帯域の第一のアッセイ領域が、前記サンプル中の目的の第一の被検体についてのアッセイを行うように構成されており、そして該1つ又はそれ以上の使用帯域におけるさらなるアッセイ領域が、該サンプル中の目的のさらなる被検体についてのアッセイを行うように構成されている、請求項34に記載のマルチウェルアッセイプレート。
【請求項36】
前記1つ又はそれ以上の使用帯域の第一のアッセイ領域が、前記サンプル中の目的の前記被検体についての第一のアッセイを行うように構成されており、該1つ又はそれ以上の使用帯域のさらなるアッセイ領域が、該サンプル中の目的の該被検体についての第二のアッセイを行うように構成されている、請求項34に記載のマルチウェルアッセイプレート。
【請求項37】
前記2つ又はそれ以上のアッセイ領域の各々が、前記アッセイにおいて使用されるさらなる試薬を含む、請求項24に記載のマルチウェルアッセイプレート。
【請求項38】
前記さらなる試薬がさらなる結合試薬である、請求項37に記載のマルチウェルアッセイプレート
【請求項39】
前記1つ又はそれ以上の使用帯域が、前記2つ又はそれ以上のアッセイ領域のアレイを含む、請求項34に記載のマルチウェルアッセイプレート。
【請求項40】
前記表面が粒子である、請求項25に記載のマルチウェルアッセイプレート。
【請求項41】
前記表面に結合することができる成分に対してアクセス可能な表面積が、平坦な表面の表面積よりも少なくとも3倍大きくなるように、該表面が粗面化されている、請求項25に記載のマルチウェルアッセイプレート。
【請求項42】
前記表面に結合することができる成分に対してアクセス可能な表面積が、平坦な表面の表面積よりも少なくとも2倍大きくなるように該表面が粗面化されている、請求項25に記載のマルチウェルアッセイプレート。
【請求項43】
前記表面が、マトリックス中に分散された露出粒子を含む複合材料を含む、請求項25に記載のマルチウェルアッセイプレート。
【請求項44】
前記複合材料が、炭素粒子、黒鉛粒子、又はカーボンナノチューブを含む、請求項43に記載のマルチウェルアッセイプレート。
【請求項45】
前記複合材料がエッチングされる、請求項43に記載のマルチウェルアッセイプレート。
【請求項46】
前記表面が1つ又はそれ以上のくぼみ及び/又は隆起した特徴を含む、請求項43に記載のマルチウェルアッセイプレート。
【請求項47】
前記表面がヒドロゲルを含む、請求項25に記載のマルチウェルアッセイプレート。
【請求項48】
前記貯蔵帯域を、温度上昇又は温度低下、pH変化、電位の適用、イオン強度の変化、競合、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される第一の組の条件に曝すことにより、前記第一の試薬が遊離され、そして前記貯蔵領域を、温度上昇又は温度低下、pH変化、電位の適用、イオン強度の変化、競合、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される第二の組の条件に曝すことにより、前記第二の試薬が遊離され、該第一及び第二の組の条件は異なる、請求項25に記載のマルチウェルアッセイプレート。
【請求項49】
前記使用帯域が、該使用帯域と重ならない前記ウェルの補助表面に位置する、請求項25に記載のマルチウェルアッセイプレート。
【請求項50】
多重測定を行うように構成されている、請求項25に記載のマルチウェルアッセイプレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、米国仮出願第61/455,112号(2010年10月14日出願)の利益を主張し、そして米国出願第12/757,685号(2010年4月9日出願)を参照する(その開示はその全体が参照により本明細書に加入される)。
【0002】
発明の分野
結合アッセイを行うための改善された方法が提供される。これらの方法は、例えば、サンプル中の被検体の濃度を増加させることによる、かつ/または結合アッセイの性能を妨害し得る、サンプル中に存在し得る外来物質の濃度を減少させることによる、アッセイ性能を改善するための事前濃縮工程を含む。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
サンプル中の目的の被検体の高感度測定のための、結合反応、例えば抗原−抗体反応、核酸ハイブリダイゼーション及び受容体−リガンド反応を使用する技術に関する大量の文献が発表されている。多くの生化学的結合系における高度の特異性は、基礎研究、ヒトの及び獣医学的な診断、環境モニタリング及び工業用試験を含む様々な市場における価値ある多くのアッセイ方法及びシステムをもたらした。目的の被検体の存在は、結合反応への被検体の参加を直接測定することにより測定され得る。いくつかのアプローチにおいて、この参加は、結合物質の1つまたはそれ以上に結合された観察可能な標識の測定により示され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特に複雑な生物学的サンプルを分析する場合に、結合事象から得られるシグナルを増加させること、非特異的結合を減少させること、ならびに/又は測定の精度及び正確さを改善することにより、結合アッセイ及び結合アッセイを行うために使用されるデバイスを改善するという要望が常に存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の要旨
本発明は、貯蔵帯域に留まっている表面−試薬複合体を含む貯蔵帯域[該表面−試薬複合体は、(i)第一の標的薬剤に連結された試薬;及び(ii)第二の標的薬剤に連結された表面を含んでなり、ここで該試薬及び該表面は、該第一の標的薬剤と第二の標的薬剤との間の遊離可能な結合相互作用を介して該表面−試薬複合体において連結されている];及び(b)サンプル中の目的の被検体についてのアッセイにおいて該試薬を使用するようにそれぞれ構成されている1つ又はそれ以上の使用帯域を含んでなるアッセイデバイスを提供する。本発明のアッセイデバイスは、1つもしくはそれ以上の貯蔵帯域及び/又は1つもしくはそれ以上の使用帯域を含む。さらに貯蔵帯域はまた2つ又はそれ以上の表面−試薬複合体を含み得、これらはそれぞれ1つ又はそれ以上の使用帯域において行われるアッセイにおいて使用され得る異なるアッセイ試薬を含む。例えば、貯蔵帯域はまた、貯蔵帯域に封じ込められた第二の表面−試薬複合体を含み、この第二の表面−試薬複合体は、(i)第三の標的薬剤に連結された第二の試薬;及び(ii)第四の標的薬剤に連結された第二の表面を含み、ここでこの第二の試薬及び第二の表面は、第三の標的薬剤と第四の標的薬剤との間の第二の遊離可能な結合相互作用を介して第二の表面−試薬複合体において連結されており;そして1つ又はそれ以上の使用帯域はさらに、アッセイにおいて第二の試薬を使用するように構成されている。使用帯域は、アッセイデバイスにおいてサンプルを用いて行われる1つ又はそれ以上のアッセイにおいて、貯蔵帯域に貯蔵されている試薬(単数又は複数)を使用するようにそれぞれ構成されている2つ又はそれ以上のアッセイ領域をそれぞれ含み得る。
【0006】
本デバイスは、サンプル中に存在する1つ又はそれ以上の被検体についての複数のアッセイを行うために使用され得、例えば、1つ又はそれ以上の使用帯域の第一のアッセイ領域はそれぞれ、サンプル中の目的の第一の被検体についてのアッセイを行うように構成され、そして1つ又はそれ以上の使用帯域におけるさらなるアッセイ領域は、サンプル中の目的のさらなる被検体についてのアッセイを行うように構成される。あるいは、1つ又はそれ以上の使用帯域の第一のアッセイ領域は、サンプル中の目的の被検体についての第一のアッセイを行うように構成され、そして1つ又はそれ以上の使用帯域のさらなるアッセイ領域は、サンプル中の目的の被検体についての第二のアッセイを行うように構成される。
【0007】
本発明はまた、(a)貯蔵帯域に封じ込められた表面−試薬複合体を含む貯蔵帯域[この表面−試薬複合体は、(i)第一の標的薬剤に連結された試薬;及び(ii)第二の標的薬剤に連結された表面を含み、ここで試薬及び表面は、第一の標的薬剤と第二の標的薬剤との間の遊離可能な結合相互作用を介して表面−試薬複合体において連結されている];及び(b)サンプル中に複数の被検体についての多重アッセイにおいて試薬を使用するように構成される複数のアッセイ領域をそれぞれ含む1つ又はそれ以上の使用帯域を含んでなる多重アッセイデバイスを提供する。1つ又はそれ以上の使用帯域の第一のアッセイ領域は、サンプル中の目的の第一の被検体についてのアッセイを行うように構成され、そして1つ又はそれ以上の使用帯域におけるさらなるアッセイ領域は、サンプル中の目的のさらなる被検体についてのアッセイを行うように構成される。さらに貯蔵帯域は、貯蔵帯域に封じ込められた第二の表面−試薬複合体をさらに含み得、この第二の表面−試薬複合体は、(i)第三の標的薬剤に連結された第二の試薬;及び(ii)第四の標的薬剤に連結された第二の表面を含み、ここで第二の試薬及び第二の表面は、第三の標的薬剤と第四の標的薬剤との間の第二の遊離可能な結合相互作用を介して第二の表面−試薬複合体において連結されており;そして1つ又はそれ以上の使用帯域はさらに、多重アッセイにおいて第二の試薬を使用するようにさらに構成されている。
【0008】
本発明はさらに、本明細書において記載されるアッセイデバイスにおいてアッセイを行う方法を提供し、この方法は以下の工程:(x)サンプルを1つ又はそれ以上の使用帯域に導入する工程;(y)貯蔵帯域を、表面−試薬複合体から試薬を遊離する条件に曝す工程;(z)試薬を貯蔵帯域から1つ又はそれ以上の使用帯域へと移す工程;及び(xx)1つ又はそれ以上の使用帯域において試薬を用いてアッセイを行う工程を含む。使用帯域がアッセイにおいて第二の試薬を使用するようにそれぞれ構成されている場合、この方法は、アッセイを行う工程の前に、第二の表面−試薬複合体から第二の試薬を遊離するさらなる条件に貯蔵帯域を曝すこと;及び貯蔵帯域から1つ又はそれ以上の使用帯域に第二の試薬を移すことを更に含む。
【0009】
このようなアッセイデバイスを使用する方法はまた、(x)1つ又はそれ以上の使用帯域にサンプルを導入する工程;(i)表面−試薬複合体から試薬を遊離する条件に貯蔵帯域を曝す工程;(ii)第二の表面−試薬複合体から第二の試薬を遊離する条件に貯蔵帯域を曝す工程;(y)貯蔵帯域から第一のアッセイ領域に試薬を移す工程;(z)貯蔵帯域から第二のアッセイ領域に第二の試薬を移す工程;(xx)第一のアッセイ領域において試薬を用いてアッセイを行う工程;及び(yy)第二のアッセイ領域において第二の試薬を用いてアッセイを行う工程も含み得る。この移す工程は同時でも連続的でもよい。同様に、アッセイを行う工程もまた同時でも連続的でもよい。
【0010】
さらに本発明は、本発明のアッセイデバイスを使用する方法を提供し、この方法は:(x)サンプルを1つ又はそれ以上の使用帯域に導入する工程;(y)表面−試薬複合体から試薬を遊離する条件に貯蔵帯域を曝す工程;(z)貯蔵帯域から第一のアッセイ領域及び第二のアッセイ領域に試薬を移す工程;(xx)アッセイをそれぞれ第一のアッセイ領域及び第二のアッセイ領域において行う工程を含む。これらのアッセイは、同時に行われても連続して行われてもよい。
【0011】
別の実施態様において、本発明のアッセイデバイスは、(x)貯蔵帯域を介して1つ又はそれ以上の使用帯域にサンプルを導入すること;(y)希釈剤を貯蔵帯域に加えること、並びに(i)表面−試薬複合体から試薬を遊離する条件に貯蔵帯域を曝すこと;(ii)第二の表面−試薬複合体から第二の試薬を遊離するさらなる条件に貯蔵帯域を曝すこと;(z)貯蔵帯域から第一及び第二のアッセイ領域に試薬及び第二の試薬を移すこと;(xx)第一及び第二のアッセイ領域においてアッセイを行うことにより、アッセイの実行において使用され得る。アッセイ及び/又は移送工程は、同時に、かつ/又は連続的に行われ得る。
【0012】
なおさらに、アッセイデバイスは、(x)貯蔵帯域を介して1つ又はそれ以上の使用帯域にサンプルを導入すること;(y)希釈剤を貯蔵帯域に加えること、並びに(i)表面−試薬複合体から試薬を遊離する条件に貯蔵帯域を曝すこと;(ii)第二の表面−試薬複合体から第二の試薬を遊離するさらなる条件に貯蔵帯域を曝すこと;(z)貯蔵帯域から第一のアッセイ領域に試薬を移すこと;(xx)貯蔵帯域から第二のアッセイ領域に第二の試薬を移すこと;(yy)第一及び第二のアッセイ領域においてアッセイを行うことにより、アッセイにおいて使用され得る。アッセイ及び/又は移送工程は、同時に、かつ/又は連続して行われ得る。
【0013】
