(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0030】
(定義および一般パラメータ)
本明細書中で使用される場合、以下の用語および語句は、それらが使用される文脈がそうではないことを示す範囲を除いて、一般に以下に記載されるような意味を有することが意図される。
【0031】
用語「アルキル」とは、一価の、分枝鎖または非分枝鎖の、1個〜20個の炭素原子を有する飽和炭化水素鎖をいう。この用語は、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、t−ブチル、n−ヘキシル、n−デシル、およびテトラデシルなどの基によって例示される。
【0032】
用語「置換アルキル」とは、以下のものをいう:
1)アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、アミノカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシ、ケト、チオカルボニル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ヘテロシクリルチオ、チオール、アルキルチオ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、アミノスルホニル、アミノカルボニルアミノ、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、−SO−アルキル、−SO−アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO
2−アルキル、SO
2−アリールおよび−SO
2−ヘテロアリールからなる群より選択される、1個、2個、3個、4個または5個の置換基(代表的に、1個、2個、または3個の置換基)を有する、上に定義されるようなアルキル基。その定義により他に制限されない限り、全ての置換基は、アルキル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アミノカルボニル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロゲン、CF
3、アミノ、置換アミノ、シアノ、および−S(O)
nR(ここでRは、アルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、そしてnは、0、1または2である)から選択される1個、2個、または3個の置換基によって必要に応じてさらに置換され得る;あるいは
2)酸素、硫黄およびNR
a(ここでR
aは、水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルから選択される)から独立して選択される1個〜10個の原子(例えば、1個、2個、3個、4個、または5個の原子)によって介在された、上に定義されるようなアルキル基。全ての置換基はさらに、アルキル、アルコキシ、ハロゲン、CF
3、アミノ、置換アミノ、シアノ、または−S(O)
nR(ここでRは、アルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、そしてnは、0、1または2である)によって必要に応じて置換され得る;あるいは
3)上で定義されたような1個、2個、3個、4個または5個の置換基を有し、かつまた、上で定義されたような1個〜10個の原子(例えば、1個、2個、3個、4個、または5個の原子)により介在されている、上に定義されるようなアルキル基。
【0033】
用語「低級アルキル」とは、一価の、分枝鎖または非分枝鎖の、1個、2個、3個、4個、5個、または6個の炭素原子を有する飽和炭化水素鎖をいう。この用語は、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、t−ブチル、およびn−ヘキシルなどの基によって例示される。
【0034】
用語「置換低級アルキル」とは、置換アルキルについて定義されたような1個〜5個の置換基(代表的に、1個、2個、または3個の置換基)を有する、上で定義されたような低級アルキル、あるいは置換アルキルについて定義されたような、1個、2個、3個、4個、または5個の原子により介在された、上で定義されたような低級アルキル基、あるいは上で定義されたような1個、2個、3個、4個または5個の置換基を有し、かつまた、上で定義されたような1個、2個、3個、4個、または5個の原子により介在された、上で定義されたような低級アルキル基をいう。
【0035】
用語「アルキレン」とは、代表的に1個〜20個の炭素原子(例えば、1個〜10個の炭素原子、または1個、2個、3個、4個、5個もしくは6個の炭素原子)を有する、分枝鎖または非分枝鎖の飽和炭化水素鎖のジラジカルをいう。この用語は、例えば、メチレン(−CH
2−)、エチレン(−CH
2CH
2−)、ならびにプロピレン異性体(例えば、−CH
2CH
2CH
2−および−CH(CH
3)CH
2−)などの基によって例示される。
【0036】
用語「低級アルキレン」とは、代表的に1個、2個、3個、4個、5個、または6個の炭素原子を有する、分枝鎖または非分枝鎖の飽和炭化水素鎖のジラジカルをいう。
【0037】
用語「置換アルキレン」とは、以下のものをいう:
(1)アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、アミノカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシ、ケト、チオカルボニル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ヘテロシクリルチオ、チオール、アルキルチオ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、アミノスルホニル、アミノカルボニルアミノ、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、−SO−アルキル、−SO−アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO
2−アルキル、SO
2−アリールおよび−SO
2−ヘテロアリールからなる群より選択される1個、2個、3個、4個、または5個の置換基(代表的に、1個、2個、または3個の置換基)を有する、上で定義されたようなアルキレン基。その定義により他に制限されない限り、全ての置換基は、アルキル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アミノカルボニル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロゲン、CF
3、アミノ、置換アミノ、シアノ、および−S(O)
nR(ここでRは、アルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、そしてnは、0、1または2である)から選択される1個、2個、または3個の置換基によって必要に応じてさらに置換され得る;あるいは
(2)−O−、−S−、スルホニル、−C(O)−、−C(O)O−、−C(O)N−、および−NR
a(ここでR
aは、水素、必要に応じて置換されたアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルから選択される)から独立して選択される1個〜10個の基(例えば、1個、2個、3個、4個、または5個の基)により介在されている、上で定義されたようなアルキレン基;あるいは
(3)上で定義されたような1個、2個、3個、4個または5個の置換基を有し、かつまた、上で定義されたような1個〜10個の基により介在されている、上で定義されたようなアルキレン基。置換アルキレンの例は、クロロメチレン(−CH(Cl)−)、アミノエチレン(−CH(NH
2)CH
2−)、メチルアミノエチレン(−CH(NHMe)CH
2−)、2−カルボキシプロピレン異性体(−CH
2CH(CO
2H)CH
2−)、エトキシエチル(−CH
2CH
2O−CH
2CH
2−)、エチルメチルアミノエチル(−CH
2CH
2−N(CH
3)−CH
2CH
2−)、および1−エトキシ−2−(2−エトキシ−エトキシ)エタン(−CH
2CH
2O−CH
2CH
2−OCH
2CH
2−OCH
2CH
2−)などである。
【0038】
用語「アラルキル」とは、アルキレン基に共有結合したアリール基をいい、ここでアリールおよびアルキレンは、本明細書中で定義されるとおりである。「必要に応じて置換されたアラルキル」とは、必要に応じて置換されたアルキレン基に共有結合した必要に応じて置換されたアリール基をいう。このようなアラルキル基は、ベンジル、フェニルエチル、および3−(4−メトキシフェニル)プロピルなどにより例示される。
【0039】
用語「アラルキルオキシ」とは、基−O−アラルキルをいう。「必要に応じて置換されたアラルキルオキシ」とは、必要に応じて置換されたアルキレン基に共有結合した必要に応じて置換されたアラルキル基をいう。このようなアラルキル基は、ベンジルオキシ、およびフェニルエチルオキシなどにより例示される。
【0040】
用語「アルコキシ」とは、基R−O−をいい、ここでRは、必要に応じて置換されたアルキルまたは必要に応じて置換されたシクロアルキルであるか、あるいはRは、基−Y−Zであり、ここでYは、必要に応じて置換されたアルキレンであり、そしてZは、必要に応じて置換されたアルケニル、必要に応じて置換されたアルキニル、または必要に応じて置換されたシクロアルケニルであり、ここでアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキルおよびシクロアルケニルは、本明細書中で定義されるとおりである。代表的なアルコキシ基は、アルキル−O−であり、そして例として、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソ−プロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシ、sec−ブトキシ、n−ペントキシ、n−ヘキシルオキシ、および1,2−ジメチルブトキシなどが挙げられる。
【0041】
用語「低級アルコキシ」とは、基R−O−をいい、ここでRは、必要に応じて置換された、上で定義されたような低級アルキルである。この用語は、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソ−プロポキシ、n−ブトキシ、イソ−ブトキシ、t−ブトキシ、およびn−ヘキシルオキシなどの基によって例示される。
【0042】
用語「アルキルチオ」とは、基R−S−をいい、ここでRは、アルコキシについて定義されたとおりである。
【0043】
用語「アルケニル」とは、代表的に2個〜20個の炭素原子(より代表的には、2個〜10個の炭素原子、例えば、2個〜6個の炭素原子)を有し、そして1個〜6個の炭素−炭素二重結合(例えば、1個、2個、または3個の炭素−炭素二重結合)を有する、分枝鎖または非分枝鎖の不飽和炭化水素基のモノラジカルをいう。代表的なアルケニル基としては、エテニル(またはビニル、すなわち−CH=CH
2)、1−プロピレン(またはアリル、−CH
2CH=CH
2)、イソプロピレン(−C(CH
3)=CH
2)、およびビシクロ[2.2.1]ヘプテンなどが挙げられる。アルケニルが窒素に結合する場合、その二重結合は、この窒素に対してαではあり得ない。
【0044】
用語「低級アルケニル」とは、2個〜6個の炭素原子を有する、上で定義されたようなアルケニルをいう。
【0045】
用語「置換アルケニル」とは、1個、2個、3個、4個または5個の置換基(代表的に、1個、2個、または3個の置換基)を有する、上で定義されたようなアルケニル基をいい、この置換基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、アミノカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシ、ケト、チオカルボニル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ヘテロシクリルチオ、チオール、アルキルチオ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、アミノスルホニル、アミノカルボニルアミノ、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、−SO−アルキル、−SO−アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO
2−アルキル、−SO
2−アリールおよび−SO
2−ヘテロアリールからなる群より選択される。その定義により他に制限されない限り、全ての置換基は、アルキル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アミノカルボニル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロゲン、CF
3、アミノ、置換アミノ、シアノ、および−S(O)
nR(ここでRは、アルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、そしてnは、0、1または2である)から選択される1個、2個、または3個の置換基によって必要に応じてさらに置換され得る。
【0046】
用語「アルキニル」とは、代表的に2個〜20個の炭素原子(より代表的には、2個〜10個の炭素原子、例えば、2個〜6個の炭素原子)を有し、そして1個〜6個の炭素−炭素三重結合(例えば、1個、2個、または3個の炭素−炭素三重結合)を有する、不飽和炭化水素のモノラジカルをいう。代表的なアルキニル基としては、エチニル(−C≡CH)、およびプロパルギル(またはプロピニル、−C≡CCH
3)などが挙げられる。アルキニルが窒素に結合する場合、その三重結合は、この窒素に対してαではあり得ない。
【0047】
用語「置換アルキニル」とは、1個、2個、3個、4個または5個の置換基(代表的に、1個、2個、または3個の置換基)を有する、上で定義されたようなアルキニル基をいい、この置換基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、アミノカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシ、ケト、チオカルボニル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ヘテロシクリルチオ、チオール、アルキルチオ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、アミノスルホニル、アミノカルボニルアミノ、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、−SO−アルキル、−SO−アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO
2−アルキル、SO
2−アリールおよび−SO
2−ヘテロアリールからなる群より選択される。その定義により他に制限されない限り、全ての置換基は、アルキル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アミノカルボニル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロゲン、CF
3、アミノ、置換アミノ、シアノ、および−S(O)
nR(ここでRは、アルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、そしてnは、0、1または2である)から選択される1個、2個、または3個の置換基によって必要に応じてさらに置換され得る。
【0048】
用語「アミノカルボニル」とは、基−C(O)NRRをいい、ここで各Rは独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリルであるか、または両方のR基が結合して、複素環式基(例えば、モルホリノ)を形成する。その定義により他に制限されない限り、全ての置換基は、アルキル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アミノカルボニル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロゲン、CF
3、アミノ、置換アミノ、シアノ、および−S(O)
nR(ここでRは、アルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、そしてnは、0、1または2である)から選択される1個、2個、または3個の置換基によって必要に応じてさらに置換され得る。
【0049】
用語「エステル」または「カルボキシエステル」とは、基−C(O)ORをいい、ここでRは、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロシクリルであり、これは必要に応じて、アルキル、アルコキシ、ハロゲン、CF
3、アミノ、置換アミノ、シアノ、または−S(O)
nR
a(ここでR
aは、アルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、そしてnは、0、1または2である)によりさらに置換され得る。
【0050】
用語「アシルアミノ」とは、基−NRC(O)Rをいい、ここで各Rは独立して、水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロシクリルである。全ての置換基はさらに、アルキル、アルコキシ、ハロゲン、CF
3、アミノ、置換アミノ、シアノ、または−S(O)
nR(ここでRは、アルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、そしてnは、0、1または2である)によって必要に応じて置換され得る。
【0051】
用語「アシルオキシ」とは、基−OC(O)−アルキル、−OC(O)−シクロアルキル、−OC(O)−アリール、−OC(O)−ヘテロアリール、および−OC(O)−ヘテロシクリルをいう。その定義により他に制限されない限り、全ての置換基は、アルキル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アミノカルボニル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロゲン、CF
3、アミノ、置換アミノ、シアノ、および−S(O)
nR(ここでRは、アルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、そしてnは、0、1または2である)から選択される1個、2個、または3個の置換基によって必要に応じてさらに置換され得る。
【0052】
用語「アリール」とは、1個の環(例えば、フェニル)または複数の環(例えば、ビフェニル)、または縮合した複数の環(例えば、ナフチル、フルオレニル、およびアントリル)を有する、6個〜20個の炭素原子の芳香族炭素環式基をいう。代表的なアリールとしては、フェニル、フルオレニル、ナフチル、およびアントリルなどが挙げられる。
【0053】
アリール置換基についての定義により他に制限されない限り、このようなアリール基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、アミノカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシ、ケト、チオカルボニル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ヘテロシクリルチオ、チオール、アルキルチオ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、アミノスルホニル、アミノカルボニルアミノ、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、−SO−アルキル、−SO−アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO
2−アルキル、SO
2−アリールおよび−SO
2−ヘテロアリールからなる群より選択される1個、2個、3個、4個または5個の置換基(代表的に、1個、2個、または3個の置換基)で必要に応じて置換され得る。その定義により他に制限されない限り、全ての置換基は、アルキル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アミノカルボニル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロゲン、CF
3、アミノ、置換アミノ、シアノ、および−S(O)
nR(ここでRは、アルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、そしてnは、0、1または2である)から選択される1個、2個、または3個の置換基によって必要に応じてさらに置換され得る。
【0054】
用語「アリールオキシ」とは、基アリール−O−をいい、ここでこのアリール基は、上で定義されたとおりであり、そして必要に応じて置換されたアリール基(これもまた上で定義された)を含む。用語「アリールチオ」とは、基R−S−をいい、ここでRは、アリールについて定義されたとおりである。
【0055】
用語「アミノ」とは、基−NH
2をいう。
【0056】
用語「置換アミノ」とは、基−NRRをいい、ここで各Rは独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルからなる群より選択され、ただし、両方のR基が水素にはならず、またはRは基−Y−Zであり、ここでYは、必要に応じて置換されたアルキレンであり、そしてZは、アルケニル、シクロアルケニル、もしくはアルキニルである。その定義により他に制限されない限り、全ての置換基は、アルキル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アミノカルボニル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロゲン、CF
