(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5943933
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】微生物濃縮プロセス及び装置
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/02 20060101AFI20160621BHJP
C12M 1/32 20060101ALI20160621BHJP
G01N 1/10 20060101ALI20160621BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20160621BHJP
B01D 39/16 20060101ALI20160621BHJP
B01D 39/20 20060101ALI20160621BHJP
B01D 39/14 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
C12Q1/02
C12M1/32
G01N1/10 B
G01N1/10 C
G01N33/48 M
B01D39/16 A
B01D39/20 B
B01D39/20 D
B01D39/14 A
【請求項の数】3
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2013-542064(P2013-542064)
(86)(22)【出願日】2011年11月23日
(65)【公表番号】特表2014-506118(P2014-506118A)
(43)【公表日】2014年3月13日
(86)【国際出願番号】US2011062069
(87)【国際公開番号】WO2012078374
(87)【国際公開日】20120614
【審査請求日】2014年11月21日
(31)【優先権主張番号】61/420,045
(32)【優先日】2010年12月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】クシルサガール, マンジリ
(72)【発明者】
【氏名】ラビンス, アンドリュー ダブリュー.
【審査官】
森井 文緒
(56)【参考文献】
【文献】
特表2008−502920(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/046191(WO,A1)
【文献】
国際公開第2010/078284(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00−3/00
C12Q 1/02
B01D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(1)多孔質繊維性不織布マトリックス、及び
(2)珪藻土を含む少なくとも1つの濃縮剤の複数の粒子であって、前記多孔質繊維性不織布マトリックス中に捕らえられている複数の粒子、
を含む濃縮デバイスを提供すること、
(b)少なくとも1つの標的細胞検体を含む試料を提供すること、
(c)前記少なくとも1つの標的細胞検体の少なくとも一部が、前記濃縮デバイスに結合される又は捕捉されるように、前記濃縮デバイスを前記試料と接触させること、並びに
(d)少なくとも1つの結合した標的細胞検体の存在を検出すること、
を含み、
前記多孔質繊維性不織布マトリックスが、無機繊維を含む、濃縮プロセス。
【請求項2】
(a)多孔質繊維性不織布マトリックス、及び
(b)金属酸化物、微細ナノスケール金若しくは白金、又はこれらの組み合わせを含む表面改質剤を含む表面処理剤をその表面の少なくとも一部の上に有する珪藻土を含む少なくとも1つの濃縮剤の複数の粒子、
を含み、前記粒子が、前記多孔質繊維性不織布マトリックス中に捕らえられており、
前記多孔質繊維性不織布マトリックスが、無機繊維を含む、濃縮デバイス。
【請求項3】
(a)請求項2に記載の少なくとも1つの濃縮デバイス、及び
(b)請求項1に記載のプロセスを実施するために用いられる少なくとも1つの試験容器又は試験試薬、
を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【0001】
[分野]
本発明は、検出又は検査の際に生存状態を保つような微生物の捕捉又は濃縮のためのプロセスに関するものである。他の態様では、本発明は、また、このようなプロセスを実施するために用いられる濃縮デバイス(及びこのデバイスを含む診断キット)、及びデバイスを調製するための方法にも関する。
【0002】
[背景]
微生物汚染により生じる食品媒介疾患及び院内感染は、世界中の無数の場所で懸案となっている。よって、微生物の存在の同定及び/又は定量測定を行うために、様々な医療、食品、環境、又はその他の試料中における、細菌又は他の微生物の存在を検定することが、望ましい又は必要であることが多い。
【0003】
例えば、たとえ他の細菌の存在下であっても、特定の細菌種の存在又は不在を検査するために、細菌DNA又は細菌RNAの検査を行うことができる。しかしながら、特定の細菌の存在を検出する能力は、少なくとも部分的に、分析される試料中の細菌の濃度に依存する。細菌試料は、検出に十分な濃度を確保するため、試料中の細菌の数を増加させるために塗られる又は培養されるが、この培養工程はしばしば時間がかかり、よって評価結果を顕著に遅らせることがある。
【0004】
試料中の細菌を濃縮することで、培養時間を短縮することができ、培養の工程の必要を排除することすら可能になる。よって、菌株に特異的な抗体を使用することによって、特定の細菌株を分離する(及びこれにより濃縮する)ための方法が(例えば、抗体をコーティングした磁石又は非磁石粒子の形態で)開発されている。しかしながら、このような方法は高価になり、少なくとも一部の診断用途に望まれる方法よりも依然としてやや遅い傾向がある。
【0005】
菌株特異的でない濃縮方法も使用されている(例えば、試料に存在する微生物のより総合的な評価を得るため)。混合した微生物群を濃縮した後、望ましい場合は、菌株特異的な精査を用いることによって特定の菌株の存在を判定することができる。
【0006】
微生物の非特異的な濃縮又は捕捉は、炭水化物とレクチンタンパク質との相互作用に基づいた方法によって達成されている。非特異的捕捉装置としてキトサンコーティングされた支持体が使用され、微生物の栄養素の役目を果たす物質(例えば、炭水化物、ビタミン、鉄キレート化合物、及びシデロフォア)が、微生物の非特異的捕捉を提供するための配位子として有用であることも記述されている。
【0007】
様々な無機物質(例えばヒドロキシアパタイト及び金属水酸化物)が、細菌に非特異的に結合しこれを濃縮するために使用されている。非特異的な捕捉のためには、無機バインダーを使用する及び/又は使用しない、物理的な濃縮方法(例えば濾過、クロマトグラフィー、遠心分離、及び重力沈殿)も利用されている。このような非特異的濃縮方法は、速度(少なくとも一部の食品試験手順は主な培養増菌段階として少なくとも一夜インキュベーションをなお必要とする)、コスト(少なくとも一部は高価な装置、材料、及び/又は訓練された技能者を必要とする)、試料条件(例えば、試料の性状及び/又は容積制限)、スペースの条件、使用の容易さ(少なくとも一部は複雑な多段階のプロセスを必要とする)、現場使用への適性、及び/又は有効性の点で様々である。
【0008】
[概要]
よって我々は、病原微生物を迅速に検出するためのプロセスに対する切迫したニーズがあると認識している。このようなプロセスは、迅速なだけでなく、低コストで、単純であり(複雑な機器又は手順の必要がない)、及び/又は様々な条件下(例えば、様々な種類の試料マトリックス及び/又は病原微生物、様々な微生物充填量、及び様々な試料容量)で有効であることが好ましい。
【0009】
簡単に言えば、1つの態様において、本発明は、試料中に存在する微生物株(例えば細菌、真菌類、酵母、原生動物、ウイルス(非エンベロープ型ウイルス及びエンベロープ型ウイルスの両方を含む)、及び細菌内生胞子、の菌株)を非特異的に濃縮するプロセスを提供し、これにより1つ以上の株の検出又は検定を行えるよう微生物は生存能力があるままである。該プロセスは、(a)(1)多孔質繊維性不織布マトリックス、及び(2)珪藻土(好ましくは、表面改質珪藻土)を含む少なくとも1つの濃縮剤の複数の粒子であって、多孔質繊維性不織布マトリックス中に捕らえられている複数の粒子、を含む濃縮デバイスを提供すること、(b)少なくとも1つの標的細胞検体(例えば、少なくとも1つの微生物株)を含む試料(好ましくは、流体の形態)を提供すること、(c)少なくとも1つの標的細胞検体の少なくとも一部が、濃縮デバイスに結合される又は捕捉されるように、濃縮デバイスを試料と接触させる(好ましくは、試料を濃縮デバイスに通すことによって)こと、並びに(d)少なくとも1つの結合した標的細胞検体の存在を検出すること、を含む。
【0010】
このプロセスは、場合によっては、試料から濃縮デバイスを分離すること、及び/又は少なくとも1つの結合した標的細胞検体を培養により増菌すること(例えば、一般的又は選択的な微生物増菌が所望されるかどうかによって、一般的な又は微生物に特異的な培地内で分離した濃縮デバイスをインキュベートすることにより)、及び/又は捕捉された標的細胞検体(例えば、微生物又はその1つ以上の構成要素)を、試料の接触後に濃縮デバイスから単離若しくは分離すること(例えば、溶出剤又は溶解剤を濃縮デバイスに通すことにより)を更に含むことができる。しかしながら、所望により、標的細胞検体の検出(例えば、培養による方法、顕微鏡観察方法/イメージング法、遺伝子学的検出方法、発光に基づく検出方法、又は免疫学的検出方法)は、一般に、濃縮デバイスの存在下で行われることができる。
【0011】
本発明のプロセスは、特定の細胞検体(例えば、特定の微生物株)を標的としない。むしろ、多孔質繊維性不織布マトリックス中に捕らえられている特定の比較的安価な無機材料を含む濃縮デバイスは、様々な微生物の捕捉において驚くほど有効であり得るということ(及び無機材料無しの対応するデバイスと比較して、溶出による、捕捉されている微生物の単離又は分離において驚くほど有効であるということ)が見出された。このようなデバイスを使用して、1つ以上の微生物株(好ましくは、1つ以上の細菌株)をより容易、かつ迅速に検定することができるように、試料(例えば、食品試料)中に存在する微生物株を、非株特異的な方法で濃縮することができる。
【0012】
本発明のプロセスは、比較的簡便で、低コスト(複雑な装置又は高価な株特異的な材料を必要としない)であり、かつ比較的速い(好ましい実施形態は、濃縮デバイスとの接触を持たない対応する対照試料に対して、比較的均質な流体試料中に存在する微生物の少なくとも約70パーセント(より好ましくは少なくとも約80パーセント、最も好ましくは少なくとも約90パーセント)を約10分未満に捕捉する)。粒子状濃縮剤のみを使用する場合と異なり、本プロセスは、比較的短時間試料と接触するだけで(例えば、最短で約20秒)、かつ沈降工程の必要なしに、驚くほど効果的に微生物を捕捉することができる。
【0013】
本発明のプロセスはまた、驚くほど「検定に適している」。検出は、一般に、有意な検定干渉なく(例えば、濃縮デバイスによる検定用試薬の吸収によって生じる、又は濃縮デバイスからの検定インヒビターの浸出によって生じる検出誤差なく)濃縮デバイスの存在下で達成され得る。これにより、サンプリング環境下での迅速な(例えば、10分以下の速さ)濃縮及び検出が可能となる。
【0014】
加えて、このプロセスは、様々な微生物(グラム陽性菌及びグラム陰性菌の両方などの病原体を含む)及び様々な試料(異なる試料マトリックス、及び少なくとも一部の従来技術とは違って、更に微生物含有量が少ない試料及び/又は大量の試料)に有効であり得る。よって、本発明のプロセスの少なくともいくつかの実施形態は、様々な状況下で病原微生物を迅速に検出するための低コストで簡単なプロセスに対する、上述のような緊迫したニーズに対応することができる。
【0015】
このプロセスで使用される濃縮デバイスは、絶対ミクロンフィルターなどの少なくとも一部の濾過デバイスよりも少なくとも若干大きな詰まりに対する抵抗性を呈することができるので、本発明のプロセスは、食品試料(例えば、粒子を含有する食品試料、特に比較的粗い粒子を含むもの)中の微生物の濃縮に特に有利であることができる。このことは、より完璧な試料処理(食品試験において誤った陰性の検定を無くすことにおいて必須である)及び比較的大量の試料の取り扱い(例えば、野外条件下での)を容易にすることができる。
【0016】
好ましい濃縮プロセスは、
(a)(1)(i)少なくとも1つのフィブリル化繊維、及び(ii)少なくとも1つのポリマーバインダーと、を含む多孔質繊維性不織布マトリックス、並びに
(2)金属酸化物(好ましくは、二酸化チタン若しくは酸化鉄)、微細ナノスケール金若しくは白金、又はこれらの組み合わせを含む表面改質剤を含む表面処理剤をその表面の少なくとも一部の上に有する珪藻土を含む少なくとも1つの濃縮剤の複数の粒子、を含み、粒子が多孔質繊維性不織布マトリックス中に捕らえられている、濃縮デバイスを提供すること、