さらに本発明は、(a)(i)第一の遊離可能な結合相互作用を介して貯蔵帯域において表面に連結されている第一の試薬;(ii)第二の遊離可能な結合相互作用を介して貯蔵帯域において第二の表面に連結されている第二の試薬を含む貯蔵帯域;(b)第一の被検体についてのアッセイにおいて第一の試薬を使用するように構成された第一の使用帯域;並びに(c)第二の被検体についてのアッセイにおいて第二の試薬を使用するように構成された第二の使用帯域を含んでなる多重アッセイデバイスを提供する。第一の遊離可能な結合相互作用が、第一の標的薬剤と第二の標的薬剤との間の連結を含み、ここで第一の標的薬剤は試薬に連結され、そして第二の標的薬剤は表面に連結される。さらに、試薬及び表面は、連結されて表面−試薬複合体を形成し、ここで表面−試薬複合体は貯蔵帯域に封じ込められる。第二の遊離可能な結合相互作用は、第三の標的薬剤と第四の標的薬剤との間の連結を含み、ここで第三の標的薬剤は第二の試薬に連結され、そして第四の標的薬剤は第二の表面に連結され、そして第二の試薬及び第二の表面は連結されて第二の表面−試薬複合体を形成し、ここで第二の表面−試薬複合体は貯蔵帯域に封じ込められる。このような多重アッセイデバイスは、貯蔵帯域と第一及び第二の使用帯域とが流体連通するように流体ネットワークを含んでなり、ここでこのネットワークは、貯蔵帯域中の流体を第一の使用帯域、第二の使用帯域、又はその両方に移動させるように構成される。このネットワークは、第一の使用帯域第二の使用帯域に流体を連続して又は同時に移動させるように構成される。第一及び第二の試薬は、貯蔵帯域において貯蔵帯域の異なる領域にそれぞれ留まっている。第一及び第二の遊離可能な結合相互作用は、第一及び第二の試薬を貯蔵帯域のそれぞれ第一及び第二の表面から遊離させるための同じか又は異なる条件、例えば血温度上昇又は温度低下、pH変化、電位、イオン強度の変化、競合、及びそれらの組み合わせに曝すことを必要とする。さらに、第一及び第のの使用帯域はそれぞれ、サンプル中の複数の異なる被検体についての多重アッセイにおいて第一及び第二の試薬を使用するようにそれぞれ構成された複数のアッセイ領域を含む。
【0014】
本明細書に記載される多重アッセイデバイスを使用して多重アッセイを行う方法も提供され、この方法は、(a)第一及び第二の被検体を含むサンプルを第一及び第二の使用帯域に導入すること;(b)貯蔵帯域から第一の試薬を遊離する条件に貯蔵帯域を曝すこと;(c)貯蔵帯域から第一及び第二の使用帯域の少なくとも1つに第一の試薬を移すこと;並びに(d)第一及び第二の被検体の少なくとも1つについての1つ又はそれ以上のアッセイを行うことを含む。この方法はまた、貯蔵帯域から第二の試薬を遊離するさらなる条件に貯蔵帯域を曝す工程、並びに貯蔵帯域から第一及び第二の使用帯域の少なくとも1つに第二の試薬を移す工程、並びに場合により、移す工程の前に第一及び第二の使用帯域の少なくとも1つを洗浄する工程を含み得る。
【0015】
多重アッセイデバイスにおいて多重アッセイを行う方法もまた提供され、この方法は、(a)第一及び第二の被検体を含むサンプルを第一及び第二の使用帯域に導入すること;(b)貯蔵帯域から第一の試薬を遊離する条件に貯蔵帯域を曝すこと;(c)貯蔵帯域から第一の使用帯域に第一の試薬を移すこと;(d)貯蔵帯域から第二の試薬を遊離する条件に貯蔵帯域を曝すこと;(e)貯蔵帯域から第二の使用帯域に第二の試薬を移すこと;並びに(f)第一及び第二の使用帯域において第一及び第二の被検体についてのアッセイを行うことを含む。この方法はまた、移す工程(c)の前に第一及び第二の使用帯域を洗浄することを含み得、そしてこれらのアッセイは、同時に行われても連続して行われてもよい。
【0016】
図面の簡単な説明
添付の図面は、本発明の範囲を限定するのではなく説明するために提供される。添付の図面全体を通して、「P」は1つ又はそれ以上の部分が結合されている粒子を指し;「S」は第一の固相を指し;「A」は標的被検体を指し;「C」は夾雑物を指し;そして「」はアッセイ構成成分に連結された検出可能な標識を指す。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1a】粒子がアッセイ構成成分として使用される様々なアッセイ形式を示す。
図1b】粒子がアッセイ構成成分として使用される様々なアッセイ形式を示す。
図1c】粒子がアッセイ構成成分として使用される様々なアッセイ形式を示す。
図1d】粒子がアッセイ構成成分として使用される様々なアッセイ形式を示す。
図1e】粒子がアッセイ構成成分として使用される様々なアッセイ形式を示す。
図2a】第一の固相がアッセイ構成成分として使用される様々なアッセイ形式を示す。
図2b】第一の固相がアッセイ構成成分として使用される様々なアッセイ形式を示す。
図3a】粒子がアッセイ構成成分として使用され、それに標的薬剤が連結される、様々なアッセイ形式を示す。
図3b】粒子がアッセイ構成成分として使用され、それに標的薬剤が連結される、様々なアッセイ形式を示す。
図3c】粒子がアッセイ構成成分として使用され、それに標的薬剤が連結される、様々なアッセイ形式を示す。
図3d】粒子がアッセイ構成成分として使用され、それに標的薬剤が連結される、様々なアッセイ形式を示す。
図3e】粒子がアッセイ構成成分として使用され、それに標的薬剤が連結される、様々なアッセイ形式を示す。
図4a】第一の固相がアッセイ構成成分として使用され、それに標的薬剤が連結される、様々なアッセイ形式を示す。
図4b】第一の固相がアッセイ構成成分として使用され、それに標的薬剤が連結される、様々なアッセイ形式を示す。
図5】(a)〜(b)は、本発明の一実施態様を示す。(a)は、被検体に対する抗抗体で被覆され、そしてECL標識でも被覆されたコロイドを使用する、被検体の磁気濃縮を示す。異なる被検体に結合するために多数の抗体が使用され得る。(b)は、本発明の一実施態様を示す。サンドイッチイムノアッセイ形式での被検体−コロイド複合体の検出を示す。
図6a】本発明の方法に従う2つの代替の競合イムノアッセイを示す。
図6b】本発明の方法に従う2つの代替の競合イムノアッセイを示す。
図7】7(a)〜7(c)は、1つ又はそれ以上の貯蔵帯域及び1つ又はそれ以上の使用帯域を含む、アッセイデバイスの3つの代替の実施態様を示す。7(a)〜7(b)は、試薬を使用帯域1及び2に供給する表面−試薬複合体を収容する1つの貯蔵帯域を含むアッセイデバイスを示し、さらに7(c)は、使用帯域にそれぞれ通じている多数の貯蔵帯域を含むアッセイデバイスを示す。7(c)において、アッセイデバイスにおけるサンプル及び液状試薬の区画は貯蔵帯域及び使用帯域と流体連通している。
図8】8(a)〜8(f)は、本発明の代替のアッセイデバイスの使用を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
本発明は、収集、分離及び/又は遊離工程を含む改善された固相結合アッセイを提供する。本発明の方法は、サンプル中の被検体の事前濃縮を可能にすることにより、かつ/又は、例えば検出工程を妨げることにより、及び/若しくは混合物中の1つ若しくはそれ以上の構成成分と非特異的に結合することによりアッセイの性能を妨害し得るサンプル中の夾雑物の量を減少若しくは排除することにより、アッセイ性能を改善する。
【0019】
(i) サンプル/被検体
本発明の方法により分析され得るサンプルの例としては、限定されないが、食品サンプル(食品抽出物、食品ホモジネート、飲料など)、環境サンプル(例えば土壌サンプル、環境汚泥、収集された環境エアロゾル、環境拭き取り物(wipes)、水ろ液など)、工業サンプル(例えば、出発物質、工業生産プロセスからの生成物又は中間体)、ヒト臨床サンプル、獣医サンプル、及び生物学的起源の他のサンプルが挙げられる。分析され得る生物学的サンプルとしては、限定されないが、糞便、粘膜スワブ、生理液及び/又は細胞懸濁液を含有するサンプルが挙げられる。生物学的サンプルの具体例としては、血液、血清、血漿、糞便、粘膜スワブ、組織吸引物、組織ホモジネート、細胞培養物及び細胞培養上清(真核細胞及び原核細胞を含む)、尿、唾液、痰及び脳脊髄液が挙げられる。
【0020】
本発明の方法を使用して測定され得る被検体としては、限定されないが、タンパク質、毒素、核酸、微生物、ウイルス、細胞、真菌、胞子、炭水化物、脂質、糖タンパク質、リポタンパク質、多糖類、薬物、ホルモン、ステロイド、栄養素、上記の分子の代謝物及びいずれかの誘導体又は上記の分子若しくはそれらの組み合わせの1つ若しくはそれ以上を含むいずれかの複合体が挙げられる。サンプル中の目的の被検体のレベルは、疾患又は疾患状態の指標であり得、又は単に患者がその被検体に曝露されたかどうかを示し得る。
【0021】
本発明のアッセイは、サンプル中の1つ又はそれ以上、例えば2つ又はそれ以上の被検体の濃度を決定するために使用され得る。従って、2つ又はそれ以上の被検体が同じサンプルで測定され得る。同じサンプルにおいて測定され得る被検体の集団としては、例えば疾患状態又は生理学的状態に関連する被検体若しくは活性についてのアッセイの集団が挙げられる。特定のこのような集団としては、サイトカイン及び/又はそれらの受容体(例えば、TNF−アルファ、TNF−ベータ、ILl−アルファ、ILl−ベータ、IL2、IL4、IL6、IL−10、IL−l2、IFN−yなどの1つ又はそれ以上)、増殖因子及び/又はそれらの受容体(例えば、EGF、VGF、TGF、VEGFなどの1つ又はそれ以上)、乱用薬物、治療薬、ビタミン類、病原体特異的抗体、自己抗体(例えば、Sm、RNP、SS−A、SS−アルファ、J0−1、及びScl−70抗原)に対して特異的な1つ又はそれ以上の抗体)、アレルゲン特異的抗体、腫瘍マーカー(例えば、CEA、PSA、CA−125 II、CA 15−3、CA 19−9、CA 72−4、CYFRA 21−1、NSE、AFPなどの1つ又はそれ上)、うっ血性心疾患及び/又は急性心筋梗塞を含む心疾患のマーカー(例えば、トロポニンT、トロポニンI、ミオグロビン、CKMB、ミエロペルオキシダーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、β−ナトリウム利尿タンパク質(BNP)、アルファ−ナトリウム利尿タンパク質(ANP)、エンドセリン、アルドステロン、C−反応性タンパク質(CRP)などの1つ又はそれ以上)、止血に関連するマーカー(例えば、フィブリンモノマー、D−ダイマー、トロンビン−抗トロンビン複合体、プロトロンビンフラグメント1及び2、抗第Xa因子などの1つ又はそれ以上)、急性ウイルス性肝炎感染のマーカー(例えば、A型肝炎ウイルスに対するIgM抗体、B型肝炎コア抗原に対するIgM抗体、B型肝炎表面抗原、C型肝炎ウイルスに対する抗体などの1つ又はそれ以上)、アルツハイマー病のマーカー(アルファ−アミロイド、ベータ−アミロイド、Aβ 42、Aβ 40、Aβ 38、Aβ 39、Aβ 37、Aβ 34、タウタンパク質など)、骨粗しょう症のマーカー(例えば、架橋N又はC−テロペプチド、総デオキシピリジノリン、遊離デオキシピリジノリン、オステオカルシン、アルカリホスファターゼ、I型コラーゲンのC−末端プロペプチド、骨特異的アルカリホスファターゼなどの1つ又はそれ上)、受胎状態又は受胎能関連障害のマーカー(例えば、エストラジオール、プロゲステロン、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、プロラクチン、hCG、テストステロンなどの1つ又はそれ以上)、甲状腺障害のマーカー(例えば、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、総T3、遊離T3、総T4、遊離T4、及び逆T3の1つ又はそれ以上)、並びに前立腺癌のマーカー(例えば、総PSA、遊離PSA、結合型PSA、前立腺酸性ホスファターゼ、クレアチンキナーゼなどの1つ又はそれ以上)の集団が挙げられる。本発明の特定の実施態様は、特定の疾患状態又は生理条件に関連する例えば1つ若しくはそれ以上、2つ若しくはそれ以上、4つ若しくはそれ以上又は10若しくはそれ以上の被検体(例えば、上で列挙されるような、集団で一緒に分類される被検体;例えば甲状腺刺激ホルモン(TSH)、総T3、遊離T3、総T4、遊離T4及び逆T3の1つ又はそれ以上を含み得る甲状腺障害の診断に有用な集団)を測定することを含む。
【0022】
