(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5943931
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】折り畳み機能を有する薬用モジュール
(51)【国際特許分類】
A61M 5/24 20060101AFI20160621BHJP
【FI】
A61M5/24 510
A61M5/24 520
A61M5/24 530
A61M5/24 542
【請求項の数】12
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-537100(P2013-537100)
(86)(22)【出願日】2011年10月31日
(65)【公表番号】特表2013-542792(P2013-542792A)
(43)【公表日】2013年11月28日
(86)【国際出願番号】EP2011069102
(87)【国際公開番号】WO2012059455
(87)【国際公開日】20120510
【審査請求日】2014年10月20日
(31)【優先権主張番号】61/432,695
(32)【優先日】2011年1月14日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】10189789.0
(32)【優先日】2010年11月3日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ・アレクサンダー・デイヴィース
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・ウィンペニー
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・トマス・デ ソースマレズ・リンテル
【審査官】
藤田 和英
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−238324(JP,A)
【文献】
特表2008−535636(JP,A)
【文献】
特開2004−041568(JP,A)
【文献】
米国特許第06315761(US,B1)
【文献】
実公昭43−031107(JP,Y1)
【文献】
米国特許第06723074(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/00 − 5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の薬剤(301)を保持する薬物リザーバを有する薬物送達デバイスに取り付け可能な薬用モジュール(200)であって、薬用モジュール(200)は:
上部保持キャップ(208);
下部保持キャップ(210)、ここで上部保持キャップ(208)は下部保持キャップ(210)に対して軸方向に可動であり;
薬物送達デバイスへのモジュールの取り付けのために下部保持キャップ(210)に設けられた取り付け手段(218);
上部係合針(204);
下部注射針(206)、ここで注射針(206)は係合針(204)と流体連通し、ここで注射針(206)及び係合針(204)の少なくとも1つは下部保持キヤップ(210)に固定され;及び
第2の薬剤(216)を保持するリザーバ(212、220、601)であって、ここでリザーバ(212、220、601)は上部保持キヤップ(208)に操作可能に連結され、そして上記係合針(204)から上方に位置するもの;
を含んでなり、
ここで薬用モジュール(200)の薬物送達デバイスへの取り付け中、
(i)上部及び下部保持キャップ(208、210)間の第1の所定量の軸方向変位のところで、係合針(204)がリザーバ(212、220、601)の下部端(231)を穿孔し、それによって係合針(204)とリザーバ(212、220、601)間の流体連通が確立されるように、上部保持キャップ(208)は、下部保持キャップ(210)及び係合針(204)に向って相対的に移動するように構成され、
(ii)上部及び下部保持キャップ(208、210)間の第2の所定量の軸方向変位のところで、上部及び下部保持キャップ(208、210)間のそれに続く軸方向変位が上部保持キャップ(208)に抗してリザーバ(212、220、601)を圧縮するように、下部保持キャップ(210)によって供された突出部(228)は、リザーバ(212、220、601)の下部端(231)と接触し、そして
(iii)リザーバ(212、220、601)から第2の薬剤(216)が係合針(204)に移送され、係合針(204)が第2の薬剤(216)でプライミングされる、
上記の薬用モジュール(200)。
【請求項2】
リザーバが第2の薬剤(216)を保持する折り畳み機能(212)を含む請求項1に記載の薬用モジュールであって、ここで折り畳み機能(212)は上部保持キヤップ(208)に操作可能に連結され、そして工程(ii)において折り畳み機能(212)が圧縮される、
上記薬用モジュール。
【請求項3】
取り付け中、上部及び下部保持キャップ(208;210)間の第1の所定量の軸方向変位のところで、係合針(204)は折り畳み機能(212)の下部端(231)を穿孔し、それにより少なくとも部分的に係合針(204)をプライミングする、請求項2に記載の薬用モジュール(200)。
【請求項4】
取り付け中、上部及び下部保持機能(208;210)間の第2の所定量の軸方向変位のところで、上部及び下部保持キャップ(208;210)間のそれに続く軸方向変位が上部保持キヤップ(208)に抗して折り畳み機能(212)を圧縮するように、突出部(228)は折り畳み機能(212)の下部端(231)と接触する、請求項3に記載の薬用モジュール(200)。
【請求項5】
上部及び下部保持キャップ(208;210)間の第3の所定量の軸方向変位のところで、係合針(204)及び注射針(206)がプライミングされるとき、係合針(204)の近位端(240)は折り畳み機能(212)の上部端(234)を穿孔する、請求項4に記載の薬用モジュール(200)。
【請求項6】
投薬中及びプライミング後に、実質的にすべての第2の薬剤(216)は第1の薬剤(301)が投薬される前に投薬される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の薬用モジュール(200)。
【請求項7】
更にロッキング機構(401、402)を含んでなる、請求項2〜5のいずれか1項に記載の薬用モジュール(200)であって:ここでロッキング機構(401、402)は折り畳み機能(212)が投薬前位置に拡大するのを阻止する、
上記薬用モジュール。
【請求項8】
