(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第2の芳香族ポリエステル中の構造Iで表されるフルオロビニルエーテル官能化繰り返し単位が、ジメチル5−(1,1,2−トリフルオロ−2−(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−(ペルフルオロプロポキシ)プロポキシ)エトキシ)イソフタレートである、請求項1に記載の布帛。
ジメチル5−(1,1,2−トリフルオロ−2−(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−(ペルフルオロプロポキシ)プロポキシ)エトキシ)イソフタレートが、第2の芳香族ポリエステル中に、前記ポリエステル中に含まれる全繰り返し単位に基づき、40〜60mol%の範囲のモル濃度で存在する、請求項3に記載の布帛。
第2の芳香族ポリエステル中の構造Iで表されるフルオロビニルエーテル官能化繰り返し単位が、ジメチル5−(1,1,2−トリフルオロ−2−(ペルフルオロプロポキシ)エトキシ)イソフタレートである、請求項1に記載の布帛。
第1の芳香族ポリエステルが、ポリ(トリメチレンテレフタレート)であり、第2の芳香族ポリエステルが1〜3質量%の範囲の濃度で存在し、かつ第2の芳香族ポリエステル中の構造Iで表されるフルオロビニルエーテル官能化繰り返し単位が、第2の芳香族ポリエステル中に含まれる全繰り返し単位に基づき、40〜60mol%のモル濃度で存在するジメチル5−(1,1,2−トリフルオロ−2−(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−(ペルフルオロプロポキシ)プロポキシ)エトキシ)イソフタレートである、請求項1に記載の布帛。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書で開示するブレンド組成物は、ポリ(トリメチレンテレフタレート)(PTT)、ポリ(エチレンナフタレート)(PEN)、ポリ(エチレンイソフタレート)、ポリ(トリメチレンイソフタレート)、ポリ(ブチレンイソフタレート)、これらの混合物、およびこれらのコポリマーからなる群から選択される第1の芳香族ポリエステルと、それと接触する第2の芳香族ポリエステルとを含み、第2の芳香族ポリエステルは、組成物中にある一定の濃度で存在し;第2の芳香族ポリエステルは、ある一定のモル濃度の、上記に示す構造Iで表されるフルオロビニルエーテル官能化繰り返し単位を含む。ブレンド組成物はポリエステル成形物品、特に繊維および糸の製造に有用であり、それらは、第1の芳香族ポリエステルだけから製造された成形物品と比較して著しく改善された防汚性と耐水性を示す。ブレンド組成物は、任意の形状の成型物品の形成にも使用することができる。
【0013】
ブレンドから形成される成形物品、特に繊維および糸における汚れ付着防止性(soil repellency)、撥油性、および撥水性といった望ましい効果は、表面フッ素濃度に依存する。フッ素の表面濃度1〜5原子%で望ましいレベルの撥水撥油性(repellency)が得られることが分かった。本ブレンド組成物から製造される繊維またはフィルムのいわゆる「フッ素効率」は、同じ表面フッ素濃度を有する非ブレンドフルオロポリマーから製造される繊維またはフィルムのものと比較して、何桁も高い。フッ素効率は、成形物品に関して本明細書で使用する場合、成形物品中の表面フッ素濃度対全フッ素濃度の比と定義される。
【0014】
さらに、方法によりフッ素効率が低下することもあれば、フッ素効率が向上することもあることが分かった。例えば、混紡糸から製造された布帛を加圧染色すると、布帛のフッ素効率が低下する傾向がある。加圧染色後にT
gより高温で熱処理すると、フッ素効率が回復することが観察された。また、局所堆積物、例えば、プロセスオイルおよび仕上剤、例えば、繊維紡糸およびテキスタイル製品の製造に一般的に使用されるものは、フッ素化表面をマスキングする傾向があるため、汚れ付着防止性が低下することも分かった。テキスタイルの染色および仕上げで慣例的に行われるような、通常の精練は、ブレンド組成物から製造される糸および布帛の高度の汚れ付着防止性を回復するのに有効である。
【0015】
本明細書に数値範囲を記載する場合、特記しない限り、その範囲の端点を包含するものとする。本明細書で使用する数値は、ASTM E29−08セクション6に概説するような化学における有効数字に関する標準プロトコルに従って記載される有効桁数の精度を有する。例えば、数字40は35.0〜44.9の範囲を包含し、数字40.0は39.50〜40.49の範囲を包含する。
【0016】
本明細書で使用するパラメータn、pおよびqは、
好ましくは、それぞれ独立して1〜10の範囲の整数である。
【0017】
本明細書で使用する場合、「フルオロビニルエーテル官能化芳香族ジエステル」という用語は、R
2がC
1〜C
10アルキルである、下記の構造(III)の化合物のサブクラスを指す。「フルオロビニルエーテル官能化芳香族二酸」という用語は、R
2がHである、下記の構造(III)の化合物のサブクラスを指す。「パーフルオロビニル化合物」という用語は、下記の構造(VII)で表されるオレフィン性不飽和化合物を指す。「フルオロビニルエーテル官能化芳香族ポリエステル」という用語は、構造Iに示される繰り返し単位を含むポリエステルを指す。
【0018】
本明細書で使用する場合、「コポリマー」という用語は、ジポリマー、ターポリマー、およびテトラポリマー等を含む、2種以上の化学的に異なる繰り返し単位を含むポリマーを指す。「ホモポリマー」という用語は、互いに化学的に区別不可能な複数の繰り返し単位からなるポリマーを指す。
【0019】
本明細書の任意の化学構造では、末端の結合が「−」と示され、末端の化学基が示されていない場合、この末端の結合「−」は基を示す。例えば、−CH
3はメチル基を表す。
【0020】
一実施形態では、第1の芳香族ポリエステルは、ポリ(トリメチレンテレフタレート)(PTT)、ポリ(エチレンナフタレート)(PEN)、ポリ(エチレンイソフタレート)、ポリ(トリメチレンイソフタレート)、ポリ(ブチレンイソフタレート)、これらの混合物、およびこれらのコポリマーからなる群から選択される半結晶性ポリマーである。半結晶性ポリマーは融点を有する。本開示では、方法中の軟化点は、半結晶性の第1の芳香族ポリエステルの融点を指す。
【0021】
代替の実施形態では、第1の芳香族ポリエステルは、ポリ(トリメチレンテレフタレート)(PTT)、ポリ(エチレンナフタレート)(PEN)、ポリ(エチレンイソフタレート)、ポリ(トリメチレンイソフタレート)またはポリ(ブチレンイソフタレート)の繰り返し単位を含むコポリマーなどの非晶質ポリマーである。このような実施形態では、融点はなく、方法中の軟化点は、Vicat軟化点としても知られる、ASTM D1525−09に従って測定することができる。好適な非晶質ポリエステルには、シクロヘキサンジメタノールなどの種とのコポリマー、またはテレフタル酸部分およびイソフタル酸部分のコポリマーが含まれる。
【0022】
一態様では、本発明は、ポリ(トリメチレンテレフタレート)(PTT)、ポリ(エチレンナフタレート)(PEN)、ポリ(エチレンイソフタレート)、ポリ(トリメチレンイソフタレート)、ポリ(ブチレンイソフタレート)、これらの混合物、およびこれらのコポリマーからなる群から選択される第1の芳香族ポリエステルと、それと接触する第2の芳香族ポリエステルとを含む組成物を提供し、第2の芳香族ポリエステルは組成物中にある一定の濃度で存在し;第2の芳香族ポリエステルは、ある一定のモル濃度の、構造I、
【化19】
{式中、
Arは、ベンゼン基またはナフタレン基を表し;
各Rは、独立して、H、C
1〜C
10アルキル、C
5〜C
15アリール、C
6〜C
20アリールアルキル;OH、または構造(II)
【化20】
で表される基であるが、但し、1個のRだけがOHまたは構造IIで表される基であってもよく;
R
1は、分岐であってもまたは非分岐であってもよいC
2〜C
4アルキレン基であり;
Xは、OまたはCF
2であり;
Zは、HまたはClであり;
a=0または1であり;
Qは、構造(Ia)、
【化21】
[式中、q=0〜10であり;
Yは、OまたはCF
2であり;
Rf
1は(CF
2)
n(式中、nは0〜10である)であり;
Rf
2は(CF
2)
p(式中、pは0〜10である)であるが、但し、pが0のとき、YはCF
2である]
を表す}
で表されるフルオロビニルエーテル官能化繰り返し単位を含む。
【0023】
一実施形態では、第1の芳香族ポリエステルは、ポリ(トリメチレンテレフタレート)である。
【0024】
一実施形態では、構造Iで表されるフルオロビニルエーテル官能化繰り返し単位のモル濃度は、40〜100mol%の範囲である。
【0025】
一実施形態では、構造Iで表されるフルオロビニルエーテル官能化繰り返し単位のモル濃度は、40〜60mol%の範囲である。
【0026】
一実施形態では、第2の芳香族ポリエステルは、組成物中に0.1〜10重量%の範囲の濃度で存在する。
【0027】
別の実施形態では、第2の芳香族ポリエステルは、組成物中に0.5〜5重量%の範囲の濃度で存在する。
【0028】
別の実施形態では、第2の芳香族ポリエステルは、組成物中に1〜3重量%の範囲の濃度で存在する。
【0029】
一実施形態では、構造Iで表されるフルオロビニルエーテル官能化繰り返し単位のモル濃度は40〜60mol%の範囲であり、第2の芳香族ポリエステルは組成物中に1〜2重量%の範囲の濃度で存在する。
【0030】
一実施形態では、構造Iで表されるフルオロエーテル官能化繰り返し単位中において、各RはHである。
【0031】
一実施形態では、構造Iで表されるフルオロエーテル官能化繰り返し単位中において、1個のRは構造(II)で表される基であり、残りの2個のRはそれぞれHである。
【0032】
一実施形態では、構造Iで表されるフルオロエーテル官能化繰り返し単位中において、R
1は、分岐であってもまたは非分岐であってもよいトリメチレン基である。
【0033】
一実施形態では、構造Iで表されるフルオロエーテル官能化繰り返し単位中において、R
1は非分岐トリメチレン基である。
【0034】
一実施形態では、構造Iで表されるフルオロエーテル官能化繰り返し単位中において、XはOである。
【0035】
一実施形態では、構造Iで表されるフルオロエーテル官能化繰り返し単位中において、XはCF
2である。
【0036】
一実施形態では、構造Iで表されるフルオロエーテル官能化繰り返し単位中において、YはOである。
【0037】
一実施形態では、構造Iで表されるフルオロエーテル官能化繰り返し単位中において、YはCF
2である。
【0038】
一実施形態では、構造Iで表されるフルオロエーテル官能化繰り返し単位中において、ZはHである。