3、アミノ、置換アミノ、シアノ、および−S(O)
nR(ここでRは、アルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、そしてnは、0、1または2である)から選択される1個、2個、または3個の置換基によって必要に応じてさらに置換され得る。
【0057】
用語「カルボキシアルキル」とは、基−C(O)O−アルキル、−C(O)O−シクロアルキルをいい、ここでアルキルおよびシクロアルキルは、本明細書中で定義されるとおりであり、そして必要に応じて、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、ハロゲン、CF
3、アミノ、置換アミノ、シアノ、または−S(O)
nR(ここでRは、アルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、そしてnは、0、1または2である)によりさらに置換され得る。
【0058】
用語「シクロアルキル」とは、単環式環または縮合した複数の環を有する、3個〜20個の炭素原子の環状アルキル基をいう。このようなシクロアルキル基としては、例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロオクチルなどのような単環構造、またはアダマンタニルおよびビシクロ[2.2.1]ヘプタンのような多環構造、またはアリール基が縮合している環状アルキル基(例えば、インダンなど)が挙げられる。
【0059】
用語「シクロアルケニル」とは、単環式環または縮合した複数の環を有し、そして少なくとも1つの二重結合、好ましくは1個〜2個の二重結合を有する、3個〜20個の炭素原子の環状アルキル基をいう。
【0060】
用語「置換シクロアルキル」および「置換シクロアルケニル」とはアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、アミノカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシ、ケト、チオカルボニル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ヘテロシクリルチオ、チオール、アルキルチオ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、アミノスルホニル、アミノカルボニルアミノ、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、−SO−アルキル、−SO−アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO
2−アルキル、SO
2−アリールおよび−SO
2−ヘテロアリールからなる群より選択される1個、2個、3個、4個または5個の置換基(代表的に、1個、2個、または3個の置換基)を有する、シクロアルキル基またはシクロアルケニル基をいう。用語「置換シクロアルキル」はまた、そのシクロアルキル基の環炭素原子のうちの1つ以上がカルボニル基である(すなわち、酸素原子がその環に対してオキソである)、シクロアルキル基を包含する。その定義により他に制限されない限り、全ての置換基は、アルキル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アミノカルボニル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロゲン、CF
3、アミノ、置換アミノ、シアノ、および−S(O)
nR(ここでRは、アルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、そしてnは、0、1または2である)から選択される1個、2個、または3個の置換基によって必要に応じてさらに置換され得る。
【0061】
用語「ハロゲン」または「ハロ」とは、フルオロ、ブロモ、クロロ、およびヨードをいう。
【0062】
用語「アシル」とは、基−C(O)Rを表わし、ここでRは、水素、必要に応じて置換されたアルキル、必要に応じて置換されたシクロアルキル、必要に応じて置換されたヘテロシクリル、必要に応じて置換されたアリール、および必要に応じて置換されたヘテロアリールである。
【0063】
用語「アルコキシカルボニルアミノ」とは、基−NHC(O)ORをいい、ここでRは、必要に応じて置換されたアルキルである。
【0064】
用語「アルキルアミン」とは、R−NH
2をいい、ここでRは、必要に応じて置換されたアルキルである。
【0065】
用語「ジアルキルアミン」とは、R−NHRをいい、ここで各Rは独立して、必要に応じて置換されたアルキルである。
【0066】
用語「トリアルキルアミン」とは、NR
3をいい、ここで各Rは独立して、必要に応じて置換されたアルキルである。
【0070】
用語「ヒドロキシル」または「ヒドロキシル」とは、基−OHをいう。
【0071】
用語「アリールチオ」とは、基−S−アリールをいう。
【0072】
用語「ヘテロシクリルチオ」とは、基−S−ヘテロシクリルをいう。
【0073】
用語「アルキルチオ」とは、基−S−アルキルをいう。
【0074】
用語「アミノスルホニル」とは、基−SO
2NRRをいい、ここで各Rは独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルからなる群より選択される。その定義により他に制限されない限り、全ての置換基は、必要に応じて、1個、2個、または3個の置換基によりさらに置換され得、この置換基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、アミノカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシ、ケト、チオカルボニル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ヘテロシクリルチオ、チオール、アルキルチオ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、アミノスルホニル、アミノカルボニルアミノ、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、−SO−アルキル、−SO−アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO
2−アルキル、SO
2−アリールおよび−SO
2−ヘテロアリールからなる群より選択される。
【0075】
用語「アミノカルボニルアミノ」とは、基−NR
cC(O)NRRをいい、ここでR
cは、水素またはアルキルであり、そして各Rは独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルからなる群より選択される。その定義により他に制限されない限り、全ての置換基は、必要に応じて、1個、2個、または3個の置換基によりさらに置換され得、この置換基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、アミノカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシ、ケト、チオカルボニル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ヘテロシクリルチオ、チオール、アルキルチオ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、アミノスルホニル、アミノカルボニルアミノ、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、−SO−アルキル、−SO−アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO
2−アルキル、−SO
2−アリールおよび−SO
2−ヘテロアリールからなる群より選択される。
【0076】
用語「ヘテロシクロオキシ」とは、基−O−ヘテロシクリルをいう。
【0077】
用語「アルコキシアミノ」とは、基−NHORをいい、ここでRは、必要に応じて置換されたアルキルである。
【0078】
用語「ヒドロキシアミノ」とは、基−NHOHをいう。
【0079】
用語「ヘテロアリール」とは、1個〜15個の炭素原子、ならびに酸素、窒素および硫黄から選択される1個〜4個のヘテロ原子を少なくとも1つの環内に含む、単環または多環を含む基をいう。用語「ヘテロアリール」は、用語「芳香族ヘテロアリール」および「部分飽和ヘテロアリール」に対して総称的である。用語「芳香族ヘテロアリール」とは、少なくとも1つの環が芳香族である、ヘテロアリールをいう。芳香族ヘテロアリールの例としては、ピロール、チオフェン、ピリジン、キノリン、プテリジンが挙げられる。用語「部分飽和ヘテロアリール」とは、基礎となる芳香族ヘテロアリールの芳香族環中の1つ以上の二重結合が飽和している、基礎となる芳香族ヘテロアリールと等価な構造を有するヘテロアリールをいう。部分飽和ヘテロアリールの例としては、ジヒドロピロール、ジヒドロピリジン、およびクロマンなどが挙げられる。
【0080】
ヘテロアリール置換基についての定義により他に制限されない限り、このようなヘテロアリール基は、1個〜5個の置換基(代表的に、1個、2個、または3個の置換基)で必要に応じて置換され得、この置換基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、アミノカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシ、ケト、チオカルボニル、カルボキシ、カルボキシアルキル(アルキルエステル)、アリールチオ、ヘテロアリール、ヘテロアリールチオ、ヘテロシクリルチオ、チオール、アルキルチオ、アリール、アリールオキシ、アラルキル、ヘテロアリール、アミノスルホニル、アミノカルボニルアミノ、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、−SO−アルキル、−SO−アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO
2−アルキル、SO
2−アリールおよび−SO
2−ヘテロアリールからなる群より選択される。その定義により他に制限されない限り、全ての置換基は、アルキル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アミノカルボニル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロゲン、CF
3、アミノ、置換アミノ、シアノ、および−S(O)
nR(ここでRは、アルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、そしてnは、0、1または2である)から選択される1個、2個、または3個の置換基によって必要に応じてさらに置換され得る。このようなヘテロアリール基は、単環(例えば、ピリジルもしくはフリル)または縮合した複数の環(例えば、インドリジニル、ベンゾチアゾール、もしくはベンゾチエニル)を有し得る。窒素複素環および窒素ヘテロアリールの例としては、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチルピリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、フェナントロリン、イソチアゾール、フェナジン、イソオキサゾール、フェノキサジン、フェノチアジン、イミダゾリジン、およびイミダゾリンなど、ならびにN−アルコキシ窒素含有ヘテロアリール化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
用語「ヘテロアリールオキシ」とは、基ヘテロアリール−O−をいう。
【0082】
用語「ヘテロシクリル」、「複素環」または「複素環式」とは、単環または縮合した複数の環を有し、1個〜40個の炭素原子、ならびに窒素、硫黄、リン、および/または酸素から選択される1個〜10個のヘテロ原子、好ましくは1個〜4個のヘテロ原子をその環内に有する、モノラジカル飽和基をいう。
【0083】
複素環式置換基についての定義により他に制限されない限り、このような複素環式基は、1個〜5個の置換基(いくつかの実施形態においては、1個、2個、または3個の置換基)で必要に応じて置換され得、この置換基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、アミノカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシ、ケト、チオカルボニル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ヘテロシクリルチオ、チオール、アルキルチオ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、アミノスルホニル、アミノカルボニルアミノ、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、−SO−アルキル、−SO−アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO
2−アルキル、SO
2−アリールおよび−SO
2−ヘテロアリールからなる群より選択される。その定義により他に制限されない限り、全ての置換基は、アルキル、カルボキシ、カルボキシアルキル、アミノカルボニル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロゲン、CF
3、アミノ、置換アミノ、シアノ、および−S(O)
nR(ここでRは、アルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、そしてnは、0、1または2である)から選択される1個、2個、または3個の置換基によって必要に応じてさらに置換され得る。好ましい複素環式としては、テトラヒドロフラニル、モルホリノ、およびピペリジニルなどが挙げられる。
【0084】
用語「チオール」とは、基−SHをいう。
【0085】
用語「置換アルキルチオ」とは、基−S−置換アルキルをいう。
【0086】
用語「ヘテロアリールチオール」とは、基−S−ヘテロアリールをいい、ここでこのヘテロアリール基は、上で定義されたとおりであり、必要に応じて置換されたヘテロアリール基(これもまた上で定義された)が挙げられる。
【0087】
用語「スルホキシド」とは、基−S(O)Rをいい、ここでRは、アルキル、アリール、またはヘテロアリールである。「置換スルホキシド」とは、基−S(O)Rをいい、ここでRは、本明細書中で定義されるような、置換アルキル、置換アリール、または置換ヘテロアリールである。
【0088】
用語「スルホン」とは、基−S(O)
2Rをいい、ここでRは、アルキル、アリール、またはヘテロアリールである。「置換スルホン」とは、基−S(O)
2Rをいい、ここでRは、本明細書中で定義されるような、置換アルキル、置換アリール、または置換ヘテロアリールである。
【0089】
用語「ケト」または「オキソ」とは、基−C(O)−をいう。
【0090】
用語「チオカルボニル」とは、基−C(S)−をいう。
【0091】
用語「カルボキシ」とは、基−C(O)−OHをいう。
【0092】
「任意の」または「必要に応じて」とは、その後に記載される事象または状況が起っても起こらなくてもよいことを意味し、そしてこの記載は、その事象または状況が起こる状況および起こらない状況を包含することを意味する。
【0093】
「置換された」基は、置換される基の1つの原子にモノラジカル置換基が結合している(例えば、分枝を形成している)実施形態を包含し、そしてまた、その置換基が、置換される基の2個の隣接原子に結合し、これによって、この置換される基に縮合環を形成する、ジラジカルの架橋基であり得る実施形態を包含する。
【0094】
所定の基(部分)が第二の基に結合しており、その結合部位が明白ではないように本明細書中で記載される場合、この所定の基は、この所定の基の任意の利用可能な部位において、この第二の基の任意の利用可能な部位に結合し得る。例えば、結合部位が明白ではない「低級アルキル置換フェニル」は、このフェニル基の任意の利用可能な部位に結合した、この低級アルキル基の任意の利用可能な部位を有し得る。この点に関して、「利用可能な部位」とは、ある基の水素が置換基で置き換えられ得るその基の部位である。
【0095】
所定の式の化合物(例えば、「式(I)の化合物」)は、本開示の化合物、ならびにこのような化合物の薬学的に受容可能な塩、薬学的に受容可能なエステル、水和物、多形、およびプロドラッグを包含することを意図される。さらに、本開示の化合物は、1つ以上の不斉中心を有し得、そしてラセミ混合物として、または個々のエナンチオマーもしくはジアステレオ異性体として、生成され得る。所定の式の任意の所定の化合物に存在する立体異性体の数は、存在する不斉中心の数に依存する(nを不斉中心の数とすると、2
n個の立体異性体が可能である)。個々の立体異性体は、中間体のラセミ混合物または非ラセミ混合物を、合成のいずれかの適切な段階で分割することによって、あるいは従来の手段により化合物を分割することによって、得られ得る。個々の立体異性体(個々のエナンチオマーおよびジアステレオ異性体が挙げられる)ならびに立体異性体のラセミ混合物および非ラセミ混合物は、本発明の範囲に包含され、これらの全ては、他に明示的に示されない限り、本明細書の構造によって記載されることが意図される。
【0096】
「異性体」とは、同じ分子式を有する異なる化合物である。異性体としては、立体異性体、エナンチオマー、およびジアステレオマーが挙げられる。
【0097】
「立体異性体」とは、原子が空間中で配置される方法のみが異なる異性体である。
【0098】
「エナンチオマー」とは、互いに重なり合わない鏡像である1対の立体異性体である。1対のエナンチオマーの1:1の混合物は、「ラセミ」混合物である。用語「(±)」が、適切である場合、ラセミ混合物を示すために使用される。
【0099】
「ジアステレオ異性体」とは、少なくとも2個の不斉原子を有するが、互いに鏡像ではない、立体異性体である。
【0100】
絶対立体化学は、カーン−インゴールド−プレローグのRS系に従って特定される。ある化合物が純粋なエナンチオマーである場合、各キラル炭素における立体化学は、RまたはSのいずれかによって特定され得る。絶対配置が未知である分割された化合物は、ナトリウムD線の波長の偏光面を回転させる方向(右旋性または左旋性)に依存して、(+)または(−)で表わされる。
【0101】
これらの化合物のうちのいくつかは、互変異性体として存在する。互変異性体は、互いに平衡状態にある。例えば、アミド含有化合物は、イミド酸互変異性体の平衡状態で存在し得る。いずれの互変異性体が示されるかにかかわらず、そして互変異性体間の平衡の性質とは無関係に、これらの化合物は、アミドとイミド酸との両方の互変異性体を包含することが、当業者により理解される。従って、アミド含有化合物は、それらのイミド酸互変異性体を包含すると理解される。同様に、イミド酸含有化合物は、それらのアミド互変異性体を包含すると理解される。アミド含有互変異性体およびイミド酸含有互変異性体の非限定的な例を、以下に示す:
【0102】
【化7】
用語「治療有効量」とは、以下に定義されるような処置を必要とする哺乳動物に投与される場合に、そのような処置を行うために充分な量をいう。治療有効量は、処置される被験体および疾患状態、被験体の体重および年齢、疾患状態の重篤度、ならびに投与様式などに依存して変化し、これは、当業者により容易に決定され得る。
【0103】
用語「多形」とは、結晶性化合物の異なる結晶構造をいう。異なる多形は、結晶充填の違い(充填多形)または同じ分子の異なる配座異性体間の充填の違い(配座多形)から生じ得る。
【0104】
用語「溶媒和物」とは、式(I)の化合物と溶媒との組み合わせにより形成される複合体をいう。
【0105】
用語「水和物」とは、式(I)の化合物と水との組み合わせにより形成される複合体をいう。
【0106】
用語「プロドラッグ」とは、インビボで、活性薬物、その薬学的に受容可能な塩、またはその生物活性代謝産物に転換され得、そして/あるいは分子の残りの部分から分裂して活性薬物、その薬学的に受容可能な塩、またはその生物活性代謝産物を提供し得る、化学基を含む、式(I)の化合物をいう。
【0107】
本明細書中に与えられる任意の式または構造(式(I)の化合物を含む)はまた、この化合物の非標識形態および同位体標識された形態を表わすことを意図される。同位体標識された化合物は、1つ以上の原子が選択された原子量または質量数を有する原子により置き換えられていることを除いて、本明細書中に与えられる式により表される構造を有する。本発明の化合物に組み込まれ得る同位体の例としては、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素、および塩素の同位体が挙げられ、例えば、
2H(ジュウテリウム、D)、
3H(トリチウム)、
11C、
13C、
14C、
15N、
18F、
31P、
32P、
35S、
36Cl、および
125Iであるが、これらに限定されない。本発明の種々の同位体標識された化合物は、例えば、
3H、
13C、および
14Cなどの放射性同位体が組み込まれた化合物である。このような同位体標識された化合物は、代謝研究、反応動力学研究、検出または画像化の技術(例えば、薬物または物質の組織分布アッセイが挙げられる、陽電子断層撮影法(PET)またはシングルフォトンエミッションCT(SPECT))、あるいは患者の放射性処置において、有用であり得る。
【0108】
ジュウテリウムで標識または置換された、本発明の治療用化合物は、分布、代謝、および排出(ADME)に関連する、改善されたDMPK(薬物の代謝および薬物速度論)特性を有し得る。ジュウテリウムなどのより重い異性体での置換は、より大きい代謝安定性からもたらされる特定の治療的利点(例えば、増大したインビボ半減期、または減少した投薬量要求)を与え得る。
18Fで標識された化合物は、PETまたはSPECT研究のために有用であり得る。同位体標識された本発明の化合物およびそのプロドラッグは一般に、容易入手可能な同位体標識された試薬を、同位体で標識されていない試薬の代わりに用いることにより、以下に記載されるスキームまたは実施例および調製に開示される手順を行うことによって、調製され得る。さらに、より重い異性体(特に、ジュウテリウム(すなわち、