本発明の方法は、上記のような広範囲の生物学的及び生化学的因子の検出を可能にするために設計される。一実施態様において、これらの方法は、様々な関連する臨床的及び環境的マトリックス(限定されないが、血液、痰、糞便、フィルター、スワブなどを含む)における病原性及び/又は潜在的に病原性のウイルス、細菌及び毒素(生物兵器剤(「BWA」を含む)を検出するために使用され得る。本発明の方法を使用して(単独で、又は組み合わせて)分析され得る病原体及び毒素の非限定的なリストは、炭疽菌(Bacillus anthracis)(炭疽)、ペスト菌(Yersinia pestis)(ペスト)、コレラ菌(Vibrio cholerae)(コレラ)、野兎病菌(Francisella tularensis)(野兎病)、ブルセラ属菌(Brucella spp.)(ブルセラ症)、コクシエラ・バーネッティ(Coxiella burnetii)(Q熱)、痘瘡ウイルスを含むオルトポックスウイルス属(痘瘡)、ウイルス性脳炎、ベネズエラウマ脳脊髄炎ウイルス(VEE)、西部ウマ脳炎ウイルス(WEE)、東部ウマ脳炎ウイルス(EEE)、アルファウイルス属、ウイルス性出血熱、アレナウイルス科、ブンヤウイルス科、フィロウイルス科、フラビウイルス科、エボラウイルス、ブドウ球菌エンテロトキシン、リシン、ボツリヌス毒素、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、マイコトキシン、フザリウム属(Fusarium)、ミロテシウム(Myrotecium)、セファロスポリウム属(Cephalosporium)、トリコデルマ属(Trichoderma)、ベルチシモノスポリウム(Verticimonosporium)、スタキボトリス属(Stachybotrys)、鼻疽、コムギ真菌(wheat fungus)、バチルス・グロビギイ(Bacillus globigii)、霊菌(Serratia marcescens)、黄色い雨(yellow rain)、トリコテセンマイコトキシン、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、アフラトキシン、ケオプスネズミノミ(Xenopsylla cheopis)、ジアマヌスモンタヌス(Diamanus montanus)、アラストリム、サル痘、アレナウイルス属、ハンタウイルス属、ラッサ熱、アルゼンチン出血熱、ボリビア出血熱、リフトバレー熱ウイルス、クリミア−コンゴウイルス、ハンタウイルス属、マールブルグ出血熱、黄熱病ウイルス、デング熱ウイルス、インフルエンザ(H5N1トリインフルエンザを含むヒト及び動物系統を含む)、ヒト免疫不全ウイルスI及びII(HIV I及びII)、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、肝炎(非A、B又はC型)、エンテロウイルス属、エプスタイン−バーウイルス、サイトメガロウイルス、単純疱疹ウイルス、トラコーマクラミジア(Chlamydia trachomatis)、淋菌(Neisseria gonorrheae)、膣トリコモナス(Trichomonas vaginalis)、ヒトパピローマウイルス、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumonia)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)、肺炎クラミジア(Chlamydophila pneumoniae)、レジオネラ・ニューモフィラ菌(Legionella pneumophila)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、カタラリス菌(Moraxella catarrhalis)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、クロストリジウム・ディフィシレ(Clostridium difficile)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、肺炎杆菌(Klebsiella pneumoniae)、ヒト結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、コロナウイルス、コクサッキーA群ウイルス、ライノウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、メタ肺炎ウイルス、及びアデノウイルスである。
【0023】
(ii) 結合試薬
結合アッセイ分野の当業者は、本発明の方法において使用され得る結合剤及び付随する結合パートナーの範囲を用意に理解するだろう。このような対の非限定的なリスト(いずれかの順序で)としては、オリゴヌクレオチド及び補体、受容体/リガンド対、抗体/抗原、天然又は合成の受容体/リガンド対、アミン類及びカルボニル化合物(すなわち、シッフ塩基の形成による結合)、ハプテン/抗体対、抗原/抗体対、エピトープ/抗体対、ミミトープ(mimitope)/抗体対、アプタマー/標的分子対、ハイブリダイゼーションパートナー、並びに挿入剤/標的分子対が挙げられる。
【0024】
本発明の方法の結合アッセイは、結合試薬として抗体又は他の受容体タンパク質を使用し得る。用語「抗体」は、インタクトな抗体分子(抗体サブユニットのインビトロ再会合により組み立てられたハイブリッド抗体を含む)、抗体フラグメント、及び抗体の抗原結合ドメインを含む組み換えタンパク質構築物(例えばPorter,R.R.and Weir,R.C.J.Cell Physiol.,67(Suppl);51−64(1966)及びHochman,1.Inbar,D.and Givol,D.Biochemistry 12: 1130(1973)に記載されるとおり)、さらには例えば検出可能な標識の導入により化学的に改変された抗体構築物を含む。
【0025】
これらのアッセイ構成成分の互いに対する、又は固相への結合を可能にするためにアッセイ構成成分に連結される結合試薬及び結合パートナーは、本明細書では「標的薬剤」と記載され得る。対、例えば、抗原−抗体、オリゴヌクレオチド−補体などで作用する標的薬剤に関して、対の一方の標的薬剤は本明細書では第一の標的薬剤と呼ばれ得、これに対して他方の標的薬剤は第二の標的薬剤と呼ばれ得る。特定の実施態様において、これらの標的薬剤はそれらの結合反応の可逆性にもとづいて選択される。詳細には、標的薬剤対は、例えば第一の組の条件下で、その対で結合して結合複合体を形成し、これが第二の組の条件下で、例えば温度上昇又は温度低下、化学的環境又はアッセイ緩衝液の変化(例えば、イオン強度変化、pH変化、変性剤の添加、光又は電位の変化など)に結合した標的薬剤対を曝すことにより、別の標的薬剤への結合に関して1つの標的薬剤と競合する結合競合試薬を加えることにより、及びそれらの組み合わせにより、解離を引き起こして複合体を分裂させることができるという理由で選択され得る。適切な条件は通常の実験により導かれ得る。使用され得、共有結合を生じ、厳しい条件を必要とすることなく切断され得る、多くの十分に確立された切断可能な化学的リンカーが存在する。例えば、ジスルフィド含有リンカーは、チオール又は他の還元剤を使用して切断され得、cis−ジオール含有リンカーは過ヨウ素酸塩を使用して切断され得、金属−リガンド相互作用(例えばニッケル−ヒスチジン)はpHを変化させるか又は競合リガンドを導入することにより切断され得る。用語「切断する」又は「切断」はまた、共有結合を破壊する必要のない、連結されたアッセイ構成成分の分離のための過程を指すために本明細書において使用され、例えば、使用され得る十分に確立された可逆的結合対及び条件が多く存在する(アフィニティークロマトグラフィーの技術分野で認識されているものを含む)。例として、多くの抗体−リガンド対の結合は、pHの変化、タンパク質変性剤又はカオトロピック剤の添加、競合リガンドの添加などにより逆行され得る。
【0026】
標的薬剤は、相補配列を含むオリゴヌクレオチドの対であり得る。好ましい長さは約5〜100塩基、好ましくは約10〜50塩基、そしてより好ましくは約10〜25塩基である。さらに、標的化オリゴヌクレオチド配列は長さが同じである必要はなく、そして特定の実施態様では、その結合パートナーよりも、例えば25塩基まで、又は15塩基まで、又は10塩基までだけ長い1つの標的化オリゴヌクレオチド配列を提供することが有益かもしれない。鎖分離に一般的に使用される公知の方法は、i)複合体の融解温度より高い温度を使用し、ii)11(又はそれ以上)のアルカリpH若しくは低いpHを使用し;iii)高イオン強度を使用し、かつ/又はiv)ホルムアミドのような核酸変性剤を使用する。鎖分離のための他の方法は、E.coliのRepタンパク質のようなDNAの巻き戻しを触媒し得るヘリカーゼ酵素、又はE.coliファージT4の32−タンパク質のようなDNAの単鎖形態を安定化するように作用する結合タンパク質の使用を含む。特定の実施態様において、相補核酸鎖の解離は、60℃より高い高温にその鎖を曝すことにより達成される。
【0027】
本発明の方法は、様々なアッセイデバイス及び/又は形式において使用され得る。アッセイデバイスとしては、例えばアッセイが進行するにつれて加えられるか、又はウェル、チャンバ、若しくはアッセイモジュールのアッセイ領域に予めロードされるアッセイ試薬(標的薬剤又は他の結合試薬を含み得る)を有する、アッセイモジュール、例えばアッセイプレート、カートリッジ、マルチウェルアッセイプレート、反応容器、試験管、キュベット、フローセル、アッセイチップ、ラテラルフローデバイスなどが挙げられ得る。これらのデバイスは、特異的結合アッセイ、例えばイムノアッセイ又は免疫クロマトグラフィーアッセイのための様々なアッセイ形式を使用し得る。実例となるアッセイデバイス及び形式は本明細書の以下に記載される。特定の実施態様において、本発明の方法は、乾燥状態で貯蔵されるアッセイ試薬を使用してもよく、そしてアッセイデバイス/キットは、アッセイ試薬を乾燥状態に維持するための乾燥剤物質をさらに含んでいても、同梱されていてもよい。アッセイ試薬を予めロードされているアッセイデバイスは、貯蔵の間の優れた安定性を維持しながら、アッセイ測定の速度を大きく改善し、かつ複雑さを減少させることができる。乾燥したアッセイ試薬は、乾燥することができかつその後にアッセイにおける使用の前に再構成することができるいずれかのアッセイ試薬であり得る。これらとしては、限定されないが、結合アッセイにおいて有用な結合試薬、酵素、酵素基質、指示薬色素及び目的の被検体を検出するために使用され得る他の反応性化合物が挙げられる。アッセイ試薬はまた、検出の機構に直接関与しないが、アッセイにおいて補助的役割を果たす物質も含み、これらとしては、限定されないが、ブロッキング剤、安定剤、洗浄剤、塩、pH緩衝液、保存料などが挙げられる。試薬は遊離形態で存在していても、アッセイモジュール中の区画(例えば、チャンバー、チャネル、フローセル、ウェルなど)の表面又はコロイド、ビーズ、若しくは他の粒状支持体の表面を含む固相上に支持されていてもよい。
【0028】
一実施態様において、アッセイ試薬は試薬貯蔵のために使用される1つ又はそれ以上の領域又は帯域を含むアッセイデバイスで提供され得る。これらの貯蔵帯域は、デバイスにおける他の場所での使用のために試薬を遊離するために十分な条件に貯蔵帯域を曝すまでその帯域内に試薬が留まっているように、貯蔵帯域内の表面に結合された試薬を含み得る。例えば、貯蔵帯域は、第一の標的薬剤に連結された試薬、及び第二の標的薬剤に連結された表面を含む表面−試薬複合体を含み得、ここで試薬及び表面は表面−試薬複合体において第一の標的薬剤と第二の標的薬剤との間の遊離可能な結合相互作用を介して連結されている。この実施態様において、第一の標的薬剤と第二の標的薬剤との間の遊離可能な結合相互作用を分裂させるために十分な条件に貯蔵帯域を曝すことにより、試薬は表面−試薬複合体及び貯蔵帯域からから遊離される。本明細書に記載されるように、そのような条件としては、限定されないが、温度上昇又は温度低下、光、その帯域のpHの変更、電位の印加、イオン強度の変化、競合剤の添加、及びそれらの組み合わせに貯蔵帯域を曝すことが挙げられ得る。
【0029】
第二の標的薬剤、及びそれにより試薬が連結される表面は、貯蔵帯域内に組み込まれ得るか貯蔵帯域に留まり得るいずれの固体支持体であってもよい。例えば、表面は、本明細書に記載されるような、貯蔵帯域に存在する1つ又はそれ以上の粒子の表面で有り得る。あるいは、表面は、貯蔵帯域の表面、例えば貯蔵帯域内の区画、チャネル、導管、ウェルなどの表面である。好ましくは、貯蔵帯域表面は、粗面化されているか、又は1つ若しくはそれ以上の隆起した特徴若しくはくぼみを含み、これが表面−試薬複合体を保持するために利用可能な貯蔵帯域内の相対的表面積を増加させる。一実施態様において、貯蔵帯域表面は、その表面に結合することができる構成成分にアクセス可能な表面積が平坦な表面の表面積よりも少なくとも2倍より大きくなるように、表面積を増加させる表面積増強特徴を含む。好ましい実施態様において、結合のためにアクセス可能な表面積は、平坦な表面の表面積よりも少なくとも3倍大きい。大きい表面積の支持体は、表面を粗面化することにより、又は他の方法では表面に三次元構造を施すことにより提供され得る。粗面化されたか又は凸凹を付けられた表面を製造するための様々な確立されたアプローチは当業者に利用可能だろう。これらのアプローチには、従来の機械加工、微細機械加工又はリソグラフィー(例えば、LIGA又は米国特許第5,707,799号及び同第5,952,173号に記載されるような他の微細加工技術)又は射出成形により製造されるカラムのアレイのような高アスペクト比の特徴を有する表面の製造が含まれる。
【0030】