【0039】
一実施形態では、構造Iで表されるフルオロエーテル官能化繰り返し単位中において、Rf
1はCF
2である。
【0040】
一実施形態では、構造Iで表されるフルオロエーテル官能化繰り返し単位中において、Rf
2はCF
2である。
【0041】
一実施形態では、構造Iで表されるフルオロエーテル官能化繰り返し単位中において、p=0であり、YはCF
2である。
【0042】
一実施形態では、構造Iで表されるフルオロエーテル官能化繰り返し単位中において、a=0である。
【0043】
一実施形態では、構造Iで表されるフルオロエーテル官能化繰り返し単位中において、a=1、q=0、およびn=0である。
【0044】
一実施形態では、構造Iで表されるフルオロエーテル官能化繰り返し単位中において、a=1であり、各RはHであり、ZはHであり、R
1はメトキシであり、XはOであり、YはOであり、Rf
1はCF
2であり、Rf
2はパーフルオロプロペニルであり、q=1である。
【0045】
一実施形態では、構造Iで表されるフルオロエーテル官能化繰り返し単位中において、繰り返し単位は、構造(IVa)、
【化22】
(式中、R、R
1、Z、X、Qおよびaは、前述の通りである)
で表される。
【0046】
一実施形態では、構造Iで表されるフルオロエーテル官能化繰り返し単位中において、繰り返し単位は、構造(IVb)、
【化23】
で表される。
【0047】
一実施形態では、第2の芳香族ポリエステルは、構造(V)、
【化24】
(式中、各Rは独立して、Hまたはアルキルであり、R
3は分岐であってもまたは非分岐であってもよいC
2〜C
4アルキレンであるが、但し、構造Vがテレフタル酸とオレフィンとの縮合生成物であるとき、アルキレン基はC
3である)
で表されるアリレート繰り返し単位をさらに含む。
【0048】
第2の芳香族ポリエステルの分子量の理論的制限はないが、例えば、溶融紡糸された糸の表面に移動するのに十分な、溶融物中での分子移動性を有する第2の芳香族ポリエステルを使用することが実際上有利である。7,000〜13,000Daの範囲の数平均分子量が有利であることが分かった。
【0049】
別の態様では、ポリ(トリメチレンテレフタレート)(PTT)、ポリ(エチレンナフタレート)(PEN)、ポリ(エチレンイソフタレート)、ポリ(トリメチレンイソフタレート)、ポリ(ブチレンイソフタレート)、これらの混合物、およびこれらのコポリマーからなる群から選択される第1の芳香族ポリエステルと第2の芳香族ポリエステルとを混合して混合物を形成する工程であって、第2の芳香族ポリエステルが混合物中にある一定の濃度で存在する工程;その混合物を第1の芳香族ポリエステルの軟化点と混合物の少なくとも1つの成分の分解温度との間の温度に加熱して粘性の液体混合物を形成する工程、および粘性の液体混合物が所望の均質度を達成するまでそれを混合する工程;を含む方法を提供し、第2の芳香族ポリエステルは、ある一定のモル濃度の、構造I、
【化25】
{式中、
Arは、ベンゼン基またはナフタレン基を表し;
各Rは、独立して、H、C
1〜C
10アルキル、C
5〜C
15アリール、C
6〜C
20アリールアルキル;OH、または構造(II)
【化26】
で表される基であるが、但し、1個のRだけがOHまたは構造(II)で表される基であってもよく;
R
1は、分岐であってもまたは非分岐であってもよいC
2〜C
4アルキレン基であり;
Xは、OまたはCF
2であり;
Zは、HまたはClであり;
a=0または1であり;
Qは、構造(Ia)、
【化27】
[式中、q=0〜10であり;
Yは、OまたはCF
2であり;
Rf
1は(CF
2)
n(式中、nは0〜10である)であり;
Rf
2は(CF
2)
p(式中、pは0〜10である)であるが、但し、pが0のとき、YはCF
2である]
を表す}
で表されるフルオロビニルエーテル官能化繰り返し単位を含む。
【0050】
本方法の一実施形態では、第1の芳香族ポリエステルはポリ(トリメチレンテレフタレート)である。
【0051】
本方法の一実施形態では、第2の芳香族ポリエステルは、40〜100%のモル濃度の、構造Iで表されるフルオロビニルエーテル官能化繰り返し単位を含むコポリマーである。
【0052】
本方法の一実施形態では、第2の芳香族ポリエステルは、全組成物の0.1〜10重量%で第1の芳香族ポリエステルと混合される。
【0053】
別の実施形態では、第2の芳香族ポリエステルは、全組成物の0.5〜5重量%で第1の芳香族ポリエステルと混合される。
【0054】
本方法の一実施形態では、第2の芳香族ポリエステルは、40〜50%のモル濃度の、構造Iで表されるフルオロビニルエーテル官能化繰り返し単位を含み、全組成物の1〜2重量%で、ポリ(トリメチレンテレフタレート)(PTT)、ポリ(エチレンナフタレート)(PEN)、ポリ(エチレンイソフタレート)、ポリ(トリメチレンイソフタレート)、ポリ(ブチレンイソフタレート)、これらの混合物、およびこれらのコポリマーからなる群から選択される第1の芳香族ポリエステルと混合される。
【0055】
本方法の一実施形態では、構造Iで表されるフルオロエーテル官能化繰り返し単位中において、各RはHである。
【0056】
本方法の一実施形態では、構造Iで表されるフルオロエーテル官能化繰り返し単位中において、1個のRは構造(II)で表される基であり、残りの2個のRはそれぞれHである。
【0057】
本方法の一実施形態では、構造Iで表されるフルオロエーテル官能化繰り返し単位中において、R
1は、エチレン基、分岐であってももしくは非分岐であってもよいトリメチレン基;または分岐であってももしくは非分岐であってもよいテトラメチレン基である。
【0058】
本方法の一実施形態では、構造Iで表されるフルオロエーテル官能化繰り返し単位中において、R
1は非分岐トリメチレン基である。
【0059】
本方法の一実施形態では、構造Iで表されるフルオロエーテル官能化繰り返し単位中において、XはOである。
【0060】
本方法の一実施形態では、構造Iで表されるフルオロエーテル官能化繰り返し単位中において、XはCF
2である。
【0061】
本方法の一実施形態では、構造Iで表されるフルオロエーテル官能化繰り返し単位中において、YはOである。
【0062】
本方法の一実施形態では、構造Iで表されるフルオロエーテル官能化繰り返し単位中において、YはCF
2である。
【0063】
本方法の一実施形態では、構造Iで表されるフルオロエーテル官能化繰り返し単位中において、ZはHである。
【0064】
本方法の一実施形態では、構造Iで表されるフルオロエーテル官能化繰り返し単位中において、Rf
1はCF
2である。
【0065】
本方法の一実施形態では、構造Iで表されるフルオロエーテル官能化繰り返し単位中において、Rf
2はCF
2である。
【0066】
本方法の一実施形態では、構造Iで表されるフルオロエーテル官能化繰り返し単位中において、p=0であり、YはCF
2である。
【0067】
本方法の一実施形態では、構造Iで表されるフルオロエーテル官能化繰り返し単位中において、a=0である。
【0068】
本方法の一実施形態では、構造Iで表されるフルオロエーテル官能化繰り返し単位中において、a=1、q=0、およびn=0である。
【0069】
本方法の一実施形態では、構造Iで表されるフルオロエーテル官能化繰り返し単位中において、a=1であり、各RはHであり、ZはHであり、R
1はメトキシであり、XはOであり、YはOであり、Rf
1はCF
2であり、Rf
2はパーフルオロプロペニルであり、q=1である。
【0070】
本方法の一実施形態では、構造Iで表されるフルオロエーテル官能化繰り返し単位中において、繰り返し単位は、構造(IVa)、
【化28】
(式中、R、R
1、Z、X、Qおよびaは前述の通りである)
で表される。
【0071】
本方法の一実施形態では、構造Iで表されるフルオロエーテル官能化繰り返し単位中において、繰り返し単位は、構造(IVb)、
【化29】
で表される。
【0072】
本方法の一実施形態では、第2の芳香族ポリエステルは、構造(V)、
【化30】
(式中、各Rは独立して、Hまたはアルキルであり、R
3は、分岐であってもまたは非分岐であってもよいC
2〜C
4アルキレンであるが、但し、構造Vがテレフタル酸とオレフィンとの縮合生成物であるとき、アルキレン基はC
3である)
で表される繰り返し単位をさらに含む。
【0073】
本方法によれば、所望の均質度が達成されるまで、混合し続ける。混合物の終点は、任意の特定の用途の要件に依存する。混合は、バッチ式と連続式の両方で行うことができる。バッチ式混合では、均質性のインジケータの1つは、混合用具に加わるトルクが一定になる時点である。好適なバッチミキサーとしては、密閉式バンバリーミキサーが挙げられるが、これに限定されるものではない。連続式混合法では、生成物流の嵩密度の変化の測定、ストランド押出中のダイ圧力の短期または長期変動、押出されたストランドの目視観察、または顕微鏡下での製造サンプルの評価を含む任意の好適な方法で均質性を評価することができるが、これらに限定されるものではない。好適な連続ミキサーとしては、二軸スクリュー押出機、およびFarrel型連続ミキサー等が挙げられ、これらは全て当該技術分野で周知であるが、これに限定されるものではない。
【0074】
構造Iで表されるフルオロビニルエーテル官能化繰り返し単位を含む第2の芳香族ポリエステルは、フルオロビニルエーテル官能化芳香族ジエステルまたは二酸を過剰の分岐または非分岐C
2〜C
4アルキレングリコールまたはこれらの混合物;および触媒と混合して反応混合物を形成する工程を含む方法で製造することができる。反応は、溶融物の状態で、好ましくは180〜240℃の温度範囲で行い、最初にメタノールまたは水を濃縮することができ、その後、混合物を好ましくは210〜300℃の範囲の温度にさらに加熱し、真空排気して過剰のC
2〜C
4グリコールを除去することにより、構造(I)を有す
る繰り返し単位を含むポリマーを形成することき、フルオロビニルエーテル官能化芳香族ジエステルまたは二酸は、構造(III)、
【化31】
{式中、
Arは、ベンゼンまたはナフタレン基を表し;
各Rは、独立して、H、C
1〜C
10アルキル、C
5〜C
15アリール、C
6〜C
20アリールアルキル;OH、または構造(II)、
【化32】
で表される基であるが、但し、1個のRだけがOHまたは構造(II)で表される基であってもよく;
R
2は、HまたはC
1〜C
10アルキルであり;
Xは、OまたはCF
2であり;
Zは、H、Cl、またはBrであり;
a=0または1であり;
Qは、構造(Ia)、
【化33】
[式中、q=0〜10であり;
Yは、OまたはCF
2であり;
Rf
1は(CF
2)
n(式中、nは0〜10である)であり;
Rf
2は(CF
2)p(式中、pは0〜10である)であるが、但し、pが0のとき、YはCF
2である]
を表す}