リザーバが、上部保持キャップ(208)中のキャビティ(220)と又はバイアル(601)とすべり流体密封係合しているピストン(501、603)を含む請求項1に記載の薬用モジュールであって、ここで第2の薬剤(216)はキャビティ(220)又はバイアル(601)中の容量でピストン(501、603)によって保持され、そして
ここで、薬用モジュールが薬物送達デバイスに取り付けられるとき、係合針(204)がピストン(501、603)を穿孔し、そしてピストン(501、603)がキャビティ(220)又はバイアル(601)の容量を減少させるように移動する、
上記薬用モジュール。
【請求項9】
取り付け中、上部及び下部保持キヤップ(208;210)間の第1の所定量の軸方向変位のところで、係合針(204)はピストン(501、603)を穿孔し、それにより(i)係合針(204)とキャビティ(220)間に流体連通を確立し、そして(ii)係合針(204)を少なくとも部分的にプライミングする、請求項8に記載の薬用モジュール(200)。
【請求項10】
取り付け中、上部及び下部保持キヤップ(208;210)間の第2の所定量の軸方向変位のところで、上部及び下部保持キヤップ(208;210)間のそれに続く軸方向変
位がピストン(501、603)を強制して近位方向に軸方向に動かすように、突出部(228)がピストン(501、603)と接触する、請求項9に記載の薬用モジュール(200)。
【請求項11】
上部及び下部保持キヤップ(208;210)間の第3の所定量の軸方向変位のところで、係合針(204)及び注射針(206)がプライミングされるとき、係合針(204)は上部保持キヤップ(208)のセプタム(502、602)を穿孔する、請求項10に記載の薬用モジュール(200)。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の薬用モジュール(200)をプライミングする方法であって:
薬用モジュール(200)を備える工程;
薬用モジュール(200)を薬物送達デバイスに取り付ける工程;
薬物送達デバイスへの薬用モジュール(200)の取り付け中、係合針(204)がリザーバ(212)を穿孔して係合針(204)とリザーバ(212)間に流体連通を確立する工程;及び
薬物送達デバイスへの薬用モジュール(200)の取り付け中リザーバ(212)を強制して圧縮させ、ここで圧縮中、リザーバ(212)からの薬剤が係合針(204)及び注射針(206)内に移され;そして薬用モジュール(200)の係合針(204)及び注射針(206)が二次薬剤(216)でプライミングされる工程;
を含んでなる、上記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、少なくとも2つの薬物作用物質(drug agent)を、単回用量設定機構及び単回投薬インターフェースだけを有するデバイスを用いて、別々のリザーバから送達する医療デバイス及び方法に関する。使用者によって開始される単回送達手順は、第2の薬物作用物質の非使用者設定可能用量、及び第1の薬物作用物質の可変設定用量を患者に送達するようにさせる。薬物作用物質は、2つ又はそれ以上のリザーバ、容器又は包装にて利用可能であり得て、各々は独立の(単一薬物化合物)又はプレミックスされた(共製剤化多剤薬物化合物(co-formulated multiple drug compounds))薬物作用物質を含む。具体的に、本出願は、一次薬物送達デバイスへ薬用モジュールの取り付け中に薬用モジュールをプライミングするための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特定の疾患は1つ又はそれ以上の異なる薬剤を用いる処置を必要とする。幾つかの薬物化合物は、最適治療用量を送達するために、互いに特定の関連において送達する必要がある。本提案デバイス及び方法は、併用療法が望ましいが、限定されるものではないが、安定性、不十分な(compromised)治療効果及び毒性などの理由で単一製剤では可能でない場合に特に有利である。
【0003】
例えば、ある場合には、長時間作用型インスリンで、及びプログルカゴン遺伝子の転写産物から由来するグルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)で糖尿病患者を処置することは有利であり得る。GLP−1は体内に見出され、消化管ホルモンとして腸管L細胞により分泌される。GLP−1は、それ(及びそのアナログ)を糖尿病の有力な処置法として広範囲な検討の対象とする幾つかの生理学的性質を有する。
【0004】
2つの活性薬剤又は作用物質(agents)を同時に送達するとき、多くの潜在的な問題がある。2つの活性剤(active agents)は、製剤の長期、貯蔵期間保存中に互いに相互作用し得る。従って、活性成分を別々に保存すること、及び送達、例えば注射、無針注射、ポンプ、又は吸入の時点でそれらを組み合わせることは有利である。しかしながら、2つの作用物質を組み合わせる方法は、使用者が確実に反復してそして安全に実施できるように単純かつ簡便である必要がある。
【0005】
更なる問題は、併用療法を構成する各活性作用物質の量及び/又は割合は、各使用者で又はそれらの療法の異なる段階で変える必要があり得ることである。例えば1つ又はそれ以上の活性剤は、患者を「維持」用量まで徐々に導くのに調節期間(titration period)を必要とし得る。更なる例は、1つの活性剤が無調整固定用量を必要とする一方で、他の活性剤は患者の症状又は身体状況に応じて変わる場合である。この問題は、これらのプレミックス製剤が、医療関係者又は使用者により変動することができない活性成分の固定比率を有する可能性があることから、複数の活性作用物質のプレミックス製剤は好適ではない可能性があることを意味する。
【0006】
更なる問題は、多くの使用者が1つの薬物送達システムより多く使用しなければならず、又は所要用量組み合わせの必要な正確な計算をする必要があるのに対処することができないために、多剤化合物療法が必要な場合に生じる。これは特に器用さ又は計算困難な使用者に具体的に当てはまる。更に、ある状況では、薬剤を投薬する前にデバイス及び/又はニードルカニューレのプライミング手順を実施することも必要となる。プライミング手順は、薬剤を投薬する前にデバイス及び/又はニードルカニューレから空気を除くのに使用され得る。尚更に、単回注射工程において2つの薬剤のこの送達が望まれる幾つかの薬物組み合わせでは、2つの薬剤が実質的に逐次的に送達されることはその上望ましいといえる(即ち、混合の機会が最小又はないように、順々に)。更なる問題は投薬後の薬物送達デバイス中に残り得る目減り容量に因って起こり得る。例えば、大きな目減り容量は大容量の「無駄な薬剤」をもたらし得る。