貯蔵帯域表面は、マトリックス中に分散した露出粒子を含む複合材料も含み得る。複合材料としては、限定されないが、炭素粒子、黒鉛粒子、又はカーボンナノチューブが挙げられ得る。場合により、複合材料は、より多くの粒子を露出させ、かつ表面粗度を増加させるためにエッチングされ得る(例えば化学エッチング又はプラズマエッチングにより)。特定の一実施態様において、表面はプリントされたカーボンインクにより提供される。別の実施態様において、貯蔵帯域表面は、その孔において利用可能な表面積により増強された表面積をもたらす多孔質支持体を含み得る。このような多孔質支持体は、多孔質膜(例えばろ過膜及びラテラルフローメンブレン)及びゲルを含む。好ましいゲルとしてヒドロゲルが挙げられる。多数の適切なヒドロゲルが、ヒドロゲルに試薬を連結するための化学物質のように、アフィニティークロマトグラフィー、生体高分子の固相合成及び結合アッセイのような適用のための、試薬のための支持体として十分に確立されている。適用において。このようなヒドロゲルの例としては、限定されないが、糖(多糖類)、アクリル酸、アクリレート、アクリルアミド、エチレングリコール、プロピレングリコールのポリマーが挙げられる。ヒドロゲルは架橋され得、かつ/又は異なるモノマー成分のコポリマーで有り得る。
【0031】
試薬のための貯蔵帯域を組み込んだアッセイデバイスはまた、そのデバイスにおいて行われるアッセイにおいてそれらの試薬を使用するように構成された使用帯域を含む。従って、一旦試薬が表面−試薬複合体から遊離されると、遊離試薬が使用帯域において行われるアッセイにおける使用に利用可能になる。遊離試薬は、貯蔵帯域から使用帯域に移され、ここでこれは目的の被検体のためのアッセイに参加できる。そのアッセイは、使用帯域に存在するが、またそうでなければ、使用帯域に供給される1つ又はそれ以上のさらなる試薬を含んでいてもよい。一実施態様において、使用帯域は、使用帯域内の固体支持体に結合され、かつ/又は使用帯域の表面上で乾燥された1つ又はそれ以上のさらなる試薬を含み得る。特定の実施態様において、試薬は、サンプル中の目的の被検体に結合することができる結合試薬であり、そして使用帯域は使用帯域内の固体支持体に結合されたさらなる試薬を含み、ここでそのさらなる試薬もまた目的の被検体に結合する。この実施態様において、サンプル中に存在する被検体は、さらなる試薬を介して使用帯域の表面に結合し、さらに貯蔵帯域から移された遊離試薬と結合してサンドイッチ複合体を形成する。結合試薬は、検出可能な標識、例えばECL標識を含み得、そして被検体は、使用帯域において、例えば使用帯域において放射されれる電気化学発光の測定を介して、標識の存在又は不在を検出することにより検出され得る。サンプルは使用帯域に直接導入されてもよく、又はサンプルは最初に貯蔵帯域に導入されて、その後サンプルは貯蔵帯域から使用帯域に流れる。試薬は、貯蔵帯域をサンプルと接触させる前に遊離されても、貯蔵帯域がサンプルと接触された後に遊離されてもよい。一実施態様において、サンプルは貯蔵帯域に導入され、次いでこれを、表面−試薬複合体からの試薬の遊離のために必要な条件に曝す。その後、サンプル及び遊離試薬はサンプル−試薬混合物を使用帯域に移す前に場合によりインキュベートされる。
【0032】
好ましい実施態様において、貯蔵帯域及び使用帯域は流体路に沿って流体連通している。例えば、アッセイデバイスはカートリッジであり得、そして貯蔵帯域及び使用帯域は流体路に沿ってカートリッジ内に位置づけられる。この実施態様の例を図7(a)〜(c)に示す。図7(a)において、アッセイデバイスは貯蔵帯域及び少なくとも2つの使用帯域を含み、そして貯蔵帯域と使用帯域とはそれぞれ流体連通している。使用帯域は、図7(a)に示されるように直列で、又は図7(b)に示されるように並列でアッセイデバイスにおいて構成され得る。図7(c)は、複数の貯蔵帯域及び使用帯域を含むアッセイデバイスのさらに別の構成を示す。図7(c)に示される実施態様において、貯蔵帯域及び使用帯域はまたサンプル及び/又はアッセイデバイス内の試薬区画と流体連通している。
【0033】
別の実施態様を図8に示す。図8のアッセイデバイスは、第一の表面−試薬複合体及び第二の表面−試薬複合体を含む貯蔵帯域、並びに少なくとも2つの使用帯域を含み、ここで貯蔵帯域及び使用帯域は流体ネットワークを介して流体連通している。パネル(a)においてサンプルをデバイスの区画中に導入し、そしてパネル(b)に示されるように、流体ネットワークはそのサンプルを使用帯域に運ぶ。パネル(b)及び(c)はまた、希釈剤が貯蔵帯域を通過し(表面−試薬複合体を遊離しない条件下で)、そして流体ネットワークを通して使用帯域に運ばれ、使用帯域の任意の洗浄をもたらし得るということを示す。次いで希釈剤は、第一の試薬を遊離する条件に貯蔵帯域を曝しながら、貯蔵帯域を通過し、次いでパネル(d)に示されるように、これは流体ネットワークに運ばれて使用帯域1中に運ばれる。次いで第二の試薬が第二の組の条件により遊離され、そしてパネル(e)に示されるように、微小流体ネットワーとを通る希釈剤の流れを介して使用帯域2に運ばれる。最後に、パネル(f)に示されるように、使用帯域は過剰の試薬を除去するために場合により洗浄される。
【0034】
一実施態様において、貯蔵帯域及び使用帯域は、これらの帯域中の流体の大気との平衡を可能にするように、又は選択的に密封するか、開放するか(大気圧に対して)、若しくは特定のベントポートに対して陽圧若しくは陰圧を加えることにより特定の帯域中へ若しくは特定の帯域からの流体の方向性を持った移動を可能にするように、貯蔵帯域及び使用帯域と(直接的に、又はベント導管を通じて)流体連通している1つ又はそれ以上のベントポートをさらに含む流体ネットワーク内に含まれる。
【0035】
別の実施態様において、アッセイデバイスはマルチウェルアッセイプレートであり、そして使用帯域はプレートのウェル内に位置づけられるが、貯蔵帯域は使用帯域と重ならないウェルの補足的(supplemental)表面に位置する。
【0036】
さらなる実施態様において、アッセイデバイスは貯蔵帯域において1つ又はそれ上の表面−試薬複合体を含み得る。図8に示される実施態様において、例えば貯蔵帯域は第一の表面−試薬複合体(上記のとおり)を含み、そしてまた貯蔵帯域に封じ込められた第二の表面−試薬複合体も含み、この第二の表面−試薬複合体は、(i)第三の標的薬剤に連結された第二の試薬;及び(ii)第四の標的薬剤に連結された第二の表面を含み、ここで第二の試薬及び第二の表面は、第二の表面−試薬複合体において、第三の標的薬剤と第四の標的薬剤との間の第二の遊離可能な結合相互作用を介して連結されており;そして使用帯域はさらに、アッセイにおいて第二の試薬を使用するように構成されている。貯蔵帯域内に貯蔵される様々な試薬は、使用帯域において行われる1つ又はそれ上のアッセイにおいて使用され得、又は貯蔵帯域内に貯蔵されている試薬はそれぞれ、使用帯域において行われる各アッセイにおいて使用され得る。貯蔵帯域内に貯蔵される試薬は選択的に遊離され得る、すなわち、試薬のうちの1つが、貯蔵帯域において貯蔵される別の試薬を遊離するために使用される第二の組の条件とは異なる第一の組の条件により、表面−試薬複合体組成物から遊離され得る。
【0037】
さらに、使用帯域は、デバイスにおいて単一のサンプルを用いて行われる1つ又はそれ以上のアッセイにおいて貯蔵帯域内に貯蔵される試薬を使用するようにそれぞれ構成されている2つ又はそれ上のアッセイ領域を含み得る。一実施態様において、使用帯域は、サンプル中の目的の第一の被検体についてのアッセイを行うように構成された第一のアッセイ領域を含み、そして使用帯域はまた、サンプル中にこれもまた存在し得る目的のさらなる被検体についてのアッセイを行うように構成されたさらなるアッセイ領域も含み得る。あるいは、使用帯域における第一のアッセイ領域は、被検体についての第一のアッセイを行うために使用され得、一方で使用帯域における別のアッセイ領域は、同じ被検体についての第二のアッセイを行うために使用され得る。なおさらにアッセイデバイスは、デバイスにおいて単一のサンプルを用いて行われる1つ又はそれ以上のアッセイにおいて貯蔵帯域内に貯蔵される試薬を使用するようにそれぞれ構成された複数の使用帯域を含み得る。各使用帯域は、上記のような1つ又はそれ以上のアッセイ領域を含み得る。さらに、アッセイデバイスは複数の貯蔵帯域を含み得、例えばそれぞれの使用帯域について、対応する貯蔵帯域が存在する。多数の使用帯域及び/又は貯蔵帯域を含むアッセイデバイスの様々な構成を図7(a)〜(c)及び図8に示す。
【0038】
上記のように、貯蔵帯域は複数の異なる試薬を表面−試薬複合体として含み得る。一実施態様において、異なる試薬は、異なる条件下で切断される異なる遊離可能な結合反応により貯蔵帯域に保持される。従って、貯蔵帯域のそれぞれの規定された領域を適切な条件に曝すことにより、それぞれの試薬が貯蔵帯域から選択的に遊離される。異なる試薬は、相互に混合されるか又は貯蔵帯域の異なる領域に保持される表面−試薬複合体の状態であり得る。本明細書に記載されるように、それらの条件としては、限定されないが、温度上昇又は温度低下、光、その領域のpHの変更、イオン強度の変化、電位の印加、競合剤の添加、及びそれらの組み合わせが挙げられ得る。異なる条件下で切断される結合反応を使用することにより、貯蔵帯域において表面−試薬複合体から一度に1つの試薬を選択的に遊離することが可能である。例えば、1つの試薬が加熱により選択的に遊離され得、一方で別の試薬がpHを変化させることにより選択的に遊離され得、又は1つの試薬が第一の競合剤を使用して選択的に遊離され得、一方で別の試薬が第二の競合剤を使用して選択的に遊離され得る。別の実施態様において、異なる試薬は、次第にストリンジェンシーが増加する切断条件(例えば温度の増加、pHの増加又は減少、競合剤濃度の増加、光のレベルの増加、イオン強度の増加又は減少など)を必要とする異なる遊離可能な結合反応を使用して一度に1つが遊離され得る。例えば、第一の試薬は第一の温度レベルで遊離され得、かつ第二の試薬は第二のより高い温度レベルでその後に遊離され得る。
【0039】
別の実施態様において、貯蔵帯域は規定された複数の空間領域を含み得、異なる領域のうち少なくとも2つは、上記のような遊離可能な結合相互作用により試薬を保持する表面−試薬複合体で異なる試薬を保持する。この実施態様において、特定の空間領域における試薬の切断は、切断条件を目的の特定の空間領域に制限するやり方で、切断条件を適用する(例えば、光、温度、電位などを加える)ことにより行われ得る。この実施態様において、個々の試薬の遊離は規定された領域への切断条件の適用により方向づけられ得るので、異なる試薬を保持するために使用される遊離可能な結合相互作用は同じであっても異なっていてもよい。好ましい実施態様において、デバイスは多重アッセイ測定のために構成され、そしてこのデバイスは、(a)貯蔵帯域に封じ込められた表面−試薬複合体を含む貯蔵帯域、[この表面−試薬複合体は、(i)第一の標的薬剤に連結された試薬;及び(ii)第二の標的薬剤に連結された表面を含み、ここで試薬及び表面は、表面−試薬複合体において、第一の標的薬剤と第二の標的薬剤との間の遊離可能な結合相互作用を介して連結されている];及び(b)サンプル中の複数の被検体についての多重アッセイにおいて試薬を使用するように構成された複数のアッセイ領域を含む使用帯域を含んでなる。貯蔵帯域は、貯蔵帯域に封じ込められた第二の表面−試薬複合体をさらに含み得、この第二の表面−試薬複合体は、(iii)第三の標的薬剤に連結された第二の試薬;及び(iv)第四の標的薬剤に連結された第二の表面を含み、ここで第二の試薬及び第二の表面は、第二の表面−試薬複合体において、第三の標的薬剤と第四の標的薬剤との間の第二の遊離可能な結合相互作用を介して連結されており;そして使用帯域は、多重アッセイにおいて第二の試薬を使用するようにさらに構成される。これに関して、使用帯域は、アッセイデバイスにおいてサンプルを用いて行われる1つ又はそれ以上のアッセイにおいて試薬及び第二の試薬を使用するようにそれぞれ構成された2つ又はそれ以上のアッセイ領域を含み、そしてこのアッセイデバイスの構成により、試薬及び場合により第二の試薬を用いた使用帯域における複数のアッセイの実行が可能となる。
【0040】
使用帯域は、サンプル中の第一の被検体についてのアッセイを行うように構成された第一のアッセイ領域、及びサンプル中の目的のさらなる被検体についてのアッセイを行うように構成されたさらなるアッセイ領域を含み得、このようなデバイスにおけるアッセイは、以下の工程:
(x)貯蔵帯域を経由してサンプルを使用帯域に導入する工程;
(y)希釈剤を貯蔵帯域に導入する工程;
(z)表面−試薬複合体から試薬を遊離する条件に貯蔵帯域を曝す工程;
(xx)貯蔵帯域から第一のアッセイ領域及び第二のアッセイ領域へ試薬を移す工程;及び
(yy)第一及び第二のアッセイ領域においてそれぞれアッセイを行う工程;
を含む。
【0041】
各アッセイを行う工程は同時に行われても、連続して行われてもよい。
【0042】
あるいは、アッセイ方法は、サンプルと遊離試薬の混合物が使用帯域に導入される前に、サンプルと遊離試薬との間のインキュベーション工程を含み得る。このような方法は、以下の工程:
(x)貯蔵帯域にサンプルを導入する工程;