2HまたはD))での置換は、より大きい代謝安定性からもたらされる特定の治療的利点(例えば、増大したインビボ半減期、または減少した投薬量要求、または治療指数の改善)を与え得る。この文脈において、ジュウテリウムは、式(I)の化合物における置換基とみなされることが理解される。
【0109】
このようなより重い同位体、特にジュウテリウムの濃縮は、同位体富化因子(isotopic enrichment factor)により規定され得る。本発明の化合物において、特定の同位体であると具体的に指定されない任意の原子は、その原子の任意の安定な同位体を表わすことを意味する。他に記載されない限り、ある位置が「H」または「水素」と具体的に指定される場合、この位置は、水素をその自然界で豊富な同位体組成で有すると理解される。従って、本発明の化合物において、ジュウテリウム(D)であると具体的に指定される任意の原子は、ジュウテリウムを表わすことを意味する。
【0110】
用語「処置」または「処置する」とは、以下のものが挙げられる目的のための、本発明の化合物の、疾患を有する哺乳動物または疾患を罹患しやすい哺乳動物への任意の投与を意味する:
(i)疾患を予防すること、すなわち、その疾患の臨床症状が発症しないようにすること;
(ii)疾患を阻害すること、すなわち、臨床症状の発症を止めること;および/または
(iii)疾患を軽減すること、すなわち、臨床症状の後退を引き起こすこと。
【0111】
多くの場合、本開示の化合物は、アミノ基および/またはカルボキシル基、あるいはこれらに類似の基の存在によって、酸塩および/または塩基塩を形成し得る。
【0112】
用語「ドパミン産生因子」とは、本明細書中で使用される場合、ニコチン、アルコール、アンフェタミン(amphetamnine)、嗜癖性の他の薬物、および食物(特に、砂糖入りの食物)を包含する。従って、ドパミン産生因子に関連する疾患としては、アルコール、コカイン、マリファナ、ニコチン、食物に対する嗜癖、およびその続発症(例えば、肥満症)が挙げられる。
【0113】
用語所定の化合物の「薬学的に受容可能な塩」とは、所定の化合物の生物学的有効性および特性を保持し、そして生物学的にもその他の点でも望ましくないことがない、塩をいう。薬学的に受容可能な塩基付加塩は、無機塩基および有機塩基から調製され得る。無機塩基から誘導される塩としては、例のみとして、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、およびマグネシウム塩が挙げられる。有機塩基から誘導される塩としては、第一級アミン、第二級アミンおよび第三級アミン(例えば、アルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、置換アルキルアミン、ジ(置換アルキル)アミン、トリ(置換アルキル)アミン、アルケニルアミン、ジアルケニルアミン、トリアルケニルアミン、置換アルケニルアミン、ジ(置換アルケニル)アミン、トリ(置換アルケニル)アミン、シクロアルキルアミン、ジ(シクロアルキル)アミン、トリ(シクロアルキル)アミン、置換シクロアルキルアミン、ジ置換シクロアルキルアミン、トリ置換シクロアルキルアミン、シクロアルケニルアミン、ジ(シクロアルケニル)アミン、トリ(シクロアルケニル)アミン、置換シクロアルケニルアミン、ジ置換シクロアルケニルアミン、トリ置換シクロアルケニルアミン、アリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ヘテロアリールアミン、ジヘテロアリールアミン、トリヘテロアリールアミン、複素環式アミン、ジ複素環式アミン、トリ複素環式アミン、混合ジアミンおよびトリアミン(ここでこのアミンの置換基のうちの少なくとも2つは異なり、そしてアルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、複素環式などからなる群より選択される))の塩が挙げられるが、これらに限定されない。2個または3個の置換基が、アミノ窒素と一緒になって、複素環式基またはヘテロアリール基を形成しているアミンもまた、含まれる。
【0114】
適切なアミンの具体例としては、例のみとして、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリ(イソ−プロピル)アミン、トリ(n−プロピル)アミン、エタノールアミン、2−ジメチルアミノエタノール、トロメタミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、クロリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、N−アルキルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、モルホリン、およびN−エチルピペリジンなどが挙げられる。
【0115】
薬学的に受容可能な酸付加塩は、無機酸および有機酸から調製され得る。無機酸から誘導される塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、およびリン酸などが挙げられる。有機酸から誘導される塩としては、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエン−スルホン酸、およびサリチル酸などが挙げられる。
【0116】
本明細書中で使用される場合、「薬学的に受容可能なキャリア」または「薬学的に受容可能な賦形剤」は、任意の全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを包含する。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体および剤の使用は、当該分野において周知である。いずれかの従来の媒体または剤が活性成分と非適合性である場合を除いて、治療用組成物におけるその使用が想定される。補助的な活性成分もまた、これらの組成物に組み込まれ得る。
【0117】
所定の基(部分)が第二の基に結合しており、その結合部位が明白ではないように本明細書中で記載される場合、この所定の基は、この所定の基の任意の利用可能な部位において、この第二の基の任意の利用可能な部位に結合し得る。例えば、結合部位が明白ではない「低級アルキル置換フェニル」は、このフェニル基の任意の利用可能な部位に結合した、この低級アルキル基の任意の利用可能な部位を有し得る。この点に関して、「利用可能な部位」とは、ある基の水素が置換基で置き換えられ得るその基の部位である。
【0118】
上で定義される全ての置換される基において、さらなる置換基での置換基を定義することによりもたらされるポリマー(例えば、置換アリール基を置換基として有する置換アリールであって、この置換基自体が置換アリール基で置換されているものなど)は、本明細書に包含されることを意図されない。置換基が同一であっても異なっていても、無限数の置換基もまた、包含されない。このような場合、このような置換基の最大数は、3である。従って、上記定義の各々は、例えば、置換アリール基が−置換アリール−(置換アリール)−置換アリールに限定されるという限定により、制限される。
【0119】
(式(I)の化合物)
命名法:化合物の命名および番号付けを、代表的な化合物(2):
【0120】
【化8】
を用いて説明する。この化合物はすなわち、2,6−ジクロロ−N−[4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−4−イル)−ベンジル]−ベンズアミドである。
【0121】
従って、特定の局面において、式(I):
【0122】
【化9】
の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、エステル、もしくは互変異性体が提供され、式(I)において:
R
1は、水素、−CH
2OH、−CH
2OP(O)(OR
20)(OR
21)、または必要に応じて置換されたC
1〜6アルキルであり;
R
2は、水素、−CN、ハロ、必要に応じて置換された低級C
1〜6アルキル、またはシクロアルキルであり;
R
3、R
4、R
5、R
6、R
9、R
10、R
11、R
12およびR
13の各々は独立して、水素、ヒドロキシル、アミノカルボニル、アシル、アシルアミノ、−O−(C
1〜C
6アルキル)−O−(C
1〜C
6アルキル)、シアノ、ハロ、−SO
2NR
24R
25、−NR
24R
25、必要に応じて置換されたアルキル、必要に応じて置換されたアルキレン、必要に応じて置換されたアルキニル、必要に応じて置換されたアルコキシ、必要に応じて置換されたシクロアルキル、必要に応じて置換されたアリール、必要に応じて置換されたアラルキル、必要に応じて置換されたヘテロアリール、必要に応じて置換されたヘテロアラルキル、または必要に応じて置換されたヘテロシクリルであり;
ここでこの必要に応じて置換されたアルキル、アルキレン、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、またはヘテロシクリルは、ハロ、−NO
2、フェニル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、C
1〜6アルキル、シクロアルキル、−N(R
24)(R
25)、−C(O)−R
24、−C(O)−OR
24、−C(O)−N(R
24)(R
25)、−CNおよび−O−R
24からなる群より独立して選択される1個、2個または3個の置換基で、必要に応じて置換されており;
R
7は、水素または必要に応じて置換されたC
1〜6アルキルであり;
R
20およびR
21の各々は独立して、Na
+、Li
+、K
+、水素、もしくはC
1〜6アルキルであるか;またはR
20とR
21とは一緒になって、1つの二価の陽イオンZn
2+、Ca
2+、もしくはMg
2+を表し得;
R
22およびR
23の各々は独立して、必要に応じて置換されたアルキル、必要に応じて置換されたアルコキシ、必要に応じて置換されたシクロアルキル、必要に応じて置換されたアリール、または−NR
24R
25であり;そして
R
24およびR
25の各々は独立して、水素またはC
1〜6アルキルであるか、またはこれらが結合している窒素と一緒になる場合、複素環を形成する。
【0123】
特定の実施形態において、R
1は水素である。特定の実施形態において、R
1はC
1〜6アルキルである。特定の実施形態において、R
1はメチルである。特定の実施形態において、R
1は−CH
2OP(O)(OR
20)(OR
21)であり;そしてR
20およびR
21の各々は独立して、Na
+、Li
+、K
+、または水素である。特定の実施形態において、R
1、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13のうちの少なくとも1つは水素ではない。他の実施形態において、R
1、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13のうちの少なくとも2つは水素ではない。
【0124】
特定の実施形態において、R
2は水素である。特定の実施形態において、R
2はC
1〜6アルキルである。特定の実施形態において、R
2はメチルである。特定の実施形態において、R
2は、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、t−ブチル、およびn−ヘキシルからなる群より選択される。特定の実施形態において、R
2はハロである。特定の実施形態において、R
2はフルオロである。特定の実施形態において、R
2はクロロである。特定の実施形態において、R
2はブロモである。特定の実施形態において、R
2はヨードである。
【0125】
特定の実施形態において、R
3、R
4、R
5、R
6、R
9、R
10、R
11、R
12およびR
13の各々は独立して、水素、ヒドロキシル、−OP(O)(OR
20)(OR
21)、−CH
2OH、−CH
2OP(O)(OR
20)(OR
21)、必要に応じて置換されたC
1〜6アルキル、必要に応じて置換されたC
3〜8シクロアルキル、必要に応じて置換されたC
1〜6アルコキシ、−O−(C
1〜C
6アルキル)−O−(C
1〜C
6アルキル)、−C(O)NH
2、シアノ、またはハロである。特定の実施形態において、R
3、R
4、R
5、およびR
6の各々は独立して、水素、C
1〜6アルキル、またはハロである。特定の実施形態において、R
3、R
4、R
5、またはR
6のうちの1つは、C
1〜6アルキルまたはハロである。特定の実施形態において、R
3、R
4、R
5、またはR
6のうちの1つは、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、t−ブチル、およびn−ヘキシルからなる群より選択される。特定の実施形態において、R
3、R
4、R
5、またはR
6のうちの1つはメチルである。特定の実施形態において、R
3、R
4、R
5、またはR
6のうちの1つはフルオロである。特定の実施形態において、R
3、R
4、R
5、またはR
6のうちの1つはクロロである。特定の実施形態において、R
3、R
4、R
5、またはR
6のうちの1つはフルオロである。特定の実施形態において、R
3、R
4、R
5、またはR
6のうちの1つはヨードである。
【0126】
特定の実施形態において、R
7は水素である。特定の実施形態において、R
7はC
1〜6アルキルである。特定の実施形態において、R
7は、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、t−ブチル、およびn−ヘキシルからなる群より選択される。特定の実施形態において、R
7はメチルである。
【0127】
特定の実施形態において、R
9およびR
13のうちの少なくとも1つは水素ではない。特定の実施形態において、R
9およびR
13のうちの少なくとも1つは、ハロまたはC
1〜6アルキルである。特定の実施形態において、R
9およびR
13のうちの少なくとも1つは、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、t−ブチル、およびn−ヘキシルからなる群より選択される。特定の実施形態において、R
9およびR
13のうちの少なくとも1つは独立して、クロロ、フルオロ、またはメチルである。特定の実施形態において、R
9およびR
13のうちの少なくとも1つはブロモである。特定の実施形態において、R
9およびR
13のうちの少なくとも1つはヨードである。特定の実施形態において、R
9およびR
13は独立して、ハロまたはC
1〜6アルキルである。特定の実施形態において、R
9およびR
13は独立して、クロロ、フルオロ、またはメチルである。特定の実施形態において、R
9およびR
13はクロロである。特定の実施形態において、R
9およびR
13はメチルである。
【0128】
特定の実施形態において、R
10およびR
12の各々は独立して、水素、ハロ、またはC
1〜6アルキルである。特定の実施形態において、R
10およびR
12の各々は独立して、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、t−ブチル、およびn−ヘキシルである。特定の実施形態において、R
10およびR
12の各々は独立して、水素、クロロ、フルオロ、またはメチルである。特定の実施形態において、R
10およびR
12の各々は独立して、ブロモである。特定の実施形態において、R
10およびR
12の各々は独立して、ヨードである。特定の実施形態において、R
10およびR
12の各々は独立して、フルオロである。特定の実施形態において、R
10およびR
12の各々は独立して、クロロである。特定の実施形態において、R
10およびR
12は水素である。
【0129】
特定の実施形態において、R
11は水素である。特定の実施形態において、R
11は−O−(C
1〜C
6アルキル)−O−(C
1〜C
6アルキル)である。特定の実施形態において、R
11は−OCH
2CH
2OCH
3である。特定の実施形態において、R
11は独立して、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、t−ブチル、およびn−ヘキシルである。特定の実施形態において、R
11はハロである。特定の実施形態において、R
11はフルオロである。特定の実施形態において、R
11はクロロである。特定の実施形態において、R
11はブロモである。特定の実施形態において、R
11はヨードである。
【0133】
【化11】
からなる群より選択される。
【0134】
特定の実施形態において、R
1は、水素、メチル、または−CH
2OP(O)(OR
20)(OR
21)であり;R
2は、水素、メチル、またはフルオロであり;R
3およびR
4の各々は独立して、水素またはメチルであり;R
5およびR
6の各々は独立して、水素またはフルオロであり;R
7は水素であり;R
9は、水素、クロロ、フルオロ、またはメチルであり;R
10は、水素またはフルオロであり;R
11は、水素または−OCH
2CH
2OCH
3であり;R
12は、水素またはフルオロであり;R
13は、水素、クロロ、フルオロ、またはメチルであり;そしてR
20およびR
21の各々は独立して、Na
+、Li
+、K
+、または水素である。
【0135】
特定の実施形態において、この構造は:
【0137】
であるか;またはその薬学的に受容可能な塩、エステル、単一の立体異性体、立体異性体の混合物、もしくは互変異性体である。
【0138】
特定の実施形態において、この構造は:
【0140】
であるか;またはその薬学的に受容可能な塩、エステル、単一の立体異性体、立体異性体の混合物、もしくは互変異性体である。上記化合物は、遊離アミン(ピリジン)化合物を代謝産物として生成するので、プロドラッグの一例である。当業者は、本明細書中の開示および当該分野に基づいて、本発明の化合物の他のプロドラッグを合成することができる。
【0141】
特定の実施形態において、この化合物は:
2,6−ジクロロ−4−(2−メトキシエトキシ)−N−(4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−4−イル)ベンジル)ベンズアミド (1);
2,6−ジクロロ−N−[4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−4−イル)−ベンジル]−ベンズアミド (2);
2−クロロ−3−フルオロ−N−(4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−4−イル)ベンジル)ベンズアミド (3);
2−クロロ−6−メチル−N−(4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−4−イル)ベンジル)ベンズアミド (4);
2,6−ジメチル−N−(4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−4−イル)ベンジル)ベンズアミド (5);
2,6−ジクロロ−N−[4−(6−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−4−イル)−ベンジル]−ベンズアミド (6);
2−クロロ−3,6−ジフルオロ−N−(4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−4−イル)ベンジル)ベンズアミド (7);
2,6−ジクロロ−N−(3−メチル−4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−4−イル)ベンジル)ベンズアミド (8);
2,6−ジクロロ−N−(4−(1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−4−イル)ベンジル)ベンズアミド (9);
2,6−ジフルオロ−N−(4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−4−イル)ベンジル)ベンズアミド (10);
2−クロロ−6−フルオロ−N−(4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−4−イル)ベンジル)ベンズアミド (11);
2,6−ジクロロ−N−(2−フルオロ−4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−4−イル)ベンジル)ベンズアミド (12);
2,6−ジクロロ−N−(4−(5−フルオロ−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−4−イル)ベンジル)ベンズアミド (13);および
リン酸モノ−(4−{4−[(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−メチル]−フェニル}−2−オキソ−2H−ピリジン−1−イルメチル)エステル (14);からなる群より選択されるか、またはその薬学的に受容可能な塩、エステル、単一の立体異性体、立体異性体の混合物、もしくは互変異性体である。
【0142】
(式(I)の化合物の合成)
化合物の調製:これらの化合物は、容易に入手可能な出発物質から、例えば、以下の一般方法および手順を使用して、調製され得る。代表的または好ましいプロセス条件(すなわち、反応温度、時間、反応物質のモル比、溶媒、圧力など)が与えられる場合、他に記載されない限り、他のプロセス条件もまた使用され得ることが、理解される。最適な反応条件は、使用される特定の反応物質または溶媒とともに変わり得るが、このような条件は、当業者によって、慣用的な最適化手順により決定され得る。
【0143】
さらに、当業者に明らかであるように、従来の保護基が、特定の官能基が望ましくない反応を起こすことを防ぐために必要となり得る。用語「保護基」または「PG」とは、本明細書中で使用される場合、特定の官能基部分(例えば、O、S、またはN)が一時的に遮られて、反応が、多官能性化合物における別の反応性部位において選択的に行われ得るようにすることを意味する。「保護基」または「PG」は、本明細書中で使用される場合、当該分野において周知であり、そしてProtective Groups in Organic Synthesis,第4版,Greene,T.W.およびWuts,P.G.,編者John Wiley & Sons,New York:2007(その全内容は、本明細書中に参考として援用される)、およびそこに引用される参考文献に詳細に記載されるものが挙げられる。