【0007】
従って、使用者が行うのに容易で簡単な単回注射又は送達工程において、2つ又はそれ以上の薬剤の逐次送達のためのデバイス及び方法を提供する必要性が存在する。更に、薬剤の送達に先立ってプライミングされることができるようなデバイスの必要性が存在する。
【0008】
本提案デバイス及び方法は、2つ又はそれ以上の活性薬物作用物質(例えば、一次薬剤及び二次薬剤)用の別々の保存容器を備えることにより、上記の潜在的な問題を克服する。具体的に、薬用モジュールは二次薬剤を保持し、そして薬用モジュールが薬物送達デバイスに取り付けられるとき、薬物送達システムのプライミングを可能にするように構成される。薬用モジュールは、薬用モジュールに取り付けられたニードルアセンブリをプライミングするのに十分な二次薬剤を含んでよい。薬用モジュールが一次薬物送達デバイスに取り付けられた後、薬物作用物質は次いで単回送達手順中に患者に送達される。有利なことには、薬用モジュールからの第2の薬剤及び薬物送達デバイスからの第1の薬剤は、逐次的に又は実質的に逐次的に患者に送達される。
【0009】
提案デバイス及び方法はまた、1つ又は両方の薬剤の量を変えるための機会を与える。例えば、1つの流体量は注射デバイスの性質を変えることにより変更することができる(例えば、使用者可変用量をダイヤルし又はデバイスの「固定」用量を変化させる)。第2の流体量は、第2の活性作用物質の異なる容量及び/又は濃度を含む各バリアントの種々の二次薬物含有包装を製造することにより変えることができる。次いで使用者又は医療関係者は、最も適切な二次包装、又は特定の処置計画のための一連の異なる包装若しくはその一連の組み合わせを選択し得る。提案薬用モジュールは、薬剤の非使用者設定可能用量が保存され得る内蔵型折り畳みリザーバを含む。
【0010】
これらの及び他の利点は本発明の下記のより詳細な記述から明らかになるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本提案デバイス及び方法は、単回薬物送達システム内で多剤薬物化合物の複合組み合わせを可能にする。本提案デバイス及び方法は、使用者が単回用量設定機構及び単回投薬インターフェースを通して多剤薬物化合物デバイスを設定しそして投薬することを可能にする。本単回用量設定器は、1つの薬剤の単回用量が単回投薬インターフェースを通して設定及び投薬されるとき、個々の薬物化合物の所定の組み合わせが送達されるようにデバイスの機構を制御する。更に、薬物送達システムの薬用モジュールは、薬用モジュールが一次薬物送達デバイスに取り付け中に自動的にプライミングされるように構成される。
【0012】
個々の薬物化合物間の治療的関係を規定することにより、提案送達デバイス及び送達方法は、患者/使用者が、使用者がデバイスを使用する毎に正確な用量組み合わせを計算及び設定する必要がある場合、多回入力に伴う固有のリスクなしに多剤薬物化合物デバイスから最適な治療的組み合わせ用量を受けることを確実にするのに役立ち得る。薬剤は、その形状を変えやすい力によって作動するとき、流れることができそして安定した速度で形状を変える液体又は気体又は紛体として、本明細書で定義される流体であってよい。
【0013】
単回入力及び関連の所定の治療プロファイルは、それらがデバイスを使用する毎に使用者がそれらの処方量を計算する必要性を除き、そして単回入力が組み合わせ化合物の非常に容易な設定及び投薬を可能にするので、特許出願人の提案概念は器用さ又は計算困難を有する使用者にとって特に有利である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
好ましい実施態様では、多回用量、使用者選択可能デバイス内に含まれるインスリンなどの基本薬物化合物は、二次薬剤の単回用量を含む単回使用、使用者交換可能モジュール、及び単回投薬インターフェースで使用することが可能である。一次デバイスに連結されるとき、二次化合物は一次化合物の投薬時に起動/送達される。本出願は、具体的にインスリンを記載するが、2つの可能な薬物組み合わせとして、インスリンアナログ又はインスリン誘導体、及びGLP−1又はGLP−1アナログ、鎮痛薬、ホルモン、βアゴニスト又はコルチコステロイドなどの他の薬物若しくは薬物組み合わせ、又はいずれかの上記薬物の組み合わせが、本発明で使用し得る。
【0015】
特許出願人の開示の、用語「インスリン」は、ヒトインスリン又はヒトインスリンアナログ若しくは誘導体を含む、インスリン、インスリンアナログ、インスリン誘導体又はその混合物を意味するものとする。インスリンアナログの例は、限定されるものではなく、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;ヒトインスリン、ここでB28位置のプロリンはAsp、Lys、Leu、Val又はAlaによって置換されてよく、そしてここでB29位置においてLysはProによって置換されてよい;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン又はDes(B30)ヒトインスリンである。インスリン誘導体の例は、限定されるものではなく、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイル−ヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン及びB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0016】
本明細書で使用される用語「GLP−1」は、限定されるものではなく、エキセナチド(エキセンジン−4(1−39)、配列H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH
2)のペプチド、エキセンジン−3、リラグルチド、又はAVE0010(H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Ser−Lys−Lys−Lys−Lys−Lys−Lys−NH
2)を含む、GLP−1、GLP−1アナログ、又はその混合物を意味するものとする。
【0017】
βアゴニストの例は、限定されるものではなく、サルブタモール、レボサルブタモール、テルブタリン、ピルブテロール、プロカテロール、メタプロテレノール、フェノテロール、メシル酸ビトルテロール、サルメテロール、ホルモテロール、バンブテロール、クレンブテロール、インダカテロールである。
【0018】