(y)表面−試薬複合体から試薬を遊離する条件に貯蔵帯域を曝し、そして場合により、サンプルを遊離試薬とともに貯蔵帯域においてインキュベートする工程;
(z)(y)において形成された混合物を、貯蔵帯域から第一のアッセイ領域及び第二のアッセイ領域へ移す工程;並びに
(xx)アッセイをそれぞれ第一及び第二のアッセイ領域において行う工程;
を含むだろう。
【0043】
なおさらに、使用帯域は、サンプル中の目的の第一の被検体についてのアッセイを行うように構成された第一のアッセイ領域、及びサンプル中の目的のさらなる被検体についてのアッセイを行うように構成された使用帯域におけるさらなるアッセイ領域を含み得、そしてこのようなデバイスにおけるアッセイは:
(x)貯蔵帯域を経由して使用帯域にサンプルを導入すること;
(y)希釈剤を貯蔵帯域に導入し、そして
i)表面−試薬複合体から試薬を遊離する条件に貯蔵帯域を曝し;
ii)第二の表面−試薬複合体から第二の試薬を遊離するさらなる条件に貯蔵帯域を曝すこと;
(z)試薬及び第二の試薬を貯蔵帯域から第一及び第二のアッセイ領域へ移すこと;並びに
(xx)第一及び第二のアッセイ領域においてアッセイを行うこと;
を含み得る。
【0044】
各アッセイを行う工程は同時に行われても連続して行われてもよい。同様に、試薬及び第二の試薬の移送は同時に行われても連続して行われてもよい。
【0045】
あるいは、サンプル中の目的の第一の被検体についてのアッセイを行うように構成された第一のアッセイ領域及びサンプル中の目的のさらなる被検体についてのアッセイを行うように構成された使用帯域におけるさらなるアッセイ領域を含むデバイスを使用するアッセイ方法はインキュベーション工程も含み得、すなわち、
(x)サンプルを貯蔵帯域に導入すること;
i)表面−試薬複合体から試薬を遊離する条件に貯蔵帯域を曝すこと;
ii)第二の表面−試薬複合体から第二の試薬を遊離するさらなる条件に貯蔵帯域を曝すこと;
(iii)工程(x)(i)及び(x)(ii)において形成された遊離試薬及び遊離した第二の試薬とともに貯蔵帯域をインキュベートすること;
(y)工程(x)(iii)において形成された混合物を貯蔵帯域から第一及び第二のアッセイ領域へ移すこと;並びに
(z)第一及び第二のアッセイ領域においてアッセイを実行すること;
を含み得る。
【0046】
1つの特定の実施態様において、アッセイデバイスは、例えば同時係属出願第61/284,276号(2009年12月16日出願、その開示は参照により本明細書に加入される)に記載されるようなカートリッジである。例えばUSSN 61/284,276の図9に示されるように、カートリッジは様々な区画、すなわち、サンプルチャンバー、アッセイ試薬チャンバー、廃棄物チャンバー、及び検出チャンバーに加えて、様々な区画及び/又は流体ポート/ベントを接続する流体ネットワークを含み得る。貯蔵帯域は例えば試薬チャンバー内に組み込まれ得、そして同様に、使用帯域は例えば検出チャンバー内に含まれ得る。さらに、又はあるいは、さらなる貯蔵チャンバーは、そこに記載されるカートリッジ内に組み込まれ得る。
【0047】
別の特定の実施態様において、アッセイデバイスは、マルチウェルアッセイプレート、同時係属出願第11/642,970(2006年12月21日出願、その開示は参照により本明細書に加入される)に記載されるようなマルチウェルアッセイプレートである。アッセイプレートは、その中に規定された複数のウェルを備えたプレート本体を含み得、ここで複数のウェルは、そこに固定された捕捉試薬を有する結合表面、及び結合表面と重ならないプレート又はウェルの表面上に位置するさらなる試薬を含む。一実施態様において、さらなる試薬はウェルの壁に位置する試薬貯蔵棚上に位置する。あるいは、アッセイプレートは、アッセイウェルの間の領域に位置する試薬専用の場所に接続されたアッセイウェルを含み得る。このような実施態様において、試薬の場所は周囲のウェルと、例えばノッチを介して流体連通し得る。さらに、適切なアッセイプレートは、米国特許出願第11/642970号(その開示は参照により本明細書に加入される)に記載される。
【0048】
(iii) 固相
結合アッセイの技術分野からの従来の固相を含めて、多種多様な固相が本発明の方法における使用に適している。固相は、様々な異なる材料から製造され得、これらとしては、ポリマー(例えば、ポリスチレン及びポリプロピレン)、セラミック、ガラス、複合材料(例えば、炭素−ポリマー複合材料、例えばカーボンベースインク)が挙げられる。適切な固相としては、巨視的な物体の表面、例えばアッセイ容器(例えば、試験管、キュベット、フローセル、カートリッジ、マルチウェルプレートのウェルなど)の内部表面、スライド、アッセイチップ(例えば遺伝子又はタンパク質チップ測定で使用されるもの)、ピン又はプローブ、ビーズ、ろ過媒体、ラテラルフロー媒体(例えば、ラテラルフロー試験ストリップにおいて使用されるろ過膜)などが挙げられる。
【0049】
適切な固相としては、他の種類の粒子ベースのアッセイにおいて一般的に使用される粒子(コロイド又はビーズが挙げられるがこれらに限定されない)、例えば磁気、ポリプロピレン、及びラテックス粒子、固相合成において典型的に使用される材料、例えばポリスチレン及びポリアクリルアミド粒子、並びにクロマトグラフィー適用において典型的に使用される材料、例えばシリカ、アルミナ、ポリアクリルアミド、ポリスチレンも挙げられる。これらの材料はまた、炭素フィブリルのような繊維であってもよい。微粒子は非生物であってもよく、あるいは、生物の生物学的実体、例えば細胞、ウイルス、細菌などを含み得る。
【0050】
本発明の方法において使用される粒子は、1つ又はそれ以上の結合パートナー及び/又は標識への結合に適しており、かつ例えば遠心分離、重力、ろ過又は磁気収集により収集され得るいずれかの材料から構成され得る。結合試薬に結合され得る多種多様な異なる種類の粒子は結合アッセイにおける使用のために市販されている。これらとしては、非磁気粒子に加えて、粒子が磁場を用いて収集されることを可能にする磁化可能な材料を含む粒子が挙げられる。一実施態様において、粒子は導電性材料及び/又は半導体材料、例えばコロイド金粒子から構成される。
【0051】
微粒子は多種多様な寸法及び形状を有し得る。限定ではなく例として、微粒子は5ナノメートル〜100マイクロメートルの間であり得る。好ましくは微粒子は20nm〜10マイクロメートルの間の寸法を有する。粒子は球状、楕円形(oblong)、棒状などであり得、又はそれらは不規則な形状であってもよい。
【0052】
本発明の方法において使用される粒子は、粒子の混合物中の特定の粒子又は粒子の分集団の識別を可能にするようにコード化され得る。このようなコード化粒子の使用は、結合アッセイのための固相支持体として粒子を使用するアッセイの多重化を可能にするために使用されてきた。1つのアプローチでは、粒子は1つ又はそれ上の蛍光色素を含むように製造され、そして粒子の特定の集団は、1つ又はそれ以上の波長における蛍光発光の強度及び/又は相対強度に基づいて識別される。このアプローチはLuminex xMAPシステム(例えば米国特許第6,939,720号を参照のこと)及びBecton Dickinson Cytometric Bead Arrayシステムにおいて使用されている。あるいは、粒子は他の物理的特性、例えば寸法、形状、組み込まれた光学的パターンなどにおける差異によりコード化され得る。
【0053】
本発明のアッセイの特定の実施態様において、粒子はi)被検体の濃縮、収集及び/又は分離の工程において使用される固相支持体として、並びにii)測定工程における検出可能な標識又は検出可能な標識のためのプラットフォームの両方としての二重の役割を有し得る。一例において、結合アッセイを行う方法は、被検体を含むサンプルを、その被検体と結合する第一の結合試薬に連結された粒子を接触させて、第一の結合試薬に結合した被検体を含む複合体を形成することを含み得る。次いでこの複合体を粒子の収集により(磁気収集、遠心分離、重力沈降などを介して)収集し、そしてサンプルの未結合の構成成分の一部又は全てを、サンプル体積の一部又は全てを除去し、そして場合により収集した粒子を洗浄することにより複合体から分離する。次いで複合体を、粒子を元の液体媒体又は新しい液体媒体に再懸濁することにより遊離させる。次いで粒子上の複合体を固相に結合している第二の結合試薬と接触させ、この第二の結合試薬は、複合体及び粒子が固相の表面に至るように複合体に結合する。サンプル中の被検体の量は、固相に結合した被検体の量を測定することにより測定され、これが今度は固相に結合した粒子の量を測定することにより測定される(粒子を直接測定するか、又は例えば以下に記載される測定アプローチにより粒子中又は粒子上の検出可能な標識を測定することのいずれかにより)。
【0054】
本発明はまた、結合アッセイにおける検出可能な標識として、又は検出可能な標識のためのプラットフォームとして磁気粒子を使用するアッセイ方法を含む。磁気粒子を標識又は標識プラットフォームとして使用する場合は有利に、i)磁気粒子に連結されたアッセイ構成成分のii)固相上に固定された結合試薬への結合についての速度論を加速するために磁場を印加することができる。
【0055】
従って、一実施態様は、
(a)(i)標的被検体を含むサンプルを、(ii)その被検体に結合する第一の結合試薬に連結された磁気粒子と接触させ、そしてそれにより第一の結合試薬に結合した標的被検体を含む複合体を形成すること;
(b)複合体を含む溶液を、固相に結合した第二の結合試薬と接触させること、[ここで第二の結合試薬は複合体に結合する];
(c)磁場を印加して粒子を固相付近に濃縮し、そしてそれにより複合体と第二の結合試薬との間の結合速度を加速すること、及び
(d)固相に結合した被検体の量を測定すること
を含む、結合アッセイを行うための方法である。
【0056】
場合により、このような方法はまた、工程(b)の前に、被検体を事前に濃縮し、かつ/又はサンプルから妨害物質(interferents)を除去するように、本出願の他の箇所に記載されるような収集工程及び遊離工程を含み得る。このような方法において使用される磁気粒子は、好ましくは10nm〜10umの間の直径、より好ましくは50nm〜1umの間の直径である。磁場を印加する工程は、永久磁石又は電磁石の使用により、例えば磁石を第二の結合試薬に対して固相の反対側に配置することにより達成され得る。場合により、粒子を結合表面に沿って移動させ、そして粒子が利用可能な結合部位を問い合わせる(interrogate)ことを可能にするように、磁石又は磁場を固相に沿って平行移動及び/又は回転させる。あるいは、又は磁石/磁場の移動と連動して、磁場を断続的に除去し、そして磁場が除かれている間に、粒子を(例えば混合することにより)再懸濁させ、次いで固相上に再濃縮させる(それにより、粒子が表面上で回転配向を変化させることを可能にし、かつそれらが表面上のさらなる領域を問い合わせることを可能にすることが可能になる)。本方法はまた、未結合の粒子を除去するための洗浄工程を測定工程の前に含み得る。このような洗浄工程の間、磁場を除去して未結合の粒子が洗い流されることを可能にする。あるいは、表面の上の磁場を使用して、未結合の粒子を表面から引き離すことができる。磁気反応加速アプローチはまた、本出願の他の箇所に記載されるように、多重アッセイ方法にも適用され得、例えば固相は、アレイベースの多重測定における使用のための複数の異なる第二の結合試薬のアレイを含み得る。
【0057】
(iv) 収集及び遊離
本明細書で使用される収集は、混合物中の物質の物理的な局在化を指す。収集は、結合反応又は吸着により物質の局在化を含む。例えば、混合物中の物質は、固相上の物質の吸着により、又は固相上の結合試薬への物質の結合により、固相上に収集され得る。しかし収集は固相における局在化に限られ、そしてより大きな流体体積内での位置/体積で物質を局在化させるための当該分野おける技術、例えば光ピンセット(これは単一原子ほどの大きさしかない微小物体を操作するために光を使用し、ここで集光レーザービームからの放射圧は小さい粒子を捕捉することができる)、電場又は磁場、集束フロー、密度勾配遠心分離などの使用による物質の局在化も含み得る。
【0058】
本発明の特定の実施態様は、微粒子又は微粒子に結合した物質の収集を含む。適切な収集方法には、懸濁液からの微粒子の局在化を達成する微粒子ベースのアッセイの技術分野において公知の多くの方法が含まれる。これらとしては、重力下又は遠心分離による沈降、フィルター又は多孔質膜上でのろ過、磁場の印加による(磁化可能粒子の)局在化、巨視的固相への粒子の結合又は吸着、光ピンセットの使用などが挙げられる。
【0059】
