(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シラン基含有化合物(B1)がイソシアヌレート基及び/若しくはアロファネート基を有すること、並びに/又は前記シラン基含有化合物(B1)が付加的にイソシアネート基を有することを特徴とする、請求項1から20までのいずれか1項記載のクリアコートコーティング剤。
前記化合物(B1)が、(α)ビス(3−プロピルトリメトキシシリル)アミン及び場合によりN−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)ブチルアミンと、(β)1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、又は4,4'−メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート、前述のジイソシアネートのビウレット−ダイマー及び/又は前述のジイソシアネートのイソシアヌレート−トリマーとからの反応生成物であることを特徴とする、請求項1から26までのいずれか1項記載のクリアコートコーティング剤。
前記ヒドロキシル基含有化合物(A)が、ポリアクリレートポリオール、ポリメタクリレートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリウレタンポリオール及び/又はポリシロキサンポリオールの群から選択されていることを特徴とする、請求項1から29までのいずれか1項記載のクリアコートコーティング剤。
【技術分野】
【0001】
本発明は、非プロトン性溶剤を基礎とし、少なくとも1種のオリゴマー及び/又はポリマーのヒドロキシル基含有化合物(A)並びにシラン基を有する少なくとも1種の化合物(B)を含有するコーティング剤に関する。
【0002】
この種のコーティング剤は、例えばWO08/74491、WO08/74490及びWO08/74489から公知である。これらのコーティング剤中で用いられる、イソシアネート基及びシラン基を含有する化合物(B)は、公知のイソシアネートを基礎とし、有利にはジイソシアネート、殊にヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット−ダイマー及びイソシアヌレート−トリマーを基礎とする。これらのコーティング剤は、従来のポリウレタン−コーティング剤と比べて、明らかに改善された耐引掻性の利点を、同時に良好な耐候性とともに有する。そこで記載されたコーティング剤は、殊に自動車量産塗装において用いられるが、しかしながら、自動車修理塗装における使用も記載されている。これらのコーティング剤の欠点は、コーティング剤の溶剤分の低下、つまり不揮発性分の増大が、流展特性の悪化、ひいては結果生じるコーティングの光学品質の明らかな悪化と結び付いていることである。
【0003】
自動車修理分野において用いられるコーティング剤には、それから法定排出ガイドラインが当てはめられる(例えば31.連邦イミッション規制法)。現行の欧州基準には、クリアコート系に関して420g/lのVOC値("揮発性有機物質含量")が書かれており、そこから、使用される系の濃さに応じて不揮発性分が約60質量%であるという結論が出る。高い不揮発性分を有する系の開発に際して問題なのは、ふつうは粘度が高まり、かつそれにより系の流動性が低下し、これが流展性若しくはトップコート光沢(Decklackstand)に不利に作用することである。それを抑制するために、粘度はそのままに不揮発性分が引き上げられなければならない。これは、一般的に硬化剤及び/又は結合剤の粘度を下げることによって達成される。しかしながら、これには物理的な皮膜形成の悪化がつきものであり、かつ乾燥時間がより長くなる。自動車修理塗装の分野で用いられるコーティング剤にとってはまさに、この状態は好ましくなく、それというのも修理塗装の分野で用いられるコーティング剤はいずれにせよ長い反応時間を要するからである。
【0004】
US−A−5,691,439からは、ヒドロキシル基含有結合剤(A)のほかに架橋剤としてイソシアネート基を有する化合物(B)を含有するコーティング剤が公知であり、ここで、当該発明にとって重要な点は、該化合物(B)が表面エネルギーを下げるために、そのうえシラン基又はシロキサン基を有し、かつ透明なコーティングを得るために、さらにアロファネート基も有することであり、その結果、改善された表面特性を有するコーティングが得られる。しかし、この文献に欠けている事項は、いかにしてコーティング剤の溶剤分を低下させ、かつ、それにも関わらず良好な硬化速度を自動車修理塗装の条件下でも保証するのかについての記載である。
【0005】
さらになお、EP−A−1273640には、ポリオール成分並びに、脂肪族及び/若しくは脂環式のポリイソシアネート、それらから重合、アロファネート形成、ビウレット形成又はウレタン形成によって誘導されたポリイソシアネートから成る架橋剤成分を含有する2液型コーティング剤が記載されており、その際、最初は遊離して存在するイソシアネート基の0.1〜95モル%がビスアルコキシシリルアミンと反応している。これらのコーティング剤は、自動車両領域におけるクリアコート又はトップコートの製造のために用いられることができ、かつ、その完全な硬化後に良好な耐引掻性を、同時に環境の影響に対する抵抗性とともに有する。しかしながら、この文献には、いかにしてコーティング剤の溶剤分を低下させることができ、それにも関わらず良好な硬化速度を自動車修理塗装の条件下でも保証し、かつ結果生じるコーティングの表面特性を悪化させないかについての記載事項が含まれていない。
【0006】
WO2001/98393には、ポリオールを結合剤成分として並びに架橋剤成分としてポリイソシアネート(A)とシランオリゴマー(B)とからの混合物を含有する2液型コーティング剤が記載され、該シランオリゴマー(B)は、少なくとも2個のイソシアネート基及び付加的にアルコキシシラン基、有利にはビスアルコキシシラン基を含有し、かつポリイソシアネート(PI)をアルコキシシリルアミン、有利にはビスアルコキシシリルアミン、殊にビス(3−プロピルトリメトキシシリル)アミンと反応させることによって製造される。ポリイソシアネート(A)として並びに成分(B)を製造するためのポリイソシアネート(PI)として、有利にはヘキサメチレンジイソシアネート並びに該イソシアネートのビウレット及びイソシアヌレートが用いられる。これらのコーティング剤は、殊にプライマーとして用いられ、かつ金属下地上への、有利にはアルミニウム下地上への付着に対して最適化される。
【0007】
さらに、EP−A−1426393からは、ウレトジオン基含有の低モノマーポリイソシアネートが公知であり、そのうえこれらは、以前に使用されていたウレトジオンと比べて改善された再解離安定性を示すという利点を有している。この改善された再解離安定性は、ウレトジオンを+40℃以下の温度でトリアルキルホスフィンの存在において二量化し、そして引き続きトリアルキルホスフィンを分離することによって達成される。ウレトジオンは、例えば硬化剤としてコーティング剤中で用いられる。しかし、この文献に欠けている事項は、いかにして良好な硬化を、修理塗装の条件下でも保証することができるのかについての記載と同じく、いかにして結果生じるコーティングの表面特性に影響を与えることができるのかについての記載である。
【0008】
まだ公開されていない国際特許出願番号PCT/US2010/028308には、ヒドロキシル基含有成分(A)及びイソシアネート基含有成分(B)のほかにウレトジオンとビスアルコキシシリルアミン又はモノアルコキシシリルアミンとの反応生成物を含有するコーティング剤が記載され、その際、ウレトジオンとアルコキシシリルアミンとの反応生成物は残留イソシアネート基をもはや有さない。
【0009】
EP−B−864575は、ポリイソシアネート、例えばウレトジオン及び/又はイソシアヌレートを、エステル基を有する第二級のモノアルコキシシリルアミン、例えば殊にN−(3−トリメトキシシリルプロピル)アスパラギン酸ジエチルエステルと反応させることによって得られる、アルコキシシラン基及び尿素基を有する化合物を記載している。アルコキシシラン基及び尿素基を有する化合物は、本質的に残留イソシアネート基をもはや有さず、かつEP−B−864575に従って、場合によりシラン基を含有する更なる成分と一緒に、もっぱらシラン重縮合により硬化するコーティング材料中で用いられる。一方で、ヒドロキシル基含有成分及びイソシアネート基含有成分と一緒にアルコキシシラン基及び尿素基を有するこれらの化合物の使用は、EP−B−864575には記載されていない。
【0010】
最後に、まだ公開されていないドイツ国特許出願DE102010015683.3−43には、ポリオール成分のほかにウレトジオン基含有ポリイソシアネートを含有するコーティング剤が記載されており、その際、イソシアネート基の一部が、アルコキシシリルアミンで、有利にはビスアルコキシシリルアミンで官能化されている。好ましくは官能化されていないウレトジオン基含有ポリイソシアネートとイソシアネート基含有のシラン化されたポリイソシアネートとからの混合物を基礎とするコーティング剤は、この文献には記載されていない。