ホルモンは、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン (ソマトロピン)、デスモプレッシン、テルリプレッシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、例えば脳下垂体ホルモン又は視床下部ホルモン又は調節活性ペプチド及びそれらのアンタゴニストである。
【0019】
実施態様によれば、薬用モジュールは薬物送達デバイスに取り付け可能であり、薬物送達デバイスは第1の薬剤を保持する薬物リザーバを有する。薬用モジュールは上部保持機能及び下部保持機能を含み、ここで上部保持機能は下部保持機能に対して軸方向に可動である。薬用モジュールは更に係合針及び出力針を含み、ここで出力針は係合針と流体連通している。尚更に、薬用モジュールは第2の薬剤を保持する折り畳み機能を含み、ここで折り畳み機能は上部保持機能に操作可能に連結される。薬物送達デバイスに取り付け中、(i)上部保持機能は下部保持機能に対して軸方向に動き、(ii)折り畳み機能は軸方向運動に因り圧縮され、そして(iii)係合針及び出力針は第2の薬剤でプライミングされる。
【0020】
薬用モジュールが薬物送達デバイスに取り付けられるとき(i)上部保持機能は下部保持機能に対して軸方向に動き、(ii)折り畳み機能は軸方向運動に因り圧縮され、そして(iii)係合針及び出力針は第2の薬剤でプライミングされる。
【0021】
別の実施態様によれば、薬物送達デバイスに取り付け可能な薬用モジュールは上部保持機能及び下部保持機能を含み、ここで上部保持機能は下部保持機能に対して軸方向に可動である。薬用モジュールは更に係合針及び出力針を含み、ここで出力針は係合針と流体連通している。尚更に、薬用モジュールは上部保持機能の部分とすべり流体密封係合しているピストンを含み、ここでピストン及び上部保持機能の部分はキャビティを形成する。このキャビティは第2の薬剤を含む。薬物送達デバイスに取り付け中、(i)上部保持機能は下部保持機能に対して軸方向に動き、(ii)係合針はピストンを穿孔し、(iii)ピストンはキャビティのサイズを減少させるように軸方向に動き、そして(iv)係合針及び出力針は第2の薬剤でプライミングされる。他の実施態様は、そのような薬物送達デバイス及びそのような薬用モジュールを含む薬物送達システムを含む。
【0022】
薬用モジュールが薬物送達デバイスに取り付けられるとき、(i)上部保持機能は下部保持機能に対して軸方向に動き、(ii)係合針はピストンを穿孔し、(iii)ピストンはキャビティのサイズを減少させるように軸方向に動き、そして(iv)係合針及び出力針は第2の薬剤でプライミングされる。
【0023】
別の実施態様によれば、薬物送達デバイスに取り付け可能な薬用モジュールは上部保持機能及び下部保持機能を含み、ここで上部保持機能は下部保持機能に対して軸方向に可動である。薬用モジュールは更に係合針及び出力針を含み、ここで出力針は係合針と流体連通している。尚更に、薬用モジュールは第2の薬剤を保持するリザーバを含む。リザーバは第2の薬剤を保持する折り畳み機能であってよい。折り畳み機能は上部保持機能に操作可能に連結され得る。
【0024】
別の実施態様によれば、薬物送達デバイスに取り付け可能な薬用モジュールは上部保持機能及び下部保持機能を含み、ここで上部保持機能は下部保持機能に対して軸方向に可動である。薬用モジュールは更に係合針及び出力針を含み、ここで出力針は係合針と流体連通している。尚更に、薬用モジュールは第2の薬剤を保持するリザーバを含む。リザーバは第2の薬剤を含んでなるキャビティであってよい。キャビティは上部保持機能に操作可能に連結され得る。上部保持機能の部分とすべり流体密封係合しているピストンはキャビティを形成し得る。
【0025】
あるいは、第2の薬剤は上部保持機能において又はバイアルによりキャビティ中に含まれてよく、ここで第2の薬剤はキャビティ又はバイアル中の容量でピストンによって保持される。
【0026】
尚別の実施態様によれば、薬用モジュールをプライミングする方法が提供される。方法は薬物送達デバイスに取り付け可能な薬用モジュールを備えて含まれる。薬物送達デバイスは一次薬剤を有するリザーバを含む。薬用モジュールは、(i)及び係合針、(ii)及び出力針、並びに(iii)二次薬剤を含む折り畳みリザーバを含み、ここで係合針及び出力針は流体連通している。方法は更に、薬用モジュールを薬物送達デバイスに取り付けること、及び薬物送達デバイスへ薬用モジュールの取り付け中に係合針と折り畳みリザーバ間に流体連通を確立することを含む。方法はまた、薬物送達デバイスへ薬用モジュールの取り付け中に、折り畳みリザーバを強制して崩壊することを含み、ここで崩壊中、薬用モジュールの係合針及び出力針は二次薬剤でプライミングされる。薬用モジュールの係合針及び出力針は二次薬剤で充填され、それ故に空気を除く。
【0027】
薬用モジュールは、適切なインターフェースを有する薬物送達デバイスとともに使用するために設計することができる。しかしながら、非適合デバイスへの不適切薬用モジュールの取り付けを阻止するための専用化又はコード化機能の利用を通して、1つの限定的一次薬物送達デバイス(又はデバイスのファミリー)にその使用を限定するためのそのような方法で、モジュールを設計することが好ましいといえる。場合によっては、薬用モジュールが1つの薬物送達デバイスに限定的であることを確実にすること、一方でまたデバイスに対して標準薬物投薬インターフェースの取り付けを許容することも有利であり得る。これはモジュールが取り付けられるとき使用者が併用療法を送達することを可能にし得て、しかしまた限定されるものではないが、一次化合物の用量分割又は追加などの場合に標準薬物投薬インターフェースを通して独立に一次化合物の送達を可能にし得る。
【0028】
特許出願人の方法及びシステムの特別の利点は、方法及びシステムは、薬物送達デバイスへ薬用モジュールの取り付け中に使用者が出力針をプライミングすることを可能にすることである。加えて、特許出願人の提案概念に基づく薬用モジュールは、薬物送達デバイスへの取り付けに先行して薬剤の流体密封シールを提供する。有利なことには、流体密封シールは薬剤の汚染を減少させ又は阻止し得る。
【0029】
特許出願人の方法及びシステムの別の利点は、方法及びシステムが投与後の薬用モジュール中に残る目減り量を限定し最小化するのに資することである(モジュールにおける薬剤の固定用量の容量に対して)。更に、特定の実施態様では、特許出願人の方法及びシステムは、単回投薬インターフェースを通して第1の薬剤及び第2の薬剤の逐次投薬を可能にする。このように、方法及びシステムは、第1の、一次薬剤及び第2の薬剤の混合を有利に阻止し又は限定する。これは、例えば、薬剤の混合が少なくとも1つの薬剤にマイナス又は有害影響を与えるときに有利となり得る。