【0144】
用語「保護基」または「PG」は、「適切なアミノ保護基」を包含し、これは、当該分野において周知であり、そしてGreeneらに詳細に記載されるものを包含する。適切なアミノ保護基の非限定的な例としては、カルバミン酸メチル、カルバミン酸エチル、カルバミン酸9−フルオレニルメチル(Fmoc)、カルバミン酸t−ブチル(BOC)、およびカルバミン酸ベンジル(Cbz)が挙げられる。
【0145】
用語「保護基」または「PG」は、「適切なカルボン酸保護基」および「適切なリン酸保護基」をさらに包含し、これは、当該分野において周知であり、そしてGreeneらに詳細に記載されるものを包含する。適切なカルボン酸保護基および適切なリン酸保護基の非限定的な例としてはさらに、シリル保護基、アルキル保護基、アルケニル保護基、アリール保護基、およびアリールアルキル保護基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0146】
用語「保護基」または「PG」は、「適切なヒドロキシル保護基」をさらに包含し、これは、当該分野において周知であり、そしてGreeneらに詳細に記載されるものを包含する。適切なヒドロキシル保護基の非限定的な例としては、メチル、t−ブチル、メトキシメチル(MOM)、トリメチルシリル(TMS)、トリエチルシリル(TES)、およびトリイソプロピルシリル(TIPS)などが挙げられる。
【0147】
用語「脱離基」または「LG」は、本明細書中で使用される場合、化合物から容易に置き換えられる化合物の不安定な置換基であることが、当業者に周知である。脱離基は、本明細書中で使用される場合、March’s Advanced Organic Chemistry(John Wiley,and Sons,第5版,2001)に記載されており、そしてハロ;OR
G;SR
G;O(CO)R
G;S(CO)R
G;O(SO
2)R
G;OP(O)OR
GOR
H;またはN
2+からなる基を包含し;ここで各R
GおよびR
Hは独立して、水素、置換もしくは非置換の、分枝鎖もしくは非分枝鎖の、環状もしくは非環式の、C
1〜10アルキル;置換もしくは非置換の、分枝鎖もしくは非分枝鎖の、環状もしくは非環式の、C
1〜10ハロアルキル;置換もしくは非置換のアリール;または置換もしくは非置換のハロアリールである。特定の実施形態において、各LGは独立して、クロロ;ブロモ;ヨード;
【0148】
【化14】
であり;ここで各X
2は独立して、OまたはSである。
【0149】
用語「ペプチドカップリング剤」とは、ペプチドカップリングの方法において使用される試薬をいい、これらは、当業者に周知であり、そしてM.Bodanskyら,「The Practice of Peptide Synthesis,Reactivity and Structure,Concepts in Organic Chemistry」,第21巻,改定第2版,Springer−Verlag,New York,N.Y.(1994)(その全内容は、本明細書中に参考として援用される)に記載されている。この方法において有用である「ペプチドカップリング剤」としては、本明細書中で使用される場合、Bodanskyらに開示されるものが挙げられるが、これらに限定されず、例えば、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)、O−ベンゾトリアゾール−N,N,N’,N’−テトラメチル−ウロニウム−ヘキサフルオロ−ホスフェート(HBTU)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、DCC/1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、DCC/N−ヒドロキシスクシンイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩EDC−HCl、1−イソブトキシカルボニル−2−イソブトキシ−1,2−ジヒドロキノン(IIDQ)、カルボニルジイミダゾール(carbonyldiimidizole)、N−エチル−5−フェニルイソオキサゾリウム−3’−スルホネート(Woodward試薬K)、ベンゾトリアゾリル−N−ヒドロキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)、および(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)などである。
【0150】
用語「Suzuki反応」は、本明細書中で使用される場合、当業者に周知であり、そしてN.MiyauraおよびA.Suzuki;Chem.Rev.;1995,95,2457−2483;ならびにA.Suzuki,J.Organomet.Chem.,1999,576,147−168により記載されるような、1つの反応物質がボロン酸またはボロン酸エステル部分である、2つの反応物質のCCカップリングをいう。代表的に、Suzuki反応は、パラジウム触媒(例えば、酢酸パラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、活性炭担持パラジウムまたはジクロロ[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II))の存在下、非プロトン性極性溶媒(例えば、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメトキシエタン(dimethoxyethone)もしくはテトラヒドロフラン)中またはプロトン性極性溶媒(例えば、n−プロパノール、イソ−プロパノール)中、あるいはこれらの溶媒と水との混合物中で行われ得る。使用される溶媒の体積は、使用されるボロン酸またはボロン酸エステルの当量の、約3倍〜30倍である。有利なことに、パラジウム触媒は、トリフェニルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、トリ−m−トリルホスフィンまたはトリ−p−トリルホスフィンから選択される配位子を含み得る。特に好ましい触媒は、酢酸パラジウム(II)および炭素担持パラジウムである。これらは、特に速い反応速度を得ることを可能にする。酢酸パラジウム(II)は、有利には、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニル型の配位子と組み合わせて使用され得る(J.P.Wolfeら,J.Am.Chem.Soc.,1999,121,9550−9561)。この反応は一般に、無機塩基(例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウム)の存在下、または第三級アミン(例えば、トリエチルアミンもしくはジイソプロピルエチルアミン)の存在下で行われる。特定の実施形態において、この無機塩基は、炭酸カリウムまたは水酸化カリウムであり得る。Suzuki反応は、好ましくは、不活性雰囲気下(例えば、アルゴン雰囲気下または窒素雰囲気下)で行われる。その反応混合物は、有利には、60℃〜110℃の範囲の温度に、2分間〜24時間加熱される。例えばHClの存在下での、酸媒体でのクエンチが、しばしば行われる。当業者は、特に文献に記載されるSuzuki反応の変形物を応用することによって、これらの条件を改変することができる。
【0151】
用語「環状ボロン酸エステル部分」とは、Suzuki反応において使用される、ホウ素含有反応物質をいい、例えば、4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロン酸エステル、4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロン酸エステル、ピナコラトジオキサボロン酸エステル、カテコールジオキサボロン酸エステル、ネオペンチルグリコラトジオキサボロン酸エステル、ヘキシレングリコラトジオキサボロン酸エステル、[(+)−ピノンジオラト]ジオキサボロン酸エステル([(+)−pinonediolato] dioxaboronic ester)、[(−)−ピノンジオラト]ジオキサボロン酸エステル、ジエチル−d−酒石酸グリコラトジオキサボロン酸エステル、ジエチル−l−酒石酸グリコラトジオキサボロン酸エステル、ジイソプロピル−d−酒石酸グリコラトジオキサボロン酸エステル、ジイソプロピル−l−酒石酸−グリコラトジオキサボロン酸エステル、N,N,N’,N’−テトラメチル−d−酒石酸アミド−グリコラトジオキサボロン酸エステル、またはN,N,N’,N’−テトラメチル−l−酒石酸アミドグリコラトジオキサボロン酸エステルである。
【0152】
さらに、これらの化合物は、1つ以上のキラル中心を含み得る。従って、所望であれば、このような化合物は、純粋な立体異性体として(すなわち、個々のエナンチオマーもしくはジアステレオマーとして)、または立体異性体が富化された混合物として、調製または単離され得る。全てのこのような立体異性体(および富化された混合物)が、他に示されない限り、範囲内に含まれる。純粋な立体異性体(または富化された混合物)は、例えば、当該分野において周知である光学的に活性な出発物質または立体選択的試薬を使用して、調製され得る。あるいは、このような化合物のラセミ混合物は、例えば、キラルカラムクロマトグラフィー、およびキラル分割剤などを使用して、分離され得る。
【0153】
以下の反応のための出発物質は、一般に公知である化合物であるか、または公知の手順もしくはその明らかな改変によって調製され得る。例えば、これらの出発物質の多くは、化学物質供給者(例えば、Aldrich Chemical Co.(Milwaukee,Wisconsin,USA)、Bachem(Torrance,California,USA)、Emka−ChemceまたはSigma(St.Louis,Missouri,USA))から入手可能である。他のものは、標準的な参考書(例えば、Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis,第1巻〜第15巻(John Wiley,and Sons,1991)、Rodd’s Chemistry of Carbon Compounds,第1巻〜第5巻,および補遺(Elsevier Science Publishers,1989)、Organic Reactions,第1巻〜第40巻(John Wiley,and Sons,1991)、March’s Advanced Organic Chemistry,(John Wiley,and Sons,第5版,2001)、ならびにLarock’s Comprehensive Organic Transformations(VCH Publishers Inc.,1989))に記載される手順またはその明らかな改変によって、調製され得る。
【0154】
用語「溶媒」、「不活性有機溶媒」または「不活性溶媒」は、関連して記載される反応条件下で不活性である溶媒を意味する[例えば、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(「THF」)、ジメチルホルムアミド(「DMF」)、クロロホルム、塩化メチレン(すなわちジクロロメタン(dichloromethone))、ジエチルエーテル、メタノール、およびピリジンなどが挙げられる]。そうではないことが特定されない限り、反応において使用される溶媒は、不活性有機溶媒である。
【0155】
用語「q.s.」とは、記載される機能を達成するため(例えば、溶液を所望の体積(すなわち、100%)にするため)に充分な量を添加することを意味する。
【0156】
(合成ストラテジー)
式(I)の化合物、ここで置換基R
1〜R
27、X
1、Y
1、Z
1およびZ
2は、本明細書中で定義されるとおりである。LGは、脱離基(例えば、ハロ、ヒドロキシル、アルコキシ、OSO
2CF
3、N
2+など)であり;PGは、保護基(例えば、t−ブチル、カルバミン酸t−ブチル(BOC)など)であり;そしてZ
2は、(OH)
2、(OMe)
2、F
3−、または(OR
H)(OR
J)であり、ここでOR
HおよびOR
Jは、ホウ素と一緒になって、本明細書中に記載されるような環状アリールボロン酸エステル部分または環状アルキルボロン酸エステル部分(例えば、4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロン酸エステル、カテコールジオキサボロン酸エステルなど)を形成し得;ここでR
17は、1個〜6個の炭素原子の、必要に応じて置換されたアルキレン部分である。
【0157】
1つの実施形態において、式(I)の化合物は、スキームIに示される合成順序に従って調製され得る。
【0160】
式(I)の化合物は、スキームIに示される合成順序に従って、反応物質(a)および(b)から調製され得る。これらの反応物質は、市販されているか、または当該分野において周知である手段により調製される。一般に、反応物質(a)と、少なくとも1モル当量、好ましくはわずかに過剰(例えば、1.2〜1.5モル当量)の(b)が、スキームIに示されるように、標準的な反応条件下、不活性溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド(DMF))中、約25℃の温度で、この反応が完了するまで(一般に、約16時間)化合させられる。標準的な反応条件は、モル過剰の適切な塩基(例えば、水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウム、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン(NMM)またはピリジン)の使用を包含し得るか、あるいはLGがヒドロキシルであるいくつかの場合において、ペプチドカップリング剤(例えば、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU))が使用され得る。この反応が実質的に完了したら、その生成物は、必要であれば、標準的な反応条件下(例えば、本明細書中に記載されるような、THF、またはCH
2Cl
2など、モル過剰の酸(例えば、酢酸、ギ酸、またはトリフルオロ酢酸など))で脱保護順序に供されて、従来の手段により、単離されたものを与える。
【0161】
式(I)の化合物を調製するための代替の方法が、以下のスキームII〜Vの合成順序に示されている。例えば、さらなる実施形態において、式(I)の化合物は、スキームIIの合成順序に示されるように調製され得る。
【0164】
式(I)の化合物は、スキームIIに示される合成順序に従って、適切なアミノメチルアリールボロン酸誘導体(c)および少なくとも1当量、好ましくはわずかに過剰(例えば、1.2〜1.5モル当量)の反応物質(b)から、標準的な反応条件下で調製され得る。標準的な反応条件は、適切な塩基の使用を包含し得るか、またはLGがヒドロキシルであるいくつかの場合において、少なくとも1当量、好ましくはわずかにモル過剰(例えば、1.2〜1.5モル当量)の、ペプチドカップリング試薬が使用され得る。次いで、得られるアリールボロン酸誘導体(d)と置換ピリジン(e)とが、Suzuki反応条件(例えば、本明細書中に記載されるような、モル当量の(d)および(e)、乾燥DMF中、アルゴン雰囲気下高温で、約5〜10モル%のパラジウム触媒およびモル過剰の無機塩基(例えば、炭酸カリウム)を用いる)下でカップリングされ、そして必要であればその後、標準的な反応条件下(例えば、本明細書中に記載されるような、THF、またはCH
2Cl
2など、モル過剰の酸(例えば、酢酸、ギ酸、またはトリフルオロ酢酸など))で脱保護順序が行われて、ピリジン−2(1H)−オン(g)を与える。
【0165】
別の実施形態において、式(I)の化合物は、スキームIIIの合成順序に示されるように調製され得る。
【0168】
式(I)の化合物は、スキームIIIに示される合成順序に従って、アリールボロン酸誘導体(h)と置換ピリジン(e)との、標準的なSuzuki反応条件下(例えば、本明細書中に記載されるような、モル当量の(h)および(e)、乾燥DMF中、アルゴン雰囲気下高温で、約5〜10モル%のパラジウム触媒およびモル過剰の無機塩基(例えば、炭酸カリウム)を用いる)でのカップリングにより調製されて、保護アミン(i)を与え得る。(i)の、標準的な条件下(例えば、本明細書中に記載されるような、THF、またはCH
2Cl
2など、モル過剰の酸(例えば、酢酸、ギ酸、またはトリフルオロ酢酸など))での脱保護は、第一級アミン(j)を与え、これは、少なくとも1モル当量、好ましくはわずかに過剰(例えば、1.2〜1.5モル当量)のアシル誘導体(b)と標準的な反応条件下で化合させられて、ピリジン−2(1H)−オン(g)を与える。標準的な反応条件は、本明細書中に記載されるような、適切な塩基、またはLGがヒドロキシルであるいくつかの場合において、少なくとも1当量、好ましくはわずかにモル過剰(例えば、1.2〜1.5モル当量)のペプチドカップリング試薬の使用を包含し得る。
【0169】
なお別の実施形態において、式(I)の化合物は、スキームIVの合成順序に示されるように調製され得る。
【0172】
式(I)の化合物は、スキームIVに示される合成順序に従って、アミン(k)を少なくとも1当量、好ましくはわずかに過剰(例えば、1.2〜1.5モル当量)のアシル誘導体(b)と標準的な反応条件下で反応させることにより調製されて、アミド(l)を与え得る。標準的な反応条件は、本明細書中に記載されるような、適切な塩基、またはLGがヒドロキシルであるいくつかの場合において、少なくとも1当量、好ましくはわずかにモル過剰(例えば、1.2〜1.5モル当量)のペプチドカップリング試薬の使用を包含し得る。次いで、アミド(l)は、ピリジルボロン酸誘導体(m)と、標準的なSuzuki条件下(例えば、本明細書中に記載されるような、モル当量の(l)および(m)、乾燥DMF中、アルゴン雰囲気下高温で、約5〜10モル%のパラジウム触媒およびモル過剰の無機塩基(例えば、炭酸カリウム)を用いる)でカップリングされて、置換ピリジン誘導体(f)を生成し、これは、脱保護(例えば、本明細書中に記載されるような、THF、またはCH
2Cl
2など、モル過剰の酸(例えば、酢酸、ギ酸、またはトリフルオロ酢酸など))の後、ピリジン−2(1H)−オン(g)に転換される。
【0173】
特定の実施形態において、式(I)のリン酸エステル誘導体は、以下のスキームVの合成順序に示されるように調製され得る。
【0176】
例えば、リン酸エステル誘導体(r)は、スキームVの合成順序に従って、ピリジン−2(1H)−オン(g)の、少なくとも1当量、好ましくはわずかに過剰(例えば、1.2〜1.5モル当量)のリンカー(n)(ここでR
27は、1個〜6個の炭素原子の、必要に応じて置換されたアルキレン部分である)、および少なくとも1当量、好ましくはわずかに過剰(例えば、1.2〜2モル当量)の適切な塩基(例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン(NMM)、またはピリジン)を用いての、標準的な反応条件下でのアルキル化により調製されて、アルキル化ピリジン−2(1H)−オン(o)誘導体を与え得、これは次に、モル過剰(例えば、1.2〜5モル当量)のリン酸ジエステル(p)のO−アルキル化のために使用されて、対応するリン酸トリエステル(q)を与え得る。リン酸トリエステル(q)の、標準的な条件下(例えば、本明細書中に記載されるような、CH
3CN/H
2Oなど、モル過剰の酸(例えば、酢酸など)、加熱を伴う)での脱保護は、リン酸エステル(r)を与える。
【0177】
【化20】
式(II)の化合物は、スキームAに示される合成順序に従って、反応物質(1)および(2)調製され得、これらの反応物質は、市販されているか、または当該分野において周知である手段により調製される。一般に、反応物質(1)と、少なくとも1モル当量、好ましくはわずかに過剰(例えば、1.2〜1.5モル当量)の(2)とが、スキームAに示されるように、標準的な反応条件下、不活性溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド(DMF))中、約25℃の温度で、この反応が完了するまで(一般に、約16時間)化合させられる。標準的な反応条件は、モル過剰の適切な塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、Nメチルモルホリン(NMM)またはピリジン)の使用を包含し得るか、あるいはLGがヒドロキシルであるいくつかの場合において、ペプチドカップリング試薬(例えば、O(7アザベンゾトリアゾール1イル)N,N,N’,N’テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU))が使用され得る。この反応が実質的に完了したら、その生成物は、必要であれば、標準的な反応条件下(例えば、本明細書中に記載されるような、THFまたはCH
2Cl
2など、モル過剰の酸(例えば、酢酸、ギ酸、またはトリフルオロ酢酸など))での脱保護順序に供されて、従来の手段により、単離されたものを与える。
【0178】
【化21】
式(II)の化合物はまた、スキームBに示される合成順序に従って、市販の反応物質(1)から調製され得るか、または当該分野において周知である手段により調製される。式3は、反応物質1から、水素化により調製され得る。一般に、反応物質(1)は、パラジウム触媒(例えば、Pd/C、Pd(OH)2)を使用して溶媒(例えば、エタノール)中でか、または移動水素化によって、水素化される。次いで、式3は、市販の反応物質2と、当該分野において周知である手段によって、カップリングされる。一般に、反応物質(1)と、少なくとも1モル当量、好ましくはわずかに過剰(例えば、1.2〜1.5モル当量)の(2)とは、スキームAに示されるように、標準的な反応条件下で、不活性溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド(DMF))中、約25℃の温度で、この反応が完了するまで(一般に、約16時間)化合させられる。標準的な反応条件は、モル過剰の適切な塩基(例えば、水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウム、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、Nメチルモルホリン(NMM)、またはピリジン)の使用を包含し得るか、あるいはLGがヒドロキシルであるいくつかの場合において、ペプチドカップリング試薬(例えば、O(7アザベンゾトリアゾール−1−イル)N,N,N’,N’テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU))が使用され得る。この反応が実質的に完了したら、その生成物は、必要であれば、標準的な反応条件下(例えば、本明細書中に記載されるような、THF、またはCH2Cl2など、モル過剰の酸(例えば、酢酸、ギ酸、またはトリフルオロ酢酸など))での脱保護順序に供されて、従来の手段により、単離されたものを与える。
