特許第5943952号(P5943952)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5943952
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】電源システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20160621BHJP
【FI】
   H02M3/28 H
   H02M3/28 W
   H02M3/28 V
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-64105(P2014-64105)
(22)【出願日】2014年3月26日
(65)【公開番号】特開2015-186437(P2015-186437A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2015年4月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石垣 将紀
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 健一
(72)【発明者】
【氏名】長下 賢一郎
(72)【発明者】
【氏名】平野 高弘
(72)【発明者】
【氏名】武藤 潤
【審査官】 下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−193713(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/124595(WO,A2)
【文献】 特開2003−111413(JP,A)
【文献】 特開2009−055687(JP,A)
【文献】 特表2015−508277(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電圧を出力する第1電源及び前記第1電圧とは異なる第2電圧を出力する第2電源を備える電源システムであって、
前記第1電源と前記第2電源との間における双方向電圧変換により双方向の電力授受が可能であり、
前記第1電源からの前記第1電圧を電圧変換して、前記第1電圧及び前記第2電圧と異なる第3電圧、及び、前記第1電圧、前記第2電圧及び前記第3電圧と異なる第4電圧を出力可能であり、
前記第2電源からの前記第2電圧を電圧変換して、前記第3電圧及び前記第4電圧を出力可能であ
前記第1電源は、さらに第1サブ電源及び第2サブ電源からなり、
前記電力変換回路は、
前記第1サブ電源と前記第2電源との間における双方向電圧変換により双方向の電力授受が可能であり、前記第1サブ電源からの電圧を電圧変換して前記第3電圧を出力可能である第1サブ電力変換回路と、
前記第2サブ電源と前記第2電源との間における双方向電圧変換により双方向の電力授受が可能であり、前記第2サブ電源からの電圧を電圧変換して前記第4電圧を出力可能である第2サブ電力変換回路と、を含み、
前記第1サブ電力変換回路及び前記第2サブ電力変換回路を介して、前記第1サブ電源と前記第2サブ電源との間において双方向の電力授受が可能であることを特徴とする電源システム。
【請求項2】
請求項に記載の電源システムであって、
前記第1サブ電力変換回路及び前記第2サブ電力変換回路の少なくとも1つは、
第1の直流電源と変圧器の1次巻線との間に接続された第1スイッチング回路を含む第1双方向昇降圧回路と、
前記第3電圧の出力端子と前記変圧器の2次巻線との間に接続された第2スイッチング回路を含む第2双方向昇降圧回路と、
を含み、前記第1の直流電源の出力電圧と前記第3電圧との間で電圧変換を行うことを特徴とする電源システム。
【請求項3】
請求項に記載の電源システムであって、
前記第3電圧は、前記第2電源の出力電圧である前記第2電圧よりも高圧であり、
前記第1サブ電力変換回路を用いて前記第2電源からの前記第2電圧を昇圧して前記第3電圧を出力可能であると共に、
前記第2サブ電力変換回路を用いて前記第2サブ電源からの電圧を電圧変換して前記第3電圧を出力可能であることを特徴とする電源システム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の電源システムであって、
前記第4電圧は、前記第2電圧よりも低圧であり、
前記第1サブ電力変換回路を用いて前記第1サブ電源からの電圧を電圧変換して前記第4電圧を出力可能であると共に、
前記第1サブ電力変換回路及び前記第2サブ電力変換回路を用いて前記第2電圧を降圧して前記第4電圧を出力可能であることを特徴とする電源システム。
【請求項5】
請求項に記載の電源システムであって、