【0011】
課題
それゆえ本発明の課題は、殊に自動車修理塗装用の、該修理塗装の条件下でも良好な硬化を保証し、高固形分ひいては可能な限り低い溶剤含量を有し、良好な流展性若しくはトップコート光沢を示し、かつ良好な表面特性及び良好な中間層接着性を有するコーティングを生むコーティング剤を提供することであった。ここで、中間層接着性は、DIN2409に従ったクロスカットテストによって判定した。
【0012】
目視による全体的印象の判定のために、塗布され、焼付けされた塗膜の表面プロファイルの測定を、塗膜表面の可視的なプロファイルの測定を可能にするウェーブスキャン法によって用いた。このために、ビックガードナー社の"Wave Scan"装置によって反射の強度("リップル")を測定し、その際、10cmの距離にわたって1250個の測定点を記録した、反射を、測定装置により、長いうねり("長波")、すなわち0.6〜10mmの範囲の構造に対する光の強度の変化量、並びに短いうねり("短波")、すなわち0.1mm〜0.6mmの範囲の構造に対する光の強度の変化量とに区分する。良好な視覚的印象にとって決定的に重要なのは、可能な限り層厚が小さい場合でも結果生じるコーティングの長波測定値が低いことである。
【0013】
そのうえ、非常に耐候性の網状構造を生み、かつ同時に高い耐酸性を保証するコーティング剤が提供されるべきである。そのほかに該コーティング剤は、非常に耐引掻性であり、かつ殊に引掻荷重後に高い光沢保持率を有するコーティングを生むべきである。さらに、コーティング及び塗膜、特にクリア塗膜は、応力亀裂が発生することなく、>40μmの層厚でも製造することができる。そのうえまた該コーティング剤は、自動車量産塗装及び自動車修理塗装でのクリアコート層に通常課せられる要求を満たすべきである。
【0014】
最後に、この新規のコーティング剤は、簡単かつ非常に良好に再現可能に製造することができ、かつ塗料適用中に生態学的な問題を引き起こすべきではない。
【0015】
課題解決
上記の課題設定に照らして、非プロトン性溶剤を基礎とし、
少なくとも1種のオリゴマー及び/又はポリマーのヒドロキシル基含有化合物(A)、
式(I)
−X−Si−R''
xG
3-x (I)
[式中、
G=同一の若しくは異なる加水分解性基、殊にG=アルコキシ基(OR')、
R'=水素、アルキル又はシクロアルキル、ここで、炭素鎖は、隣接していない酸素基、硫黄基又はNRa基によって中断されていてもよく、ここで、Ra=アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルであり、有利には
R'=エチル及び/又はメチル、
X=有機基、殊に直鎖及び/若しくは分枝鎖の炭素原子1〜20個を有するアルキレン基又はシクロアルキレン基、極めて有利にはX=炭素原子1〜4個を有するアルキレン基、
R''=アルキル、シクロアルキル、アリール、又はアラルキル、ここで、炭素鎖は、隣接していない酸素基、硫黄基又はNRa基によって中断されていてもよく、ここで、Ra=アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキル、有利にはR''=殊に炭素原子1〜6個を有するアルキル基、
x=0〜2、有利には0〜1、特に有利にはx=0]の少なくとも1個のシラン基を有する少なくとも1種の化合物(B1)
並びに
成分(B1)とは異なる、1分子当たり少なくとも2個のイソシアネート基を有する少なくとも1種の化合物(B2)を含有するコーティング剤が見出され、該化合物(B2)は、
(i)ウレトジオン基を有し、かつ
(ii)直鎖脂肪族ジイソシアネート(DI)から製造されている
ことを特徴としている。
【0016】
そのうえ本発明の対象は、これらのコーティング剤を使用した多段コーティング法並びにクリアコートとしてのコーティング剤の使用若しくは自動車取り付け部品及び/又はプラスチック基材の塗装及び自動車修理塗装のための該コーティング法の適用である。
【0017】
従来技術に鑑みて、本発明の基礎をなす課題を、本発明によるコーティング剤により解決できたことは意想外であり、かつ当業者にとって予想可能ではなかった。
【0018】
そのため殊に、本発明によるコーティング剤が修理塗装の条件下でも良好な硬化を保証し、高固形分ひいては可能な限り高い溶剤分を有し、良好な流展性若しくはトップコート光沢を示し、かつ良好な表面特性及び良好な中間層接着性を有するコーティングをもたらすことは意想外であった。そうして、結果生じるコーティングは、殊に、良好な外観のために重要な低い長波測定値を可能な限り低い層厚の場合でも有する。
【0019】
そのうえまた、該コーティング剤は、非常に耐候性の網状構造を生み、かつ同時に高い耐酸性を保証する。そのほかに、該コーティング剤は、非常に耐引掻性であり、かつ殊に引掻荷重後に高い光沢保持率を有するコーティングを生む。さらに、コーティング及び塗膜、特にクリア塗膜は、応力亀裂が発生することなく、>40μmの層厚でも製造することができる。それに加えて、該コーティング剤は、自動車量産塗装及び自動車修理塗装でのクリアコート層に通常課せられる要求を満たす。
【0020】
最後に、この新規のコーティング剤は、簡単かつ非常に良好に再現可能に製造することができ、かつ塗料適用中に生態学的な問題を引き起こさない。
【0021】
本発明の説明
本発明によるコーティング剤
殊に本発明によるコーティング剤は、熱硬化性コーティング剤、つまり、有利には本質的に放射線硬化性不飽和化合物を含まない、殊に完全に放射線硬化性不飽和化合物を含まないコーティング剤である。
【0022】
シラン基含有化合物(B1)及びイソシアネート基含有化合物(B2)
架橋剤として、本発明によるコーティング剤は、(α)少なくとも1個のシラン基並びに場合により遊離した、すなわちブロック化されていない、及び/又はブロック化されたイソシアネート基を有する1種以上の化合物(B1)と、(β)少なくとも2個の遊離した、すなわちブロック化されていない、及び/又はブロック化されたイソシアネート基を有する1種以上の化合物(B2)とからの混合物を含有する。有利には、本発明によるコーティング剤は、遊離イソシアネート基を有する化合物(B2)及び−(B1)がさらにイソシアネート基を有する場合−遊離イソシアネート基を有する化合物(B1)を含有する。
【0023】
一液型コーティング剤に関わる場合、イソシアネート基含有化合物(B2)及び−(B1)がさらにイソシアネート基を有する場合−その遊離イソシアネート基が慣用のブロック化剤でブロックされている化合物(B1)が選択される。例えば、該イソシアネート基は、置換ピラゾール、殊にアルキル置換ピラゾール、例えば3−メチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、4−ニトロ−3,5−ジメチルピラゾール、4−ブロモ−3,5−ジメチルピラゾール等でブロックされることができる。極めて有利には、成分(B1)及び(B2)のイソシアネート基は3,5−ジメチルピラゾールでブロックされる。
【0024】
成分(B1)としてコーティング剤中で用いられる化合物は、式(I)
−X−Si−R''
xG
3-x (I)
[式中、
G=同一の若しくは異なる加水分解性基、殊にG=アルコキシ基(OR')、
R'=水素、アルキル又はシクロアルキル、ここで、炭素鎖は、隣接していない酸素基、硫黄基又はNRa基によって中断されていてもよく、ここで、Ra=アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキル、有利には
R'=エチル及び/又はメチル、
X=有機基、殊に直鎖及び/若しくは分枝鎖の炭素原子1〜20個を有するアルキレン基又はシクロアルキレン基、極めて有利にはX=炭素原子1〜4個を有するアルキレン基、
R''=アルキル、シクロアルキル、アリール、又はアラルキル、ここで、炭素鎖は、隣接していない酸素基、硫黄基又はNRa基によって中断されていてもよく、ここで、Ra=アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキル、有利にはR''=殊に炭素原子1〜6個を有するアルキル基、
x=0〜2、有利には0〜1、特に有利にはx=0]の少なくとも1個のシラン基を含有する。
【0025】
成分(B1)としてコーティング剤中で用いられる化合物は、シラン基に加えてさらに遊離イソシアネート基及び/又はブロック化イソシアネート基を有してよい。しかしながら、有利にはコーティング剤中で用いられる成分(B1)は本質的にイソシアネート基不含である。
【0026】