(b)少なくとも1つの標的細胞検体を含む流体試料を提供すること、及び
(c)少なくとも1つの標的細胞検体の少なくとも一部が、濃縮デバイスに結合される又は捕捉されるように、流体試料を濃縮デバイスに通すこと、を含む。
【0017】
別の態様において、本発明はまた、(a)多孔質繊維性不織布マトリックス、及び(b)金属酸化物(好ましくは、二酸化チタン若しくは酸化鉄)、微細ナノスケール金若しくは白金、又はこれらの組み合わせを含む表面改質剤を含む表面処理剤をその表面の少なくとも一部の上に有する珪藻土を含む少なくとも1つの濃縮剤の複数の粒子、を含み、粒子が、多孔質繊維性不織布マトリックス中に捕らえられている、濃縮デバイスを提供する。本発明はまた、(a)少なくとも1つの本発明の上記濃縮デバイス、及び(b)上述の濃縮プロセスを実施するために用いられる少なくとも1つの試験容器又は試験試薬、を含む、本発明の濃縮プロセスを実施するために用いられる診断キットも提供する。
【0018】
更に別の態様において、本発明は、(a)複数の繊維を提供すること、(b)金属酸化物(好ましくは、二酸化チタン若しくは酸化鉄)、微細ナノスケール金若しくは白金、又はこれらの組み合わせを含む表面改質剤を含む表面処理剤をその表面の少なくとも一部の上に有する珪藻土を含む少なくとも1つの濃縮剤の複数の粒子を提供すること、及び(c)複数の繊維の少なくとも一部を、複数の粒子の少なくとも一部がその中に捕らえられている多孔質繊維性不織布マトリックスに形成すること、を含む、濃縮デバイスの調製プロセスを提供する。
【0019】
更に別の態様において、本発明は、(a)多孔質繊維性不織布マトリックス、及び(b)金属酸化物、微細ナノスケール金若しくは白金、又はこれらの組み合わせを含む表面改質剤を含む表面処理剤をその表面の少なくとも一部の上に有する珪藻土を含む少なくとも1つの濃縮剤の複数の粒子、を含み、粒子が、多孔質繊維性不織布マトリックス中に捕らえられている、フィルター媒体を提供する。
【0020】
[詳細な説明]
以下の「詳細な説明」では、様々な組の数値範囲(例えば、特定の部分における炭素原子の数、又は特定の成分の量など)が記載され、各組内では、範囲の任意の下限を範囲の任意の上限と対にすることができる。同様に、このような数値範囲は、範囲内に含まれる全ての数を含むことを意味する(例えば1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【0021】
本明細書で使用するとき、用語「及び/又は」は、1つ若しくは全ての列挙した要素、又は2つ以上の列挙した要素のいずれかの組み合わせを意味する。
【0022】
用語「好ましい」及び「好ましくは」は、特定の状況下で、特定の利点をもたらし得る本発明の実施形態を指す。しかしながら、同一又は異なる条件下において、他の実施形態が好ましい場合もある。更に、1つ以上の好ましい実施形態の引用は、他の実施形態が有用ではないという意味を含むものではなく、他の実施形態を本発明の範囲から除外することを意図しない。
【0023】
「含む(comprises)」という用語及びその変化形は、それらの用語が説明及び請求項に出現する箇所において、限定的な意味を有するものではない。
【0024】
本明細書で使用するところの「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つの」及び「1以上の」は、互換可能に使用される。
【0025】
上記「発明の概要」の節は、全ての実施形態又は本発明の全ての実施を説明しようとするものではない。以下の「詳細な説明」が実施形態をより具体的に例示する。「詳細な説明」にわたり、複数の実施例の一覧を通してガイダンスが提供されており、それら実施例は様々な組み合わせで用いられ得る。いずれの場合にも、記載した一覧は、代表的な群としてのみ役立つものであり、排他的な一覧として解釈されるべきではない。
【0026】
定義
本特許出願で使用されるとき、
「アラミド」は芳香族ポリアミドを意味する。
【0027】
「細胞検体」は、細胞起源の検体(即ち、微生物又はその構成要素(例えば、細胞又は細胞要素、例えば、デオキシリボ核酸(DNA)若しくはリボ核酸(RNA)、タンパク質、アデノシン三リン酸(ATP)などのヌクレオチド等、及びそれらの組み合わせ))を意味し、本明細書における微生物又は微生物株といった記載は、あらゆる細胞検体に一般的に適用されることが意図されている。
【0028】
「濃縮剤」は、細胞検体を結合する物質又は組成物(好ましくは、少なくとも約60パーセント、より好ましくは少なくとも約70パーセント、更により好ましくは少なくとも約80パーセント、最も好ましくは少なくとも約90パーセントの細胞検体捕捉又は結合効率を有する)を意味する。
【0029】
「培養デバイス」は、細胞分裂を少なくとも1回生じさせ得る条件下において、微生物を増殖させるために使用することができる、デバイスを意味する(好ましくは、培養デバイスは、偶発的汚染の可能性を低減するか最小化するハウジング及び/又は微生物の増殖を支持する栄養素供給源を含む)。
【0030】
「検出」は、細胞検体(例えば、それにより標的微生物が存在することを判定する、少なくとも標的微生物の構成要素)の同定を意味する。
【0031】
「捕らえられている(enmeshed)」(繊維性不織布マトリックス中の濃縮剤の粒子に関して)は、粒子が、繊維性不織布マトリックスの表面上に支持されるだけでなく、繊維性不織布マトリックス中に捕捉されている(好ましくは、その中に分散している)ことを意味する。
【0032】
「フィブリル化」(繊維又は繊維性材料に関して)は、繊維の本幹に結合しているフィブリル又は枝を形成するように(例えば、叩ことによって)処理されることを意味する。
【0033】
「繊維性不織布マトリックス」は、間に挿入された繊維を含む、織物又は編物以外のウェブ又は媒体(例えば、メルトブロー法、スパンボンド法、又は他のエアーレイ法、カーディング法、湿式堆積法等によって間に挿入された繊維を含むウェブ)を意味する。
【0034】
「遺伝子学的検出」とは、標的微生物に由来するDNA又はRNAなどの遺伝子学的物質の構成要素の同定を意味する。
【0035】
「免疫学的検出」とは、標的微生物に由来するタンパク質又はプロテオグリカンなどの抗原性物質の同定を意味する。
【0036】
「微生物」は、分析又は検出に好適な遺伝物質を有する何らかの細胞又は粒子を意味する(例えば、細菌、酵母、ウイルス、及び細菌内生胞子が挙げられる)。
【0037】
「微生物株」は、検出方法により識別可能な微生物(例えば、異なる属、属内の異なる種、又は種内の異なる隔離体の微生物)の特定のタイプを意味する。
【0038】
「パラアラミド」は、置換されている(例えば、アルキル置換されている)又は非置換のベンゼン環にパラ位で結合した(1位及び4位の炭素に結合した)アミド結合を有する芳香族ポリアミドを意味する。
【0039】
「試料」とは、(例えば分析のために)採取される物質又は材料を意味する。
【0040】
「試料マトリックス」は、細胞検体以外の試料の構成要素を意味する。
【0041】
「標的細胞検体」は、検出しようとする任意の細胞検体を意味する。
【0042】
「標的微生物」は、検出しようとする任意の微生物を意味する。
【0043】
「貫通細孔」(多孔質マトリックスに関連する)は、マトリックスを通る通路又はチャネル(別々の入口及び出口を持つ)を含む細孔を意味する。
【0044】
濃縮剤
本発明のプロセスを実施するために用いられるのに好適な濃縮剤には、珪藻土を含む粒子状濃縮剤が含まれる。珪藻土は、天然(未処理)形態で使用されことができ、又はその微生物を濃縮する能力を高めるために、(例えば、別の物質を堆積させることにより、又は他の既知の若しくは今後開発される表面処理法により)表面改質されることができる(好ましくは、珪藻土は表面改質される)。
【0045】
このような濃縮剤を使用した濃縮又は捕捉は、一般的に特定の株、種、又は微生物のタイプに対して特異的ではなく、よって、試料内の微生物の全体的な個体群の濃縮を提供する。次いで、株特異的なプローブによる任意の公知の検出方法を用いて、捕捉された微生物の集団から微生物の特定の株を検出することができる。したがって、この濃縮剤は、臨床試料、食品試料、環境試料、又は他の試料中の汚染微生物又は病原体(特に細菌などの食品によって媒介される病原体)の検出に使用することができる。
【0046】
珪藻土などの無機材料は、水系中に分散又は懸濁されると、材料及び水系のpHに特徴的な表面電荷を示す。物質−水の界面の両側の電位は「ゼータ電位」と呼ばれ、電気泳動における移動度から(即ち、水系中に置かれた帯電電極間を物質の粒子が移動する速度から)計算することができる。好ましくは濃縮剤は、約7のpHにおいて負のゼータ電位を有する。
【0047】
本発明のプロセスの実施においては、濃縮剤を、繊維とのブレンドにかけ易い、実質的にどの粒子形態(好ましくは、比較的乾燥した又は揮発分を含まない形態)でも使用して、このプロセスで使用される濃縮デバイスを形成することができる。例えば、濃縮剤を粉末の形で使用することができるか、又はビーズなどのような粒子状支持体に塗布することができる。
【0048】
好ましくは、濃縮剤は粉末の形で使用される。有用な粉末としては、ミクロ粒子(好ましくは、約1マイクロメートル(より好ましくは約2マイクロメートル、更により好ましくは約3マイクロメートル、最も好ましくは約4マイクロメートル)〜約100マイクロメートル(より好ましくは約50マイクロメートル、更により好ましくは約25マイクロメートル、最も好ましくは約15又は20マイクロメートルの範囲の粒径を有する、ミクロ粒子であり、ここで、任意の下限は上述の範囲の任意の上限と対をなすことができる)を含むものが挙げられる。
【0049】
本発明のプロセスを実施するために用いられるのに好適な表面改質珪藻土濃縮剤としては、金属酸化物(好ましくは、二酸化チタン又は酸化鉄)、微細ナノスケール金若しくは白金、又はこれらの組み合わせを含む表面改質剤(好ましくは、少なくとも1つの金属酸化物を含む表面改質剤)を含む表面処理剤をその表面の少なくとも一部の上に有する珪藻土を含むものが挙げられる。かかる濃縮剤としては、2010年8月19日公開の米国特許出願公開第2010/0209961号(Kshirsagarら、3M Innovative Properties Company)に記載されているものが挙げられ、濃縮剤及びその調製方法の記述は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0050】
表面処理は好ましくは、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、及び同等物、及びこれらの組み合わせから選択される金属酸化物(より好ましくは酸化鉄)を更に含む。金などの貴金属は、抗菌特性を呈することが知られているにもかかわらず、本発明のプロセスにおいて使用される金含有濃縮剤は、微生物の濃縮に有効なだけでなく、検出又は分析の目的のために微生物を生存可能な状態にしておくことができる。
【0051】
有用な表面改質剤としては、微細ナノスケール金、微細ナノスケール白金、少なくとも1つの金属酸化物(好ましくは、二酸化チタン、酸化鉄、又はこれらの組み合わせ)と組み合わせた微細ナノスケール金、二酸化チタン、少なくとも1つの他の金属酸化物(即ち二酸化チタン以外)と組み合わせた酸化鉄、など、及びこれらの組み合わせが挙げられる。好ましい表面改質剤としては、微細ナノスケール金、微細ナノスケール白金、少なくとも酸化鉄又は二酸化チタンと組み合わせた微細ナノスケール金、二酸化チタン、少なくとも酸化鉄と組み合わせた二酸化チタン、酸化鉄、及びこれらの組み合わせが含まれる。
【0052】
より好ましい表面改質剤としては、微細ナノスケール金、微細ナノスケール白金、酸化鉄又は二酸化チタンと組み合わせた微細ナノスケール金、二酸化チタン、酸化鉄と組み合わせた二酸化チタン、酸化鉄、及びこれらの組み合わせが含まれる(更に好ましくは、微細ナノスケール金、酸化鉄又は二酸化チタンと組み合わせた微細ナノスケール金、酸化鉄と組み合わせた二酸化チタン、二酸化チタン、酸化鉄、及びこれらの組み合わせが含まれる)。酸化鉄、二酸化チタン、及びこれらの組み合わせが最も好ましい。
【0053】
表面改質珪藻土濃縮剤のうち少なくともいくつかは、未処理の珪藻土に比べて少なくともある程度、正であるゼータ電位を有し、この濃縮剤は、細菌などの微生物の濃縮について、未処理の珪藻土よりも驚くべきほど顕著に有効であり得、このような濃縮剤の表面は一般に負に帯電している傾向にある。好ましくは、濃縮剤はpHが約7で負のゼータ電位を有する(より好ましくは、pHが約7でゼータ電位が約−5ミリボルト〜約−20ミリボルトの範囲、更に好ましくは、pHが約7でゼータ電位が約−8ミリボルト〜約−19ミリボルトの範囲、最も好ましくは、pHが約7でゼータ電位が約−10ミリボルト〜約−18ミリボルトの範囲である)。
【0054】