【0030】
本発明の薬用モジュールは、第2の薬剤を保持するリザーバ、互いの方に対して軸方向に可動であるように構成される上部及び下部保持機能、互いとの流体連通における係合針及び出力針を含んでよく、ここで少なくとも1つの針は下部保持機能に固定されてよい。薬用モジュールが薬物送達デバイスに取り付けられるとき、上部保持機能は下部保持機能及び係合針に対して軸方向に動き、リザーバは軸方向運動に因り圧縮され、そして少なくとも1つの係合針及び出力針は第2の薬剤でプライミングされる。
【0031】
好ましい実施態様では、一次薬物送達デバイスは一回より多く使用され、そしてそれ故に多目的デバイスである;しかしながら、薬物送達デバイスはまた単回使用使い捨てデバイスであってよい。そのようなデバイスは一次薬物化合物の交換可能リザーバを有しても又は有さなくてもよく、提案概念は両シナリオに同様に適用可能である。既に標準薬物送達デバイスを使用している患者への1回限りの特別な薬物療法として処方し得る、種々の病状に対する一連の異なる薬用モジュールを有することも可能である。患者が既使用薬用モジュールを再使用することを試みる場合、このモジュールは、使用者が薬用モジュールから用量を送達した後起動されるロッキングニードルガードを含んでよい。使用者に警告する他の手段は下記の幾つか(又はすべて)を含んでよい:
一度モジュールが使用されて取り外されているときの、一次薬物送達デバイスへの薬用モジュールの再取り付けの物理的阻止。
一度それが使用されているときの、薬物投薬インターフェースを通したその後の流体流の物理的/水力的阻止。
一次薬物送達デバイスの用量設定器及び/又は用量ボタンの物理的ロッキング。
視覚警告(例えば、一度挿入及び/又は液体流が生じているときモジュール上の表示窓内の色の変化及び/又は警告文章/インディシア)。
聴覚フィードバック(使用後のモジュールハブの外面における聴覚機能の存在又は不存在)。
【0032】
更なる提案機能は、両方の薬剤が1つの注射針を介してそして1つの注射工程で実質的に逐次的に送達されることである。これは2つの別々の注射剤を投与するのと比べて、使用者工程削減の観点で使用者に簡便な利点を提供する。この利便性はまた、特に注射を不快とし又は計算若しくは器用さ困難な使用者に対して、処方される療法でのコンプライアンス改善をもたらし得る。
【0033】
本発明の種々態様のこれら並びに他の利点は、添付図面を適切に参照して下記の詳細な説明を読むことにより当業者に明らかになるものである。
【0034】
例示的な実施態様は以下において図面を参照して本明細書に記載される:
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】特許出願人の提示薬用モジュールで使用することができる1つの可能な薬物送達デバイスの透視図を図示する。
【
図3】例示的薬物送達デバイスに取り付けられる
図2の例示的薬用モジュールの断面図を図示する。
【
図4A】薬物送達デバイスへの取り付け前の例示的薬用モジュールの断面図を図示する。
【
図4B】薬物送達デバイスへの取り付け後の
図4Aの例示的薬用モジュールの断面図を図示する。
【
図5】薬物送達デバイスへ取り付け前で特許出願人の薬用モジュールの別の例示的薬用モジュールの断面図を図示する。そして
【
図6】薬物送達デバイスへ取り付け前で特許出願人の薬用モジュールの尚別の例示的薬用モジュールの断面図を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0036】
特許出願人の提案概念は、薬用モジュールが一次薬物送達デバイスに取り付けられる際に、薬用モジュールをプライミングするためのシステム及び方法である。提案概念は具体的に、二次薬剤を保持し、そして一次薬物送達デバイスへの取り付け中に二次薬剤で薬用モジュールをプライミングするように構成される薬用モジュールに関する。
【0037】
特許出願人の提案概念の実施態様に基づく薬用モジュールは、薬物送達デバイス100などの一次薬物送達デバイスに取り付けられ得る。
図1は、
図2〜3に描写される薬用モジュールなどの薬用モジュールが遠位端132の連結手段109に取り付けることができる、薬物送達デバイス100の1つの例を図示する。各薬用モジュールは好ましくは内蔵型であり、そしてデバイス100の遠位端132で取り付け手段109に適合可能な取り付け手段を有する密閉及び滅菌使い捨てモジュールとして提供される。示されていないが、薬用モジュールは保護及び滅菌容器に含まれ製造業者によって供給され得て、ここでは使用者は滅菌薬用モジュールにアクセスを得るためにシール又は容器それ自体を剥き又は破って開け得る。更に、薬物送達デバイス100は単回用量設定器112を含んだハウジングを含む。用量設定器112は、カートリッジホルダ115中のような薬物送達デバイス中に保存され得る薬剤の一次リザーバに操作可能に連結され得る。使用者は一次薬剤の使用者選択可能用量をダイヤルするために用量ダイヤルボタン113を使用し得る。
【0038】
特許出願人の提案概念は、一次薬物送達デバイスの取り付け時に自動的にプライミングされる薬用モジュールである。
図2は特許出願人の提案概念の実施態様に基づく薬用モジュール200を図示する。更に、
図3は、第1の、一次薬剤301を保持する薬物送達デバイス302に取り付けられた薬用モジュール200を含む薬物送達システム300を図示する。下記に詳細に記載されるように、薬用モジュール200はそれが薬物送達デバイス302に取り付けられ際にプライミングされる。
【0039】
薬用モジュール200は第1のニードルカニューレ204及び第2のニードルカニューレ206を含む。
図2及び3に示されるように、第1及び第2の針は互いと流体連通している。モジュール200及びデバイス302が取り付けられるとき、針が薬物送達デバイス302のリザーバ304と係合又は連通すると、第1の針204は本明細書で「係合針」と言われるかもしれない。更に、第2の針が、薬物送達システム300の使用者の注射部位など、薬剤を注射部位に皮下注射するために使用され得る際に、第2の針206は本明細書で「出力針」と言われるかもしれない。当業者には当然のことながら、薬用モジュール200は2つの針を含むように描写されるが、薬用モジュール200は係合部分及び出力部分を有する単一の、両頭針を代わりに含んでよい。この単一カニューレは、真っ直ぐに穴が開けられ得るか又は、近位(入口)端に拡大セクション(例えばハイドロフォーミングで得られる)を有し得る。拡大セクション(
図2に示されるように連続した2カニューレ有することによるか又は、拡大セクションを備えた単一カニューレとして形成される)の利点は、それが注射予定の二次薬剤のより大きい容量を可能にし得ることである。
