特許第5943963号(P5943963)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5943963三次元造形用材料、及び、三次元造形方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5943963
(24)【登録日】2016年6月3日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】三次元造形用材料、及び、三次元造形方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 3/105 20060101AFI20160621BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20160621BHJP
   B22F 3/16 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   B22F3/105
   B22F1/00 Z
   B22F3/16
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-104215(P2014-104215)
(22)【出願日】2014年5月20日
(65)【公開番号】特開2015-218368(P2015-218368A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2014年6月3日
【審判番号】不服2015-5755(P2015-5755/J1)
【審判請求日】2015年3月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504034585
【氏名又は名称】有限会社 ナプラ
(74)【代理人】
【識別番号】100081606
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 美次郎
(72)【発明者】
【氏名】関根 重信
【合議体】
【審判長】 木村 孔一
【審判官】 鈴木 正紀
【審判官】 河野 一夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−111308(JP,A)
【文献】 特開2011−021218(JP,A)
【文献】 特表平10−506151(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/149101(WO,A1)
【文献】 特開2005−206871(JP,A)
【文献】 特開2006−257463(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00-8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粉末でなり、前記金属粉末によ金属造形物を造形するための三次元造形用材料であって、
前記金属粉末は、高融点金属粒子と低融点金属粒子とを混合したものでなり、
前記高融点金属粒子は、Ag、Cu、Au、Pt、Ti、Zn、Al、Fe、Si、または、Niの群から選択された少なくも1種からなり
前記低融点金属粒子は、Sn、In、Biまたは、Gaの群から選択された少なくも1種からなる
三次元造形用材料。
【請求項2】
金属の線材でなり、前記線材によ金属造形物を造形するための三次元造形用材料であって、
前記線材は、高融点金属成分でなる第1線材と、低融点金属成分でなる第2線材とで構成され、
前記高融点金属成分は、Ag、Cu、Au、Pt、Ti、Zn、Al、Fe、Si,又はNiの群から選択された少なくも1種からなり
前記低融点金属成分は、Sn、In、BiまたはGaの群から選択された少なくも1種からなる
三次元造形用材料。
【請求項3】
金属の線材でなり、前記線材によ金属造形物を造形するための三次元造形用材料であって、
前記線材は、高融点金属成分及び低融点金属成分を含んでおり、
前記高融点金属成分は、Ag、Cu、Au、Pt、Ti、Zn、Al、Fe、Si,又はNiの群から選択された少なくも1種からなり
前記低融点金属成分は、Sn、In、BiまたはGaの群から選択された少なくも1種からなる
三次元造形用材料。
【請求項4】
金属造形物を造形する三次元造形方法であって、
請求項1乃至3の何れか一項に記載された三次元造形用材料を用いて造形する工程を含み、
前記工程は、熱処理により、前記高融点金属粒子と前記低融点金属粒子との間、又は、前記高融点金属成分と前記低融点金属成分との間に金属拡散を生じさせるプロセスを含む、
三次元造形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属でできた造形物を造形するための三次元造形用材料及び三次元造形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の三次元造形方法としては、粉末焼結積層造形法が知られている。粉末焼結積層造形法には、直接焼結造形法と間接焼結造形法があり、そのうち、直接焼結造形法は、粒子径が20μm〜40μm程度の金属粒子からなる層の表面に、樹脂バインダを混合させずに、高エネルギーのレーザを選択的に照射して、直接、その金属を溶融させ、それを50μm〜100μmのピッチで積層して繰り返すことにより、造形物を得る方法である。
【0003】
しかし、直接焼結造形法では、直接、高エネルギーにより金属を溶融するため、局部的に高熱が発生し、造形時に歪みが発生しやすい問題を抱え、所望の精度が得られにくいと言われている。
【0004】
また、金属間の結びつきが、炉でゆっくりと焼結する方式に比べて強度的に弱くなることは否めない。さらに、金属粉末を積層した状態のまま焼結されてしまうので、金属粒子間は疎の状態となっており、やはり、強度的に弱くなる原因となっている。
【0005】