前記第1サブ電源と前記第1サブ電力変換回路の前記第1双方向昇降圧回路との間に遮断器を備え、
前記第2サブ電源と前記第2サブ電力変換回路の前記第双方向昇降圧回路との間に遮断器を備えることを特徴とする電源システム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の電源システムであって、
前記第1サブ電源及び前記第2サブ電源は、複数の電池を直列接続して構成される前記第1電源を分割したものであることを特徴とする電源システム。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の電源システムであって、
前記第1サブ電源と前記第2サブ電源との間において電力授受を行うことによって、前記第1サブ電源と前記第2サブ電源との電力バランスを調整することを特徴とする電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
第1の直流電源及び第2の直流電源の各々にDC/AC変換を行うためのスイッチング回路からなる電力変換器を設け、それらの電力変換器間を変圧器で結合した電源システムが開示されている(特許文献1,2)。これらの電源システムでは、複数の電源からの電圧を昇圧/降圧することにより、電源電圧とは異なる電圧を出力することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7,408,794号明細書
【特許文献2】特開2006−187147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の電源システムでは、スイッチング回路のデューティを調整することによって出力電圧を変えるので、10V程度の低電圧の範囲では細かい電圧調整が困難である。例えば、12Vの電圧出力と14Vの電圧出力とを正確に切り替えて出力することが難しい。
【0005】
また、電力変換器に故障が生じた場合、すべての機能が停止する可能性があり、自動車等の信頼性を要するシステムへの適用ができない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの態様は、第1電圧を出力する第1電源及び前記第1電圧とは異なる第2電圧を出力する第2電源を備える電源システムであって、前記第1電源と前記第2電源との間における双方向電圧変換により双方向の電力授受が可能であり、前記第1電源からの前記第1電圧を電圧変換して、前記第1電圧及び前記第2電圧と異なる第3電圧、及び、前記第1電圧、前記第2電圧及び前記第3電圧と異なる第4電圧を出力可能であり、前記第2電源からの前記第2電圧を電圧変換して、前記第3電圧及び前記第4電圧を出力可能である、電力変換回路を備えることを特徴とする電源システムである。
【0007】
ここで、前記第1電源は、さらに第1サブ電源及び第2サブ電源からなり、前記電力変換回路は、前記第1サブ電源と前記第2電源との間における双方向電圧変換により双方向の電力授受が可能であり、前記第1サブ電源からの電圧を電圧変換して前記第3電圧を出力可能である第1サブ電力変換回路と、前記第2サブ電源と前記第2電源との間における双方向電圧変換により双方向の電力授受が可能であり、前記第2サブ電源からの電圧を電圧変換して前記第4電圧を出力可能である第2サブ電力変換回路と、を含み、前記第1サブ電力変換回路及び前記第2サブ電力変換回路を介して、前記第1サブ電源と前記第2サブ電源との間において双方向の電力授受が可能であることが好適である。
【0008】
また、前記第1サブ電力変換回路及び前記第2サブ電力変換回路の少なくとも1つは、第1の直流電源と変圧器の1次巻線との間に接続された第1スイッチング回路を含む第1双方向昇降圧回路と、前記第3電圧の出力端子と前記変圧器の2次巻線との間に接続された第2スイッチング回路を含む第2双方向昇降圧回路と、を含み、前記第1の直流電源の出力電圧と前記第3電圧との間で電圧変換を行うことが好適である。
【0009】
また、前記第3電圧は、前記第2電源の出力電圧である前記第2電圧よりも高圧であり、前記第1サブ電力変換回路を用いて前記第2電源からの前記第2電圧を昇圧して前記第3電圧を出力可能であると共に、前記第2サブ電力変換回路を用いて前記第2サブ電源からの電圧を電圧変換して前記第3電圧を出力可能であることが好適である。
【0010】
また、前記第4電圧は、前記第2電圧よりも低圧であり、前記第1サブ電力変換回路を用いて前記第1サブ電源からの電圧を電圧変換して前記第4電圧を出力可能であると共に、前記第1サブ電力変換回路及び前記第2サブ電力変換回路を用いて前記第2電圧を降圧して前記第4電圧を出力可能であることが好適である。
【0011】