で表される。幾つかの実施形態では、反応混合物の還流温度付近で反応を行う。
【0075】
本方法の一実施形態では、1個のRはOHである。
【0076】
本方法の一実施形態では、各RはHである。
【0077】
本方法の一実施形態では、1個のRはOHであり、残りの2個のRはそれぞれHである。
【0078】
本方法の一実施形態では、1個のRは構造(II)で表され、残りの2個のRはそれぞれHである。
【0079】
本方法の一実施形態では、R
2はHである。
【0080】
本方法の一実施形態では、R
2はメチルである。
【0081】
本方法の一実施形態では、XはOである。代替の実施形態では、XはCF
2である。
【0082】
本方法の一実施形態では、YはOである。代替の実施形態では、YはCF
2である。
【0083】
本方法の一実施形態では、ZはClまたはBrである。別の実施形態では、ZはClである。代替の実施形態では、1個のRは構造(II)で表され、1個のZはHである。別の実施形態では、1個のRは構造(II)で表され、1個のZはHであり、1個のZはClである。
【0084】
本方法の一実施形態では、Rf
1はCF
2である。
【0085】
本方法の一実施形態では、Rf
2はCF
2である。
【0086】
本方法の一実施形態では、Rf
2は結合であり(即ち、p=0であり)、YはCF
2である。
【0088】
一実施形態では、a=1、q=0、およびn=0である。
【0089】
本方法の一実施形態では、各RはHであり、ZはClであり、R
2はメチルであり、XはOであり、YはOであり、Rf
1はCF
2であり、Rf
2はパーフルオロプロペニルであり、q=1である。
【0090】
好適なアルキレングリコールとしては、1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、およびこれらの混合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。一実施形態では、アルキレングリコールは、1,3−プロパンジオールである。
【0091】
好適な触媒としては、チタン(IV)ブトキシド、チタン(IV)イソプロポキシド、三酸化アンチモン、アンチモントリグリコレート、酢酸ナトリウム、酢酸マグネシウム、およびジブチルス錫オキサイドが挙げられるが、これに限定されるものではない。触媒の選択は、選択されるグリコールに関連する反応性の程度に基づく。例えば、1,3−プロパンジオールは、1,2−エタンジオールよりかなり反応性が低いことが知られている。チタンブトキシドとジブチルス錫オキサイドは共に「熱」触媒と見なされるが、これらは、1,3−プロパンジオールを使用する場合、本方法に好適であることが分かったが、1,2−エタンジオールを使用する場合、本方法には活性が高すぎると考えられる。
【0092】
反応は溶融物の状態で行うことができる。このようにして得られるポリマーを減圧蒸留により分離し、過剰のC
2〜C
4グリコールを除去することができる。
【0093】
一実施形態では、反応混合物は、構造(I)に包含される繰り返し単位の2つ以上の実施形態を含む。
【0094】
別の実施形態では、反応混合物は、構造(VI)、
【化34】
(式中、Arは芳香族基であり、R
4はHまたはC
1〜C
10アルキルであり、各Rは独立して、HまたはC
1〜C
10アルキルである)
で表される芳香族ジエステルまたは芳香族二酸をさらに含む。別の実施形態では、R
4はHであり、各RはHである。代替の実施形態では、R
4はメチルであり、各RはHである。一実施形態では、Arはベンジルである。代替の実施形態では、Arはナフチルである。
【0095】
構造(VI)の好適な芳香族ジエステルとしては、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、ジメチルジカルボン酸2,6−ナフタレン、4,4’−スルホニルビス安息香酸メチル、4−スルホフタル酸メチルエステル、およびビフェニル−4,4’−ジカルボン酸メチルが挙げられるが、これに限定されるものではない。一実施形態では、芳香族ジエステルは、テレフタル酸ジメチルである。代替の実施形態では、芳香族ジエステルは、イソフタル酸ジメチルである。構造(VI)の好適な芳香族二酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−スルホニルビス安息香酸、4−スルホフタル酸およびビフェニル−4,4’−ジカルボン酸が挙げられるが、これに限定されるものではない。一実施形態では、芳香族二酸はテレフタル酸である。代替の実施形態では、芳香族二酸はイソフタル酸である。
【0096】
好適なフルオロビニルエーテル官能化芳香族ジエステルは、ヒドロキシ芳香族ジエステルを含む反応混合物を、溶媒および触媒の存在下で、構造(VII)
【化35】
{式中、Xは、OまたはCF2であり、a=0または1であり;Qは、構造(Ia)、
【化36】
[式中、q=0〜10であり;
Yは、OまたはCF
2であり;
Rf
1は(CF
2)
n(式中、nは0〜10である)であり;
Rf
2は(CF
2)
p(式中、pは0〜10である)であるが、但し、pが0のとき、YはCF
2である]
を表す}
で表されるパーフルオロビニル化合物と、約−70℃と反応混合物の還流温度との間の温度で形成することにより製造することができる。
【0097】
好適なパーフルオロビニルエーテルは、パーフルオロメチルビニルエーテルからPPPVEおよびより大きいパーフルオロビニルエーテルの範囲に及んでもよい。PPVEおよびPPPVEが特に好適であることが分かった。
【0098】
好ましくは、室温より高いが反応混合物の還流温度より低い温度での撹拌を使用して反応を行う。反応後に反応混合物を冷却する。
【0099】
ハロゲン化溶媒を使用する場合、構造(III)で表される、得られるフルオロビニルエーテル芳香族ジエステル中の「Z」として示される基は、対応するハロゲンである。好適なハロゲン化溶媒としては、テトラクロロメタン、テトラブロモメタン、ヘキサクロロエタンおよびヘキサブロモエタンが挙げられるが、これに限定されるものではない。溶媒が非ハロゲン化溶媒である場合、ZはHである。好適な非ハロゲン化溶媒としてはテトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、およびジメチルホルムアミド(DMF)が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0100】
反応は、塩基によって触媒される。様々な塩基性触媒、即ち、フェノールを脱プロトン化することができる任意の触媒を使用することができる。即ち、好適な触媒は、フェノールのpKa(参考として、25℃の水を使用した場合、9.95)より大きいpKaを有する任意の触媒である。好適な触媒としては、ナトリウムメトキシド、水素化カルシウム、金属ナトリウム、カリウムメトキシド、カリウムt−ブトキシド、炭酸カリウムまたは炭酸ナトリウムが挙げられるが、これに限定されるものではない。カリウムt−ブトキシド、炭酸カリウムまたは炭酸ナトリウムが好ましい。
【0101】
酸(例えば、10%HCl、しかしこれに限定されるものではない)を添加することにより、任意の望ましい時点で反応を停止することができる。あるいは、炭酸塩触媒などの固体触媒を使用する場合、反応混合物を濾過して触媒を除去することにより、反応を停止させることができる。
【0102】
好適なヒドロキシ芳香族ジエステルとしては、1,4−ジメチル−2−ヒドロキシテレフタレート、1,4−ジエチル−2−5−ジヒドロキシテレフタレート、4−ヒドロキシイソフタル酸1,3−ジメチル、1,3−ジメチル−5−ヒドロキシイソフタレート、2−ヒドロキシイソフタル酸1,3−ジメチル、2,5−ジヒドロキシイソフタル酸1,3−ジメチル、2,4−ジヒドロキシイソフタル酸1,3−ジメチル、3−ヒドロキシフタル酸ジメチル、4−ヒドロキシフタル酸ジメチル、3,4−ジヒドロキシフタル酸ジメチル、4,5−ジヒドロキシフタル酸ジメチル、3,6−ジヒドロキシフタル酸ジメチル、4,8−ジヒドロキシナフタレン−1,5−ジカルボン酸ジメチル、3,7−ジヒドロキシナフタレン−1,5−ジカルボン酸ジメチル、2,6−ジヒドロキシナフタレン−1,5−ジカルボン酸ジメチル、またはこれらの混合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0103】
好適なパーフルオロビニル化合物としては、1,1,1,2,2,3,3−ヘプタフルオロ−3−(1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロ−3−(1,2,2−トリフルオロビニルオキシ)プロパン−2−イルオキシ)プロパン、ヘプタフルオロプロピルトリフルオロビニルエーテル、パーフルオロペンタ−1−エン、パーフルオロヘキサ−1−エン、パーフルオロヘプタ−1−エン、パーフルオロオクタ−1−エン、パーフルオロノナ−1−エン、パーフルオロデカ−1−エン、およびこれらの混合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0104】
好適なフルオロビニルエーテル官能化芳香族ジエステルを製造するために、反応が所望の変換度を達成するまで、好適なヒドロキシ芳香族ジエステルと好適なパーフルオロビニル化合物を好適な溶媒と好適な触媒の存在下で化合させる。予め選択された時間尺度でそれ以上生成物が生成しなくなるまで、反応を続けることができる。所望の変換度を達成する反応時間は、反応温度、特定の反応混合物成分の化学的反応性、および反応混合物に適用される混合の程度に依存する。例えば、核磁気共鳴分光法、薄層クロマトグラフィー、およびガスクロマトグラフィーなどの確立された様々な分析方法のいずれか1つを使用して、反応の進行を監視することができる。
【0105】
所望の変換レベルに達したとき、前述のように反応混合物を急冷する。急冷された反応混合物を減圧濃縮し、溶媒で洗浄することができる。場合によっては、単一の反応混合物中で、構造(III)に包含される複数の化合物が生成することがある。このような場合、例えば、蒸留またはカラムクロマトグラフィーなどの当業者に公知の任意の方法で、このようにして生成した生成物の分離を行うことができる。
【0106】
ジエステルの代わりに対応する二酸をモノマーとして使用することが望ましい場合、このようにして生成したフルオロビニルエーテル官能化芳香族ジエステルを水性塩基、好ましくはKOHまたはNaOHなどの強塩基と接触させ穏やかに還流した後、室温に冷却し、その後、混合物を好ましくはHClまたはH
2SO
4などの強酸で、pHが0〜2になるまで酸性化することができる。好ましくは、pHは1である。酸性化するとフルオロビニルエーテル官能化芳香族二酸が沈殿する。次いで、沈殿した二酸を、濾過し、好適な溶媒から再結晶する(例えば、酢酸エチルなどの溶媒に再溶解した後、再結晶させる)ことにより、単離することができる。薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーおよびNMRなどの任意の好都合な方法で、反応の進行を追跡することができる。