本明細書で使用される遊離は、すでに収集された物質の非局在化を指す。化学結合又は特異的若しくは非特異的な結合相互作用により局在化位置に保持された物質は、その物質が周囲の媒体中に拡散するか又は混合し得るように、結合又は相互作用を破壊することにより非局在化することを可能にされ得る。厳しい条件を必要とすることなく切断され得る、使用され得る多くの十分に確立された切断可能な化学リンカーがある。例えば、ジスルフィド含有リンカーはチオール又は他の還元剤を使用して切断され得る共有結合を生じる、cis−ジオール含有リンカーは過ヨウ素酸塩を使用して切断され得、金属−リガンド相互作用(例えばニッケル−ヒスチジン)はpHを変化させるか又は競合リガンドを導入することにより切断され得る。同様に、使用され得る多くの十分に確立された可逆的結合対がある(アフィニティークロマトグラフィーにおいて確認されているものを含む)。例として、多くの抗体−リガンド対の結合は、pHの変化、タンパク質変性剤又はカオトロピック剤の添加、競合リガンドの添加などにより逆行し得る。他の適切な可逆的結合対としては相補核酸配列が挙げられ、そのハイブリダイゼーションは、pH変化、塩濃度の増加、対の融解温度より高く温度を増加させること及び/又は核酸変性剤(例えばホルムアミド)を加えることを含む様々な条件下で逆行し得る。このような可逆的結合対は標的薬剤として使用され得(上記のように)、例えば第一の標的薬剤は、被検体に結合する第一の結合試薬に連結され得、第二の標的薬剤は固相に連結され得、そして第一の標的薬剤及び第二の標的薬剤の結合相互作用は、第一の結合試薬を固相上に可逆的に固定するために使用され得る。
【0060】
遊離はまた、例えば、混合、振盪、ボルテックス、流体の対流、磁力、電力又は光学力の印加による混合などによる物質の物理的非局在化も含む。微粒子又は微粒子に結合した物質が収集された場所で、このような物理的な方法を使用して、粒子を周囲のマトリックス中に再懸濁し得る。遊離は単に以前の収集工程の逆(例えば上記の機構のいずれかによる)であり得、又は収集及び遊離は2つの異なる機構により進行し得る。1つのこのような例において、粒子に結合した物質(例えば被検体又は被検体を含む複合体)の収集は、粒子の物理的な収集により達成され得る。次いで物質は、結合を切断するか、又は粒子上に物質を保持している結合反応を逆行させることにより遊離される。第二のこのような例において、物質(例えば被検体を含む複合体の被検体)は、表面に連結されている結合試薬との結合相互作用により表面上に収集される。次いで物質は、表面に結合試薬を連結している結合又は第二の結合相互作用を破壊することにより遊離される。
【0061】
収集後の遊離は、サンプル中の被検体を濃縮及び/又は精製するために使用され得る。第一の体積で収集し、そして第二のより小さい体積に遊離することにより、サンプル中の被検体は濃縮され得る。濃縮により、その後の測定工程の感度を有意に改善することがしばしば可能である。サンプルから収集し、そして未収集のサンプルの一部又は全てを除去することにより、サンプル中の化膿性のあるアッセイ妨害物質が減少され得るか又は排除され得る。場合により、未結合サンプルの除去は、その後のアッセイ工程のために均一なマトリックスるを得るために、規定された液体試薬(例えばアッセイ緩衝液又は洗浄緩衝液)で収集された物質を洗浄すること、又は規定された液体試薬中に収集された物質を遊離することを含み得る。
【0062】
(iv) 測定方法
本発明の方法は、被検体の量を測定するため、及び特に固相に結合した被検体の量を測定するための様々な方法と共に使用され得る。使用され得る技術としては、限定されないが、細胞培養ベースのアッセイ、結合アッセイ(凝集試験、イムノアッセイ、核酸ハイブリダイゼーションアッセイなどを含む)、酵素アッセイ、比色分析法などのような当該分野で公知の技術が挙げられる。他の適切な技術は当業者には容易に分かるだろう。測定が目視検査により行われることを可能にする測定技術もあれば、測定を行うための機器の使用を必要とし得るか機器の使用から恩恵を受け得るものもある。
【0063】
被検体の量を測定する方法には標識を用いない技術が含まれ、これらとしては、限定されないが、i)表面への被検体の結合後に表面における質量又は屈折率の変化を測定する技術(例えば、表面弾性波技術、表面プラズモン共鳴センサー、偏光解析技術など)、ii)質量分光技術(MALDI、SELDIなどのような表面上の被検体を測定することができる技術を含む)、iii)クロマトグラフィー技術又は電気泳動技術、iv)蛍光技術(これは被検体固有の蛍光に基づくものであり得る)などが挙げられる。
【0064】
被検体の量を測定するための方法はまた、直接的又は間接的に被検体に結合され得る標識の検出により(例えば、被検体の標識された結合パートナーの使用により)被検体を測定する技術を含む。適切な標識としては、直接可視化され得る標識(例えば、視覚的に見られ得る粒子、及び光散乱、光学的吸収、蛍光、化学発光、電気化学発光、放射能、磁場などのような測定可能なシグナルを生成する標識)が挙げられる。使用され得る標識はまた、光散乱、吸収、蛍光などのような測定可能なシグナルを生じる化学的活性を有する酵素又は化学的反応性種を含む。標識としての酵素の使用は、酵素結合イムノソルベント検定法(Enzyme−Linked ImmunoSorbent Assays)(ELISA、酵素イムノアッセイ又はEIAとも呼ばれる)において(in in)十分に確立されている。ELISA形式において、未知の量の抗原を表面に付加し、次いで特異的抗体を表面上に流してそれが抗原に結合できるようにする。この抗体は酵素に連結され、そして最終工程において、酵素が生成物に変換する物質を加え、これが検出可能なシグナルの変化をもたらす。生成物の形成は、例えば、吸光度、蛍光、化学発光、光散乱などのような測定可能な特性における、物質と比較した差異に起因して(due)検出可能であり得る。本発明に従う固相結合方法と共に使用され得る特定の(しかし全てではない)測定方法は、固相から未結合の構成成分(例えば標識)を除去するための洗浄工程から恩恵を受け得るか又はこの洗浄工程を必要とし得る。従って、本発明の方法はこのような洗浄工程を含んでいてもよい。
【0065】
一実施態様において、サンプル中の目的の被検体(単数又は複数)は、電気化学発光ベースのアッセイ形式、例えば電気化学発光(ECL)ベースのイムノアッセイを使用して測定され得る。ECLの高感度、広いダイナミックレンジ及び選択制は、医療診断のために重要な因子である。市販のECL機器は非常に優れた性能を示しており、それらの優れた感度、ダイナミックレンジ、精度及び複雑なサンプルマトリックスの許容を含む理由のために広く使用されるようになった。ECLを放射するように誘導され得る種(ECL活性種)はECL標識として利用されてきた、例えばi)金属が例えば第VIII族の貴金属からのものである有機金属化合物(Ru含有及びOs含有有機金属化合物、例えばトリス−ビピリジル−ルテニウム(RuBpy)部分を含む)、及びii)ルミノール及び関連化合物。ECL過程においてECL標識と共に参加する種は本明細書においてECL共反応物(coreactants)と呼ぶ。一般的に使用される共反応物としては、第三級アミン類(例えば、米国特許第5,846,485号を参照のこと)、シュウ酸塩、及びRuBpyからのECLのための過硫酸塩及びルミノールからのECLのための過酸化水素(例えば、米国特許第5,240,863号を参照のこと)が挙げられる。ECL標識により生じた光は、診断手順におけるレポーターシグナルとして使用され得る(Bard et al.、米国特許第5,238,808号、参照により本明細書に加入される)。例えば、ECL標識は、抗体、核酸プローブ、受容体又はリガンドのような結合剤に共有結合でカップリングされ得;結合相互作用への結合試薬の参加はECL標識から放射されるECLを測定することによりモニタリングされ得る。あるいは、ECL活性化合物からのECLシグナルは、化学的環境の指標になり得る(例えば、米国特許第5,641,623号を参照のこと、これはECL共反応物の形成又は破壊をモニタリングするECLアッセイを記載する)。ECLに関するさらなる背景、ECL標識、ECLアッセイ及びECLアッセイを行うための機器については、米国特許第5,093,268号;同第5,147,806号;同第5,324,457号;同第5,591,581号;同第5,597,910号;同第5,641,623号;同第5,643,713号;同第5,679,519号;同第5,705,402号;同第5,846,485号;同第5,866,434号;同第5,786,141号;同第5,731,147号;同第6,066,448号;同第6,136,268号;同第5,776,672号;同第5,308,754号;同第5,240,863号;同第6,207,369号;同第6,214,552号及び同第5,589,136号、並びに公開PCT第WO 99/63347号;同第WO 00/03233号;同第WO 99/58962号;同第WO 99/32662号;同第WO 99/14599号;同第WO 98/12539号;同第WO 97/36931号及びWO 98/57154号(これらは全て参照により本明細書に加入される)を参照のこと。
【0066】
本発明の捕捉/収集及び遊離の方法は、シングルプレックス(singleplex)形式にも、多数のアッセイ測定が単一サンプルに対して行われる多重形式にも適用され得る。本発明と共に使用され得る多重測定としては、限定されないが、i)多数のセンサーの使用を含む多重測定;ii)表面上の位置に基づいて識別可能な表面(例えばアレイ)上の別個のアッセイドメインを使用する多重測定;iii)寸法、形状、色などのような粒子の特性に基づいて識別可能な粒子上に被覆された試薬の使用を含む多重測定;iv)光学特性(例えば、吸光度又は発光スペクトル)に基づいて識別可能なアッセイシグナルを生じる多重測定、又はv)アッセイシグナルの時間的特性(例えば時間、周波数又はシグナルの位相)に基づく多重測定が挙げられる。
【0067】
(v) アッセイ形式
本発明の一実施態様は、特異的結合アッセイ、例えばイムノアッセイ、免疫クロマトグラフィーアッセイ又は結合試薬を使用する他のアッセイを使用する。本発明の一実施態様に従うイムノアッセイ又は特異的結合アッセイは、当該分野で利用可能な多数の形式を使用し得る。抗体及び/又は特異的結合パートナーは、標識で標識されても、表面上に固定されてもよい。従って一実施態様において、検出方法は、結合アッセイ、例えばイムノアッセイ、受容体−リガンド結合アッセイ又はハイブリダイゼーションアッセイであり、そして検出は、サンプル中の目的の被検体(単数又は複数)と特異的に結合することができる1つ又はそれ以上の検出分子とアッセイ組成物を接触させることにより行われる。
【0068】
一実施態様において、アッセイは直接的結合アッセイ形式を使用する。被検体は被検体の結合パートナーに結合され、これは固相上に固定され得る。結合した被検体は被検体の直接的検出により、又は被検体に結合された標識を通じて(例えば上記の測定により)測定される。
【0069】
一実施態様において、アッセイはサンドイッチ又は競合結合アッセイ形式を使用する。試験片で行われるサンドイッチイムノアッセイの例は、Grubbらへの米国特許第4,168,146号及びTomらへの米国特許第4,366,241号(これらは両方とも参照により本明細書に加入される)に記載される。本発明の方法と共に使用するために適した競合イムノアッセイデバイスの例としては、Deutschらへの米国特許第4,235,601号、Liottaへの米国特許第4,442,204号、及びBuechlerらへの米国特許第5,208,535号(これらは全て参照により本明細書に加入される)において開示されるものが挙げられる。
【0070】
サンドイッチアッセイにおいて、サンプル中の被検体は第一の結合試薬及び第二の標識された結合試薬に結合され、そしてこの「サンドイッチ」複合体の形成が測定される。固相サンドイッチアッセイにおいて、第一の結合試薬は固相に固定されており、次いでサンドイッチ複合体の形成に起因する、固相上の標識された抗体の量が測定される。サンドイッチアッセイにおいて生成されるシグナルは、一般的には被検体の濃度と正の相関を有する。本発明の方法を使用するサンドイッチアッセイの様々な構成を図1〜4に示す。一実施態様において、例えば図1(a)において、アッセイは標的被検体を含むサンプルを、標的被検体に結合する第一の試薬に連結された粒子又は固相と接触させ、それにより第一の結合試薬に結合した標的被検体を含む複合体を形成することを含む。この複合体を、本明細書に記載されるように、収集し、分離し、そして遊離させ、次いでさらなる結合試薬(例えば、第二の結合試薬)と複合体を接触させることによりサンドイッチが形成される。図1(a)及び図1(b)に示されるように、粒子又は固相は、複合体とさらなる結合試薬とを接触させる前に複合体から切断されてもよいし、切断されていないかもしれない。
【0071】