また、前記第1サブ電源と前記第1サブ電力変換回路の前記第1双方向昇降圧回路との間に遮断器を備え、前記第2サブ電源と前記第2サブ電力変換回路の前記第双方向昇降圧回路との間に遮断器を備えることが好適である。
【0012】
また、前記第1サブ電源及び前記第2サブ電源は、複数の電池を直列接続して構成される前記第1電源を分割したものであることが好適である。
【0013】
また、前記第1サブ電源と前記第2サブ電源との間において電力授受を行うことによって、前記第1サブ電源と前記第2サブ電源との電力バランスを調整することが好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、冗長性をもって複数の電源を供給可能な電源システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態における電源システムの構成を示す図である。
図2】本発明の実施の形態におけるマルチポートコンバータの構成を示す図である。
図3a】本発明の実施の形態における電力授受の態様を示す図である。
図3b】本発明の実施の形態における電力授受の態様を示す図である。
図3c】本発明の実施の形態における電力授受の態様を示す図である。
図3d】本発明の実施の形態における電力授受の態様を示す図である。
図4a】本発明の実施の形態における故障時又はシステム停止時の電力授受の態様を示す図である。
図4b】本発明の実施の形態における故障時又はシステム停止時の電力授受の態様を示す図である。
図4c】本発明の実施の形態における故障時又はシステム停止時の電力授受の態様を示す図である。
図4d】本発明の実施の形態における故障時又はシステム停止時の電力授受の態様を示す図である。
図4e】本発明の実施の形態における故障時又はシステム停止時の電力授受の態様を示す図である。
図4f】本発明の実施の形態における故障時又はシステム停止時の電力授受の態様を示す図である。
図5】本発明の変形例1における電源システムの構成を示す図である。
図6】本発明の変形例1における電源システムの構成を示す図である。
図7】本発明の変形例2における電源システムの構成を示す図である。
図8】本発明の変形例3における電源システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態における電源システム100は、図1に示すように、第1電源10、第2電源12、電力変換回路14及び遮断器16(16a〜16c)を含んで構成される。
【0017】
第1電源10は、電源システム100における直流の主機電源である。第1電源10は、例えば、リチウムイオン充電池、ニッケル・水素充電池等を適用することができる。第1電源10の出力電圧(第1電圧)Vは、例えば、100V以上300V以下の範囲とされる。
【0018】
第1電源10は、例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車等の駆動用のバッテリとして使用することができる。この場合、直接、又はインバータ等の直流/交流変換回路(図示しない)を介して、車両駆動用のモータ・ジェネレータ200に接続すればよい。
【0019】
また、本実施の形態では、第1電源10は、第1サブ電源10a及び第2サブ電源10bから構成される。第1サブ電源10a及び第2サブ電源10bは、同じ程度の出力容量及び出力電圧とすることが好適である。例えば、第1電源10の出力電圧Vが200Vである場合、第1サブ電源10aの出力電圧(第1サブ電圧VS1)及び第2サブ電源10bの出力電圧(第2サブ電圧VS2)がそれぞれ100Vとなるように構成することが好適である。具体的には、図1に示すように、第1電源10が複数の電池の直列接続体である場合、それを2分割した各電池群を第1サブ電源10a及び第2サブ電源10bとすればよい。
【0020】
第2電源12は、電源システム100における補機電源である。第2電源12は、例えば、鉛充電池等を適用することができる。第2電源12は、第1電源10の負荷となる主機よりも低電力の補機負荷202に対する電源とされることが多く、その出力電圧(第2電圧)Vは例えば14Vとされる。
【0021】
電力変換回路14は、第1電源10(第1サブ電源10a,第2サブ電源10b)及び第2電源12から電力供給を受けて、第1電源10及び第2電源12の出力電圧とは異なる電圧を生成して出力する回路である。例えば、電力変換回路14は、近年ハイブリッド自動車や電気自動車等において近年必要とされている大電力補機負荷204に対して電力を供給する。大電力補機負荷204に対する出力電圧(第3電圧)Vは、第2電源12の出力電圧Vより高く設定され、例えば40V以上48V以下とされる。また、電力変換回路14は、補機負荷202よりも低い電圧で動作する低電圧補機負荷206に対して電力を供給する。低電圧補機負荷206に対する出力電圧(第4電圧)Vは、第2電源12の出力電圧Vより低く設定され、例えば12Vとされる。