成分(B1)の製造のために適しているのは、自体公知の、置換された若しくは非置換の芳香族、脂肪族、脂環式及び/又は複素環式のポリイソシアネートである。有利なポリイソシアネートの例は、以下のものである:2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4'−ジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ビフェニレンジイソシアネート、3,3'−ジメチル−4,4'−ジフェニレンジイソシアネート、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、1,12−ドデカンジイソシアネート、シクロブタン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキシルジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドトルエン−2,6−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,3−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,4−ジイソシアネート、ペルヒドロジフェニルメタン−2,4'−ジイソシアネート、4,4'−メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート(例えばBayer AG社のDesmodur
(R)W)、テトラメチルキシリルジイソシアネート(例えばAmerican Cynamid社のTMXDI
(R))及び前述のポリイソシアネートの混合物。
【0027】
有利なポリイソシアネートはまた、前述のジイソシアネートのビウレット−ダイマー及びイソシアヌレート−トリマーである。特に有利なポリイソシアネートPIは、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及び4,4'−メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート、それらのビウレット−ダイマー及び/又はイソシアヌレート−トリマーである。
【0028】
特に有利には、コーティング剤は、シラン基に加えてさらにイソシアヌレート基及び/又はアロファネート基を有する少なくとも1種のイソシアネート基含有化合物(B1)を含有する。
【0029】
本発明の更なる実施形態において、ポリイソシアネートは、ポリオールを化学量論的過剰量の前述のポリイソシアネートと反応させることによって得られるウレタン構造単位を有するポリイソシアネート−プレポリマーである。かかるポリイソシアネート−プレポリマーは、例えばUS−A−4,598,131に記載されている。
【0030】
特に有利には、コーティング剤は、
構造単位(II)及び(III)の全単位を基準として、式(II)
−NR−(X−SiR''
x(OR')
3-x) (II)0〜100モル%
及び
構造単位(II)及び(III)の全単位を基準として、式(III)
−N(X−SiR''
x(OR')
3-x)
n(X'−SiR''
y(OR')
3-y)
m (III)0〜100モル%
を有する少なくとも1種の化合物(B1)を含有し、ここで、
R=水素、アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキル、ここで、炭素鎖は、隣接していない酸素基、硫黄基又はNRa基によって中断されていてもよく、ここで、Ra=アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキル、
X、X'=直鎖及び/若しくは分枝鎖の炭素原子1〜20個を有するアルキレン基又はシクロアルキレン基、有利にはX、X'=炭素原子1〜4個を有するアルキレン基、
n=0〜2、m=0〜2、m+n=2、並びにx、y=0〜2であり、
かつR'並びにR''は、式(I)に記載した意味を有する。
【0031】
そのつどの有利なアルコキシ基(OR')は、同じであるか若しくは異なっていてよく、しかしながら、該基の構造にとって重要なことは、どのようにしてこれらが加水分解性シラン基の反応性に影響を及ぼしているかである。有利にはR'は、殊に炭素原子1〜6個を有するアルキル基である。特に有利なのは、シラン基の反応性を高める、すなわち良好な脱離基となる基R'である。その限りでは、メトキシ基がエトキシ基に対して有利であり、かつ、これはまたプロポキシ基に対して有利である。それゆえ特に有利には、R'=エチル及び/又はメチル、殊にメチルである。
【0032】
さらに、有機官能性シランの反応性は、シラン官能性と、変性部分との反応に用いられる有機官能基との間のスペーサーX、X'の長さによっても著しく影響を及ぼされ得る。この例として、Wacker社より入手可能であり、かつメチレン基が"γ"シランにおいて存在するプロピレン基の代わりにSi原子と官能基の間にある"α"シランが挙げられる。
【0033】
本発明により有利には用いられる、構造単位(II)及び(III)で官能化された化合物(B1)は、特に有利には、ジ−及び/又はポリイソシアネート(PI)を、式(IIa)
H−NR−(X−SiR''
x(OR)'
3-x) (IIa)
の少なくとも1種の化合物
及び式(IIIa)
HN(X−SiR''
x(OR')
3-x)
n(X'−SiR''
y(OR')
3-y)
m (IIIa)
の少なくとも1種の化合物と反応させることによって得られ、ここで、置換基は上述の意味を有する。
【0034】
本発明により有利な化合物(IIIa)は、ビス(2−エチルトリメトキシシリル)アミン、ビス(3−プロピルトリメトキシシリル)アミン、ビス(4−ブチルトリメトキシシリル)アミン、ビス(2−エチルトリエトキシシリル)アミン、ビス(3−プロピルトリエトキシシリル)アミン及び/又はビス(4−ブチルトリエトキシシリル)アミンである。極めて有利なのは、ビス(3−プロピルトリメトキシシリル)アミンである。かかるアミノシランは、例えばDEGUSSA社のDYNASILAN
(R)若しくはOSI社のSilquest
(R)の商標名で調達可能である。
【0035】
本発明により有利な化合物(IIa)は、アミノアルキルトリアルコキシシラン、例えば好ましくは2−アミノエチルトリメトキシシラン、2−アミノエチルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、4−アミノブチルトリメトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシランである。特に有利な化合物(Ia)は、N−(2−(トリエトキシシリル)エチル)アルキルアミン、N−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)アルキルアミン、N−(4−(トリメトキシシリル)ブチル)アルキルアミン、N−(2−(トリエトキシシリル)エチル)アルキルアミン、N−(3−(トリエトキシシリル)プロピル)アルキルアミン及び/又はN−(4−(トリエトキシシリル)ブチル)アルキルアミンである。極めて有利なのは、N−(3−トリメトキシシリル)プロピル)ブチルアミンである。かかるアミノシランは、例えばDEGUSSA社のDYNASILAN
(R)若しくはOSI社のSilquest
(R)の商標名で調達可能である。
【0036】
有利なのは、イソシアネート基含有化合物(B1)が、式(II)の少なくとも1つのモノシラン構造単位(II)0〜100モル%、特に有利には5〜70モル%、極めて有利には10〜50モル%、並びに式(III)の少なくとも1つのビスシラン構造単位0〜100モル%、特に有利には30〜95モル%、極めて有利には50〜90モル%を、それぞれ構造単位(II)及び(III)の全単位を基準として有することである。
【0037】
特に有利なのは、成分(B1)において、構造単位(II)及び/又は(III)に反応したイソシアネート基の全割合は、10〜100モル%、有利には30〜100モル%、特に有利には50〜100モル%である。
【0038】
同じ固形分の場合、つまり一般には、成分(B1)は成分(B2)より高い粘度を有する。それゆえ所望されていることは、成分(B1)の割合を可能な限り低く選択し、それに対して成分(B2)の割合を可能な限り高く選択することである。しかしそれにも関わらず、成分(B1)によりコーティング剤中で十分高いシラン官能性を保証するために、それゆえ、成分(B1)中でシラン基の割合が可能な限り高く選択され、かつ反応していない残留イソシアネート基の割合が可能な限り低く選択される。
【0039】
極めて有利なイソシアネート基含有化合物(B1)は、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート及び/又はイソホロンジイソシアネート及び/又は4,4'−メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート及び/又はそれらのイソシアヌレート−トリマーとビス(3−プロピルトリメトキシシリル)アミン及び場合によりN−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)ブチルアミンとの反応生成物である。
【0040】
本発明により用いられるポリイソシアネート成分(B1)の固形分は、好ましくは60質量%を上回り、有利には少なくとも62質量%である。
【0041】