【0040】
薬用モジュール200はまた、上部保持機能208、下部保持機能210、及び折り畳み機能212を含む。折り畳み機能212は、二次薬剤216などの薬剤を保持する。実例の二次薬剤は、GLP1医薬品又はインスリン及びGLP1のプレミックス製剤を含むが、それらに限定されるものではない。使用に先立っての薬剤の可能な汚染を阻止するために、折り畳み機能212は流体密封シールを備える密封容器であってよい。折り畳み機能は、薬剤を確実に保持し、そして所定の力を受けて崩壊し又は圧縮することができるいずれかの好適な材料から成り得て、加えて第2の薬剤と長期接触するとき概して不活性であり、そしてそれは浸出性及び/又は抽出性に対して優れた性能をもたらす。例えば、折り畳み機能は、低密度ポリエチレン(LDPE)又は直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)から成り得る。TPE(熱可塑性エラストマー)、液状シリコーンゴム(LSR)及び天然ゴムを含む代替材料もまた可能である。バリア特性の改善が望ましい場合、積層材料は、例えば、一次膜材料(潜在的に上記のように)+PVC(ポリ塩化ビニル)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)又はアルミニウムのような更なる薄膜から成る多層材料が使用され得る。他の材料及び/又は材料組み合わせも可能である。
【0041】
上部保持機能208は薬用モジュールのボディ214に対して軸方向に可動である。更に、この例では、下部保持キャップ又は機能210は固定され、それ故に上部保持機能208は下部保持キャップ210に対して軸方向に可動である。尚更に、下部保持機能210は、
図2〜3に示されるように、係合針204及び出力針206を保持するニードルハブとして機能する。従って、係合針204及び出力針206は下部保持機能210中に固定される。
【0042】
この例では、上部保持機能208は、内壁222によって画成される第1のキャビティ220、及び外壁226によって画成される第2の一般に同心キャビティ224を含む。第1のキャビティ220及び第2のキャビティ224は種々の異なる形状であってよい。好ましくは、キャビティ220及び224は一般に円形又は環状の断面であってよい。しかしながら、キャビティは一般に正方形などのその他の好適な多角形であってよい。外壁226は、薬用モジュール200のボディ214に沿った軸方向運動を可能にする機能(示されず)を含んでよい。これらの機能は、軸方向運動を可能にするために薬用モジュール200のボディ214の内壁上で対応の機能(示されず)と相互作用し得る。そのような機能は通常、嵌め合い部材上の対応する軸方向スロットと連通する少なくとも1つの軸方向突出部から成り得る。スロットエレメントは、2つの隣接リブ機能(又は類似の構成)間で凹部として又はギャップとして形成され得る。好ましくは、スロット機能は、薬用モジュールが一次デバイスへ取り付けられるまで、下部保持キャップに対して上部保持機能の軸位置を維持するのに資する凹凸機能(bump features)、一方向のクリップ機能等を含んでよい。更なる機能もまた好ましくは、使用中/使用後軸位置において上部保持機能を保持するために、軸方向行程の端部に又は近くに備えられ得る。そのような機能(例えば、ロッキング機構)は好ましくは、取り付け前軸位置への上部保持機能の戻りを阻止するように構成され得る。
【0043】
図2に示されるように、折り畳み機能212は上部保持機能208と接触している。具体的に、折り畳み機能212は第1のキャビティ220に位置する。折り畳み機能212は上部保持機能208に操作可能に連結され得る。例えば、折り畳み機能の近位面は上部保持機能に接着されてよい。締まり嵌め/摩擦嵌めを含む他のタイプの連結も同様に可能である。有利なことには、薬物送達デバイス300へ取り付け中、内壁222は、
図3に見られるようにそして下記により詳細に記載される、第1のキャビティ220へ折り畳み機能212を画成することにより折り畳みの圧縮を制御するのに資する。
【0044】
薬用モジュール200はまた取り付け部材218を含む。取り付け手段218は、薬物送達デバイス302の取り付け手段308(又は、別の例では、デバイス100の遠位端における取り付け手段109)など、薬物送達デバイスの対応する取り付け手段に取り付けるように構成される。取り付け手段308はねじ山であるように描写される;しかしながら、これはただの例のつもりであり、他の取り付け手段が可能である。更に、実例実施態様では、薬用モジュール200はまたニードルカバー又はニードルガード(示されず)を含む。ニードルカバーは、カバーが薬用モジュール200のボディに取り外し可能に取り付けられることを可能にする連結機能(例えば、スナップフィット機能)を有してよい。患者が経験している可能性のあるいずれの針不安を有利に減少させるために、ニードルカバー又はニードルガードは使用者の視界から実質的に出力針206を隠し得る。実質的に針を隠している間、ニードルカバー又はニードルガードはまた不注意な針刺しを阻止するのに資する。
【0045】
薬物送達デバイス300への薬用モジュール200の取り付けは、第2の薬剤216を含む折り畳み部材212が上部保持キャップ208の上面232と接触するようにさせる。この接触は順次、上部保持機能208が下部保持機能210に対して軸方向に変位するようにさせる。
図2を
図3と比較するときに見られるように、取り付け中、上部保持機能208は方向250において下部保持機能210に向いて軸方向に動く。
【0046】
この軸方向変位中、下部保持機能210(即ち、遠位内側面230)の上方に突出する係合針204は、第1の所定量の軸方向変位後折り畳み機能212を穿孔する。下部保持機能210に対する上部保持機能208及び折り畳み機能212の更なる変位は、係合針204が折り畳み機能212を通して横切るようにさせる。この横断は、少なくとも係合針204の部分を二次薬剤216によってプライミングする。
【0047】
第2の所定量の軸方向変位では、下部保持キャップ210中の突出部228は折り畳み機能212の下面231(即ち、遠位端)と接触し、折り畳み機能212を圧縮するその後の変位をもたらし、そして二次薬剤216を係合針204に押し進める。
図3に示されるように、突出部228は、それが上部保持機能208の第1のキャビティ220の直径より小さくなるような直径を有する。このように、突出部228は取り付け中に第1のキャビティ220に嵌め合うことができ、そして折り畳み機能212を圧縮するのに資することができる。この圧縮は更に係合針204を二次薬剤216によってプライミングするように作動する。更に、折り畳み部材212が十分に圧縮されるとき、折り畳み機能212の圧縮は薬剤216の最小目減りを有利に確実にする。実質的に完全な圧縮は、折り畳み部材中に保存された実質的にすべての二次薬剤216が、折り畳み部材から係合針204及び/又は出力針206へ流出することを確実にする。