【0179】
【化22】
式(II)の化合物は、スキームCに示される合成順序に従って、アリールボロン酸誘導体(h)と置換ピリジン(e)とを、標準的なSuzuki反応条件下でカップリングすることにより調製され得る(例えば、本明細書中に記載されるような、モル当量の(h)および(e)を乾燥DMF中、アルゴン雰囲気下高温で、約5〜10モル%のパラジウム触媒およびモル過剰の無機塩基(例えば、炭酸カリウム)を用いて、置換ピリジン誘導体(f)を生成し、これは、本明細書中に記載されるような脱保護(例えば、THF、またはCH
2Cl
2など、モル過剰の酸(例えば、酢酸、ギ酸、またはトリフルオロ酢酸など)の後に、ピリジン−2(1H)−オン(g)に転換される)。反応物質であるピリジン−2(1H)−オン(g)は、パラジウム触媒(例えば、Pd/C、Pd(OH)2)を使用して溶媒(例えば、エタノール)中でか、または移動水素化によって水素化されて、ピペリドン(h)を生成し得、これは、アミン(i)に転換され得、これは次に、式IIに転換され得る。
式IIの化合物の回復。
【0180】
(薬学的組成物)
特定の局面において、治療有効量の式(I)の化合物および少なくとも1種の薬学的に受容可能なキャリアを含有する薬学的組成物が提供される。
【0181】
式(I)の化合物は通常、薬学的組成物の形態で投与される。従って、活性成分として、式(I)の化合物のうちの1つ以上、またはその薬学的に受容可能な塩もしくはエステル、および1種以上の薬学的に受容可能な賦形剤、キャリア(不活性固体希釈剤および充填剤、希釈剤(滅菌水溶液および種々の有機溶媒が挙げられる)、浸透増進剤、可溶化剤ならびにアジュバントが挙げられる)を含有する薬学的組成物が提供される。
【0182】
式(I)の化合物は、単独で投与されても、他の治療剤と組み合わせて投与されてもよい。このような組成物は、製薬分野において周知である様式で調製される(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mace Publishing Co.,Philadelphia,PA第17版(1985)およびModern Pharmaceutics,Marcel Dekker,Inc.第3版(G.S.Banker & C.T.Rhodes編者)を参照のこと)。
【0183】
(使用方法)
特定の局面において、式(I)の化合物を、ドパミン産生因子に対する嗜癖の処置において使用する方法が提供される。この方法は、その必要がある哺乳動物に、治療有効用量の式(I)の化合物を投与する工程を包含する。このような疾患としては、コカイン、アヘン製剤、アンフェタミン、ニコチン、およびアルコールに対する依存の処置が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、式(I)の化合物は一般に、ALDH−2インヒビターの投与に応答する状態の処置において、効果的である。理論により束縛されることを望まないが、本明細書中に記載される化合物は、これらの化合物が、種々の嗜癖挙動に関連して上昇したドパミンレベルを標準化する能力の結果として、嗜癖を処置する際に効果的であると考えられる。N.D.Volkowら,Dopamine in drug abuse and addiction:results from imaging studies and treatment implications,Mol.Psychiatry 9(2004),pp.557−569;ならびにB.J.EverittおよびM.E.Wolf,Psychomotor stimulant addiction:a neural systems perspective,J.Neurosci.22(2002),pp.3312−3320を参照のこと。嗜癖挙動は、食物、特に、砂糖入りの食物に対する嗜癖を包含することが示されている。例えば、写本「Evidence for sugar addiction:Behavioral and neurochemical effects of intermittent,excessive sugar intake」(Hoebelら.Neurosci Biobehav Rev.2008;32(1):20−39.)において、著者らは、「この概説は、食物および砂糖溶液に断続的にアクセスするラットが、挙動の布置と平行した脳変化との両方を示し得ることを実証する。これらは、依存性薬を自発的に自己投与するラットに特徴的である。全体として、このことは、砂糖が嗜癖性であり得ることの証拠である。」と記載している。
【0184】
この提唱された作用機構を考慮すると、式(I)の化合物は、例えば、米国特許出願公開第20100113483号に記載されるような、例えば、上昇したドパミンレベルに関連する嗜癖挙動および脅迫挙動、ならびに神経学的状態の処置において、有用である。このような挙動および状態としては、脅迫的な賭博、過食、および買い物、強迫性障害(OCD)、精神分裂病、注意欠陥過活動性障害、ならびに不安などが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、本明細書中に記載される化合物はまた、脅迫的な摂食障害および肥満症を処置する際に有効であることが示された。
【0185】
別の局面は、アルコール消費、アルコール依存および/またはアルコール乱用を、治療目的で調節する(例えば、減少させる)方法に関する。従って、例示的な実施形態において、この調節方法は、ALDH−2を、ALDH−2を阻害する化合物と接触させることを包含する。なお別の例示的な実施形態において、この調節方法は、神経伝達物質(例えば、5−HT/セロトニンおよび/またはDA/ドパミン)の異化作用中に形成されたアルデヒド(例えば、5−HIALおよび/またはDOPAL)の濃度を上昇させる化合物を投与することを包含する。好ましくは、この化合物は、MAOを阻害しないか、または低い程度にのみMAOを阻害する。
【0186】
別の実施形態は、アルコール乱用またはアルコール依存の処置のために、アルコール消費を調節する方法を包含する。この方法は、患者に、ALDH−2を阻害し、そして/または神経伝達物質(例えば、5−HTおよび/またはDA)の異化作用中に形成されたアルデヒド(例えば、5−HIALおよび/またはDOPAL)の濃度を上昇させる、治療有効量の化合物を投与する工程を包含する。
【0187】
特定の実施形態において、哺乳動物におけるアルコール消費を調節する方法が提供され、この方法は、式(I)の化合物またはその薬学的組成物を、神経伝達物質の異化作用中に形成されたアルデヒドの濃度を上昇させるために有効な量で投与することを包含する。特定の実施形態において、この神経伝達物質は、セロトニンまたはドパミンである。特定の実施形態において、このアルデヒドは、5−ヒドロキシインドールアセトアルデヒドまたは3,4−ジヒドロキシフェニルアセトアルデヒドである。特定の実施形態において、この化合物は、モノアミンオキシダーゼを阻害しない。
【0188】
(試験)
活性試験を、上で参照した特許および特許出願、ならびに以下の実施例に記載されるように、当業者に明らかである方法に従って、実施する。例えば、「The Mitochondrial Monoamine Oxidase−Aldehyde Dehydrogenase Pathway:A Potential Site of Action of Daidzein」,J.Med.Chem.2000,43,4169−4179に記載されるとおりである。一般に、式(I)の化合物は、それらのMAOに対する影響とALDH−2に対する影響とを独立して決定するために、密度勾配精製されたミトコンドリア調製物の膜および溶解物をそれぞれの酵素供給源として使用して、アッセイされる。これらの結果は、IC
50値として表される。
【0189】
式(I)の化合物の、患者におけるアルコールの消費、依存および/または乱用の調節に対する影響の監視は、本明細書中に記載され、そして例えば、米国特許出願公開第20040068003号に記載されるような、スクリーニングアッセイによって決定され得る。このようなアッセイにおいて、アルコールの減少した消費が、式(I)の化合物の有効性の尺度として使用され得る。
【0190】
例えば、限定としてではなく、ALDH−2活性は、ALDH−2を阻害し、その結果として5−HT代謝流出の一部分を、5−ヒドロキシインドール酢酸(5−HIAA)の形成をもたらす酸化経路から、さらに5−ヒドロキシトリプトホール(5−hydroxytryptophol)(5−HTOL)の形成をもたらす還元経路へと逸らせる式(I)の化合物で処理された、細胞において低下する。従って、式(I)の化合物の、アルコールの依存および/または乱用に対する効果を、例えば臨床試験において研究するために、尿サンプルが集められ得、そしてそのサンプル中の5−HIAAおよび5−HTOLのレベルが決定され得る。5−HIAAの低下したレベルおよび5−HTOLの上昇したレベルは、ALDH−2活性の阻害を示す。この方法で、尿中の[5−HTOL]/[5−HIAA]比は、化合物に対する細胞の生理学的応答を示すマーカーとして働き得る。従って、この応答状態は、化合物での個体の処置前、および処置中の種々の時点で、決定され得る。
【0191】
1つの実施形態において、式(I)の化合物での被験体の処置の有効性を監視する方法が提供され、この方法は、(i)アルコールの解毒の前および後であるが、式(I)の化合物の投与の前に、被験体から投与前尿サンプルを得る工程;(ii)これらの投与前サンプルにおける[5−HTOL]/[5−HIAA]比を決定する工程;(iii)1以上の投与後サンプルをこの被験体から得る工程;(iv)これらの投与後サンプルにおける[5−HTOL]/[5−HIAA]比を決定する工程;(v)投与前サンプルにおける[5−HTOL]/[5−HIAA]比を、投与後サンプル(単数または複数)における[5−HTOL]/[5−HIAA]比と比較する工程;および(vi)その比較に従って、この被験体への式(I)の化合物の投与を変更する工程を包含する。このような実施形態によれば、ALDH−2の不活性化および/または尿中[5−HTOL]/[5−HIAA]比の増大は、観察可能な表現型応答が存在しない場合でさえも、式(I)の化合物の有効性の指標として使用され得る。
【0192】
(投与)
式(I)の化合物は、通常、薬学的組成物の形態で投与される。従って、本明細書において、活性成分として、式(I)の化合物のうちの1つ以上、またはその薬学的に受容可能な塩もしくはエステル、ならびに1種以上の薬学的に受容可能な賦形剤、キャリア(不活性固体希釈剤および充填剤が挙げられる)、希釈剤(滅菌水溶液および種々の有機溶媒が挙げられる)、浸透増強剤、可溶化剤およびアジュバントを含有する、薬学的組成物が提供される。式Iの化合物は、単独でか、または他の治療剤と組み合わせて投与され得る。このような組み合わせは、製薬分野において周知である様式で調製される(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mace Publishing Co.,Philadelphia,PA 第17版(1985)ならびに「Modern Pharmaceutics」,Marcel Dekker,Inc.第3版(G.S.BankerおよびC.T.Rhodes編)を参照のこと)。
【0193】
式(I)の化合物は、単一用量または複数用量のいずれかで、類似の有用性を有する剤の認容された投与様式(例えば、参考として援用される特許および特許出願に記載されるような様式であり、直腸、頬、鼻内および経皮経路、動脈内注射によるもの、静脈内、腹腔内、非経口、筋肉内、皮下、経口、局所、吸入剤として、あるいは浸透またはコーティングされたデバイス(例えば、ステント、または動脈に挿入される円柱形ポリマー)を介してが挙げられる)のいずれかによって、投与され得る。
【0194】
1つの投与様式は、特に注射による、非経口の様式である。新規組成物が注射による投与のために組み込まれ得る形態としては、水性または油性の懸濁物、あるいはエマルジョンが挙げられ、ゴマ油、トウモロコシ油、綿実油、または落花生油、およびエリキシル、マンニトール、デキストロース、または滅菌水溶液、および類似の薬学的ビヒクルを用いる。生理食塩水中の水溶液もまた、注射のために従来使用される。エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど(ならびにこれらの適切な混合物)、シクロデキストリン誘導体、および植物油もまた、使用され得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散物の場合には必要な粒径を維持することによって、そして界面活性剤の使用によって、維持され得る。微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、およびチメロサールなど)によって、もたらされ得る。
【0195】
滅菌注射可能溶液は、式(I)の化合物を、必要量で、適切な溶媒中に、必要であれば上に列挙されたような種々の他の成分と一緒に組み込み、続いて滅菌濾過することによって、調製される。一般に、分散物は、種々の滅菌した活性成分を、基本的な分散媒および上に列挙されたものからの必要な他の成分を含む滅菌ビヒクルに組み込むことによって、調製される。滅菌注射可能溶液の調製のための滅菌粉末の場合、公知である調製方法としては、真空乾燥または凍結乾燥の技術が挙げられ、これらの技術は、予め滅菌濾過された溶液から、活性成分および任意のさらなる所望の成分の粉末を与える。
【0196】
経口投与は、式(I)の化合物の別の投与経路である。投与は、カプセル剤または腸溶コーティングされた錠剤などを介し得る。少なくとも1種の式(I)の化合物を含有する薬学的組成物を作製する際に、この活性成分は通常、賦形剤により希釈され、そして/またはカプセル、サシェ、紙もしくは他の容器の形態であり得るようなキャリアに封入される。賦形剤が希釈剤として働く場合、この賦形剤は、固体、半固体、または液体物質(上記のような)であり得、これは、活性成分のためのビヒクル、キャリアまたは媒体として働く。従って、これらの組成物は、錠剤、丸剤、散剤、ロゼンジ、サシェ剤、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、液剤、シロップ、エアロゾル(固体または液体媒体として)、例えば10重量%までの活性化合物を含有する軟膏剤、軟ゼラチンカプセルおよび硬ゼラチンカプセル、滅菌注射可能溶液、ならびに滅菌包装された粉末の形態であり得る。
【0197】
適切な賦形剤のいくつかの例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、滅菌水、シロップ、およびメチルセルロースが挙げられる。これらの処方物は、以下のものをさらに含有し得る:滑沢剤(例えば、滑石、炭酸マグネシウム、および鉱油);湿潤剤;乳化剤および懸濁化剤;防腐剤(例えば、メチル−ベンゾエートおよびプロピルヒドロキシ−ベンゾエート;甘味剤;ならびに矯味矯臭剤。
【0198】
これらの組成物は、当該分野において公知である手順を使用することによって、患者への投与後に、活性成分の即時放出、徐放または遅延放出を提供するように、処方され得る。経口投与のための制御放出薬物送達系としては、ポリマーでコーティングされたレザバまたは薬物−ポリマーマトリックス処方物を含む、浸透圧ポンプ系および溶解系が挙げられる。制御放出系の例は、米国特許第3,845,770号;同第4,326,525号;同第4,902514号;および同第5,616,345号に与えられている。上記方法において使用するための別の処方物は、経皮送達デバイス(「パッチ」)を使用する。このような経皮パッチは、上記化合物の連続的または不連続な注入を、制御された量で提供するために使用され得る。薬剤の送達のための経皮パッチの構築および使用は、当該分野において周知である。例えば、米国特許第5,023,252号、同第4,992,445号および同第5,001,139号を参照のこと。このようなパッチは、薬剤の連続的送達、拍出送達または要求に応じた送達のために、構築され得る。
【0199】
これらの組成物は、好ましくは、単位剤形に処方される。用語「単位剤形」とは、ヒト被験体および他の哺乳動物のためのユニタリ投薬量として適切な、物理的に不連続な単位であって、各単位が、所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性物質を、適切な薬学的賦形剤と一緒に含有するもの(例えば、錠剤、カプセル剤、またはアンプル)をいう。式(I)の化合物は、広い投薬範囲にわたって効果的であり、そして一般に、薬学的に有効な量で投与される。好ましくは、経口投与のために、各投薬単位は、約10mg〜1gの式(I)の化合物、より好ましくは10mg〜700mgを含有し、そして非経口投与のために、好ましくは10mg〜700mgの式(I)の化合物、より好ましくは約50mg〜300mgを含有する。好ましい用量計画はまた、約100mg〜300mgを1日2回、その必要がある患者に投与することを包含し得る。それにもかかわらず、実際に投与される式(I)の化合物の量は、医師によって、患者の関連する状況(処置されるべき状態、選択された投与経路、投与される実際の化合物およびその相対的な活性、個々の患者の年齢、体重および応答、ならびに患者の症状の重篤度などが挙げられる)を考慮して決定されることが理解される。
【0200】
錠剤などの固体組成物を調製するために、主要な活性成分は、薬学的賦形剤と混合されて、化合物の均質な混合物を含む固体予備処方組成物を形成する。これらの予備処方組成物が均質であるという場合、この活性成分がこの組成物全体にわたって等しく分布し、その結果、この組成物が等しく効果的な単位剤形(例えば、錠剤、丸剤およびカプセル剤)に容易に部分分割され得ることを意味する。
【0201】
錠剤または丸剤は、延長した作用という利点を与える剤形を与えるように、または胃の酸条件から保護するように、コーティングされ得るかまたは他の方法で配合され得る。例えば、錠剤または丸剤は、内部投薬成分および外部投薬成分を含み得、この外部投薬成分は、この内部投薬成分を覆うエンベロープの形態である。これらの2つの成分は、腸溶層によって分離され得、この腸溶層は、胃内での崩壊に抵抗し、そして内部成分が十二指腸内に無傷で入るように、または放出が遅くされるように働く。種々の物質が、このような腸溶層または腸溶コーティングのために使用され得、このような物質としては、多数のポリマー酸、ならびにポリマー酸と、シェラック、セチルアルコール、および酢酸セルロースなどの物質との混合物が挙げられる。
【0202】
吸入または注入のための組成物としては、薬学的に受容可能な水性または有機性の溶媒、あるいはこれらの混合物中の、溶液および懸濁物、ならびに粉末が挙げられる。液体または固体の組成物は、上記のような適切な薬学的に受容可能な賦形剤を含有し得る。好ましくは、これらの組成物は、局所効果または全身効果のために、口腔または鼻腔の呼吸経路によって投与される。好ましくは薬学的に受容可能な溶媒中の組成物は、不活性ガスの使用により噴霧され得る。噴霧された溶液は、噴霧デバイスから直接吸入され得るか、またはこの噴霧デバイスは、顔面マスクテントもしくは間欠的陽圧呼吸機に取り付けられ得る。溶液、懸濁物、または粉末の組成物は、好ましくは、適切な様式で処方物を送達するデバイスから経口投与または経鼻投与され得る。
【0203】
以下の実施例は、いくつかの実施形態を実証するために含まれる。以下の実施例に記載される技術は、実施において良好に働き、従って本発明の実施のための形態を構成するとみなされ得ることが本発明者により発見された技術を代表することが、当業者により理解されるべきである。しかし、本開示を考慮して、開示される特定の実施形態において多くの変更がなされ得、そして依然として、趣旨および範囲から逸脱することなく、同様または類似の結果を得ることができることを、当業者は理解するべきである。
【実施例】
【0204】
他に記載されない限り、全ての温度は、セ氏の度(℃)である。また、これらの実施例および他の箇所において、略語および頭字語は、以下の意味を有する:
【0205】
【表1A-1】
【0206】
【表1A-2】
【0207】
【表1A-3】
(実施例1)
スキームIの合成経路に従う2,6−ジクロロ−4−(2−メトキシエトキシ)−N−(4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−4−イル)ベンジル)ベンズアミド(1)の調製:
【0208】
【化23】
【0209】
スキームVII
【0210】
【化24】
【0211】
工程1 − 2,6−ジクロロ−4−(2−メトキシエトキシ)ベンズアルデヒドの調製:
2,6−ジクロロ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド(0.5g,2.62mmol)、1−ブロモ−2−メトキシエタン(0.3mL)、ヨウ化ナトリウム(0.4g,0.4mmol)および炭酸カリウム(0.9g,6.55mmol)をDMF(5mL)に添加し、そして100℃で1時間、撹拌しながら加熱した。この反応が起こったら、この反応混合物をEtOAcで希釈し、そして水で3回抽出した。その有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、そして減圧中で濃縮した。得られた固体を順相クロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc 3:1)により精製して、2,6−ジクロロ−4−(2−メトキシエトキシ)ベンズアルデヒドを得た。