競合アッセイにおいて、試験サンプル中の標識されていない被検体は、標識されているか又は固定された被検体と競合するその能力により測定される。標識された被検体を使用する競合アッセイの例において、サンプル中の標識されていない被検体は、結合部位を塞ぐことにより、標識された被検体が結合試薬に結合する能力を遮断する。従って、競合アッセイにおいて、生成されるシグナルはサンプル中の被検体の濃度と逆相関を有する。図6(a)及び6(b)は、2段階競合形式での本発明の方法の使用を示す。図1(a)のように、サンプル中の目的の被検体は事前に濃縮されている。固相に結合した標識された被検体を事前に濃縮された被検体複合体と共にインキュベートする。図6(a)及び6(b)は本発明の方法が競合アッセイ形式においてどのように使用され得るかを説明するために役立つ。当業者は、競合イムノアッセイの代替の構成が、過度の実験を行うことなく本発明の方法を使用して達成され得るということを理解するだろう。
【0072】
(vi) 特定の実施態様
一実施態様において、標的被検体Aを含み、かつ図1(a)に示されるように様々なサンプル夾雑物も含有し得るサンプルを、標的被検体に結合する第一の結合試薬に連結された粒子と接触させ、そしてそれにより第一の結合試薬に結合した標的被検体を含む複合体を形成することを含む、結合アッセイを行うための方法が提供される。サンプルを粒子と混合して複合体が形成されれば、その複合体を収集する。この収集工程は、例えば粒子の遠心分離による表面における複合体の蓄積、粒子が重力下で上昇又は沈降することを可能にすること、ろ過媒体上で粒子をろ過すること、粒子を磁気により収集すること(磁気粒子の場合)などを含み得る。あるいは、収集工程は、例えば光ピンセット又は集束フローの使用により規定された体積に粒子を保持することによる、サンプル内のこの規定された体積内での複合体の蓄積を含み得る。次いで場合により、サンプルの未結合の構成成分を、例えば未収集構成成分の全て若しくは一部を除去することにより、かつ/又は収集した複合体をさらなるアッセイ媒体若しくは洗浄緩衝液で洗浄することにより、複合体から分離する。その後、複合体を遊離させ、例えばアッセイ媒体中に再懸濁し、そして固相に結合した第二の結合試薬に複合体を接触させ、ここで第二の結合試薬は複合体に結合する。被検体の量を、固相に結合したアッセイ構成成分に連結された検出可能な標識の量を測定することにより検出する。検出可能な標識は、第一の結合試薬、任意の第三の結合試薬(このアッセイ形式において使用される場合)、粒子又は複合体内に含まれるか若しくは複合体に結合したさらなるアッセイ構成成分に連結され得る。
【0073】
上記の収集工程及び遊離工程を行うため、並びに標識された試薬を準備するための様々なアプローチが提供される。図1(a)は、以下の工程を含む方法を示す:(i)粒子に連結された第一の結合試薬が被検体に結合して複合体を形成し、(ii及びiii)、複合体を収集し、そして粒子の収集及び再懸濁により遊離し、この工程の間に被検体は濃縮され得、かつ/又はサンプル中の夾雑物から分離され得る、(iv)複合体は固相上の第二の結合試薬に結合し、そして(v)複合体中の被検体と結合する標識された第三の結合試薬と複合体を接触させて、それが検出され得るようにする。図1(b)は、単に粒子を再懸濁する代わりに粒子から第一の結合試薬を切断することにより複合体が工程(iii)において遊離されることを除いて、図1(a)における方法と同様の方法を示す。図1(c)及び1(d)は、標識が粒子に結合されている(又は粒子内に組み込まれている)(図1(c))か、又は第一の結合試薬に結合されており(図1(d))、かつ複合体を標識された第三の結合試薬と接触させた工程が省略されていること(that that)を除いて、図1(a)における方法と同様の方法を示す。あるいは、粒子が(例えば粒子の直接的目視観測により)直接的に測定される場合、標識は省略され得る。図1(e)は、標識が第一の結合試薬に結合され、かつ複合体を標識された第三の結合試薬と接触させる工程が省略されることを除いて、図1(b)における方法と同様の方法を示す。
【0074】
測定工程は、サンプル中の検出可能な標識の存在、例えば光学的吸収、蛍光、リン光、化学発光、光散乱又は磁性を測定するいずれかの適切な方法(測定方法の項を参照のこと)を含み得る。一実施態様において、検出可能な標識は電気化学発光標識であり、測定工程はECLシグナルを測定すること、及びそのシグナルをサンプル中の被検体の量と関連付けることを含む。従って、測定工程は、複合体を電極と接触させること、及び電圧波形を電極に印加してECLを生成させることをさらに含み得る。
【0075】
図1(a)〜1(e)に記載される方法は、サンプル中の多数の被検体についての多重測定に適用され得る。このような方法において、第一、第二及び第三の結合試薬(存在する場合)は、多数の被検体に結合するように選択され得(例えば、共通のポリ−dAテール配列を介してサンプル中の多数のmRNAを捕捉するための結合試薬としてのポリ−dTの使用)、またあるいは、これらの方法は、多数の被検体に結合するための複数の異なる第一の結合試薬、第二の結合試薬及び/又は第三の結合試薬を使用し得る。異なる被検体の独立した測定を可能にするために、このような多重方法は、i)複数の異なる第一の結合試薬、ii)複数の第二の結合試薬、及びiii)複数の第三の結合試薬からなる群の少なくとも1つを使用する((i)、(ii)又は(iii)内の異なる試薬は、他の標的被検体と比較して標的被検体に優先的に結合するそれらの能力について選択される)。複数の第一の試薬が使用される場合、個々の粒子は異なる第一の結合試薬の混合物に結合され得るか、またあるいは、粒子は個々の粒子が第一の結合試薬のうち1種のみに結合されるように(例えば、個々の粒子が他の標的被検体と比較して標的被検体のうちの1つの優先的に結合するように)製造され得る。
【0076】
多重方法は、異なる被検体を独立して測定するための様々なアプローチを使用し得る。一実施態様において、標的被検体に対して異なる優先傾向を有する複数の標識された結合試薬が使用され得る(例えば、図1(a)及び1(b)におけるような複数の異なる第三の試薬、並びに図1(e)におけるような複数の異なる標識された第一の結合試薬又は図1(c)及び1(d)におけるような複数の異なる標識された第一の結合試薬−粒子接合体)。異なる標識された試薬上の標識(またあるいは、粒子接合体における粒子)は、異なる標識された試薬、及び従って異なる標的被検体が独立して測定され得るように、識別可能なアッセイシグナルを生じるように選択される。別の実施態様において、標的被検体に対する異なる優先傾向を有する複数の第二の結合試薬が使用され得る。異なる第二の結合試薬は、異なる結合ドメイン上で生成されるアッセイシグナル及び従って異なる被検体が、(例えば、電極アレイ上の結合ドメインを独立してアドレス指定することにより、又は発光アッセイにおいて異なる結合ドメインから放射される光を独立して測定することにより)独立して測定され得るように、(例えば結合アレイにおけるような)1つ又はそれ以上の固相上の異なる別個の結合ドメインにパターン形成され得る。あるいは、異なる第二の結合試薬は、異なる被検体を独立して測定することを可能にするために異なるコード化ビーズ(固相の項に記載される)にカップリングされ得る。
【0077】
代替の実施態様において、結合アッセイを行う方法が図2(a)〜2(b)に示されるように提供され、この方法は、標的被検体を含むサンプルを、標的被検体に結合しそして第一の結合試薬に結合した標的被検体を含む複合体を形成する第一の結合試薬に連結された第一の固相Sと接触させることを含む。サンプルが第一の固相に接触されれば、サンプルの未結合の構成成分が複合体から分離され、複合体は固相からアッセイ媒体中に遊離され、そして第一の固相は第一の結合試薬から除去される。その後、遊離された複合体を、複合体に結合する第二の結合試薬を含む第二の固相と接触させ、そして第二の固相に結合した被検体の量を定量する。検出可能な標識は、第一の結合試薬、任意の第三の結合試薬(このアッセイ形式において使用される場合)、粒子又は複合体内に含まれるか若しくは複合体に結合したさらなるアッセイ構成成分に連結され得る。図2(a)において、標識は第三の結合試薬に結合され(そしてこの方法は複合体を第三の結合試薬と接触させる工程を含む)、一方図2(b)において、標識は第一の結合試薬に結合される。
【0078】
図1について記載されたように、図2において記載される方法はまた、例えば、i)複数の異なる第一の結合試薬、ii)複数の第二の結合試薬、及びiii)複数の第三の結合試薬からなる群の少なくとも1つ((i)、(ii)又は(iii)内の異なる試薬は、他の標的被検体と比較して標的被検体に優先的に結合するそれらの能力について選択される)を使用することにより、多重測定にも拡張され得る。
【0079】
本発明はまた、複数の被検体についての多重結合アッセイを行う方法を提供し、この方法は、(i)サンプルを、(ii)被検体に結合する1つ又はそれ以上の第一の結合試薬に連結された1つ又はそれ以上の第一の固相と接触させて、第一の結合試薬に結合した被検体を含む複合体を形成することを含む。サンプルの未結合構成成分は、場合により、複合体から分離される。複合体を遊離させ、次いで複合体に結合する第二の結合試薬を含む複数の結合ドメインと接触させ、ここで各結合ドメインは、二次標的被検体を含む複合体に結合する第二の結合試薬を含む。その後、結合ドメインに結合した被検体の量を測定する。
【0080】
別の実施態様によれば、多重アッセイは、サンプルの少なくとも一部を、複数の結合ドメインを含む1つ又はそれ以上の結合表面と接触させ、1つ又はそれ以上の被検体をドメイン上に固定し、そしてドメインに固定された被検体を測定する行動を含み得る。特定の実施態様において、結合ドメインの少なくとも2つは目的の被検体に対するそれらの特異性が異なる。このような実施態様の一例において、結合ドメインは、1つ又はそれ以上の表面上に、目的の被検体に結合する結合試薬の別個のドメインを固定することにより製造される。場合により、結合試薬のアレイを含む結合表面にサンプルを曝露する。場合により、表面(単数又は複数)は、一部において、サンプルを保持するか又はそれをサンプルが通過する、容器の1つ又はそれ以上の境界(例えば、フローセル、ウェル、キュベットなど)を規定し得る。この方法はまた、異なる結合ドメインにおける被検体の量の指標であるアッセイシグナルを生成することを含み得る(例えば、光学的吸収の変化、蛍光の変化、化学発光又は電気化学発光の発生、反射率、屈折率又は光散乱の変化、ドメインからの検出可能な標識の蓄積又は遊離、酸化又は還元又は酸化還元種、電流又は電位、磁場の変化など)。
【0081】
本発明の特定の実施態様のアッセイは、標的被検体をアッセイ媒体中の結合試薬と連結するために標的薬剤を使用し得る。このようなアッセイ形式を図3(a)〜3(e)及び図4(a)〜4(b)に示し、これらは固相/粒子上の第一の結合試薬への被検体の結合が2つの工程を経て起こるということを除いて図1(a)〜1(e)及び図2(a)〜2(b)と類似している:(i(a))第一の標的薬剤に連結された第一の結合試薬を、第一の標的薬剤に結合する第二の標的薬剤に連結された粒子(又は他の固相)に対して接触させる工程(このようにして、第一の結合試薬を粒子又は他の固相へ結合する)、及び(i(b))第一の結合試薬に結合する標的被検体を含むサンプルと第一の結合試薬を接触させる工程。工程i(a)は工程i(b)の前に起こり得(図に示されるとおり)、又はこれら2つの工程は逆の順序で、又は同時に起こってもよい。工程i(a)及びi(b)は両方とも、アッセイの実行中に行われてもよく、またあるいは、第一の結合試薬は、標的薬剤を介して固相に事前に結合されてユーザーに供給され得(例えば標的薬剤が製造中に事前に結合された場合)、この場合には工程i(a)は省略され得る。
【0082】
従って一実施態様において、本方法は、標的被検体を含むサンプルを、標的被検体に結合する第一の結合試薬に連結された粒子と接触させることを含み、ここで第一の結合試薬は第一の標的薬剤に連結されており、そして粒子は第二の標的薬剤に連結されており、そして第一の結合試薬と粒子とは第一の標的薬剤と第二の標的薬剤との間の結合反応を介して連結されて、第一の結合試薬に結合した標的被検体を含む複合体を形成する(例えば図3(a)を参照のこと)。次いで複合体を収集し、サンプル中の未結合構成成分を複合体から分離する。複合体を遊離させ、そして遊離された複合体を、固相に結合した第二の結合試薬と接触させ、ここで第二の結合試薬は複合体に結合する。固相に結合した被検体の量を測定する。上で記載され、かつ図1(a)〜1(e)に示される実施態様におけるように、検出可能な標識は、媒体中の様々なアッセイ構成成分に、例えば図3(a)〜3(b)のように第三の結合試薬に、図3(c)のように粒子に、又は図3(d)〜3(e)のように第一の結合試薬に結合され得る。さらに、図3(b)及び3(d)に示されるように、複合体は場合により検出工程の前に粒子から切断される。
【0083】