成分(B2)としてコーティング剤中で用いられる、1分子当たり少なくとも2個の遊離した、すなわちブロック化されていない、及び/又はブロック化されたイソシアネート基を有する化合物は、少なくとも1種の直鎖脂肪族ジイソシアネート(DI)から製造されている。これによって、結果生じる化合物(B2)は、本発明によるコーティング剤中で、70質量%を上回る、殊に少なくとも75質量%の固形分を有する固形分に富んだ溶液の形態で用いられることができ、かつ同時に結果生じるコーティングの表面特性、例えば殊に流展性も非常に良好であることが保証されている。
【0042】
有利には、成分(B2)としてコーティング剤中で用いられるイソシアネート基含有化合物は、炭素原子3〜12個、殊に炭素原子4〜10個、極めて有利には炭素原子5〜6個を有する少なくとも1種の直鎖脂肪族ジイソシアネート(DI)から製造されている。
【0043】
成分(B2)の製造に適した直鎖脂肪族ジイソシアネート(DI)の例は、ブタンジイソシアネート、ペンタンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート、ヘプタンジイソシアネート、オクタンジイソシアネート、ノナンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、ウンデカンジイソシアネート、ドデカンジイソシアネート及び殊にヘキサンジイソシアネートである。
【0044】
そのうえ本発明にとって重要なのは、イソシアネート基含有化合物(B2)が遊離イソシアネート基及び/又はブロック化イソシアネートに加えてさらにウレトジオン基を含有することである。ウレトジオン基を有するイソシアネート基含有化合物の使用によって、イソシアヌレートの使用とは対照的に、かつ同じジイソシアネートのビウレット及び/又はアロファネートの使用とは対照的に、ずっと良好な表面特性、殊により低い長波状値を有するコーティングが得られる。塗布され、焼付けされた長波状値は、塗膜表面の可視的なプロファイルの測定を可能にするウェーブスキャン法によって用いた。このために、ビックガードナー社の"Wave Scan"装置によって反射の強度("リップル")を測定し、その際、10cmの距離にわたって1250個の測定点を記録した、反射を、測定装置により、長いうねり("長波")、すなわち0.6〜10mmの範囲の構造に対する光の強度の変化量、並びに短いうねり("短波")、すなわち0.1mm〜0.6mmの範囲の構造に対する光の強度の変化量とに区分する。
【0045】
有利には、化合物(B2)は、>50モル%、有利には50モル%超〜90モル%、特に有利には65〜80モル%のウレトジオン基含有率を、そのつど直鎖脂肪族ジイソシアネート(DI)のイソシアネート−オリゴマー化によって生じた構造タイプの全体を基準として有する。成分(B2)として適したウレトジオンは、例えばEP−A−1426393、第2頁、段落[0012]、第4頁、段落[0030]までにも記載されている。ここで、市販のウレトジオンは、そのつどのジイソシアネートの相応するイソシアヌレート5〜30質量%を、そのつど市販製品の全質量を基準として含有し得ることが知られている。このイソシアヌレート割合は必ずしも有利というわけではないが、しかし、一般的に本発明によるコーティング剤中で何ら問題を引き起こさない。ウレトジオンを介してコーティング剤中に導入されたこれらのイソシアヌレートは、その場合、形式上、ウレトジオン基含有成分(B2)には分類されず、上記成分(B1)に分類される。
【0046】
ウレトジオン基含有化合物(B2)においては、構造単位(I)、(II)及び/又は(III)にイソシアネート基の5モル%未満、有利には2.5モル%未満が反応しており、特に有利には該イソシアネート基の一切が反応していないことが有利である。
【0047】
本発明により用いられるポリイソシアネート成分(B2)の固形分は、好ましくは70質量%を上回り、有利には少なくとも75質量%である。
【0048】
本発明により有利なのは、ウレトジオン基含有成分(B2)対シラン基含有成分(B1)の混合比が、成分(B2)0.5当量対成分(B1)1.0当量〜成分(B2)50.0当量対成分(B1)1.0当量、有利には成分(B2)0.8当量対成分(B1)1.0当量〜成分(B2)20.0当量対成分(B1)1.0当量にあるコーティング剤である。
【0049】
ここで、化合物(B1)若しくは(B2)の当量は、(B1)若しくは(B2)の使用量(g)を、化合物(B1)若しくは(B2)のグラム当量(g)で割ることによって突き止められる。場合によっては市販のウレトジオン基含有化合物(B2)中に含まれるイソシアネート基含有化合物の割合は、当量での混合比の算出に際して簡素化のために成分(B2)に加えられ、すなわち、後述の算出に際しては、理想化された化合物(B2)が前提とされ、とりわけ−そもそも存在していても−(B2)中のイソシアネート基含有化合物のせいぜい些細な割合は当量比に極めて僅かにしか影響を及ぼさないからである。
【0050】
化合物(B1)のグラム当量を突き止めるために、まずシラン基不含化合物(B1)のグラム当量EEV(g)が、公知のようにDIN EN ISO 3219/A.3に従って測定されたイソシアネート基含有率(質量%)から計算により突き止められる:
EEW(B1 シラン化されていない)=(100質量%
*42g)/イソシアネート含有率(質量%)
【0051】
シラン化された化合物(B1)のグラム当量EEW(g)も同様に計算により、直前に記載したシラン化されていない化合物(B1)のグラム当量EEWによって、イソシアネート基のシラン化された割合c、シラン単位(I)の割合as1、シラン単位(II)の割合as2、シラン単位(III)の割合as3並びにシラン単位(I)、(II)及び(III)の理論グラム当量から以下の通りに突き止められる:
EEW(B1 シラン化された)=EEW(B1、シラン化されていない)+c
*[as1
*EEW(I))+(as2
*EEW(II)+(as3
*EEW(III)]
式中、
c =100モル%で割った、式(I)+(II)+(III)のシラン単位に対するB1に最初から存在するイソシアネート基の反応度(mol%)、
as1 =100モル%で割った、B1において構造単位(I)に反応したイソシアネート基の割合(モル%)、ただし、構造単位(I)+(II)+(III)の合計は常に100モル%である、
as2 =100モル%で割った、B1において構造単位(II)に反応したイソシアネート基の割合(モル%)、ただし、構造単位(I)+(II)+(III)の合計は常に100モル%である、
as3 =100モル%で割った、B1において構造単位(III)に反応したイソシアネート基の割合(モル%)、ただし、構造単位(I)+(II)+(III)の合計は常に100モル%である、
EEW(I) =計算により構造式から突き止めた構造単位(I):−X−Si−R''
xG
3-xのグラム当量、ここで、X、R''、G、xは、上で式(I)の箇所で記載した意味を有する、
EEW(II) =計算により構造式から突き止めた構造単位(II):−NR−(X−Si−R''
x(OR')
3-x)のグラム当量、ここで、X、R、R''、R'、xは、上で式(II)の箇所で記載した意味を有する、
EEW(III) =計算により構造式から突き止めた構造単位(III):−N(X−SiR''
x(OR')
3-x)
n(X'−SiR''
y(OR')
3-y)
mのグラム当量、ここで、X、R''、R'、xは、上で式(III)の箇所で記載した意味を有する。
【0052】
化合物(B2)のグラム当量を突き止めるために、再びまずシラン基不含化合物(B2)のグラム当量EEV(g)が、公知のようにDIN EN ISO 3219/A.3に従って測定されたイソシアネート基含有率(質量%)から計算により突き止められる:
EEW(B2 シラン化されていない)=(100質量%
*42g)/イソシアネート含有率(質量%)
【0053】
成分(B2)がシラン基を含有する場合、シラン化された化合物(B2)のグラム当量EEW(g)も同様に計算により、直前に記載したシラン化されていない化合物(B2)のグラム当量EEWによって、イソシアネート基のシラン化された割合c'、シラン単位(I)の割合as'1、シラン単位(II)の割合as'2、シラン単位(III)の割合as'3並びにシラン単位(I)、(II)及び(III)の理論グラム当量から以下の通りに突き止められる:
EEW(B2 シラン化された)=EEW(B2、シラン化されていない)+c'
*[(as'1
*EEW(I))+(as'2
*EEW(II)+(as'3
*EEW(III)]
式中、
c' =100モル%で割った、式(I)+(II)+(III)のシラン単位に対する最初から(B2)に存在するイソシアネート基の反応度(mol%)、
as'1 =100モル%で割った、B2において構造単位(I)に反応したイソシアネート基の割合(モル%)、ただし、構造単位(I)+(II)+(III)の合計は常に100モル%であり、
as'2 =100モル%で割った、B2において構造単位(II)に反応したイソシアネート基の割合(モル%)、ただし、構造単位(I)+(II)+(III)の合計は常に100モル%であり、
as'3 =100モル%で割った、B2において構造単位(III)に反応したイソシアネート基の割合(モル%)、ただし、構造単位(I)+(II)+(III)の合計は常に100モル%である。