【0022】
遮断器16a,16bは、第1電源10と電力変換回路14との間の電気的接続を開閉するために設けられるスイッチである。遮断器16aは、第1サブ電源10aの高圧側端子と電力変換回路14との間に設けられる。遮断器16bは、第2サブ電源10bの低圧側端子と電力変換回路14との間に設けられる。また、遮断器16cは、補機負荷202への電力供給ラインと低電圧補機負荷206への電力供給ラインとの間の電気的接続を開閉するために設けられるスイッチである。これらの遮断器16a,16b,16cは、それぞれ独立して外部の制御ユニット(図示しない)から開閉制御可能とされる。
【0023】
ここで、図1に示すように、本実施の形態における電力変換回路14は、第1サブ電力変換回路14aと第2サブ電力変換回路14bとを含んで構成される。第1サブ電力変換回路14a及び第2サブ電力変換回路14bは、それぞれ複数の電源として機能するマルチポートコンバータである。
【0024】
図2は、第1サブ電力変換回路14a及び第2サブ電力変換回路14bの構成するマルチポートコンバータ300を示す回路図である。マルチポートコンバータ300は、図2に示すように、第1双方向昇降圧回路302、第2双方向昇降圧回路304及び絶縁変圧器306を含んで構成される。第1双方向昇降圧回路302は、第1電源10(第1サブ電源10a又は第2サブ電源10b)の端子T1,T2と絶縁変圧器306の1次巻線L1との間に接続される。第2双方向昇降圧回路304は、第3電圧Vの端子T3及びGNDと絶縁変圧器306の2次巻線L2との間に接続される。また、絶縁変圧器306の2次巻線L2の途中から第2電圧V(又は第4電圧V)の端子T4が引き出される。
【0025】
第1双方向昇降圧回路302は、スイッチング素子S1〜S4を含んで構成される。スイッチング素子S1〜S4には、それぞれダイオードが並列に接続される。スイッチング素子S1とスイッチング素子S2との直列回路と、スイッチング素子S3とスイッチング素子S4とが直列回路と、が構成され、さらにそれらの直列回路が並列に接続される。また、スイッチング素子S1とスイッチング素子S2との接続の中点が絶縁変圧器306の1次巻線L1の片側の端子M1に接続され、スイッチング素子S3とスイッチング素子S4との接続の中点が絶縁変圧器306の1次巻線L1の反対側の端子M2に接続される。
【0026】
第1双方向昇降圧回路302では、スイッチング素子S1〜S4のスイッチングのタイミングを制御することによって、端子T1,T2に印加される第1電源10(第1サブ電源10a又は第2サブ電源10b)の出力電圧を電圧変換して絶縁変圧器306の1次巻線L1へ出力する。また、絶縁変圧器306の1次巻線L1の端子電圧を電圧変換して端子T1,T2に接続される第1電源10(第1サブ電源10a又は第2サブ電源10b)へ出力する。すなわち、第1双方向昇降圧回路302は、入力と出力を双方向に切り替えて出力することができる双方向昇降圧回路として機能する。
【0027】
第2双方向昇降圧回路304は、スイッチング素子S5〜S8を含んで構成される。スイッチング素子S5〜S8には、それぞれダイオードが並列に接続される。スイッチング素子S5とスイッチング素子S6との直列回路と、スイッチング素子S7とスイッチング素子S8との直列回路と、が構成され、さらにそれらの直列回路が並列に接続される。また、スイッチング素子S5とスイッチング素子S6との接続の中点が絶縁変圧器306の2次巻線L2の片側の端子M3に接続され、スイッチング素子S7とスイッチング素子S8との接続の中点が絶縁変圧器306の2次巻線L2の反対側の端子M4に接続される。また、絶縁変圧器306の2次巻線L2の高圧側と低圧側にリアクトルR1,R2がそれぞれ設けられる。
【0028】
第2双方向昇降圧回路304では、スイッチング素子S5〜S8のスイッチングのタイミングを制御することによって、端子T3に印加される第3電圧Vを電圧変換して絶縁変圧器306の2次巻線L2へ出力する。また、絶縁変圧器306の2次巻線L2の端子電圧を電圧変換して端子T3に第3電圧Vとして出力する。すなわち、第2双方向昇降圧回路304は、入力と出力を双方向に切り替えて出力することができる双方向昇降圧回路として機能する。
【0029】
また、第2双方向昇降圧回路304では、スイッチング素子S5〜S8のスイッチングのタイミングを制御することによって、端子T4に印加される第2電圧V(又は第4電圧V)を電圧変換して絶縁変圧器306の2次巻線L2の中点へ出力する。また、絶縁変圧器306の2次巻線L2の中点の端子電圧を電圧変換して端子T4に第2電圧V(又は第4電圧V)として出力する。