【0107】
本ブレンド組成物は、テキスタイル糸およびカーペット糸に混紡するのに好適な繊維を溶融紡糸するのに有利に使用される。この組成物から様々な繊維を紡糸することができる。一実施形態では、直接紡糸延伸されたものと部分配向されたものの両方の繊維および糸を含む、低単繊維デニール(dpf)の、とりわけ5dpf未満、より詳細には1〜3dpfの範囲の繊維および糸が本ブレンド組成物から容易に溶融紡糸される。低dpf糸は、編物や織物の製造に使用するのに好適である。別の実施形態では、高dpf、とりわけ10dpfより高い、より詳細には15〜25dpfの範囲の繊維および糸を、本ブレンド組成物から溶融紡糸することができる。高dpf糸は、カーペットや関連製品の製造に好適である。高dpfの繊維および糸は、カーペットの製造に有用な嵩高連続フィラメント糸(BCF)として製造することができる。
【0108】
幾つかの実施形態を後述する典型的な溶融紡糸法では、乾燥ポリマーブレンドペレットを押出機に供給し、押出機でペレットを溶融し、得られる溶融物を計量ポンプに供給し、計量ポンプで、容積制御されたポリマー流をトランスファーラインで加熱紡糸パックに供給する。ポンプは、ポリマー流が紡糸パック内を流通するように、約2〜20MPaの圧力を提供し、紡糸パックは、数マイクロメートルより大きい粒子を除去するために濾過媒体(例えば、砂床およびフィルタースクリーン)を内部に備えている。紡糸口金を通る質量流量は計量ポンプで制御される。ポリマーは、紡糸パックの底部の、厚い金属板(紡糸口金)の複数の小さい孔を通して、空気急冷ゾーンに吐出される。孔の数およびその直径は非常に様々となり得るが、典型的には単一の紡糸口金孔の直径は、0.2〜0.4mmの範囲である。紡糸は、有利には、235〜295℃、好ましくは250〜290℃の紡糸口金温度で達成される。そのサイズの孔を通る典型的な流量は、0.5〜5g/分の範囲となる傾向がある。紡糸口金孔には多くの断面形状が使用されるが、円形の断面が最も一般的である。典型的には、紡糸されたフィラメントを巻き取る高度に制御される回転ロールシステムでライン速度を制御する。フィラメントの直径は流量および巻取速度で決定され;紡糸口金孔のサイズで決定されるのではない。
【0109】
フィラメントの特性は、糸条(threadline)の動力学、特に、紡糸口金からの出口とフィラメントの凝固点との間にある急冷ゾーンにおける糸条の動力学によって決定される。まだ運動性のある吐出されたフィラメントに対する急冷ゾーンの具体的設計は、急冷されたフィラメントの特性に影響を及ぼす。クロスフロー型急冷と放射型急冷の両方が一般に使用されている。急冷または凝固後、フィラメントは、典型的には紡糸口金孔からの吐出速度より100〜200倍速い巻取速度で走行する。従って、紡糸口金孔から吐出された後、糸条のかなりの加速(および延伸)が起こる。紡糸フィラメントに固定される配向の量は、凝固点におけるフィラメントの応力レベルと直接関係している。
【0110】
それにより製造される溶融紡糸フィラメントは、所望の最終用途と一致した方法で捕集される。例えば、ステープル繊維に変換される予定のフィラメントでは、複数の連続フィラメントを組み合わせてトウにすることができ、トウは、いわゆるピドリング缶(piddling can)内に集積される。原糸加工などに連続的な形態で使用される予定のフィラメントは、典型的には、張力が制御される巻取装置に取り付けられたヤーンパッケージに巻き取られる。
【0111】
ステープル繊維は、ブレンド組成物をフィラメントに溶融紡糸し、フィラメントを急冷し、急冷されたフィラメントを延伸し、延伸されたフィラメントを捲縮し、フィラメントをステープル繊維、好ましくは長さ0.2〜6インチ(0.5〜15cm)のステープル繊維に切断することにより製造することができる。好ましい本方法の1つは、(a)ブレンド組成物の連続フィラメントを245〜285℃の範囲の紡糸口金温度で溶融紡糸する工程、(b)急冷されたフィラメントを延伸する工程、(c)捲縮機を使用して、1インチ当たり8〜30の捲縮(3〜12の捲縮/cm)の捲縮レベルで、延伸されたフィラメントを捲縮する工程、(d)捲縮されたフィラメントを50〜120℃の温度で弛緩させる工程、および、例えば)弛緩されたフィラメントをステープル繊維、好ましくは長さ0.2〜6インチ(0.5〜15cm)のステープル繊維に切断する工程を含む。本方法の好ましい一実施形態では、延伸されたフィラメントを、捲縮の前に、85〜115℃でアニール処理する。好ましくは、アニール処理は、加熱ローラを使用して張力下で行われる。別の好ましい実施形態では、延伸されたフィラメントは、捲縮の前にアニール処理されない。ステープル繊維は、テキスタイル糸およびテキスタイルまたは不織布の製造に有用であり、ファイバーフィル用途およびカーペットの製造に使用することもできる。
【0112】
図1は、本発明の好適な溶融紡糸装置の1つを示す。34本のフィラメント102(34本のフィラメント全部は図示されていない)は、孔数34孔の紡糸口金101を通して押し出される。フィラメントは急冷ゾーン103を通過し、糸束に形成され、仕上剤塗布装置104を通過する。急冷ゾーンでは、通常、室温で相対湿度60%の空気を40フィート/分の典型的な速度で糸束に当てる。急冷ゾーンは、空気が糸束を横切って流動する、いわゆる直交気流(cross−air)急冷となるように設計されてもよく、または、集束するフィラメントの中央に空気供給源があり、360°にわたり放射状に流出する、いわゆる放射型急冷となるように設計されてもよい。放射型急冷の方が、より均一で効果的な急冷方法である。仕上剤塗布装置104の後、糸は、40〜100℃、一実施形態では70〜100℃に設定されセパレーターロールと対になった、供給ロールとしても知られる第1の被駆動ゴデットロール105に送られる。糸は、第1のゴデットロールとセパレーターロールの周囲に6〜8回巻回される。糸は、第1のゴデットロールから、110〜170℃に設定され第2のセパレーターロールと対になった、延伸ロールとしても知られる第2の被駆動ゴデットロールに送られる。糸は、第2のゴデットロールとセパレーターロールの周囲に6〜8回巻回される。延伸ロール速度は、典型的には1000〜4000m/分であり、延伸ロール速度対供給ロール速度の比は典型的には1.75〜3.5の範囲である。糸は、延伸ロールから、第3のセパレーターロールと対になり、室温で第2のゴデットロールのロール速度より1〜2%速い速度で動作する第3の被駆動ゴデットロール107に送られる。糸は、第3のロール対の周囲に6〜10回巻回される。糸は、第3のロール対から、インターレースノズル108を通過した後、第3のロール対の出力に適合する速度で動作する巻取装置109に送られる。
【0113】
本明細書に開示される組成物から製造されるフィラメントから形成される糸は、他のフィラメントも含有することができる。例えば、糸は、他のポリエステル、例えば、ポリアミドまたはポリアクリレートなどの他のフィラメントを含有することができ、他のこのようなフィラメントが望ましい場合がある。他のフィラメントは、任意選択によりステープル繊維であってもよい。前述し、
図1に示した直接紡糸延伸法で、または当該技術分野で周知の他の紡糸法で形成することができる糸は、テキスタイル様の美しさを連続ポリエステル繊維に付与するために一般的に実施される仮撚加工用の供給糸として使用するのに好適である。幾つかのタイプの原糸加工装置が当該技術分野で周知である。原糸加工法は、a)前述の紡糸法により形成されたヤーンパッケージを提供する工程;(b)パッケージから糸を巻き出す工程、(c)糸端部を摩擦加撚要素または仮撚スピンドルに挿通する工程、d)スピンドルを回転させることにより、回転するスピンドルの上流の糸に撚りを付与し、回転するスピンドルの下流で上流の撚りを解撚すると共に熱を印加する工程;および(e)糸をパッケージに巻き取る工程を含む。
【0114】
繊維および糸は、前述のように布帛およびカーペットの製造に好適である。一実施形態では、フィラメントは複数の糸に束ねられ、布帛は織布である。代替の実施形態では、フィラメントは少なくとも1本の糸に束ねられ、布帛は編布である。さらに別の実施形態では、布帛は不織布であり;別の実施形態では、不織布はスパンボンド不織布である。
【0115】
本明細書で使用する場合、不織布とは、織布でも編布でもない布帛である。織布および編布の構造は、インターレース(織物)またはループ形成(編物)により製造される、規則的な糸の交絡(interlocking)パターンを特徴とする。このような糸は、布帛の一方側から他方側に、そしてその逆に、何度も繰り返す規則的なパターンに従う。織布または編布の完全性は、布帛自体の構造によって作り出される。不織布では、最も一般的には、典型的には複数の紡糸口金から同時に押し出されるフィラメントが、不規則なパターンで集積され、機械的手段ではなく、化学的方法または熱的方法で互いに結合される。市販の製造された不織布の一例には、DuPont Companyから入手可能なSontara(登録商標)スパンボンドポリエステルがある。場合によっては、不織布は、Popperらによる米国特許第6,579,815号明細書に記載の、インターレースまたはループ形成を含まず、繊維が一方側から他方側に交互に組織されていない複雑な三次元位相幾何学的配列に繊維層を集積することにより製造することができる。
【0116】
織布は、互いに直角にインターレースされる複数の糸で製造される。布帛の長さに平行な糸は、「経糸」と称され、その方向に直交する糸は、「横糸」または「緯糸」と称される。糸がインターレースされる特定の方法、糸のデニール、糸自体の触覚的美しさと視覚的美しさの両方、糸密度、および経糸対横糸の比を変えることにより、美しさのバリエーションを達成することができる。一般に、織布の構造は、布帛にある程度の剛性を付与し;織布は、一般に、編布ほど伸長しない。
【0117】
本明細書に開示されるブレンド組成物の糸を使用して製造される織布では、経糸の少なくとも一部は、ブレンド組成物を含むフィラメントを含有する糸を含む。一実施形態では、芳香族ポリエステルは、前述のようなポリ(トリメチレンテレフタレート)とF16−iso−50−co−tereとのブレンドである。一実施形態では、経糸と横糸の両方がブレンド組成物を含むフィラメントを含有する。一実施形態では、経糸は、ブレンド組成物を含むフィラメントを含む糸を本数で少なくとも40%、および綿糸を本数で少なくとも40%含む。一実施形態では、経糸は、ブレンド組成物を含むフィラメントを含む糸を本数で少なくとも80%含み、横糸は綿糸を少なくとも80%含む。一般に、横糸よりも経糸の方に、より大きい物理的要求が求められる。