【0054】
ヒドロキシル基含有化合物(A)
ヒドロキシル基含有化合物(A)として、少なくとも1種のオリゴマー及び/又はポリマーのポリオールが用いられる。
【0055】
有利なオリゴマー及び/又はポリマーのポリオール(A)は、ポリスチレン標準品に対するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定して、重量平均分子量Mw>500ダルトン、有利には800〜100,000ダルトン、殊に1,000〜50,000ダルトンを有する。
【0056】
特に有利なのは、ポリエステルポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリシロキサンポリオール、ポリアクリレートポリオール及び/又はポリメタクリレートポリオール並びにそれらの混合ポリマーであり、以下ではポリアクリレートポリオールが挙げられる。
【0057】
ポリオールは、有利には30〜400mg KOH/gのOH価、殊に100〜300mg KOH/gのOH価を有する。ヒドロキシル価(OH価)は、物質1gをアセチル化させた時に結合される酢酸量と等量である水酸化カリウムのmg量がいくらであるのかを定める。試料は、測定に際して無水酢酸−ピリジンを用いて沸騰させられ、かつ発生する酸が水酸化カリウム溶液で滴定される(DIN 53240−2)。
【0058】
DIN−EN−ISO 11357−2に従ったDSC測定によって測定されたポリオールのガラス転移温度は、有利には−150〜100℃、特に有利には−120℃〜80℃である。
【0059】
適したポリエステルポリオールは、例えばEP−A−0994117及びEP−A−1273640に記載されている。ポリウレタンポリオールは、好ましくはポリエステルポリオール−プレポリマーを適したジ−若しくはポリイソシアネートと反応させることによって製造され、それは例えばEP−A−1273640に記載されている。適したポリシロキサンポリオールは、例えばWO−A−01/09260に記載されており、その際、そこに挙げられたポリシロキサンポリオールは、有利には更なるポリオール、殊により高いガラス転移温度を有するものと組み合わせて用いられることができる。
【0060】
本発明により極めて有利なポリ(メタ)アクリレートポリオールは、一般にコポリマーであり、かつ、好ましくはそのつどポリスチレン標準品に対してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定して、1,000〜20,000ダルトン、殊に1,500〜10,000ダルトンの重量平均分子量Mwを有する。
【0061】
コポリマーのガラス転移温度は、一般に−100〜100℃、殊に−50〜80℃である(DIN−EN−ISO 11357−2に従ってDSC測定により測定)。
【0062】
ポリ(メタ)アクリレートポリオールは、有利には60〜250mg KOH/g、殊に70〜200mg KOH/gのOH価、並びに0〜30mg KOH/gの酸価を有する。
【0063】
ヒドロキシル価(OH価)は、物質1gをアセチル化させた時に結合される酢酸量と等量の水酸化カリウムのmg量がいくらであるのかを定める。試料は、測定に際して無水酢酸−ピリジンを用いて沸騰させられ、かつ発生する酸が水酸化カリウム溶液で滴定される(DIN 53240−2)。この場合、酸価は、そのつどの化合物1gを中和するのに必要とされる水酸化カリウムのmg数を定める(DIN EN ISO 2114)。
【0064】
ヒドロキシル基含有モノマー構成単位として、有利にはヒドロキシアルキルアクリレート及び/又はヒドロキシアルキルメタクリレート、例えば、殊に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルメタクリレート並びに、殊に4−ヒドロキシブチルアクリレート及び/又は4−ヒドロキシブチルメタクリレートが用いられる。
【0065】
更なるモノマー構成単位として、ポリ(メタ)アクリレートポリオールのために、有利にはアルキルメタクリレート及び/又はアルキルメタクリレート、例えば、好ましくはエチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、アミルアクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、エチルヘキシルアクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、3,3,5−トリメチルヘキシルアクリレート、3,3,5−トリメチルヘキシルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルアクリレート又はラウリルメタクリレート、シクロアルキルアクリレート及び/又はシクロアルキルメタクリレート、例えばシクロペンチルアクリレート、シクロペンチルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート又は殊にシクロヘキシルアクリレート及び/又はシクロヘキシルメタクリレートが用いられる。
【0066】
ポリ(メタ)アクリレートポリオールのための更なる構成単位として、ビニル芳香族炭化水素、例えばビニルトルエン、α−メチルスチレン又は殊にスチレン、アクリル酸若しくはメタクリル酸のアミド又はニトリル、ビニルエステル又はビニルエーテル、並びに少量で殊にアクリル酸及び/又はメタクリル酸を用いてよい。
【0067】
殊に化合物(B)のシラン化の度合いがより僅かな場合に、本発明によるコーティング剤の固形分を更に高めるために、かつ表面品質をさらに改善するために(より低い長波状値)、殊にラクトンで変性されたヒドロキシル基含有のオリゴマー及び/又はポリマーの化合物(A)が用いられる。特に有利にはε−カプロラクトンで変性されたヒドロキシル基含有のオリゴマー及び/又はポリマーの化合物(A)、極めて有利にはε−カプロラクトンで変性されたヒドロキシル基含有のポリアクリレートポリオール及び/又はε−カプロラクトンで変性されたヒドロキシル基含有ポリメタクリレートポリオールが用いられる。
【0068】
ラクトンで変性された、殊にε−カプロラクトンで変性されたヒドロキシル基含有のオリゴマー及び/又はポリマーの化合物(A)は、当業者に公知の方法で、まずヒドロキシル基含有のオリゴマー及び/又はポリマーの化合物を製造し、引き続きラクトン若しくはε−カプロラクトンと反応させることによって製造することができる。しかし、まずモノマー構造成分の一部を、殊にヒドロキシル基含有モノマー構造成分の一部を、ラクトン若しくはε−カプロラクトンと反応させ、引き続きそれからラクトンで変性された若しくはε−カプロラクトンで変性されたオリゴマー若しくはポリマーを合成することも可能である。ラクトン若しくはε−カプロラクトンで変性されたヒドロキシル基含有化合物(A)は、例えばUS−A−4,546,046、第4欄、第24行目、第7欄、第6行目までにも記載されている。
【0069】
本発明の更なる実施形態においては、ヒドロキシル基含有化合物Aは、ヒドロキシル基のほかにさらにシラン基(I)を有していてもよい。
【0070】
成分(A)及び(B)の組合せ物並びにコーティング剤の更なる成分
ポリオール(A)及びシラン化されたポリイソシアネート(B1)+ウレトジオン基含有ポリイソシアネート(B2)からの混合物の質量割合は、好ましくは、イソシアネート含有化合物(B1)+(B2)の反応しなかったイソシアネート基対ヒドロキシル基含有化合物(A)のヒドロキシル基のモル当量比が、0.8:1〜1:1.2、有利には0.9:1〜1.1:1、特に有利には0.95:1〜1.05:1となるように選択される。
【0071】
有利には本発明により、少なくとも1種のヒドロキシル基含有ポリアクリレート(A)及び/又は少なくとも1種のヒドロキシル基含有ポリメタクリレート(A)を、そのつどコーティング剤の固形分を基準として5〜95質量%、有利には20〜70質量%含有するコーティング剤が用いられる。
【0072】
同様に有利には、イソシアネート基含有化合物(B1)+イソシアネート基含有化合物(B2)からの混合物を、そのつどコーティング剤の固形分を基準として5〜95質量%、有利には30〜80質量%含有するコーティング剤が用いられる。
【0073】
一液型コーティング剤に関する場合、遊離イソシアネート基がブロック化剤でブロックされているイソシアネート基含有化合物(B1)及び(B2)が選択される。例えば、該イソシアネート基は、置換ピラゾール、殊にアルキル置換ピラゾール、例えば3−メチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、4−ニトロ−3,5−ジメチルピラゾール、4−ブロモ−3,5−ジメチルピラゾール等でブロックされていてよい。特に有利には、成分(B1)及び(B2)のイソシアネート基は、3,5−ジメチルピラゾールでブロックされる。
【0074】
本発明により有利な2液型(2K)コーティング剤の場合、コーティング剤の塗布直前に、ヒドロキシル基含有化合物(A)並びに後述する更なる成分を含有する塗料成分が、イソシアネート基含有化合物(B1)及び(B2)並びに場合により後述する更なる成分と自体公知の方法で混合され、その際、一般に、化合物(A)を含有する塗料成分は、触媒並びに溶剤の一部を含有する。