【0030】
さらに、第2双方向昇降圧回路304では、スイッチング素子S5〜S8のスイッチングのタイミングを制御することによって、端子T4に印加される第2電圧V(又は第4電圧V)を電圧変換して端子T3に第3電圧Vとして出力する。また、端子T3に印加される第3電圧Vを電圧変換して端子T4に第2電圧V(又は第4電圧V)として出力する。
【0031】
絶縁変圧器306は、磁気的相互作用により1次巻線L1と2次巻線L2との巻線数比Nに応じて、1次巻線L1の端子電圧と2次巻線L2との端子電圧を相互に電圧変換して出力する。これにより、端子T1,T2に印加される第1電源10(第1サブ電源10a又は第2サブ電源10b)の出力電圧、第2電圧V(又は第4電圧V)及び第3電圧Vを相互的に電圧変換して出力することを可能とする。
【0032】
なお、本実施の形態では、第1サブ電力変換回路14a及び第2サブ電力変換回路14bは同一の構成としたが、これに限定されるものではなく、それぞれ独立してマルチポートコンバータとして機能する回路であればよい。
【0033】
電源システム100は、図1に示すように、このようなマルチポートコンバータ300を第1サブ電力変換回路14a及び第2サブ電力変換回路14bとして備えている。第1サブ電力変換回路14aの端子T1,T2には第1サブ電源10aの高圧側端子及び低圧側端子がそれぞれ接続される。また、第2サブ電力変換回路14bの端子T1,T2には第2サブ電源10bの高圧側端子及び低圧側端子が接続される。また、第1サブ電力変換回路14aの端子T2と第2サブ電力変換回路14bの端子T1が接続される。
【0034】
また、第1サブ電力変換回路14aの端子T3と第2サブ電力変換回路14bの端子T3とが接続され、そこに大電力補機負荷204が接続される。第1サブ電力変換回路14aの端子T4には補機負荷202が接続される。第2サブ電力変換回路14bの端子T4には低電圧補機負荷206が接続される。
【0035】
このような構成において、冗長性を持って電力の相互授受が可能となる。図3(a)〜図3(d)は、第1電源10(第1サブ電源10a及び第2サブ電源10b)の電圧100V、補機負荷202の電圧14V、大電力補機負荷204の電圧40V〜48V、低電圧補機負荷206の電圧12Vを相互に変換して電力授受を行う方法を示す。ここで、通常時には、遮断器16a,16bは閉状態、遮断器16cは開状態とされる。
【0036】
図3(a)は、大電力補機負荷204の電圧40V〜48Vを出力する方法を示す。すなわち、第1サブ電源10aから電力供給するラインa−1、第2サブ電源10bから電力供給するラインa−2及び第2電源12から電力供給するラインa−3の3つの経路で電力を供給することができる。ラインa−1では、第1サブ電源10a→第1サブ電力変換回路14aの第1双方向昇降圧回路302→第1サブ電力変換回路14aの絶縁変圧器306→第1サブ電力変換回路14aの第2双方向昇降圧回路304→大電力補機負荷204の経路で100Vから40V〜48Vへ電圧変換されて電力が供給される。また、ラインa−2では、第2サブ電源10b→第2サブ電力変換回路14bの第1双方向昇降圧回路302→第2サブ電力変換回路14bの絶縁変圧器306→第2サブ電力変換回路14bの第2双方向昇降圧回路304→大電力補機負荷204の経路で100Vから40V〜48Vへ電圧変換されて電力が供給される。ラインa−3では、第2電源12→第1サブ電力変換回路14aの第2双方向昇降圧回路304→大電力補機負荷204の経路で14Vから40V〜48Vへ電圧変換されて電力が供給される。なお、必要に応じて、これらの経路において逆方向に電力を供給することもできる。
【0037】
図3(b)は、低電圧補機負荷206の電圧12Vを出力する方法を示す。すなわち、第1サブ電源10aから電力供給するラインb−1、第2サブ電源10bから電力供給するラインb−2及び第2電源12から電力供給するラインb−3の3つの経路で電力を供給することができる。ラインb−1では、第1サブ電源10a→第1サブ電力変換回路14aの第1双方向昇降圧回路302→第1サブ電力変換回路14aの絶縁変圧器306→第1サブ電力変換回路14aの第2双方向昇降圧回路304→第2サブ電力変換回路14bの第2双方向昇降圧回路304の経路で100Vから12Vに電圧変換されて電力が供給される。ラインb−2では、第2サブ電源10b→第2サブ電力変換回路14bの第1双方向昇降圧回路302→第2サブ電力変換回路14bの絶縁変圧器306→第2サブ電力変換回路14bの第2双方向昇降圧回路304の経路で100Vから12Vに電圧変換されて電力が供給される。ラインb−3では、第2電源12→第1サブ電力変換回路14aの第2双方向昇降圧回路304→第2サブ電力変換回路14bの第2双方向昇降圧回路304の経路で14Vから12Vに電圧変換されて電力が供給される。なお、必要に応じて、これらの経路において逆方向に電力を供給することもできる。