【0118】
織布は、織機で製造される。
図2aは、織機の一実施形態の概略側面図である。複数の、しばしば何百もの平行な縦糸(ends)202からなる経糸ビーム201が、織機供給装置として配置されている。
図2bに経糸ビーム201の正面図を示す。
図2aにはハーネスを2つ有する織機を示している。各ハーネス、204aおよび204bは、複数の、しばしば何百もの、いわゆる「綜絖」を保持する枠である。ハーネス204の正面拡大図を示す
図2cを参照すると、各綜絖211は、中に穴312がある垂直ワイヤである。ハーネスは、上下動するように配置され、一方が上がると、他方が下がるようになっている。縦糸203aの一部分は、上ハーネス204aの綜絖211の穴212に挿通され、縦糸203bのもう一方の部分は下ハーネス204bの綜絖の穴に挿通され、それにより、縦糸203aと縦糸203bとの間に隙間が広がる。図示するタイプの織機では、シャトルコック206は、図示されていない手段−典型的には木製のパドル−で推進され、ハーネスが上下動する時、左右に動くまたは往復する。シャトルコックは、横糸207のボビンを備え、横糸207は、シャトルコックが経糸の隙間を通って移動する時、巻き出される。「筬」または「おさ」205は、一連の垂直ワイヤを保持する枠であり、そのワイヤの間を縦糸が自由に通過する。
図2dは、垂直ワイヤ213、および経糸が通過するワイヤ間の空間214を示す、筬205の正面図を示す。垂直ワイヤ214の厚みは、布帛横方向での経糸の間隔、従って密度を決定する。筬は、新たに挿入された横糸を図の右に押し進め、形成している布帛208の所定の位置に入れる役割をする。布帛は、布帛ビーム210に巻き取られる。ロール209は、ガイドロールである。
【0119】
経糸ビームの巻きは、典型的には、所望の縦糸数と同数のヤーンパッケージまたはスプールをいわゆるクリールに装着し、各縦糸を一連の精密ガイドおよび張力調整装置を通して経糸ビームに供給した後、全経糸ビームに同時に巻き取る精密動作である。
【0120】
経糸対横糸のインターレース比の特定のパターンで、製造される織布のタイプが決定される。基本的パターンとしては、平織、綾織、および朱子織が挙げられる。他のより変化した製織パターンも多数知られている。
【0121】
編成は、1本以上の糸をループ状に形成して互いに連結することにより布帛を製造する方法である。編物は、織物より伸長性と弾性が高い傾向がある。編物は、織物より耐久性が低い傾向がある。織物の場合にように、多くの編成パターンおよび編成様式がある。一実施形態では、布帛は、ブレンド組成物を含むフィラメントを含む糸を含む編布である。一実施形態では、ポリ(トリメチレンアリレート)はポリ(トリメチレンテレフタレート)である。
【0122】
幾つかの実施形態では、衣類は布帛から製造することができる。一実施形態では、ポリ(トリメチレンアリレート)は、ポリ(トリメチレンテレフタレート)である。布帛からの衣類の製造には、型紙、通常は紙製の型紙、または自動プロセス用のコンピュータ化された形態の型紙を準備する工程、必要な布片を測定する工程、布帛を裁断して必要な布片を準備する工程、および、その後、パターンに従って布片を縫い合わせる工程が含まれる。衣類では異なる様式の布帛を組み合わせることができる。衣類の製造の他に、既知の方法を使用し、織布、編布、および不織布を使用してテント、寝袋、ブランケット、およびターポリン等を製造することができる。
【0123】
撥水撥油効果は、表面フッ素濃度に依存する。決して本発明の範囲を限定するものではないが、次の5つの要因が表面フッ素濃度に影響を及ぼすものと推測される:
・フルオロビニルエーテル官能化ジエステル中のフッ素濃度。同じモル濃度では、後述のF
10−isoと比較して、F
16−isoを組み込んだ方が、より高いヘキサデカン接触角が観察されることが分かった。
・コポリマー「添加剤」中のフルオロビニルエーテル官能化コモノマーの濃度。ブレンド中の添加量が類似の場合、添加剤中に使用されるフッ素濃度が高い方が、より優れた撥水撥油性が達成される。
・ブレンド中の添加剤の濃度。例えば、2重量%の濃度の50mol%添加剤では、1重量%の濃度の50mol%添加剤より高い撥水撥油性が得られる。紡糸性能の観点から、一般に、第2の芳香族ポリエステルの使用量は多いよりも少ない方が望ましい。
・第1の芳香族ポリエステルの分子量と比較した第2の芳香族ポリエステルの分子量。おそらく、添加剤の分子量が低いほど、それが所定の温度で表面に拡散する速度が速くなる。他方、分子量の低い第2の芳香族ポリエステルの方が分子量の高いものよりも紡糸性能に対する有害作用が大きくなる。
・溶融物および繊維の温度/時間/圧力履歴。実験結果から、大気圧では、T
gより高温に加熱すると、表面フッ素が増加するように見受けられることが示唆される。温度が高い方が、拡散が速い。時間が長い方が、分子が拡散する時間が多い。
【0124】
以下の特定の実施形態で本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0125】
材料:
Aldrich Chemical Companyから購入し、受け取り時の状態で使用したものは、
・テレフタル酸ジメチル(DMT)
・チタン(IV)イソプロポキシド
・テトラヒドロフラン(THF)
・5−ヒドロキシイソフタル酸ジメチル
・炭酸カリウム
である。
【0126】
DuPont Companyから入手し、特記しない限り、受け取り時の状態で使用。
・生物由来の1,3−プロパンジオール(Bio−PDO(商標))
・1,1,1,2,2,3,3−ヘプタフルオロプロ−3−(1,2,2−トリフルオロビニルオキシ)プロパン(PPVE)、
・Sorona(登録商標)ポリ(トリメチレンテレフタレート)(PTT)、brightおよびsemi bright 1.02 IV
【0127】
SynQuest Labsから購入し、受け取り時の状態で使用
・1,1,1,2,2,3,3−ヘプタフルオロプロ−3−(1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロ−3−(1,2,2−トリフルオロビニルオキシ)プロパン−2−イルオキシ)プロパン(PPPVE)
【0128】
試験方法
表面分析
単色Al X線源(100μm、100W、17.5kV)を有するUlvac−PHI Quantera SXM分光計を使用して、化学分析用電子分光法(ESCA)を行った。まずサンプル表面(約1350μm×200μm)を走査して、表面に存在する元素を測定した。0.2eVのステップサイズで55eVのパスエネルギーを使用して高分解能詳細スペクトル取得を取得し、検出した元素の化学的状態およびそれらの原子濃度を測定した。典型的には、炭素、酸素、およびフッ素を45°の脱出角度(炭素電子の脱出深さ約70Å)で分析した。データ解析には、PHI MultiPakソフトウェアを使用した。
【0129】
統合DROPimage Advanced v2.3ソフトウェアシステムを備えたRame’−Hart Model 100−25−Aゴニオメータ(Rame’−Hart Instrument Co)で表面接触角を記録した。水またはヘキサデカンにはマイクロシリンジ分注システムを使用した。容量4μLの液体を使用した。
【0130】
次のように相対ベースで糸および布帛サンプルの表面張力を推定した:4時間、21℃および相対湿度65%で試験片を調整した後、それを平坦な水平面に置いた。表1に記載の一連の水/イソプロパノール溶液をそれぞれ3滴、試験片の表面に付着させ、10秒間放置したが、これは溶液番号1から始めた。肉眼でウィッキングが起こらなかったように観察された場合、布帛は、その溶液に関する撥水撥油性試験に「合格」したと評価された。次いで、その次に大きい番号の溶液を付着させた。試験片の評点は、試験片に吸収されない最大の番号の溶液を表した。溶液番号が大きくなるにつれ、溶液の表面張力は低くなる。試験片に吸収されない液体の表面張力が低いほど、試験片の表面張力は低い。
【0131】
同様に、油を使用して撥油性を測定したが、鎖長が短いほど表面張力も低くなり、1〜6の撥油性評点を付けた。
【0132】
【表1】
【0133】
AATCC 123−2000の変法に従って、糸汚れ加速試験の測定を行った。本方法は、試験片を標準照明下でグレースケールと目視で突き合わせることにより行う。グレースケール評点を判定するために、Visual Gray Scale Light Box(Cool White Fluorescent)を45°の角度で使用して試験片を照明した。グレースケール評点は、0〜5の範囲である(5は優れており、0は不良である)。使用した方法では、7cm×10cmのQパネルアルミニウム試験パネル(Q−Lab Corporationから入手可能)に糸試験片約4gを巻回し、約6cm×7cmの面積を被覆した。このようにして準備した試験パネルを、直径74mm、高さ126mmの円筒状キャニスタの内壁に沿った直径方向反対側にあるスロットに挿入し、これによりキャニスタを2つの区画に分割した。このようにして形成された各区画に、直径5/16”のステンレス鋼製ボールベアリング71g、および予め汚した1/8”のナイロンペレット10g(AATCC 123−1995に従って汚した)を挿入した。その後、キャニスタを密閉し、キャニスタをその円筒軸を中心に回転させるように構成されたベンチスケールの実験室用ミニドラムローラーに載せた。キャニスタを140rpmで2.5分間回転させた。その後、これを180℃で、その円筒軸に直角の垂直軸を中心に回転させた(簡単に言えば、キャニスタの上下の向きを変えた)後、さらに2.5分間140RPMで回転させた。その後、試験片を取り出し、その表面を真空掃除機で清浄にし、目視(グレースケール)観察で評価した。
【0134】
固有粘度による分子量
Goodyear R−103B Equivalent IV法を使用し、T−3,Selar(登録商標)X250、Sorona(登録商標)64を校正標準として使用して、Viscotek(登録商標)Forced Flow Viscometer Modey Y−501Cで固有粘度(IV)を測定した。試験片をトリフルオロ酢酸とジクロロメタンの50/50重量%混合物に溶解させた。溶液の温度は19℃であった。
【0135】
熱分析
ガラス転移温度(T
g)および融点(T
m)は、ASTM D3418−08に従って行われる示差走査熱量測定(DSC)で測定した。
【0136】
機械的特性
Statimat ME完全自動引張試験機で繊維のテナシティを測定した。試験は、ASTM D 2256による一定の変形速度で、糸に関する自動静的引張試験に準拠して行った。
【0137】
実施例1、2および比較例A:
A.ジメチル5−(1,1,2−トリフルオロ−2−(パーフルオロプロポキシ)エトキシ)イソフタレート(F
10−iso)の合成:
【化37】