【0048】
下部保持機能210に対する上部保持機能208の第3の所定量の軸方向変位では、完全プライミング針204は、折り畳み機能212の上面234(即ち、近位端)を、そしてその後リザーバ304のセプタム306を穿孔する。一度係合針204がカートリッジ304のセプタム306を通過すると、第1の、一次薬剤301と出力針206間で、流体連結が行われる。
【0049】
図3は、実質的に完全な圧縮状態における折り畳み部材212を描写する。この図に示されるように、係合針204及び出力針206は薬剤216によって完全にプライミングされる。係合針204及び出力針206を完全にプライミングするために、折り畳み機能212は好ましくは係合針204及び出力針206の総容量を満たすのに少なくとも十分な二次薬剤216を保持する。組み合わせカニューレの封入容量は好ましくは、薬剤の少なくとも小滴が出力針206の端部において使用者に見えるように、折り畳み部材からプライミングされ得る液体容量より小さくなり得る(デバイスがプライミングされていることを視覚的に確認するため)。
【0050】
モジュール200が薬物送達デバイス302に取り付けられた後、使用者は第1の薬剤301の使用者設定可能用量を設定し得る。薬物送達デバイスの用量は常法で設定し得る(例えば、薬物送達デバイス302の用量ダイヤルによって一次薬剤301の適切な多数の単位をダイヤルアウトすることにより)。第2の薬剤216及び第1の薬剤301の投薬は、次いで薬物送達デバイスの用量機構の起動を介して実現され得る。
【0051】
使用者が薬物送達デバイスの用量ボタンを押し下げると、第1の薬剤は出力針206に向けて遠位方向250に強制的に押し進められる。第1の薬剤301はその後第2の薬剤216を強制して出力針206から外に出す。第2の薬剤216が出力針から強制して出された後、用量ボタンのその後の押し下げは、第1の薬剤301の用量を強制して出力針206から外に出させる。
【0052】
有利なことには、第2の薬剤216及び第1の薬剤301は薬用モジュール200から実質的に逐次的に送達される。薬用モジュール内で2つの薬剤を混合するリスクを最小化するのに資するために、2つの液体が相互作用する表面の直径はできる限り小さくて、そしてこれが送達中「栓流(plug flow)」を確実にするのに資するように出口と同じような直径であることが好ましい。特許出願人の提案概念では、2つの薬剤が相互作用する表面の直径は十分小さく「栓流」を確実にするのに資する。具体的に、2つの薬剤が相互作用する表面の直径は係合針204の近位端240の直径に限定される。このように、栓流に因り、第2の薬剤216及び第1の薬剤301は実質的に逐次的に送達される。しかしながら、当業者には当然のことながら、2つの薬剤の多少の混合は実質的に逐次的な送達中可能である。
【0053】
使用者が第1及び第2の薬剤301、216の投薬を終了後、使用者は注射部位から出力針206を取り外し得る。次いで、空乏薬用モジュール200は廃棄され得る。薬物送達デバイス302が未だ幾らかの第1の薬剤301を保持すると仮定すると、薬物送達デバイス204は必要に応じて患者によって再使用され得る。
【0054】
特定の実施態様では、モジュールが薬剤を送達するために使用された後、その圧縮状態において折り畳み機能212を保持する薬用モジュール中にロッキング機構が含まれてよい。即ち、そのようなロッキング機構は、折り畳み機能212を崩壊された状態に保ち、そしてそれがその投薬前位置に伸張することを阻止し得る。そのようなロッキング機構は、それぞれ上部保持及び下部保持機能208及び210上でクリップ機能401及び402の使用を通して形成され得る。これらのクリップ機能は好ましくは、
図4A及び4Bに示されるように、2つの部材間で一方向の軸方向運動だけを許容するように構成され得る。そのようなロッキング機構は、二次薬剤(即ち、第2の薬剤216)の固定用量が必要ない場合の例において、二度目の使用者によるニードルサブアセンブリの再使用を許容し得る。これが望ましいと思われる場合の実例シナリオは、限定されるものではないが、患者がそれらの用量を2つ又はそれ以上のより小さい用量に分割する必要があり得る又は望む例を含む。これが事例となり得る特定の使用シナリオの1つの実例は、一次薬剤の総量が薬物送達デバイス内に含まれる薬物カートリッジ中に得られ/残ってないかもしれない場合、多目的薬物送達デバイスの保管寿命の終わりになっている。この例では、患者は「古い」デバイスから残存用量を、そして次に新しいデバイスから所要用量の残りを服用するように選び得て、その場合に二度目の薬用モジュールの再使用は、(新しい未使用モジュールを取り付けるよりむしろ)患者が二次薬剤の第2の用量を受けることを阻止し得る。有利なことには、その崩壊状態に折り畳み機能を保持することは、使用後の薬用モジュール中の過剰目減りを限定し又は阻止し得る。
【0055】
特許出願人の提案概念に基づく薬用モジュールはまた、薬用モジュールの単回使用を促進又は確実にするための機能を含んでよい。そのような機能は、別の薬物送達デバイスへの再取り付けを阻止する針又は機能をロックアウトするロックアウト機能を含んでよい。あるいは、他の手段を介した薬用モジュールを通してのその後の投薬を妨げる機能が存在してよい。しかしながら、上記の分割用量シナリオのために構成される実施態様など、特定の実施態様では、単回使用を促進又は確実にするための薬用モジュールの機能は、好ましくは薬用モジュールの1回再使用を許容するように構成され得る。
【0056】
特許出願人の提案概念の別の実施態様では、一次薬物送達デバイスへの取り付け中薬用モジュール200のプライミングを容易にするために、ピストン配置が折り畳み部材の代わりに使用し得る。
図5及び6はそのようなピストン設計の2つの可能な実施態様を示し、その各々は使用前状態で示される。
図5では、第2の薬剤216は、遠位端でピストン501の使用により上部保持機能208中のキャビティ220内に含まれ、そしてキャビティで分離又は共成形し得るセプタム502を備えた近位端において密閉される。
図6では、第2の薬剤216は、ガラス又はプラスチックなど、いずれの薬剤適合性材料で製造し得るチューブ又はバイアル601内に含まれる。薬剤は、近位セプタム又は栓602及びすべりピストン603を備えたバイアル601内に含まれる。バイアル601は、接着剤、溶接、圧入又は当業者に公知のその他の手段によってキャビティ220内に保持することができる。しかしながら、当業者には当然のことながら、薬用モジュール200に対して上記の多くの可能性及び入れ替えは薬用モジュール400に同様に適用し得る。