微細ナノスケール金又は白金を含む表面改質珪藻土濃縮剤は、物理蒸着(所望により、酸化雰囲気中での物理蒸着)によって珪藻土に金又は白金を堆積することにより調製することができる。本明細書で使用する時、用語「微細ナノスケール金又は白金」は、全ての次元のサイズが5ナノメートル(nm)以下である金物体(例えば、粒子又は原子クラスタ)を意味する。好ましくは、堆積した金又は白金の少なくとも一部は、最大約10nm(10nm以下)(より好ましくは、最大約5nm、更により好ましくは最大約3nm)の範囲の平均サイズの寸法(例えば、粒子の直径又は原子クラスタの直径)を有する。
【0055】
最も好ましい実施形態では、金の少なくとも一部が超ナノスケールである(即ち、少なくとも2つの次元においてサイズが0.5nm未満であり、全ての次元においてサイズが1.5nm未満である)。個々の金又は白金のナノ粒子のサイズは、当該技術分野において周知であるように、透過電子顕微鏡(TEM)分析によって定量することができる。
【0056】
珪藻土(別名キーゼルグール)は、海生微生物綱である珪藻の残存物から生じた、天然のシリカ物質である。よって、これは天然資源から取得することができ、市販もされている(例えば、Alfa Aesar,A Johnson Matthey Company(Ward Hill,MA))。珪藻土粒子は一般に、対称な立方体、円筒形、球形、プレート状、矩形の箱形、及び同様の形態の、小さな開放網状構造を含む。これらの粒子の孔構造は一般に、非常に均一であり得る。
【0057】
珪藻土は、原材料で、粉砕した材料で、又は精製及び所望により粉砕した粒子で使用することができる。好ましくは珪藻土は、直径約1マイクロメートル〜約50マイクロメートル(より好ましくは約3マイクロメートル〜約10マイクロメートル)の範囲にある寸法の粉砕粒子形状である。
【0058】
珪藻土は所望により、使用前に加熱処理を行い、有機残留物の痕跡を除去することができる。加熱処理を使用する場合は、高温になるほど好ましくない結晶シリカが高比率で生じ得るため、加熱処理は500℃以下で行うことが望ましい。
【0059】
珪藻土上にもたらされる金又は白金の量は、幅広い範囲で変化し得る。金及び白金は高価であるため、望ましい濃縮活性を達成するのに妥当な必要とされる量を超えては使用しないことが望ましい。更に、ナノスケールの金又は白金は、PVDを使用して堆積する際、非常に可動性であることがあるため、金又は白金を使用しすぎると、金又は白金の少なくとも一部が融合してより大きな塊になることにより、活性が低下することがある。
【0060】
これらの理由から、珪藻土上の金又は白金の荷重は、珪藻土と金との合計重量を基準として、好ましくは約0.005(より好ましくは0.05)〜約10重量パーセント、より好ましくは約0.005(更に好ましくは0.05)〜約5重量パーセント、及び更に好ましくは約0.005(最も好ましくは0.05)〜約2.5重量パーセントである。
【0061】
金及び白金はPVD技法(例えばスパッタリング)により堆積させて、支持体表面に、濃縮活性を有する微細ナノスケール粒子又は原子クラスタを形成することができる。金属は、主に元素形態で堆積すると考えられる(ただし、他の酸化状態が存在する場合もある)。
【0062】
金及び/又は白金に加えて、同じ珪藻土支持体上に1つ以上の他の金属も供給することができ、並びに/あるいは、金及び/又は白金を含む支持体と別の支持体とを混合して供給することもできる。このような他の金属の例としては、銀、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、銅、イリジウム及び同等物、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。これらの他の金属を使用した場合は、使用する金又は白金の供給源標的と同一又は異なる標的供給源から、支持体上に共沈させることができる。あるいは、このような金属は、金及び/又は白金を堆積させる前又は後のいずれかにおいて、支持体上に供給され得る。有利な活性化のための熱処理を必要とする他の金属は、金及び/又は白金を堆積させる前に支持体に適用し、熱処理することもできる。
【0063】
物理蒸着とは、金属含有供給源又は金属含有標的から支持媒体への金属の物理的な移動を意味する。物理的気相堆積は、様々な方法で実施することができる。代表的な方法としては、スパッタ蒸着法(好ましい)、蒸発蒸着法、及び陰極アーク蒸着法が挙げられる。本発明のプロセスの実施に使用する濃縮剤の調製に、これら又は他のPVDアプローチのいずれかを用いることができるが、ただし、PVD技法の性質は得られる活性に影響を与え得る。PVDは、この目的で現在使用されている又は今後開発される装置の種類のいずれかを使用することにより行うことができる。
【0064】
物理蒸着は、支持体表面の適切な処理が行われるよう、好ましくは処理する支持媒体が十分に混合されている状態で実施される(例えば、混転、流動化、粉砕など)。PVDによる堆積の粒子混転方法は、米国特許第4,618,525号(Chamberlainら)に記述されており、この記述は参照により本明細書に組み込まれる。微粒子又は微粒子凝集塊(例えば、平均直径が約10マイクロメートル未満)にPVDを実施する際、支持媒質は、好ましくは、PVDプロセスの少なくとも一部の実施中に、混合及び微粉砕の両方が行われる(例えば、ある程度まですり潰され、又は粉砕される)。
【0065】
物理蒸着は、本質的には、非常に幅広い範囲にわたって、任意の所望される温度で実施することが可能である。しかしながら、金属を比較的低い温度(例えば、約150℃未満、好ましくは約50℃未満、より好ましくは室温(例えば約20℃〜約27℃)以下)で堆積する場合、堆積した金属はより高い活性を有することができる(おそらくは、移動性と融合性がより損なわれる及び/又はより低いため)。周囲条件において実施すると、堆積中に加熱又は冷却が不要となり、有効かつ経済的であるため、一般的に好ましい可能性がある。
【0066】
物理蒸着は、不活性スパッタリングガス雰囲気中(例えば、アルゴン、ヘリウム、キセノン、ラドン、又はこれら2つ以上の混合物(好ましくはアルゴン))で実施することができ、所望により、物理蒸着は酸化雰囲気中で実施することができる。好ましくは、この酸化雰囲気には少なくとも1つの酸素含有ガスが含まれる(より好ましくは、酸素含有ガスは、酸素、水、過酸化水素、オゾン、及びこれらの組み合わせから選択され、更に好ましくは、酸素含有ガスは、酸素、水、及びこれらの組み合わせから選択され、最も好ましくは酸素である)。酸化雰囲気には更に、不活性スパッタリングガスが含まれ、これには例えばアルゴン、ヘリウム、キセノン、ラドン、又はこれらの2つ以上の混合物がある(好ましくはアルゴン)。PVDプロセス中の真空槽内の総気体圧力(全てのガス)は、約1mTorr(0.13Pa)〜約25mTorr(3.33Pa)(好ましくは、約5mTorr(0.67Pa)〜約15mTorr(2.0Pa))であり得る。酸化雰囲気は、真空槽内の全てのガスの総重量を基準にして、約0.05重量パーセント〜約60重量パーセントの酸素含有ガス(好ましくは、約0.1重量パーセント〜約50重量パーセント、より好ましくは約0.5重量パーセント〜約25重量パーセント)を含み得る。
【0067】
珪藻土支持媒体は、所望により、金属堆積の前に焼成することができるが、ただしこれにより結晶シリカの含有量が増加し得る。金及び白金は、PVDで堆積するとすぐに活性になるため、他の一部の方法による堆積とは違って、一般に金属堆積後に加熱処理の必要がない。ただし、このような加熱処理又は焼成は、活性を高めるために所望される場合には実行できる。
【0068】
一般に、熱処理は、任意の好適な雰囲気中、例えば、空気、不活性雰囲気(窒素、二酸化炭素、アルゴンなど)、還元性雰囲気(水素など)、及び同等物の中で、約125℃〜約1000℃の範囲の温度で、約1秒間〜約40時間、好ましくは約1分間〜約6時間支持体を加熱することを伴い得る。使用する具体的な熱条件は、支持体の性質を含む要素に依存し得る。
【0069】
一般に、熱処理は、支持体の構成要素が分解するか、劣化するか、又は過度の熱により損傷する温度よりも下の温度で、実施され得る。支持体の性質、金属の量、及び同等物などの要素に依存して、触媒活性は、高すぎる温度で熱処理されると、ある程度低下する可能性がある。
【0070】
金属酸化物を含む表面改質珪藻土濃縮剤は、加水分解可能な金属酸化物前駆体化合物の加水分解によって、珪藻土上に金属酸化物を堆積させることにより調製される。適切な金属酸化物前駆体化合物には、加水分解して金属酸化物を生成できるような金属錯体及び金属塩が挙げられる。有用な金属錯体としては、アルコキシド配位子、配位子としての過酸化水素、カルボン酸機能配位子、及び同様物、並びにこれらの組み合わせを含むものが挙げられる。有用な金属塩としては、金属の硫酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物、炭酸塩、シュウ酸塩、水酸化物、及び同様物、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0071】
過酸化水素又はカルボン酸機能配位子の金属塩又は金属錯体を使用する場合、加水分解は化学的手段又は熱的手段によって引き起こすことができる。化学的に引き起こされた加水分解において、金属塩は溶液の形態で、珪藻土の分散液に導入することができ、得られる混合物のpHは、珪藻土上に金属の水酸化物錯体として金属塩が沈殿するまで、塩基溶液を加えることによって上げることができる。適切な塩基としては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物及び炭酸塩、アンモニウム及びアルキルアンモニウムの水酸化物又は炭酸塩、並びに同様物、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。金属塩溶液及び塩基溶液は、通常、濃度が約0.1〜約2Mであり得る。
【0072】
好ましくは、珪藻土への金属塩の追加は、珪藻土分散液を攪拌(好ましくは激しく攪拌)しながら実施される。金属塩溶液及び塩基溶液は、珪藻土分散液に別々に(いずれの順番でも)又は同時に導入することができ、これにより、得られた金属水酸化物錯体と珪藻土の表面との好ましくは実質的に均一な反応をもたらす。反応混合物は、所望により、反応中に加熱して、反応の速度を加速することができる。一般に、加える塩基の量は、金属のモル数に、金属塩又は金属錯体の非オキソ及び非ヒドロキソ対イオンの数を掛けたものに等しくなり得る。
【0073】
あるいは、チタン又は鉄の塩を使用する場合、金属塩は加熱して加水分解を起こさせ金属水酸化物錯体を形成し、珪藻土の表面と反応させることができる。この場合、金属塩溶液を一般に、珪藻土の分散液(好ましくは攪拌した分散液)に加え、十分に高温(例えば約50℃を上回る温度)に加熱して、金属塩の加水分解を促進することができる。好ましくは、温度は約75℃〜100℃であるが、ただし反応がオートクレーブ装置内で実施される場合はより高い温度を使用することができる。
【0074】
金属アルコキシド錯体を使用する場合、この金属錯体に加水分解を起こさせ、アルコール溶液中で金属アルコキシドの部分的加水分解により金属の水酸化物錯体を形成させることができる。珪藻土存在下での金属アルコキシド溶液の加水分解により、珪藻土の表面に、金属水酸化物種を堆積させることができる。
【0075】
あるいは、珪藻土の存在下でガス相の金属アルコキシドを水と反応させることによって、金属アルコキシドを加水分解し、珪藻土の表面に堆積させることができる。この場合、珪藻土は、例えば流動床リアクター又は回転ドラムリアクターなどのいずれかの中で、堆積中に攪拌することができる。
【0076】
珪藻土の存在下で、上記のような金属酸化物前駆体化合物の加水分解を行った後、得られる表面処理済みの珪藻土を、沈殿又は濾過、又はその他の既知の方法によって分離することができる。分離した生成物を水で洗浄することによって精製し、これを乾燥させることができる(例えば50℃〜150℃)。
【0077】
表面処理された珪藻土は通常、乾燥後に機能できるが、所望により、空気中で約250℃〜650℃に加熱して焼成することにより、機能の損失なしに揮発性の副生成物を除去することができる。この焼成工程は、金属酸化物前駆体化合物として金属アルコキシドを利用した場合に望ましいことがある。
【0078】
一般に、鉄の金属酸化物前駆体化合物の場合、得られる表面処理には、ナノ粒子の酸化鉄が含まれる。珪藻土に対する酸化鉄の重量比が約0.08である場合、X線回折(XRD)では、酸化鉄物質の存在がはっきりと示されない。むしろ、3.80、3.68、及び2.94Åで更なるX線反射が観察される。この物質のTEM評価は、珪藻土表面が、球形ナノ粒子状酸化鉄物質で比較的均一にコーティングされていることを示す。酸化鉄物質のクリスタライトの大きさは約20nm未満であり、多くの結晶は直径が10nm未満である。この、珪藻土表面にある球形結晶の充填は見かけが密であり、珪藻土の表面はこれら結晶の存在により凹凸になっているのが見られる。
【0079】