窒素パージしたドライボックス内で、オーブン乾燥し攪拌機と滴下漏斗を備えた丸底反応フラスコに、THF(500mL)および5−ヒドロキシイソフタル酸ジメチル(42g、0.20mol)を添加した。炭酸カリウム触媒(6.955g、0.0504mol)を滴下漏斗で添加し、反応混合物を形成した。その後、PPVE(79.8g、0.30mol)を滴下漏斗で添加し、このようにして形成された反応混合物を、66℃で16時間加熱還流した。その後、シリカゲルの濾床で濾過することにより、得られた混合物から触媒を除去した。このようにして生成した濾液を、ロータリーエバポレータを使用して減圧濃縮した後、減圧蒸留し、留出物として捕集した所望のジメチル5−(1,1,2−トリフルオロ−2−(パーフルオロプロポキシ)エトキシ)イソフタレート(F
10−iso)81.04g(収率85.12%)を得た。
【0138】
B.F
10−isoと濃度50mol%のテレフタル酸ジメチル(DMT)および1,3−プロパンジオールとのコポリマーの製造(F
10−iso−50−co−tere)
【化38】
ジメチルテレフタレート(12.2g、63mmol)、ジメチル5−(1,1,2−トリフルオロ−2−(パーフルオロプロポキシ)エトキシ)イソフタレート(30g、63mmol)、および1,3−プロパンジオール(17.25g、0.226mol)を、予備乾燥しオーバーヘッドスターラーと蒸留冷却器を備えた500mL三つ口丸底フラスコに仕込んだ。23℃のフラスコに窒素パージを適用し、50rpmで撹拌を開始してスラリーを形成した。撹拌しながら、フラスコを100torrに真空排気した後、N
2で再加圧するサイクルを合計3サイクル行った。最初の真空排気および再加圧の後、DuPont Companyから入手可能なTyzor(登録商標)チタン(IV)イソプロポキシド13mを添加した。
【0139】
真空排気と再加圧を3サイクル行った後、フラスコを、160℃に設定し予熱した液体金属浴に浸漬した。液体金属浴に入れた後、フラスコの内容物を20分間撹拌し、固体成分を溶融させ、その後、撹拌速度を180rpmに上昇させ、液体金属浴設定値を210℃に上昇させた。約20分後、浴はその温度に達した。その後、フラスコを依然として180rpmでさらに45〜60分間撹拌して210℃に維持し、反応で生成するメタノールの大部分を留去した。210℃での保持時間の後、窒素パージを中断し、撹拌し続けたまま10秒毎に約10torrずつ徐々に減圧した。約60分後、減圧は50〜60mtorrで横ばいになった。その後、撹拌速度を225rpmに増加し、この状態を3時間維持した。
【0140】
定期的に、撹拌速度を180rpmに低下させた後、攪拌機を停止させた。攪拌機を再始動させ、始動して約5秒後の印加トルクを測定した。25N/cm以上のトルクが観測された場合、撹拌を停止し、フラスコを液体金属浴から取り出すことにより反応を中断した。オーバーヘッドスターラーを反応容器の底部から上昇させた後、減圧を停止し、システムをN
2ガスでパージした。このようにして生成したコポリマー生成物を周囲温度に冷却し、ハンマーでガラスを慎重に割った後、生成物を回収した。収率約90%。T
gは約34℃であった。
1H−NMR(CDCl
3)δ:8.60(Ar
H,s,1H),8.15−8.00(Ar
H−,m,2+4H),7.65(Ar
H,s,4H),6.15(−CF
2−CF
H−O−,d,1H),4.70−4.50(COO−C
H2−,m,4H),3.95(−C
H2−OH,t,2H),3.85(−C
H2−O−C
H2−,t,4H),2.45−2.30(−CH
2−,m,2H),2.10(−C
H2−CH
2−O−CH
2−C
H2−,m,4H).
【0141】
結果は、F
10−iso−50−co−tereと本明細書で称される、50mol%トリメチレンF
10−イソフタレートとトリメチレンテレフタレートとのコポリマーの製造と一致した。
【0142】
C.粉砕
このようにして製造したF
10−iso−50−co−tereコポリマーを1インチサイズ片に細断し、それを液体窒素に5〜10分間入れた後、6mmのスクリーンを備えたWileyミルに仕込んだ。サンプルを約1000rpmで粉砕し、約1/8” の最大寸法を特徴とする粗粒子を製造した。このようにして製造した粒子を減圧乾燥し、周囲温度に加温した。
【0143】
D.ポリマーブレンドの製造
DuPont Companyから入手可能なSorona(登録商標)Bright(1.02dl/g IV)ポリ(トリメチレンテレフタレート)(PTT)ペレットを、僅かに窒素パージして120℃の真空オーブンで終夜乾燥した。上記のセクションCで製造したF
10−iso−50−co−tereコポリマー粒子を、僅かに窒素パージして周囲温度の真空オーブンで終夜乾燥した。溶融配合する前に、このようにして乾燥したペレットを一緒に混合し、PTT中のF
10−iso−50−co−tereコポリマーの濃度が1重量%である第1のバッチ(実施例1)と、PTT中のF
10−iso−50−co−tereコポリマーの濃度が2重量%である第2のバッチ(実施例2)を形成した。このようにして製造した各バッチをプラスチックバッグに入れて、手で振盪し、ひっくり返すことにより混合した。
【0144】
二軸螺旋P1スクリューを備え、4つの加熱ゾーンを有し、直径が16ミリメートルのバレルを備えるPRISMを実験室用同時回転二軸スクリュー押出機(Thermo Fisher Scientific,Inc.から入手可能)に原料供給するK−Tron T−20(K−Tron Process Group,Pittman,NJ)減量計量式供給装置に、このようにして混合した各バッチを入れた。押出機は、直径1/8”の円形断面単一孔ストランドダイを備えた。公称ポリマー供給速度は3〜5lbs/時間であった。第1のバレルセクションは230℃に設定し、その後の3つのバレルセクションおよびダイは240℃に設定した。スクリュー速度は200rpmに設定した。押出物の溶融温度は、溶融物がダイから押し出される時、溶融物に熱電対プローブを挿入することにより260℃と測定された。このようにして押し出されたモノフィラメントストランドを水浴で急冷した。
【0145】
エアナイフでストランドを脱水した後、カッターにストランドを供給し、ストランドを長さ約2mmのブレンドペレットに薄切した。
【0146】
E.単繊維デニールが20デニールのマルチフィラメント糸の紡糸
セクションDで形成したブレンドペレットを直接紡糸延伸繊維に溶融紡糸した。K−Tron減量計量式供給装置を使用してブレンドペレットを約30〜50rpmで動作する直径28ミリメートルの二軸スクリュー押出機に供給し、ダイ圧力を600psiに維持した。Zenith計量ポンプで溶融物fを紡糸口金に29.9g/分の供給量で送給した。
図3を参照すると、計量ポンプからの溶融ポリマーは4mmのガラスビーズスクリーンを通して、265℃に加熱された孔数10孔の紡糸口金301に送られる。各オリフィスは、変形三角形断面を有するフィラメントを提供する形状であった。紡糸口金オリフィスの具体的形状寸法は、米国特許出願公開第2010/0159186号明細書の
図1および添付の明細書に記載されている。紡糸口金302から紡出されるフィラメント流を空気急冷ゾーン303に送り、そこで、フィラメント流に21℃の横断気流を当てた。その後、フィラメントを、紡糸仕上げヘッド304に送り、そこで、紡糸仕上剤を塗布し、フィラメントを集束させて糸を形成した。このようにして形成された糸は、テンションロール305を介して、55℃に加熱され500rpmで回転する2つの供給ロール(ゴデット)306に送られた後、160℃に加熱され1520rpmで回転する2つの延伸ロール(ゴデット)307に送られる。フィラメントは、延伸ロール307から、周囲温度で動作する2対の冷却(let−down)ロール308に送られ、1520rpmの巻取機309で捕集される。押出機は、9つのバレルセクションを備え、その第1のセクションは150℃に維持され、その後のセクションは255℃に維持された。紡糸口金パック(上部およびバンド)は260℃に設定し、ダイは265℃に設定した。結果を表2に示す。対照サンプルである、ブレンドされていないSorona(登録商標)Brightの比較例A(CE−A)も繊維に紡糸した。
【0147】
このようにして製造した繊維は、カーペットの製造に使用するのに特に好適であった。
【0148】
【表2】
【0149】
実施例3、4、および比較例B:
A.(ジメチル5−(1,1,2−トリフルオロ−2−(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−(パーフルオロプロポキシ)プロポキシ)エトキシ)イソフタレート(F
16−iso)の合成:
【化39】
実施例1セクションAのPPVEの代わりにPPPVE129.6gを使用したこと以外、実施例1セクションAの手順を繰り返した。所望の生成物である(ジメチル5−(1,1,2−トリフルオロ−2−(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−(パーフルオロプロポキシ)プロポキシ)エトキシ)イソフタレート(F
16−iso)123.39g(収率96.10%)を留出物として捕集した。
【0150】
B.F
16−isoと濃度50mol%のテレフタル酸ジメチル(DMT)および1,3−プロパンジオールとのコポリマー(F
10−iso−50−co−tere)の製造
【化40】
予め乾燥し、オーバーヘッドスターラーと蒸留冷却器を備えた500mL三つ口丸底フラスコに、ジメチルテレフタレート(36.24g、0.187mmol)、F
16−iso(120g、0.187mol)、および1,3−プロパンジオール(51.2g、0.672mol)を仕込んだ。23℃のフラスコに窒素パージを適用し、50rpmで撹拌を開始してスラリーを形成した。撹拌しながら、フラスコを100torrに真空排気した後、N
2で再加圧するサイクルを合計3サイクル行った。最初の真空排気および再加圧の後、Tyzor(登録商標)チタン(IV)イソプロポキシド48mgを添加した。
【0151】
210℃での保持時間が45〜60分ではなく90分であったこと以外、実施例1セクションBに記載のように重合反応を行った。このようにして生成した生成物を周囲温度に冷却し、反応容器を取り出し、ハンマーでガラスを慎重に割った後、生成物を回収した。収率約90%。T
gは約24℃であった。
1H−NMR(CDCl
3)δ:8.60(Ar
H,s,1H),8.15−8.00(Ar
H−,m,2+4H),7.65(Ar
H,s,4H),6.15(−CF
2−CF
H−O−,d,1H),4.70−4.50(COO−C
H2−,m,4H),3.95(−C
H2−OH,t,2H),3.85(−C
H2−O−C
H2−,t,4H),2.45−2.30(−CH
2−,m,2H),2.10(−C
H2−CH
2−O−CH
2−C
H2−,m,4H).