【0075】
本発明によるコーティング剤は、場合によりヒドロキシル基含有成分(A)のほかにさらに、該成分(A)とは異なる1種以上のヒドロキシル基含有化合物(C)を含有してよい。有利には、これらの化合物(C)は、ポリオール成分(A)+(C)の非揮発性分を基準として10〜50質量%、特に有利には20〜40質量%を占める。
【0076】
ヒドロキシル基含有化合物(C)として、低分子量ポリオールも、成分(A)とは異なるオリゴマー及び/又はポリマーのポリオールも用いられる。
【0077】
例えば、低分子量ポリオールとしてジオール、例えば有利にはエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール及び1,2−シクロヘキサンジメタノール、並びにポリオール、例えば有利にはトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールヘキサン、1,2,4−ブタントリオール、ペンタエリスリトール並びにジペンタエリスリトールが用いられる。
【0078】
有利には、かかる低分子量ポリオールは、僅かな量でポリオール成分(A)に加えられる。
【0079】
オリゴマー及び/又はポリマーのポリオール(C)として、成分(A)がもっぱらポリアクリレートポリオール及び/又はポリメタクリレートポリオールから成る場合、例えばポリエステルポリオール、ポリウレタンポリオール及びポリシロキサンポリオールが用いられる。
【0080】
触媒(D)
本発明によるコーティング剤は、有利にはシラン基を架橋するための少なくとも1種の触媒(D)を含有する。例は、亜鉛又はアルミニウムを基礎とするキレート配位子を有する金属錯体、例えばWO05/03340に記載されるチタネート又はルイル酸であり、ここでは、しかし、触媒の選択に際して、触媒がコーティング剤の黄変をもたらさないように留意されるべきである。そのうえ、いくつかの公知の用いられる触媒は毒物学上の理由からあまり所望されていない。
【0081】
それゆえ有利なのは、触媒(D)として、リン含有、殊にリン含有及び窒素含有の触媒を用いることである。その際、2種以上の異なる触媒(D)からの混合物も用いることができる。
【0082】
適したリン含有触媒(D)の例は、好ましくは非環式ホスホン酸ジエステル、環式ホスホン酸ジエステル、非環式ジホスホン酸ジエステル及び環式ジホスホン酸ジエステルから成る群からの置換されたホスホン酸ジエステル及びジホスホン酸ジエステルである。この種の触媒は、例えばドイツ国特許出願DE−A−102005045228に記載されている。
【0083】
殊に、しかし、好ましくは非環式リン酸ジエステル及び環式リン酸ジエステルから成る群からの置換されたリン酸モノエステル及びリン酸ジエステル、特に有利にはリン酸モノエステル及びリン酸ジエステルのアミン付加物が用いられる。
【0084】
極めて有利には、触媒(D)として、相応するアミンブロック化リン酸エステル、ここでは殊にアミンブロック化リン酸エチルヘキシルエステル及びアミンブロック化リン酸フェニルエステル、極めて有利にはアミンブロック化リン酸ビス(2−エチルヘキシル)エステルが用いられる。
【0085】
リン酸エステルをブロックするアミンの例として、殊に第三級アミン、例えば二環式アミン、例えばジアザビシクロオクタン(DABCO)、ジアザビシクロノネン(DBN)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジメチルドデシルアミン又はトリエチルアミンが挙げられる。特に有利には、リン酸エステルのブロック化のために、140℃の硬化条件でも触媒の良好な作用を保証する第三級アミンが用いられる。
【0086】
アミンでブロック化された特定のリン酸触媒は商業的にも得られる(例えばKing Industries社のNacure型)。例えば、アミンブロック化リン酸部分エステルを基礎とするKing Industries社のNacure 4167の名称で特に適した触媒が挙げられる。
【0087】
触媒は、本発明によるコーティング剤の非揮発性成分を基準として、好ましくは0.01〜20質量%の割合で、特に有利には0.1〜10質量%の割合で用いられる。その際、触媒の比較的低い活性は、相応して比較的高い使用量によって部分的に補われることができる。
【0088】
本発明によるコーティング剤はなお、二環式アミン、殊に不飽和二環式アミンを基礎とする更なるアミンを含有してよい。適したアミン触媒の例は、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン又は1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンである。
【0089】
これらのアミン触媒は、本発明によるコーティング剤の非揮発性成分を基準として、好ましくは0.01〜20質量%の割合で、特に有利には0.1〜10質量%の割合で用いられる。
【0090】
本発明によるコーティング剤の溶剤として、コーティング剤中で化合物(A)、(B)及び場合により(C)に対して化学的に不活性であり、かつ該コーティング剤の硬化に際しても(A)及び(B)と反応しない溶剤が殊に適している。かかる溶剤の例は、脂肪族及び/又は芳香族の炭化水素、例えばトルエン、キシレン、ソルベントナフサ、Solvesso 100又はHydrosol
(R)(ARAL社)、ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン又はメチルアミルケトン、エステル、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル又はエチルエトキシプロピオネート、エーテル又は前述の溶剤からの混合物である。有利には非プロトン性の溶剤若しくは溶剤混合物は、該溶剤を基準として最大1質量%、特に有利には最大0.5質量%の含水率を有する。
【0091】
化合物(A)、(B)及び場合により(C)のほかになお、好ましくはポリ(メタ)アクリレート(A)のヒドロキシル基並びに/又は化合物(B)の遊離イソシアネート基並びに/又は化合物(B)及び/若しくは(C)のアルコキシシリル基と反応し、かつ網状構造点を形成することができる結合剤(E)を用いてよい。
【0092】
例えば、成分(E)としてアミノプラスト樹脂及び/又はエポキシド樹脂が使用可能である。慣用のかつ公知のアミノプラスト樹脂が考慮に入れられ、それらのメチロール基及び/又はメトキシメチル基は部分的にカルバメート基又はアロファネート基によって脱官能化されていてよい。この種類の架橋剤は、特許文献US−A−4710542及びEP−B−0245700並びにAdvanced Organic Coatings Science and Technology Series,1991,第13巻、第193頁〜第207頁中のB.Singh及び共同研究員"Carbamylmethylated Melamines,Novel Crosslinkers for the Coatings Industry"の記事に記載されている。
【0093】
通例、かかる成分(E)は、本発明によるコーティング剤の非揮発性成分を基準として、40質量%までの割合で、有利には30質量%までの割合で、特に有利には25質量%までの割合で用いられる。
【0094】
そのうえまた、本発明によるコーティング剤混合物若しくは本発明によるコーティング剤は、そのつど該コーティング剤の非揮発性成分を基準として、少なくとも1種の慣用のかつ公知の塗料添加剤(F)を有効量で、すなわち、好ましくは30質量%までの量で、特に有利には25質量%までの量で、殊に20質量%までの量で含有してよい。
【0095】
適した塗料添加剤(F)の例は:
− 殊にUV吸収剤;
− 殊に光安定剤、例えばHALS化合物、ベンズトリアゾール又はオキサルアニリド;
− ラジカル捕捉剤;
− スリップ剤;
− 重合禁止剤;
− 消泡剤;
− 従来技術から一般的に公知であり、有利には−Si(OR)
3基に対して不活性である反応性希釈剤;
− 湿潤剤、例えば、シロキサン、フッ素含有化合物、カルボン酸半エステル、リン酸エステル、ポリアクリル酸及びそれらのコポリマー又はポリウレタン;
− 接着促進剤、例えばトリシクロデカンジメタノール;
− 均展剤;
− 造膜性助剤、例えばセルロース誘導体;
− 充填剤、例えば二酸化ケイ素、酸化アルミニウム又は酸化ジルコニウムを基礎とするナノ粒子;補足的に、さらにRoempp Lexikon≫Lacke und Druckfarben≪Georg Thieme Verlag,Stuttgart,1998、第250頁〜第252頁が参照される;
− レオロジー制御剤、例えば特許文献WO94/22968、EP−A−0276501、EP−A−0249201又はWO97/12945から公知の添加剤;例えばEP−A−0008127に開示されているような架橋ポリマー微小粒子;モンモリロナイト型の無機層状ケイ酸塩、例えばアルミニウム−マグネシウム−シリケート、ナトリウム−マグネシウム−及びナトリウム−マグネシウム−フッ素−リチウム−層状ケイ酸塩;シリカ、例えばAerosile