一般に、チタンの金属酸化物前駆体化合物を用いた場合、得られる表面処理には、ナノ粒子チタニアが含まれる。珪藻土に二酸化チタンを堆積させた場合、約350℃で焼成した後に得られた生成物のXRDでは、アナターゼチタニアの小さな結晶の存在を示すことができる。チタン/珪藻土の比が比較的低い場合、又はチタン及び鉄の酸化物前駆体の混合物が使用された場合、X線分析によっては一般に、アナターゼの証拠は観察されない。
【0080】
チタニアは強力な光酸化触媒として周知であるので、本発明のチタニア改質珪藻土濃縮剤を使用して、分析用に微生物を濃縮することができ、次いで場合によっては、残留する微生物を殺菌し、使用後に不要な有機不純物を除去するために、光活性化剤として使用することができる。よって、チタニア改変された珪藻土は、分析のための生体物質を分離すること、及び次に再使用のため光化学的に洗浄されることの両方ができる。これらの物質は、微生物の除去と共に抗菌効果が望ましい場合がある濾過用途に使用することもできる。
【0081】
本発明のプロセスを実施するために用いられるのに適したその他の特に好ましい濃縮剤としては、吸着緩衝液で改質された表面改質珪藻土を含むものが挙げられる。このような濃縮剤としては、2009年10月22日出願の米国特許仮出願第61/289,213号(Kshirsagar、3M Innovative Properties Company)に記載の濃縮剤が挙げられ、濃縮剤及びその調製方法についての記載は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0082】
濃縮デバイス
本発明のプロセスを実施するために用いられるのに適した濃縮デバイスとしては、(a)多孔質繊維性不織布マトリックス、及び(b)複数の上述の濃縮剤の粒子、を含み、粒子が、多孔質繊維性不織布マトリックス中に捕らえられているものが挙げられる。かかる濃縮デバイスは、濃縮剤の粒子がその中に捕らえられている繊維性不織布マトリックス(即ち、間に挿入された繊維を含む、織物又は編物以外のウェブ又は媒体)を提供することができる、本質的にいかなるプロセスによっても調製することができる。有用なプロセスとしては、メルトブロー法、スパンボンド法、及び他のエアーレイ法、カーディング法、湿式堆積法等、並びにこれらの組み合わせ(好ましくは、エアーレイ法、湿式堆積法、及びこれらの組み合わせ;より好ましくは、湿式堆積法)が挙げられる。
【0083】
濃縮デバイスの多孔質繊維性不織布マトリックスを調製する際に使用するのに適した繊維としては、パルプ化可能な(pulpable)繊維が挙げられる。好ましいパルプ化可能な繊維は、放射線及び/又は様々な溶媒に安定なものである。有用な繊維としては、ポリマー繊維類、無機繊維類、及びこれらの組み合わせ(好ましくは、ポリマー繊維類及びその組み合わせ)が挙げられる。好ましくは、使用する繊維の少なくともいくつかは、ある程度の親水性を呈する。
【0084】
好適なポリマー繊維としては、熱可塑性及び溶媒分散性ポリマーなどの、天然(動物若しくは植物)ポリマー及び/又は合成ポリマーから製造されたものが挙げられる。有用なポリマーとしては、羊毛;絹;セルロース系ポリマー(例えば、セルロース、セルロース誘導体など);フッ素化ポリマー(例えば、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(フッ化ビニリデン))、フッ化ビニリデンのコポリマー(例えばポリ(フッ化ビニリデン−コ−ヘキサフルオロプロピレン))、クロロトリフルオロエチレンのコポリマー(例えばポリ(エチレン−コ−クロロトリフルオロエチレン)など);塩素化ポリマー;ポリオレフィン(例えば、ポリ(エチレン)、ポリ(プロピレン)、ポリ(1−ブテン)、エチレンとプロピレンとのコポリマー、αオレフィンコポリマー(例えば、エチレン又はプロピレンと1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、及び1−デセンとのコポリマー)、ポリ(エチレン−コ−1−ブテン)、ポリ(エチレン−コ−1−ブテン−コ−1−ヘキセン)、及び同類物);ポリ(イソプレン);ポリ(ブタジエン);ポリアミド(例えば、ナイロン6;ナイロン6,6;ナイロン6,12;ポリ(イミノアジポイルイミノヘキサメチレン);ポリ(イミノアジポイルイミノデカメチレン);ポリカプロラクタム;及び同類物);ポリイミド(例えば、ポリ(ピロメリットイミド)など);ポリエーテル;ポリ(エーテルスルホン)(例えば、ポリ(ジフェニルエーテルスルホン)、ポリ(ジフェニルスルホン−コ−酸化ジフェニレンスルホン)、及び同類物);ポリ(スルホン);ポリ(酢酸ビニル);酢酸ビニルのコポリマー(例えば、ポリ(エチレン−コ−酢酸ビニル)、アセテート基の少なくとも一部が加水分解されて各種ポリ(ビニルアルコール)(例えば、ポリ(エチレン−コ−ビニルアルコール)、及び同類物)を生成するコポリマー、及び同類物);ポリ(ホスファゼン);ポリ(ビニルエステル);ポリ(ビニルエーテル);ポリ(ビニルアルコール);ポリアラミド(例えば、ポリ(パラフェニレンテレフタルアラミド)などのパラアラミド及びDuPont Co.(Wilmington,DE)により商品名「KEVLAR」で販売されている繊維(該繊維のパルプは、パルプを形成する繊維長に基づき様々な等級で市販されており、例えば、「KEVLAR 1F306」及び「KEVLAR 1F694」などであり、これらは共に長さが少なくとも4mmであるアラミド繊維を含む)、及び同類物);ポリ(カーボネート);及び同類物;並びにこれらの組み合わせが挙げられる。好ましいポリマー繊維としては、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリスルホン、及びこれらの組み合わせ(より好ましくは、ポリアミド、ポリオレフィン、及びこれらの組み合わせ;最も好ましくは、ナイロン、ポリ(エチレン)、及びこれらの組み合わせ)が挙げられる。
【0085】
好適な無機繊維としては、ガラス、セラミックス、及びこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの無機材料を含むものが挙げられる。有用な無機繊維としては、繊維ガラス(例えば、Eガラス、Sガラスなど)、セラミック繊維(例えば、金属酸化物(アルミナなど)、炭化ケイ素、窒化ホウ素、炭化ホウ素などで製造された繊維)、及び同類物、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。有用なセラミック繊維は、少なくとも部分的に結晶性であり得る(認識可能なX線粉末回折図形を示す、又は結晶質相及び非晶質(ガラス)相の両方を含有する)。好ましい無機繊維としては、繊維ガラス及びその組み合わせが挙げられる。
【0086】
多孔質繊維性不織布マトリックスを形成するために使用される繊維は、特定用途(例えば、特定の種類の試料マトリックス)にとって十分な構造的一体性及び十分な多孔性を有するマトリックスを提供することができる長さ及び直径のものであり得る。例えば、少なくとも約0.5mm、1mm、2mm、3mm、4mm、6mm、8mm、10mm、15mm、20mm、25mm、又は更には30mm(及びこれらの組み合わせ)の長さ、並びに少なくとも約10μm(マイクロメートル)、20μm、40μm、又は更には60μm(及びこれらの組み合わせ)の直径が有用であり得る。好ましい繊維の長さ及び直径は、繊維の性質及び用途のタイプなどの要因に応じて様々である。例えば、様々な試料マトリックスに関し、長さ約1mm〜約3mmのフィブリル化ポリ(エチレン)が有用であり得、長さ約6mm〜約12.5mmの非フィブリル化ナイロンが有用であり得る。
【0087】
濃縮剤の粒子の捕捉を促進するため及び/又は高表面積のマトリックスを確実にするために、多孔質繊維性不織布マトリックスを形成するために用いられる繊維は、(例えば、多くのより小さな結合フィブリルで取り囲まれた主繊維の形態の)少なくとも1つのフィブリル化繊維を含むのが好ましい。主繊維は、一般に、約0.5mm〜約4mmの範囲の長さ、及び約1〜約20マイクロメートルの直径を有し得る。フィブリルは、典型的には、μm未満の直径を有し得る。
【0088】
多孔質繊維性不織布マトリックスは、2、3、4種類、又は更にはより多くの異なる種類の繊維を含み得る。例えば、強度及び一体性をもたせるためにナイロン繊維を加えることができる一方、粒子を捕捉するためにフィブリル化ポリエチレンを加えることができる。フィブリル化繊維及び非フィブリル化繊維を使用する場合、一般に、フィブリル化繊維と非フィブリル化繊維との重量比は、少なくとも約1:2、1:1、2:1、3:1、5:1、又は更には8:1であり得る。選択する繊維の種類にかかわらず、得られる濃縮デバイス(乾燥形態)中の繊維の量は、(濃縮デバイスの全構成要素の総重量に対して)好ましくは少なくとも約10重量%、12重量%、12.5重量%、14重量%、15重量%、18重量%、20重量%、又は更には22重量%、最大で約20重量%、25重量%、27重量%、30重量%、35重量%、又は更には40重量%である。
【0089】
好ましくは、多孔質繊維性不織布マトリックスは、少なくも1つのポリマーバインダーを更に含む。好適なポリマーバインダーには、比較的不活性な(繊維又は濃縮剤粒子のいずれかと化学的相互作用をほとんどあるいは全く示さない)天然及び合成ポリマー材料が含まれる。有用なポリマーバインダーとしては、ポリマー樹脂(例えば、粉末及びラテックスの形態)、ポリマーバインダー繊維、及び同類物、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。少なくとも一部の用途では、好ましいポリマーバインダーには、ポリマーバインダー繊維及びその組み合わせが含まれる。他の用途では、ポリマー樹脂類及びその組み合わせが好ましいポリマーバインダーであり得る。
【0090】
好適なポリマー樹脂としては、天然ゴム、ネオプレン、スチレン−ブタジエンコポリマー、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニルル、及び同類物、並びにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。好ましいポリマー樹脂としては、アクリル樹脂類及びその組み合わせが挙げられる。好適なポリマーバインダー繊維としては、接着剤のみの繊維(adhesive-only type fibers)(例えば、Eastman Chemical Products(Kingsport,TN)より入手可能なKodel(商標)43UD繊維)、バイコンポーネント繊維(例えば、Chisso Corporation(Osaka,Japan)から入手可能なChisso ESポリオレフィンの熱結合バイコンポーネント繊維などの並列形状(side-by-side form)、Unitika Ltd.(Osaka,Japan)から入手可能なポリエステルコアとポリエチレンシースとを有するMelty(商標)繊維タイプ4080バイコンポーネント繊維などのシース−コア形状、及び同類物)、及び同類物、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。好ましいポリマーバインダー繊維としては、バイコンポーネント繊維類及びその組み合わせ(より好ましくは、シース−コアのバイコンポーネント繊維及びその組み合わせ)が挙げられる。
【0091】
使用するポリマーバインダーの種類にかかわらず、得られる濃縮デバイス(乾燥形態)中のバインダーの量は、一般に、濃縮デバイスの全構成要素の総重量に対して約3重量%〜約7重量%(好ましくは、約5重量%)であり得る。そうした量のポリマーバインダーは、一般に、粒子を大いにコーティングすることなく、多くの用途で使用するのに十分な一体性を多孔質繊維性不織布マトリックスにもたらすことができる。驚くべきことに、濃縮デバイス中のポリマーバインダーの量は、濃縮デバイス中の繊維の重量に対して約5重量%未満、4重量%未満、3重量%未満、2重量%未満、又は更には1重量%未満であり得る。
【0092】
濃縮デバイスの好ましい実施形態では、ポリマーバインダーは粒子に実質的に付着しない。換言すれば、濃縮デバイスを走査電子顕微鏡で調べると、粒子の総面積の約5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、又は更には1%未満がポリマーバインダーで覆われている。
【0093】
本発明のプロセスで使用する濃縮デバイスは、(a)複数の上述の繊維を提供すること、(b)複数の上述の濃縮剤の粒子を提供すること、及び(c)複数の繊維の少なくとも一部を、複数の粒子の少なくとも一部がその中に捕らえられている多孔質繊維性不織布マトリックスに形成すること、を含むプロセスによって調製され得る。上記のように、形成することは、濃縮剤の粒子がその中に捕らえられている繊維性不織布マトリックス(即ち、間に挿入された繊維を含む、織物又は編物以外のウェブ又は媒体)を提供することができる本質的にいかなるプロセスによっても実施され得る。有用なプロセスとしては、メルトブロー法、スパンボンド法、及び他のエアーレイ法、カーディング法、湿式堆積法等、並びにこれらの組み合わせ(好ましくは、エアーレイ法、湿式堆積法、及びこれらの組み合わせ;より好ましくは、湿式堆積法)が挙げられる。