【0212】
工程2 − 2,6−ジクロロ−4−(2−メトキシエトキシ)安息香酸の調製:
アセトン(20mL)中の2,6−ジクロロ−4−(2−メトキシエトキシ)ベンズアルデヒド(0.5g,2.0mmol)を氷浴中で冷却し、次いで水(5mL) 中の過マンガン酸カリウム(0.47g,3.0mmol)を、激しく撹拌しながらゆっくりと添加した。この反応混合物をゆっくりと室温まで温め、そして24時間反応させた。この反応混合物をセライトで濾過し、そしてアセトンで洗浄した。その有機相をエバポレートし、次いでEtOAcに再溶解させて、1NのHCl水溶液で抽出した。その有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、そして減圧中で濃縮して、化合物2,6−ジクロロ−4−(2−メトキシエトキシ)安息香酸を得た。
【0213】
工程3 − N−(4−ブロモベンジル)−2,6−ジクロロ−4−(2−メトキシエトキシ)ベンズアミドの調製:
2,6−ジクロロ−4−(2−メトキシエトキシ)安息香酸(0.1g,0.23mmol)、(4−ブロモフェニル)メタンアミン塩酸塩(0.1g,0.27mmol)、2−(1H−7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェートメタンアミニウム(HATU)(0.17g,0.27mmol)、およびトリエチルアミン(0.15mL,0.7mmol)をDMF(3mL)中で合わせ、次いで、この反応が完了するまで室温で撹拌した。この反応混合物を酢酸エチルで希釈し、そして水、および重炭酸ナトリウム飽和溶液で2回洗浄した。その有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、そして減圧中で濃縮した。得られた固体をさらに精製せずに次の工程に使用した。
【0214】
工程4 − 2,6−ジクロロ−4−(2−メトキシエトキシ)−N−(4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−4−イル)ベンジル)ベンズアミドの調製:
N−(4−ブロモベンジル)−2,6−ジクロロ−4−(2−メトキシエトキシ)ベンズアミド(0.11g,0.25mmol)、2−tert−ブトキシ−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ピリジン(0.085g,0.3mmol)、炭酸セシウム(0.21g,0.75mmol)、および[1,1’ビス(ジフェニルホスフィノ(フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(15mg,0.025mmol)を脱気したDMF(3mL)およびH
2O(1.5mL)に溶解させた。この反応混合物を、窒素ガスを15分間吹き込むことにより脱気し、次いでマイクロ波中85℃で20分間加熱した。この反応混合物をEtOAcで希釈し、そして水で抽出した。その有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、そして減圧中で濃縮した。この粗製生成物を熱アセトニトリルに懸濁させ、そしてその固体を濾別して、純粋な化合物N−(4−(2−tert−ブトキシピリジン−4−イル)ベンジル)−2,6−ジクロロ−4−(2−メトキシエトキシ)ベンズアミドを得、これをさらに精製せずに次の工程に使用した。
【0215】
化合物N−(4−(2−tert−ブトキシピリジン−4−イル)ベンジル)−2,6−ジクロロ−4−(2−メトキシエトキシ)ベンズアミドをDCM(2mL)およびトリフルオロ酢酸(2mL)に再懸濁させ、そして室温で1時間撹拌した。この反応が起こった後に、これを減圧中で濃縮し、次いで逆相クロマトグラフィーにより精製して、2,6−ジクロロ−4−(2−メトキシエトキシ)−N−(4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−4−イル)ベンジル)ベンズアミドを得た。
【0216】
MS found for C
22H
20Cl
2N
2O
4 as (M+H)
+ 448.32
1H NMR (400MHz, dmso−d
6):
1H−NMR (DMSO) δ: 11.58 (s, 1H), 9.10 (t, J=6.0Hz, 1H), 7.66 (d, J=8.4Hz, 2H), 7.46 (d, J=8.0Hz, 2H), 7.4 (s, 1H), 7.12 (s, 2H), 6.56 (s, 1H), 6.48 (d, J=5.2Hz, 1H), 4.47 (d, J=6.0Hz, 2H), 4.16 (t, J=4.4Hz, 2H), 4.62 (t, J=4.4Hz, 2H), 3.27 (s, 3H)。
【0217】
(実施例2)
スキームIIの合成経路に従う2,6−ジクロロ−N−[4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−4−イル)−ベンジル]−ベンズアミド(2)の調製:
【0218】
【化25】
【0219】
スキームVIII
【0220】
【化26】
【0221】
工程1 − 4−[(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)メチル]フェニルボロン酸の調製
【0222】
【化27】
【0223】
4−(アミノメチル)フェニルボロン酸塩酸塩(5g,26.7mmol)を25mLの水に溶解させた。16mLの50%のKOH水溶液を添加し、その後、2,6−ジクロロベンゾイルクロリド(6.7g,32mmol)を添加した。この混合物を室温で一晩、急速に撹拌した。1NのHClを添加すると、濃厚な白色沈殿物が得られ、これを濾過し、水で洗浄し、そして乾燥させて、4−[(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)メチル]フェニルボロン酸を白色粉末として定量的収率で得た。
【0224】
工程2 − N−[4−(2−tert−ブトキシ−ピリジン−4−イル)−ベンジル]−2,6−ジクロロ−ベンズアミドの調製
【0225】
【化28】
【0226】
4−[(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)メチル]フェニルボロン酸(5g,15.4mmol)、炭酸カリウム(5g)、および[1,1′ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(0.56g,0.77mmol)を丸底フラスコ中で合わせた。4−ブロモ−2−(t−ブトキシ)ピリジン(3.55g,15.4mmol)を20mLのDMFに溶解させ、そしてこのフラスコに撹拌しながら添加した。このフラスコを窒素でフラッシュし、そして10mLの水を添加した。この反応混合物を70℃で2時間撹拌した。冷却後、この混合物を300mLの酢酸エチルに注ぎ、そして水およびブラインで洗浄した。その有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、そして減圧下でエバポレートした。この粗製N−[4−(2−tert−ブトキシ−ピリジン−4−イル)−ベンジル]−2,6−ジクロロ−ベンズアミドを、シリカゲルクロマトグラフィー(溶出液:ヘキサン/酢酸エチル1:1)によりさらに精製した。
【0227】
工程3 − 2,6−ジクロロ−N−[4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−4−イル)−ベンジル]−ベンズアミドの調製
【0228】
【化29】
【0229】
N−[4−(2−tert−ブトキシ−ピリジン−4−イル)−ベンジル]−2,6−ジクロロ−ベンズアミドを30mLのジクロロメタンおよび12mLの98%ギ酸に溶解させた。この混合物を40℃で3時間撹拌し、その後、揮発性化合物を減圧下でエバポレートした。その残渣を酢酸エチルで粉砕し、濾過し、酢酸エチルで洗浄し、そして乾燥させて、2,6−ジクロロ−N−[4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−4−イル)−ベンジル]−ベンズアミド(4.34g,2工程にわたり収率75.5%)を白色固体として得た。C
19H
14Cl
2N
2O
2; MS m/z: 373 (MH
+)
1H NMR (DMSO−d
6):δ11.56 (s, 1H),δ9.21 (t, J=5.6Hz, 1H),δ7.67 (d, J= 8.0Hz, 2H),δ7.46 (m, 6H),δ6.57 (d, J=1.2Hz, 1H),δ6.49 (dd, J=6.8Hz, J’=1.6Hz, 1H),δ4.50 (d, J=6.0Hz, 2H。
【0230】
(実施例3)
A.スキームIIIの合成経路に従う2−クロロ−3−フルオロ−N−(4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−4−イル)ベンジル)ベンズアミド(3)の調製:
【0231】
【化30】
工程1 − 4−(4−(アミノメチル)フェニル)ピリジン−2(1H)−オンの調製
4−((tert−ブトキシカルボニルアミノ)メチル)フェニルボロン酸(1g,3.98mmol)、炭酸カリウム(1.1g,7.96mmol)、4−ブロモ−2−(t−ブトキシ)ピリジン(1.1g,4.78mmol)の、脱気したトルエン/EtOH/水(2:1:1)(6mL)中の溶液に、[1,1′−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(0.14g,0.199mmol)を添加した。次いで、この反応混合物をマイクロ波中75℃で30分間加熱した。この混合物を冷却した後に、これをシリカゲルクロマトグラフィー(溶出液:CH
2Cl
2/酢酸エチル95:5)により精製して、4−(2−tert−ブトキシピリジン−4−イル)ベンジルカルバミン酸tert−ブチル(1)を得た。MS found for C
21H
28N
2O
3 as (M+H)
+ 356.8。CH
2Cl
2(3mL)中の、上記Boc保護された化合物(462mg,1.3mmol)に、4.0MのHClジオキサン(1.6mL,6.5mmol)を添加し、そして室温で1時間撹拌した。次いで、この反応混合物をエーテルで希釈し、そして得られた固体を濾過し、そしてエーテルで洗浄し、そして乾燥させて、4−(4−(アミノメチル)フェニル)ピリジン−2(1H)−オン(2)を塩酸塩として得た。C
12H
12N
2O
201.0 (M+1)。
【0232】
工程2 − 2−クロロ−3−フルオロ−N−(4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−4−イル)ベンジル)ベンズアミドの調製
DMF(1mL)中の、上記アミン(50mg,0.212mmol)、2−クロロ−3−フルオロ安息香酸(48mg,0.276mmol)、HATU(121mg,0.318mmol)に、NMM(0.06mL,0.53mmol)を添加し、そして室温で16時間撹拌した。この反応混合物を水およびアセトニトリルで希釈し、そして得られた固体を濾過し、そしてエーテルで洗浄し、そして乾燥させて、2−クロロ−3−フルオロ−N−(4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−4−イル)ベンジル)ベンズアミドを得た。
【0233】
MS found for C
19H
14ClFN
2O
2 as (M+H)
+ 357.1
1H NMR (400MHz, dmso−d
6): δ: 11.56 (br, 1H), 9.13 (t, J=6.0 Hz, 1H), 7.68 (d, J=8.0 Hz, 2H), 7.50−7.42 (m, 4H), 7.32 (d, J=7.2 Hz, 2H); 6.56 (s, 1H), 6.50 (d, J=7.2 Hz, 1H); 4.49 (d, J=6.0 Hz, 2H)。
【0234】
B.スキームIIIの合成経路に従う式(I)のさらなる化合物の調製:
2−クロロ−6−メチル−N−(4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−4−イル)ベンジル)ベンズアミド(4)の調製:
【0235】
【化31】
【0236】
化合物(4)を、化合物(3)について記載された手順と類似の手順を使用して、適切な出発物質を用いて調製した。MS found for C
20H
17ClN
2O
2 as (M+H)
+ 353.1
1H NMR (400MHz, dmso−d
6): δ: 11.54 (br, 1H), 9.04 (t, J=6.0 Hz, 1H), 7.68 (d, J=8.0 Hz, 2H), 7.47 (d, J=8.0 Hz, 2H), 7.45 (d, J=7.2 Hz, 1H), 7.30−7.19 (m, 3H), 6.56 (s, 1H), 6.50 (d, J=7.2 Hz, 1H); 4.49 (d, J=6.0 Hz, 2H); 2.22 (s, 3H)。
【0237】
2,6−ジメチル−N−(4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−4−イル)ベンジル)ベンズアミド(5)の調製:
【0238】
【化32】
【0239】
化合物(5)を、化合物(3)について記載された手順と類似の手順を使用して、適切な出発物質を用いて調製した。MS found for C
21H
20N
2O
2 as (M+H)
+ 353.1
1H NMR (400MHz, dmso−d
6): δ: 11.55 (br, 1H), 8.86 (t, J=6.0 Hz, 1H), 7.68 (d, J=8.0 Hz, 2H), 7.45−7.40 (m, 3H), 7.16 (t, J=8.0 Hz, 1H), 7.02 (d, J=7.2 Hz, 2H), 6.56 (s, 1H), 6.50 (d, J=7.2 Hz, 1H); 4.47 (d, J=6.0 Hz, 2H); 2.18 (s, 6H)。
【0240】
2,6−ジクロロ−N−[4−(6−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−4−イル)−ベンジル]−ベンズアミド(6)の調製:
【0241】
【化33】
【0242】
化合物(6)を、化合物(3)について記載された手順と類似の手順を使用して、適切な出発物質を用いて調製した。
1H−NMR (DMSO) δ: 11.55 (br, 1H), 9.21 (t, J=6.0Hz, 1H), 7.65 (d, J=8.0Hz, 2H), 7.52−7.40 (m, 5H), 6.38 (s, 1H), 6.35 (s, 1H), 4.50 (d, J=6.0Hz, 2H), 2.21 (s, 3H). MS: 387/389 (MH
+)。
【0243】
(実施例4)
A.スキームIVの合成経路に従う2−クロロ−3,6−ジフルオロ−N−(4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−4−イル)ベンジル)ベンズアミド(7)の調製:
【0244】
【化34】
【0245】
スキームX
【0246】
【化35】
【0247】
工程1 − N−(4−ブロモベンジル)−2−クロロ−3,6−ジフルオロベンズアミドの調製:
(4−ブロモフェニル)メタンアミン塩酸塩(0.5g,2.25mmol)、2−クロロ−3,6−ジフルオロ安息香酸(0.52g,2.7mmol)、2−(1H−7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェートメタンアミニウム(HATU)(1.2g,2.7mmol)、およびN,N−ジイソプロピル−エチルアミン(1.17mL,6.75mmol)をDMF(6mL)中で合わせ、次いで、室温で1時間撹拌した。この反応混合物を酢酸エチルで希釈し、そして水で1回、そして重炭酸ナトリウム飽和水溶液で2回洗浄した。その有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、そして減圧中で濃縮した。この粗製生成物を熱アセトニトリルに懸濁させ、次いで濾過して、純粋な化合物N−(4−ブロモベンジル)−2−クロロ−3,6−ジフルオロベンズアミドを得た。
【0248】
工程2 − 2−tert−ブトキシ−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ピリジンの調製:
4−ブロモ−2−tert−ブトキシピリジン(1.0g,4.34mmol)、ピナコールジボロン(1.32g,5.2mmol)、酢酸カリウム(1.28g,5.2mmol)および[1,1’ビス(ジフェニルホスフィノ(フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(0.318g,0.52mmol)を脱気したDMF(8mL)およびH
2O(4mL)に溶解させた。この混合物を85℃で20分間加熱した。この反応混合物を、水の存在下でEtOAcで抽出した。その有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、そして減圧中で濃縮した。その固体をカラム(ヘキサン:EtOAc,3:1)により精製して、純粋な化合物2−tert−ブトキシ−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ピリジンを得た。
【0249】
工程3 − N−(4−(2−tert−ブトキシピリジン−4−イル)ベンジル)−2−クロロ−3,6−ジフルオロベンズアミドの調製:
化合物N−(4−ブロモベンジル)−2−クロロ−3,6−ジフルオロベンズアミド(0.2g,0.55mmol)、2−tert−ブトキシ−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ピリジン(0.17g,0.6mmol)、Cs
2CO
3(0.54g,1.65mmol)、および[1,1’ビス(ジフェニルホスフィノ(フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(40mg,0.05mmol)を脱気したDMF(3mL)およびH
2O(1.5mL)に溶解させた。この反応混合物を、窒素を15分間吹き込むことにより再度脱気し、次いでマイクロ波中85℃で20分間加熱した。この反応混合物をEtOAcで希釈し、そして水で2回抽出した。その有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、そして減圧中で濃縮した。この粗製生成物をアセトニトリル中で加熱し、そしてその固体を濾過して、純粋な化合物N−(4−(2−tert−ブトキシピリジン−4−イル)ベンジル)−2−クロロ−3,6−ジフルオロベンズアミドを得、これをさらに精製せずに次の工程に使用した。
【0250】
化合物N−(4−(2−tert−ブトキシピリジン−4−イル)ベンジル)−2−クロロ−3,6−ジフルオロベンズアミドをDCM(2mL)およびトリフルオロ酢酸(2mL)に再懸濁させ、そして室温で1時間撹拌した。この反応混合物を減圧中で濃縮し、次いで逆相クロマトグラフィーにより精製して、2−クロロ−3,6−ジフルオロ−N−(4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−4−イル)ベンジル)ベンズアミドを得た。
【0251】
MS found for C
19H
13ClF
2N
2O
2 as (M+H)
+ 377.16
1H NMR (400 MHz, dmso−d
6):
1H−NMR (DMSO) δ: 11.65 (s, 1H), 9.36 (t, J=6.0Hz, 1H), 7.69 (d, J=8.4Hz, 2H), 7.58−7.52 (m, 1H), 7.46−7.37 (m, 4H), 6.61 (s, 1H), 6.55−6.53 (m, 1H), 4.52 (d, J=5.6Hz, 2H)。
【0252】
B.スキームIVの合成経路に従う式(I)のさらなる化合物の調製:
2,6−ジクロロ−N−(3−メチル−4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−4−イル)ベンジル)ベンズアミド(8)の調製:
【0253】
【化36】
【0254】
工程1 − N−(4−ブロモ−3−メチルベンジル)−2,6−ジクロロベンズアミドの調製:
4−ブロモ−3−メチルフェニル)メタンアミン(0.1g,0.5mmol)、2,6−ジクロロ安息香酸(0.11g,0.6mmol)、2−(1H−7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェートメタンアミニウム(HATU)(0.23g,0.6mmol)、およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.2mL,1.25mmol)をDMF(3mL)中で合わせ、次いで、この反応が完了するまで室温で撹拌した。水と重炭酸ナトリウムの飽和水溶液との添加により、化合物を沈殿させた。この沈殿物を濾過により集め、次いで熱アセトニトリルに再懸濁させた。この溶液が冷めたら、固体を濾過に集めて、純粋な化合物N−(4−ブロモ−3−メチルベンジル)−2,6−ジクロロベンズアミドを得、これをさらに精製せずに次の工程に使用した。
【0255】
工程2 − 2,6−ジクロロ−N−(3−メチル−4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−4−イル)ベンジル)ベンズアミドの調製
N−(4−ブロモ−3−メチルベンジル)−2,6−ジクロロベンズアミド(0.13g,0.35mmol)、2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−4−イルボロン酸(0.053g,0.39mmol)、炭酸セシウム(0.34g,1.05mmol)、[1,1’ビス(ジフェニルホスフィノ(フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(25mg,0.035mmol)を脱気したDMF(3mL)およびH