間接焼結造形法は、例えば、特許文献1に開示されているように、高融点粉末に樹脂バインダを混合した粉末材料にレーザを選択的に照射して三次元形状を積層造形する。
【0006】
しかし、間接焼結造形法では、造形後に、仮焼結工程、脱脂工程、さらに、本焼結工程を実行しなければならず、造形工程数が多くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−305777号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、造形精度が高く、機械的強度に優れた造形物を、少ないプロセスで造形し得る三次元造形用材料、及び、三次元造形方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明に係る三次元造形用材料は、高融点金属成分と低融点金属成分とを含む。本発明において、「金属」には、金属元素の他、合金も含まれる。
【0010】
本発明に係る三次元造形用材料は、基本的には、直接焼結造形法の範疇に属する造形方法によって、金属造形物を造形する場合に用いられる。ここで、本発明に係る三次元造形用材料は、高融点金属成分と低融点金属成分とを含むから、溶融プロセス(加熱プロセス)では、低温度で低融点金属成分を溶融させるとともに、低融点金属成分と高融点金属成分との間で金属拡散を生じさせ、凝固プロセスでは、高融点金属成分の有する高い凝固点で固化させることができる。
【0011】
このため、溶融時における熱エネルギー消費を低減すると共に、高融点金属成分の有する高い凝固点を利用して迅速に固化させ、型崩れのない高精度の三次元造形物を迅速に造形することができる。
【0012】
しかも、得られる造形物には、低融点金属成分と高融点金属成分との間の相互的金属拡散が生じている。このような金属拡散は、通常、組成分濃度傾斜を生じさせる。組成分濃度傾斜が存在することは、複数種の金属成分における相互的な拡散接合が、物理的距離をおいて徐々に変化してゆくことを意味する。従って、原子空孔(格子)の集積が回避され、カーケンダルボイドの発生が抑制され、信頼性及び品質に優れ、しかも機械的強度が大きい三次元造形物が得られることになる。
【0013】
高融点金属成分及び低融点金属成分は、一般には、多結晶の金属粒子である。この場合、多結晶を構成する単結晶の粒界又は内部に、金属酸化物、金属窒化物、金属珪化物、金属炭化物もしくは金属硫化物がnmサイズの薄膜状又は粒子状で存在するナノコンポジット構造を有することが好ましい。
【0014】
上記と異なって、三次元造形用材料は、線材であってもよい。線材は、高融点金属材料でなる第1線材と、低融点金属材料でなる第2線材とで構成してもよいし、高融点金属成分及び低融点金属成分を含む線材であってもよい。
【0015】
また、高融点金属成分と低融点金属成分とともに、酸化防止成分及び/又はフラックスを含んでいてもよい。
【0016】
更に、本発明は、上述した三次元造形用材料を用いて造形する三次元造形方法をも開示する。この場合、上記説明から、既に明らかなように、溶融、造形、凝固という少ないプロセスによって金属の三次元造形物を造形できる。
【発明の効果】
【0017】
以上述べたように、本発明によれば、造形精度が高く、機械的強度に優れた造形物を、少ないプロセスで造形し得る三次元造形用材料、及び、三次元造形方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る三次元造形用材料の概要を示す図である。
図2】本発明に係る三次元造形用材料の別の形態を示す図である。
図3】本発明に係る三次元造形用材料の更に別の形態を示す図である。
図4】本発明に係る三次元造形方法を説明する図である。
図5】本発明に係る三次元造形方法の別の形態を説明する図である。
図6】本発明に係る三次元造形方法の別の形態を説明する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1を参照すると、本発明に係る三次元造形用材料は、高融点金属成分101と低融点金属成分102とを含む。高融点金属成分101は、Ag、Cu、Au、Pt、Ti、Zn、Al、Fe、Si、または、Niの群から選択された少なくても1種を含むことができ、低融点金属成分102は、Sn、In、BiまたはGaの群から選択された少なくても1種を含むことができる。例えば、高融点金属成分101として、Cu及びAgを選択し、低融点金属成分102としてSnを選択することができる。
【0020】
図1に示す実施の形態において、高融点金属成分101及び低融点金属成分102は、多結晶の金属粒子である。この場合、多結晶を構成する単結晶の粒界又は内部に、金属酸化物、金属窒化物、金属珪化物、金属炭化物もしくは金属硫化物がnmサイズの薄膜状又は粒子状で存在する構造(ナノコンポジット構造)を有することが好ましい。高融点金属成分101及び低融点金属成分102は、造形精度の観点から、粒径が300μm以下、好ましくは、100μm以下、更に好ましくは1μm以下である。粒子形状は、球状であってもよいし、扁平状等であってもよい。高融点金属成分101及び低融点金属成分102とともに、酸化防止剤及び/又はフラックスを含んでいてもよい。これらは、粒子状等の固相であってもよいし、液相であってもよい。
【0021】
上記と異なって、三次元造形用材料は、線材であってもよい。線材は、例えば、図2に示すように、高融点金属成分でなる第1線材101と、低融点金属成分でなる第2線材102とで構成してもよい。第1線材101及び第2線材102の本数、組成分等は任意である。
【0022】
あるいは、図3に示すように、高融点金属成分及び低融点金属成分を含む線材103であってもよい。図3において、符号104は、フラックスである。
【0023】
本発明に係る三次元造形用材料は、基本的には、直接焼結造形法の範疇に属する造形方法によって、金属造形物を造形する。その一例を図4図6に示してある。これらの図において、対応する構成部分については、同一の参照符号を付し、重複説明はこれを省略することがある。