【0038】
図3(c)は、補機負荷202の電圧14Vを出力する方法を示す。すなわち、第1サブ電源10aから電力供給するラインc−1、第2サブ電源10bから電力供給するラインc−2、第2電源12から電力供給するラインc−3の3つの経路で電力を供給することができる。ラインc−1では、第1サブ電源10a→第1サブ電力変換回路14aの第1双方向昇降圧回路302→第1サブ電力変換回路14aの絶縁変圧器306→補機負荷202の経路で100Vから14Vに電圧変換されて電力が供給される。ラインc−2では、第2サブ電源10b→第2サブ電力変換回路14bの第1双方向昇降圧回路302→第2サブ電力変換回路14bの絶縁変圧器306→第2サブ電力変換回路14bの第2双方向昇降圧回路304→第1サブ電力変換回路14aの第2双方向昇降圧回路304→第1サブ電力変換回路14aの絶縁変圧器306→補機負荷202の経路で100Vから14Vに電圧変換されて電力が供給される。ラインc−3では、第2電源12から補機負荷202へ直接電力が供給される。なお、必要に応じて、これらの経路において逆方向に電力を供給することもできる。
【0039】
図3(d)は、第1サブ電源10aと第2サブ電源10bとの間で電力授受を行う方法を示す。すなわち、ラインd−1では、第1サブ電源10a→第1サブ電力変換回路14aの第1双方向昇降圧回路302→第1サブ電力変換回路14aの絶縁変圧器306→第1サブ電力変換回路14aの第2双方向昇降圧回路304→第2サブ電力変換回路14bの第2双方向昇降圧回路304→第2サブ電力変換回路14bの絶縁変圧器306→14bの第1双方向昇降圧回路302→第2サブ電源10bの経路で電力を供給することができる。また、その逆の方向に電力を供給することもできる。
【0040】
次に、本発明の実施の形態における電源システム100の故障又はシステム停止時における電力供給の態様について説明する。
【0041】
図4(a)は、第1サブ電源10aが故障したときの電源システム100における電力授受の方法を説明する図である。このとき、遮断器16aが開状態とされ、第1サブ電源10aは電源システム100から切り離される。第1サブ電源10aが故障した場合においても、図4(a)において矢印で示すように、第2サブ電源10b、第2電源12、補機負荷202、大電力補機負荷204及び低電圧補機負荷206の間において電力授受が可能である。
【0042】
図4(b)は、第2サブ電源10bが故障したときの電源システム100における電力授受の方法を説明する図である。このとき、遮断器16bが開状態とされ、第2サブ電源10bが電源システム100から切り離される。第2サブ電源10bが故障した場合においても、図4(b)において矢印で示すように、第1サブ電源10a、第2電源12、補機負荷202、大電力補機負荷204及び低電圧補機負荷206の間において電力授受が可能である。
【0043】
図4(c)は、第1サブ電力変換回路14aが故障したときの電源システム100における電力授受の方法を説明する図である。このとき、遮断器16aが開状態とされ、第1サブ電源10aは電源システム100から切り離される。また、遮断器16cが閉状態とされ、補機負荷202の電力供給ラインと低電圧補機負荷206の電力供給ラインが接続される。第1サブ電力変換回路14aが故障した場合においても、図4(c)に示すように、第2サブ電源10b、第2電源12、補機負荷202、大電力補機負荷204及び低電圧補機負荷206の間において電力授受が可能である。なお、補機負荷202に対しては、14Vの電圧でなく、緊急時の代替として12Vの電圧で電力が供給される。
【0044】
図4(d)は、第2サブ電力変換回路14bが故障したときの電源システム100における電力授受の方法を説明する図である。このとき、遮断器16bが開状態とされ、第2サブ電源10bは電源システム100から切り離される。また、遮断器16cが閉状態とされ、補機負荷202の電力供給ラインと低電圧補機負荷206の電力供給ラインが接続される。第2サブ電力変換回路14bが故障した場合においても、図4(d)に示すように、第1サブ電源10a、第2電源12、補機負荷202、大電力補機負荷204及び低電圧補機負荷206の間において電力授受が可能である。なお、低電圧補機負荷206に対しては、12Vの電圧でなく、緊急時の代替として14Vの電圧で電力が供給される。
【0045】