【0094】
好ましくは、形成することは、(a)複数の繊維、複数の粒子(他のプロセス工程を行う前に他の構成要素と共に添加及び分散されることができるか、又は所望により、該プロセスの後半であるが、一般に分散液の除去前に添加及び分散され得る)、及び少なくとも1つの分散液(好ましくは、水)中の少なくとも1つのポリマーバインダー、を含む分散体を形成すること、(b)ポリマーバインダーを繊維の少なくとも一部の上に少なくとも部分的に堆積すること、並びに(c)分散体から分散液を除去すること、を含むウェットレイイングつまり「湿式堆積」プロセスを用いて行われる。かかるプロセスでは、繊維が分散液の中に分散されて、スラリーを形成することができる。所望により、繊維は、それらの分散を支援するための接着剤又は化学基若しくは化学的部分を含み得る。例えば、ポリオレフィン系繊維は、無水マレイン酸又は無水コハク酸官能基を含むことができ、又は、ポリエチレン繊維の溶解プロセス中に、好適な界面活性剤を添加することができる。
【0095】
繊維上へのポリマーバインダーの堆積は、ポリマーバインダーの性質に応じて、分散液除去又は脱水工程の前又は後に行うことができる。例えば、ポリマーラテックスをポリマーバインダーとして使用する場合、ポリマーラテックスは、粒子添加の前又は後、及び脱水の前に繊維上に沈殿され得る。脱水後、熱を加えて、脱水を完了し、得られた堆積ラテックスを固めることができる。ポリマーバインダー繊維をポリマーバインダーとして使用する場合、最初に脱水を行った後、熱を加えて、脱水を完了しかつポリマーバインダー繊維を融解する(それによって、繊維上にポリマーバインダーを堆積する)ことができる。
【0096】
濃縮デバイスの調製に際し、1つ以上の補助剤又は添加剤を使用することができる。有用な補助剤としては、加工助剤(例えば、ポリマーバインダーを繊維上に沈殿させるのを助けることができる、アルミン酸ナトリウム及び硫酸アルミニウムなどの沈降剤)、得られる濃縮デバイスの全体的性能を高めることができる物質、及び同類物が挙げられる。かかる補助剤を使用する場合、その量は0超から約2重量%まで(好ましくは、濃縮デバイスの構成要素の総重量に対して、最大約0.5重量%)であり得るが、含むことができる濃縮剤の粒子の量を最大にするために、その量をできるだけ低く抑えるのが好ましい。
【0097】
好ましい湿式堆積プロセスでは、繊維(例えば、短繊維)は、分散液(例えば、水、アルコールなどの水混和性有機溶媒、又はこれらの組み合わせ)の存在下で容器内でブレンドされ得る。得られた混合物のブレンドに用いられる剪断量は、得られる濃縮デバイスの最終的な特性に影響を及ぼすことは見出されていないが、ブレンド中に導入される剪断量は比較的高いほうが好ましい。その後、粒子、ポリマーバインダー、及び過剰な沈降剤(例えば、ミョウバンなどのpH調整剤)を容器に加えることができる。
【0098】
好ましい湿式堆積プロセスが、当該技術分野において既知のハンドシート法(hand-sheet method)により実施される場合、繊維分散体に3つの成分を加える順序が、濃縮デバイスの最終的な性能に有意な影響を与えることは見出されていない。しかしながら、粒子を加えた後にポリマーバインダーを加えることにより、繊維に対する粒子の接着がいくらか良好な濃縮デバイスを得ることができる。好ましい湿式堆積プロセスが連続法により実施される場合、3つの成分は記載の順序で加えられるのが好ましい。(以下の説明はハンドシート法に基づいているが、当業者は、かかる方法を連続プロセスに適合させる方法を容易に認識することができる。)
【0099】
粒子の後、ポリマーバインダー及び沈降剤を繊維−液体スラリーに加え、得られた混合物を、底部をスクリーンで覆うことができる成形型に注ぎ込むことができる。分散液(好ましくは、水)は、スクリーンを通して(濡れたシート状の)混合物から排水させることができる。十分な量の液体が該シートから排水された後、通常、濡れたシートを成形型から取り外し、加圧、加熱、又はその2つの組み合わせにより該シートを乾燥させることができる。一般に、約300〜約600kPaの圧力及び約100〜約200℃(好ましくは、約100〜約150℃)の温度をこれら乾燥プロセスで用いることができる。ポリマーバインダー繊維を好ましい湿式堆積プロセスにおけるポリマーバインダーとして使用する場合、沈降剤は不要であり、加えられる熱を用いてポリマーバインダー繊維を融解することができる。
【0100】
得られた乾燥シートは、少なくとも約0.2mm、0.5mm、0.8mm、1mm、2mm、4mm、又は更には5mm、最大で約5mm、8mm、10mm、15mm、又は更には20mmの平均厚さを有し得る。分散液の最大約100パーセントを除去することができる(好ましくは、最大約90重量%)。所望により、追加の加圧又は溶着を提供するために、カレンダ加工を用いることができる。
【0101】
上記のように、濃縮剤の粒子はミクロ粒子であり得る。ミクロ粒子は、使用する繊維の性質に応じて、化学的相互作用(例えば、化学結合)又は物理的相互作用(例えば、吸着又は機械的捕捉)のいずれかにより、多孔質繊維性不織布マトリックス中に入り込むことができる。濃縮デバイスの好ましい実施形態としては、濃縮剤の粒子の機械的捕捉をもたらすことができる少なくとも1つのフィブリル化繊維を含むものが挙げられる。濃縮デバイスの一実施形態では、粒子の有効平均直径は、得られた湿式堆積シートのカレンダ加工されていない厚さの少なくとも約175分の1(好ましくは、カレンダ加工されていないシート厚の少なくとも約250の1、より好ましくはカレンダ加工されていないシート厚の少なくとも約300の1)である。
【0102】
濃縮デバイスの能力及び効率は、含有する濃縮剤粒子の量によって様々であり得るので、比較的高い粒子負荷が一般に望ましくあり得る。濃縮デバイス中の粒子の量は、好ましくは、(濃縮デバイスの全構成要素の総重量に対して)少なくとも約20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、又は更には80重量%であり得る。粒子は多孔質繊維性不織布マトリックス中に入り込み、その中に分散するのが好ましい(より好ましくは、粒子は、マトリックス全体に本質的に均一に分散される)。
【0103】
得られた濃縮デバイスは、制御された多孔性を有し得る(好ましくは、空気100mLに対して少なくとも約0.1秒(より好ましくは少なくとも約2秒〜約4秒、最も好ましくは少なくとも約4秒)のガーレー時間を有する)。濃縮デバイス(シート材料の形態)の坪量は、約250〜約5000g/m
2の範囲(好ましくは約400〜約1500g/m
2の範囲、より好ましくは約500〜約1200g/m
2の範囲)であり得る。
【0104】
一般に、シート材料の平均細孔径は、走査電子顕微鏡(SEM)で測定した場合、約0.1〜約10マイクロメートルの範囲であり得る。約20体積%〜約80体積%(好ましくは、約40体積%〜約60体積%)の範囲の空隙体積が有用であり得る。シート材料の多孔性は、繊維混合物中により大きい直径又は剛性の繊維を含ませることにより修正する(増加させる)ことができる。
【0105】
シート材料は可撓性であり得る(例えば、直径0.75インチ(約2cm)のコアに巻き付けることができる)。この可撓性は、シート材料にひだを付ける又はシート材料を丸めるのを可能にし得る。シート材料は、比較的低い背圧を有し得る(つまり、比較的大量の液体が、比較的高い背圧を生成することなく、比較的迅速にシート材料を通過することができる)。(本明細書で用いる場合、「比較的低い背圧」は、3mL/cm
2の流速において約3ポンド/平方インチ(20.7kPa)、2.5ポンド/平方インチ(17.2kPa)、2ポンド/平方インチ(13.8kPa)、1.5ポンド/平方インチ(10.3kPa)、又は更には1ポンド/平方インチ(6.9kPa)未満の差背圧を指し、この場合、流速は、シート材料の前面表面積に基づく。)
【0106】
カレンダ加工されていないシート材料を所望の寸法に切断し、本発明の濃縮プロセスを実施するために使用することができる。所望により(例えば、シート全体の有意な圧力低下が懸念事項でない場合)、使用の前に引張り強度を高めるために、シート材料をカレンダ加工することができる。シート材料にひだを付ける場合、乾燥及びカレンダ加工を避けることができるのが好ましい。
【0107】
単一層のシート材料は、本発明の濃縮プロセスを実施するのに有効であり得る。より大きな濃縮能力を提供するために、所望により、多層を使用することができる。
【0108】
濃縮デバイスの多孔質繊維性不織布マトリックスの有意な利点は、非常に小さな濃縮剤粒径(10μm以下)及び/又は比較的広範な粒径分布の濃縮剤粒子を採用することができることである。これにより、表面積/質量比が増大するため、優れたワンパスキネティクス(one-pass kinetics)が可能となり、多孔質粒子に関しては、内部拡散距離を最小にすることが可能となる。圧力低下が比較的小さいので、小さい粒径の濃縮剤を採用する場合でさえも、最小限の推進力(重力又は真空など)を用いて試料を濃縮デバイスに通過させることができる。
【0109】
所望により、濃縮デバイスは、例えば、1つ以上のプレフィルター(例えば、試料を多孔質マトリックスに通す前に試料から比較的大きい食物粒子を除去するため)、多孔質マトリックスのための支持体又はベース(例えば、フリット又はグリッドの形態)、デバイス全体に圧力差を加えるためのマニホールド(例えば、試料を多孔質マトリックスに通すのを助けるため)、及び/又は外部ハウジング(例えば、多孔質マトリックスを収容する及び/又は保護するための使い捨てカートリッジ)などの1つ以上の他の構成要素を更に含むことができる。
【0110】
試料
本発明のプロセスは、医療、環境、食品、飼料、臨床、及び検査室の試料、及びこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない、様々なタイプの試料に適用することができる。医療又は獣医試料には、例えば、臨床診断のために検査される生物源(例えばヒト又は動物)から得た細胞、組織、又は流体が含まれる。環境試料は、例えば、医療機関又は獣医機関、産業用設備、土壌、水源、食品調理領域(食品接触及び非接触領域)、検査室、又はバイオテロリズムの対象になり得る領域から得たものであり得る。食品の加工、取扱い、及び調理領域の試料は、細菌病原菌による食品供給汚染に関する特定の懸念があることが多いので、より好適である。
【0111】
液体の形態で得られる試料、又は液体中の固体の分散液若しくは懸濁液の形態で得られる試料は、直接使用することができ、あるいは濃縮して(例えば遠心分離により)又は希釈して(例えば緩衝(pH調整済み)溶液の追加により)使用することができる。固体又は半固体の試料は、直接使用するか、あるいは例えば、所望であれば、流動体媒質(例えば緩衝液)で洗浄若しくはすすぎ、又は流動体媒質中に懸濁若しくは分散させることにより抽出することができる。試料は表面から(例えばスワブ拭き取り又はすすぎにより)採取することができる。好ましくは、試料は流体の形態で使用される(例えば、液体、気体、又は液体中若しくは気体中の固体若しくは液体の分散物若しくは懸濁物)。
【0112】
本発明のプロセスを実施する際に使用できる試料の例としては、食品(例えば、生鮮農産物又はそのまま食べる昼食若しくは「調理された」食肉)、飲料(例えばジュース又は炭酸飲料)、水(飲料水を含む)、並びに生物学的流動体(例えば全血、又は血漿、血小板の豊富な血液分画、血小板濃縮物、圧縮した赤血球などの血液構成成分、細胞調製物(例えば細胞分散液、骨髄吸引物、又は脊椎骨髄)、細胞懸濁液、尿、唾液、及びその他の体液、骨髄、肺水、脳液、外傷滲出物、外傷生検試料、眼内液、脊髄液など)が挙げられ、また溶解緩衝液の使用などの手順を使用して形成することができる細胞可溶化物などの溶解調製物が含まれる。好ましい試料としては、食品、飲料、水、生体液、及びこれらの組み合わせ(食品、飲料、水、及びこれらの組み合わせがより好ましく、水が最も好ましい)が含まれる。
【0113】
試料の量は、個々の用途に応じて異なり得る。例えば、本発明のプロセスを診断又は研究用途に使用する場合には、試料の量は、通常、マイクロリットルの範囲であり得る(例えば10マイクロリットル以上)。本プロセスが食品病原体試験検査又は飲料水安全性試験のために使用される場合、試料の量は通常、ミリリットル〜リットルの範囲であり得る(例えば100ミリリットル〜3リットル)。バイオプロセス又は製剤処方などの産業用途においては、この量は何万リットルであることがある。
【0114】
本発明のプロセスは、濃縮状態の試料から微生物を分離し、更に、使用される検出手順を阻害し得る試料マトリックス構成成分から微生物を分離することも可能にする。これらすべての場合において、本発明のプロセスは、他の細胞検体又は微生物濃縮方法に追加し、又はその代わりに、用いることができる。よって、所望により、追加の濃縮が望ましい場合には、本発明のプロセスを実施の前又は後に試料から培養を行うことができる。このような培養増菌は一般的又は一次的(大部分又は本質的に全ての微生物の濃度を増菌)であるか、あるいは特異的又は選択的(1つ以上の選択された微生物のみの濃度を増菌)であることができる。