(R);又はイオン性基及び/若しくは会合作用基を有する合成ポリマー、例えばポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリビニルピロリドン、スチレン/無水マレイン酸コポリマー又はエチレン/無水マレイン酸コポリマー及びそれらの誘導体又は疎水性変性エトキシル化ウレタン又はポリアクリレート;
− 難燃剤及び/又は
− 捕水剤
である。
【0096】
本発明の更なる実施形態において、本発明によるコーティング混合物若しくは本発明によるコーティング剤は更なる顔料及び/又は充填剤をなお含有してよく、かつ着色トップコートの製造に用いられることができる。そのために用いられる顔料及び/又は充填剤は当業者に公知である。
【0097】
本発明によるコーティング剤から製造される本発明によるコーティングは、すでに硬化した電着塗装コート、サーフェーサーコート、ベースコート又は慣例のかつ公知のクリアコート上にも際立って付着するので、それらは自動車量産(OEM)塗装における使用のほかに、自動車修理塗装及び/又は自動車取り付け部品のコーティング又はすでに塗装された自動車の車体のモジュールの耐引掻加工に極めて適している。
【0098】
本発明によるコーティング剤の塗布は、全ての慣例の塗布法、例えばスプレー塗布、ブレード塗布、ブラシ塗布、流し塗り、浸漬塗布、含浸塗布、滴下塗布又はロール塗布によって行うことができる。この場合、コーティングされるべき基材自体は止まっていてよく、その際、塗布器具又は塗布装置が動かされる。その間に、コーティングされるべき基材、殊にコイルも動かしてよく、その際、塗布装置は基材に対して止まっているか又は適した方法で動かされる。
【0099】
好ましくは、スプレー塗布法、例えば圧縮空気スプレー法、無気スプレー法、高速回転法、静電スプレー塗装法(ESTA)が、場合により高温スプレー塗布法、例えばホットエア−ホットスプレー法と合わせて適用される。
【0100】
塗布された本発明によるコーティング剤の硬化は、ある一定の静止時間後に行ってよい。静止時間は、例えば、流展のために及び塗料層の脱気のために又は揮発性成分、例えば溶剤の希釈のために役立つ。静止時間は、より高い温度を適用することによって及び/又は空気湿度を減少させることによって、この場合、塗料層の損傷又は変化、例えば早期の完全な架橋が始まらない限りは促進及び/又は短縮することができる。
【0101】
コーティング剤の熱硬化は、方法上の特殊性を有さず、慣例のかつ公知の方法、例えば循環空気キャビネット内での加熱又はIRランプ照射によって行われる。この場合、熱硬化は段階的に行ってもよい。更なる有利な硬化法は、近赤外(NIR線)による硬化である。
【0102】
好ましくは、熱硬化は、30〜200℃、特に有利には40〜190℃、殊に50〜180℃の温度で、1分〜10時間まで、特に有利には2分〜5時間まで、殊に3分〜3時間までのあいだ行われ、その際、自動車修理塗装及びプラスチック部材の塗装のために適用される、有利には30〜90℃の間にある温度で、より長い硬化時間も適用することができる。
【0103】
本発明によるコーティング剤は高い固形分を有し、かつ耐引掻性の強い新規の硬化されたコーティング、殊に塗膜、特にクリア塗膜、成形部材、特に光学成形部材及び自立フィルムを提供し、ここで、高い耐引掻性は長時間負荷後も存続する。同時に、本発明により得られたコーティングは良好な中間層接着性も有し、かつ非常に良好な目視による全体的印象を有する。最後に、本発明によるコーティング及び塗膜、特にクリア塗膜は、応力亀裂が発生することなく、>40μmの層厚でも製造することができる。
【0104】
それゆえ本発明によるコーティング剤は、装飾的な、保護及び/又は効果付与する耐引掻性の高い、移動手段(殊に自動車両、例えば二輪車、バス、トラック又は乗用車)の車体又はこれらの部材;屋内領域及び屋外領域における建築物;家具、窓及び戸;プラスチック成形部材、殊にCD及び窓;工業的な小部品、コイル、コンテナ及びパッケージ;白色品;フィルム;光学的、電気工学的及び機械的な部品並びにガラス中空体及び日々の生活必需品アイテムのコーティング及び塗膜として適している。
【0105】
殊に本発明によるコーティング剤及び塗膜、殊にクリア塗膜は、技術的及び審美的に特に要求の高い自動車量産塗装の分野において、及び乗用車の車体、殊に高級車の車体用のプラスチック取り付け部品のコーティングのために、例えばルーフ、トランクリッド、エンジンフード、フェンダー、バンパー、スポイラー、ドアシル、ライニングストリップ、サイドクラッディング等の製造のために、並びに自動車修理塗装の分野において用いられる。
【0106】
プラスチック部材は、通常、ASA、ポリカーボネート、ASAとポリカーボネートからのブレンド、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート又は耐衝撃性改良ポリメチルメタクリレート、殊にASAとポリカーボネートからのブレンドから成り、有利には>40%、殊に>50%のポリカーボネート割合で用いられる。
【0107】
ここで、ASAとは、一般的に、ポリアルキルアクリレートゴム系の、ビニル芳香族化合物、殊にスチレン、及びビニルシアニド、殊にアクリロニトリルのグラフトコポリマーが、殊にスチレンとアクリロニトリルからのコポリマーマトリックスの形で存在する耐衝撃性スチレン/アクリロニトリルポリマーと解される。
【0108】
特に有利には、本発明によるコーティング剤は、多段階のコーティング法、殊に、場合により前コーティングされた基材上にまず着色ベースコート層を、その後に本発明によるコーティング剤を有する層を施与する方法において用いられる。それゆえ本発明の対象はまた、少なくとも1つの着色ベースコート層と、その上に配置された、本発明によるコーティング剤から製造されていることを特徴とする少なくとも1つのクリアコート層とからの効果−及び/又は色付与する多層塗膜である。
【0109】
水希釈性ベースコートも、有機溶剤を基礎とするベースコートも用いられることができる。適したベースコートは、例えばEP−A−0692007及びそこの第3欄、第50行目以降に列挙された文献中に記載されている。有利には、施与されたベースコートはまず乾燥され、すなわち、該ベース塗膜から蒸発段階において有機溶剤若しくは水の少なくとも一部が除去される。乾燥は、好ましくは室温〜80℃までの温度で行われる。乾燥後、本発明によるコーティング剤が施与される。引き続き、中間層塗膜が、有利には自動車量産塗装の際して適用される条件下で30〜200℃、特に有利には40〜190℃、殊に50〜180℃で、1分〜10時間まで、特に有利には2分〜5時間まで、殊に3分〜3時間まで焼き付けされ、その際、自動車修理塗装のために適用される、有利には30〜90℃の間の温度で、より長い硬化時間も適用されることができる。
【0110】
本発明の更なる有利な実施形態において、本発明によるコーティング剤は、透明なクリアコートとして、プラスチック基材、殊にプラスチック取り付け部品のコーティングのために用いられる。プラスチック取り付け部品も、有利には同様に多段階のコーティング法においてコーティングされ、その際、場合により前コーティングされた若しくは後続のコーティングのより良好な接着のために前処理された基材(例えば基材の火炎処理、コロナ処理又はプラズマ処理)上にまず着色ベースコート層が、その後に本発明によるコーティング剤を有する層が施与される。
【0111】
最後に、本発明によるコーティング剤は、透明なクリアコートとして、透明なプラスチック基材のコーティングのために用いられる。この場合、コーティング剤は、量及び種類についてプラスチック基材の効果的なUV保護にも合わせられているUV吸収剤を含有する。
【0112】
例
ヒドロキシル基を有するポリ(メタ)アクリレート樹脂(A1)の製造
温度計、アンカー型撹拌器、2つの滴下漏斗及び還流冷却器を備えた、オイル循環式サーモスタットにより加熱可能な二重壁の4lのステンレス鋼ボイラーに、溶剤を重合のために装入する。滴下漏斗の1つにモノマー混合物を、第二の滴下漏斗に、適した開始剤(一般にペルオキシド)を含有する開始剤溶液を装入する。該装入物を140℃の重合温度に加熱する。重合温度に達した後、まず開始剤の供給を開始する。開始剤供給を開始してから15分後に、モノマー供給(240分の継続時間)を開始する。開始剤供給は、モノマー供給の完了後にさらに30分間続くように調節する。開始剤供給の完了後、混合物を140℃でさらに2時間撹拌し、引き続き室温に冷却する。引き続き、反応混合物を溶剤で第2表に示した固形分に調整する。
【0113】
第1表:質量部でのポリメタクリレート(A1)の組成
【表1】
【0114】
第2表:ポリメタクリレート(A1)の特性値(酸価及び粘度を実験により測定、OH価及びTgを理論的に算出)
【表2】
1)Brookfield社、コーン3のコーンプレート型粘度計を用いてDIN53229に従って室温で測定
【0115】
完全にシラン化されたポリイソシアヌレート(B1−1)の製造(モノシラン構造単位(II)20モル%及びビスシラン構造単位(III)80モル%を有するHDI:反応度c=100モル%)