図4(e)は、第2電源12が故障したときの電源システム100における電力授受の方法を説明する図である。このとき、遮断器16cが開状態とされ、補機負荷202の電力供給ラインと低電圧補機負荷206の電力供給ラインは遮断される。第2電源12が故障した場合においても、図4(e)において矢印で示すように、第1サブ電源10a、第2サブ電源10b、補機負荷202、大電力補機負荷204及び低電圧補機負荷206の間において電力授受が可能である。
【0046】
図4(f)は、第1サブ電力変換回路14a及び第2サブ電力変換回路14bが停止したときの電源システム100における電力授受の方法を説明する図である。これは、電源システム100を搭載した車両が停止した状態(システム停止、イグニッションオフ等)に該当する。このとき、遮断器16a,16bが開状態とされ、遮断器16cが閉状態とされる。この場合、第2電源12から補機負荷202及び低電圧補機負荷206に電力が供給される。補機負荷202及び低電圧補機負荷206には、電子制御ユニット(ECUI)やセキュリティ装置が含まれるので、第2電源12から電力が供給されてこれらの最低限の機能を維持することができる。
【0047】
以上のように、本発明の実施の形態における電源システム100では、回路や電源に異常や故障が生じた場合においてもその部位を電源システム100から切り離し、冗長性をもって複数の電源を供給可能である。
【0048】
<変形例1>
図5は、本発明の変形例1における電源システム102の構成を示す。電源システム102では、第1サブ電力変換回路14aと第2サブ電力変換回路14bにおいて共通である端子T3に、大電力補機負荷204の代り、又は、大電力補機負荷204と共に、太陽電池等の外部発電装置210が接続される。
【0049】
このような電源システム102においても、上記電源システム100と同様に、第1サブ電源10a、第2サブ電源10b及び第2電源12から補機負荷202及び低電圧補機負荷206に対して電力を供給することができる。併せて、外部発電装置210から補機負荷202及び低電圧補機負荷206に対して電力を供給することも可能となる。
【0050】
さらに、外部発電装置210から第1サブ電源10a、第2サブ電源10b及び第2電源12に対して電力を供給して充電を行うこともできる。
【0051】
なお、外部発電装置210が不要であるユーザに対しては、図6に示すように、第1サブ電力変換回路14aと第2サブ電力変換回路14bにおいて共通である端子T3を解放状態としてもよい。この場合、第1サブ電源10a、第2サブ電源10b及び第2電源12を用いて、出力電圧100V、14V及び12Vの電源として利用することができる。
【0052】
<変形例2>
図7は、本発明の変形例2における電源システム104の構成を示す。電源システム104では、第2電源12の代りに第3電源18が低電圧補機負荷206の電力供給ラインに接続される。第3電源18は、低電圧補機負荷206の定格電圧と同じ電圧の電源とすることが好適であり、例えば、リチウムイオン電池等を適用することができる。
【0053】
この場合、システム停止時において待機電力を必要とする負荷を低電圧補機負荷206にすべて含めれば遮断器16cを設けない構成としてもよい。
【0054】
<変形例3>
図8は、本発明の変形例3における電源システム106の構成を示す。電源システム106では、高圧側の第1サブ電源10a及び第2サブ電源10bが互いに異なる出力電圧の電源10c,10dに置き換えられている。この場合、電源10c,10dの少なくとも一方に電力変換器212を設け、モータ・ジェネレータ200に電力を供給する構成とする。図8では、電源10dに電力変換器212を設けた例を示しているが、もちろん電源10cに設けてもよいし、電源10c,10dの両方に設けてもよい。
【0055】
このような構成とすることによって、低圧側の複数の電源供給に対する冗長性を保ちつつ、異なる電圧の電源からの電力供給及び相互の電力授受も可能となる。
【符号の説明】
【0056】
10 第1電源、10a 第1サブ電源、10b 第2サブ電源、10c,10d 電源、12 第2電源、14 電力変換回路、14a 第1サブ電力変換回路、14b 第2サブ電力変換回路、16a,16b,16c 遮断器、18 電源、100,102,104,106 電源システム、200 モータ・ジェネレータ、202 補機負荷、204 大電力補機負荷、206 低電圧補機負荷、210 外部発電装置、212 電力変換器、300 マルチポートコンバータ、302 第1双方向昇降圧回路、304 第2双方向昇降圧回路、306 絶縁変圧器。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図3d
図4a
図4b
図4c
図4d
図4e
図4f
図5
図6
図7
図8