【0115】
接触
本発明のプロセスは、2つの物質の間に接触をもたらす、様々な既知の方法又は今後開発される方法によって実施することができる。例えば、濃縮デバイスを試料に加えてもよく、又は試料を濃縮デバイスに加えてもよい。濃縮デバイスを試料中に浸漬することができ、試料を濃縮デバイスの上に注ぐことができ、試料を濃縮デバイスを入れた管又はウエルの中に注ぐことができ、又は好ましくは、試料を濃縮デバイスの上又は中に(好ましくは、中に)通すことができる(又は逆も可)。好ましくは、試料が多孔質繊維性不織布マトリックスの少なくとも1つの細孔内を(好ましくは、少なくとも1つの貫通細孔内を)通るような方法で接触を行う。
【0116】
濃縮デバイス及び試料を様々な容器又はホルダー(場合によっては、キャップ付き、密閉又は密封の容器、好ましくは、カラム、注射器筒、又は本質的に試料の漏洩無しでデバイスを収めるように設計された他のホルダー)のいずれかの中で(任意の追加順序を用いて)組み合わせることができる。本発明のプロセスを実施するために用いられるのに好適な容器は、個々の試料によって決定され、量及び性質により大きく異なり得る。例えば、容器は10マイクロリットル容器(例えば試験管又は注射器)などの小さいものであり得、又は100ミリリットルから3リットル容器(例えば、エルレンマイヤーフラスコ又は環状円筒容器)などの大きいものであり得る。
【0117】
容器、濃縮デバイス、及び試料に直接接触する任意のその他の器具又は添加物を使用前に滅菌(例えば、制御された熱、エチレンオキシドガス、又は放射線によって)して、検出エラーを起こし得る試料のいかなる汚染も低減又は防止することができる。特定の試料の微生物の捕捉又は濃縮に充分な、検出を成功させる濃縮デバイス中の濃縮剤の量は、場合によって異なり(例えば、濃縮剤及びデバイスの性質及び形並びに試料の量に依存する)、当業者によって容易に決定可能である。
【0118】
接触は、所望の期間行うことができる(例えば、数リットルの試料体積、又は濃縮デバイスを複数回通過させるプロセスでは、最大約60分、好ましくは約15秒〜約10分以上、より好ましくは約15秒〜約5分、最も好ましくは約15秒〜約2分の接触が有用であり得る。)随意であるが、微生物と濃縮デバイスとの接触を増大させるために好まれる方法であり得る、混合(例えば、試料の多孔質マトリックス内の通過を促進するための、攪拌、振盪、又はデバイス全体での圧力差の印加)及び/又はインキュベーション(例えば、周囲温度での)により、接触を増強することができる。
【0119】
好ましくは、試料を少なくとも1回(好ましくは1回のみ)濃縮デバイスに通す(例えば、ポンプ送液により)ことにより、接触を行うことができる。任意のタイプのポンプ(例えば、蠕動ポンプ)又はデバイス全体で圧力差を生じさせるための他の装置(例えば、注射器又はプランジャー)を使用することができる。有用な流速は、試料マトリックスの性質及び特定用途などの要因に応じて異なる。
【0120】
例えば、1分当り約100ミリリットルまで又はそれ以上のデバイスを通る試料流速が有効であり得る。好ましくは、飲料及び水などの試料では、1分当り約10〜20ミリリットルの流速を用いることができる。予め濾過された、ないしは別の方法で浄化された食品試料では、1分当り約6ミリリットル(15秒当り1.5ミリリットル)の流速が有用であり得る。牛挽肉又は七面鳥の挽肉などのより複雑な試料マトリックスでは、より長い接触時間及びよりゆっくりとした流速が有用であり得る。
【0121】
好ましい接触方法には、(例えば、ポンプによって)試料を濃縮デバイスに通過させることが挙げられる。所望により、1つ以上の添加剤(例えば、溶解試薬、生物発光検定試薬、核酸捕捉試薬(例えば、電磁ビーズ)、微生物用培地、緩衝液(例えば、固形試料の湿潤のため)、微生物染色試薬、洗浄用緩衝液(例えば、結合していない物質を洗い流すため)、溶出剤(例えば血清アルブミン)、界面活性剤(例えば、Union Carbide Chemicals and Plastics(Houston,TX)から入手可能なTriton(商標)X−100非イオン性界面活性剤)、機械的磨耗/溶出剤(例えば、ガラスビーズ)、吸着緩衝液(例えば、上記の吸着緩衝液で改質された濃縮剤を調製するために使用したものと同じ緩衝液又は異なる緩衝液)、及び同類物)を、接触中に濃縮デバイスと試料との組み合わせに含ませることができる。
【0122】
本発明のプロセスは、所望により、得られる標的細胞検体が結合した濃縮デバイス及び試料を分離させることを更に含む。分離は、当該技術分野において周知の数多くの方法によって実施可能である(例えば、標的細胞検体が結合した濃縮デバイスを該プロセスを実施する際に使用した容器又は保持器内に残すために、液状試料をポンプで吸い上げる、別の容器へ移す、又はサイホンで吸い上げることによる)。試料の接触後に、捕捉された標的細胞検体(標的微生物又はその1つ以上の構成要素)を濃縮デバイスから単離又は分離することも可能であり得る(例えば、溶出剤又は溶解剤を濃縮デバイスの上又は中に通すことによる)。
【0123】
本発明のプロセスは、手動で(例えば、バッチ式で)行うことができ、又は(例えば、連続的又は半連続的処理を可能にするように)自動化することができる。
【0124】
検出
様々な微生物は、本発明のプロセスを用いて濃縮及び検出することができ、該微生物としては、例えば、細菌、菌類、酵母、原生動物、ウイルス(非エンベロープ型ウイルス及びエンベロープ型ウイルスの両方を含む)、細菌内生胞子(例えばバチルス(炭疽菌、セレウス菌、及び枯草菌など)及びクロストリジウム(ボツリヌス菌、クロストリジウム・ディフィシル、及びウェルシュ菌など))、及び同類物、並びにこれらの組み合わせ(好ましくは、細菌、酵母、ウイルス、細菌内生胞子、及びこれらの組み合わせ;より好ましくは、細菌、酵母、細菌内生胞子、菌類、及びこれらの組み合わせ;更により好ましくは、細菌、酵母、及びこれらの組み合わせ;更により好ましくは、グラム陰性菌、グラム陽性菌、酵母、菌類、及びこれらの組み合わせ;最も好ましくは、グラム陰性菌、グラム陽性菌、酵母、及びこれらの組み合わせ)が挙げられる。このプロセスは、病原体の検出における有用性を有し、これは食品安全性又は医療、環境、若しくはテロ対策の理由から非常に重要であり得る。このプロセスは、病原菌(例えば、グラム陰性菌及びグラム陽性菌の両方)、並びに様々な酵母及びカビ(並びにこれらの任意の組み合わせ)の検出に特に有用であり得る。
【0125】
検出される標的微生物の属には、リステリア属、大腸菌属、サルモネラ属、カンピロバクター属、クロストリジウム属、ヘリコバクター属、マイコバクテリウム属、シゲラ属、ブドウ球菌属、腸球菌属、バチルス属、ナイセリア属、シゲラ属、連鎖球菌属、ビブリオ属、エルシニア属、ボルデテラ属、ボレリア属、シュードモナス属、サッカロミケス属、カンジダ属、及び同様物、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。試料には複数の微生物株が含まれることがあり、任意の株を、他の株とは独立して検出することができる。検出の標的となり得る具体的な微生物としては、大腸菌、腸炎エルシニア、仮性結核菌、コレラ菌、腸炎ビブリオ、ビブリオ・バルニフィカス、リステリア・モノサイトゲネス(リステリア・イノキュアがサロゲートである)、黄色ブドウ球菌、サルモネラ菌、サッカロマイセス・セレヴィシエ、カンジダ・アルビカンス、ブドウ球菌エンテロトキシン亜種、セレウス菌、炭疽菌、バチルス・アトロファエウス、バチルス・ズブチルス、ウェルシュ菌、ボツリヌス菌、クロストリジウム・ディフィシレ、エンテロバクター・サカザキ、大腸菌バクテリオファージがサロゲートであるヒト感染性非エンベロープ型腸内ウイルス、緑膿菌、及び同類物、並びにこれらの組み合わせ(好ましくは、黄色ブドウ球菌、リステリア・モノサイトゲネス(リステリア・イノキュアがサロゲートである)、サルモネラ菌、サッカロマイセス・セレヴィシエ、バチルス・ズブチルス、緑膿菌、大腸菌、大腸菌バクテリオファージがサロゲートであるヒト感染性非エンベロープ型腸内ウイルス、及びこれらの組み合わせ;より好ましくは、黄色ブドウ球菌、リステリア・モノサイトゲネス(リステリア・イノキュアがサロゲートである)、緑膿菌、及びこれらの組み合わせ)が挙げられる。
【0126】
濃縮デバイスにより捕捉又は結合された(例えば、吸着又は篩い分けによる)微生物は、現在知られている、又は今後開発される本質的に任意の所望の方法によって検出可能である。このような方法には、例えば、培養による方法(時間が許す場合は好ましい場合がある)、顕微鏡(例えば透過光型顕微鏡又は落射蛍光顕微鏡(蛍光染料で標識した微生物を可視化するのに使用できる))、並びにその他の画像手法、免疫学的検出方法、及び遺伝子学的検出方法が挙げられる。微生物の捕捉後の検出プロセスは、任意に、試料マトリックスの構成要素を除去するために洗浄すること、濃縮デバイスの多孔質繊維性不織布マトリックスをスライスするか別の方法で細かくすること、細胞検体を濃縮デバイスから放出させるために染色する、沸騰させる、あるいは溶出緩衝液又は溶解剤を使用することなどを含み得る。
【0127】
免疫学的検出は、標的生物に由来する抗原物質の検出であり、これは一般的に、細菌又はウイルス粒子の表面にあるマーカーとして作用する生物学的分子(例えばタンパク質又はプロテオグリカン)である。抗原物質の検出は通常、抗体、例えばファージディスプレイなどのプロセスによって選択されたポリペプチド、又はスクリーニングプロセスから得られたアプタマーによって行うことができる。
【0128】
免疫学的検出方法は周知であり、それには、例えば免疫沈降及び酵素結合免疫吸着検定(ELISA)が挙げられる。抗体結合は、様々な方法で検出することができる(例えば、一次抗体又は二次抗体のいずれかを、蛍光染料で、量子ドットで、又は化学発光若しくは着色基質を生成できる酵素で標識し、プレートリーダー又はラテラルフロー装置のいずれかを用いる)。
【0129】
検出はまた、遺伝子学的検定法(例えば核酸のハイブリダイゼーション又はプライマーを用いた増幅)によって実行することができ、これが好ましい方法であることが多い。捕捉又は結合された微生物は溶解され、遺伝子学的物質を検定に利用できるようにする。溶解方法は周知であり、これには例えば、音波処理、浸透性ショック、高温処理(例えば約50℃〜約100℃)、並びにリゾチーム、グルコラーゼ、チモラーゼ(zymolose)、リチカーゼ、プロテイナーゼK、プロテイナーゼE、及びウイルスエンドリシン(enolysins)などの酵素と共にインキュベーションすることが挙げられる。
【0130】
一般的に使用されている遺伝子学的検出検定法の多くは、DNA及び/又はRNAを含む、具体的な微生物の核酸を検出する。遺伝子学的検出方法に使用される条件の厳密性は、検出される核酸配列の変異レベルに相関する。塩濃度及び温度の非常に厳しい条件により、標的の正確な核酸配列の検出が制限され得る。よって、標的核酸配列に小さな変異を有する微生物株は、非常に厳しい遺伝子学的検定法を使用して区別することができる。遺伝子学的検出は、核酸ハイブリダイゼーションに基づくことができ、その場合、一本鎖核酸プローブが微生物の変性核酸にハイブリッド化して、プローブ鎖を含む二本鎖核酸が生成される。当業者は、ゲル電気泳動、細管式電気泳動、又はその他の分離方法の後でハイブリッドを検出するための、放射性、蛍光、及び化学発光標識などのプローブ標識について熟知するであろう。
【0131】
特に有用な遺伝子学的検出方法は、プライマーを用いた核酸の増幅に基づくものである。プライマーを用いた核酸増幅方法には、例えば、熱サイクル方法(例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、及びリガーゼ連鎖反応(LCR))、並びに等温方法及び鎖置換増幅(SDA)(及びこれらの組み合わせ、好ましくはPCR又はRT−PCR)が挙げられる。増幅された生成物を検出する方法は、例えばゲル電気泳動分離及び臭化エチジウム染色、並びに生成物中に組み込んだ蛍光標識又は放射性標識の検出が含まれるが、これらに限定されない。増幅生成物の検出前に分離工程を必要としない方法(例えば、リアルタイムPCR又はホモジニアス検出法)も使用することができる。
【0132】
生物発光検出法は周知であり、例えば、記述が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,422,868号(Fanら)に記述されているものを含むアデノシン(adensosine)三リン酸(ATP)検出方法が挙げられる。他の発光に基づく検出方法も使用することができる。
【0133】
本発明のプロセスは株特異性ではないため、同じ試料内で、複数の微生物株を検定のための標的にすることができる、一般的な捕捉システムを提供する。例えば、食品試料の汚染について検定を行う場合、同じ試料内でリステリア・モノサイトゲネス、大腸菌、及びサルモネラの全部について試験を行うことが望ましい場合がある。捕捉工程を1回行い、次に例えば、これら微生物株それぞれの、異なる核酸配列を増幅するための固有プライマーを使用して、PCR又はRT−PCR検定を行うことができる。したがって、それぞれの株について別々の試料取扱い及び作製手順を行う必要性を回避することができる。