【0152】
結果は、F
16−iso−50−co−tereと本明細書で称される、50mol%トリメチレンF
16−イソフタレートとトリメチレンテレフタレートとのコポリマーの製造と一致した。
【0153】
C.F
16iso−50−co−tereの粉砕。
実施例1セクションCの粉砕手順を繰り返した。このようにして製造した粒子を減圧乾燥し、周囲温度に加温した。
【0154】
D.実施例1セクションDの方法を繰り返し、Sorona(登録商標)Bright(I.V.=1.02dl/g)とF
16−iso−50−co−tereとの溶融ブレ
ンドを形成した。濃度1重量%(実施例3)と2重量%(実施例4)のブレンドを実施例1と同様に形成した。
【0155】
E.上記実施例3および4セクションDで製造したブレンドペレットを、実施例1と同様に28mm押出機に供給した。実施例1セクションEの手順を繰り返し、約20dpfの10フィラメント糸を形成した。実施例1と異なる条件を表3に示す。フルオロビニルエーテルイソフタレートコポリマーが添加されていないSorona(登録商標)Brightのサンプルを比較例B(CE−B)として使用した。引張試験の結果を表4に示す。
【0156】
このようにして製造した糸は、カーペットの製造に特に有用であった。
【0157】
実施例4の糸約6.5gをステンレス鋼ワイヤメッシュボビンに150rpmで巻き戻した。このようにして捕集した糸を65〜70℃の熱水中で5分間3回精練し(各精練毎に水を交換した)、その後、50℃で30分間乾燥させ、汚れ評価を行う前に48時間風乾させた。その後、前述の方法により汚れ付着防止性を測定した。CE−Bの糸を、精練したおよび精練していない実施例4の糸と比較した結果を表5に示す。
【0158】
またESCAを使用して、試験糸中の表面フッ素濃度を測定した。脱出角度を45°に設定し、実施例4の精練された糸のフッ素含有量は、4.6原子%であり、算出した容積濃度の10倍より多いことが分かった。結果を表5に示す。CE−BについてはESCAを行わなかったことに留意されたい。対照は、まず第一に、フッ素を含有していなかったため、表面に検出可能な量が存在しなかったと推測される。
【0159】
【表3】
【0160】
【表4】
【0161】
【表5】
【0162】
実施例5および6ならびに比較例C:
実施例3の工程A〜Dを繰り返し、実施例3に記載のように製造したF
16−isoとSorona Brightとのブレンドの2つのバッチを製造したが、1つはF
16−iso−50−co−tereを1重量%有し(実施例5)、1つはF
16−iso−50−co−tereを2重量%有した(実施例6)。
【0163】
紡糸口金が、それぞれ直径0.010インチ×長さ0.040インチの、円形の断面を有する孔を34個有したこと以外、実施例3セクションEの手順に従って各ブレンドを糸に溶融紡糸した。ブレンドされていないSorona(登録商標)Brightnのサンプルを対照(CE−C)として使用した。紡糸条件を表6に示す。糸の機械的特性を表7に示す。
【0164】
このようにして製造した糸は、編物、織物、および不織布テキスタイル製品の製造に特に好適である。
【0165】
【表6】
【0166】
【表7】
【0167】
実施例7:
工程Aは実施例1と同様であった。
【0168】
B.ジメチルテレフタレート(DMT、130g、0.66mol)、F
10−iso(6.5g、13.6mmol、DMTに対して5重量%または2mol%)、および1,3−プロパンジオール(90.4g、1.19mol)を予め乾燥した500mL三つ口丸底フラスコに仕込んだ。オーバーヘッドスターラーおよび蒸留冷却器を取り付けた。反応物を窒素パージ下にて50rpmの速度で撹拌した。冷却器を23℃に維持した。100torrに真空排気し、N
2ガスを再充填することにより内容物を3回脱ガスした。最初に真空排気した後でチタン(IV)イソプロポキシド触媒42mgを添加した。160℃に設定し予熱した金属浴にフラスコを浸漬した。160℃で20分間撹拌して固体を完全に溶融させた後、撹拌速度を180rpmにゆっくりと上昇させた。温度設定値を210℃に上昇させ、90分間維持し、生成したメタノールの大部分を留去した。次いで、温度設定値を250℃に上昇させた後、窒素パージを停止し、減圧ランプを開始した。約60分後、減圧は50〜60mtorrの値に達した。減圧が安定した時、撹拌速度を225rpmに上昇し、反応を4時間維持した。実施例1に記載のようにトルクを監視し、典型的には100N/cm
2以上の値に達したときに反応を停止させた。熱源を取り除くことにより、重合を停止させた。オーバーヘッドスターラーを反応容器の底部から上昇させた後、減圧を停止し、システムをN
2ガスでパージした。ハンマーでガラスを慎重に割った後、生成物を回収した。T
gは約51℃であり、T
mは約226℃であった。IVは約0.88dL/gであった。
【0169】
工程Cは、実施例1と同様であった。
【0170】
D.
図4を参照すると、鋼製シリンダ402に低温粉砕したポリマー粒子401を仕込み、Teflon(登録商標)PTFE栓403を被冠した。ヒータを備え260℃に加熱された溶融ゾーン405に油圧駆動ピストン404で粒子401を圧入し、そこで、溶融物206を形成した後、溶融物を、別々に加熱され407、円形の断面を有する単一孔紡糸口金408に導入し、265℃に加熱した。紡糸口金に入る前に、ポリマーは、図示されていないフィルタパックを通過した。溶融物は、0.9g/分の速度で直径0.3mmの単一の繊維ストランド409に紡糸された。押し出された繊維は横断空気急冷ゾーン410を通過し、その後、500m/分の巻取速度で動作する巻取装置411に送られる。Sorona(登録商標)Brightの対照繊維も同一条件で紡糸した。概ね、単一フィラメントを30分間製造したが、どの場合も、フィラメントは破断することなく滑らかに紡糸された。手で引っ張り、捩じることにより測定した場合、得られた繊維は柔軟で、強度があった。
【0171】
実施例8:
工程Aは、実施例2と同様であった。
【0172】
B.実施例7のF
10−iso、6.5gの代わりに上記工程AのF
16−iso、6.5gを使用したこと以外、DMTおよび1,3−プロパンジオールとのコポリマーの形成に使用される実施例7の手順ならびに材料および材料の重量に従った。T
gは約51℃であり、T
mは約226℃であった。IVは約0.86dL/gであった。
【0173】
工程Cは、実施例1と同様であった。
【0174】
D.上記工程Cで製造したF
16−iso−1.5−co−tere粒子を使用したこと以外、実施例7の溶融加圧紡糸手順をそのまま繰り返した。手で引っ張り、捩じることにより測定した場合、得られた繊維は柔軟で、強度があった。
【0175】
実施例9、10、11および12:
A.冷却器および撹拌棒を備えた20リットルの容器にTHF(12L)、5−ヒドロキシイソフタル酸ジメチル(2210g)、炭酸カリウム(363g)、およびPPPVE(5000g)を仕込み、混合物を還流し(ジャケット温度70℃、ポット温度63℃)、10時間撹拌した。次いで、反応混合物を濾過し、炭酸カリウムを除去した。次いで、ロータリーエバポレータで蒸留することにより濾液からTHFを留去した。残存する溶液を減圧蒸留し(ジャケット温度215℃、ポット温度152℃、圧力2.2torr)、ジメチル5−(1,1,2−トリフルオロ−2−(パーフルオロプロポキシ)エトキシ)イソフタレート(F
10−iso)を留出物として捕集した。収量は5111g(71%)であった。
【0176】
B.DMT(1080g)、上記セクションAで製造したF
16−iso(3572g)、1,3−プロパンジオール(1521g)、およびチタン(IV)イソプロポキシド(2.83g)を、撹拌棒と冷却器を備えた10−lbステンレス鋼撹拌オートクレーブ(Delaware valley steel 1955,vessel #:XS 1963)に仕込んだ。窒素パージを適用して50rpmで撹拌を開始し、スラリーを形成した。撹拌しながら、窒素50psiに加圧した後、真空排気するサイクルをオートクレーブに3サイクル施した。次いで、弱い窒素パージ(約0.5L/分)を行って不活性雰囲気を維持した。オートクレーブを225℃の設定値に加熱する間に、185℃のバッチ温度でメタノールの発生(evolution)が開始した。メタノールの蒸留を120分間継続し、その間にバッチ温度を185℃から220℃に上昇させた。温度が220℃で横ばいになったとき、60分間で圧力を760torrから300torrに(カラムを通してポンプで排気する)および300torrから0.05torrに(トラップを通してポンプで排気する)に低下させる減圧ランプを開始した。0.05torrになったとき、混合物を減圧下で5時間撹拌し、その後、窒素を使用して容器を加圧し760torrに戻した。容器底部の出口弁を通して溶融物を排出することにより、生成したポリマーを回収した。収量は約10lb(約95であった。T
gは約24℃であった。
1H−NMR(CDCl
3)δ:8.60(Ar
H,s,1H),8.15−8.00(Ar
H−,m,2+4H),7.65(Ar
H,s,4H),6.15(−CF
2−CF
H−O−,d,1H),4.70−4.50(COO−C
H2−,m,4H),3.95(−C
H2−OH,t,2H),3.85(−C
H2−O−C
H2−,t,4H),2.45−2.30(−CH
2−,m,2H),2.10(−C
H2−CH
2−O−CH
2−C
H2−,m,4H).