2O(1.5mL)に溶解させた。この反応混合物を、窒素を15分間吹き込むことにより再度脱気し、次いでマイクロ波中85℃で20分間加熱した。この反応混合物をEtOAcで希釈し、そして水で3回抽出した。その有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、そして減圧中で濃縮した。得られた固体を逆相クロマトグラフィーにより精製して、2,6−ジクロロ−N−(3−メチル−4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−4−イル)ベンジル)ベンズアミドを得た。
【0256】
MS found for C
20H
16Cl
2N
2O
2 as (M+H)
+ 389.13
1H NMR (400MHz, dmso−d
6):
1H−NMR (DMSO) δ: 11.62 (s, 1H), 9.18 (t, J=6.4Hz, 1H), 7.51−4.49 (m, 2H), 7.44−7.37 (m, 2H), 7.3 (s, 2H), 7.26 (d, J=7.6Hz, 1H), 7.17 (d, J=7.6Hz, 1H), 6.18 (s, 1H), 6.15−6.13 (m, 1H), 4.46 (d, J=6.0Hz, 1H), 2.24 (s, 3H)。
【0257】
2,6−ジクロロ−N−(4−(1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−4−イル)ベンジル)ベンズアミド(9)の調製:
【0258】
【化37】
【0259】
化合物(9)を、化合物(8)について記載された手順と類似の手順を使用して、適切な出発物質を用いて調製した。MS found for C
20H
16Cl
2N
2O
2: 387 (MH
+);
1H NMR (DMSO−d
6):δ9.21 (t, J=6.0Hz, 1H),δ7.74(d, J= 7.2Hz, 1H),δ7.69 (d, J= 8.4Hz, 2H),δ7.46 (m, 5H),δ6.66 (d, J=2.0Hz, 1H),δ6.56 (dd, J=6.8Hz, J’=2.0Hz, 1H),δ4.50 (d, J=5.6Hz, 2H),δ3.43 (s, 3H)。
【0260】
2,6−ジフルオロ−N−(4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−4−イル)ベンジル)ベンズアミド(10)の調製:
【0261】
【化38】
【0262】
化合物(10)を、化合物(8)について記載された手順と類似の手順を使用して、適切な出発物質を用いて調製した。MS found for C
19H
14F
2N
2O
2: 341 (MH
+);
1H NMR (DMSO−d
6):δ11.56 (s, 1H),δ9.29 (t, J=6.0Hz, 1H),δ7.68 (d, J= 8.0Hz, 2H),δ7.51 (m, 1H),δ7.42 (m, 3H),δ7.17 (m, 2H),δ6.57 (d, J=1.2Hz, 1H),δ6.49 (dd, J=6.8Hz, J’=1.6Hz, 1H),δ4.50 (d, J=6.0Hz, 2H)。
【0263】
2−クロロ−6−フルオロ−N−(4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−4−イル)ベンジル)ベンズアミド(11)の調製:
【0264】
【化39】
【0265】
化合物(11)を、化合物(8)について記載された手順と類似の手順を使用して、適切な出発物質を用いて調製した。MS found for C
19H
14ClFN
2O
2: 357 (MH
+);
1H NMR (DMSO−d
6):δ11.56 (s, 1H),δ9.29 (t, J=4.8Hz, 1H),δ7.70 (d, J= 7.6Hz, 2H),δ7.41 (m, 6H),δ6.59 (s, 1H),δ6.52 (d, J=6.4Hz, 1H),δ4.53 (d, J=5.6Hz, 2H)。
【0266】
2,6−ジクロロ−N−(2−フルオロ−4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−4−イル)ベンジル)ベンズアミド(12)の調製:
【0267】
【化40】
【0268】
化合物(12)を、化合物(8)について記載された手順と類似の手順を使用して、適切な出発物質を用いて調製した。MS found for C
19H
13Cl
2FN
2O
2: 391 (MH
+);
1H NMR (DMSO−d
6):δ11.62 (s, 1H),δ9.23 (t, J=5.6Hz, 1H),δ7.57 (m, 3H),δ7.50 (m, 2H), δ7.43 (m, 2H),δ6.63 (d, J=1.2Hz, 1H),δ6.52 (dd, J=6.8Hz, J’=1.6Hz, 1H),δ4.51 (d, J=6.0Hz, 2H)。
【0269】
2,6−ジクロロ−N−(4−(5−フルオロ−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−4−イル)ベンジル)ベンズアミド(13)の調製:
【0270】
【化41】
【0271】
化合物(13)を、化合物(8)について記載された手順と類似の手順を使用して、適切な出発物質を用いて調製した。MS found for C
19H
13Cl
2FN
2O
2: 391 (MH
+);
1H NMR (DMSO−d
6):δ11.27 (s, 1H),δ9.23 (t, J=6.0Hz, 1H),δ7.80 (d, J=4.0Hz, 1H),δ7.50 (m, 7H), δ6.53 (d, J=6.4Hz, 1H),δ4.52 (d, J=6.0Hz, 2H)。
【0272】
(実施例5)
スキームVの合成経路に従うリン酸モノ−(4−{4−[(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−メチル]−フェニル}−2−オキソ−2H−ピリジン−1−イルメチル)エステル(14)の調製:
【0273】
【化42】
【0274】
スキームXI
【0275】
【化43】
【0276】
工程1 − 2,6−ジクロロ−N−[4−(1−クロロメチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−4−イル)−ベンジル]−ベンズアミドの調製
2,6−ジクロロ−N−[4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−4−イル)−ベンジル]−ベンズアミド(1.62g,4.34mmol)を15mLのジクロロメタンに懸濁させた。クロロメチルクロロホルメート(0.672g,5.21mmol)を添加し、その後、3mLのDMFを添加した。この混合物を室温で5時間撹拌した。200mLの酢酸エチルで希釈した後に、その有機相を飽和重炭酸ナトリウム水溶液およびブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、そして減圧下でエバポレートした。この粗製2,6−ジクロロ−N−[4−(1−クロロメチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−4−イル)−ベンジル]−ベンズアミドをさらに精製せずに後の工程で使用した。
【0277】
工程2 − リン酸ジ−tert−ブチルエステル4−{4−[(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−メチル]−フェニル}−2−オキソ−2H−ピリジン−1−イルメチルエステルの調製
先の工程から得られた2,6−ジクロロ−N−[4−(1−クロロメチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−4−イル)−ベンジル]−ベンズアミドを50mLのDMFに溶解させた。炭酸カリウム(1g)を添加し、その後、ジ(t−ブチル)リン酸カリウム(2g)およびテトラブチルアンモニウムヨージド(50mg)を添加した。この混合物を70℃で4時間撹拌し、その後、これを300mLの酢酸エチルに注いだ。その有機相を水およびブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、そして減圧下でエバポレートした。この粗製生成物を、シリカゲルクロマトグラフィー(溶出液:酢酸エチル)によりさらに精製して、リン酸ジ−tert−ブチルエステル4−{4−[(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−メチル]−フェニル}−2−オキソ−2H−ピリジン−1−イルメチルエステルを無色油状物として得、これはゆっくりと結晶化した。
【0278】
工程3 − リン酸モノ−(4−{4−[(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−メチル]−フェニル}−2−オキソ−2H−ピリジン−1−イルメチル)エステルの調製
先の工程から得られたリン酸ジ−tert−ブチルエステル4−{4−[(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−メチル]−フェニル}−2−オキソ−2H−ピリジン−1−イルメチルエステルを、20mLのアセトニトリル、20mLの酢酸および20mLの水に溶解させ、そして70℃で4時間加熱した。全ての揮発性化合物を減圧下でエバポレートし、そしてその残渣を10mLのDMFに溶解させた。アセトニトリル(約60mL)をゆっくりと添加すると、生成物が沈殿し、これを濾過し、さらなるアセトニトリルで洗浄し、そして乾燥させて、リン酸モノ−(4−{4−[(2,6−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−メチル]−フェニル}−2−オキソ−2H−ピリジン−1−イルメチル)エステル(1.17g,3工程にわたり56%)を白色粉末として得た。
【0279】
1H−NMR (DMSO) δ: 9.23 (t, J=6.2Hz, 1H), 7.73 (d, J=8.4Hz, 2H), 7.71 (d, J=8.4Hz, 1H), 7.52−7.40 (m, 5H), 6.72 (d, J=1.6Hz, 1H), 6.65 (dd, J=7.2Hz, J=1.6Hz, 1H), 5.61 (d, J=9.6Hz, 2H), 4.52 (d, J=6.4Hz, 2H). MS: 483/485 (MH
+)。
【0280】
(実施例6)
2,6−ジメチル−N−(4−(2−オキソピペリジン−4−イル)ベンジル)ベンズアミド
【0281】
【化44】
【0282】
2,6−ジメチル−N−(4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−4−イル)ベンジル)ベンズアミド(実施例3Bの化合物5を参照のこと)のエタノール/メタノール(5:1)中の溶液に、10%Pd/Cを添加し、そしてこの混合物を23℃で12時間水素化した(1気圧)。この触媒をセライトパッドで濾過し、そしてメタノールで洗浄した。濾液および洗浄液を合わせ、次いでその溶媒を濃縮し、そしてクロマトグラフィー(SiO2,3%から15%のEtOAc/MeOH)で分離して、表題化合物を得た。MS found for C
21H
24N
2O
2 as (M+H)
+ 337.1
1H NMR (400MHz, dmso−d
6): δ: 8.76 (t, J = 5.6 Hz, 1H); 7.52 (brs, 1H), 7.27−7.14 (m, 4H); 7.13−6.99 (m, 3H); 4.40 (d, J = 6.4 Hz, 2H); 3.23−3.16 (m, 2H); 3003−2.98 (m, 1H); 2.35−2.21 (m 2H); 2.17 (s, 6H); 1.88−1.78 (m, 2H)。
【0283】
(実施例7)
以下の成分を含有する硬ゼラチンカプセルを調製する:
量
成分 (mg/カプセル)
活性成分 30.0
デンプン 305.0
ステアリン酸マグネシウム 5.0
上記成分を混合し、そして硬ゼラチンカプセルに充填する。
【0284】
(実施例8)
式(I)の化合物の錠剤処方物を、以下の成分を使用して調製する:
量
成分 (mg/錠剤)
活性成分 25.0
セルロース(微結晶性) 200.0
コロイド状二酸化ケイ素 10.0
ステアリン酸 5.0
これらの成分をブレンドし、そして圧縮して錠剤を形成する。
【0285】
(実施例9)
以下の成分を含有する乾燥粉末吸入器処方物を調製する:
成分 重量%
活性成分 5
ラクトース 95
活性成分をラクトースと混合し、そしてこの混合物を乾燥粉末吸入器具に添加する。
【0286】
(実施例10)
各々が30mgの活性成分を含有する錠剤を、以下のように調製する:
量
成分 (mg/錠剤)
活性成分 30.0 mg
デンプン 45.0 mg
微結晶性セルロース 35.0 mg
ポリビニルピロリドン
(滅菌水中10%の溶液として) 4.0 mg
カルボキシメチルデンプンナトリウム 4.5 mg
ステアリン酸マグネシウム 0.5 mg
滑石
1.0 mg
合計 120 mg。
【0287】
活性成分、デンプンおよびセルロースを、No.20メッシュU.S.シーブに通し、そして徹底的に混合する。ポリビニルピロリドンの溶液を得られた粉末と混合し、次いでこれを、16メッシュU.S.シーブに通す。このように生成した顆粒を50℃〜60℃で乾燥させ、そして16メッシュU.S.シーブに通す。No.30メッシュU.S.シーブに予め通したカルボキシメチルデンプンナトリウム、炭酸マグネシウム、および滑石を、次いでこの顆粒に添加し、これを混合後、打錠機で圧縮して各々が120mgの重量の錠剤を得る。
【0288】
(実施例11)
各々が25mgの活性成分を含む坐剤を以下のように作製する:
成分 量
活性成分 25mg
飽和脂肪酸グリセリド 2,000 mgになるまで。
【0289】
活性成分をNo. 60メッシュU.S.シーブに通し、そして必要最小量の熱を使用して予め融解させた飽和脂肪酸グリセリド中に懸濁させる。次いで、この混合物を公称2.0gの用量の坐剤型に注ぎ、そして冷却する。
【0290】
(実施例12)
各々が5.0mLの用量あたり50mgの活性成分を含む坐剤を、以下のように作製する:
成分 量
活性成分 50.0 mg
キサンタンガム 4.0 mg
カルボキシメチルセルロースナトリウム(11%)
微結晶性セルロース(89%) 50.0 mg
スクロース 1.75 g
安息香酸ナトリウム 10.0 mg
矯味矯臭剤および着色剤 q.v.
精製水 5.0mLになるまで。
【0291】
活性成分、スクロースおよびキサンタンガムをブレンドし、No. 10メッシュU.S.シーブに通し、次いで予め作製した微結晶性セルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムの水中の溶液と混合する。安息香酸ナトリウム、矯味矯臭剤、および着色剤をいくらかの水で希釈し、そして撹拌しながら添加する。次いで、充分な水を添加して、必要な体積を生成する。
【0292】
(実施例13)
皮下処方物を以下のように調製し得る:
成分 量
活性成分 5.0 mg
トウモロコシ油 1.0 mL。
【0293】
(実施例14)
以下の組成を有する注射可能な調製物を調製する:
成分 量
活性成分 2.0mg/mL
マンニトール,USP 50mg/mL
グルコン酸,USP q.s.(pH5−6)
水(蒸留、滅菌) 1.0mLになるために充分な量
窒素ガス,NF q.s.。
【0294】
(実施例15)
以下の組成を有する局所調製物を調製する:
成分 グラム数
活性成分 0.01−1
Span 60 2.0
Tween 60 2.0
鉱油 5.0
ペトロラタム 0.10
メチルパラベン 0.15
プロピルパラベン 0.05
BHA(ブチル化ヒドロキシアニソール) 0.01
水 100になるために充分な量。
【0295】
水以外の上記成分の全てを合わせ、そして撹拌しながら60℃まで加熱する。次いで、充分な量の水を60℃で激しく撹拌しながら添加して、これらの成分を乳化させ、次いで100gになるために充分な量の水を添加する。
【0296】
(実施例16)
徐放組成物
成分 重量%範囲 範囲1(%) 範囲2(%)
活性成分 50−95 70−90 75
微結晶性セルロース(充填剤) 1−35 5−15 1 0.6
メタクリル酸コポリマー 1−35 5−12.5 10.0
水酸化ナトリウム 0.1−1.0 0.2−0.6 0.4
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.5−5.0 1−3 2.0
ステアリン酸マグネシウム 0.5−5.0 1−3 2.0。
【0297】
徐放処方物を、以下のように調製する。化合物およびpH依存性結合剤および任意の賦形剤を、よく混合する(乾式ブレンド)。次いで、この乾式ブレンドした混合物を、強塩基の水溶液の存在下(ブレンドした粉末中に噴霧する)で顆粒化する。この顆粒を乾燥させ、篩い分けし、任意の滑沢剤(例えば、滑石または炭酸マグネシウム)と混合し、そして圧縮して錠剤にする。特定の強塩基の水溶液は、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムであり、好ましくは水酸化ナトリウム)の、水中の溶液である(必要に応じて、25%までの水混和性溶媒(例えば、低級アルコール)を含有する)。
【0298】
得られた錠剤を、識別のため、味をマスクする目的、および塩化の容易さを改善するために、任意のフィルム形成剤でコーティングし得る。このフィルム形成剤は代表的に、錠剤の重量の2%〜4%の範囲の量で存在する。適切なフィルム形成剤は当該分野において周知であり、そしてヒドロキシプロピル,メチルセルロース、および陽イオン性メタクリレートコポリマー(メタクリル酸ジメチルアミノエチル/メチル−ブチルメタクリレートコポリマー−Eudragit(登録商標)E−Roehm.Pharma)などが挙げられる。これらのフィルム形成剤は、着色剤、可塑剤、および他の補助成分を必要に応じて含有し得る。
【0299】
圧縮された錠剤は、好ましくは、8Kpの圧縮に耐えるために充分な硬度を有する。錠剤のサイズは、その錠剤中の化合物の量に主として依存する。これらの錠剤は、300mg〜1100mgの化合物遊離塩基を含む。好ましくは、これらの錠剤は、10mg〜200mg、100mg〜300mg、または400mg〜600mgの範囲の化合物遊離塩基の量を含む。
【0300】
溶解速度に影響を与える目的で、化合物含有粉末が湿式混合される時間が制御される。好ましくは、全粉末混合時間(すなわち、粉末が水酸化ナトリウム溶液に曝露される時間)は、1分間〜10分間の範囲であり、そして好ましくは、2分間〜5分間の範囲である。顆粒化後、これらの粒子は、顆粒化機から除去され、そして約60℃での乾燥のために、流動床乾燥機に入れられる。
【0301】
(実施例17)
ALDH2アッセイ
標準的なALDH2反応混合物は、384ウェルプレートを用い、50ulの最終容積中、50mM Hepesバッファー、pH7.4、0.01%Tween 20中に、150uM ホルムアルデヒド、2.5mM NAD
+、10mM MgCl2および10nM 組換えヒトALDH2を含んだ。化合物とALDH2およびホルムアルデヒドとの60分間のプレインキュベーションの後、NAD+を添加することによって反応を開始させ、そして、反応混合物を90分間進行させた。酵素の活性は、励起波長および発光波長をそれぞれ340nmおよび460nmに設定したPerkin−Elmer Envision Readerを用いてNADHの形成をモニターすることによって決定した。
【0302】
MAO−AおよびMAO−Bアッセイ
MAOアッセイは、発光原MAO基質、反応バッファー、Luciferin Detection、および、エステラーゼを含む再構成バッファーを含んだ。標準的なMAO反応混合物は、30ulの最終容積中、MAO−A(2ug)またはMAO−B(10ug)含有ミクロソームと、160uMのMAO−A用基質または16uMのMAO−B用基質と、MAO−Aバッファー(100mM Hepesバッファー、pH7.5、5% グリセロール)またはMAO−Bバッファー(100mM Hepes、pH7.5、5% グリセロール、10% ジメチルスルホキシド)とを含んだ。酵素と化合物との20分間のプレインキュベーションの後、酵素基質を添加することによって反応を開始させ、そして、反応を60分間進行させた。次いで、再構成したLuciferin Detection試薬(30ul)を添加して、MAO反応を同時に停止させ、そして、メチルエステル誘導体をルシフェリンに変換し、発光させた。生成した光の量は、MAOの活性と直接比例する。この混合物をさらに20分間インキュベートし、酵素の活性をPerkin−Elmer Envision Readerを用いて決定した。
注記:IC50は、反応を50%だけ阻害する化合物の濃度を指す。競合阻害の場合には、以下の関係:
Ki=IC50/[1+(基質濃度/Km)]
により、基質がKm濃度で存在する場合、IC50=2Kiである。
【0303】
いくつかの化合物についての代表的なデータを以下の表1に示す。
【0304】
【表1-1】
【0305】
【表1-2】
上記のデータは、本発明の化合物が一般に、1uM未満のIC
50でALDH2酵素を阻害することを示唆する。
【0306】
(実施例18)
アルコール依存の縮小
動物:アルコール嗜好性ラットの系統を21±1℃の一定温度下でステンレス鋼のワイヤメッシュケージ(26’34’20cm)内で個別に収容し、12時間明−12時間暗のサイクル(10:00〜22:00が暗)を確保した。これらのラットは、そのそれぞれのコントロール系統:選択的に交配した非アルコール嗜好性(NP)、低アルコール摂取(LAD)ラットおよびWistarラットよりも有意により多くアルコールを消費する。FHおよびPラットは、Wistarラットに由来する。水および食餌(Agway Prolab Rat/Mouse/Hamster 3000 formula,Agway,Syracuse,USA)は自由に与える。
【0307】