【0134】
診断キット
本発明の濃縮プロセスを実施するために用いられるための診断キットは、(a)少なくとも1つの上述の濃縮デバイス、及び(b)本発明の濃縮プロセスの実施において使用するための少なくとも1つの試験容器又は試験試薬(好ましくは無菌の試験容器又は試験試薬)を含む。好ましくは、診断キットは、本プロセスを実施するための取り扱い説明書を更に含む。
【0135】
有用な試験容器又はホルダーとしては上述のものが挙げられ、これを例えば、接触、インキュベーション、溶出液の捕集、又は他の所望のプロセス工程に使用することができる。有用な試験試薬としては、微生物培養又は生長媒体、溶解剤、溶出剤、緩衝液、発光検出検定構成要素(例えば、照度計、溶解剤、ルシフェラーゼ酵素、酵素基質、反応緩衝液など)、遺伝子学的検出検定構成要素など、及びこれらの組み合わせが挙げられる。好ましい溶解試薬は、緩衝液中に供給された溶解酵素又は薬品であり、好ましい遺伝子学的検出検定構成要素としては、標的微生物に固有の1つ以上のプライマーが挙げられる。キットは、場合によっては、無菌のピンセットなどを更に含むことができる。
【0136】
フィルター媒体
他の実施形態において、本開示は、試料(例えば、水)から微生物汚染又は病原菌を除去するためのフィルター媒体を提供する。本開示に従って使用するのに適したフィルター媒体としては、(a)多孔質繊維性不織布マトリックス、及び(b)多孔質繊維性不織布マトリックス中に捕らえられている、複数の上述の濃縮剤の粒子と、を含むものが挙げられる。かかるフィルター媒体は、濃縮剤及び濃縮デバイスに関して上述したものと本質的に同じプロセスによって調製されることができ、かつ濃縮剤及び濃縮デバイスに関して上述したものと本質的に同じ材料を含み得る。
【実施例】
【0137】
本発明の目的及び利点は、以下の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例において列挙される特定の材料及びその量は、他の諸条件及び詳細と同様に、本発明を過度に制限するものと解釈されるべきではない。以下の実施例における全ての部分、割合、比率などは、特に記載がない限り、重量によるものとする。用いた溶媒及びその他の試薬は、特に記載がない限り、Sigma−Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手した。全ての微生物培養物をThe American Type Culture Collection(ATCC;Manassas,VA)から購入した。特に指示しない限り、実験結果は2回の試験の平均である。トリプチックソイ寒天プレート上に選択した微生物を画線した後、プレートを37℃で一晩インキュベートすることによって、一晩培養物を調製した。全ての微生物の計数は、標準的なコロニー形成単位の微生物計数方法に従って行われ、計数は概数である。
【0138】
材料
■粒子状濃縮剤1(以下、「粒子1」)−酸化鉄の堆積によって表面改質された珪藻土(本質的に以下に記載の通りに調製される)
【0139】
■粒子状濃縮剤2(以下、「粒子2」)−酸化チタンの堆積によって表面改質された珪藻土(本質的に以下に記載の通りに調製される)
【0140】
■BHIブロス−Difco(商標)Bovineハートインフュージョンブロス、Becton Dickinson(Sparks,MD)の汎用増殖培地、メーカーの説明書に従って3.7重量%(wt%)濃度で調製
【0141】
■緩衝液−Butterfield緩衝液、pH 7.2±0.2;リン酸2水素カリウム緩衝液;VWRカタログ番号83008−093;VWR,West Chester,PA
【0142】
■トリプチックソイ寒天プレート−Becton Dickinson(Sparks,MD)のDifco(商標)トリプチックソイ寒天、Difco(商標)トリプチックソイブロス(Becton Dickinson,Sparks,MD)を使用してメーカーの説明書に従って3重量%(wt%)で調製
【0143】
■MOXプレート−Oxford培地、リステリア菌用に変更、Hardy Diagnostics(Santa Maria,CA)より入手の寒天系増殖培地
【0144】
■ACプレート−3M(商標)Petrifilm(商標)好気性菌計測プレート(再水和可能な乾燥培地を含む平板型フィルム培養デバイス);3M Company,St.Paul,MN
【0145】
■PIAプレート−Teknova製のシュードモナス分離寒天培地;VWR(West Chester,PA)より購入
【0146】
■C−寒天平板−Becton Dickinson製のBBL(商標)CHROMagar(商標)黄色ブドウ球菌プレート(寒天系増殖培地);VWR(West Chester,PA)より購入
【0147】
■ELISA検定−3M(商標)TECRA(商標)リステリア菌可視イムノ検定キット;3M Company(St.Paul,MN)
【0148】
■真空濾過装置−側部真空ポートを有する1000mLのフラスコに、多孔質繊維性不織布マトリックス又はフィルターの支持体としての役割を果たす焼結ストッパーを取り付けた。支持体領域は、多孔質繊維性不織布マトリックスの直径48mmの円形ディスクを保持するように寸法設定された。シリンダの上部及び底部周囲にフランジリムを有する開口収集シリンダ(最大容積100mL)をフラスコに固定し、それらの間にストッパーを固定した。フラスコと真空ポートを備えた栓とを可撓性のホースで接続して、真空を提供した。装置は、各使用期間に先立ち、121℃にて15分間オートクレーブすることによって滅菌され、使用中は、各試料を濾過した後70重量%(wt%)のエタノール及び蒸留水ですすがれた。
【0149】
■フィルタホルダー−直径13mmのSwinnex(商標)フィルタホルダー;Millipore Corp.(Bedford,MA)
【0150】
■ストマッカー及びストマッカーバッグ−Stomacher(商標)400サーキュレータラボラトリーブレンダー及びStomacher(商標)ポリエチレンフィルターバッグ、Seward Corp.(Norfolk,UK);VWR(West Chester,PA)より購入
【0151】
用語
■多孔質繊維性不織布マトリックス−以下の実施例及び比較例では、乾燥フェルト、パッド、マトリックス、又はフィルターと呼ばれる場合もある。
【0152】
■液体の濃縮−100mL又は250mLの微生物含有液体試料を多孔質繊維性不織布マトリックス又はフィルターに通し、フィルターによって微生物を収集又は濃縮する。次に、1又は2mLの付加緩衝液又は水を用いてフィルターを分析する(例えば、塗られるか、ないしは別の方法で検定する)。このようにして、微生物は、100mL又は250mLの液体から1又は2mLの液体へと濃縮される。
【0153】
■CFU−コロニー形成単位
【0154】
■濾液計数−濾液中の微生物コロニーの計数
【0155】
■前濾過計数−濾過前の試料中の微生物コロニーの計数(即ち、未濃縮の試料の微生物計数)
【0156】
■MCE−多孔質繊維性不織布マトリックスの微生物捕捉効率(又は結合効率)は、マトリックスがいかに良好に微生物を捕捉するかの評価である。MCE(パーセント(%))は次式によって決定された。
MCE=100−[(濾液計数/前濾過計数)×100]
【0157】
■0.5マクファーランド標準−分散した微生物を含む濁度基準、bioMerieux,Inc.(Durham,NC)から入手のDensiCHEK(商標)密度計を使用して調製した
【0158】
表面改質珪藻土粒子状濃縮剤の調製
Alfa Aesar(A Johnson Matthey Company,Ward Hill,MA)から、白色粉末のキーゼルグール(珪藻土)(325メッシュ;粒径は全て44マイクロメートル未満)を購入した。この材料は、X線回折(XRD)によって、α−クリストバライト及び石英と共に非晶質シリカを含むことが示された。
【0159】
2つの異なる表面改質剤(即ち二酸化チタン及び酸化鉄)を含む粒子状濃縮剤を、以下の方法により珪藻土を表面処理することにより調製した。
【0160】
二酸化チタンの堆積
20.0gのTiO(SO
4)
・2H
2O(Noah Technologies Corporation(San Antonio,TX))を80.0gの脱イオン水に攪拌しながら溶解させることにより、20重量パーセントのオキシ硫酸チタン(IV)二水和物溶液を作製した。この溶液50.0gを脱イオン水175mLと混合し、二酸化チタン前駆体化合物溶液が生成された。大きなビーカー内で急速に攪拌しながら、50.0gの珪藻土を500mLの脱イオン水に分散させることにより、珪藻土の分散液が調製された。この珪藻土分散液を約80℃に加熱した後、急速に攪拌しながら約1時間かけて二酸化チタン前駆体化合物溶液を滴下して加えた。加えた後、ビーカーを時計皿で覆い、内容物を加熱して20分間沸騰させた。水酸化アンモニウム溶液をビーカーに加え、内容物のpHを約9にした。得られた生成物を、洗浄水のpHが中性になるまで沈殿/デカンテーションによって洗浄した。生成物を濾過によって分離し、100℃で一晩乾燥させた。
【0161】
乾燥生成物の一部を磁器るつぼに入れ、加熱速度毎分約3℃で室温から350℃まで加熱することによって焼成し、350℃で1時間保持した。
【0162】
酸化鉄の堆積
硫酸チタニル溶液の代わりに20.0gのFe(NO
3)
3・9H
2O(J.T.Baker,Inc.,Phillipsburg,N.J.)を175mLの脱イオン水に溶解させたことを除き、本質的に上記の二酸化チタン堆積プロセスを用いることで、酸化鉄を珪藻土上に堆積させた。更なる試験のため、得られた酸化鉄改変珪藻土の一部を同様に350℃で焼成した。
【0163】
実施例1〜2及び比較例C1:濃縮デバイス1、2、及びC1の調製
繊維プレミックスは、30gの1デニールフィブリル化ポリエチレン繊維(FYBREL(商標)620繊維;Minifibers,Inc.(Johnson City,TN))と4Lの冷たい水道水とを、4Lのブレンダー(Waringの市販のHeavy Duty Blender、モデル37BL84)内で中速で30秒間ブレンドすることによって調製された。繊維は水中に均一に分散され、この時点で塊又は癒着(nits)は存在せず、次に、6デニールの長さ0.25インチ(0.64cm)の短く刻んだナイロン繊維(Minifibers,Inc.(Johnson City,TN))6gと、長いガラス繊維(Micro−Strand 106−475 Glass繊維ガラス;Schuller,Inc.(Denver,CO))6gとを繊維分散体に加え、低速で30秒間ブレンドした。
【0164】
マトリックス組成物は、得られた繊維プレミックス1000mLを4Lのステンレス鋼製ビーカーに加え、速度設定4のインペラミキサー(Fisher Scientific Stedfast StirrerモデルSL2400;VWR(West Chester,PA)から入手可能)で5分にわたって混合することにより調製された。50mLのビーカー内の水道水約25mL中1.0gのラテックスバインダー(50重量%固形分の酢酸ビニルエマルション;Airflex 600BP、Air Products Polymers(Allentown,PA))分散体を、混合した繊維プレミックスに加えた後、ビーカーをすすいだ更なる水25mLを加えた。得られた配合物を2分間混合した後、2.0gの凝集剤(MP 9307凝集剤(ジメチルアミンとエピクロロヒドリンとのコポリマーと考えられる)、Midsouth Chemical Co.,Inc.(Riggold,LA))を約25mLの水に予め分散させた後この配合物に加え、次に、ビーカーからの更なるすすぎ水25mLを加えた。ラテックスバインダーが溶液から繊維上に析出し、マトリックス組成物の液相は、濁った状態から実質的に透明に変化した。実施例1では、10.0gの粒子1が、得られた組成物に添加され、1分間ボルテックスした。実施例2では、10.0gの粒子2が、得られた組成物に添加され、1分間ボルテックスした。比較例C1を同様に調製したが、粒子は添加しなかった。
【0165】
TAPPI(商標)パッドメーカー装置(pad maker apparatus)(Williams Apparatus(Watertown,NY))を使用してフェルトを調製した。この装置は、約20cm(8インチ)の正方形で深さ20cm(8インチ)の密閉箱を有し、この密閉箱は、底部の近くに細目スクリーン、及びこのスクリーンの下に排水弁を有していた。この箱のスクリーンの上方約1cmの高さまで水道水を充填した。マトリックス組成物を箱に注ぎ込み、弁を直ちに開いて、箱から水を引き出す真空を形成した。得られた湿式フェルトの厚さは約3mmであった。
【0166】