【0177】
C.Sorona(登録商標)Semi Bright(1.02dl/g IV)PTTペレットを僅かに窒素パージして120℃のホッパ内で終夜乾燥させた。上記セクションBで製造したF
16−iso−50−co−tereコポリマーを長方形のスラブ(2.5×2.5×20cm)に切断し、僅かに窒素パージして周囲温度の真空オーブン内で終夜乾燥させた。純粋なSorona(登録商標)Semi bright(1.02dL/g?)のペレットを、9つのバレルセグメントを備える28/30mmの同時回転する二軸スクリュー押出機に重量減少供給した。バレルセクション#4にBonnet一軸スクリュー溶融供給装置の出力口を取り付け、それでF
16−iso−50−co−tereコポリマーを二軸スクリュー押出機に計量供給した。Bonnet供給装置の温度は150℃に維持し、供給速度は位置♯2に設定した。Sorona(登録商標)Semi bright溶融物中にF
16−iso−50−co−tereを20重量%含むマスターバッチブレンドが得られるように供給速度を調節した。得られた溶融ブレンドを、直径1/4”の円形断面の単一孔ストランドダイを通して押し出した。公称ポリマー押出量は30−50lb/時間であった。
【0178】
押出機の第1のバレルセクションは230℃に設定し、その後の3つのバレルセクションは240℃に設定し、その後のバレルセクションは230℃に設定し、その後の3つのバレルセクションおよびダイは225℃に設定した。スクリュー速度は250rpmに設定した。押し出されたモノフィラメントストランドを水浴中で急冷した。エアナイフでストランドを脱水した後、ストランドをカッターに供給し、カッターでストランドを長さ約2mmのブレンドペレットに薄切した。
【0179】
純粋なSorona(登録商標)Semi Brightおよび上記で作製したマスターバッチを二軸スクリュー押出機に別々に重量減少供給し、Sorona(登録商標)Semi Bright中にF16−iso−50−co−tere添加剤を2重量%(実施例12)含むペレット化ブレンド組成物を製造した。
【0180】
D.セクションCで形成したブレンドペレットを、カーペットの製造に特に好適な嵩高連続フィラメント(BCF)糸に溶融紡糸した。実施例9、10、および11では純粋なSorona(登録商標)Semi−Brightを1台の重量減少供給装置に入れ、前述のように作製したマスターバッチを別の減量計量式供給装置に入れた。2台の減量計量式供給装置でそれらの各ペレットを一軸スクリュー紡糸押出機の供給口に、F
16−iso−50−co−tereをそれぞれ1重量%、2重量%および4重量%含む溶融物が得られる供給比で供給し、この溶融物を後述のように押出して繊維を得た。実施例12では、マスターバッチと純粋なsoronaをまず二軸スクリュー押出機内で溶融ブレンドし、F16−iso−50−co−tereを2重量%含むペレット化ブレンドを製造した。その後、これらの2重量%ブレンドペレットを一軸スクリュー紡糸押出機に供給した。
【0181】
図5は、嵩高連続フィラメントを製造する紡糸装置の概略図である。上記Cで製造したポリマーブレンドペレットを、個々に(実施例12)、またはマスターバッチから純粋なSorona Semi Bright(実施例9、10および11)と組み合わせて、4つの加熱ゾーンを有する45mm一軸スクリュー押出機に供給し、そのゾーン1は255℃に維持し、ゾーン2〜4は260℃に維持し、このようにして形成した溶融物をギヤポンプで、前述のような変形三角形断面を有するフィラメントを製造するように設計された70個のオリフィスを有するプレートである紡糸口金501を含む紡糸パックアセンブリ500内を流通させた。紡糸パックアセンブリは濾材も内部に備えた。紡糸口金プレートを通してポリマーを押し出すとフィラメント502が紡糸されたが、フィラメントは、供給ロール504により、急冷503、チムニー(相対湿度約77%の空気)を通過して引き取られる。仕上剤505は、供給ロールの上流に位置する仕上げロールでフィラメントに塗布される。供給ロールは60℃に設定した。糸は、供給ロールから、150℃に加熱された延伸ロール306に送られた。200℃に加熱された空気を嵩高加工用ノズル(bulking jet)507で当てた。得られた嵩高フィラメントは、穿孔面を有し80℃に加熱された回転ステンレス鋼ドラム508上に集積された。真空ポンプ509を使用してフィラメントに空気を通すことにより、張力がかからないようにしてフィラメントを冷却した。フィラメントを冷却した後、フィラメントをドラム510から引き取った。フィラメント束は、引取ロール513と冷却ロール514との間に配置されたインターレースノズルで周期的にインターレース加工され512、巻取機515で捕集された。
【0182】
条件を下記の表8に示す。フルオロビニルエーテルイソフタレートコポリマーが添加されていないSorona(登録商標)Brightのサンプルを比較例D(CE−D)として使用した。引張試験の結果を下記の表9に示す。
【0183】
【表8】
【0184】
【表9】
【0185】
実施例13:
工程A〜Dは上記実施例9と同様であった。製造したBCF糸を48本のコーンに巻き戻した。実施例9〜12および比較例Dで製造した糸をそれぞれ48本のコーンに巻き戻した。巻き戻しは、上記の実施例9、10、11、12およびCEDの個々の各組の糸について、コーン巻取機上のコーンを3〜5分間100m/分で動作させ、主ボビンから個々の各コーンに約300〜500m移送することにより行った。タフティングは、48エンドVenorタフティング機(Daniel Almond Ltd.,Union Works,Waterfront,Lancashire,England)で行った。始動時に張力を維持できるように、糸を少なくとも10インチ、各針に通して引いた。基布(36” 18 PK beige PolyBac、Propex製)を針の下に挿入し、上下の供給ローラを通過させた。通された糸の張力を保ちながら、モータと接続されたフットペダルでトレードルを係合させた。糸の解除後、基布をその縁部から手動で案内した。所望の長さが完成したとき、フットペダルを解除し、このようにして製造したサンプルを裁断し、初期通過(initial pass)約3.5×50”であった。得られたカーペットサンプルは白色で、柔軟で、目付約1090g/m
2であった。
【0186】
実施例14および比較例E
編成された靴下脚部サンプルをFAK(Lawson−Hemthill)円形編機で実施例6およびCE−Cの糸から製造した。75ゲージの針を、380本、および35針/インチで使用し、低処理量を使用した。
【0187】
Atlas LP−1 Laundrometer、Book遠心脱水機、およびWhirlpool自動乾燥機を使用して、編成されたサンプルを青色に染色した。染色浴を準備するために、水(30×布帛の質量)およびBlue 27分散染料(布帛の重量に対して2重量%)を鋼製缶容器に仕込み、酢酸を使用してpHを4.5〜5に調節した。布帛を加えて、缶をLaundrometerに入れ、ゴムおよびテフロンガスケットを有する蓋を使用してそれを密封した。Laundrometerを121℃で30分間運転した。布帛を取り出し、熱水中で洗浄し、遠心分離機で余分な水分を脱水し、自動乾燥機で乾燥させた。
【0188】
前述の方法を使用して、青色に染色した編布の撥水性および撥油性を特性評価した。純粋なPTT繊維対照を、含有量2重量%の実施例6の糸から製造した布帛と比較した。各布帛の1試験片に121℃で20分間、染色後熱処理を施した。結果を表10に要約する:
【0189】
【表10】
【0190】
実施例15および16ならびに比較例F
実施例5、6および比較例Cの糸を2×1の綾織物に製織し、サイズ処理、整経、および製織が統合されたCCIサンプル製織システムでサンプルを製造した。糸を50/50体積%の水/ポリビニルアルコール浴を通過させることによりサイズ処理を行った後、熱風(T=80℃)で乾燥させた。糸を周長5ヤード(幅20”)の経糸ドラムの周囲に巻回することにより経糸を作製した。経糸をドラムから引き出し、切断して平坦なテープ綾(flat tape lease)上に載せた。縦糸を単一の綜絖の目に通して、筬に引き込んだ。ここで、製織パターンを織機に取り込んだ、即ち、経糸ドラム、ハーネスおよび筬を織機内に配置し、製織を行った。このようにして製造した布帛を巻取ロールに巻き取った。
【0191】
完成した織物サンプルを精練し、PVAサイズ剤を除去した。サンプルを65〜70℃の熱水中で5分間、3回精練した(各精練毎に水を交換した)後、50℃で30分間乾燥させ、撥水性評価を行う前に48時間風乾させた。このようにして精練した布帛の撥水性能を前述の方法に従って特性評価した。結果を表11に示す。
【0192】
【表11】
【0193】
実施例16
実施例5、6および比較例Cの糸を使用して、Mayer CIE OVJ 1.6E3wt 18 gauge Jacquard Double Knit、給糸数34で編物サンプルを製造した。シリンダ針の編目数を12に設定した。ダイヤル針の編目数を12に設定した。ダイヤル高さは1.5MMであった。タイミングは4針送り(4 needles advance)であった。パッケージは巻戻機で解舒され、非常に小さい編目が引き出された。製造した柔軟なオフホワイトの300×82cm布帛は、十分な伸長性を有し、目付130g/m
2であった。