ベースラインの確立:標準的な方法(Murphyら、1988;RezvaniおよびGrady、1994;Rezvaniら、1995)に従い、アルコール嗜好性ラットに、Richterチューブ内の水への1日のアクセスを与え、その後、唯一の液体源として与えられる10%(v/v)エタノール溶液への3日間の自由なアクセスを与える。その後、研究の残り期間には、これらのラットにアルコールと水の間で選択肢を与える。全ての実験は、食餌と、2ボトル選択パラダイムにおける水およびアルコールへの24時間の自由なアクセスを伴う。
【0308】
実験プロトコール:アルコールおよび水の摂取について安定したベースラインを確立した後、動物を、約2ヵ月間、2ボトル選択パラダイムによりアルコールおよび水への連続的なアクセス状態に維持する。次いで、ラットに、09:30amに、生理食塩水ビヒクルまたは試験化合物の単回i.p.注射を与える。アルコールおよび水の摂取を、注射から6時間後および24時間後に測定する。食餌の摂取は、注射から24時間後に測定する。
【0309】
長期的な全身投与:成体雄性Pラットを用いて長期的な実験を行う。アルコールおよび水の摂取について安定したベースラインを確立した後、クロスオーバーデザインに従い、連続10日間にわたり1日1回、試験薬またはビヒクルをi.p.で与える。アルコールおよび水の摂取は処置から6時間後および24時間後に測定し、他方では、食餌の摂取は、処置から24時間後に測定する。各ラットが両方の処置を受け、処置間には3日間のウォッシュアウト期間を課す。
【0310】
統計分析:結果は、平均±標準誤差(SEM)として表す。アルコール摂取(g/kg)は、消費されたアルコールの容積に10%および0.7893(エタノール密度)/動物の体重(kg)を掛けることによって計算する。パーセンテージとして表したアルコール嗜好性は、以下のように計算する:
(消費されたアルコールの容積(mL)/流体摂取の合計(mL))×100(Rezvaniら、1990;RezvaniおよびGrady、1994)。
異なる群間の統計的な差は、Newman−Keulsの保護付きt検定にしたがう分散分析を用いて決定する。
【0311】
ラットのアルコール自己投与
アルコール嗜好性(iP)雄性ラットを、オペラント条件下でアルコール(10%v/v)を毎日(月曜日から金曜日)自己投与するように訓練した。ラットは、20分間のセッションの間に、1滴のアルコールを獲得するために、レバーを3回押さなければならないという、3の固定比(FR3)を使用した(Cowenら、2005a;Cowenら、2005b;Lawrenceら、2006)。アルコールの入手し易さは、嗅覚による合図(作動レバー直下のオペラントチャンバーの床敷きの上に配された2滴のバニラエッセンス)と、FR3が達成されたときの1秒間の光刺激によって条件付けた。各セッションについて、アルコールおよび水の反応の合計を記録した。レバー押下行動と安定したアルコールの自己投与の習得の後、ラットに、各セッションの1時間前に効果を相殺する順序(counterbalanced order)で、経口用ビヒクルまたは実施例5の化合物(5mg eq/kg、10mg eq/kgおよび30mg eq/kg)を投与した。全てのラットに、ランダムに割り当てた順序で1週間に1回、全ての薬物用量とビヒクルを与えた。5mg eq/kg、10mg eq/kgおよび30mg eq/kgの実施例5の化合物は、アルコールのためのレバーを押す回数を有意に減少させた(
図1)。
【0312】
(実施例19)
コカインの依存および再発の減少
ラットにおけるオペラント自己投与および復活モデルにおいて、静脈内コカイン(0.35mg/kg/inj)を用いる。このモデルでは、コカイン中毒のラットは、コカインの静脈内用量(iv)を得るためにレバーを繰り返し押し下げる。コカインが除去されると、ラットはレバー押下を停止する。しかしながら、ラットは、ナイーブな動物において通常は効果のない少量の腹腔内(ip)用量(10mg/kg)のコカインに供した場合、コカインのためのレバー押下を再開する(復活)。これは、コカイン中毒のヒトにおける再発の有効な動物モデルであり、式(I)の化合物がコカインの渇望と再発をブロックする能力を調べる。
【0313】
頸静脈にカテーテル挿入した雄性Sprague−Dawleyラットを用いる。ラットに、試験/訓練チャンバー内で2つのレバーの選択権を与える。作動レバーの押下は、コカイン強化因子の送達をもたらし、他方で、非作動レバーの押下は、強化をもたらさない。最初の15時間の固定比(FR)1訓練セッション(FR1は、1回のレバー押下=1回の強化因子の送達を意味する)の間、食餌ペレットを作動レバーにテープ付けし、レバー押下を促進し、そして、各作動レバー押下は、1個の45mgの食餌ペレット(Noyes,Lancaster,NH)の送達をもたらす。翌日、強化因子を、コカイン(0.35mg/kg/inj、0.27秒で送達される)のためのFR1レバー押下に切り替える。コカイン強化因子は、各薬物注入は、作動レバー上の刺激のイルミネーションと、作動レバー押下はカウントされるが、強化因子の送達をもたらさない20秒間の中断を伴うように修正したFR1スケジュールで送達する。20秒後、刺激光を消し、第一のレバー押下が再度薬物の送達をもたらす。非作動レバーの押下は、何の結果ももたらさない。各群についての毎日の訓練セッションは2時間、あるいは、被験体が200回の薬物注入を獲得するまでのいずれか早く到達する方まで続く。被験体は、獲得基準(3日の連続訓練日にわたり作動レバーの平均押下が<10%だけ変動する)に合うまで、薬物自己投与訓練モードに留まる。これは代表的には10〜14日間かかる。
【0314】
消失および復活
消失および復活実験のために、ラットは、強化のFR1スケジュールにおいて安定した応答(2連続セッションにおいて、15%を超えない変動性)を示すことを必要とされる。これらの基準を達成した後、レバー押下がもはや強化因子の送達をもたらさないような消失手順を開始する。3連続消失セッションにわたる平均応答が維持中の応答の15%まで減ると、被験体を復活について試験する。コカインを経験した動物では、復活は、復活セッションの直前の、コカインの非偶発的注射(10mg/kg ip)により刺激する。統計的検出力を高め、それゆえ、動物の使用を減らすために、第2の消失期間は、第1の期間から3〜4日後に開始する。これにより、被験体内でのさらなる比較が可能となる。実験は、動物を薬物を自己投与するように訓練する、セッション間訓練および試験の方法を用いる。次いで、その行動を静めさせ、次いで、別の日に復活を刺激する。
【0315】
結果:コカイン誘導性再発に対する式(I)の化合物の効果
式(I)の化合物のIp注射は、コカインに対する再発を用量依存性にブロックする。動物を、安定な応答に達するまで、コカイン(0.35mg/kg/inj)を自己投与するように訓練する。次いで、これらの動物を、同じチャンバーであるが、コカインがもはや利用不可能なチャンバー内で訓練する。これらの動物が一度そのレバー押下応答を最低レベル(消失)まで減らすと、これらの動物に、次いで、刺激用量のコカイン(10mg/kg)を与え、その結果、その応答性のレバー押下は有意に増加する(再発)。コカインの刺激注射の前に有効な式(I)の化合物を与えたこれらと同じ動物は、そのレバー押下応答の増加を示さない(再発しなかった)。
【0316】
ラットのコカイン合図復活
雄性Sprague Dawley(SD)ラットの訓練は、3つの別々の段階を有した。最初は、自己投与中に、動物を、薬物送達を伴う付随性の合図の提示と共にコカインのためにレバーを押し下げるように訓練した。依存の基準に達したラットを研究に含めた。その後、合図を消失させた間、コカインの合図依存性の行動は消失した。最後に、コカインの合図を復活させた間に、合図を提示した際のレバー押下に対する化合物の効果を試験した(
図2)。
【0317】
コカインの自己投与
ラットを、収縮可能なレバーを備えた標準的なオペラントチャンバー(Coulbourn Instruments,PA)内で、毎日(月曜日から金曜日)、i.v.コカイン(0.35mg/kg/注射)を自己投与するように訓練した。毎日2時間のセッションの間、ラットは、作動レバーが押し下げられる度に、0.35mg/kgコカインの0.05ml注入を受けた。合図の光と音は、コカイン溶液を送達したポンプの作動と共に2秒間ついた。ラットは、消失訓練に移動する前に、少なくとも10日間、1日あたり≧20+の注入率を維持することを求められた。この基準に到達しなかったラットは、研究から除外した。
【0318】
合図の消失
消失セッションの間、レバー押下はもはやコカインの注入をもたらさず、合図の光/音の提示はなかった。ラットは、最大15回の消失セッションを受けた。ラットは、2連続セッションの間に、平均15回未満の作動レバー押下、または、コカイン自己投与の最後2セッションの間に起こった1セッションあたりの応答数の30%のいずれか早く到達する方を示したときに、行動を消失したとみなした。
【0319】
コカイン合図の復活
消失基準に達した次の日、合図復活セッションの前に、ラットをビヒクル(処方物2B:25% PEG400/5% Vit E TPGS/1% SLS/
69%水+0.5% Methocel)または薬物(実施例2の化合物もしくは実施例5の化合物)で経口処置した。合図の復活は、音および合図の光で開始した。この2時間のセッションは、コカインが送達されなかったことを除いて、自己投与セッション(作動レバーが押し下げられると、合図の光および音が提示される)と同一であった。作動レバーの押下回数を、消失時のレバー応答と比較した。これは、復活の指標と考えられる。翌日、ラットを、少なくとも2または3回以上のセッションについて消失セッションに戻した。次いで、ラットは、最初の復活セッションで受けたものとは反対の処置(ビヒクルまたは薬物処置)による2回目の最後の復活セッションを受けた。ビヒクルで事前処置されたラットが、コカインの入手し易さを伴う合図を提示される場合、これらのラットは、レバー押下の回数を有意に増大させる。光/音の提示はこの応答を誘発し、これは、コカインが利用可能でない場合であるにもかかわらず、復活の指標と解釈される。
【0320】
実施例2の化合物は、ビヒクルと比較したときに、SDラットにおけるコカイン合図誘導性の復活を、5mg/kg、10mg/kgおよび30mg/kgにおいてそれぞれ、69%、72%および86%だけ有意に減少させた(
図3)。ANOVAは、レバー押下回数に対する処置の有意な効果を明らかにした。処置の有意な効果は、試験した全ての用量について観察された(p<0.001)。Fisherの事後比較は、合図復活セッションの前にビヒクルで処置したラットが、消失セッションと比較して、レバー押下回数の有意な増加を有したことを示した(p<0.05)。合図復活セッションの前に実施例2の化合物(5mg/kg、10mg/kgまたは30mg/kg)で処置した後、ラットは、ビヒクル処置と比較して、レバー押下応答を有意に減少した(それぞれ、69%の阻害:p<0.05、72%の阻害:p<0.05および86%の阻害:p<0.01)。#消失と比較してp<0.01;*ビヒクルと比較してp<0.05および**ビヒクルと比較してp<0.01。
【0321】
実施例5のプロドラッグ化合物は、コカイン合図復活において、5mg eq/kg、10mg eq/kgおよび30mg eq/kgで、それぞれ59%、55%および50%の阻害で有力があった(
図4)。試験した最低用量である2.5mg eq/kgにおいて、その効果は、ビヒクルから有意に異ならなかった。
【0322】
実施例5の化合物は、SDラットにおいて、コカインの合図により誘導される復活を減少させた。レバー押下の回数を、2時間の合図により誘導される復活セッション中に記録した。ANOVAは、レバー押下の回数に対する処置の有意な効果を明らかにした。レバー押下応答を失ったラットを、経口ビヒクルおよび実施例5の化合物(2.5mg eq/kg、5mg eq/kg、10mg eq/kgまたは30mg eq/kg)で、合図により誘導される復活セッションの1時間前に処置した。処置の有意な効果が、試験した2.5mg eq/kg、5mg eq/kg、10mg eq/kgおよび30mg eq/kgの用量について観察された(2.5mg/kg eq:F(2,28)=9.39,p<0.01,n=15、5mg/kg eq:F(2,14)=11,47,p<0.01,n=8、10mg/kg eq:F(2,18)=13,901,p<0.001,n=10、30mg/kg eq:F(2,22)=18.221,p<0.001,n=12)。Fisher事後比較は、合図復活セッションの前にビヒクルで処置されたラットが、消去セッションと比較して、レバー押下の回数の有意な増加(p<0.01)を示すことを明らかにした。合図復活セッションの前の、実施例5の化合物(5mg/kg、10mg/kgまたは30mg/kg)での処置後、ラットは、ビヒクルでの処置と比較して、レバー押下応答を有意に減少させた(それぞれ、59%の阻害:p<0.05、55%の阻害:p<0.01、および50%の阻害:p<0.01)。Fisher事後比較は、2.5mg/kg eqの用量が、ビヒクルから有意に異ならないことを明らかにした(30%の阻害,p>0.05,N.S.)。#消去と比較してp<0.01;*ビヒクルと比較してp<0.05および**ビヒクルと比較してp<0.01)。
【0323】
(実施例20)
ニコチン依存の縮小
生物学的材料:Wistar由来の雄性ラット(250〜300g)を、実験室に届いたら、2つの群に分けて収容し、温度を制御した12時間:12時間の光サイクル(0600hオン−1800hオフ)の環境に維持する。実験室に慣らす1週間の期間中、動物を食餌および水に自由にアクセスさせる。この研究試験に使用した動物は、実験動物の使用および世話に関する現在のNIH指針、ならびに全ての応用可能な地方の、州の、および連邦の規制および指針に従って取扱い、収容し、そして屠殺する。実験試験前に、動物を数日間毎日取り扱って、これらの動物を取り扱いストレスに対して脱感作する。サンプルサイズ(例えば、n=8)は、薬物効果の信頼性のある推定を与えるために充分である。
【0324】
薬物処置:Wistar由来のラットに、数用量の腹腔内(i.p.)投与される式(I)の化合物、およびポジティブコントロール化合物であるメカミラミン(1.5mg/kg,皮下(s.c.)を与える。これらの化合物を、SAセッションの30分前に投与する。式(I)の化合物を、7.5mg/kg(3.75mg/mL)および10mg/kg(5mg/mL)の用量については2mL/kgで、そして15mg/kgの用量(5mg/mL)については3mL/kgで投与する。この化合物を投与前にトウモロコシ油(VEH)に溶解させ、そして少なくとも30分間、2時間まで、超音波処理する。メカミラミンを0.09%等張生理食塩水に溶解させ、そして1mL/kgの体積で投与する。
【0325】
装置:食餌訓練およびニコチン自己投与を、8個の標準的なCoulbournオペラントチャンバー内で行う。各チャンバーを、音を減衰した箱に入れる。オペラントチャンバーに、床の2cm上方に設置した2つのレバー、および右のレバーの2cm上方でチャンバーの背面壁に設置した合図照明を備え付ける。食餌訓練のために、食餌ホッパーを、いずれかのレバーの左右2cmの位置に、背面壁の中間に配置する。静脈内注入を、0.1mLの体積で1秒間の間隔にわたり、音を減衰したチャンバーの外側に収容した注入ポンプ(Razel,CT)を介して送達する。
【0326】
食餌訓練:レバー押下を、Hyytiaら(1996)の方法により実証されたように、確立する。最初に、ラットを1日15グラムの食餌(ラットが自由に食餌を得る場合の体重のおよそ85%)に制限する。食餌制限の2日目の後に、ラットを食物に対する応答について、固定比1(FR1)の強化スケジュール(レバーを1回押すごとに1個の食餌ペレット)で、各強化後に1秒間の休止(TO−1s)を用いて、訓練する。訓練セッションを1日2回与え、そしてTO期間を次第に20秒間まで増大させる。一旦、ラットがFR1−TO20の強化スケジュールで安定したベースライン応答を得たら、これらのラットを、静脈内頚静脈カテーテル移植手術のための準備期間の前に、自由な食餌に戻す。
【0327】
外科手術:ラットを、ケタミン/キシラジン混合物で麻酔し、そして慢性サイラスティック頚静脈カテーテルを、外頚静脈に挿入し、そしてこの動物の背中に設置したポリエチレンアセンブリに皮下から通す。このカテーテルアセンブリは、13cmの長さのサイラスティックチューブ(内径0.31mm;外径0.64mm)からなり、直角に屈曲したガイドカニューレに取り付けられている。このカニューレは、歯のセメント裏層に包埋され、そして2×2cmの正方形の耐久性メッシュで固定される。このカテーテルを、ラットの背中から頚静脈まで皮下から通し、頚静脈に挿入して、非吸収性シルク縫合糸で固定する。この外科手術が首尾よく完了したら、ラットを3〜5日間回復させ、その後、自己投与セッションを開始する。この回復期間中に、ラットは食餌に自由にアクセスできるままであり、そしてカテーテルの裏打ちを、66mg/mLのTimentinを含む30単位/mLのヘパリン化生理食塩水で毎日フラッシュして、これらのカテーテル内での血液凝固および感染を防ぐ。
【0328】
ニコチン自己投与:カテーテル移植手術から首尾よく回復した後に、ラットが自由に食餌を得る場合の体重の85%まで、ラットから食餌を再度奪う。一旦、自己投与セッションが開始したら、被験体を、ニコチンをIV自己投与するように、1時間のベースラインセッションで、1週間あたり5日間、FR1−TO−20強化スケジュールに従って、安定した応答が達成されるまで、訓練する。安定した応答は、連続した3つのセッションにわたって20%未満の変動と定義される。ニコチンに対する安定した応答が得られた後に、種々の用量の式(I)の化合物を、被験体内ラテン方格設定を使用して試験する。1回の試験セッションについて、式(I)の化合物の各用量での処置後に、ラットにニコチンを自己投与させ、その後、1回の試験自己投与セッション中の次の用量プローブの前に、1〜3日間「ベースラインに戻す」。第一の化合物の試験後、ラットにポジティブコントロール化合物であるメカミラミン(1.5mg/kg)を与える。この化合物は、クロスオーバー設計に従って投与される。
【0329】
SAセッション中に、ラットを試験セッション前に生理食塩水でフラッシュして、カテーテルの開存性を確実にし、そして試験セッション後に66mg/mLのTimentinを含むヘパリン化生理食塩水(30単位/mL)で再度フラッシュして、カテーテル内での血液凝固および感染を防ぐ。応答速度の予測されないシフト、またはカテーテルから血液を引き出すことができないことにより実証されるような、カテーテルの開存性に問題がある場合、0.1mLの短時間作用する麻酔薬(Brevital)を注入する。開存したカテーテルを有する動物は、3秒以内に筋肉の緊張の急激な損失を示す。Brevital試験に従ってもはや開存していないカテーテルを有するラットを、この実験から除去する。
【0330】
データ分析:データを複数のオペラントチャンバーからオンラインで集め、そしてニコチンのための棒押下の平均累積数として報告する。このデータを、PC適合性コンピュータで、StatView統計パッケージを使用して分析する。
【0331】
結果:ニコチン自己投与に対する化合物の効果:
上記プロトコールに記載されるように投与される、式(I)の化合物の用量を増大させると、ニコチン投与のための棒押下の回数(注入の回数としてプロットされる)が減少する。
【0332】
ラットのニコチン自己投与
短期的な処置
雄性SDラットを、i.v.ニコチン(0.03mg/kg/inj)を毎日(月曜日から金曜日)自己投与するように、収縮可能なレバーを備える標準的なオペラントチャンバー内(MED Associates,Inc)で、以前に刊行されたように(Levinら,2003;Levinら,2007)訓練した。毎日45分間のセッション中に、ラットに、0.03mg/kg/注入の0.05mlのニコチンを、作動レバーが押下されるたびに与えた。合図の光および音を0.5秒間、ニコチン溶液を送達するポンプの作動と一緒にオンにした。毎日のセッションを少なくとも10日間行い、その後、薬物試験を開始した。実施例2および実施例5の化合物の溶液を、処方物2B(25% PEG400/5% Vit E TPGS/1% SLS/69%水、0.5% Methocelを含む)中に、経口投与のために、毎日新たに調製した。実施例2の化合物の用量を、試験の効果を相殺する設計で、各ニコチンセッションの1時間前に投与した。全てのラットに、全ての薬物用量およびビヒクルを、ランダムに割り当てた順序で与えた。経口薬物投与を、1週間に2回行った。10mg/kg、30mg/kgおよび60mg/kgにおける実施例2の化合物は、ビヒクル処置と比較すると、ニコチン注入の回数を有意に減少させた(それぞれ26%、28%および31%の阻害)。1mg/kgおよび5mg/kgの用量は、効果がなかった(
図5)。
【0333】
実施例5の化合物を、独立した4つの群を使用する研究において試験した。各群に、経口ビヒクルまたは実施例5の化合物の3通りの用量(5mg eq/kg、10mg eq/kgもしくは30mg eq/kg)のうちの1つのいずれかを与えた。実施例5の化合物の、高い方の2通りの用量(10mg eq/kgおよび30mg eq/kg)は、ビヒクル処置と比較すると、ニコチン注入の回数を有意に減少させた(それぞれ51%および68%の阻害)。5mg/kgの用量は、効果がなかった。
【0334】
長期的な処置
短期的な実施例5の化合物の処置研究が完了したら、同じ動物を、ニコチン自己投与モデルにおいて、実施例5の化合物の7日間の長期的な経口投与の効果を試験するために使用した。連続する7日間にわたるニコチン自己投与セッションの1時間前に、実施例5の化合物(5mg eq/kg、10mg eq/kgもしくは30mg eq/kg)またはビヒクルで、ラットを経口で処置した。10mg eq/kgおよび30mg eq/kgにおける実施例5の化合物は、7日間の長期的な投与中に、ビヒクル処置と比較すると、ニコチン注入の回数を有意に減少させた(それぞれ48%および62%の阻害)。短期的な処置と同様に、5mg eq/kgの用量は、効果がなかった(
図7)。この研究の経過中に、治療効果に対する耐性は起こらなかった(データは示さない)。ニコチン自己投与研究における動物は、分析に含まれるために、予め規定された基準(例えば、ラット系統、最少回数のニコチン注入、研究全体にわたって一貫したベースラインニコチン自己投与、開存したivカテーテルなど)に達しなければならなかった。