この湿式フェルトを、装置から吸い取り紙のシート(20cm×20cm(8インチ×8インチ)、96ポンドの白色紙、Anchor Paper(St.Paul,MN))の上に移した。フェルトを2〜3層の吸い取り紙の間に挟み、排出される水がもはや見られなくなるまで、空気で動くプレスセット内の2つの強化スクリーンの間で、413kPa(60psi;約82.7kPa(12psi)の圧力がフェルトに加わるように計算される)にて1〜2分間圧縮した。次に、圧縮されたフェルトを新しい吸い取り紙シート上に移し、125℃に設定されたオーブンに約30分間入れて残留水を除去し、ラテックスバインダーを硬化して、多孔質繊維性不織布マトリックスを形成した。
【0167】
実施例3〜4及び比較例C2:濃縮デバイス1、2及び比較例C1の試験
一晩画線培養物のリステリア・イノキュア(ATCC 33090)コロニーを5mLのBHIブロスに接種し、30℃で18〜20時間インキュベートした。10
8CFU/mLを含有する得られた培養物を緩衝液で希釈し、100mLのBHIブロスに接種して、10
5CFU/mLを含有する細菌懸濁液を得た(合計で2×10
7CFU)。実施例1、2、及び比較例C1,の多孔質繊維性不織布マトリックスのシートから円形ディスク(直径48mm)を切断し、121℃で15分間滅菌した。実施例1から得たディスクを上記の真空濾過装置に挿入し、全試料がディスクを通過するまで、細菌懸濁液100mLを装置内のディスクを通して注いだ。このプロセスを実施例2から得たディスクを使用して繰り返した。比較例C1のディスクを、合計で1×10
7CFUを含有する細菌懸濁液を用いて試験した。
【0168】
それぞれ体積100マイクロリットルの得られた濾液及び前濾過対照の2つを、1:10、1:100、及び1:1000に希釈し、MOX寒天平板上に塗り、37℃で18〜20時間インキュベートした。コロニーを手作業で計数し、微生物捕捉効率(MCE)を算出した。結果を表1に示す。
【0169】
【表1】
【0170】
100倍濃縮(100mLから1mLへの試料の濃縮)が全試料に関して観察された。
【0171】
濾過の後、滅菌ピンセットを使用してディスクを装置から取り外し、試験まで滅菌培養皿内で保管した。ディスクを滅菌したはさみで切断し、沸騰させるために2mLの緩衝液を含有する殺菌した50mLのポリプロピレン製の遠心分離管に入れた。次に、試料を、メーカーの説明書に従ってElisa検定を用いて処理した。得られた吸光度(吸光度単位)を波長414ナノメートル(A
414)の分光光度計(Molecular Devices(Sunnyvale,CA))から入手のSpectraMax(商標)M5)から読み出した。結果を表2に示す。
【0172】
【表2】
【0173】
表2のデータは、実施例1及び2のディスクが、Elisa検定当たり1mLの指示の代わりに2mLの緩衝液の中で沸騰されたにもかかわらず、(Elisa検定の陰性対照と比較して)より大きな吸光度が実施例1及び2によってもたらされたことを示している。
【0174】
実施例5〜6及び比較例C3:濃縮デバイス1、2及び市販のナイロンフィルタの試験
七面鳥の挽肉(脂肪分12%と標示)を近くのスーパーで購入した。七面鳥の挽肉11gを殺菌したストマッカーバッグに入れ、ストマッカー内で毎分回転数(rpm)200の速度で1分間、緩衝液99mLと共にブレンドした。ブレンドした試料を、実施例1のマトリックスの48mmディスクを収容している真空濾過装置に注ぎ込んだ(実施例5)。ディスクを通る流れが止まるまで(ディスクが詰まった兆候)、試料を水栓から真空で濾過した。この手順を、実施例2のディスク(実施例6)、及び3M Purification,Inc.(St.Paul,MN)から入手した0.45マイクロメートルのナイロンフィルタ(比較例C3)を使用して繰り返した。全試料体積及び目詰まりする前にディスクを通過した試料体積が、下の表3に示されている。
【0175】
【表3】
【0176】
表3のデータは、陰圧を用いて処理した場合、実施例5及び6のディスクは、比較例C3,の標準的な微生物学的フィルターよりも目詰まりに対してより良好な抵抗を有していたことを示している。
【0177】
実施例7〜8及び比較例C4〜C6:粒子状濃縮剤(粒子1及び2)のみを用いた濃縮デバイス1及び2並びに比較例の試験
リステリア・モノサイトゲネス(ATCC 51414)の一晩培養物を使用して、3mLのBHIブロス中で0.5マクファーランド標準を調製した。10
3CFU/mL含有する細菌懸濁液を得るために、10
8CFU/mLを含有する得られた細菌ストックをBHIブロスで連続的に希釈した。
【0178】
直径14mmの円形ディスクを、実施例1及び2並びに比較例C1のマトリックスから打ち抜いた。実施例1のマトリックスから得たディスク(実施例7)を、直径13mmのフィルタホルダーに挿入した。3立方センチメートル(cc)の注射器でフィルタホルダーに供給された1.5mL体積の細菌懸濁液を、20秒でディスクに通過させた。実施例2のマトリックス(実施例8)及び比較例C1のマトリックス(比較例C6)からのディスクを使用して、この手順を繰り返した。
【0179】
得られた濾液を、次のようにMOXプレート上の体積100マイクロリットルで塗った。ディスクをそれぞれ、表面が滅菌されたピンセットを使用してフィルタホルダーから取り外し、100マイクロリットルの緩衝液をMOXプレート上に更に塗った。平板を37℃で18〜20時間インキュベートした。得られた微生物コロニーを手作業で計数した。
【0180】
比較例C4,では、20mgの量の粒子1を、殺菌した5mLのポリプロピレン製の管(BD Falcon(商標)、Becton Dickinson(Franklin Lakes,NJ);VWR(West Chester,PA)より入手)内で、細菌懸濁液1.1mLと混合した。20mgの粒子2を使用して、第2の試料を同様に調製した(比較例C5)。管に蓋をし、1分当り14サイクルで揺動する揺動プラットフォーム(Thermolyne Vari Mix(商標)揺動プラットフォーム;Barnstead International(Iowa))上に20秒間置いた。次いで、管を試験管台に1分間移し(tranferred)、その後ほとんどの粒子は管の底に沈殿した。懸濁した粒子を含有している、体積100マイクロリットルの得られた上澄みを、MOXプレート上に塗り、本質的に濾液及びディスクに関して上述した通りに処理した。体積100マイクロリットルの細菌懸濁液も塗り、対照(即ち、前濾過)試料と同じ方法でインキュベートした。対照のコロニー数は2500であった。濾液及び上澄みからのコロニー数に基づいて、微生物捕捉効率(MCE)を算出した。結果を下表4に示す。
【0181】
【表4】
【0182】
実施例9〜10及び比較例C7:濃縮デバイス1及び2並びに市販のポリカーボネートフィルタ膜の試験
冷凍牛挽肉(脂肪分15%と標示)を近くのスーパーで購入し、解凍した牛挽肉11gを、殺菌したストマッカーバッグ内で緩衝液99mLと共にブレンドし、ストマッカー内で230rpmで30秒間処理した。体積10mLのブレンドした牛肉の容量を、10ccの注射器でフィルタホルダー内の実施例1のマトリックスの直径14mmのディスクに供給した(実施例9用)。実施例2及び市販のフィルター膜(直径14mmのWhatman、0.22マイクロメートルのポリカーボネートフィルタ膜、VWR(West Chester,PA)より購入)も、実施例10及び比較例C7,としてそれぞれ試験した。目詰まり及び流れ停止前にディスク又は膜を通過したブレンドした牛肉の体積、並びに目詰まり及び流れ停止前の通過期間を記録し、表5に示す。
【0183】
【表5】
【0184】
実施例11〜14:濃縮デバイス1及び2の試験
緑膿菌(ATCC 9027)の一晩培養物を使用して、3mLの濾過した蒸留脱イオン水(Milli−Q(商標)Gradient脱イオン化システムから入手の18メガオーム水;Millipore Corporation(Bedford,MA))中で0.5マクファーランド標準を調製した。10
2CFU/mL含有する緑膿菌懸濁液を得るために、10
8CFU/mLを含有する得られた細菌ストックを同じ水で連続的に希釈した。黄色ブドウ球菌(ATCC 6538)の細菌懸濁液を同じ手順を用いて調製した。
【0185】
体積1mLの緑膿菌懸濁液を、本質的に実施例7〜8に関して上述した通りに、フィルタホルダー内の実施例1の13mmディスクを通して濾過した(実施例11)。得られた濾液を、メーカーの説明書に従ってACプレート上に塗った。滅菌ピンセットを使用してディスクをフィルタホルダーから取り外し、100マイクロリットルの緩衝液をPIAプレート上に塗った。実施例2のディスクを使用して濾過手順を繰り返した(実施例13)。
【0186】
次に、黄色ブドウ球菌懸濁液、並びに実施例1及び2のディスク(それぞれ実施例12及び14)を使用して濾過手順を繰り返した得られた濾液をACプレート上に塗り、使用したディスクをC−寒天平板上で100マイクロリットルの緩衝液で塗った。
【0187】
全てのプレートを37℃で18〜20時間インキュベートし、得られたコロニーを手作業で計数し、微生物の捕捉効率を算出した。全てのプレートは微生物の増殖を示した(緑膿菌、PIA上の黄緑の色素によって特徴付けられる;黄色ブドウ球菌、C−寒天平板上のオレンジ−マゼンダ色によって特徴付けられる)。未濃縮の(濾過されていない)対照試料は、140CFU/mLの緑膿菌及び170CFU/mLの黄色ブドウ球菌をそれぞれ有した。結果を表6に示す。
【0188】
【表6】
【0189】
実施例15〜16−水濾過
大腸菌(ATCC 51813)の画線培養物を血液寒天平板(5%羊血液を有するトリプチックソイ寒天;Hardy Diagnostics(Santa Maria,CA))上で調製し、37℃で一晩インキュベートした。この培養物を使用して、3mLのButterfield緩衝液中でDensiCHEK(商標)密度計(bioMerieux,Inc.(Durham,NC))を使用して0.5マクファーランド標準を調製した。約10
6CFU/mLを有する接種材料を得るために、10
8CFU/mLを含有する得られた細菌ストックをバターフィールド緩衝液(Butterfield’s)で連続的に希釈した。
【0190】
100mLの脱イオン水(MilliQ Gradient system(Millipore,Ma))に1:100希釈の10
6細菌/接種材料1mLを接種することによって試験試料を調製し、10
4CFU/mLを含有する水試験試料を得た(水中で合計10
6CFU)。
【0191】
接種した水試料を、表7に示される繊維性不織布マトリックスの直径47mm打ち抜きディスクを保持している濾過装置を通してポンプで送った。装置は、フィルタディスクを本体に保持するための支持体スクリーンを有する、直径約60mm及び高さ約115mmのポリカーボネート製の円筒形本体を有していた。本体の上端部は、壁厚1/8”(0.32cm)のPVCチューブ(カタログ番号60985−522;VWR;Batavia,IL)によって蠕動ポンプ(モデル番号7553−70;Cole Parmer)に取り付けられた入口ポートを有するねじ付きキャップで閉じられた。水試料を濾過装置に供給するためにポンプを使用した。円筒の下端部は、出口ポートを有するねじ付き部分で閉じられた。漏れを防止するために螺合部品の間にOリングを配置した。空気をパージすることができるように、装置を上流側で通気した。
【0192】
実施例15の結果は単一試験に基づいており、実施例16の結果は2回繰り返した平均である。各試験に関し、接種した水の100mL試料を、濾過装置内に70mL/分の流量でポンプで送った。殺菌した100mLのポリプロピレン製ビーカー内に濾液を収集した。各過試験の後、装置を分解し、無菌のピンセットを使用してディスクを取り出した。各試験の間に、フィルターを通した500mLの滅菌脱イオン水で濾過装置をすすいだ。
【0193】
体積100マイクロリットルの各濾液及び前濾過懸濁液を、Butterield緩衝液中に1:10及び1:100希釈し、ACプレート上に塗った。プレートを37℃で18〜20時間インキュベートした。メーカーの説明書に従ってプレートからのコロニー数を測定した。対数減少値(LRV)は、水フィルターの細菌除去能力の指標である。この値は、塗られた濾過試料及び前濾過試料から得た計数に基づき、次の式を用いて算出された。
LRV=(前濾過試料中のCFU/mLの対数)−(濾過試料中のCFU/mLの対数)
前濾過懸濁液は、平均で8500CFU/mL(3.9Log CFU/mL)を含有していた。
結果を表7に示す。
【0194】
【表7】
【0195】
本明細書で引用した特許、特許文献、及び公報に含まれる参照された記述内容は、その全体が、それぞれが個々に組み込まれているかのように、参照により組み込まれる。本発明に対する様々な予見できない修正及び変更が、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく当業者に明らかとなるであろう。本発明は、本明細書に記載した例示的な実施形態及び実施例によって過度に限定されるものではなく、またかかる実施例及び実施形態は、一例として表されているだけであり、本発明の範囲は、以下のように本明細書に記載した請求項によってのみ限定されることを意図するものと理解されるべきである。