一実施態様において、アッセイは、(a)標的被検体を含むサンプルを、標的被検体に結合する第一の結合試薬に連結された第一の固相と接触させることを含み得、ここで第一の結合試薬は第一の標的薬剤に連結されており、そして第一の固相は第二の標的薬剤に連結されており、そして第一の結合試薬と第一の固相とは、第一の標的薬剤と第二の標的薬剤との間の結合反応を介して連結されて、第一の結合試薬に結合した標的被検体を含む複合体を形成する(例えば、図4(a)〜4(b)を参照のこと)。次いで複合体を収集し、そしてサンプル中の未結合の構成成分を複合体から分離する。例えば再可溶化して複合体を遊離させ、そして第一の固相を除去する。遊離された複合体を、第二の固相に結合した第二の結合試薬と接触させ、ここで第二の結合試薬は複合体に結合する。第二の固相に結合した被検体の量を測定する。検出可能な標識は、いずれかの適切なアッセイ構成成分、例えば図4(b)のように第一の結合試薬、又は図4(a)のように第三の結合試薬に結合され得る。
【0084】
本明細書に記載される様々なアッセイ形式における遊離工程は、粒子から結合試薬を切断することを含み得る(例えば図1(b)に示されるように)。これはいずれかの適切な方法により、例えば温度上昇、pH変化、溶液のイオン強度の変更、競合及びそれらの組み合わせに複合体を曝すことにより達成され得る。
【0085】
標的薬剤がアッセイ形式で使用される場合、遊離する工程は、例えば上で考察されたように、温度上昇、pH変化、溶液のイオン強度の変更、競合、及びそれらの組み合わせに複合体を曝すことにより、第一の標的薬剤と第二の標的薬剤とを解離させることを含む。
【0086】
本明細書において記載される様々なアッセイ形式における測定する工程は、サンプル中の検出可能な標識の存在、例えば光学的吸収、蛍光、リン光、化学発光、光散乱又は磁性を測定するいずれかの適切な方法を含み得る。一実施態様において、検出可能な標識は電気化学発光標識であり、そして測定する工程は、ECLシグナルを測定すること、そのシグナルをサンプル中の被検体の量と関連付けることを含む。従って、測定する工程は、複合体を電極と接触させること、及び電圧波形を電極に印加してECLを発生させることをさらに含み得る。
【0087】
図1及び2の説明と類似して、図3及び4における方法は、例えば、i)複数の異なる第一の結合試薬、ii)複数の第二の結合試薬、及びiii)複数の第三の結合試薬からなる群の少なくとも1つ((i)、(ii)又は(iii)内の異なる試薬は、他の標的被検体と比較して標的被検体に優先的に結合するそれらの能力について選択される)を使用することにより、多重測定にも拡張され得る。このような多重方法において、複数の異なる第一の結合試薬を対応する粒子又は他の固相に連結させるために共通の標的化試薬対が使用され得る。あるいは、それぞれの異なる第一の結合試薬に対して特異な標的化試薬対を使用してもよい(例えば、異なる組の相補オリゴヌクレオチドが異なる第一の結合試薬の各々を標的とするために使用され得る)。このようなアプローチは、異なる第一の結合試薬が異なる識別可能な粒子(例えば識別可能な標識を有している粒子)を標的とするようにするため、又はii)各々が異なる第一の標的薬剤に対して優先的に結合する(従って複数の被検体のうちの1つを含む複合体に優先的に結合する)複数の異なる第二の結合試薬の使用により多重化を可能にするために使用され得る。
【実施例】
【0088】
実施例1−目的の被検体を濃縮しそして検出するための標識された磁気粒子の二重使用
図5に示されるように、磁気粒子を目的の被検体に対する抗体及び多数(例えば100より多く)のECL標識で被覆した。ECL標識を抗体に結合させることにより(粒子上に抗体を被覆する前又は後)、非常に多数の標識が容易に達成され得る。直径が60nmしかない粒子はおよそ160の抗体分子を支持することができ、抗体あたり約50nm2の表面積が想定できる。従って、抗体1つにつき標識を1つだけ結合させることにより、粒子あたり100の標識より高い標識化率が60nmの粒子で達成されることが可能になる。粒子あたり1000標識より高い標識化率は、抗体あたりの標識数を増加させることにより、かつ/又は粒子寸法を増加させることにより達成される。
【0089】
1mL又はそれ以上の体積のサンプルを容器中で粒子と混合し、そしてこの混合物をインキュベートして抗体がそれらのそれぞれの標的に結合することを可能にした後、磁気粒子が容器の表面上に集まるように磁場を印加した(様々な市販の磁気チューブホルダー又はプローブがこの工程を行うために利用可能である)。複合体を緩衝化食塩水で洗浄してサンプルの未結合の構成成分を除去した。磁場を除去し、次いで粒子を適切なアッセイ希釈剤100uL中に再懸濁させ、このようにして元のサンプルと比較して10倍又はそれ以上の濃度の増加を得た。粒子−被検体複合体を、目的の被検体に対して特異的な抗体結合試薬のアレイを含む結合表面を含むアッセイプレート(例えば、MULTI−ARRAY(R)96ウェルアッセイプレート、Meso Scale Diagnostics,LLC,Gaithersburg,MD)に移した。アレイに結合する複合体をSECTOR(R) Imager機器(Meso Scale Diagnostics,LLC)でECLにより測定した。磁気収集工程は、被検体を少ない体積に事前に濃縮し、そしてサンプル中の可能性のある妨害物質を除去することを可能にすることによりアッセイ性能の改善をもたらす。
【0090】
実施例2−オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション反応により磁気粒子にカップリングされた抗体を使用するアッセイ
磁気粒子をオリゴヌクレオチド及び多数の(100より多い)ECL標識で被覆した。目的の被検体に対する抗体及び粒子上のオリゴヌクレオチドに対して相補的なオリゴヌクレオチドを含む接合体を形成した。抗体接合体及び粒子を、相補オリゴヌクレオチド配列にハイブリダイズするために十分な条件(例えば、本明細書において上に記載されるような、適切な温度、イオン強度及び変性条件)に曝し、そしてそれにより粒子上の抗体を被覆した。次いでこれらの粒子を使用して、実施例1に記載されるように目的の被検体についてのアッセイを行った。
【0091】
実施例3−オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション反応により磁気粒子にカップリングされた抗体の遊離の実証
磁気ビーズ(Dynalbeads(R) MyOneTM−ストレプトアビジンC1ビーズ、Invitrogen Corporation)をビオチン化オリゴヌクレオチドで以下の手順により被覆した:ビーズ(3mg)をハイブリダイゼーション緩衝液(20mM Tris、1mM EDTA、250mM NaCl、0.01% Triton−X、pH=8及び0.1% BSA)中60℃にて3回洗浄した。次いでこれらのビーズを室温にて750pモルの19量体ビオチン化オリゴヌクレオチド(オリゴ1、Tm=40℃)でハイブリダイゼーション緩衝液1mL中で穏やかに混合しながら1時間被覆した。被覆したビーズをハイブリダイゼーション緩衝液で5回60℃にて洗浄し、次いでハイブリダイゼーション緩衝液に最終濃度10ug/mLで再懸濁した。
【0092】
次いで磁気ビーズを、標識したマウス免疫グロブリンで以下の手順により被覆した:マウス免疫グロブリン(mIgG)をSulfo−TAGTM ECL標識(Meso Scale Diagnostics,LLC.)で製造者の指示に従って標識した。タンパク質もまた末端チオール基を有するオリゴヌクレオチド(オリゴ2、オリゴ1の補体)で二官能性カップリング試薬(スルホスクシンイミジル 4−(N−マレイミドメチル)−1−シクロヘキサンカルボキシレート(「SMCC」))及び従来のカップリングプロトコルを使用して標識した、例えば、タンパク質をSMCC中のNHS−エステルと反応させてタンパク質を標識し、そして得られた複合体を、SMCC中のマレイミド基と反応するチオール含有(thiolated)オリゴヌクレオチドと反応させる。次いで標識されたmIgG−オリゴ結合体(0.1pmol)を、ハイブリダイゼーション緩衝液中1時間、室温にてオリゴ被覆磁気ビーズ(ビーズ500ug)と混合し、相補オリゴヌクレオチド配列とハイブリダイズさせ、それによりmIgGをビーズ上に固定した。得られた抗体被覆ビーズを洗浄し、そしてハイブリダイゼーション緩衝液中に再懸濁させた。
【0093】
懸濁液を室温で1時間(競合剤としての遊離オリゴ2の存在下または不在下で)インキュベートすること、及び懸濁液を60℃で10分間(競合剤としての遊離オリゴ2の存在下または不在下で)インキュベートすることを含めて、ビーズを異なる条件下でインキュベートした。次いでビーズを磁気収集し、上清をECLアッセイにより分析して、ビーズから遊離された標識されたmIgGの量を測定した。標識されたmIgGを測定するために、電極がヤギ抗マウス抗体(MULTI−ARRAY GAM Plate,Meso Scale Diagnostics,LLC.)で被覆されているMULTI−ARRAYプレートのウェルに上清を移した。このプレートを振盪しながらインキュベートし、その間に溶液中の標識されたmIgGは固定されたヤギ抗マウス抗体に結合した。ウェルをPBSで洗浄し、Read Buffer T(Meso Scale Diagnostics)150uLで満たし、そしてSECTOR Imager機器で分析した。
【0094】
表1は、競合するオリゴヌクレオチドが存在しない場合、mIgGのビーズへの連結は室温で安定していたということを示す。オリゴ1−オリゴ2対の融解温度より高い温度に短時間曝露することによりmIgGをビーズから効率的に遊離させることができた。遊離の効率は、競合剤として遊離オリゴ2を加えることによりさらに増強され得る。
【0095】
【表1】
【0096】
実施例4−磁気粒子の収集による被検体の捕捉及びオリゴヌクレオチド対を含む連結の変性による遊離を含むアッセイ
磁気ビーズ(Dynalbeads(R) MyOneTM−ストレプトアビジンC1ビーズ、Invitrogen Corporation)を、実施例3に記載されるようにビオチン化オリゴヌクレオチドで被覆した。次いで磁気ビーズを、i)Sulfo−TAG及びオリゴ1で標識された抗体並びにii)実施例3の被覆手順を使用してヒトTNF−アルファ及びIL−5に対する抗体で被覆した。
【0097】
事前濃縮を用いるアッセイ手順。 ヒトTNF−アルファ又はIL−5を含有するサンプル(サンプル1mL)を抗体で被覆したビーズ(上記のように製造した)200ngと混合し、そして1時間室温でインキュベートした。ビーズを磁気により収集し、そしてハイブリダイゼーション緩衝液で洗浄した。ビーズ上の抗体(インキュベーションの間に形成された標識された抗体−被検体複合体を含む)を、高温(60℃)で、すなわち抗体をビーズに連結しているオリゴヌクレオチド対を変性することにより、ハイブリダイゼーション緩衝液(約10mM塩)の1:20希釈100uL中に遊離させた。得られた溶液を、その各ウェルが抗TNF−アルファスポット及び抗−IL−5スポットを含む捕捉抗体のアレイを含むMULTI−ARRAY 96ウェルプレートのウェルに移した。標識された抗体−被検体複合体が適切な捕捉抗体スポットに結合することを可能にするために、このプレートを振盪しながら1時間室温でインキュベートした。次いでウェルをPBSで3回洗浄し、次いでRead Buffer T(Meso Scale Diagnostics)125uLで満たし、SECTOR Imager機器で読み取った。この機器は抗体アレイ中の各アレイ要素(又は「スポット」)からECL強度を測定し記録する。
【0098】
事前濃縮を用いない従来のイムノアッセイプロトコル。 ヒトTNF−アルファ又はIL−5を含有するサンプル(30uL)を、標識した(Sulfo−TAG)検出抗体を1ug/mLの濃度で含有する溶液20uLと混合した。得られた溶液を1時間、抗TNF−アルファ及び抗IL−5スポットを有するMULTI−ARRAYプレートのウェル中でインキュベートした。ウェルを洗浄し、Read Buffer Tで満たし、そしてSECTOR Imager機器で収集及び遊離を用いるプロトコルについて記載したように分析した。
【0099】
結果 表2に示された結果は、収集及び遊離を用いるプロトコルが、被検体の存在しない場合のバックグラウンドシグナルのいずれの実質的な変化も伴わず、従来のプロトコルを使用して得られるよりも実質的に高い特異的アッセイシグナル(被検体の存在下でのシグナル−被検体が存在しない場合のシグナル)をTNF−アルファ及びIL−5の両方について生じたということを示す。10pg/mLサンプルについての特異的シグナルの増強は、TNF−アルファについて5倍より高く、そしてIL−5については10倍より高かった。
【0100】
【表2】
【0101】
本発明は、本明細書に記載される特定の実施態様による範囲に限定されるべきではない。実際に、本明細書に記載されるものに加えて本方法の様々な改変が、前述の記載及び添付の図面から当業者に明らかとなるだろう。このような改変は、特許請求の範囲内であることを意図される。様々な刊行物が本明細書において引用されており、それらの開示は、参照によりそれらの全体として加入される。
図1a
図1b
図1c
図1d
図1e
図2a
図2b
図3a
図3b
図3c
図3d
図3e
図4a
図4b
図5
図6a
図6b
図7
図8