【0057】
図5を参照して、二次薬剤216は、上部保持機能208の部分又はキャップ(例えば、キャビティ)とピストン501間に形成されるキャビティ220内に含まれる。ピストン501は、上部保持キャップ208の部分の内壁とすべり流体密封係合しており、それ故に二次薬剤のための流体密封シールを提供する。第1の実施態様を参照して上記のように、上部保持キャップに対する下部保持キャップの変位は、係合針204にピストン251を穿孔させそして薬剤を通して横切らせ、針をプライミングするようにさせる。第2の所定変位では、下部保持キャップ210中に存在する突出部228はピストン251と接触し、出力及び係合針204をプライミングするようにその後の変位を更に作動させる。
【0058】
第3の所定の変位では、係合針204は上部保持機能208の上面を、好ましくは第1の実施態様と同じように薬物送達デバイスのセプタム又は栓(
図5では502及び
図6では602)及びカートリッジのセプタムを通して穿孔する。一度係合針204がカートリッジのセプタムを通過すると、第1の薬剤301と係合及び出力針204、206間で流体連結が作られる。前述のように、薬物送達デバイスの用量は次いで常法(例えば適切な単位数をダイヤルアウトすることにより)で設定される。2つの薬剤の投薬は、次いで多目的デバイスの投薬機構の起動を介して実現される。
【0059】
第2の薬剤216の完全投薬後、出力針206は注射部位から取り外されそして薬用モジュール200は廃棄することができ、必要に応じて患者によって多目的デバイスを再使用することを可能にする。
【0060】
特許出願人の提案概念はまた薬用モジュールをプライミングする方法を含む。方法は薬物送達デバイスに取り付け可能な薬用モジュールを備えることを含む。薬物送達デバイスは一次薬剤を有するリザーバを含む。薬用モジュールは、(i)及び係合針、(ii)及び出力針、並びに(iii)二次薬剤を含む折り畳みリザーバを含み、ここで係合針及び出力針は流体連通している。方法は更に、薬用モジュールを薬物送達デバイスに取り付けること、及び薬物送達デバイスへ薬用モジュールの取り付け中に係合針と折り畳みリザーバ間の流体連通を確立することを含む。方法はまた、薬物送達デバイスへ薬用モジュールの取り付け中に、折り畳みリザーバを強制して崩壊することを含み、ここで崩壊中薬用モジュールの係合針及び出力針は二次薬剤でプライミングされる。
【0061】
薬用モジュール200又は薬用モジュール400など、特許出願人の提案概念に基づく薬用モジュールは多数の利点を提供する。例えば、上記のように、特許出願人の提案概念に基づく薬用モジュールは一次薬物送達デバイスに取り付け時にプライミングされる。デバイスは取り付け時にプライミングされるので、使用者はプライミング動作を行うためにいずれの更なる処置又は手段を取る必要がないと考えられる。例えば、場合によっては、使用者はプライミング操作行うのを忘れ又は無視する可能性があることから、これは有利といえる。
【0062】
別の例では、特許出願人の提案概念は有利に、薬用モジュール中に保存された二次薬とそれに続いて一次薬物送達デバイスからの一次薬剤の逐次投薬を可能にする。一次薬剤及び二次薬剤が出口直径に対して相互作用する場合、提案薬用モジュールは表面の直径を限定し、それ故に一次及び二次薬剤の栓流を確実にするのに資する。それ故、有利なことには、提案概念はデバイス内で2つの薬剤の混合を阻止又は制限する。これは併用投与の効果が時間とともに減少する用途に対して有利であり得て、それでインビボでも起ってできる限り治療効果を最大化する混合が最良である。
【0063】
本明細書に記載の実施態様の薬用モジュール間の連結又は取り付けは、特定の薬用モジュール又は薬用モジュールの特定のセット又はキットが補完又は適合薬物送達デバイス又はデバイスにだけ取り付け可能であることを確実にするのに資する、コネクタ、止め具、スプライン、リブ、溝、及び類似の設計機能など、更なる機能(示されず)を含んでよい。そのような更なる機能は、非適合注射デバイスへの不適切薬用モジュールの挿入を阻止し得る。
【0064】
薬用モジュールの形状は、円筒体、又は流体リザーバを画成するのに若しくは薬用モジュールにおいて薬剤の個別の内蔵型リザーバを含むのに、そして1つ又はそれ以上のニードルカニューレを取り付けるのに好適なその他の幾何学的図形であってよい。薬用モジュールは(
図6に図示されるように)ガラス又は他の薬物接触に好適な材料から製作することができる。一体化出力針は皮下又は筋肉内注射に好適ないずれのニードルカニューレであり得る。好ましくは、薬用モジュールは、無菌性を保つために密閉されている単独型又は分離デバイスとして医薬製造業者によって提供される。モジュールの滅菌シールは好ましくは、薬用モジュールが使用者によって薬物送達デバイスに前進し又は取り付けられるとき、自動的に、例えば切断、引き裂き又は剥離によって開けられるように設計される。複数の薬用モジュールを含むキットも提供され得る。そのようなキットは、各モジュールが同じ薬剤、異なる薬剤、又は異なる薬剤濃度を有する場合、1つ又はそれ以上の薬用モジュールを含み得る。
【0065】
特許出願人の概念の薬用モジュールは、多回使用注射デバイス、好ましくは
図1に図示されるものと類似の、ペン型多回用量注射デバイスと連動して作動するように設計され得る。注射デバイスは再使用可能又は使い捨てデバイスであってよい。使い捨てデバイスとは、薬剤を予め充填した製造業者から得られ、そして初回の薬剤を使い切った後に新しい薬剤を再充填することができない注射デバイスを意味する。デバイスは固定用量又は設定可能用量及び、好ましくは、多回用量デバイスであってよいが、しかしながら、ある場合には単回用量、使い捨てデバイスを使用することが有利となり得る。
【0066】
典型的な注射デバイスは薬剤のカートリッジ又は他のリザーバを含む。このカートリッジは、一般的に管状形であり、通常はガラスで製作される。カートリッジは一端においてゴム栓で、そして他端においてゴム製セプタムによって密閉される。注射ペンは頻回注射剤を送達するように設計される。送達機構は一般的に使用者の手動動作により作動し、しかしながら、注射機構はまた、ばね、圧縮気体又は電気エネルギーなどの他の手段によっても作動し得る。
【0067】
本発明の例示的な実施態様が記載されている。しかしながら、当業者には当然のことながら、変更又は修正は、特許請求の範囲によって規定される本発明の真の範囲及び精神から逸脱することなくこれらの実施態様で行われてよい。