還流冷却器及び温度計が備わった鋼製反応器に、三量体化された、イソシアヌレート基を有するヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)(Desmodur N3600 Bayer社)31部、酢酸ブチル17部及びトリエチルオルトホルメート3部を装入する。滴下漏斗により、引き続きビス−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アミン(Dynasylan 1124,EVONIK,Rheinfelden)37部及びトリメトキシシリルプロピル−N−ブチルアミン(Dynasilan 1189,Evonik,Rheinfelden)12部を、窒素シール下及び撹拌下で滴下する。約40℃に温度が僅かに上昇することが観察される。2時間の撹拌後、NCO値を滴定法により調べる。
非揮発性割合(1時間、150℃):80%
NCO含有率:0%(溶液)
【0116】
ウレトジオン基含有イソシアネート(B2)の溶液の製造
市販の二量体化された、ヘキサメチレンジイソシアネートを基礎とするウレトジオン基を有するポリイソシアネート(Desmodur
(R)N3400 Bayer社)200質量部及び酢酸ブチル50部を撹拌によって互いに混合することで、80.0質量%の固形分を有する溶液を得る。
【0117】
HDI系イソシアヌレートを基礎とする部分シラン化されたポリイソシアヌレート(B1−2)の製造(10モル%のモノシラン構造IIa及び90モル%のビスシラン構造単位IIIa:イソシアネート基の反応度c=40モル%)
【0118】
還流冷却器及び温度計が備わった鋼製反応器に、三量体化されたヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)(Desmodur N3600 Bayer社)57.6部、酢酸ブチル14.8部及びトリエチルオルトホルメート2.8部を装入する。滴下漏斗により、引き続きビス−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アミン(Dynasylan 1124,EVONIK,Rheinfelden)39.4部及びトリメトキシシリルプロピル−N−ブチルアミン(Dynasilan 1189,Evonik,Rheinfelden)3.0部を、窒素シール下及び撹拌下で滴下する。約40℃に温度が僅かに上昇することが観察される。2時間の撹拌後、NCO値を滴定法により調べる:
NCO含有率:6.6%(溶液)
非揮発性割合(1時間、150℃):85%。
【0119】
第3表に記載したシラン化されたポリイソシアヌレート(B1−1)若しくは(B2−2)及びウレトジオン基含有イソシアネート(B2)の量を混合することによって、第3表に挙げた硬化剤混合物H1〜H3並びにHV1を製造する。
【0120】
第3表:質量部並びに固形分、イソシアネート含有率及び粘度についての硬化剤混合物H1〜H3及びHV1の組成
【表3】
【0121】
硬化剤混合物H1〜H3及びHV1の当量におけるウレトジオン基含有化合物B2対シラン基含有化合物B1の混合比の算出
テクニカルデータシートに従ったDesmodur
(R)N3400のグラム当量の算出:(100
*42g)/21.8=193g
テクニカルデータシートに従ったDesmodur
(R)N3600のグラム当量の算出:(100
*42g)/23=183g
算出したグラム当量ビス−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アミン:341g
算出したグラム当量トリメトキシシリルプロピル−N−ブチルアミン:234g
【0122】
ウレトジオン基含有化合物B2のグラム当量の算出:
シラン構造に対するB2における反応度c':0モル%
モノシランと反応したイソシアネート基のB2における割合as'2:(モル%記載におけるモノシラン量)/[全体の割合(モノシラン+ビスシラン)=100モル%]=0
ビスシランと反応したイソシアネート基のB2における割合as'3:(モル%記載におけるビスシラン量)/[全体の割合(モノシラン+ビスシラン)=100モル%]=0
ウレトジオン基含有化合物B2のグラム当量:[193g(Desmodur
(R)N3400のグラム当量)]+0
*[(0
*234g)+(0
*341g)]=193g
【0123】
シラン基含有化合物B1−1のグラム当量の算出:
シラン構造に対するB1−1における反応度c:100モル%/100モル%=1.0
モノシランと反応したイソシアネート基のB1−1における割合as2:(モル%記載におけるモノシラン量)/[全体の割合(モノシラン+ビスシラン)=100モル%]=20モル%/100モル%=0.2
ビスシランと反応したイソシアネート基のB1−1における割合as3:(モル%記載におけるビスシラン量)/[全体の割合(モノシラン+ビスシラン)=100モル%]=80モル%/100モル%=0.8
シラン基含有化合物B1−1のグラム当量:[183g(Desmodur
(R)N3600のグラム当量)]+1.0
*[(0.2
*234g)+(0.8
*341g)]=183g+(1.0)
*[46.8g+272.8g]=502.6g
【0124】
シラン基含有化合物B1−2のグラム当量の算出:
シラン構造に対するB1−2における反応度c:40モル%/100モル%=0.4
モノシランと反応したイソシアネート基のB1−1における割合as2:(モル%記載におけるモノシラン量)/[全体の割合(モノシラン+ビスシラン)=100モル%]=10モル%/100モル%=0.1
ビスシランと反応したイソシアネート基のB1−2における割合as3:(モル%記載におけるビスシラン量)/[全体の割合(モノシラン+ビスシラン)=100モル%]=90モル%/100モル%=0.1
イソシアヌレートB1−2のグラム当量:[183g(Desmodur
(R)N3600のグラム当量)]+0.4
*[(0.1
*234g)+(0.9
*341g)]=183g+(0.4)
*[23.4g+306.9g]=315.1g
【0125】
B2当量対B1−1当量:7.8:1.0における硬化剤混合物H1(75質量部の化合物B2及び25質量部の化合物B1−1)の混合比の算出
【0126】
B2当量対B1−1当量:2.6:1.0における硬化剤混合物H2(50質量部の化合物B2及び50質量部の化合物B1−1)の混合比の算出
【0127】
B2当量対B1−1当量:0.87:1.0における硬化剤混合物H3(25質量部の化合物B2及び75質量部の化合物B1−1)の混合比の算出
【0128】
B2当量対B1−2当量:0における硬化剤混合物HV1(100質量部の化合物B1−2)の混合比の算出
【0129】
本発明によるコーティング剤B1〜B3及びコーティング剤VB1並びに相応する例1〜3及び比較例V1の配合物
記載した順番(上から始まる)で、第4表に記載した成分を適した容器中で完全に互いに混ぜ合わせ、かつ直後に黒色のベースコートで塗った鋼板上に塗る(ベースコート乾燥 80℃で30分、フラッシュオフタイム 10分)。引き続き、該鋼板を60℃で30分の間オーブン内で乾燥させる。得られたコーティングを、室温で24時間貯蔵し、Byk−Gardner社のWave−Scan
(R)で測定する。試験結果を第5表に示す。
【0130】
第4表:そのつどヒドロキシル基含有ポリメタクリレート(A1)を基礎する、本発明によるコーティング剤B1〜B3並びに比較例VB1の組成
【表4】
1)Byk333=Byk Chemie社の市販の表面活性剤
2)Tinuvin
(R)384=Ciba社のベンズトリアゾール系の市販の光安定剤
3)Tinuvin
(R)292=Ciba社の立体障害アミン系の市販の光安定剤
4)Nacure
(R)4167=King Industries社のアミンブロック化リン酸部分エステルを基礎とする市販の触媒、非揮発性割合25%
【0131】
第5表:例B1〜B3及び比較例VB1のコーティングの試験結果
【表5】
【0132】
全てのコーティングは、記載した乾燥(60℃で30分)後に手触りがしっかりしている。最適な実験室条件が異なる際に粘着性のあるフィルムが場合による発生することは、僅かに触媒量を高めることによって及び/又はより効果的な触媒によって簡単に止めることができる。
【0133】
試験結果のまとめ:
第5表における長波状値(LW)のみならず短波状値(SW)の比較により、本発明による例1〜3が、比較例V1よりずっと良好な長波状値(LW)及び短波状値(SW)を有することが示される。
【0134】
つまり本発明による硬化剤混合物H1〜H3は、高い固形分の場合でも非常に良好な流展性を40μmの目標層厚で達成することができる。そのうえ、全ての本発明によるコーティング剤は、修理塗装の条件下でも迅速な硬化を保証し、すなわち、全てのコーティングは60℃で30分乾燥した後に手触りがしっかりしている。この場合、迅速な硬化は、殊にイソシアヌレートB1を介して導入されるシラン官能の割合により制御され、その一方で、該コーティング剤の流展性及び固形分はウレトジオン基含有イソシアネートB2の割合により調節される。