【0024】
まず、図4の実施の形態では、XYZテーブル5と、制御装置701と、CAMComputer Aided Manufacturing)システム702と、ヘッド9と、レーザヘッド11を含んでいる。XYZテーブル5は、その一面が造形物を成形すべき基準面となる。制御装置701は、XYZテーブル5をヘッド9に対してX、Y、Z方向に相対移動および回転させる。XYZテーブル5の代わりに、ヘッド9をX、Y、Z方向に相対移動および回転させてもよい。
【0025】
CAMシステム702は、制御装置701およびヘッド9の動作を指令する。このCAMシステム702は、必要に応じてCADシステムと接続して設計情報を受ける。
【0026】
ヘッド9は、第1ノズル901と、第2ノズル902とを備える。第1ノズル901は、第1タンク13に収納された三次元造形用材料1を、XYZテーブル5の基準面に堆積し、所望の金属造形物を形成する。図示の三次元造形用材料1は、高融点金属粒子と低融点金属粒子とを混合した金属粉末である。
【0027】
第2ノズル902は、第2タンク15に収納された補助材3を、XYZテーブル5の基準面に堆積し、造形パターンを形成する。三次元造形用材料1は、補助材3によって画定された造形パターンに従って堆積され、積層される。補助材3は、例えば、耐熱性の高い合成樹脂によって構成することができる。第1タンク13及び第2タンク15からヘッド9に至る供給路には、流量や圧力を調節する機構17,19を設けてある。
【0028】
加熱手段を構成するレーザヘッド11は、第1ノズル901からXYZテーブル5の基準面に堆積された三次元造形用材料1にレーザを照射して溶融させる。
【0029】
上述の構成をなす立体成形装置は、CADシステムから受けた造形物の三次元設計情報をCAMシステム702によって、層別加工データに変換し、制御装置701によって、ヘッド9の第1ノズル901及び第2ノズル902の吐出を制御しつつ、XYZテーブル5をヘッド9に対して各軸方向に相対移動および回転させる。そして、第2ノズル902から供給された補助材3によって、XYZテーブル5の基準面501上に造形パターンとなる補助材パターン301を画定する。この補助材パターン301の内部に、第1ノズル901から三次元造形用材料1たる金属粉末を供給し、供給された金属粉末にレーザヘッド11からレーザを照射して溶融させ、その後、冷却して凝固させる。このプロセスを繰り返して、前記造形パターンに従った金属の三次元造形を行う。
【0030】
ここで、本発明に係る三次元造形用材料1は、図1図3に図示し、これを参照して説明したように、高融点金属成分101と低融点金属成分102とを含むから、溶融プロセスでは、低温度で低融点金属成分102を溶融させるとともに、低融点金属成分102と高融点金属成分101との間で、相互的金属拡散を生じさせ、凝固プロセスでは、高融点金属成分101の有する高い凝固点で固化させることができる。
【0031】
このため、溶融時における熱エネルギー消費を低減すると共に、凝固プロセスでは、高融点金属成分101の有する高い凝固点を利用して迅速に固化させ、型崩れを回避しつつ、三次元造形物を迅速に造形することができる。
【0032】
しかも、得られる造形物には、低融点金属成分102と高融点金属成分101との間の金属拡散が生じている。このような金属拡散は、通常、組成分濃度傾斜を生じさせる。組成分濃度傾斜が存在することは、複数種の金属成分における相互的な拡散接合が、物理的距離をおいて徐々に変化してゆくことを意味する。従って、原子空孔(格子)の集積が回避され、カーケンダルボイドの発生が抑制され、信頼性及び品質に優れ、機械的強度が大きい三次元造形物が得られることになる。
【0033】
高融点金属成分101及び低融点金属成分102は、一般には、多結晶の金属粒子である。この場合、多結晶を構成する単結晶の粒界又は内部に、金属酸化物、金属窒化物、金属珪化物、金属炭化物もしくは金属硫化物がnmサイズの薄膜状又は粒子状で存在するナノコンポジット構造を有することが好ましい。
【0034】
上記説明から、既に明らかなように、本発明に係る三次元造形方法によれば、金属の三次元造形物を、高融点金属成分及び低融点金属成分を含む三次元造形用材料の溶融、造形、凝固という少ないプロセスによって、短時間で造形できる。
【0035】
次に、図5の実施の形態では、図4の実施の形態と異なって、三次元造形用材料1として、高融点金属粒子及び低融点金属粒子を溶融させた溶融金属をヘッド9に供給するようになっている。この実施の形態の場合も、図4に示した実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0036】
更に、図6の実施の形態では、図4及び図5の実施の形態と異なって、三次元造形用材料として、高融点金属成分及び低融点金属成分を含有する線材1を用いる。この線材1は、図2及び図3に示したような構造を持ち、例えばドラム状に巻かれている。ドラム状に巻かれた線材1は、送り装置21を経て、ヘッド9に導かれる。そして、ヘッド9に敷設された加熱手段23によって加熱され、溶融され、XYZテーブル5の基準面501において、補助材パターン301によって画定された造形パターン内に供給され、積層される。これにより、金属の三次元造形物が造形される。
【0037】
図6に示した実施の形態においても、図4に示した実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0038】
以上、好ましい実施例を参照して本発明を詳細に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、当業者であれば、その基本的技術思想および教示に基づき、種々の変形例を想到できることは自明である。
【符号の説明】
【0039】
1 三次元造形用材料
101 高融点金属成分
102 低融点金属成分
図1
図2
図3
図4
図5
図6